特許異議申立
2016-700904
排水処理装置
- 審判番号
- 2016-700904
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-290162外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月21日
- 審決日
- 2017年11月02日
- 公報発行日
- 2018年02月23日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱日立パワーシステムズ環境ソリューション株式会社
- 【権利者代理人】藤田 考晴
- 【異議申立人】松本 紀子
- 【異議申立人】吉田 秀平
- 分類
- P1651.113-YAA(C02F) / P1651.121-YAA(C02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5901288号発明「排水処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5901288号の明細書、及び、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び、訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第5901288号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第5901288号の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2011-290162号)は、平成23年12月28日に出願したものであって、平成28年3月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人松本紀子より請求項1~3、5に係る特許に対して異議の申立てがされ、また、特許異議申立人吉田秀平より請求項1~5に係る特許に対して異議の申立てがされたものである。
その後、平成29年1月6日付けで取消理由が通知され、平成29年3月13日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年4月20日付けで特許異議申立人松本紀子から意見書が提出されたものである。なお、特許異議申立人吉田秀平から意見書は提出されなかった。
その後、平成29年6月6日付けで取消理由が通知され、平成29年8月8日付けで意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年10月17日付けで特許異議申立人松本紀子から意見書が提出されたものである。なお、特許異議申立人吉田秀平から意見書は提出されなかった。
2 訂正の適否
(1) 訂正の内容
平成29年8月8日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の内容は、以下訂正事項1~6のとおりである。
なお、特許法第120条の5第7項の規定にもとづき、平成29年3月13日付けの訂正請求は取り下げられたものとみなす。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「【請求項1】
微生物により排水中の有機物を分解除去する生物処理部と、前記生物処理部の下流側に設けられ、前記排水中から塩を生成するイオン分を除去する脱塩部とを含む排水処理装置であって、
前記生物処理部の上流側に、前記排水中からフッ素イオンを除去して前記排水中のフッ素イオンの濃度を低減させるフッ素濃度低減部を備える排水処理装置。」と記載されているのを、
「【請求項1】
微生物により排水中の有機物を分解除去する生物処理部と、前記生物処理部の下流側に設けられ、前記排水中から塩を生成するイオン分を除去する脱塩部とを含む排水処理装置であって、
前記脱塩部が静電脱塩装置を有し、
前記生物処理部の上流側に、前記排水中からフッ素イオンを除去して前記排水中のフッ素イオンの濃度を低減させるフッ素濃度低減部を備え、
前記静電脱塩装置は、一対の対向する多孔質電極と、正極側に設置された陰イオン交換膜と、負極側に設置された陽イオン交換膜と、を備え、
前記多孔質電極の間を排水が流通可能になっている排水処理装置。」に訂正する。
訂正事項2
明細書の段落【0009】に
「上記課題を解決するために、本発明は、微生物により排水中の有機物を分解除去する生物処理部と、前記生物処理部の下流側に設けられ、前記排水中から塩を生成するイオン分を除去する脱塩部とを含む排水処理装置であって、前記生物処理部の上流側に、前記排水中からフッ素イオンを除去して前記排水中のフッ素イオンの濃度を低減させるフッ素濃度低減部を備える排水処理装置を提供する。」と記載されているのを、
「上記課題を解決するために、本発明は、微生物により排水中の有機物を分解除去する生物処理部と、前記生物処理部の下流側に設けられ、前記排水中から塩を生成するイオン分を除去する脱塩部とを含む排水処理装置であって、前記脱塩部が静電脱塩装置を有し、前記生物処理部の上流側に、前記排水中からフッ素イオンを除去して前記排水中のフッ素イオンの濃度を低減させるフッ素濃度低減部を備え、前記静電脱塩装置は、一対の対向する多孔質電極と、正極側に設置された陰イオン交換膜と、負極側に設置された陽イオン交換膜と、を備え、前記多孔質電極の間を排水が流通可能になっている排水処理装置を提供する。」に訂正する。
訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に
「前記フッ素濃度低減部が、前記排水中に種結晶が投入可能とされた種結晶投入部を含む」と記載されているのを、
