特許拒絶査定不服審判
2016-018048
圧縮空気装置を制御する方法ならびに該方法を使用するための制御器および圧縮空気装置
- 審判番号
- 2016-018048
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-262282外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月02日
- 審決日
- 2019年05月08日
- 公報発行日
- 2019年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
- 【請求人代理人】中島 重雄
- 分類
- P18 .536-WZ (F04B) / P18 .537-WZ (F04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-262282「圧縮空気装置を制御する方法ならびに該方法を使用するための制御器および圧縮空気装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月 1日出願公開、特開2014- 77449〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)6月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2006年7月18日、ベルギー国)を国際出願日とする特願2009-519752号の一部を平成25年12月19日に新たな特許出願としたものであって、同日付けで手続補正がなされ、平成26年9月18日付けの拒絶理由の通知に対し、平成27年4月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年9月15日付けの拒絶理由の通知に対し、平成28年1月19日付けで意見書が提出されたが、同年7月8日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成28年8月2日)、これに対して同年12月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、その後、当審において平成29年9月8日付けで拒絶理由が通知され、平成30年3月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、当審において同年6月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月5日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成30年12月5日付けの手続補正(以下、単に「手続補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
一つの圧縮空気ネットワークが接続された一つの通信ネットワーク(2)と、前記圧縮空気ネットワークの部分である要素を制御するための通信しあう複数の制御器(6、9、13、23、24、25または26)と、を有する圧縮空気装置(1)を制御する方法であって、
―前記圧縮空気装置(1)の当該要素が、少なくとも、圧縮空気ユーザー、圧縮機、ファン、乾燥機、熱交換器、フィルター、水分分離器、油分離器、冷却塔、圧縮空気の処理装置、圧縮空気弁または流量センサーのうちの複数の要素から成り、
前記通信しあう制御器(6、9、13、23、24、25、26)がいわゆる圧縮空気装置(1)の分散制御を行い、
前記要素の制御が、制御器(6、9、13、23、24、25または26)のうちどれも他の制御器によって直接的に制御される全ての要素の動作条件を決定しないように実現され、各制御器(6、9、13、23、24、25、26)は、当該制御器に直接又は間接に接続された要素の動作条件しか決定せず、且つ前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値のみが前記通信ネットワーク(2)を通じて前記他の制御器に送られるように実現され、
前記複数の制御器のそれぞれに複数の前記要素が接続され、一の前記制御器に接続される複数の前記要素の種類が一つではなく、
―各制御器(6、9、13、23、24、25または26)が他の複数の制御器(6、9、13、23、24、25または26)からのデータを比較し、当該制御器に接続されている要素の動作点を決定し、
