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特許拒絶査定不服審判

2016-017215

冷媒充填型回転式圧縮機

審判番号
2016-017215
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-538266外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年11月18日
審決日
2017年12月18日
公報発行日
2018年06月29日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (F04C) / P18 .537-WZ (F04C) / P18 .536-WZ (F04C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-538266「冷媒充填型回転式圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/042947、平成27年11月 5日国内公表、特表2015-531846〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,2013年(平成25年) 9月30日を国際出願日とする出願であって,平成27年11月 9日付けで拒絶理由を通知し(発送日:同年11月17日),平成28年 2月 8日に意見書が提出され,同年 7月14日付けで拒絶査定(送達日:同年 7月19日)がなされ,これに対して,同年11月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。 そして,当審において,平成29年 7月 7日付けで拒絶理由を通知し(発送日:同年 7月11日),同年 10月 3日に意見書が提出されたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明 出願当初の特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,本願の請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 ハウジングと,前記ハウジング内に設けられた圧縮機構と,吐出管と,吐出弁とを備える冷媒充填型回転式圧縮機において, 前記圧縮機構は, 内壁に充填ポートが設けられているシリンダー室,スライドシート用溝及び排気ポートを含み,充填穴を有する充填通路が設けられたシリンダーと, 前記シリンダーの上に設けられたメインベアリングと, 前記シリンダーの下に設けられた補助ベアリングと, 前記メインベアリング,前記シリンダー室及び前記補助ベアリングを貫通したクランクシャフトと, 前記シリンダー室内に回動可能に設けられて,且つ前記クランクシャフトに套設されたピストンと, 前記スライドシート用溝内に移動可能に設けられており,一端が前記ピストンの外周面に当接するように前記シリンダー室内に延長するスライドシートとを含み, 前記吐出管は,前記ハウジングを貫通して前記充填通路内に挿入し, 前記吐出弁は,前記シリンダーに設けられており,前記シリンダー室内の圧力が前記充填穴内の圧力より大きい時に,前記充填穴と前記充填ポートとを隔離するように閉弁状態となり,前記シリンダー室内の圧力が前記充填穴内の圧力より小さい時に,前記充填穴と前記充填ポートとを導通するように開弁状態となり,前記吐出弁が閉弁状態にある時に,前記吐出弁と前記充填ポートとの間の圧縮気体が進入可能な隙間である前記吐出弁で形成されたすきま容積と前記シリンダーの吸気容積との比の範囲が0.3%~1.5%であるように構成されていることを特徴とする冷媒充填型回転式圧縮機。」 (以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 2.引用例及びその記載事項 (1)当審の拒絶の理由に引用された特開2012-93017号公報(以下,「引用例1」という。)には,「冷凍サイクル装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審により付与した。以下同様。)。 ・「【0043】 図2に示すように,下軸受19には,インジェクション流路10f(インジェクション管29)からインジェクションポート30に冷媒を導く内部流路19cが形成されている。内部流路19cには,逆止弁34が設けられている。逆止弁34は,第2吸入空間17の圧力がインジェクション流路10fの圧力(インジェクション吸入管29内の圧力)を下回った場合に開く。第2吸入空間17aの圧力がインジェクション流路10fの圧力以上のとき,逆止弁34は閉じている。すなわち,逆止弁34は,第2吸入空間17a又は第2吐出空間17bからインジェクション流路10fへの冷媒の逆流を防ぐ役割を担っている。本実施形態では,下軸受19にインジェクションポート30が設けられているので,逆止弁34を配置するための空間を下軸受19に比較的容易に確保できる。 【0044】 図2及び図5に示すように,本実施形態では,下軸受19が,第2シリンダ12に接している第1部分19aと,第2シリンダ12から離れている第2部分19bとによって構成されている。第1部分19aには,内部流路19cの一部として,逆止弁34を配置するための凹部19gが形成されている。 【0045】 図5に示すように,逆止弁34は,弁口33,弁本体31及び弁止め32によって構成されている。弁本体31は,例えば金属製の薄板(リード弁)で作られており,弁口33を開閉するようにインジェクション流路10fの圧力と第2の空間17(作動室)の圧力との差圧によって動かされる。弁止め32は,弁本体31の動きを制限する役割を担う。具体的に,弁止め32は,弁本体31の変位量(リフト量)を制限する支持面32pを有する。支持面32pは,緩やかな曲面で構成されている。弁止め32は,弁口33からインジェクションポート30までの空間の体積を減ずるように,凹部19gの形状に沿った形状を有する。本実施形態では,図7に示すように,弁止め32が全体として靴型の形状を有している。