特許異議申立
2016-700313
帯鋸刃
- 審判番号
- 2016-700313
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-145700
- 登録番号
- 特許第5795892号(P5795892)
- 請求日
- 2016年04月14日
- 審決日
- 2017年03月30日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社アマダホールディングス
- 【権利者代理人】豊岡 静男
- 【権利者】株式会社アマダマシンツール
- 【権利者代理人】豊岡 静男
- 【異議申立人】ヴイクス・ゼーゲンファブリーク・ヴィルヘルム・ハー・クルマン・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト
- 【異議申立人代理人】江崎 光史
- 【異議申立人代理人】鍛冶澤 實
- 【異議申立人代理人】篠原 淳司
- 【異議申立人代理人】清田 栄章
- 審判長/審判官
- 審判長 平岩 正一
- 審判官 西村 泰英
- 審判官 渡邊 真
- 分類
- P1651.113-YAA(B23D) / P1651.121-YAA(B23D) / P1651.537-YAA(B23D) / P1651.55 -YAA(B23D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5795892号発明「帯鋸刃」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5795892号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第5795892号の請求項1ないし2、及び4ないし7に係る特許を維持する。
特許第5795892号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5795892号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成23年6月30日に特許出願され、平成27年8月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 ヴイクス・ゼーゲンファブリーク・ヴィルヘルム・ハー・クルマン・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフトにより特許異議の申立てがされ、平成28年6月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年8月29日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成28年12月19日付けで意見書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア~コのとおりである。
ア 請求項1に係る「この第2の逃げ面においてエンドレス溶接を行うために、第2の逃げ面の逃げ角を44°未満に設定してある」を「この第2の逃げ面においてフラッシュバット溶接によりエンドレス溶接を行うために、第2の逃げ面の逃げ角を、第1の逃げ面の逃げ角よりも大きく、かつ、44°未満に設定してある」に訂正する。
イ 請求項2に係る「この第1の逃げ面の後側に、当該直歯の後側の後続歯におけるガレットの底面に接続した凹曲面からなる第2の逃げ面を備え、この第2の逃げ面においてエンドレス溶接を行うために、第2の逃げ面とガレットの底面は円弧でもって接続してあり、前記円弧の中心位置を前記ガレットの外側に設定してある」を「この第1の逃げ面の後側に、当該直歯の後側の後続歯におけるガレットの底面に接続した凹状の円弧からなる第2の逃げ面を備え、この第2の逃げ面においてフラッシュバット溶接によりエンドレス溶接を行うために、前記円弧の中心位置を前記ガレットの外側に設定してある」に訂正する。
ウ 請求項3を削除する。
エ 請求項5ないし7に係る引用元の請求項の番号を、前記ウによる請求項の削除に伴い、請求項3の引用を除くよう訂正する。
オ 明細書の段落【0018】の「本発明は、前述したごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、・・・第2の逃げ面を備え、この第2の逃げ面においてエンドレス溶接を行うために、第2の逃げ面の逃げ角を44°未満に設定してあることを特徴とするものである。」という記載を「本発明は、前述したごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、・・・第2の逃げ面を備え、この第2の逃げ面においてフラッシュバット溶接によりエンドレス溶接を行うために、第2の逃げ面の逃げ角を、第1の逃げ面の逃げ角よりも大きく、かつ、44°未満に設定してあることを特徴とするものである。」に訂正する。