前記の数種類のデータまたはそれから派生する特性値が、少なくとも必要な流量、望ましい圧力値、望ましいエネルギー消費量のうちの1つから成り、或いは、制御アルゴリズムを使用し、それにより、圧縮空気装置(1)が、当該制御器(6、9及び/又は13)によって圧縮空気装置(1)の適当な要素を制御することにより、温度、圧力、露点、容積、空気の質および流量等の一つまたは複数のパラメータが目標値に一致するように制御されるか、あるいはこれらのパラメータの一つまたは複数のものがある範囲内に保たれるように制御される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
一つの圧縮空気ネットワークが接続された一つの通信ネットワーク(2)を有する圧縮空気装置(1)内の一連の通信しあう制御器の一部である制御器であって、前記一連の通信しあう制御器が前記圧縮空気ネットワークの部分である要素を制御するために備えられている場合の前記制御器において、
―前記圧縮空気装置(1)の当該要素が、少なくとも、圧縮空気ユーザー、圧縮機、ファン、乾燥機、熱交換器、フィルター、水分分離器、油分離器、冷却塔、圧縮空気の処理装置、圧縮空気弁または流量センサーのうちの複数の要素から成り、
前記通信しあう制御器(6、9、13、23、24、25、26)がいわゆる圧縮空気装置(1)の分散制御を行い、
前記要素の制御が、制御器(6、9、13、23、24、25または26)のうちどれも他の制御器によって直接的に制御される全ての要素の動作条件を決定しないように実現され、各制御器(6、9、13、23、24、25、26)は、当該制御器に直接又は間接に接続された要素の動作条件しか決定せず、且つ前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値のみが前記通信ネットワーク(2)を通じて前記他の制御器に送られるように実現され、
前記複数の制御器のそれぞれに複数の前記要素が接続され、一の前記制御器に接続される複数の前記要素の種類が一つではなく、
―各制御器(6、9、13、23、24、25または26)が他の複数の制御器(6、9、13、23、24、25または26)からのデータを比較し、当該制御器に接続されている要素の動作点を決定し、
前記の数種類のデータまたはそれから派生する特性値が、少なくとも必要な流量、望ましい圧力値、望ましいエネルギー消費量のうちの1つから成り、或いは、制御アルゴリズムを使用し、それにより、圧縮空気装置(1)が、当該制御器(6、9及び/又は13)によって圧縮空気装置(1)の適当な要素を制御することにより、温度、圧力、露点、容積、空気の質および流量等の一つまたは複数のパラメータが目標値に一致するように制御されるか、あるいはこれらのパラメータの一つまたは複数のものがある範囲内に保たれるように制御される
ことを特徴とする制御器。
【請求項3】
一つの圧縮空気ネットワークが接続された一つの通信ネットワーク(2)と、前記圧縮空気ネットワークの部分である要素を制御するための通信しあう複数の制御器(6、9、13、23、24、25または26)と、を有する圧縮空気装置であって、
―前記圧縮空気装置(1)の当該要素が、少なくとも、圧縮空気ユーザー、圧縮機、ファン、乾燥機、熱交換器、フィルター、水分分離器、油分離器、冷却塔、圧縮空気の処理装置、圧縮空気弁または流量センサーのうちの複数の要素から成り、
前記通信しあう制御器(6、9、13、23、24、25、26)がいわゆる圧縮空気装置(1)の分散制御を行い、
前記要素の制御が、制御器(6、9、13、23、24、25または26)のうちどれも他の制御器によって直接的に制御される全ての要素の動作条件を決定しないように実現され、各制御器(6、9、13、23、24、25、26)は、当該制御器に直接又は間接に接続された要素の動作条件しか決定せず、且つ前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値のみが前記通信ネットワーク(2)を通じて前記他の制御器に送られるように実現され、
前記複数の制御器のそれぞれに複数の前記要素が接続され、一の前記制御器に接続される複数の前記要素の種類が一つではなく、
―各制御器(6、9、13、23、24、25または26)が他の複数の制御器(6、9、13、23、24、25または26)からのデータを比較し、当該制御器に接続されている要素の動作点を決定し、
前記の数種類のデータまたはそれから派生する特性値が、少なくとも必要な流量、望ましい圧力値、望ましいエネルギー消費量のうちの1つから成り、或いは、制御アルゴリズムを使用し、それにより、圧縮空気装置(1)が、当該制御器(6、9及び/又は13)によって圧縮空気装置(1)の適当な要素を制御することにより、温度、圧力、露点、容積、空気の質および流量等の一つまたは複数のパラメータが目標値に一致するように制御されるか、あるいはこれらのパラメータの一つまたは複数のものがある範囲内に保たれるように制御される
ことを特徴とする圧縮空気装置。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由のうち指摘事項4~6に係る理由は、概略、次のとおりのものである。