弁本体31及び弁止め32は,ボルト35で下軸受19(第2部分19b)に固定されている。 【0046】 図5及び図6に示すように,弁止め32は,凹部19gの寸法よりもやや小さい寸法を有している。弁止め32の周りには,冷媒が流通できる隙間SHが確保されている。弁本体31が図5に破線で示す位置に変位することで,隙間SH及びインジェクションポート30を通じて,内部流路19cから第2の空間17(作動室)へと冷媒が流通できる。弁止め32によれば,弁本体31の十分な可動範囲を確保しつつ,凹部19gと逆止弁34との間の隙間SHの体積を必要十分な体積まで減じることができる。 【0047】 図5及び図7に示すように,ボルト35の軸方向に関して,弁止め32の上面の位置は,ボルト35の頂面の位置に一致している。ボルト35の頭部の形状は,弁止め32に形成されたボルト孔の形状に沿っている。図6に示すように,弁止め32の周囲における隙間SHの断面積(流路面積)は,インジェクションポート30の断面積(流路面積)に等しい。このような構成によれば,死容積の増加を抑制しつつ,冷媒が隙間SHを流通するときの圧力損失を低減できる。」 ・「【0084】 (変形例) 第1及び第2実施形態において,容積型流体機械4は,2段ロータリ流体機械の構造を有する。容積型流体機械4と同じ機能を有する容積型流体機械として,他の型式,例えばスクロール式の流体機械を使用してもよい。さらに,シリンダ及びピストンをそれぞれ1つのみ備えた単段のロータリ流体機械の構造を有する容積型流体機械を採用してもよい。そのような容積型流体機械は,部品点数を削減,小型化及びコストを低減に有利である。 【0085】 図14は,変形例に係る容積型流体機械の縦断面図である。図15は,図14に示す容積型流体機械のW-W線に沿った横断面図である。容積型流体機械44は,密閉容器59,シャフト53,上軸受55,シリンダ51,ピストン52,ベーン57及び下軸受56を有する。このように,容積型流体機械44は,単段のロータリ流体機械の構造を有する。 【0086】 図14に示すように,シャフト53は半径方向の外向きに突出している偏心部53aを有する。シャフト53は,シリンダ51の中を貫いており,上軸受55及び下軸受56によって回転可能に支持されている。シャフト53の回転軸は,シリンダ51の中心に一致している。上軸受55及び下軸受56によってシリンダ51が閉じられている。 【0087】 図15に示すように,ピストン52は,平面視でリングの形状を有しており,自身とシリンダ51との間に三日月形の空間54を形成するようにシリンダ51内に配置されている。シリンダ51の内部において,シャフト53の偏心部53aにピストン52が取り付けられている。シリンダ51には,ベーン溝68が形成されており,ベーン溝68にベーン57がスライドできるように取り付けられている。ベーン57は,空間54をピストン52の周方向に沿って仕切っている。これにより,シリンダ51の内部に,吸入空間54a及び吐出空間54bが形成されている。ベーン57の背後には,ばね69が配置されている。ばね69は,ベーン57をシャフト53の中心に向かって押している。ベーン溝68には,密閉容器59の内部に溜められた潤滑油が供給される。なお,ピストン52とベーン57とが単一の部品,いわゆるスイングピストンで構成されていてもよい。また,ベーン57がピストン52に係合していてもよい。 【0088】 図14に示すように,容積型流体機械44は,さらに,吸入管58,吸入ポート60,吐出管62,吐出ポート63,インジェクションポート30及びインジェクション吸入管29を有する。吸入ポート60を通じて,空間54(詳細には吸入空間54a)に冷媒を供給できる。吐出ポート63を通じて,空間54(詳細には吐出空間54b)から冷媒を排出できる。吸入ポート60及び吐出ポート63には,それぞれ,吸入管58及び吐出管62が接続されている。吸入管58は,冷媒回路10(図1)における流路10bの一部を構成している。吐出管62は,冷媒回路10における流路10cの一部を構成している。吐出ポート63には,流路10cから吐出空間54bへの冷媒の逆流を防ぐ吐出弁64(逆止弁)が設けられている。吐出弁64は,典型的には,金属製の薄板で作られたリード弁である。吐出空間54bの圧力が吐出管62の内部の圧力(流路10cの圧力)を上回ると吐出弁64が開く。吐出空間54bの圧力が吐出管62の内部の圧力以下のとき,吐出弁64は閉じている。 【0089】 吸入ポート60及び吐出ポート63は,それぞれ,シリンダ51及び下軸受56に形成されている。ただし,吸入ポート60は,上軸受55又は下軸受56に形成されていてもよい。吐出ポート63は,上軸受55又はシリンダ51に形成されていてもよい。 【0090】 容積型流体機械44は,さらに,吸入ポート60を通じてシリンダ51の空間54に冷媒が流入するタイミングを制御する吸入機構61を有する。本変形例において,吸入機構61は,吸入弁61a及びソレノイド61bを含むソレノイドバルブで構成されている。ソレノイド61bの印加電圧のオンとオフを切り替えることにより,吸入弁61aの開閉を制御できる。 【0091】 インジェクションポート30は,吸入空間54aに冷媒を供給できるように,上軸受55に形成されている。インジェクションポート30には,吸入空間54a又は吐出空間54bからインジェクション流路10fへの冷媒の逆流を防ぐ逆止弁34が設けられている。インジェクションポート30及び逆止弁34の詳細な構造は,第1実施形態で説明した通りである。 【0092】 本変形例において,シャフト53の回転方向に関して,ベーン57が配置されている位置(ベーン溝68の位置)を0度の角度を有する「基準位置」と定義する。図15に示すように,シャフト53の回転方向(時計回り方向)に関して,インジェクションポート30は,例えば0~180度(又は0~90度)の範囲に設けられている。これにより,過度な過膨張を防止できる。吸入ポート60及び吐出ポート63は,ベーン57に隣接する位置に設けられている。 【0093】 容積型流体機械44において,吸入空間54aが冷媒を吸入,膨張及び過膨張させる作動室として機能する。