特許異議申立
2016-700463
紫外赤外線カット用光学フィルタ
- 審判番号
- 2016-700463
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2010-290427外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月23日
- 審決日
- 2017年07月24日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.121-YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B) / P1651.561-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第128条、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5823119号発明「紫外赤外線カット用光学フィルタ」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5823119号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第5823119号の請求項1ないし4,6ないし9に係る特許を維持する。
特許第5823119号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許5823119号の請求項1~請求項9に係る特許(以下,それぞれ「本件特許1」~「本件特許9」といい,総称して「本件特許」という。)についての特許出願は,特願2010-290427号として平成22年12月27日に出願され,平成27年10月16日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について,平成27年11月25日に特許掲載公報が発行されたところ,発行の日から6月以内である平成28年5月23日に,特許異議申立人 石井良夫から特許異議の申立がされた(異議2016-700463号)。
その後の手続の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成28年 7月22日付け:審尋
平成28年 8月12日差出:回答書
平成28年 9月 8日付け:取消理由通知書
平成28年11月11日差出:訂正請求書
平成28年11月11日差出:意見書(特許権者)
平成28年11月17日付け:通知書
(特許法120条の5第5項の規定による,訂正請求があった旨の通知)
平成28年12月26日差出:意見書(特許異議申立人)
平成29年 1月25日付け:訂正拒絶理由通知書
平成29年 2月14日差出:意見書(特許権者)
平成29年 3月 6日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成29年 4月13日差出:訂正請求書
(以下,この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。なお,特許法120条の5第7項の規定により,平成28年11月11日差出の訂正請求書による訂正の請求は,取り下げられたものとみなす。)
平成29年 4月13日差出:意見書(特許権者)
平成29年 4月18日付け:通知書
(特許法120条の5第5項の規定による,訂正請求があった旨の通知)
平成29年 5月17日差出:意見書(特許異議申立人)
(この意見書を,以下「特許異議申立人意見書」という。)
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨及び訂正事項
(1) 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は,「特許第5823119号の明細書,特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」というものである。
(2) 訂正事項
本件訂正請求において特許権者が求める訂正事項は,以下のとおりである。なお,下線は訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の記載を,
「 透明基板上に積層される複数の構造体を備え,
該複数の構造体は,光吸収構造体と近赤外光反射構造体と紫外光反射構造体とを有し
前記光吸収構造体は,色素を含有する1つの層構造によって形成され,近赤外波長領域のうち近赤外吸収波長領域の光を吸収するとともに,紫外波長領域のうち紫外吸収波長領域の光を吸収する光吸収特性を有し,当該光吸収特性は光吸収の極大点であるピークを含み,かつ前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの光吸収率は前記紫外吸収波長領域における光吸収の極大点であるピークの光吸収率よりも大きく,
前記近赤外光反射構造体は,可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記近赤外波長領域の一部の光を反射して前記近赤外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第1遷移波長領域を有し,
前記紫外光反射構造体は,可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記紫外波長領域の一部の光を反射して前記紫外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第2遷移波長領域を有し,
前記光吸収構造体の前記近赤外吸収波長領域と,前記近赤外光反射構造体の前記第1遷移波長領域とが重なっているとともに,前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第1遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記近赤外光反射構造体とが協働して,前記第1遷移波長領域の光を減衰させ,
前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域と,前記紫外光反射構造体の前記第2遷移波長領域とが重なっているとともに,前記紫外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第2遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記紫外光反射構造体とが協働して,前記第2遷移波長領域の光を減衰させることを特徴とする紫外赤外線カット用光学フィルタ。」
と訂正する(請求項1の記載を引用して記載された請求項2~請求項9についても,請求項1の記載の訂正に伴い連動して訂正する。)。
なお,訂正事項1による訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。
「 透明基板上に積層される複数の構造体を備え,
該複数の構造体は,光吸収構造体と近赤外光反射構造体と紫外光反射構造体とを有し
前記光吸収構造体は,色素を含有する1つの層構造によって形成され,近赤外波長領域を吸収する近赤外吸収波長領域に対応したピーク及び紫外波長領域を吸収する紫外吸収波長領域に対応したピークをそれぞれ有し,かつ前記近赤外吸収波長領域に対応したピークは前記紫外吸収波長領域に対応したピークよりも光吸収率が大きい光吸収特性を有し,
前記近赤外光反射構造体は,少なくとも前記近赤外波長領域の一部を反射して前記近赤外波長領域の阻止領域へ向かう遷移波長領域を有し,
前記紫外光反射構造体は,少なくとも前記紫外波長領域の一部を反射して前記紫外波長領域の阻止領域に向かう遷移波長領域を有し,
前記光吸収構造体のうち前記近赤外吸収波長領域に対応したピークと前記近赤外光反射構造体の前記近赤外波長領域の阻止領域へ向かう遷移領域とが実質的に重なり,