「前記フッ素濃度低減部が、前記排水中に種結晶が投入可能とされた種結晶投入部を含み、かつ、前記種結晶投入部から前記種結晶が投入される反応槽と、該反応槽の下流側に設けられ、排水の滞留時間が該反応槽よりも長い熟成槽とを含む」に訂正する。
訂正事項4
明細書の段落【0011】に
「上記発明において、前記フッ素濃度低減部が、前記排水中に種結晶が投入可能とされた種結晶投入部を含む。」と記載されているのを、
「上記発明において、前記フッ素濃度低減部が、前記排水中に種結晶が投入可能とされた種結晶投入部を含み、かつ、前記種結晶投入部から前記種結晶が投入される反応槽と、該反応槽の下流側に設けられ、排水の滞留時間が該反応槽よりも長い熟成槽とを含む。」に訂正する。
訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「前記フッ素濃度低減部が、前記排水中にアルミニウム系凝集剤を投入する凝集剤投入部を含む」と記載されているのを、
「前記フッ素濃度低減部が、前記排水中にアルミニウム系凝集剤を投入する凝集剤投入部を含み、
前記生物処理部は、膜分離活性汚泥法を用いた処理装置と、生物膜法を用いた処理装置とを含み、
前記膜分離活性汚泥法を用いた処理装置および前記生物膜法を用いた処理装置は、排水中の有機物量に応じて運転が制御される」に訂正する。
訂正事項6
明細書の段落【0016】に
「あるいは、上記発明において、前記フッ素濃度低減部が、前記排水中にアルミニウム系凝集剤を投入する凝集剤投入部を含む。
このように、アルミニウム系凝集剤を適用したフッ素濃度低減部とし、水酸化アルミニウムとともにフッ素を沈殿させることによっても、排水中のフッ素イオン濃度を低減させることができる。」と記載されているのを、
「あるいは、上記発明において、前記フッ素濃度低減部が、前記排水中にアルミニウム系凝集剤を投入する凝集剤投入部を含み、前記生物処理部は、膜分離活性汚泥法を用いた処理装置と、生物膜法を用いた処理装置とを含み、前記膜分離活性汚泥法を用いた処理装置および前記生物膜法を用いた処理装置は、排水中の有機物量に応じて運転が制御される。
このように、アルミニウム系凝集剤を適用したフッ素濃度低減部とし、水酸化アルミニウムとともにフッ素を沈殿させることによっても、排水中のフッ素イオン濃度を低減させることができる。」に訂正する。
(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、一群の請求項
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る「排水処理装置」の発明において、「前記脱塩部が静電脱塩装置を有し」ており、また、「前記静電脱塩装置は、一対の対向する多孔質電極と、正極側に設置された陰イオン交換膜と、負極側に設置された陽イオン交換膜と、を備え、前記多孔質電極の間を排水が流通可能になっている」ものに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項3は、訂正前の請求項2に係る「排水処理装置」の発明において、「前記フッ素濃度低減部」が、「前記種結晶投入部から前記種結晶が投入される反応槽と、該反応槽の下流側に設けられ、排水の滞留時間が該反応槽よりも長い熟成槽とを含む」ものに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る「排水処理装置」の発明において、「前記フッ素濃度低減部」が、「前記生物処理部は、膜分離活性汚泥法を用いた処理装置と、生物膜法を用いた処理装置とを含み、
前記膜分離活性汚泥法を用いた処理装置および前記生物膜法を用いた処理装置は、排水中の有機物量に応じて運転が制御される」ものに限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項2、4、6は、訂正事項1、3、5を受けて、発明の詳細な説明の記載を請求項の記載と整合させるものだから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
イ 新規事項の有無について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「…脱塩部4は、逆浸透膜式純水装置、あるいは、静電脱塩装置を有する。」(【0025】)と記載されており、また、「静電脱塩装置は、一対の対向する多孔質電極を有し、正極側には陰イオン交換膜が設置され、負極側には陽イオン交換膜が設置される。電極の間を排水が流通可能になっている。」(【0027】)と記載されているから、訂正事項1、2は、新規事項の追加に該当しない。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「反応槽20と熟成槽24とは、隔壁を介して並んで配置されている。…」(【0038】)、「…熟成槽24での排水の滞留時間は、反応槽20での滞留時間より長くなるように設定されている。」(【0041】)と記載されているから、訂正事項3、4は、新規事項の追加に該当しない。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「…生物処理部3は、膜分離活性汚泥法を用いた処理装置(MBR:Membrane Bio-Reactor)、生物膜法を用いた処理装置(BFR:Bio-Film Reactor)、曝気槽と沈殿槽とを組み合わせた構成などとされる。生物処理部3は、MBRとBFRとを組み合わせた構成とされても良い。…」(【0021】)、「MBRとBFRとを組み合わせた構成の場合には、排水中の有機物量(COD)に応じて、MBR及びBFRの運転が制御される。…」(【0024】)と記載されているから、訂正事項5、6は、新規事項の追加に該当しない。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1~6は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 一群の請求項について
