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特許異議申立

2016-700528

殺ノロウイルス組成物

審判番号
2016-700528
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2011-186419
登録番号
特許第5832201号(P5832201)
請求日
2016年06月08日
審決日
2018年05月22日
公報発行日
2018年08月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】攝津製油株式会社
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】弟子丸 健
  • 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
  • 【権利者代理人】箱田 篤
  • 【権利者代理人】浅井 賢治
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】市川 さつき
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【権利者代理人】滝澤 敏雄
  • 【権利者代理人】田代 玄
  • 【異議申立人】安田 妙子
審判長/審判官
  • 審判長 守安 智
  • 審判官 木村 敏康
  • 審判官 齊藤 真由美
分類
P1651.537-YAA(A01N) / P1651.121-YAA(A01N) / P1651.851-YAA(A01N) / P1651.853-YAA(A01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5832201号発明「殺ノロウイルス組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5832201号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第5832201号の請求項1及び3~6に係る特許を維持する。 特許第5832201号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5832201号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成23年8月29日に特許出願され、平成27年11月6日に特許権の設定登録がされ、同年12月16日にその特許公報が発行され、その請求項1~6に係る発明の特許に対し、平成28年6月8日に安田妙子(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。 平成28年 8月31日付け 取消理由通知 同年10月21日   面接 同年11月 4日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年12月26日   手続補正書(特許権者) 平成29年 1月19日付け 通知書 同年 2月22日   意見書(特許異議申立人) 同年 3月17日付け 取消理由通知 同年 5月22日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 6月12日付け 通知書 同年 7月19日   意見書(特許異議申立人) 同年 8月18日付け 取消理由通知 同年10月23日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年11月13日付け 通知書 同年12月20日   意見書(特許異議申立人) 平成30年 1月17日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年 2月20日   意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 3月15日   手続補正書(特許権者) 同年 3月27日付け 通知書 なお、平成30年3月27日付けの通知書に対して、指定期間内に、特許異議申立人から意見書の提出がなされなかった。 第2 訂正の適否 1.訂正の内容 平成28年11月4日付け、平成29年5月22日付け、及び同年10月23日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされるところ、平成30年3月15日付けの手続補正により補正された同年2月20日付けの訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の訂正事項1~9のとおりである(なお、訂正箇所に下線を付した。)。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1に「0.005重量%~0.02重量%」とあるのを「0.0058重量%」と訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項1に「殺ノロウイルス組成物」とあるのを「殺ヒトノロウイルス組成物」に訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項1に「組成物」とあるのを「組成物であって、 プロアントシアニジンがブドウ種子抽出物「グラヴィノール(登録商標)T」として含有される、殺ヒトノロウイルス組成物」に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項2を削除する。 (5)訂正事項5 (i)訂正前の請求項3に「請求項1または2に記載の」とあるのを「請求項1に記載の」に訂正する。 (ii)訂正前の請求項4に「1~3のいずれか1項に記載の」とあるのを「請求項1または3に記載の」に訂正する。 (iii)訂正前の請求項5に「1~4のいずれか1項に記載の」とあるのを「請求項1、3、4のいずれか1項に記載の」に訂正する。 (iv)訂正前の請求項6に「1~4のいずれか1項に記載の」とあるのを「請求項1、3、4のいずれか1項に記載の」に訂正する。 (6)訂正事項6 (i)訂正前の請求項3に「殺ノロウイルス組成物」とあるのを「殺ヒトノロウイルス組成物」に訂正する。 (ii)訂正前の請求項4に「殺ノロウイルス組成物」とあるのを「殺ヒトノロウイルス組成物」に訂正する。 (iii)訂正前の請求項5に「殺ノロウイルス組成物」とあるのを「殺ヒトノロウイルス組成物」に訂正する。 (iv)訂正前の請求項6に「殺ノロウイルス組成物」とあるのを「殺ヒトノロウイルス組成物」に訂正する。 (7)訂正事項7 (i)訂正前の明細書の段落0030に「実施例1~7」とあるのを「参考例1~3、5、6、実施例4、7」に、同段落0030に「実施例1の殺ノロウイルス組成物」とあるのを「参考例1の殺ノロウイルス組成物」に訂正する。 (ii)訂正前の段落0031の表1及び同段落0035の表2に「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」、「参考例5」及び「実施例6」とあるのを、それぞれ「参考例1」、「参考例2」、「参考例3」、「参考例5」及び「参考例6」に訂正する。 (iii)訂正前の明細書の段落0036に「本発明の実施例1~7」とあるのを「参考例1~3、5、6、および本発明の実施例4、7」に訂正する。 (iv)訂正前の明細書の段落0039に「本発明の上記実施例2~4」とあるのを「参考例2、3および本発明の上記実施例4」に訂正する。 (v)訂正前の明細書の段落0040及び0043に「実施例2」及び「実施例3」とあるのを、それぞれ「参考例2」及び「参考例3」に訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の明細書の段落0015に「加水分解により」とあるのを「酸処理により」に訂正する。 (9)訂正事項9 (i)訂正前の明細書の段落0015に「グラヴィノール」、「アップルフェノン」及び「ピクノジェノール」とあるのを、それぞれ「グラヴィノール(登録商標)」、「アップルフェノン(登録商標)」及び「ピクノジェノール(登録商標)」に訂正する。 (ii)訂正前の明細書の段落0016に「グラヴィノールF」、「グラヴィノールT」及び「グラヴィノールN」とあるのを、それぞれ「グラヴィノール(登録商標)F」、「グラヴィノール(登録商標)T」及び「グラヴィノール(登録商標)N」に訂正する。 (iii)訂正前の明細書の段落0030に「グラヴィノールT」及び「サンソフト760」とあるのを、それぞれ「グラヴィノール(登録商標)T」及び「サンソフト(登録商標)760」に訂正する。 3.訂正の適否 (1)訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「0.005重量%~0.02重量%」を「0.0058重量%」との記載に改めるものであって、プロアントシアニジンの濃度の範囲を限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 訂正事項2及び6は、いずれも訂正前の請求項1及び3~6の「殺ノロウイルス組成物」を「殺ヒトノロウイルス組成物」との記載に改めるものであって、殺ウイルスの対象を「ヒトノロウイルス」のみに限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 訂正事項3は、訂正前の請求項1の「組成物」を「組成物であって、プロアントシアニジンがブドウ種子抽出物「グラヴィノール(登録商標)T」として含有される、殺ヒトノロウイルス組成物」との記載に改めるものであって、訂正前の殺ノロウイルス組成物を「殺ヒトノロウイルス組成物」に限定するとともに、訂正前のプロアントシアニジンを『ブドウ種子抽出物「グラヴィノール(登録商標)T」として含有される』ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 訂正事項4は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 訂正事項5は、いずれも訂正前の請求項2の削除に伴って、訂正前の請求項3~6において引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 訂正事項7は、訂正前の実施例のうち訂正後に実施例に該当しなくなったものを参考例に改め、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 訂正事項8は、訂正前の普通の意味で使用されているとはいえない「加水分解により」との記載を、技術常識に適合する「酸処理により」との記載に改めるためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 訂正事項9は、特許法施行規則様式第29〔備考〕9に従って、登録商標を使用しなければ当該物を表示することができない場合に登録商標である旨を明示するためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 (2)新たな技術的事項の導入 訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落0031の表1に、実施例4の組成物が0.02%のブドウ種子抽出物を含むことが記載され、同段落0030に、表1におけるブドウ種子抽出物として使用した「グラヴィノール(登録商標)T」のプロアントシアニジン含有量が29%であったことが記載され、同段落0029に、同段落以下における「%」が特に記載のない限り重量%を意味することが記載されているので、実施例4の組成物におけるプロアントシアニジンの含有量として計算される0.02×0.29=0.0058(重量%)から導き出すことができる構成であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 訂正事項2及び6は、願書に添付した明細書の段落0039の「ノロウイルス患者の糞便から粗精製されたノロウイルスサンプル」との記載から導き出される構成であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 訂正事項3は、登録時の請求項2の「プロアントシアニジンがブドウ種子抽出物として含有される」との記載及び願書に添付した明細書の段落0030の『なお、ブドウ種子抽出物としては、「グラヴィノールT」(キッコーマンバイオケミファ株式会社製、プロアントシアニジン含有量=29%)を…用いた。』