特許異議申立
2016-700025
合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
- 審判番号
- 2016-700025
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-139848
- 登録番号
- 特許第5749095号(P5749095)
- 請求日
- 2016年01月14日
- 審決日
- 2017年04月26日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
- 【異議申立人】株式会社 クラレ
- 【異議申立人代理人】特許業務法人せとうち国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 新居田 知生
- 審判官 大橋 賢一
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1651.113-YAA(C03C) / P1651.121-YAA(C03C) / P1651.851-YAA(C03C) / P1651.853-YAA(C03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5749095号発明「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5749095号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
特許第5749095号の請求項1~5,8~15に係る特許を維持する。
特許第5749095号の請求項6,7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件特許第5749095号は、平成23年6月23日に出願された特願2011-139848号の特許請求の範囲に記載された請求項1~15に係る発明について、平成27年5月22日に設定登録がされたものであり、その後、その請求項1~15に係る特許について特許異議の申立てがされ、以下の手続がされたものである。
平成28年 3月16日付けの取消理由通知
同年 5月19日付けの訂正請求及び意見書提出
同年 7月 1日付けの意見書提出(申立人)
同年 9月29日付けの取消理由(決定の予告)通知
同年12月 2日付けの訂正請求及び意見書提出
平成29年 2月 3日付けの意見書提出(申立人)
第2.訂正請求について
1.訂正の内容
平成28年12月2日付けの訂正請求は、次の訂正事項1~7よりなる(下線部が訂正箇所)。なお、本訂正請求により、同年 5月19日付けの訂正請求は取り下げられたものとみなされる。
訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、水酸基の含有率が21モル%以上であり、」とあるのを「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、水酸基の含有率が25モル%以上であり、」に訂正する。
訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が39重量部以下である」とあるのを「前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が55重量部以上であり、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が39重量部以下であり、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量よりも20重量部以上多い」に訂正する。
訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれか1項」とあるのを「請求項1~5のいずれか1項」に訂正する。
訂正事項6
特許請求の範囲の請求項15に「請求項1~14のいずれか1項」とあるのを「請求項1~5及び8~14のいずれか1項」に訂正する。
訂正事項7
明細書【0094】,【0099】にそれぞれ「実施例1」とあるのを「参考例1」に訂正し、【0099】に「実施例2、参考例3、実施例4~6、参考例7、実施例8,9」とあるのを「参考例2~5、実施例6、参考例7~9」に訂正し、【0108】の【表1】中の「実施例1」「実施例2」「実施例4」「実施例5」「実施例8」「実施例9」をそれぞれ「参考例1」「参考例2」「参考例4」「参考例5」「参考例8」「参考例9」に訂正する。
2.訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
この訂正は、請求項1に係る発明の合わせガラス用中間膜において、特定されていた水酸基の含有率の下限値を上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
この訂正はいずれも、請求項1に係る発明の合わせガラス用中間膜において、特定されていた第2の層中の可塑剤の含有量に加え、第1の層中の可塑剤の含有量と両者の差も特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、この含有量及びその差は、本件明細書【0040】や請求項1を引用する請求項7に記載されていたものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3,4について
これらの訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項5,6について
これらの訂正は、択一的な引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項7について
これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮に伴って、発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1を、請求項2~15が直接又は間接的に引用していたから、訂正前の請求項1~15は一群の請求項である。
したがって、訂正事項1を含む特許請求の範囲の訂正は、これらの一群の請求項ごとに請求をしたものと認められ、また、訂正事項7は、これらの一群の請求項の全てについてする明細書の訂正と認められる。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号又は第3号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。