「本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号並びに同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
4.請求項1の「前記要素の制御が、」「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値のみが前記他の制御器に送られるように実現され、」との記載について、請求項1には、圧縮空気ネットワークの部分(複数の圧縮空気ネットワークの場合は各々のネットワークの部分)である要素が何であるかについて何ら記載はなく、さらに「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」の「前記要素」が、これらのデータを送る制御器によって直接的に制御される要素であるのか、当該制御器以外の他の制御器によって直接的に制御される要素であるのか、あるいはそれ以外であるのかも不明であることも相まって、「要素の数種類のデータ」との記載のみでは、当該データが要素の何を表す、あるいは要素の何に関連するデータであるのか技術常識から明らかとはいえない。さらに、「要素の数種類のデータのうちの限定された一部」との記載では、当該一部のデータがいかなる条件の下で限定されたいかなるデータであるのか技術常識から明らかであるとはいえないし、「それから派生する特性値」との記載では、「それ」が「要素の数種類のデータ」又は「要素の数種類のデータのうちの限定された一部」のいずれであるのか、また「派生する特性値」がいかなるデータであるのか技術常識から明らかであるとはいえない。
さらに、請求項1の記載では、後記5.で指摘するように、他の制御器からのデータを何と比較し、該比較の結果に応じてどのように要素の動作点を決定するのかが不明であるから、この点からも「要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」がいかなるデータであるのかが技術常識から明らかであるとはいえない。
したがって、請求項1及び同請求項を引用する請求項2~10に係る発明は、明確でない。
さらに、発明の詳細な説明には、本件出願に係る発明の実施形態として、制御器13が、制御器9に記憶されている仮想特性値にもとづいて、圧縮機10,11及び14のそれぞれが圧縮空気ネットワークに供給すべき圧縮ガスの流量を決定するものが記載されており(特に段落0033,0034参照)、制御器13が制御器9に記憶されている仮想特性値を用いるためには、当然、当該仮想特性値が制御器9から制御器13に送信されなければならないから、当該仮想特性値は「要素の数種類のデータのうちの限定された一部もしくはそれから派生する特性値」に相当すると考えられるが、「仮想特性値」とはいかなるものであるのか明らかではない。加えて、制御器13は、決定した圧縮機10及び11のそれぞれが圧縮空気ネットワークに供給すべき圧縮ガスの流量を制御器9に送信するが、制御器13から制御器9に送信される、圧縮機10及び11のそれぞれが圧縮空気ネットワークに供給すべき圧縮ガスの流量が「要素の数種類のデータのうちの限定された一部もしくはそれから派生する特性値」に相当するかも明らかではない。
また、発明の詳細な説明には、本件出願に係る発明の実施形態として、制御器26が、圧縮空気装置1の“仮想”要素の動作条件を示す、制御器25によって検出されるデータにもとづいて誘導特性値を計算するものが記載されているが、「誘導特性値」とはいかなるものであるのか明らかではないし、当該誘導特性値を計算するために用いられる「データ」も、当該誘導特性値がいかなるものであるのか明らかではない以上、当然、明らかではなく、更に「“仮想”要素」とはいかなるものであるかも明らかではない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件出願に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
5.補正後の請求項1の「各制御器が他の複数の制御器からのデータを比較し、当該制御器に接続されている要素の動作点を決定する」との記載は、依然として、他の複数の制御器からのデータを何と比較し、該比較の結果に応じてどのように前記要素の動作点を決定するのかが不明である。