カ 明細書の段落【0019】の「また、適数の直歯と適数の左アサリ歯及び右アサリ歯を・・・第1の逃げ面を備え、この第1の逃げ面の後側に、当該直歯の後側の後続歯におけるガレットの底面に接続した凹曲面からなる第2の逃げ面を備え、この第2の逃げ面においてエンドレス溶接を行うために、第2の逃げ面とガレットの底面は円弧でもって接続してあり、前記円弧の中心位置を前記ガレットの外側に設定してあることを特徴とするものである。」という記載を「また、適数の直歯と適数の左アサリ歯及び右アサリ歯を・・・第1の逃げ面を備え、この第1の逃げ面の後側に、当該直歯の後側の後続歯におけるガレットの底面に接続した凹状の円弧からなる第2の逃げ面を備え、この第2の逃げ面においてフラッシュバット溶接によりエンドレス溶接を行うために、前記円弧の中心位置を前記ガレットの外側に設定してあることを特徴とするものである。」に訂正する。
キ 明細書の段落【0020】を削除する。
ク 明細書の段落【0045】の「なお、前記距離Lを、例えば0.1mm、・・・となるものである。すなわち、前記交差位置Mの部分に、例えば第3の逃げ面として、・・・値B/A=100%となるものである。」という記載を「なお、前記距離Lを、例えば0.1mm、・・・となるものである。」に訂正する。要するに、「ところで・・・すなわち、前記交差位置Mの部分に、例えば第3の逃げ面として、・・・値B/A=100%となるものである。」を削除する。
ケ 明細書の段落【0046】を削除する。
コ 明細書の段落【0047】を削除する。
(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイの「フラッシュバット溶接により」を追加する訂正事項に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明には【発明が解決しようとする課題】欄にて、エンドレス溶接を行う前提下での段差部の発生(【0010】、【0014】、【0015】)や、歯先の強度の低下(【0012】)、金属組織的な不良の発生(【0016】)との課題を挙げ、これを解決できる(【0017】~【0027】)とした記載が列挙されていることから、エンドレス溶接の態様として「フラッシュバット溶接により」行うとする発明は明細書に記載されているものと認められる。
また、上記アの「第2の逃げ面の逃げ角」に関して「第1の逃げ面の逃げ角よりも大きく、」とする事項は、明細書の【0033】に記載されたものである。
更に、上記イの「第2の逃げ面」に対して、凹曲面を凹状の円弧へ変更し、かつ、別途ガレットの底面に接続するとした「円弧」の記載を削除する訂正事項については、添付図面の図5に図示した逃げ面の形状と整合するものであり、図面に記載されたものである。
また、上記アの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内においてエンドレス溶接の態様をラッシュバット溶接によるものへ限定したものといえ、「第2の逃げ面の逃げ角」に対して「第1の逃げ面の逃げ角よりも大きく、」することを更に特定するものであるから、いずれの事項も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。加えて上記アの訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記イの訂正は、明細書に記載された事項の範囲内においてエンドレス溶接の態様をラッシュバット溶接によるものへ限定したものといえ、また、「第2の逃げ面」に対して、凹曲面を凹状の円弧へ変更し、かつ、別途ガレットの底面に接続するとした「円弧」の記載を削除する訂正事項については、添付図面の図5に図示した逃げ面の形状と整合するものであって明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記ウの訂正は請求項の削除を目的としたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号の規定を満足する。
上記エの訂正は、請求項の削除に伴い削除された請求項3を引用から除くとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3項に規定する、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。
上記オの訂正は、請求項1を訂正する上記アに対応したものであり、アの訂正事項の内容に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記カの訂正は、請求項2を訂正する上記イに対応したものであり、イの訂正事項の内容に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
上記キ、ク、ケ及びコの訂正は、上記ウの訂正に伴い、請求項3に対応した説明を記載した箇所を削除するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第3号、及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線は訂正箇所を示すもの)