前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域に対応したピークと,前記紫外光反射構造体の前記紫外波長領域の阻止領域に向かう遷移領域とが実質的に重なることを特徴とする紫外赤外線カット用光学フィルタ。」
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5の記載を削除する(請求項5の記載を引用して記載された請求項6~請求項9についても,請求項5の記載の削除に伴い連動して訂正する。)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の記載を,
「 前記透明基板に対し何れの面からも前記光吸収構造体に入射する紫外線を遮蔽するようにしたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つの請求項に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタ。」
と訂正する(請求項6の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても,請求項6の記載の訂正に伴い連動して訂正する。)。
なお,訂正事項3による訂正前の特許請求の範囲の請求項6の記載は,次のとおりである。
「 前記透明基板に対し何れの面からも前記光吸収構造体に入射する紫外線を遮蔽するようにしたことを特徴とする請求項1~5の何れか1つの請求項に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタ。」
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7の記載を,
「 撮像光学系と,請求項1~4,6のいずれか1つの請求項に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタと,前記撮像光学系に入射して前記紫外赤外線カット用光学フィルタを透過した光を電気信号に変換する撮像素子とから成ることを特徴とする撮像装置。」
と訂正する(請求項7の記載を引用して記載された請求項8及び請求項9についても,請求項7の記載の訂正に伴い連動して訂正する。)。
なお,訂正事項4について,訂正請求書には「何れか1つの請求項」と記載されているが,請求の趣旨に鑑みて,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載(いずれか1つの請求項)のとおり訂正するものと認める(以下同様。)。また,訂正事項4による訂正前の特許請求の範囲の請求項7の記載は,次のとおりである。
「 撮像光学系と,請求項1~6に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタと,前記撮像光学系に入射して前記紫外赤外線カット用光学フィルタを透過した光を電気信号に変換する撮像素子とから成ることを特徴とする撮像装置。」
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8の記載を,
「 前記紫外赤外線カット用光学フィルタの前記光吸収構造体は前記第1遷移波長領域を有する前記近赤外光反射構造体よりも前記撮像素子側に配置したことを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。」
と訂正する(請求項8の記載を引用して記載された請求項9についても,請求項8の記載の訂正に伴い連動して訂正する。)。
なお,訂正事項5による訂正前の特許請求の範囲の請求項8の記載は,次のとおりである。
「 前記紫外赤外線カット用光学フィルタの前記光吸収構造体は前記遷移波長領域を有する前記近赤外光反射構造体よりも前記撮像素子側に配置したことを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。」
カ 訂正事項6
明細書の段落【0018】の記載を,
「 上記目的を達成するための本発明に係る紫外赤外線カット用光学フィルタは,透明基板上に積層される複数の構造体を備え,該複数の構造体は,光吸収構造体と近赤外光反射構造体と紫外光反射構造体とを有し 前記光吸収構造体は,色素を含有する1つの層構造によって形成され,近赤外波長領域のうち近赤外吸収波長領域の光を吸収するとともに,紫外波長領域のうち紫外吸収波長領域の光を吸収する光吸収特性を有し,当該光吸収特性は光吸収の極大点であるピークを含み,かつ前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの光吸収率は前記紫外吸収波長領域における光吸収の極大点であるピークの光吸収率よりも大きく,前記近赤外光反射構造体は,可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記近赤外波長領域の一部の光を反射して前記近赤外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第1遷移波長領域を有し,前記紫外光反射構造体は,可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記紫外波長領域の一部の光を反射して前記紫外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第2遷移波長領域を有し,前記光吸収構造体の前記近赤外吸収波長領域と,前記近赤外光反射構造体の前記第1遷移波長領域とが重なっているとともに,前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第1遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記近赤外光反射構造体とが協働して,前記第1遷移波長領域の光を減衰させ,前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域と,前記紫外光反射構造体の前記第2遷移波長領域とが重なっているとともに,前記紫外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第2遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記紫外光反射構造体とが協働して,前記第2遷移波長領域の光を減衰させることを特徴とする。」
と訂正する。
なお,訂正事項6による訂正前の明細書の段落【0018】の記載は,次のとおりである。
「 上記目的を達成するための本発明に係る紫外赤外線カット用光学フィルタは,透明基板上に積層される複数の構造体を備え,該複数の構造体は,光吸収構造体と近赤外光反射構造体と紫外光反射構造体とを有し前記光吸収構造体は,色素を含有する1つの層構造によって形成され,近赤外波長領域を吸収する近赤外吸収波長領域に対応したピーク及び紫外波長領域を吸収する紫外吸収波長領域に対応したピークをそれぞれ有し,かつ前記近赤外吸収波長領域に対応したピークは前記紫外吸収波長領域に対応したピークよりも光吸収率が大きい光吸収特性を有し,前記近赤外光反射構造体は,少なくとも前記近赤外波長領域の一部を反射して前記近赤外波長領域の阻止領域へ向かう遷移波長領域を有し,前記紫外光反射構造体は,少なくとも前記紫外波長領域の一部を反射して前記紫外波長領域の阻止領域に向かう遷移波長領域を有し,前記光吸収構造体のうち前記近赤外吸収波長領域に対応したピークと前記近赤外光反射構造体の前記近赤外波長領域の阻止領域へ向かう遷移領域とが実質的に重なり,前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域に対応したピークと,前記紫外光反射構造体の前記紫外波長領域の阻止領域に向かう遷移領域とが実質的に重なることを特徴とする。」
2 訂正の適否
以下,本件訂正請求による訂正前の請求項1を,「訂正前請求項1」といい,訂正前請求項1に係る発明を「訂正前発明1」という。また,他の請求項及び訂正後についても同様とする。
(1) 特許法120条の5第4項について