また、前記4.で指摘したとおり、「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」が明確でないことも相まって、「他の複数の制御器からのデータ」が、「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」のみを意味するのか、あるいはそれ以外のものをも包含するのかが不明である(例えば、「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」の「前記要素」が、これらのデータを送る制御器によって直接的に制御される要素のみを意味し、かつ「他の複数の制御器からのデータ」が「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」のみを意味するとすれば、制御器13が決定して制御器9に送信する、圧縮機10及び11のそれぞれが圧縮空気ネットワークに供給すべき圧縮ガスの流量は、「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」に含まれず、「他の複数の制御器からのデータ」にも含まれないこととなる。)。
したがって、請求項1及び同請求項を引用する請求項2~10に係る発明は、明確でない。
さらに、前記4.で指摘した事項も相まって、発明の詳細な説明は、本件出願に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
6.発明の詳細な説明の記載からみて、本件出願に係る発明は、明細書の段落0004~0008に記載された、圧縮空気装置を制御する従来の方法の、「割合に要素の少ない簡単な圧縮空気ネットワークしか制御できない」という欠点(段落0009)や、「そのような方法の場合、複雑な制御器の使用が必要になり、そのような制御器は高価であり、また、そのような制御器により、圧縮空気装置の構成と制御論理とにかかる費用と規模とが割合に大きくなる、」「多数のパラメータを考慮しなければならない場合には、特にそうである」という欠点(段落0010)を克服することを解決すべき課題としている。
そして、本件出願に係る発明は、前記課題を解決するため、「前記要素の制御が、制御器のうちどれも他の制御器によって直接的に制御される全ての要素の動作条件を決定しないように実現され、且つ前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値のみが前記他の制御器に送られるように実現され」るようにするものであるが、請求項1には、これらを実現するための手段が記載されていないため、請求項1に係る発明は、発明が解決しようとする課題を解決できるものではない。」
第4 当審の判断
1.当審拒絶理由の指摘事項4及び5についての判断
(1)手続補正により、本願発明1において、一つの圧縮空気ネットワークの部分である「要素」が、「少なくとも、圧縮空気ユーザー、圧縮機、ファン、乾燥機、熱交換器、フィルター、水分分離器、油分離器、冷却塔、圧縮空気の処理装置、圧縮空気弁または流量センサーのうちの複数の要素から成り」、他の制御器に送られる「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」の「数種類のデータまたはそれから派生する特性値」が、「少なくとも必要な流量、望ましい圧力値、望ましいエネルギー消費量のうちの1つから成」ることが特定された。
しかしながら、手続補正後の請求項1の「前記の数種類のデータまたはそれから派生する特性値が、少なくとも必要な流量、望ましい圧少なくとも必要な流量、望ましい圧力値、望ましいエネルギー消費量のうちの1つから成り」との記載は、前記数種類のデータ又は特性値が前記必要な流量、望ましい圧力値及び望ましいエネルギー消費量以外のデータをも含むことを排除するものではない。また、「数種類」との記載は、データの種類が2つ以上であることを特定するのみであって、データの種類の上限を特定するものではない。そうすると、依然として、「前記要素の数種類のデータ」が、当該要素の何を表す、あるいは要素の何に関連するデータであるのかが明確ではなく、データの種類がいくつであるのかも実質的に特定されていない。
その結果、前記のとおり、「前記の数種類のデータまたはそれから派生する特性値」が少なくとも必要な流量、望ましい圧力値、望ましいエネルギー消費量のうちの1つから成ることが特定され、更に平成30年12月5日付けの意見書(以下、単に「意見書」という。)において、請求人が、「それから派生する特性値」の「それ」は「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部」を指す旨説明しているとはいえ、前記一部のデータ若しくは特性値の前提となる「前記要素の数種類のデータ」の範囲が不明である以上、「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部」の範囲は明確ではなく、「そこから派生する特性値」の範囲も明確ではない(「前記要素の数種類のデータ」は、前記のとおり、前記必要な流量、望ましい圧力値及び望ましいエネルギー消費量以外のデータをも含むことができ、かつ2種類以上の数限りない種類のパラメータを含みうる概念であるから、結果として、他の制御器に送られる「前記要素の数種類のデータの一部」の内容が、前記必要な流量、望ましい圧力値及び望ましいエネルギー消費量のいずれも含まないことも、また本願の発明の詳細な説明に記載された背景技術において他の制御器に送られる多数のパラメータと異ならないこともありえる。)。