請求項1「適数の直歯と適数の左アサリ歯及び右アサリ歯を適宜のピッチで1つの鋸歯グループとして備えた帯鋸刃であって、当該鋸歯グループにおける少なくとも1つの直歯に、当該直歯の歯先からの第1の逃げ面を備え、この第1の逃げ面の後側に、当該直歯の後側の後続歯におけるガレットの底面に接続した第2の逃げ面を備え、この第2の逃げ面においてフラッシュバット溶接によりエンドレス溶接を行うために、第2の逃げ面の逃げ角を、第1の逃げ面の逃げ角よりも大きく、かつ、44°未満に設定してあることを特徴とする帯鋸刃。」
請求項2「適数の直歯と適数の左アサリ歯及び右アサリ歯を適宜のピッチで1つの鋸歯グループとして備えた帯鋸刃であって、当該鋸歯グループにおける少なくとも1つの直歯に、当該直歯の歯先からの第1の逃げ面を備え、この第1の逃げ面の後側に、当該直歯の後側の後続歯におけるガレットの底面に接続した凹状の円弧からなる第2の逃げ面を備え、この第2の逃げ面においてフラッシュバット溶接によりエンドレス溶接を行うために、前記円弧の中心位置を前記ガレットの外側に設定してあることを特徴とする帯鋸刃。」
請求項3(削除)
請求項4「請求項1又は2に記載の帯鋸刃において、前記第2の逃げ面においてエンドレス状に溶接してあることを特徴とする帯鋸刃。」
請求項5「請求項1、2及び4のいずれかに記載の帯鋸刃において、当該直歯と前記後続歯との間のピッチが最大ピッチであることを特徴とする帯鋸刃。」
請求項6「請求項1、2、4及び5のいずれかに記載の帯鋸刃において、当該直歯と前記後続歯との間のガレット面積は、当該鋸歯グループにおける最小ピッチのガレット面積よりも大きいことを特徴とする帯鋸刃。」
請求項7「請求項1、2及び4~6のいずれかに記載の帯鋸刃において、当該直歯と当該直歯との間の鋸歯の数は3歯以下であることを特徴とする帯鋸刃。」
(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して平成28年6月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、請求項2に係る特許は取り消すべきものである。
イ 請求項1ないし7に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)甲号証の記載
甲第2号証(仏国特許出願公開第1,270,111号)には、図面とともに、帯鋸刃の改良と題して、接合された帯鋸刃を図1に図示し、図1中に2-2の線を引いた箇所の断面図を図2に示し、接合が溶接(soudure)またはろう付け(brasure)で、図中40°から50°の角度を好適として斜めの領域に沿ってなされた(raccordement obliquement)ものであって、帯鋸刃の歯先の形状が図1中では歯先からガレット相当の凹状の歯底部に向いた逃げ面が、凸状の緩い曲面で始まり略直線状の中間部を介して最後凹曲面に描かれ、接合箇所はガレット底部を含む凹曲面の箇所である帯鋸刃が記載されている。以上の記載によれば、甲第2号証には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数の鋸歯を備えた帯鋸刃であって、鋸歯の歯先の形状が、歯先からガレット相当の凹状の歯底部に向いた逃げ面が、凸状の緩い曲面で始まり略直線状の中間部を介して最後凹曲面とされ、前記略直線状の中間部及び前記凹曲面とされる箇所が溶接にて接合される箇所とされている帯鋸刃。」
(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)特許法第29条第1項第3号について
本件発明2と引用発明とを対比すると、引用発明の逃げ面は、訂正により生じた「第2の逃げ面」が「(凹状の)円弧からなる」とする事項、すなわち円の一部であるとした事項を有さず、逃げ面の形状の点で相違することになり、もはや公知発明と同一の関係にならない。
また、上記訂正により生じた相違に関しては、特許異議申立人は、「フラッシュバット溶接により」の追加を周知であるとした意見書による主張以外には、なんら追加の証拠や追加の主張を行ってもいない。
してみると、本件発明2は、引用発明と同一とすることはできない。
(イ)特許法第36条第6項第2号について
訂正事項アに係る訂正により、1に係る「第1の逃げ面」の「逃げ角」は、「第2の逃げ面の逃げ角を、第1の逃げ面の逃げ角よりも大きく、」とされ、第1の逃げ面と第2の逃げ面とが互いに形成する逃げ角の関係が明確となった。
また、訂正事項イに係る訂正により、本件発明2に係る「ガレットの底面に接続した凹曲面からなる第2の逃げ面」は、「この第1の逃げ面の後側に、当該直歯の後側の後続歯におけるガレットの底面に接続した凹状の円弧からなる第2の逃げ面を備え」とされた。そして、訂正前の「第2の逃げ面とガレットの底面は円弧でもって接続してあり」とする記載は削除されたため、訂正前に存在していた「ガレットの底面」と「接続」されたとする「円弧」と、「ガレットの底面に接続した凹曲面からなる第2の逃げ面」とが同一構造を指すものか異なる特徴を特定するものか不明確とした不備は解消され、歯先からガレット底面に至る逃げ面形状が明確となった。