訂正前の請求項1を請求項2~5が、直接又は間接的に引用するものであるから、特許請求の範囲に係る訂正事項1、3、5は一群の請求項〔1~5〕に対して請求されたものである。
また、明細書に係る訂正事項2、4、6は、この一群の請求項〔1~5〕の全てについて請求されたものである。
(3) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正を認める。
3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、平成29年8月8日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載される以下の事項により特定されるとおりのものであると認める。
【請求項1】
微生物により排水中の有機物を分解除去する生物処理部と、前記生物処理部の下流側に設けられ、前記排水中から塩を生成するイオン分を除去する脱塩部とを含む排水処理装置であって、
前記脱塩部が静電脱塩装置を有し、
前記生物処理部の上流側に、前記排水中からフッ素イオンを除去して前記排水中のフッ素イオンの濃度を低減させるフッ素濃度低減部を備え、
前記静電脱塩装置は、一対の対向する多孔質電極と、正極側に設置された陰イオン交換膜と、負極側に設置された陽イオン交換膜と、を備え、
前記多孔質電極の間を排水が流通可能になっている排水処理装置。
【請求項2】
前記フッ素濃度低減部が、前記排水中に種結晶が投入可能とされた種結晶投入部を含み、かつ、前記種結晶投入部から前記種結晶が投入される反応槽と、該反応槽の下流側に設けられ、排水の滞留時間が該反応槽よりも長い熟成槽とを含む請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記フッ素を含む塩を析出させた後に前記種結晶を沈殿させ、前記沈殿した種結晶を前記排水中に再投入する循環部を含む請求項2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記フッ素濃度低減部が、容器と、該容器内に収納され、内部に種結晶を収納する流動床とを含み、
前記容器の下方から前記排水が供給され、前記排水が前記流動床を通過するときに前記種結晶の表面に前記フッ素を含む塩を析出させて、前記排水中の前記フッ素イオンの濃度を低減させる請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記フッ素濃度低減部が、前記排水中にアルミニウム系凝集剤を投入する凝集剤投入部を含み、
前記生物処理部は、膜分離活性汚泥法を用いた処理装置と、生物膜法を用いた処理装置とを含み、
前記膜分離活性汚泥法を用いた処理装置および前記生物膜法を用いた処理装置は、排水中の有機物量に応じて運転が制御される請求項1に記載の排水処理装置。
(2)証拠
特許異議申立人松本紀子、及び、特許異議申立人吉田秀平から提出された証拠は以下の引用例1~6、周知文献7、及び、参考資料1~5である。
引用例1:特開2011-200848号公報
(特許異議申立人松本紀子提出の甲第1号証)
(特許異議申立人吉田秀平提出の甲第2号証)
引用例2:特開2010-207755号公報
(特許異議申立人松本紀子提出の甲第2号証)
(特許異議申立人吉田秀平提出の甲第5号証)
引用例3:特開2004-122059号公報
(特許異議申立人松本紀子提出の甲第3号証)
引用例4:特開2010-82546号公報
(特許異議申立人吉田秀平提出の甲第3号証)
引用例5:国際公開第2011/118808号
(特許異議申立人吉田秀平提出の甲第1号証)
引用例6:特開2006-218354号公報
(特許異議申立人吉田秀平提出の甲第4号証)
周知文献7:特開2008-104946号公報
(特許異議申立人吉田秀平提出の甲第6号証)
参考資料1:特開2002-210468号公報
(特許異議申立人松本紀子提出(平成29年4月20日付け意見
書)(平成29年10月17日付け意見書)の参考資料1)
参考資料2:特開2001-58181号公報
(特許異議申立人松本紀子提出(平成29年4月20日付け意見
書)の参考資料2)
参考資料3:特開2003-285066号公報
(特許異議申立人松本紀子提出(平成29年4月20日付け意見
書)の参考資料3)
参考資料4:特開2002-336866号公報
(特許異議申立人松本紀子提出(平成29年10月17日付け意
見書)の参考資料4)
参考資料5:特開2001-121150号公報
(特許異議申立人松本紀子提出(平成29年10月17日付け意
見書)の参考資料5)
なお、参考資料2、3は「不使用」であることが、平成29年10月17日付けの意見書において、特許異議申立人松本紀子により表明されている。
(3)取消理由の概要
訂正前の請求項1~5に係る特許に対して平成29年1月6日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。
イ 請求項2、5に係る発明は、引用例1に記載された発明と引用例2~4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2、5に係る特許は取り消すべきものである。