本件訂正請求は,特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である,〔請求項1~請求項9〕ごとにされたものである。
したがって,本件訂正請求は,特許法120条の5第4項の規定に適合する。
(2) 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は,訂正前発明1の構成を明らかにするとともに,訂正後発明1を発明の詳細な説明の【0046】,図4,図9等に記載された発明に整合させ,さらに,訂正前請求項1に記載された用語を統一する訂正である。この点は,請求項1の記載を引用して記載された請求項2~9との関係においても同様である。
したがって,訂正事項1による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項1による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項2について
訂正事項2による訂正は,請求項を削除する訂正であり,この点は,請求項5の記載を引用して記載された請求項6~請求項9との関係においても同様である。
したがって,訂正事項2による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項2による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(4) 訂正事項3及び訂正事項4について
訂正事項3及び訂正事項4による訂正は,訂正事項2による訂正と整合するように,請求項6及び請求項7の引用記載を訂正するものである。この点は,請求項6の記載を引用して記載された請求項7~請求項9,及び請求項7の記載を引用して記載された請求項8及び請求項9との関係においても同様である。
したがって,訂正事項3及び訂正事項4による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項3及び訂正事項4による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(5) 訂正事項5について
訂正事項5による訂正は,訂正事項1による訂正と整合するように,請求項8に記載された用語を訂正するものである。この点は,請求項8の記載を引用して記載された請求項9との関係においても同様である。
したがって,訂正事項5による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項5による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
(6) 訂正事項6について
まず,訂正事項6による訂正は,訂正事項1による訂正と整合するように,段落【0018】の記載を訂正するものである。
したがって,訂正事項6による訂正は,特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。また,訂正事項6による訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。
次に,訂正事項6は,訂正事項1による訂正との整合を図るものであるから,訂正事項6による訂正に係る請求項は,請求項1,及び請求項1の記載を引用して記載された,請求項2~請求項4,請求項6~請求項9である。これに対して,本件訂正請求は,特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である,〔請求項1~請求項9〕ごとにされたものである。
そうしてみると,本件訂正請求は,願書に添付した明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われたものである。
(7) 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は,概略,「前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域と,前記紫外光反射構造体の前記第2遷移波長領域とが重なっているとともに,前記紫外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第2遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記紫外光反射構造体とが協働して,前記第2遷移波長領域の光を減衰させる」についての訂正は,特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に規定する要件を満たさないと主張する。
しかしながら,上記訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項から自明な事項の範囲内においてしたものであるから,特許異議申立人の意見は採用できない。
(8) 小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法120条の5第2項1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。また,本件訂正請求は,同法120条の5第4項及び同条9項において準用する同法126条4項の規定に適合する。
したがって,訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 取消理由についての判断
1 本件特許発明について
前記「第2」のとおり,本件訂正請求による訂正を認めることとなった。したがって,特許法128条の規定により,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項4,請求項6~請求項9に係る発明(以下,それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明4」,「本件特許発明6」~「本件特許発明9」といい,総称して「本件特許発明」という。)は,本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項4,請求項6~請求項9に記載された,次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
透明基板上に積層される複数の構造体を備え,
該複数の構造体は,光吸収構造体と近赤外光反射構造体と紫外光反射構造体とを有し
前記光吸収構造体は,色素を含有する1つの層構造によって形成され,近赤外波長領域のうち近赤外吸収波長領域の光を吸収するとともに,紫外波長領域のうち紫外吸収波長領域の光を吸収する光吸収特性を有し,当該光吸収特性は光吸収の極大点であるピークを含み,かつ前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの光吸収率は前記紫外吸収波長領域における光吸収の極大点であるピークの光吸収率よりも大きく,
前記近赤外光反射構造体は,可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記近赤外波長領域の一部の光を反射して前記近赤外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第1遷移波長領域を有し,
前記紫外光反射構造体は,可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記紫外波長領域の一部の光を反射して前記紫外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第2遷移波長領域を有し,
前記光吸収構造体の前記近赤外吸収波長領域と,前記近赤外光反射構造体の前記第1遷移波長領域とが重なっているとともに,前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第1遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記近赤外光反射構造体とが協働して,前記第1遷移波長領域の光を減衰させ,