吐出空間54bが冷媒を再圧縮及び吐出する作動室として機能する。」 ・段落【0085】,【0088】,【0091】,【0093】の記載事項及び図14の図示内容からみて,密閉容器59内に設けられた吸入,膨張,過膨張及び再圧縮する機構と,インジェクション吸入管29と逆止弁34とを備えたロータリ流体機械の構造を有する容積型流体機械44が理解できる。 ・図14の図示内容からみて,内部にインジェクションポート30が接続されている空間54が理解できる。 ・段落【0091】の「インジェクションポート30及び逆止弁34の詳細な構造は,第1実施形態で説明した通りである。」という記載事項により,第1実施形態の段落【0043】~【0047】の記載事項と図5の図示内容であるインジェクションポート30と逆止弁34の詳細な構造を,変形例である図14の上軸受55bのインジェクションポート30と逆止弁34にあてはめることにより,インジェクションポート30及び弁口33を有する内部流路が上軸受55に設けられていること,及び,逆止弁34は上軸受55に設けられていることが理解できる。 そして,図14の図示内容からみて,シリンダ51の上に設けられた上軸受55及びインジェクション吸入管29は密閉容器59を貫通して弁口33を有する内部流路に接続することが理解できる。 第1の実施形態の段落【0043】~【0047】の記載事項及び図5の図示内容を変形例である図14にあてはめると,第1の実施形態の第2の空間17が変形例のシリンダ51内の空間54になるから,逆止弁34は,前記空間54内の圧力が弁口33内部の圧力より大きい時に,前記弁口33とインジェクションポート30とを隔離するように閉弁状態となり,前記空間54内の圧力が前記弁口33内部の圧力より小さい時に,前記弁口33とインジェクションポート30とを導通するように開弁状態となることが理解できる。 ・段落【0086】の記載事項と図14の図示内容からみて,シリンダ51の下に設けられた下軸受56と,上軸受55,空間54及び下軸受56を貫通したシャフト53とが理解できる。 ・段落【0086】,【0087】の記載事項と図14,図15の図示内容からみて,ピストン52は,シリンダ51の内部において回転可能に支持されたシャフト53の偏心部に取り付けられているから,シリンダ51の内部に回動可能に設けられて,且つ,シャフト53に取り付けられていることが理解できる。 ・段落【0087】の「ばね69は,ベーン57をシャフト53の中心に向かって押している」という記載事項と図15の図示内容からみて,一端がピストン52の外周面に当接するようにシリンダ51内に延長するベーン57が理解できる。 そうすると,これらの事項に基づいて,引用例1の変形例に着目して,本願発明の表現に倣って整理すると,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「密閉容器59と,前記密閉容器59内に設けられた吸入,膨張,過膨張及び再圧縮する機構と,インジェクション吸入管29と逆止弁34とを備えたロータリ流体機械の構造を有する容積型流体機械44において, 前記吸入,膨張,再膨張及び再圧縮する機構は, 内部にインジェクションポート30が接続されている空間54,ベーン溝68及び吐出ポート63を含むシリンダ51と, 前記インジェクションポート30及び弁口33を有する内部流路が設けられるとともに前記シリンダ51の上に設けられた上軸受55と, 前記シリンダ51の下に設けられた下軸受56と, 前記上軸受55と前記空間54及び前記下軸受56を貫通したシャフト53と, 前記シリンダ51の内部に回動可能に設けられて,且つ,前記シャフト53に取り付けられたピストン52と, 前記ベーン溝68にスライドできるように取り付けられており,一端が前記ピストン52の外周面に当接するように前記空間54内に延長するベーン57とを含み, 前記インジェクション吸入管29は,前記密閉容器59を貫通して前記弁口33を有する前記内部流路内に接続し, 前記逆止弁34は,前記上軸受55に設けられており,空間54内の圧力が弁口33内部の圧力より大きい時に,前記弁口33とインジェクションポート30とを隔離するように閉弁状態となり,前記空間54内の圧力が弁口33内部の圧力より小さい時に前記弁口33とインジェクションポート30とを導通するように開弁状態となり, 死容積の増加を抑制する,ロータリ流体機械の構造を有する容積型流体機械44。」 (2)当審の拒絶の理由に引用された再公表特許2012/004993号公報(以下,「引用例2」という。)には,「ロータリ圧縮機及び冷凍サイクル装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている ・「【0026】 図2は,図1に示す冷凍サイクル装置100に使用されたロータリ圧縮機102の縦断面図である。図3は,図2に示すロータリ圧縮機102のA-A線に沿った横断面図である。ロータリ圧縮機102は,密閉容器1,モータ2,圧縮機構3及びシャフト4を備えている。圧縮機構3は,密閉容器1内の下部に配置されている。モータ2は,密閉容器1内において,圧縮機構3の上に配置されている。シャフト4によって,圧縮機構3とモータ2とが連結されている。密閉容器1の上部には,モータ2に電力を供給するための端子21が設けられている。密閉容器1の底部には,潤滑油を保持するための油溜り22が形成されている。 【0027】 モータ2は,ステータ17及びロータ18で構成されている。ステータ17は,密閉容器1の内壁に固定されている。ロータ18は,シャフト4に固定されており,かつシャフト4とともに回転する。 【0028】 密閉容器1の上部には,吐出管11が設けられている。吐出管11は,密閉容器1の上部を貫通しているとともに,密閉容器1の内部空間13に向かって開口している。吐出管11は,圧縮機構3で圧縮された冷媒を密閉容器1の外部に導く吐出流路としての役割を担う。つまり,吐出管11は,図1に示す流路10aの一部を構成している。ロータリ圧縮機102の動作時において,密閉容器1の内部空間13は,圧縮された冷媒で満たされる。つまり,ロータリ圧縮機102は,高圧シェル型の圧縮機である。