(ウ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、訂正事項ア及びイにより追加された「フラッシュバット溶接により」なる事項は、その根拠とされる明細書の段落0036を参照すると、判別方法との関係において開示されたものであるから、判別方法に関する特徴を特許請求の範囲に取り込む訂正であり、特許法第126条第5項、同第6項の規定に違反する訂正であり認められない旨主張するが、本件特許明細書の記載全体から見て、【発明が解決しようとする課題】欄には、エンドレス溶接を行う前提下での段差部の発生(【0010】、【0014】、【0015】)や、歯先の強度の低下(【0012】)、金属組織的な不良の発生(【0016】)との課題を挙げ、これを解決できる(【0017】~【0027】)としたものであるから、訂正事項ア及びイによる追加事項は、判別方法のみに関係しているとは認められない。よって、特許法第126条第5項、同第6項の規定に違反する訂正とはいえない。
また、特許異議申立人は、当該訂正事項が周知技術であると主張し、甲第11号証及び甲第12号証を提出して新規性・進歩性を有さず、本件発明2は取消されるべきとも主張しているが、上記(ア)のとおりであるので、特許異議申立人が示す理由及び証拠によっては、本件発明2を取り消すことはできない。
イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、上記取消理由通知で通知した理由の他にも、以下の3点の理由を挙げて本件特許の取消を求めている。
(他の理由1)請求項1~5、及び7に記載の訂正前発明は、甲第1号証乃至第3号証、第6号証に記載の発明であるとする、特許法第29条第1項第3号違反。ただし、甲第2号証を証拠として請求項2に係る発明を取り消すとした部分については、取消理由通知にて採用した。
(他の理由2)請求項6に記載の訂正前発明は、甲第1、2、4、5号証から当業者が容易に発明できたとする、同法同条第2項違反。
(他の理由3)請求項2、4ないし7に記載の訂正前発明は、審査段階における平成27年3月6日付け手続補正で新規事項の追加がなされたとする、同法第17条の2第3項違反。
しかしながら、以下の理由により特許異議申立人のかかる主張は理由がない。
(他の理由1について)
甲第1号証(UDDEHOLM TOOLINGパンフレット)には帯鋸の歯形を図示した図面が17ページに掲載されているものの、歯先後方の逃げ面形状に関する記載は全く無く、請求項1に係る発明の特定事項である逃げ角が44°未満に設定されたとする第2の逃げ面を示した箇所がない。同様に、請求項2に係る凹曲面からなる第2の逃げ面を示した箇所もない。
また、甲第2号証にはFig.1として帯鋸の歯形を図示して図面があるものの、歯先後方の逃げ面形状に関する記載は全く無く、請求項1に係る発明の特定事項である逃げ角が44°未満に設定されたとする第2の逃げ面を示した箇所がない。
さらに、甲第3号証(Bibliothek der Technik:Saegen und Lagern von Metall,第12-15、70ページ)及び第6号証(特開2004-98273号公報)のいずれにも、請求項1に係る発明の特定事項である逃げ角の設定を示した箇所はなく、請求項2に係る発明の特定事項である凹曲面からなる第2の逃げ面を示した箇所はない。
したがって、請求項1、2及び、それらを引用する請求項4~7については、甲第1号証乃至第3号証、第6号証に記載された発明と同一でない。
(他の理由2について)
請求項6に記載の訂正前発明は、先行する請求項1~5のいずれか記載の帯鋸刃について、「直歯と後続歯との間のガレット面積」に関し更に特定したものであるが、前記(他の理由1について)で示したとおり、請求項1に記載の訂正前発明と甲第1号証との間に明らかな相違点があり、これを他の証拠によっては当業者が容易想到とできる明示の記載がない以上、請求項1に由来する部分についてはこれを容易想到とできない。また、特許異議申立人は、請求項6に記載の訂正前発明を理由2により取り消すとした論拠において、甲第1号証と甲第4号証(英国特許出願公開第2173735号明細書)、甲第1号証と甲第5号証(米国特許出願公開第2002/0148340号明細書)の組み合わせ以外に取り消すとする他の理由を挙げていない
総合すると訂正前の本件請求項6に係る発明を、申立に用いた証拠と理由によってはこれを容易想到とすることはできない。
(他の理由3について)
当該他の理由3は、訂正前請求項2の「第2の逃げ面とガレットの底面は円弧でもって接続してあり」とした記載事項に関し、明細書ないし図面の記載に基づかない補正であるとしたものであるが、重複した趣旨とされる取消理由通知の理由2(特許法第36条第6項第2号)として扱ったため、実質取消理由通知において採用し、理由がないとしたものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~2及び4~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~2及び4~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項3に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-700313