したがって、本願発明1は、明確ではない。
(2)ア.手続補正により、本願発明1において、前記「(1)」で検討した事項に加え、前記要素を制御するための通信しあう複数の制御器のそれぞれに複数の前記要素が接続され、一の前記制御器に接続される複数の前記要素の種類が一つではないこと、前記通信しあう制御器がいわゆる圧縮空気装置の分散制御を行い、各制御器は、当該制御器に直接又は間接に接続された要素の動作条件しか決定しないことが特定され、更に当該制御器によって圧縮空気装置の適当な要素を制御することにより、温度、圧力、露点、容積、空気の質および流量等の一つまたは複数のパラメータが目標値に一致するように制御されるか、あるいはこれらのパラメータの一つまたは複数のものがある範囲内に保たれるように制御されることが特定された。
すなわち、本願発明1は、少なくとも、圧縮空気ユーザー、圧縮機、ファン、乾燥機、熱交換器、フィルター、水分分離器、油分離器、冷却塔、圧縮空気の処理装置、圧縮空気弁または流量センサーのうちの複数かつ複数種類の要素が前記複数の制御器の各々に直接又は間接に接続され、前記各制御器は、当該制御器に直接又は間接に接続された前記複数かつ複数種類の要素の動作条件しか決定せず、且つ前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値のみを他の制御器に送るものである。
そして、本願発明1は、前記各制御器が他の複数の制御器からのデータを比較し、当該制御器に接続されている前記複数かつ複数種類の要素の動作点を決定するものであって、請求人は、この点に関し、意見書において、前記各制御器は他の制御器からのデータ同士を比較すると説明している。
イ.前記各制御器が他の制御器に送る、前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値(以下、「送付データ」という。)の種類が特定されたとしても、前記送付データの具体的な値が何を意味しているのか(例えば、圧縮空気ネットワークへの圧縮空気の供給量の増加要求であるのか、該供給量の減少要求であるのか、あるいは他の意味であるのか。)を前記各制御器が判断することができなければ、他の制御器から送られた前記送付データ同士を比較としたとしても、前記各制御器は、当該比較結果が何を意味するのかを判断することできず、当該制御器に直接又は間接に接続された前記要素の動作条件を決定できない。
前記各制御器に直接又は間接に接続されている前記複数かつ複数種類の要素の各々の特性は、少なくとも種類ごとに異なり、更に当該複数かつ複数種類の要素全体としての特性は、前記要素の具体的な個数や種類のみならず、前記要素間の圧縮空気系としての接続関係や前記送付データを送る時点での前記要素の各々の動作状態によっても異なる(例えば、本願の発明の詳細な説明及び図面に記載された実施形態において、第二の制御器9に接続された圧縮機10及び圧縮機11並びに乾燥機12全体は、第一の制御器6に接続された温度センサー7及び冷却塔8全体とは、要素の個数及び種類が異なるから、全体としての特性が異なることは当然であるが、圧縮機10、圧縮機11及び乾燥機12間の圧縮空気系としての接続関係や、圧縮機10、圧縮機11及び乾燥機12のうちの稼働している要素の組合せによっても、圧縮機10及び圧縮機11並びに乾燥機12全体としての特性は、変化する。)。そして、前記各制御器に直接又は間接に接続されている前記複数かつ複数種類の要素全体としての特性が異なれば、該制御器から他の制御器に送られる前記送付データの具体的な値の意味は、当然、異なることになる。
すなわち、各制御器から他の制御器に送られる前記送付データは、当該送付データ送付時点における、当該各制御器に直接又は間接に接続されている前記複数かつ複数種類の要素全体の特性を他の制御器が判断できるものでなければならない。そして、本願の発明の詳細な説明に記載された背景技術は、そのためにも、集中制御する単一の制御器や“マスター”制御器に多数のパラメータを送っている。
ウ.しかしながら、本願の発明の詳細な説明及び図面の記載を参照しても、前記各制御器が他の制御器に送る、前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値であって、当該制御器に直接又は間接に接続されている前記複数かつ複数種類の要素全体の特性を他の制御器が判断できるものをどのように選定し及び/又は派生させるのか不明である。