高圧シェル型のロータリ圧縮機102によれば,冷媒でモータ2を冷却できるのでモータ効率の向上を期待できる。冷媒がモータ2で加熱されると,冷凍サイクル装置100の加熱能力も向上する。 【0029】 圧縮機構3は,冷媒を圧縮するようにモータ2によって動かされる。図2及び図3に示すように,圧縮機構3は,シリンダ5,主軸受6,副軸受7,ピストン8,マフラー9,第1ベーン32,第2ベーン33,第1吐出弁43,第2吐出弁44及び吸入逆止弁50を有する。本実施形態では,第1吸入孔19及び第2吸入孔20のうち,第2吸入孔20にのみ吸入逆止弁50が設けられている。 【0030】 シャフト4は,半径方向の外向きに突出した偏心部4aを有する。ピストン8は,シリンダ5の内部に配置されている。シリンダ5の内部において,シャフト4の偏心部4aにピストン8が取り付けられている。シリンダ5には,第1ベーン溝34及び第2ベーン溝35が形成されている。第1ベーン溝34は,シャフト4の回転方向に沿った第1の角度位置に形成されている。第2ベーン溝35は,シャフト4の回転方向に沿った第2の角度位置に形成されている。 【0031】 第1ベーン溝34には,ピストン8の外周面に接する先端を有する第1ベーン32(ブレード)がスライドできるように取り付けられている。第1ベーン32は,シリンダ5とピストン8との間の空間をピストン8の周方向に沿って仕切っている。第2ベーン溝35には,第2ベーン33(ブレード)がスライドできるように取り付けられている。第2ベーン33は,シリンダ5とピストン8との間の空間をピストン8の周方向に沿ってさらに仕切っている。これにより,シリンダ5の内部に,第1圧縮室25(主圧縮室)と,第1圧縮室25の容積よりも小さい容積を有する第2圧縮室26(インジェクション圧縮室)とが形成されている。 【0032】 第1ベーン32の背後には,シャフト4の中心に向かって第1ベーン32を押している第1ばね36が配置されている。第1ベーン溝34の後部は,密閉容器1の内部空間13に連通している。従って,密閉容器1の内部空間13の圧力が第1ベーン32の背面に加えられる。第2ベーン33はピストン8に結合されている。そのため,第2ベーン33の背後にばねは配置されていない。ただし,第2ベーン33の背後にばねが配置されていてもよい。第2ベーン溝35も密閉容器1の内部空間13に連通している。第1ベーン溝34及び第2ベーン溝35には,油溜り22に溜められた潤滑油が供給される。」 ・「【0049】 図2に示すように,主軸受6及び副軸受7は,シリンダ5を閉じるようにシリンダ5の上側及び下側にそれぞれ配置されている。マフラー9は,主軸受6の上部に設けられており,第1吐出弁43及び第2吐出弁44を覆っている。マフラー9には,圧縮された冷媒を密閉容器1の内部空間13に導くための吐出孔9aが形成されている。シャフト4は,マフラー9の中心部を貫通しているとともに,主軸受6及び副軸受7によって回転可能に支持されている。 【0050】 図2及び図3に示すように,本実施形態において,第1吸入孔19及び第2吸入孔20は,シリンダ5に形成されている。第1吸入孔19は,第1圧縮室25で圧縮するべき冷媒を第1圧縮室25に導く。第2吸入孔20は,第2圧縮室26で圧縮するべき冷媒を第2圧縮室26に導く。なお,第1吸入孔19及び第2吸入孔20は,それぞれ,主軸受6又は副軸受7に形成されていてもよい。 【0051】 本実施形態において,第2吸入孔20は,第1吸入孔19の開口面積よりも小さい開口面積を有する。第2吸入孔20の開口面積が小さければ小さいほど吸入逆止弁50の部品の寸法も小さい。このことは,吸入逆止弁50に起因する死容積(デッドボリューム)の増大を抑制する観点,及び設計の余裕を確保する観点で重要である。第1吸入孔19の開口面積をS1,第2吸入孔20の開口面積をS2としたとき,開口面積S1及びS2は,例えば1.1≦(S1/S2)≦30を満たす。なお,「死容積」とは,作動室として機能しない容積を意味する。一般に,容積型流体機械にとって,大きい死容積は好ましくない。 【0052】 図3に示すように,圧縮機構3には,第1吸入管14(主吸入管)及び第2吸入管16(インジェクション吸入管)が接続されている。第1吸入管14は,第1吸入孔19に冷媒を供給できるように,密閉容器1の胴部を貫通してシリンダ5に嵌め込まれている。第1吸入管14は,図1に示す流路10dの一部を構成している。第2吸入管16は,第2吸入孔20に冷媒を供給できるように,密閉容器1の胴部を貫通してシリンダ5に嵌め込まれている。第2吸入管16は,図1に示すインジェクション流路10jの一部を構成している。 【0053】 圧縮機構3には,さらに,第1吐出孔40(主吐出孔)及び第2吐出孔41(インジェクション吐出孔)が設けられている。第1吐出孔40及び第2吐出孔41は,それぞれ,主軸受6をシャフト4の軸方向に貫通する形で主軸受6に形成されている。第1吐出孔40は,第1圧縮室25で圧縮された冷媒を第1圧縮室25から第1圧縮室25の外(本実施形態ではマフラー9の内部空間)に導く。第2吐出孔41は,第2圧縮室26で圧縮された冷媒を第2圧縮室26から第2圧縮室26の外(本実施形態ではマフラー9の内部空間)に導く。第1吐出孔40及び第2吐出孔41には,それぞれ,第1吐出弁43及び第2吐出弁44が設けられている。第1圧縮室25の圧力が密閉容器1の内部空間13の圧力(冷凍サイクルの高圧)を上回った場合に,第1吐出弁43が開く。第2圧縮室26の圧力が密閉容器1の内部空間13の圧力を上回った場合に,第2吐出弁44が開く。 【0054】 マフラー9は,第1吐出孔40及び第2吐出孔41のそれぞれと密閉容器1の内部空間13とを結ぶ吐出流路としての役割を担う。第1吐出孔40を通じて第1圧縮室25の外に導かれた冷媒と第2吐出孔41を通じて第2圧縮室26の外に導かれた冷媒とがマフラー9の内部で合流する。合流した冷媒は,密閉容器1の内部空間13を経由して吐出管11に流入する。密閉容器1内には,マフラー9から吐出管11までの冷媒の流路上に位置するようにモータ2が配置されている。このような構成によれば,冷媒によるモータ2の冷却及びモータ2の熱による冷媒の加熱を効率的に行うことができる。 