前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域と,前記紫外光反射構造体の前記第2遷移波長領域とが重なっているとともに,前記紫外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第2遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記紫外光反射構造体とが協働して,前記第2遷移波長領域の光を減衰させることを特徴とする紫外赤外線カット用光学フィルタ。
【請求項2】
前記紫外光反射構造体は前記近赤外光反射構造体との間に前記光吸収構造体を挟んで配置したことを特徴とする請求項1に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタ。
【請求項3】
前記近赤外光反射構造体の少なくとも1つは紫外線遮蔽機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタ。
【請求項4】
前記紫外光反射構造体は複数の無機薄膜を積層したことを特徴とする請求項1~3の何れか1つの請求項に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタ。
【請求項6】
前記透明基板に対し何れの面からも前記光吸収構造体に入射する紫外線を遮蔽するようにしたことを特徴とする請求項1~4の何れか1つの請求項に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタ。
【請求項7】
撮像光学系と,請求項1~4,6のいずれか1つの請求項に記載の紫外赤外線カット用光学フィルタと,前記撮像光学系に入射して前記紫外赤外線カット用光学フィルタを透過した光を電気信号に変換する撮像素子とから成ることを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
前記紫外赤外線カット用光学フィルタの前記光吸収構造体は前記第1遷移波長領域を有する前記近赤外光反射構造体よりも前記撮像素子側に配置したことを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記撮像光学系中に,前記紫外赤外線カット用光学フィルタを駆動する駆動部材を備えた請求項7又は8に記載の撮像装置。」
2 取消理由の概要
本件訂正請求による訂正前の,本件特許1~本件特許9に対して,平成29年3月6日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は,以下のとおりである。
(1) 特許法36条6項2号について
請求項1には,「ピーク」と「遷移領域」の関係について,「実質的に重なり」と記載されている。したがって,訂正前発明1~訂正前発明9は,明確であるということができない。
したがって,本件特許1~本件特許9は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきものである。
(2) 特許法36条6項1号について
本件特許の発明の詳細な説明には,訂正前発明5のような構成を具備した「紫外赤外線カット用光学フィルタ」は記載されてない。したがって,訂正前発明5及び訂正前発明6~訂正前発明9(訂正前発明5の構成を含むもの)は,発明の詳細な説明に記載したものであるということができない。
したがって,本件特許6~本件特許9は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきものである。
(3) 特許法17条の2第3項について
前記(1)のとおりであるから,訂正前発明1の「前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域に対応したピークと,前記紫外光反射構造体の前記紫外波長領域の阻止領域に向かう遷移領域とが実質的に重なる」構成については,本件特許の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した範囲内の事項であるということができない。訂正前発明2~訂正前発明9についても同様である。
したがって,本件特許1~本件特許9は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから,取り消されるべきものである。
3 取消理由に対する当合議体の判断
(1) 特許法36条6項2号について
本件訂正請求により,請求項1の「実質的に重なり」という記載は改められ,訂正後請求項1に記載のとおり,「ピーク」と「遷移領域」の関係は明らかとなった。
本件特許1~本件特許9は,特許法128条の規定により,もはや同法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということができない。
(2) 特許法36条6項1号について
本件訂正請求により,請求項5は削除された。また,訂正後請求項6~訂正後請求項9は,請求項5を引用しないものとなった。
本件特許6~本件特許9は,特許法128条の規定により,もはや同法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということができない。
(3) 特許法17条の2第3項について
本件訂正請求により,請求項1の「実質的に重なり」という記載は改められ,訂正後請求項1に記載のとおり,「ピーク」と「遷移領域」の関係は明らかとなった。
本件特許1~本件特許9は,特許法128条の規定により,もはや同法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるということができない。
4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由(進歩性)について
(1) 甲1の記載
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1(特表2005-526976号公報)には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものである。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディテクターと併用するのに好適なフィルターであって,
近赤外波長の帯域にわたり法線入射光を実質的に反射しかつ可視波長にわたり法線入射光を実質的に透過する干渉素子と,
可視波長にわたり非一様に光を吸収する吸収素子と,を備え,
ここで,該吸収素子は,高分子マトリックス中に分散された着色剤を含み,
該ディテクターと組み合わせたときに,相対応答がヒトの眼の視覚応答とほぼ同じであるディテクターシステムを生成するフィルター。」
イ 「【0002】
本発明は,所望のスペクトル応答を生成するフィルターを備えたディテクターシステムに関する。より詳細には,本発明は,ヒトの眼の分光応答度と実質的に一致する分光応答度を有するディテクターシステムおよびそのためのフィルターに関する。」
ウ 「【背景技術】
【0003】
エレクトロニックディテクターは,情景または被写体の輝度の測定値を提供するために,写真および関連分野で長い間使用されてきた。測定値が少なくともそのままでヒトの眼により感知される輝度を表すように,硫化カドミウム光電セルのようなディテクターが使用されてきた。これらのディテクターの分光応答度は,可視領域にピークを有し,少なくともおおざっぱにいえば,ヒトの眼の応答度とほぼ同じである。しかしながら,そのようなディテクターは,多くの用途に理想的であるとはいえない特性を有する。
【0004】
つい最近では,ヒトの眼の応答とより良好な一致を示すように,光フィルターが他のディテクターと併用されるようになってきている。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヒトの眼の応答をシミュレートすることのできる他のディテクターシステム,とりわけ,良好な帯域外除去性(すなわち,近赤外および紫外の波長における応答が無視できる),可視波長における所望の応答への良好な一致性,および良好な耐候性を備えたシステムに対する必要性が依然として存在する。」