本願の発明の詳細な説明の段落0017~0052及び図1に記載された実施形態は、制御器13が、制御器9から同制御器に記憶されている特性値のみ送られ、同特性値にもとづいて、圧縮機10と11との全体の寄与に対する最適配分を決定するものであり(特に段落0033,0034,0037参照)、更に当該「特性値」とは、「圧縮空気装置1の“仮想”要素に関する指標となるものである。」(段落0031)。しかしながら、本願の発明の詳細な説明を参照しても、そもそも、「圧縮空気装置1の“仮想”要素」とはいかなるものであって、当該“仮想”要素に関する指標とは何かが明らかではなく、かつ当該指標となる特性値をどのように選定し及び/又は派生させるのかも明らかではない。
更に、本願の発明の詳細な説明には、前記実施形態に関連して、「必ずしも制御器13が“マスター”で、制御器9が“スレーブ”である必要はなく、逆も同様に可能である。あるいは、さらに制御器9と13が同格であって、相互通信によって分配の仕方を決定することも可能である。」(段落0039)とも記載されているが、制御器9と制御器13のいずれが“マスター”であったとしても、前記指摘した事項に変わりはなく、前記「制御器9と13が同格であって、相互通信によって分配の仕方を決定する」制御をどのように実現するのかも本願の発明の詳細な説明には記載されていない。
また、本願の発明の詳細な説明の段落0053~0064及び図2に記載された実施形態は、制御器26が、制御器25に接続された乾燥機33の動作条件を決定しているから(特に段落0056,0061参照)、「前記要素の制御が、制御器(6、9、13、23、24、25または26)のうちどれも他の制御器によって直接的に制御される全ての要素の動作条件を決定しないように実現され、各制御器(6、9、13、23、24、25、26)は、当該制御器に直接又は間接に接続された要素の動作条件しか決定せず」というものではない。そうすると、本願の発明の詳細な説明の段落0053~0064及び図2に記載された実施形態は、そもそも、本願発明1の実施形態ではない。加えて、同実施形態は、制御器26が、圧縮空気装置1の“仮想”要素の動作条件を示す、制御器25によって検出されるデータにもとづいて特性値を計算するものであるが、当該「特性値」とはいかなるものであるのか明らかではないし、当該特性値を計算するために用いられる「データ」及び当該データから前記特性値を計算する方法も、当該特性値がいかなるものであるのか明らかではない以上、当然、明らかではなく、更に「“仮想”要素」とはいかなるものであるかも明らかではない。
エ.したがって、発明の詳細な説明は、本願発明1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
2.当審拒絶理由の指摘事項6についての判断
ア.発明の詳細な説明の記載からみて、本願に係る発明は、明細書の段落0004~0008に記載された、圧縮空気装置を制御する従来の方法の、「割合に要素の少ない簡単な圧縮空気ネットワークしか制御できない」という欠点(段落0009)や、「そのような方法の場合、複雑な制御器の使用が必要になり、そのような制御器は高価であり、また、そのような制御器により、圧縮空気装置の構成と制御論理とにかかる費用と規模とが割合に大きくなる、」「多数のパラメータを考慮しなければならない場合には、特にそうである」という欠点(段落0010)を克服することを解決すべき課題としている。
そして、本願発明1は、手続補正後の請求項1に記載された事項を備えるものである。
しかしながら、手続補正後の請求項1に記載された、「―前記圧縮空気装置(1)の当該要素が、少なくとも、圧縮空気ユーザー、圧縮機、ファン、乾燥機、熱交換器、フィルター、水分分離器、油分離器、冷却塔、圧縮空気の処理装置、圧縮空気弁または流量センサーのうちの複数の要素から成り、」「前記複数の制御器のそれぞれに複数の前記要素が接続され、一の前記制御器に接続される複数の前記要素の種類が一つではな」い点は、本願発明1に係る圧縮空気ネットワークが、先に記載した、圧縮空気装置を制御する従来の方法の「割合に要素の少ない簡単な圧縮空気ネットワークしか制御できない」という欠点における「割合に要素の少ない簡単な圧縮空気ネットワーク」ではないことを記載したにすぎない。
また、手続補正後の請求項1に記載された「前記通信しあう制御器がいわゆる圧縮空気装置の分散制御を行い、」「―各制御器が他の複数の制御器からのデータを比較し、当該制御器に接続されている要素の動作点を決定し、」「圧縮空気装置が、当該制御器によって圧縮空気装置の適当な要素を制御することにより、温度、圧力、露点、容積、空気の質および流量等の一つまたは複数のパラメータが目標値に一致するように制御されるか、あるいはこれらのパラメータの一つまたは複数のものがある範囲内に保たれるように制御される」ことは、手続補正後の発明の詳細な説明に記載された背景技術と異なるところはない。