【0055】 本実施形態において,第2吐出孔41は,第1吐出孔40の開口面積よりも小さい開口面積を有する。第2吐出孔41の開口面積が小さければ小さいほど,第2吐出孔41に起因する死容積を小さくできる。第1吐出孔40の開口面積をS3,第2吐出孔41の開口面積をS4としたとき,開口面積S3及びS4は,例えば1.1≦(S3/S4)≦15を満たす。 【0056】 なお,第2吸入孔20の開口面積S2が第1吸入孔19の開口面積S1に等しい場合もありうる。さらに,第2吐出孔41の開口面積S4が第1吐出孔40の開口面積S3に等しい場合もありうる。各吸入孔及び各吐出孔の寸法は,それらを通過する冷媒の流量を考慮して適切に決定されるべきである。より詳細には,死容積と圧力損失とのバランスを考慮して決定されるべきである。 【0057】 本実施形態のロータリ圧縮機102は,以下に説明する理由により,吐出弁43及び44だけでなく,第2吸入孔20に設けられた吸入逆止弁50を備えている。特許文献2に記載された圧縮機501によれば,吸入行程から圧縮行程に移る際に副圧縮室527から吸入孔527aに多量の冷媒が逆流する可能性がある。このことは,圧縮機効率の低下を招く。そのため,特許文献2に記載された圧縮機501を用いて冷凍サイクル装置を構築したとしても,冷凍サイクルのCOPの向上は期待できない。吸入逆止弁50によれば,こうした問題を解決できる。 【0058】 図5に示すように,吸入逆止弁50は,弁本体51及び弁止め52を含む。シリンダ5の上面5pには平面視で短冊の形をした浅い溝5gが形成されており,その溝5gに弁本体51及び弁止め52が装着されている。溝5gは,シリンダ5の半径方向の外向きに延びているとともに,第2圧縮室26に連通している。第2吸入孔20は,溝5gの底部に開口している。詳細には,第2吸入孔20は,シリンダ5に形成された有底孔で構成されており,その有底孔は,溝5gの底部に開口している。第2吸入孔20に冷媒を供給できるように,シリンダ5の外周面からシリンダ5の中心に向かって延びる吸入流路5fがシリンダ5の内部に形成されている。その吸入流路5fに吸入管16が接続されている。 【0059】 図6Aに示すように,弁本体51は,第2吸入孔20を閉じる裏面51qと,第2吸入孔20を閉じたときに第2圧縮室26内の雰囲気に曝される表面51pとを有する。吸入逆止弁50の弁本体51の可動範囲が第2圧縮室26内に設定されている。弁本体51は,全体として薄板の形状を有しており,典型的には,薄い金属板(リード弁)で構成されている。 【0060】 図6Bに示すように,弁止め52は,第2吸入孔20を開くときに弁本体51の厚み方向への変位量を制限する支持面52qを有する。支持面52qは,弁止め52の厚みが第2圧縮室26に近づくにつれて減少するように,緩やかな曲面を形成している。すなわち,弁止め52は,全体として靴型のような形を有している。弁止め52の先端面52tは,シリンダ5の内径と同じ曲率半径の円弧の形状を有している。 【0061】 弁本体51は,第2吸入孔20を開閉できるように溝5gに配置されている。弁本体51が第2吸入孔20を閉じたときに支持面52qが第2圧縮室26内の雰囲気に曝されるように,弁止め52が溝5gに配置されている。弁本体51及び弁止め52は,ボルト等の締結具54によってシリンダ5に固定されている。弁本体51の後端部は弁止め52と溝5gとの間に挟まれて動けないが,弁本体51の先端部は固定されておらず,揺れ動ける。弁止め52及び第2吸入孔20を平面視したとき,第2吸入孔20は弁止め52の支持面52qに重なっている。 【0062】 弁止め52の後端部付近において,弁本体51の厚みと弁止め52の厚みとの合計の厚みは,溝5gの深さに概ね一致している。溝5gに弁本体51及び弁止め52を装着したとき,シリンダ5の厚み方向に関して,弁止め52の上面52pの位置はシリンダ5の上面の位置に一致する。 【0063】 図6Aに示すように,弁本体51は,第2吸入孔20を開閉するための幅広部分55を有する。幅広部分55の最大幅W1は,弁止め52の先端部の幅W2,言い換えれば,シリンダ5に面した位置における溝5gの幅よりも広い。幅広部分55により,第2吸入孔20を閉じるためのシール幅を確保しつつ,死容積の増大を抑制できる。 【0064】 図5及び図7に示すように,溝5gの深さは,例えば,シリンダ5の厚みの半分よりも小さい。また,溝5gの大部分は弁止め52によって埋められている。溝5gのごく一部が,弁本体51の可動範囲として残されている。 【0065】 吸入逆止弁50は,シャフト5の回転に伴って次のように動作する。第2圧縮室26の圧力が吸入流路5f及び第2吸入管16の圧力を下回った場合,弁本体51が弁止め52の支持面52qに沿う形状に変位する。言い換えれば,弁本体51が押し上げられる。これにより,第2吸入孔20と第2圧縮室26とが連通し,第2吸入孔20を通じて第2圧縮室26に冷媒が供給される。他方,第2圧縮室26の圧力が吸入流路5f及び第2吸入管16の圧力を上回った場合,弁本体51が元の平らな形状に復帰する。これにより,第2吸入孔20が閉じられる。従って,第2圧縮室26に吸入された冷媒が第2吸入孔20を通じて吸入流路5f及び第2吸入管16に逆流することを防止できる。 【0066】 本実施形態の吸入逆止弁50によれば,上記したいくつかの特徴的な構造により,吸入孔に逆止弁を設けることに基づく死容積の増大を抑制できる。つまり,吸入逆止弁50は,高い圧縮機効率の達成に寄与する。従って,本実施形態のロータリ圧縮機102を用いた冷凍サイクル装置100は,高いCOPを有する。」 ・段落【0058】の記載事項と図5,図7の図示内容からみて,内壁に溝5gによって形成されているポートが設けられている第2圧縮室26,第2吸入孔20を有する吸入流路5fが設けられたシリンダ5,及び,吸入逆止弁20がシリンダ5に設けられていることが理解できる。 ・段落【0049】の記載事項と図2の図示内容からみて,シリンダ5の上に設けられた主軸受6と,前記シリンダ5の下に設けられた副軸受7が理解できる。 ・段落【0030】,【0031】,【0049】の記載事項と図2,図3の図示内容からみて,主軸受6,第1圧縮室25,前記第2圧縮室26及び前記副軸受を貫通したシャフト4と,第1圧縮室25及び第2圧縮室26内に回動可能に設けられて,且つ前記シャフト4に取り付けられたピストン8が理解できる。 ・段落【0031】,【0032】の記載事項と図3の図示内容からみて,ベーン溝34,35内にスライドできるように設けられており,一端が前記ピストン8の外周面に当接又は結合するように第1圧縮室25及び第2圧縮室26内に延長するベーン32,33が理解できる。 ・段落【0052】の記載事項と図3,図5の図示内容からみて,第2吸入管16は,密閉容器1を貫通して吸入流路5fに接続されていることが理解できる。 ・段落【0065】の記載事項と図5の図示内容からみて,吸入逆止弁50は,第2圧縮室26内の圧力が第2吸入孔20内の圧力より大きい時に,第2吸入孔20と溝5gによって形成されているポートとを隔離するように閉弁状態となり,前記第2圧縮室26内の圧力が前記第2吸入孔20内の圧力より小さい時に,前記第2吸入孔20と前記溝5gによって形成されているポートとを導通するように開弁状態となることが理解できる。 そうすると,引用例2には,以下の事項が記載されていると認められる。 「密閉容器1と,前記密閉容器1内に配置された圧縮機構3と,第2吸入管16と,吸入逆止弁50とを備え,インジェクション流路10jが接続されたロータリ圧縮機102において, 前記圧縮機構3は, 内壁に溝5gによって形成されているポートが設けられている第2圧縮室26,ベーン溝34,35を含み,第2吸入孔20を有する吸入流路5fが設けられたシリンダ5と, 前記シリンダ5の上に設けられた主軸受6と, 前記シリンダ5の下に設けられた副軸受7と, 前記主軸受6,第1圧縮室25,前記第2圧縮室26及び前記副軸受7を貫通したシャフト4と, 第1圧縮室25及び第2圧縮室26内に回動可能に設けられて,且つ前記シャフト4に取り付けられたピストン8と, 前記ベーン溝34,35内にスライドできるように設けられており,一端が前記ピストン8の外周面に当接又は結合するように前記第1圧縮室25及び第2圧縮室26内に延長するベーン32,33とを含み, 前記第2吸入管16は,前記密閉容器1を貫通して前記吸入流路5fに接続し, 前記吸入逆止弁50は,前記シリンダ5に設けられており,前記第2圧縮室26内の圧力が前記第2吸入孔20内の圧力より大きい時に,前記第2吸入孔20と前記溝5gによって形成されているポートとを隔離するように閉弁状態となり,前記第2圧縮室26内の圧力が前記第2吸入孔20内の圧力より小さい時に,前記第2吸入孔20と前記溝5gによって形成されているポートとを導通するように開弁状態となり, 作動室として機能しない容積である死容積の増大を抑制して圧縮機効率を高めた, インジェクション流路10jが接続されたロータリ圧縮機102。」 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「密閉容器59」は前者の「ハウジング」に相当し,以下同様に,「吸入,膨張,再膨張及び再圧縮をする機構」は「圧縮機構」に,「インジェクション吸入管29」は「吐出管」に,「逆止弁34」は「吐出弁」に,「ロータリ流体機械の構造を有する容積型流体機械44」は「冷媒充填型回転式圧縮機」に,「インジェクションポート30」は「充填ポート」に,「空間54」は「シリンダー室」に,「ベーン溝68」は「スライドシート用溝」に,「吐出ポート63」は「排気ポート」に,「シリンダ51」は「シリンダー」に,「弁口33」は「充填穴」に,「内部流路」は「充填通路」に,「上軸受55」は「メインベアリング」に,「下軸受56」は「補助ベアリング」に,「シャフト53」は「クランクシャフト」に,「シリンダ51の内部」は「シリンダー室内」に,「ベーン57」は「スライドシート」に,「弁口33内部」は「充填穴内」に,「死容積」は「すきま容積」に,それぞれ相当する。 後者の「前記シャフト53に取り付けられたピストン52」は前者の「前記クランクシャフトに套設されたピストン」に相当し,後者の「前記ベーン溝68にスライドできるように取り付けられて」いる態様は前者の「前記スライドシート用溝に移動可能に設けられて」いる態様に相当する。 後者の「前記インジェクション吸入管29は,前記密閉容器59を貫通して前記弁口33を有する前記内部流路内に接続」する態様は,前者の「前記吐出管は,前記ハウジングを貫通して充填通路内に挿入」する態様に相当する。 後者の「死容積の増加を抑制する」態様と前者の「前記吐出弁が閉弁状態にある時に,前記吐出弁と前記充填ポートとの間の圧縮気体が進入可能な隙間である前記吐出弁で形成されたすきま容積と前記シリンダーの吸気容積との比の範囲が0.3%~1.5%であるように構成されていること」とは,「すきま容積の大きさを考慮して構成された」点で共通する。 そうすると,両者は, 「ハウジングと,前記ハウジング内に設けられた圧縮機構と,吐出管と吐出弁とを備えた冷媒充填型回転式圧縮機において, 前記圧縮機構は, シリンダー室,スライドシート用溝及び排気ポートを含むシリンダーと, 前記シリンダーの上に設けられたメインベアリングと, 前記シリンダーの下に設けられた補助ベアリングと, 前記メインベアリングと前記シリンダー室及び前記補助ベアリングを貫通したクランクシャフトと, 前記シリンダー室内に回動可能に設けられて,且つ前記クランクシャフトに套設されたピストンと, 前記スライドシート用溝に移動可能に設けられており,一端が前記ピストンの外周面に当接するように前記シリンダー室内に延長するスライドシートとを含み, 前記吐出管は,前記ハウジングを貫通して充填通路内に挿入し, 前記吐出弁は,前記シリンダー室内の圧力が充填穴内の圧力より大きい時に,前記充填穴と充填ポートとを隔離するように閉弁状態となり,前記シリンダー室内の圧力が前記充填穴内の圧力より小さい時に前記充填穴と前記充填ポートとを導通するように開弁状態となり, すきま容積の大きさを考慮して構成された,冷媒充填型回転式圧縮機。」 の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。 <相違点1> 本願発明では,「内壁に充填ポートが設けられているシリンダー室」を含み,「充填穴を有する充填通路」及び「吐出弁」が「シリンダーに」設けられているのに対して,引用発明では,空間54(シリンダー室)の内部にインジェクションポート30(充填ポート)が接続されているものの,「インジェクションポート30(充填ポート)」,「弁口33(充填穴)を有する内部流路(充填通路)」及び「逆止弁34(吐出弁)」が上軸受55(メインベアリング)に設けられている点。 <相違点2> すきま容積の大きさを考慮することに関して,本願発明では,「前記吐出弁が閉弁状態にある時に,前記吐出弁と前記充填ポートとの間の圧縮気体が進入可能な隙間である前記吐出弁で形成されたすきま容積とシリンダーの吸気容積との比の範囲が0.3%~1.5%であるように構成されている」のに対して,引用発明では,死容積(すきま容積)の増加を抑制したものの,それ以上の特定はなされていない点。 4.相違点の検討 <相違点1について> 本願発明と引用例2に記載された事項を対比すると,後者の「密閉容器1」は前者の「ハウジング」に相当し,以下同様に,「第2吸入管16」は「吐出管」に,「吸入逆止弁50」は「吐出弁」に,「インジェクション流路10jが接続されたロータリ圧縮機102」は「冷媒充填型回転式圧縮機」に,「溝5gによって形成されているポート」は「充填ポート」に,「第2圧縮室26」は「シリンダー室」に,「ベーン溝34,35」は「スライドシート用溝」に,「吸入流路5f」は「充填通路」に,「シリンダ5」は「シリンダー」に,「主軸受6」は「メインベアリング」に,「副軸受7」は「補助ベアリング」に,「シャフト4」は「クランクシャフト」に,「ベーン32,33」は「スライドシート」に,「第2吸入孔20」は「充填穴」に,それぞれ相当する。 後者の「前記密閉容器1内に配置された圧縮機構3」は前者の「前記ハウジング内に設けられた圧縮機構」に相当する。 後者の「作動室として機能しない容積である死容積」は前者の「吐出弁が閉弁状態にある時に,前記吐出弁と充填ポートとの間の圧縮気体が進入可能な隙間である前記吐出弁で形成されたすきま容積」に相当する。 そうすると,引用例2には,以下の事項が開示されているといえる。 「ハウジングと,前記ハウジング内に設けられた圧縮機構と,吐出管と,吐出弁とを備える冷媒充填型回転式圧縮機において, 前記圧縮機構は, 内壁に充填ポートが設けられているシリンダー室,スライドシート用溝を含み,充填穴を有する充填通路が設けられたシリンダーと, 前記シリンダーの上に設けられたメインベアリングと, 前記シリンダーの下に設けられた補助ベアリングと, 前記メインベアリング,第1圧縮室25,前記シリンダー室及び前記補助ベアリングを貫通したクランクシャフトと, 第1圧縮室25及びシリンダー室内に回動可能に設けられて,且つ前記クランクシャフトに套設されたピストンと, 前記スライドシート用溝内に移動可能に設けられており,一端が前記ピストンの外周面に当接又は結合するように前記第1圧縮室25及びシリンダー室内に延長するスライドシートとを含み, 前記吐出管は,前記ハウジングを貫通して前記充填通路に接続し, 前記吐出弁は,前記シリンダーに設けられており,前記シリンダー室内の圧力が前記充填穴内の圧力より大きい時に,前記充填穴と前記充填ポートとを隔離するように閉弁状態となり,前記シリンダー室内の圧力が前記充填穴内の圧力より小さい時に,前記充填穴と前記充填ポートとを導通するように開弁状態となり, 前記吐出弁が閉弁状態にある時に,前記吐出弁と前記充填ポートとの間の圧縮気体が進入可能な隙間である前記吐出弁で形成されたすきま容積の増大を抑制して圧縮機効率を高めた,冷媒充填型回転式圧縮機。」 一方,引用発明を開示する引用例1には,段落【0089】に「吸入ポート60及び吐出ポート63は,それぞれ,シリンダ51及び下軸受56に形成されている。ただし,吸入ポート60は,上軸受55又は下軸受56に形成されていてもよい。吐出ポート63は,上軸受55又はシリンダ51に形成されていてもよい。」と記載されており,容積型流体機械の構成要素であって,流体が通過するポートである点でインジェクションポート30と共通する「吸入ポート60,吐出ポート63」を「シリンダ51,上軸受55又は下軸受56」のいずれにも選択的に設け得ることが示唆されている。 そして,引用例2には,「内壁に充填ポートが設けられているシリンダー室,充填穴を有する充填通路が設けられたシリンダー,及び,吐出弁は前記シリンダーに設けられていること」が開示されている(以下,「開示事項1」という。)から,単一のシリンダー室に吸入ポート,吐出ポート及び充填ポートを接続するタイプの冷媒充填型回転式圧縮機である引用発明であって,シリンダー,メインベアリング又は補助ベアリングのいずれかにポート等の流体を制御する部材を設けてもよいという示唆のある引用例1に,引用例2の上記開示事項1を適用して,上記相違点1における本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得た事項である。 <相違点2> 一般的にシリンダーの吸気容積に対する死容積(すきま容積)の比率は,圧縮可能な容積に対して圧縮できない容積を表す比率であるから,圧縮機効率(圧縮比)の向上のためには小さい方が良いものである。 しかしながら,引用発明を開示する引用例1の図5や引用例2の図5の図示内容を参照すれば,引用発明や引用例2における前記死容積(すきま容積)は流路を形成するものであって,かつ,前記吐出弁を動作可能とするためのものであるから,圧縮気体の流通のために0にはできないものであり,さらに,小さ過ぎれば,製造コストが上昇することや圧力損失によって効率が低下することは当業者にとって明らかである。 してみれば,引用発明において,圧縮機効率を考慮した図5の図示内容を含む引用例2に開示された事項を適用したものの,前記シリンダーの吸気容積に対する前記すきま容積の比率について,死容積を小さくすることによる圧縮機効率向上効果のみならず,死容積を小さくしたことに伴う製造コストや圧力損失による効率低減効果をも考慮して決定することに格別の困難性は認められず,具体的にどの程度とするかは,製造コストや効率を考慮して当業者が適宜決め得るものと認められる。 