エ 「【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は,組み合わされたフィルター/ディテクターシステムがヒトの眼の応答とよく一致するように,ディテクターの前に配置されたフィルターが光を選択的に透過する,ディテクターシステムを開示する。フィルターは,干渉素子と吸収素子とを備える。吸収素子は,好ましくは,1種以上の特別に調製された顔料または他の着色剤を分散してなる高分子フィルムである。また,干渉素子は,好ましくは高分子であり,いくつかの実施形態では,共押出ポリマー多層フィルムである。干渉素子は,法線入射時,可視領域において高い平均透過率(少なくとも約50%,より好ましくは少なくとも約70%)を提供し,かつ近赤外領域中に伸びた反射帯域全体にわたり低い透過率(約5%未満,より好ましくは約2%未満または1%未満)を提供する。干渉素子の反射帯域は,近赤外光に対するディテクターシステムの感度が無視できるように,近赤外中に十分遠くまで伸びる。吸収素子は,可視域で非一様な透過(好ましくは,干渉素子と組み合わせたときにスペクトルの可視部においてほぼヒトの眼の応答をもつディテクターシステムを提供するのに好適な鐘形特性を有する透過)を提供する1種以上の所定の着色剤を有する。
【0011】
フィルターは,シリコンフォトダイオードのような半導体フォトダイオードと併用すべく作製することができる。高分子干渉フィルムに適用されるかまたはディテクター表面に適用される吸収性フィルムを含めて,さまざまなフィルター構成を開示する。吸収素子はまた,好適な接着剤層により干渉素子に固着させることができるか,または干渉素子の1層以上の個別層中に組み込むことができる。」
オ 「【0016】
図1は,ディテクターシステム100の実施形態を示している。ディテクターシステムは,フィルターアセンブリー110とディテクターアセンブリー112とを備える。フィルターアセンブリー110は,少なくとも2つのアパーチャー116,118を有するフィルターハウジング114を備える。アパーチャー116は,フィルター素子120を収容するように構成される。一構成では,ハウジング114は,フィルター材料の既存のストリップの周りに射出成形された不透過性熱可塑性材料で作製される。」
(当合議体注:図1は以下の図である。)
カ 「【0019】
図2に示されるように,フィルター素子120は,好ましくは,2種の主コンポーネント,すなわち,(1)反射干渉素子121aと(2)吸収素子121bとから構成された比較的薄いポリマー系フィルムである。素子は,好ましくは,設計に柔軟性をもたせるために,かつ低重量および小サイズとの適合性をもたせるために,フィルムまたはフィルムラミネートの形態をとる。これら観点は,いくつかのディテクターシステム用途で重要な考慮点になりうる。これに関連して,「フィルム」とは,その厚さが一般的には約0.25mm(1000分の10インチまたは「ミル」)以下である伸長された光学体を意味する。いくつかの場合には,フィルムは,好適な反射性もしくは透過性を有する剛性基材のような他の光学体または他のフィルムに接合または適用することができる。フィルムはまた,自立性であるかまたは他の可撓性層に接合されているかにかかわらず,物理的に可撓性の形態をとることができる。本明細書中で使用される「フィルム体」という用語は,単独であるかまたは他のコンポーネントと組み合わされているかにかかわらず,フィルムを意味するものとする。
【0020】
素子121a,121bはいずれも,アパーチャー116を完全に満たし,ディテクターアクティブ領域122を覆うかまたは他の形でその上に延在する。アパーチャーを使用しないことも,ディテクターアクティブ領域よりも小さいアパーチャー使用することも可能である。いくつかの実施形態では,素子121a,121bは,互いに共延的でありうる。他の実施形態では,吸収素子121bは,ディテクターのアクティブ領域122上に直接コーティングしうるか,または干渉素子121aがアパーチャー116を覆った状態で所定の位置にディテクターを保持する光透過性ポッティング材料中に混合しうる。アパーチャーを使用するかしないかにかかわらず,コンポーネントは,ディテクターアクティブ領域に当たる実質的にすべて光が干渉素子と吸収素子の両方を透過した光となるように配置される。
【0021】
好ましくは,干渉素子121aは,典型的には数十層もしくは数百層の交互ポリマー層の共押出を行った後,場合により,多層押出物を1つ以上の多重化ダイに通し,次に,押出物を延伸するかもしくは他の方法で配向させて最終フィルムを形成することより作製される多層高分子フィルム(またはフィルム体)である。得られるフィルムは,主としてスペクトルの近赤外領域に置かれた反射帯域を提供するように厚さおよび屈折率の調節がなされた典型的には数十層もしくは数百層の個別マイクロ層から構成される。」
(当合議体注:図2は以下の図である。)
キ 「【0027】
干渉素子121aは,他の選択肢として,マイクロ層(たとえば,高屈折率マイクロ層用にはTiO2および低屈折率マイクロ層用にはSiO2)の屈折率が等方的であるより多くの従来の真空堆積無機多層フィルムを備えることができる。
…(省略)…
【0029】
どの技術を選択するかに関係なく,干渉素子121aは,主として近赤外領域にある分光帯域で法線入射光を実質的に反射し,かつ可視波長領域のほとんどまたは実質的にすべてにわたり法線入射光を実質的に透過するように作製される。干渉素子は,好ましくは,可視領域において少なくとも約50%,より好ましくは少なくとも約70%の平均透過率を提供し,かつ近赤外領域中に伸びた反射帯域全体にわたり約5%未満,より好ましくは約2%未満または1%未満の透過率を提供する。シリコンフォトダイオードを利用するディテクターシステムでは,5%,2%,および1%の透過率限界は,好ましくは,約800nm~約1100nm,または約700nm~約1200nmの範囲が対象となる。多くの場合,干渉素子の吸収は無視できるので,所与の波長の反射パーセントと透過パーセントとを合せると約100%になる。
【0030】
フィルター素子120の他の主コンポーネントは,吸収素子121bである。これもまた,好ましくは,製造を容易にするためにかつ設計に柔軟性をもたせるために,ポリマー系のフィルムまたはフィルム体である。吸収素子121bは,1種以上の着色剤を含有する。着色剤としては,可視波長にわたり非一様に吸収する顔料または染料を挙げることができる。さらに,好適な着色剤はヒトの眼の感度(たとえば,少なくとも可視波長領域にわたる標準的明所視視覚応答V(λ))とよく一致する効果的な応答度を有するディテクターシステムを提供しうることが判明している。」
ク 「【0039】
好ましくは,吸収素子121bは,目標関数とよく一致する可視領域の性能を有するディテクターシステムに提供する主要なシステムコンポーネントである。干渉素子121aは,これとは対照的に,その透過率が可視域全体にわたり比較的一定しているので,可視領域におけるディテクターシステムの性能にそれほど影響を及ぼさない。しかしながら,干渉素子121aは,望ましくは,近赤外領域で主要な影響を及ぼすことにより,その波長領域におけるディテクターアセンブリー112の高い感度を打ち消すブロッキング機能(低透過率,高反射率)を提供する。この構成の利点は,近赤外ブロッキングと,ヒトの眼の応答に一致させるのに必要な可視領域における正確な変動(鐘形関数)と,の両方を提供する干渉素子よりも,干渉素子121aのほうが,はるかに単純でかつロバスト性のある設計を行いうることである。単純でロバスト性のある設計が行えるので,干渉素子の歩留まりが高くなり,廃棄物が減少する。好ましい構成の他の利点は,オフアクシス性能がより良好なことである。吸収素子の透過スペクトルは,干渉素子の透過スペクトルよりも,入射角の関数として波長シフトを起こしにくい。広幅の入射光円錐でディテクターシステム100を照明する光学系では,このことの重要性は増大する。干渉素子の近赤外反射帯域が可視スペクトルの赤色部分に波長シフトしても,可視領域全体にわたり所要の応答を提供するように使用される鐘形関数が同一の波長シフトを起こしたときよりも,性能に及ぼす影響は少ない。したがって,可視領域の鐘形関数を主として吸収コンポーネントに関連づけ,可視域以外(近赤外および場合により紫外)の光の除去を主として干渉リフレクターに関連づけることが有利である。