すなわち、手続補正後の請求項1に記載された上記事項は、背景技術のような「割合に要素の少ない簡単な圧縮空気ネットワーク」ではない圧縮空気ネットワークにおいて、背景技術と同様の制御結果を得るという、前記課題を解決したという効果を記載したものにすぎない。
そして、本願発明1は、「前記要素の制御が、制御器のうちどれも他の制御器によって直接的に制御される全ての要素の動作条件を決定しないように実現され、各制御器は、当該制御器に直接又は間接に接続された要素の動作条件しか決定せず、且つ前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値のみが前記通信ネットワークを通じて前記他の制御器に送られるように実現され、」「前記の数種類のデータまたはそれから派生する特性値が、少なくとも必要な流量、望ましい圧力値、望ましいエネルギー消費量のうちの1つから成り、或いは、制御アルゴリズムを使用」するものであるところ、「前記要素の数種類のデータのうち限定された一部もしくはそれから派生する特性値」の範囲は、前記「1(1)」で検討したとおり、「前記の数種類のデータまたはそれから派生する特性値が、少なくとも必要な流量、望ましい圧力値、望ましいエネルギー消費量のうちの1つから成」ることを考慮したとしても、明確ではないが、先に記載した、圧縮空気装置を制御する従来の方法の「多数のパラメータを考慮しなければならない場合には、特にそうである」という欠点における「多数のパラメータ」ではなく、前記課題を解決したという効果を記載しようとしたものにすぎず、また「制御アルゴリズムを使用」することは、制御において当然の事項を記載したにすぎない。
そうすると、手続補正後の請求項1に記載された事項であって、前記課題を解決するための手段といえるものは、「前記要素の制御が、制御器のうちどれも他の制御器によって直接的に制御される全ての要素の動作条件を決定しないように実現され、各制御器は、当該制御器に直接又は間接に接続された要素の動作条件しか決定せず」ということになるが、これは、複数の制御器の各々が当該制御器に接続された要素の動作条件を決定している点において、前記背景技術(特に段落0008参照)と異なるところはなく、手続補正後の請求項1には、前記背景技術において前記制御器に接続された要素の動作条件を決定するために必要とされたパラメータよりも少ないパラメータのみで前記制御器に接続された要素の動作条件を決定することを実現するための手段が記載されていない。
したがって、手続補正後の請求項1には、発明が解決しようとする課題を解決するための手段が記載されているとはいえない。
3.本願発明2及び本願発明3に関する判断
本願発明1ないし本願発明3は、本願発明1が「一つの圧縮空気ネットワークが接続された一つの通信ネットワーク(2)と、前記圧縮空気ネットワークの部分である要素を制御するための通信しあう複数の制御器(6、9、13、23、24、25または26)と、を有する圧縮空気装置(1)を制御する方法」に関する発明であり、本願発明2が「一つの圧縮空気ネットワークが接続された一つの通信ネットワーク(2)を有する圧縮空気装置(1)内の一連の通信しあう制御器の一部である制御器であって、前記一連の通信しあう制御器が前記圧縮空気ネットワークの部分である要素を制御するために備えられている場合の前記制御器」に関する発明であり、本願発明3が「一つの圧縮空気ネットワークが接続された一つの通信ネットワーク(2)と、前記圧縮空気ネットワークの部分である要素を制御するための通信しあう複数の制御器(6、9、13、23、24、25または26)と、を有する圧縮空気装置」に関する発明である。
しかしながら、本願発明1の制御方法の内容(手続補正後の請求項1の「・・・において、」より後かつ「ことを特徴とする」より前の記載により特定される事項)、本願発明2の制御器により実行される制御の内容(手続補正後の請求項2の「・・・において、」より後かつ「ことを特徴とする」より前の記載により特定される事項)、及び本願発明3の圧縮空気装置の制御の内容(手続補正後の請求項3の「・・・において、」より後かつ「ことを特徴とする」より前の記載により特定される事項)に異なるところはない。
そうすると、手続補正後の請求項1に係る発明である本願発明1についての前記判断は、手続補正により削除された手続補正前の請求項2及び3に代えて、手続補正により新たに追加された手続補正後の請求項2及び3に係る発明である本願発明2及び本願発明3についても同様である。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-018048