よって,引用発明において,圧縮機効率を考慮した図5の図示内容を含む引用例2に開示された事項を適用することにより,上記相違点1における本願発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願発明の効果について検討しても,引用発明,引用例2に開示された事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明は,引用発明,引用例2に開示された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3 当審の拒絶理由2)について 1.当審における平成29年 7月 7日付けの拒絶理由2)は以下のとおりである。 「2)本件出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1の「シリンダーの吸気容積」が不明である。同様に,請求項7の「第1シリンダーの吸気容積」,「第2シリンダーの吸気容積」が不明である。明細書における根拠を示すと共に,意見書にて,図面等を用いて説明されたい。 (2)請求項5には「前記充填ポートの中心点と前記シリンダーの中心点との連結線と,前記スライドシート用溝の中心線とで形成される挟み角をAとし,前記排気ポートの中心点と前記シリンダーの中心点との連結線と,前記スライドシート用溝の中心線とで形成される挟み角をB」とした訳語があるが,図面を用いて説明されていないため,挟み角Aと挟み角Bが明確でない。 意見書にて図面を用いて説明されたい。 (3)上記(2)と同様に請求項11における「挟み角E」,「挟み角E」,請求項12における「挟み角G」,「挟み角K」が明確でない。 意見書にて図面を用いて説明されたい。」 2.当審の拒絶理由2)についての判断 請求人は,意見書を提出して,記載不備ではない旨主張するが,上記(2)(3)については,依然として,特許請求の範囲の記載は明確でなく,また,発明の詳細の記載は,発明が実施できる程度に明確且つ十分に記載されたものではない。 (1)「(2)について」 請求項5の「充填ポートの中心点」,「排気ポートの中心点」が何を示すのかが,図面もないため明確でないから,「前記充填ポートの中心点と前記シリンダーの中心点との連結線」及び「前記排気ポートの中心点と前記シリンダーの中心点との連結線」が何を示すのかが不明であって,結局「挟み角A」,「挟み角B」が不明となり,請求項5の記載では発明が明確に把握できない。 また,発明の詳細な説明を参照しても,段落【0040】の「充填ポート2011の中心点とシリンダー20の中心点との連結線とスライドシート用溝202の中心線とで形成される挟み角をAとし,排気ポート203の中心点とシリンダー20の中心点との連結線とスライドシート用溝202の中心線とで形成される挟み角をBとすれば,挟み角Aと挟み角Bとの関係は,A≦B+10°となる。」という記載以上の説明がないため,発明の詳細な説明の記載は,当業者が請求項5の発明が実施できる程度に明確且つ十分に記載されたものではない。 (2)「(3)について」 上記2.(1)と同様に,請求項11では,「前記第1シリンダーの前記充填ポートの中心点」,「前記第1シリンダーの前記排気ポートの中心点」が何を示すのかが,図面もなく明確でないから,「前記第1シリンダー前記充填ポートの中心点と前記シリンダーの中心点との連結線」及び「前記第1シリンダーの前記排気ポートの中心点と前記シリンダーの中心点との連結線」が何を示すのかが不明であって,結局「挟み角E」,「挟み角F」が不明となり,請求項11の記載では発明が明確に把握できない。 また,発明の詳細な説明を参照しても,段落【0056】の「第1シリンダー5における充填ポート2011の中心点と第1シリンダー5の中心点との連結線と,第1シリンダー5のスライドシート用溝202の中心線とで形成される挟み角をEとし,第1シリンダー5における排気ポート203の中心点と第1シリンダー5の中心点との連結線と,第1シリンダー5のスライドシート用溝202の中心線とで形成される挟み角をFとすれば,挟み角Eと挟み角Fとの関係は,E≦F+10°となる。」という記載以上の説明がないため,発明の詳細な説明の記載は,当業者が請求項11に係る発明が実施できる程度に明確且つ十分に記載されたものではない。 上記請求項11と同様に,請求項12では,「前記第2シリンダーの前記充填ポートの中心点」,「前記第2シリンダーの前記排気ポートの中心点」何を示すのかが,図面もないため明確でないから,「前記第2シリンダー前記充填ポートの中心点と前記シリンダーの中心点との連結線」及び「前記第2シリンダーの前記排気ポートの中心点と前記シリンダーの中心点との連結線」が何を示すのかが不明であって,結局「挟み角G」,「挟み角K」が不明となり,請求項12の記載では発明が明確に把握できない。 また,発明の詳細な説明を参照しても,段落【0057】の「第2シリンダー6の充填ポート2011の中心点と第2シリンダー6の中心点との連結線と,第2シリンダー6のスライドシート用溝202の中心線とで形成される挟み角をGとし,第2シリンダー6の排気ポート203の中心点と第2シリンダー6の中心点との連結線と,第2シリンダー6のスライドシート用溝202の中心線とで形成される挟み角をKとすれば,挟み角Gと挟み角Kとの関係は,G≦K+10°となる。」という記載以上の説明がないため,発明の詳細な説明の記載は,当業者が請求項12に係る発明が実施できる程度に明確且つ十分に記載されたものではない。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明,引用例2に開示された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また,本件出願は,明細書,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 そうすると,本願は,拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2016-017215

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