との記載から導き出される構成であって、新たな技術的事項を導入するものではない。 訂正事項4は、訂正前の請求項2を削除するものであって、新たな技術的事項を導入するものではない。 訂正事項5は、訂正前の請求項2の削除に伴って、訂正前の請求項3~6において引用する請求項から請求項2を削除するものであって、新たな技術的事項を導入するものではない。 訂正事項7は、本件特許明細書中の実施例に該当しないものを参考例に改めるためのものであって、新たな技術的事項を導入するものではない。 訂正事項8は、本件特許明細書中の記載を本件特許の出願当時の技術常識に適合する記載に改めるためのものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された「プロアントシアニジン」が出願当時の技術常識に照らして「酸処理によりアントシアニジンを生じる化合物」であることが明らかであるから、新たな技術的事項を導入するものではない。 訂正事項9は、本件特許明細書中の製品名が登録商標である旨を明示するためのものであって、当該製品名が登録商標であることは本件特許の出願当時に普通に知られていたことが明らかであるから、新たは技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1~9は、願書に添付した明細書の、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の実質上の拡張・変更 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「0.005重量%~0.02重量%」を「0.0058重量%」との記載に改めるものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項2及び6は、訂正前の「殺ノロウイルス組成物」を「殺ヒトノロウイルス」に減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項3は、訂正前の殺ノロウイルス組成物を「殺ヒトノロウイルス組成物」に限定するとともに、訂正前のプロアントシアニジンを『ブドウ種子抽出物「グラヴィノール(登録商標)T」として含有される』ものに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項4は、訂正前の請求項2を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項5は、訂正前の請求項2の削除に伴って、訂正前の請求項3~6において引用する請求項から請求項2を削除するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項7は、本件特許明細書中の実施例に該当しないものを参考例に改めるためのものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項8は、本件特許明細書中の記載を本件特許の出願当時の技術常識に適合する記載に改めるためのものであって、訂正前の特許請求の範囲に記載された「プロアントシアニジン」の内容が技術常識に照らして「酸処理によりアントシアニジンを生じる化合物」を本来意図していることが明らかであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項9は、本件特許明細書中の製品名が登録商標である旨を明示するためのものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1~9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (4)一群の請求項について 訂正事項1~6に係る訂正前の請求項1~6について、その請求項2~6はそれぞれ請求項1を直接又は間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1及び3~6は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 したがって、訂正事項1~6による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 また、訂正事項7~9による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1~6であるから、訂正事項7~9と関係する一群の請求項が請求の対象とされている。 したがって、訂正事項7~9による本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。 (5)訂正の適否のまとめ 以上総括するに、訂正事項1~9による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正を認める。 第3 本件発明 1.訂正後の請求項1~6に係る発明 本件訂正により訂正された請求項1~6に係る発明(以下「本1発明」~「本6発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】0.0058重量%のプロアントシアニジンを、43重量%~52重量%のエタノール水溶液に含有してなる、殺ヒトノロウイルス組成物であって、 プロアントシアニジンがブドウ種子抽出物「グラヴィノール(登録商標)T」として含有される、殺ヒトノロウイルス組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】組成物のpHが5.5~8である、請求項1に記載の殺ヒトノロウイルス組成物。 【請求項4】さらにグリセリン脂肪酸エステルを含有する、請求項1または3に記載の殺ヒトノロウイルス組成物。 【請求項5】請求項1、3、4のいずれか1項に記載の殺ヒトノロウイルス組成物を含有する、消毒剤。 【請求項6】請求項1、3、4のいずれか1項に記載の殺ヒトノロウイルス組成物を含有する、殺菌洗浄剤。」 2.訂正後の明細書の記載 本件訂正により訂正された明細書には、次のとおりの記載がある。 