【0040】
図3は,ディテクターシステム100の全分光応答への種々のシステムコンポーネントの寄与を理想化された形で示している。曲線200は,典型的なシリコンフォトダイオードディテクターの分光応答度(たとえば,アンペア/ワット単位)を表している。そのようなディテクターは,可視領域でスペクトルの長波長(赤色)端に向かって斜めに伸び,約1100~1200nmの間で急激に低下して無視できるようになるまで近赤外中で増大し続ける応答を有する。ディテクターはまた,紫外領域(約400nm未満)でも無視できない応答度を有しうる。曲線202は,吸収素子121bの透過パーセントを表している。好ましくは,そのような層は,緑色顔料と黄色顔料の両方を分散して含む。曲線202は,可視領域でほぼ鐘形応答を提供するだけでなく,ディテクター応答度200がかなり大きい他の波長で(不適切に)顕著な光漏れを呈する。図示されているように,紫外におけるいくらかの漏れが珍しいことではないのと同じように,近赤外における大量の光漏れも,珍しいことではない。法線入射時における干渉素子の透過パーセントを表す曲線204は,短波長帯域端204aおよび長波長帯域端204bにより境界づけられた強い反射帯域を有する。反射帯域の高反射率は,帯域のほとんどにわたり,低い透過パーセント,好ましくは約5%未満,より好ましくは約2%未満,さらには1%未満の透過パーセントを提供する。半値透過点または半値反射点として測定される帯域端204aは,先に説明した理由で,好ましくは可視領域に近接し,好ましくは約600~850nm,場合により約630~770nmに位置する。帯域端204aが700nmを実質的に越えて設定される場合,米国特許第6,049,419号明細書(ホイートリー(Wheatley)ら)(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されているような追加のアブソーバーまたはリフレクターを,吸収素子,干渉素子,またはそれらの任意の組合せに組み入れて,約700nmと帯域端204aとの間のギャップで法線角の近赤外光をブロッキングすることができる。
【0041】
半値透過点または半値反射点として測定される長波長帯域端204bは,好ましくは,ディテクターの応答が減少する長波長領域に近接し,そしてディテクター応答度が赤外領域中にどの程度まで伸びているかに依存して,斜入射光による角度シフトを許容し製造許容差に適合するように,好ましくは,ディテクター応答度が無視できるようになる波長よりも少なくとも約50nm長波長側に置かれる。シリコンフォトダイオードの場合,帯域端240bは,好ましくは約1150~1200nmの間,場合により約1200~1350nmに置かれる。しかしながら,干渉素子が1/4波長スタックまたは顕著な三次反射を生成する他の構造を含んでいれば,より高次の反射帯域が紫外領域に存在し(図3に部分的に示されている),長波長帯域端240bが約1200nm以上に位置すれば,可視スペクトルの青色端に部分的に入り込む可能性があることに留意されたい。三次以上の反射帯域は,紫外領域におけるディテクターシステム応答を許容しうる程度に低いレベルに保持するのに役立ちうる(吸収素子がその波長領域で顕著な透過率を有する場合)。
…(省略)…
【0043】
ディテクターシステム応答(上記のD(λ))は,曲線206により表される。その曲線は,ディテクター表面に当たるまでの入射光の経路中のすべてのシステムコンポーネントの分光応答(この例では,曲線200,202,および204である)の積である。曲線206(およびシステム応答D(λ))はまた,好ましくは規格化される。すなわち,最大値が1になるように換算定数を掛ける。その結果として,曲線206は,好ましくは,ヒトの眼の明所視応答または類似の目標応答とのよい一致を示す。」
ケ 「【0052】
素子121a,121bが,異なるコンポーネントとして保持される場合,吸収素子は,光路中で干渉素子の前に配置することができるか(すなわち,ディテクターアクティブ領域に向かって伝播する光は,干渉素子を透過する前に吸収素子を透過する),またはその逆に配置することができる。吸収素子が干渉素子の前にある場合,ディテクターシステムにより反射される光が少なくなるので,迷光が減少する。干渉素子が吸収素子の前にある場合,光フィルターに吸収される光の全量が少なくなるので,長寿命化に有益でありうる。」
コ 「【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】ディテクターシステムの斜視図である。
【図2】ディテクターシステム用のフィルターアセンブリーの断面図である。ここで,ディテクターアセンブリーは,完全に係合した状態でかつ仮想的に示されている。
【図2a】図2に類似するがそれとは別のフィルターアセンブリーの断面図である。
【図2b】図2に類似するがそれとは別のフィルターアセンブリーの断面図である。
【図3】ディテクターシステムの種々のコンポーネントの相対分光透過または相対分光応答のグラフである。」
(当合議体注:図3は,以下の図である。)
(2) 甲1発明
甲1には,特許請求の範囲の請求項1に記載された「フィルター」をディテクターと組み合わせたディテクターシステムの分光応答が,図3に示されたものである,次の発明が記載されている(以下「甲1発明」という。)。
「 近赤外波長の帯域にわたり法線入射光を実質的に反射しかつ可視波長にわたり法線入射光を実質的に透過する干渉素子と,
可視波長にわたり非一様に光を吸収する吸収素子と,を備え,
ここで,該吸収素子は,高分子マトリックス中に分散された着色剤を含み,
ディテクターと組み合わせたときに,相対応答がヒトの眼の視覚応答とほぼ同じであるディテクターシステムを生成するフィルターであって,
ディテクターシステムの種々のコンポーネントの相対分光透過または相対分光応答のグラフは,下記のとおりであり,
ここで,
曲線200は,典型的なシリコンフォトダイオードディテクターの分光応答度を表し,
吸収素子の透過パーセントを表す曲線202は,可視領域でほぼ鐘形応答を提供し,
法線入射時における干渉素子の透過パーセントを表す曲線204は,短波長帯域端204aおよび長波長帯域端204bにより境界づけられた強い反射帯域を有し,反射帯域の高反射率は,帯域のほとんどにわたり,低い透過パーセントを提供し,半値透過点または半値反射点として測定される帯域端204aは可視領域に近接して位置し,
ディテクターシステム応答は,曲線206により表される,
フィルター。
グラフ:
」
(3) 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると,以下のとおりである。
ア 光吸収構造体及び近赤外光反射構造体
甲1発明の「フィルター」は,「可視波長にわたり非一様に光を吸収する吸収素子」を備える。また,甲1発明の「フィルター」は,「近赤外波長の帯域にわたり法線入射光を実質的に反射しかつ可視波長にわたり法線入射光を実質的に透過する干渉素子」を備える。
ここで,甲1発明の「吸収素子」及び「干渉素子」は,それぞれ,本件特許発明1の「光吸収構造体」及び「近赤外光反射構造体」に相当する。また,甲1発明の「フィルター」と本件特許発明1の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」は,「複数の構造体を備え,該複数の構造体は,光吸収構造体と近赤外光反射構造体」「を有し」という構成において共通する。
イ 光吸収構造体の光学特性
まず,甲1発明の「吸収素子」は,「高分子マトリックス中に分散された着色剤を含」むものである。したがって,甲1発明の「吸収素子」と本件特許発明1の「光吸収構造体」は,「色素を含有する」「構造によって形成され」という構成において共通する。