ウ 請求項1~5に係る発明は、引用例4に記載された発明と引用例5、6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1~5に係る特許は取り消すべきものである。
なお、平成29年6月6日付けの取消理由は、みなし取り下げとなった訂正請求により生じた記載不備のみを通知したものであり、当該不備は解消した。
(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア) 特許法第29条第1項第3号について(上記(3)ア)
本件発明1は、「脱塩部が静電脱塩装置を有し、」かつ「前記静電脱塩装置は、一対の対向する多孔質電極と、正極側に設置された陰イオン交換膜と、負極側に設置された陽イオン交換膜と、を備え、前記多孔質電極の間を排水が流通可能になっている」(以下、「発明特定事項1」という。)ものであるのに対し、引用例1には、脱塩するために「逆浸透工程を実施する手段」を有することが記載されているに過ぎず、発明特定事項1について記載がない。
したがって、本件発明1は、引用例1に記載された発明ではない。
(イ) 特許法第29条第2項について(上記(3)イ、ウ)
引用例1~6のいずれにも、発明特定事項1について記載や示唆がないから、本件発明1、及び、本件発明1の発明特定事項を全て含む本件発明2~5は、引用例1~6に記載された発明ないし技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア) 特許法第29条第1項第3号について
a 特許異議申立人松本紀子は、訂正前の請求項5に係る発明は、引用例1に記載された発明であると主張しているが、本件発明5は、発明特定事項1を含む本件発明1の発明特定事項を全て含むものとなっているから、上記ア(ア)と同様の判断をすることができる。
b 特許異議申立人吉田秀平は、訂正前の請求項1に係る発明は、引用例5に記載された発明であると主張しているが、本件発明1は、本件訂正請求により発明特定事項1を含むものとなっているところ、引用例5には、発明特定事項1が記載されていない。
(イ) 特許法第29条第2項について
a 特許異議申立人松本紀子は、引用例1に記載された発明に、引用例2、3に記載された周知技術を適用し、訂正前の請求項3に係る発明は当業者が容易に発明し得たものであると主張している。
しかし、本件発明3は、発明特定事項1を含む本件発明1の発明特定事項を全て含むものとなっているところ、引用例1~3の何れにも、発明特定事項1が記載も示唆もされておらず、本件発明3は、引用例1~3に記載された発明ないし技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
b 特許異議申立人吉田秀平は、引用例1に記載された発明に、引用例2、4、及び、周知文献7に記載された周知技術を適用して、訂正前の請求項3、4に係る発明は当業者が容易に発明し得たものであると主張し、また、引用例5に記載された発明に、引用例2、4、及び、周知文献7に記載された周知技術を適用して、訂正前の請求項2~5に係る発明は当業者が容易に発明し得たものであると主張している。
しかし、本件発明2~5は、発明特定事項1を含む本件発明1の発明特定事項を全て含むものとなっているところ、引用例1、2、4、5、及び、周知文献7の何れにも、発明特定事項1が記載も示唆もされていないから、本件発明2~5は、引用例1、2、4、5、及び、周知文献7に記載された発明ないし技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件訂正請求を受けて、平成29年10月17日付けで特許異議申立人松本紀子から提出された意見書に記載された主張について
(ア) 本件発明1について
特許異議申立人松本紀子は、参考資料1、4、5の記載から、発明特定事項1は周知技術であり、引用例1に記載された発明と、当該周知技術とから、本件発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。
そこで検討するに、参考資料4には、陰イオン交換膜に相当するアニオン交換膜と、陽イオン交換膜に相当するカチオン交換膜とを、連続式電気脱イオン装置(21)に設置することが記載されているにすぎない。
そして、参考資料4に記載された連続式電気脱イオン装置(21)は、電気透析の原理を用いて、イオンの濃縮および希釈をするものであって、連続式電気脱イオン装置(21)の電極は、同資料に記載された静電脱塩装置である通液型電気二重層コンデンサ(31)の電極と異なり、イオンの吸着を目的としないものと認められる。
そうであるから、参考資料1、5に記載された通液型(電気二重層)コンデンサの電極構造が多孔質であるとしても、連続式電気脱イオン装置(21)の電極が多孔質であるとはいえない。
してみると、参考資料1、4、5から、発明特定事項1が周知技術であるということはできず、本件発明1は、引用例1、参考資料1、4、5に記載された発明ないし技術事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明2、3、5について
特許異議申立人松本紀子は、本件発明2、3、5について、引用例1~3に記載された発明ないし技術事項、参考資料1、4、5に記載された周知技術、及び、技術常識から、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているが、上記(ア)に記載のとおり、発明特定事項1は、周知技術であるといえない。
してみると、本件発明2、3、5は、発明特定事項1を含む本件発明1の発明特定事項を全て含むものとなっているところ、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700904