摘示a:本件特許発明の解決しようとする課題 「【0006】…ノロウイルスによる感染が問題となる場所には、トイレや調理場のように水分の多く存在する場所が多く、かかる場所では、抗ウイルス組成物が希釈されることが予想される。それゆえ、供試ウイルスに対して抗ウイルス成分が高濃度で存在する状態で効果が見られても、実際に消毒対象物に使用した際に十分な効果が得られるとは限らない。… 【0009】従って、本発明は上記のような課題に着目し、既存の逆性石鹸やアルコール製剤では効果の見られなかったノロウイルスに対して、良好な殺ノロウイルス効果を発揮し、より簡便かつ安全に、消毒対象物に好ましくない影響を及ぼすことが少なく、ノロウイルスによる食中毒の発生と感染拡大を防止し得る殺ノロウイルス組成物を提供することを目的とする。」 摘示b:同等な効果が期待できるプロアントシアニジンの範囲 「【0015】本発明において用いるプロアントシアニジンは、植物に含まれるポリフェノールの1種であり、酸処理により赤色系の色素であるアントシアニジン(シアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン等)を生じる化合物である。 本発明においては、ブドウ、クランベリー、カカオ、リンゴ、小豆、柿、ライチ、キャベツ、大麦、麦芽、クルミ、アーモンド、杉、桧、松、栃、樫、乾姜(カンキョウ)、茗荷(ミョウガ)、葉生姜(ハショウガ)等の花、茎、種子、果実、果肉、皮類、根、幹、樹皮、葉などの植物体組織に含まれるプロアントシアニジンを用いることができる。」 摘示c:効果を発揮できるプロアントシアニジン含有量の範囲 「【0016】…本発明の殺ノロウイルス組成物におけるプロアントシアニジン含有量は、0.002重量%~0.1重量%であり、好ましくは0.005重量%~0.02重量%である。プロアントシアニジン含有量が0.002重量%未満であると、十分な殺ノロウイルス効果が得られず、また、0.1重量%を超えると、組成物の安定性が低下し、着色による影響が大きくなるため、好ましくない。」 摘示d:参考例1~3、5、6、実施例4、7の処方 「【0030】[参考例1~3、5、6、実施例4、7]表1に示す処方に従い、ブドウ種子抽出物およびグリセリン脂肪酸エステルをそれぞれイオン交換水またはエタノール溶液に添加、溶解し、殺ノロウイルス組成物を調製した。なお、ブドウ種子抽出物としては、「グラヴィノール(登録商標)T」(キッコーマンバイオケミファ株式会社製、プロアントシアニジン含有量=29%)を、グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンモノカプリン酸エステル(「サンソフト(登録商標)760」、太陽化学株式会社製)を用いた。参考例1の殺ノロウイルス組成物のpHを測定したところ、4.88であった。また、実施例7の殺ノロウイルス組成物については、乳酸および乳酸ナトリウムにより、pHを7.0とした。 【0031】【表1】 」 摘示e:良好なウイルス感染抑制効果が認められる範囲 「【0032】[試験例1]培養系が確立しているネコカリシウイルスをノロウイルスの代替として用い、50%培養細胞感染濃度法(以下TCID50法)によりウイルス感染抑制効果を評価した。… 【0035】【表2】 *1;「<0.5」は、検出限界以下であることを示す。 *2;試料と作用させたウイルスのlogTCID50/mL値を0.5として算出した。 【0036】表2より明らかなように、参考例1~3、5、6、および本発明の実施例4、7の各組成物においては、1分間の作用でも3.0以上のΔlogTCID50/mL値が得られており、良好なウイルス感染抑制効果が認められた。また、ブドウ種子抽出物の濃度依存的に、ウイルス感染価の減少する傾向が見られた。」 摘示f:ノロウイルスに対する効果 「【0039】[試験例3]ノロウイルスに対する本発明の組成物の効果を、下記の通りRT-PCR法により検討した。ノロウイルスは実験室的に培養することができないため、ノロウイルス患者の糞便から粗精製されたノロウイルスサンプル(ウイルス力価はおよそ8.0と推定される)をPBSで10倍希釈して供試ノロウイルス液とし、試料液とウイルス液とをそれぞれ0.1mLずつ等量混合して1分間ローテーターで作用させた。…結果を図2に示す。 【0040】…図2より、実施例4の組成物を作用させた場合(5)および、参考例2の組成物を作用させた場合(6)において、増幅されたノロウイルス遺伝子(約340bp)が消失していることが確認された。また、参考例3の組成物を作用させた場合(4)には、ノロウイルス遺伝子のバンドは確認されるもののかなり薄く、今回行ったRT-PCR法による評価において、ノロウイルス遺伝子が検出限界以下となるには至らなかったが、増幅されたノロウイルス遺伝子の顕著な減少が認められた。」 第4 取消理由通知の概要 平成30年1月17日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 〔理由1〕 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に照らして、訂正前の請求項1及び3~6に記載の発明に係る特許の「0.005重量%~0.02重量%」という比較的に低濃度のプロアントシアニジン含有量の数値範囲の全てが、上記『良好な殺ヒトノロウイルス効果を発揮し得る殺ヒトノロウイルス組成物の提供』という課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるとは認められない。 したがって、訂正前の請求項1及びその従属項の請求項3~6の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載された範囲のものではないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、訂正前の請求項1及び3~6に記載の発明に係る特許は、特許法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 第5 当審の判断 1.