次に,甲1発明のグラフは,「ディテクターシステムの種々のコンポーネントの相対分光透過または相対分光応答のグラフ」であるから,単なる模式図とは異なり,「波長(nm)」と「相対的な透過率または応答」の関係を定量的に把握可能なグラフといえる。
そこで,甲1発明のグラフについてみると,甲1発明の「吸収素子」は,概ね,波長600nm~800nmにかけて,相対的な透過率が低下する波長領域,すなわち,光を吸収する波長領域を有する。また,甲1発明の「吸収素子」は,概ね波長200nm~500nmにかけて,相対的な透過率が低下する波長領域,すなわち,光を吸収する波長領域を有する。そして,甲1発明の「吸収素子」は,これら波長領域において,光吸収の極大点,すなわちピークを有する。そうしてみると,甲1発明の「吸収素子」は,本件特許発明1でいう「近赤外波長領域のうち近赤外吸収波長領域の光を吸収するとともに,紫外波長領域のうち紫外吸収波長領域の光を吸収する光吸収特性を有し,当該光吸収特性は光吸収の極大点であるピークを含」むものである。
ウ 遷移領域の重なり(近赤外吸収波長領域)
甲1発明の「フィルター」において,「法線入射時における干渉素子の透過パーセントを表す曲線204は,短波長帯域端204aおよび長波長帯域端204bにより境界づけられた強い反射帯域を有し,反射帯域の高反射率は,帯域のほとんどにわたり,低い透過パーセントを提供し,半値透過点または半値反射点として測定される帯域端204aは可視領域に近接して位置する」。また,甲1発明のグラフからは,甲1発明の「干渉素子」が,「半値透過点または半値反射点として測定される帯域端204a」を境に,短波長側(可視光側)で高い光の透過パーセントを有し長波長側(近赤外側)で低い光の透過パーセントを有する特性を看取できる。
そうしてみると,甲1発明の「干渉素子」は,本件特許発明1でいう「可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記近赤外波長領域の一部の光を反射して前記近赤外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第1遷移波長領域を有し」ている。
加えて,前記イで述べたとおり,甲1発明の「吸収素子」は,波長600nm~800nmの波長領域において,光吸収の極大点,すなわちピークを有するところ,甲1のグラフからは,このピークと「半値透過点または半値反射点として測定される帯域端204a」近傍の波長領域が重なっている様子が看取できる。さらに,甲1のグラフからは,「吸収素子の透過パーセントを表す曲線202」と「干渉素子の透過パーセントを表す曲線204」の協働により,「半値透過点または半値反射点として測定される帯域端204a」における「曲線206により表される」「ディテクターシステム応答」が減衰させられている様子が看取できる。
そうしてみると,甲1発明の「フィルター」と本件特許発明1の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」は,「前記光吸収構造体の前記近赤外吸収波長領域と,前記近赤外光反射構造体の前記第1遷移波長領域とが重なっているとともに,前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第1遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記近赤外光反射構造体とが協働して,前記第1遷移波長領域の光を減衰させ」という構成において一致する。
エ 遷移領域の重なり(紫外吸収波長領域)
前記ウと同様の議論により,甲1発明の「干渉素子」は,本件特許発明1でいう「可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記紫外波長領域の一部の光を反射して前記紫外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第2遷移波長領域を有し」ている。また,甲1発明の「フィルター」と本件特許発明1の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」は,「前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域と」,「前記第2遷移波長領域とが重なっているとともに,前記紫外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第2遷移波長領域に重なっていることで」,「前記第2遷移波長領域の光を減衰させ」という構成において一致する。
オ 紫外赤外線カット用光学フィルタ
甲1発明のグラフを参照すると,甲1発明の「フィルター」は,概ね400nm以下の波長領域及び800nm以上の波長領域において,低い透過率を具備する様子を看取できる。したがって,甲1発明の「フィルター」は,紫外線及び赤外線をカットするフィルターということができるから,甲1発明の「フィルター」は,本件特許発明1の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」に相当する。
(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明1と甲1発明は,次の構成で一致する。
「 複数の構造体を備え,
該複数の構造体は,光吸収構造体と近赤外光反射構造体を有し
前記光吸収構造体は,色素を含有する構造によって形成され,近赤外波長領域のうち近赤外吸収波長領域の光を吸収するとともに,紫外波長領域のうち紫外吸収波長領域の光を吸収する光吸収特性を有し,当該光吸収特性は光吸収の極大点であるピークを含み,
前記近赤外光反射構造体は,可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記近赤外波長領域の一部の光を反射して前記近赤外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第1遷移波長領域を有し,
可視光を透過するための透過波長領域と,少なくとも前記紫外波長領域の一部の光を反射して前記紫外波長領域の一部の光の通過を阻止する阻止領域との間にある第2遷移波長領域を有し,
前記光吸収構造体の前記近赤外吸収波長領域と,前記近赤外光反射構造体の前記第1遷移波長領域とが重なっているとともに,前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第1遷移波長領域に重なっていることで,前記光吸収構造体と前記近赤外光反射構造体とが協働して,前記第1遷移波長領域の光を減衰させ,
前記光吸収構造体の前記紫外吸収波長領域と,前記第2遷移波長領域とが重なっているとともに,前記紫外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの波長が前記第2遷移波長領域に重なっていることで,前記第2遷移波長領域の光を減衰させる紫外赤外線カット用光学フィルタ。」
イ 相違点
本件特許発明1と甲1発明は,以下の点で相違する,又は,一応相違する。
(相違点1)
本件特許発明1の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」は,「透明基板上に積層される」複数の構造体を備えるのに対して,甲1発明の「フィルター」は,「透明基板上に積層される」複数の構造体を備えるものであるか,一応,明らかではない点。
(相違点2)
本件特許発明1の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」は,「紫外光反射構造体」を有し,この「紫外光反射構造体」が,第2遷移波長領域を有し,「前記光吸収構造体と前記紫外光反射構造体とが協働して」第2遷移波長領域の光を減衰させているのに対して,甲1発明の「フィルター」は,「干渉素子」が「紫外光反射構造体」の機能を兼ねている点。
(相違点3)
本件特許発明1の「光吸収構造体」は,色素を含有する「1つの層」構造によって形成されているのに対して,甲1発明の「吸収素子」は,色素を含有する「1つの層」構造によって形成されたものであるか,一応,明らかではない点。