第3.特許異議の申立てについて
1.本件発明について
本件特許の請求項1~5,8~15に係る発明(以下、「本件発明1~5,8~15」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5,8~15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、このうち本件発明1は、次のとおりのものである。
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、水酸基の含有率が25モル%以上であり、
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、かつ前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が55重量部以上であり、
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が39重量部以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量よりも20重量部以上多い、合わせガラス用中間膜。
2.新規性・進歩性要件違反(取消理由)について
(1)平成28年3月16日付けで通知した取消理由は、申立人が提出した、
甲第1号証:特表2008-532817号公報(以下、「甲1」と略)
を引用し、
「訂正前の請求項1~6,8~12,14,15に係る発明は、甲1に記載された発明であり、また、訂正前の請求項1~15に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、その特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。」
というものである。
(2)甲1の記載事項(抜粋)
【0005】
発明の要旨
本発明は、パネルを貫通して透過される音の量を低減するために、多層ガラスパネルタイプの用途において使用することのできる、多層中間層を提供する。この効果は、一緒に単一の多層中間層にされている、2つ以上のポリマーシートにおいて可塑剤濃度の差異を維持することによって達成される。
【0009】
本明細書において使用される「可塑剤含有量」は、重量当たりの重量を基準として、樹脂100部当たり(phr)の部として測定できる。・・・
【0011】
本発明の様々な実施形態において、2つのポリマーシートの可塑剤含有量は少なくとも8phr、10phr、12phr、15phr、18phr、20phr、または25phrだけ、異なる。それぞれのシートは、例えば、30から100phr、40から90phr、または50から80phrを有することができる。
【0012】
・・・本明細書において使用される残留ヒドロキシル含有量は、ASTM1396に従って重量パーセントに基づいて測定される。
【0014】
可塑剤の所与の種類に関して、ポリ(ビニルブチラール)におけるこの可塑剤の相溶性は、ヒドロキシル含有量によって主に求められる。通常、ポリ(ビニルブチラール)の残留ヒドロキシル含有量が多い程、可塑剤の相溶性または収容力がより低減される。・・・
【0066】
実施例
3GEH(トリエチレングリコールジ-(2-エチルヘキサノエート))の様々な量を配合した、記録された残留ヒドロキシル含有量を有するポリ(ビニルブチラール)シートおよびこれらのシートの厚さを表1に列挙する。これらのシートは、本発明の中間層を構成するために使用するか、または参照パネルを製造するための従来の中間層として使用する。すべてのシートにおいて、残留アセテート含有量は無視することができ、1mol%未満である。
【0067】
【表1】
従来の中間層および本発明の中間層の実施例を表2に示す。
【0068】
【表2】
(3)引用発明の認定
甲1には、多層ガラスパネルに使用される多層中間層(【0005】)の実施例として、PVB5からなるシート1に、PVB7からなるシート2、PVB5からなるシート3が積層されて構成された「中間層番号4」(【表2】)が記載されている。ここで、「PVB5」とは、3GEHを38phr配合した残留ヒドロキシル含有量18.5%のポリビニルブチラールシートであり、「PVB7」とは、3GEHを52phr配合した残留ヒドロキシル含有量15.7%のポリビニルブチラールシートであり(【表1】)、いずれのシートにおいても残留アセテート含有量が1mol%未満である(【0066】)ことが記載され、「phr」は樹脂100部当たりに含有される可塑剤の重量部であり(【0009】)、「残留ヒドロキシル含有量」は重量%である(【0012】)と記載されている。
してみると、甲1には、「中間層番号4」として、本件発明1に対応する次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリビニルブチラールシートに可塑剤が配合されたシート2と、
前記シート2の両面に積層された、ポリビニルブチラールシートに可塑剤が配合されたシート1,3から構成され、
前記シート2中の前記ポリビニルブチラールシートの残留アセテート含有量が1mol%未満、残留ヒドロキシル含有量が15.7重量%であり、
前記シート1,3中の前記ポリビニルブチラールシートの残留アセテート含有量が1mol%未満であり、
前記シート2中の前記ポリビニルブチラールシートの残留ヒドロキシル含有量が、前記シート1,3中の前記ポリビニルブチラールシートの残留ヒドロキシル含有量よりも低く、かつ前記シート2中の前記ポリビニルブチラールシートの残留ヒドロキシル含有量と前記第シート1,3中の前記ポリビニルブチラールシートの残留ヒドロキシル含有量との差が、2.8重量%であり、
前記シート2中の前記ポリビニルブチラールシート100重量部に対する前記シート2中の前記可塑剤の含有量が52重量部であり、
前記シート1,3中の前記ポリビニルブチラールシート100重量部に対する前記シート1,3中の前記可塑剤の含有量が38重量部であり、
前記シート2中の前記ポリビニルブチラールシート100重量部に対する前記シート2中の前記可塑剤の含有量が、前記シート1,3中の前記ポリビニルブチラールシート100重量部に対する前記シート1,3中の前記可塑剤の含有量よりも14重量部多い、多層ガラスパネル用多層中間層。」