理由1(サポート要件)について (1)サポート要件の適合要件 一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人…が証明責任を負うと解するのが相当である。…発明の詳細な説明に,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に,具体例を開示せず,本件出願時の当業者の技術常識を参酌しても,特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないのに,特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することによって,その内容を特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで拡張ないし一般化し,明細書のサポート要件に適合させることは,発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されないというべきである。』とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。 (2)特許請求の範囲及び明細書の記載 訂正後の請求項1及び3~6の記載は、上記「第3」の「1.訂正後の請求項1~6に係る発明」の項に示したとおりである。 また、訂正後の明細書には、上記「第3」の「2.訂正後の明細書の記載」の項に示したとおりの記載がなされている。 (3)本1発明及び本3~6発明の解決しようとする課題 本件特許明細書の段落0009(摘示a)を含む明細書全体の記載からみて、本1発明及び本3~6発明の解決しようとする課題は『良好な殺ヒトノロウイルス効果を発揮し得る殺ヒトノロウイルス組成物の提供』にあるものと認められる。 (4)有効濃度について ア.本件特許の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載 本件特許の請求項1に記載された「0.0058重量%のプロアントシアニジンを…含有してなる、殺ヒトノロウイルス組成物」という発明特定事項に対して、本件特許明細書の段落0030~0031(摘示d)には、プロアントシアニジン含有量が29%であるブドウ種子抽出物として「グラヴィノール(登録商標)T」を、0.02%(プロアントシアニジンの含有量に換算すると0.02%×29%=0.0058重量%)の含有量で配合した「実施例4」及び「実施例7」の「殺ウイルス組成物」が記載されている。 そして、本件特許明細書の段落0039~0040(摘示f)には、RT-PCR法によりノロウイルスに対する効果を検討した「試験例3」の結果として、プロアントシアニジン濃度が0.0058重量%である上記「実施例4」の「殺ノロウイルス組成物」を作用させた場合に、増幅されたノロウイルス遺伝子が消失していることが確認されたことが記載されている。 イ.試験例3(ヒトノロウイルスに対する試験結果) 本件特許明細書の段落0039~0040には「試験例3」として、ウイルス力価が「8.0」と推定されるヒトノロウイルスのサンプルに対して、プロアントシアニジン濃度が「0.0058重量%」である実施例4の組成物を「1分間」作用させた場合に、増幅されたノロウイルス遺伝子が消失していることが確認されたという試験結果が記載されているので、プロアントシアニジン濃度が「0.0058重量%」である組成物を、ウイルス力価が「8.0」である「ヒトノロウイルス」に対して「1分間」作用させた場合においては、上記『良好な殺ヒトノロウイルス効果を発揮し得る殺ヒトノロウイルス組成物の提供』という課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあるものと認められる。 (5)サポート要件のまとめ 以上総括するに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に照らして、本1発明及び本3~6発明の「0.0058重量%」という比較的に低濃度のプロアントシアニジン含有量の数値範囲が、上記『良好な殺ヒトノロウイルス効果を発揮し得る殺ヒトノロウイルス組成物の提供』という課題を解決できると当業者が認識できる範囲にあると認められる。 したがって、訂正後の請求項1及びその従属項の請求項3~6の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載された範囲のものといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合する。 そして、本1発明及び本3~6発明に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。 2.特許異議申立人の主張等について 特許異議申立人は、証拠として甲第1~8号を提出し、本件特許の請求項1~6に係る発明は特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消す旨の決定がなされるべきものであるとの主張をしたが、特許異議申立人が提出した甲第1~8号証には、本1発明及び本3~6発明で用いられている「グラヴィノール(登録商標)T」について、示唆を含めて記載がないので、特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、本1発明及び本3~6発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項2は訂正により削除されているので、請求項2に係る特許についての申立てを却下する。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本1発明及び本3~6発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に、本1発明及び本3~6発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求前の請求項2は削除されているので、請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700528

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