また,本件特許発明1の「光吸収構造体」は,「前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの光吸収率は前記紫外吸収波長領域における光吸収の極大点であるピークの光吸収率よりも大きく」という構成を具備するのに対して,甲1発明の「吸収素子」は,この構成を具備しない(近赤外吸収波長領域のピークと紫外吸収波長領域のピークの大小関係が,逆である)点。
(5) 判断
事案に鑑みて,相違点3について判断する。
甲1発明の「吸収素子の透過パーセントを表す曲線202は,可視領域でほぼ鐘形応答を提供」するように設計されるものである。また,「鐘形応答」に関して,甲1の段落【0039】には,「ヒトの眼の応答に一致させるのに必要な可視領域における正確な変動(鐘形関数)」と記載されている。
そうしてみると,甲1発明の「吸収素子」の「鐘形応答」は,「ヒトの眼の応答に一致させるのに必要な可視領域における正確な変動(鐘形関数)」に対応して設計されたものである。したがって,当業者が甲1発明の「吸収素子の透過パーセントを表す曲線202」を,相違点3に係る「前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの光吸収率は前記紫外吸収波長領域における光吸収の極大点であるピークの光吸収率よりも大きく」したものとするためには,何らかの積極的な動機付けが必要というべきである。
しかしながら,甲1には,甲1発明の「吸収素子の透過パーセントを表す曲線202」を,相違点3に係る「前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの光吸収率は前記紫外吸収波長領域における光吸収の極大点であるピークの光吸収率よりも大きく」したものとすることについて,記載も示唆もない。
かえって,甲1の段落【0039】には,「吸収素子の透過スペクトルは,干渉素子の透過スペクトルよりも,入射角の関数として波長シフトを起こしにくい。」との利点とともに,「したがって,可視領域の鐘形関数を主として吸収コンポーネントに関連づけ,可視域以外(近赤外および場合により紫外)の光の除去を主として干渉リフレクターに関連づけることが有利である。」と記載されている。
このような甲1の記載を勘案すると,甲1発明に接した当業者が,甲1発明の「吸収素子の透過パーセントを表す曲線202」を,相違点3に係る「前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの光吸収率は前記紫外吸収波長領域における光吸収の極大点であるピークの光吸収率よりも大きく」したものとすることには,阻害要因があるというべきである。
(6) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は,光吸収構造体の色素として周知であるフタロシアニン系色素を指摘し,甲1発明において相違点3に係る構成を克服することは容易である旨,主張する(特許異議申立書の23頁16行~24頁12行,特許異議申立人意見書の8頁9~15行)。
しかしながら,前記(5)のとおりであるから,甲1発明に基づいて相違点3に係る構成を克服することが容易であるとすることはできない。
なお,甲1発明が前提とする撮像素子は,シリコンPINフォトダイオードディテクターであり(【0065】),通常の撮像素子よりも近赤外波長領域の感度が高いものである。したがって,仮に,甲1発明が前提とする撮像素子を,通常の撮像素子に替えた場合を想定したとしても,「前記近赤外吸収波長領域内における光吸収の極大点であるピークの光吸収率」は,小さい方に修正されるのみである。
(7) 小括
したがって,本件特許発明1は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるということはできない。
(8) 本件特許発明2~本件特許発明4,本件特許発明6~本件特許発明9について
本件特許発明2~本件特許発明4,本件特許発明6~本件特許発明9は,本件特許発明1の構成に対して,さらに他の発明特定事項を加えた発明である。
したがって,本件特許発明1と同様の理由により,本件特許発明2~本件特許発明4,本件特許発明6~本件特許発明9も,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるということはできない。
5 取消理由通知において採用しなかった他の特許異議申立理由について
(1) 特許異議申立人は,特許請求の範囲の請求項6の「前記透明基板に対し何れの面からも前記光吸収構造体に入射する紫外線を遮蔽するようにした」の記載を指摘して,本件特許6~本件特許9は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであると主張する。
しかしながら,本件特許発明は「透明基板上に積層される複数の構造体を備え」た「紫外赤外線カット用光学フィルタ」である。したがって,請求項6の上記記載が,入射する紫外線の方向を,透明基板の面を基準にして特定したものであることは,当業者において明らかである。また,「紫外線を遮蔽するようにした」との機能的記載が,本件特許発明の各構造体の配置が「紫外線を遮蔽するようにした」関係にあることを示すことも明らかである。
したがって,本件特許6~本件特許9は,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。
(2) 特許異議申立人は,本件特許の発明の詳細な説明には,本件特許発明の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」へ入射する光の入射角の条件について,何らの記載も示唆もないと指摘して,本件特許は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであると主張する。
しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明には,本件特許発明の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」について明確に説明されている。そして,当業者は,本件特許発明の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」を製造することができ,また,本件特許発明の「紫外赤外線カット用光学フィルタ」を利用することができる。
したがって,本件特許は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。
(3) 特許異議申立人は,特許請求の範囲の請求項1の「紫外吸収波長領域に対応したピーク」の記載を指摘して,本件特許は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面の範囲内でしたものであるということができないと主張する。
しかしながら,本件訂正請求による訂正は認められることとなり,特許異議申立人が指摘する上記記載は,発明の詳細な説明の【0046】,図4,図9等に記載された発明と整合するものとされた。
したがって,本件特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるということはできない。
第4 まとめ
以上のとおり,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件特許1~本件特許4,本件特許6~本件特許9を取り消すことはできない。また,他に本件特許1~本件特許4,本件特許6~本件特許9を取り消すべき理由を発見しない。したがって,本件特許1~本件特許4,本件特許6~本件特許9は,特許法113条1項各号のいずれかに該当すると認めない。
そして,本件特許5は削除された。
よって,結論のとおり決定する。
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2016-700463