(4)発明の対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「ポリビニルブチラールシート」が本件発明1の「ポリビニルアセタール樹脂」に相当し、以下、「残留アセテート含有量」が「アセチル化度」、「残留ヒドロキシル含有量」が「水酸基の含有率」、「多層ガラスパネル用多層中間層」が「合わせガラス用中間膜」にそれぞれ相当する。そして、本件図1等の記載から、本件発明1の「第1の層」が中間層と認められるから、引用発明の「シート2」「シート1(又はシート3)」が、それぞれ本件発明1の「第1の層」「第2の層」に相当する。
してみると、本件発明1のうち、
「ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第1の層と、
前記第1の層の一方の面に積層されており、かつポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含有する第2の層とを備え、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が8モル%以下であり、
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも低く、
前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量が39重量部以下である、合わせガラス用中間膜。」の点は引用発明と一致し、次の点で両者は相違する。
相違点1:本件発明1が、「第1の層中の水酸基の含有率が25モル%以上であり、かつ前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率と前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率との差が、8.5モル%以下であ」るのに対し、引用発明は、「シート2中の残留ヒドロキシル含有量が15.7重量%であり、かつ前記シート2中の前記ポリビニルブチラールシートの残留ヒドロキシル含有量と前記第シート1,3中の前記ポリビニルブチラールシートの残留ヒドロキシル含有量との差が、2.8重量%であ」る点。
相違点2:本件発明1が、「第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が55重量部以上であり、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する前記第2の層中の前記可塑剤の含有量よりも20重量部以上多い」のに対し、引用発明は、「シート2中の前記ポリビニルブチラールシート100重量部に対する前記シート2中の前記可塑剤の含有量が52重量部であり、前記シート2中の前記ポリビニルブチラールシート100重量部に対する前記シート2中の前記可塑剤の含有量が、前記シート1,3中の前記ポリビニルブチラールシート100重量部に対する前記シート1,3中の前記可塑剤の含有量よりも14重量部多い」点。
(5)相違点の判断
まず、相違点2から検討すると、甲1には、引用発明のシート1(又はシート3)とシート2の可塑剤濃度の差異について、パネルを貫通して透過される音の量を低減するためのものであり(【0005】)、この差異の大きさについて、少なくとも8phr、10phr、12phr、15phr、18phr、20phr、または25phr異なる態様にできる(【0011】)ことが記載されているから、引用発明において、シート1(又はシート3)とシート2の可塑剤濃度の差異を20phr(重量部)以上とするために、シート2中の可塑剤の含有量を55重量部以上とし、相違点2を解消することは、パネルを貫通して透過される音の量をさらに低減するために、当業者が容易になし得たことである。
次に相違点1について検討するに、本件発明1の「水酸基の含有率」とは、「水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値」(本件明細書【0051】)であるが、ポリビニルブチラール樹脂では、ブチラール基(式量142)1つに主鎖のエチレン基が2つ、アセチル基(式量86)と水酸基(式量44)各1つに主鎖のエチレン基が1つずつ含まれている。ここで甲1には、引用発明において残留アセテート含有量(アセチル基)は無視できる(【0066】)と記載されているから、引用発明のシート1~3の水酸基の含有率(モル%)は、その残留ヒドロキシル含有量(重量%)を用いて、次のように計算できる。
シート1,3:
100×[18.5/44/{18.5/44+(100-18.5)/(142/2)}]
≒26.8モル%
シート2:
100×[15.7/44/{15.7/44+(100-15.7)/(142/2)}]
≒23.1モル%
すなわち、両シートの水酸基の含有率の差は3.7モル%であるから、相違点1のうち、「水酸基の含有率の差が8.5モル%以下」の点は差異にはならず、本件発明1の第1の層中の水酸基の含有率が25モル%以上であるのに対し、引用発明のシート2中の水酸基の含有率が23.1モル%しかない点で両者は相違する。
そこで検討するに、甲1には、残留ヒドロキシル含有量(水酸基の含有率)について、その量が多いほど可塑剤の収容力が低減すること(【0014】)が記載されている。
してみると、引用発明において、シート2中の残留ヒドロキシル含有量を増やして相違点1を解消することは、シート2の可塑剤の収容力を低減させることになるため、シート2中の可塑剤の含有量を増やして相違点2を解消することが困難になることを意味する。
すなわち、引用発明において、相違点1を相違点2と共に解消することには阻害要因があるといわざるを得ない。
そして、本件発明1は、第1の層中の水酸基の含有率を高めることで、層間接着性を高め発泡を抑制するという、甲1に記載も示唆もない効果を奏するものである(本件明細書【0036】【0048】)。
(6)したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。本件発明1を引用する本件発明2~5,8~15についても同様である。
よって、本取消理由には理由がない。
3.むすび
以上のとおりであるから、取消理由によっては、請求項1~5,8~15に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項6,7係る特許は訂正により削除されたから、これらの特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700025