特許拒絶査定不服審判
2016-016298
発光モジュールおよび照明装置
- 審判番号
- 2016-016298
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-276708外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月01日
- 審決日
- 2017年11月20日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-276708「発光モジュールおよび照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月30日出願公開、特開2014-120708、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月19日の出願であって、平成28年4月19日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月23日付けで手続補正がされ、同年8月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年12月19日に前置報告がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし15に係る発明は、以下の引用文献及び引用文献2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2012-80083号公報
2.国際公開第2011/020751号
第3 本願発明
本願の請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明14」という。)は、平成28年11月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
第1発光素子と、当該第1発光素子から放射される光の一部を第1波長帯域の光に変換する蛍光体を含有する第1波長変換部材とを有し、前記第1発光素子から放射される光の残りの部分と前記第1波長変換部材で変換された前記第1波長帯域の光とを混合して第1の光を発する第1発光部と、
第2発光素子と、当該第2発光素子から放射される光の一部を第2波長帯域の光に変換する蛍光体を含有する第2波長変換部材とを有し、前記第2発光素子から放射される光の残りの部分と前記第2波長変換部材で変換された前記第2波長帯域の光とを混合して、前記第1の光とは色温度が異なる第2の光を発する第2発光部とを備え、
前記第1波長変換部材に含有される蛍光体の量子効率の温度依存性と、前記第2波長変換部材に含有される蛍光体の量子効率の温度依存性とが異なり、
前記第1波長変換部材が含有する蛍光体は、赤色蛍光体と第1緑色蛍光体であり、
前記第2波長変換部材が含有する蛍光体は、赤色蛍光体と、珪酸塩系蛍光体からなり前記第1緑色蛍光体とは量子効率の温度依存性が異なる第2緑色蛍光体であり、
前記第2波長変換部材における、前記赤色蛍光体および前記第2緑色蛍光体それぞれの含有量と含有比率は、
前記第2波長変換部材の温度が100℃未満では、CIE xy色度図において、前記第2の光の色度yが黒体軌跡の色度y以上となる領域に存在し、
前記第2波長変換部材の温度が100℃以上では、CIE xy色度図において、前記第2の光の色度yが黒体軌跡の色度yより小さい領域に存在するように設定されており、
前記第2緑色蛍光体の温度上昇に対する量子効率の低下率は、前記赤色蛍光体および前記第1緑色蛍光体の温度上昇に対する量子効率の低下率に比べて大きく、
前記第1の光の色温度は、前記第2の光の色温度よりも高く、
前記第1の光と前記第2の光とを混合した光は白色光である
ことを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
CIE xy色度図において、前記第2の光の色度座標は、前記第2波長変換部材の温度上昇に伴い色度xが増加し且つ色度yが減少するように移動する
ことを特徴とする請求項1記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記第1緑色蛍光体は、前記第1波長変換部材の温度が100℃以上となる温度領域において、10℃の温度上昇に対する量子効率の低下率が5%未満であり、
前記第2緑色蛍光体は、前記第2波長変換部材の温度が100℃以上となる温度領域において、10℃の温度上昇に対する量子効率の低下率が2.5%より大きく且つ90%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記赤色蛍光体は、前記第1、第2波長変換部材の温度が100℃以上となる温度領域において、10℃の温度上昇に対する量子効率の低下率が5%未満である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記第1緑色蛍光体は、ガーネット系蛍光体からなる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記第1波長変換部材における、前記赤色蛍光体および前記第1緑色蛍光体それぞれの含有量と含有比率は、
前記第1波長変換部材の温度が40℃以下の場合、CIE xy色度図において、前記第1の光の色度yが黒体軌跡の色度yより大きく且つ黒体軌跡との偏差が、CIE uv色度図において10duv以上となる領域に存在するように設定され、
前記第2波長変換部材における、前記赤色蛍光体および前記第2緑色蛍光体それぞれの含有量と含有比率は、
前記第2波長変換部材の温度が40℃以下の場合、CIE xy色度図において、前記第2の光の色度yが黒体軌跡の色度yより大きく且つ黒体軌跡との偏差が、CIE uv色度図において10duv以上となる領域に存在するように設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の発光モジュール。
【請求項7】
前記第1、第2発光素子それぞれは、複数個存在し且つ複数の前記第1発光素子および複数の前記第2発光素子は、それぞれ列状に配置され、
前記第1波長変換部材は、複数の前記第1発光素子を列毎に一括して覆うように配置され、
前記第2波長変換部材は、複数の前記第2発光素子を列毎に一括して覆うように配置され、
複数の前記第2発光素子の並び間隔は、複数の前記第1発光素子の並び間隔に比べて小さい
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項8】
前記第1、第2発光素子それぞれは、複数個存在し且つ複数の前記第1発光素子および複数の前記第2発光素子は、それぞれ列状に配置され、
前記第1波長変換部材は、複数の前記第1発光素子を列毎に一括して覆うように配置され、
前記第2波長変換部材は、複数の前記第2発光素子を個別に覆うように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項9】
基板を更に備え、
前記第1、第2発光素子それぞれは、複数個存在し、
前記基板上において、複数の前記第1発光素子が配置される第1領域は、複数の前記第2発光素子が配置される第2領域を囲繞しており、
前記第1波長変換部材は、前記基板の前記第1領域に、複数の前記第1発光素子を覆うように配置され、
前記第2波長変換部材は、前記基板の前記第2領域に、複数の前記第2発光素子を覆うように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項10】
前記第1発光素子が配置される第1部位および当該第1部位に比べて伝熱性が低く且つ前記第2発光素子が配置される第2部位を有する基板を更に備え、
前記第1波長変換部材は、前記第1部位に、前記第1発光素子を覆うように配置され、
前記第2波長変換部材は、前記第2部位に、前記第2発光素子を覆うように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項11】
前記第2波長変換部材と熱的に結合した熱源を更に備える
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項12】
前記熱源は、可視光に対して透明であり且つ前記第2波長変換部材を覆うように配置されている
ことを特徴とする請求項11記載の発光モジュール。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の発光モジュールと、
前記第1発光部の光量と前記第2発光部の光量との比率を制御する光量比率制御手段とを備える
ことを特徴とする照明装置。
【請求項14】
前記光量比率制御手段は、前記第1発光素子への電流供給量と前記第2発光素子への電流供給量とを制御することにより、前記第1発光部の光量と前記第2発光部の光量との比率を制御する
ことを特徴とする請求項13に記載の照明装置。」
第4 刊行物の記載及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2012-80083号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに、以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【請求項1】
基板と、
前記基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第1の発光素子と、
前記基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第2の発光素子と、
前記第1の発光素子上に形成され、第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、
前記第2の発光素子上に形成され、50℃での発光効率が前記第1の蛍光体より高く、150℃での発光効率が前記第1の蛍光体より低い第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
……
【請求項6】
前記第1の蛍光体は、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表わされる組成を有し、前記第2の蛍光体は下記一般式(3)で表わされる組成を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の発光装置。
(M1-x1Eux1)3-y1Si13-z1Al3+z1O2+uN21-w (1)
(上記一般式(1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、y1、z1、u、wは、次の関係を満たす。
0<x1<1、
-0.1<y1<0.3、
-3<z1≦1、
-3<u-w≦1.5)
(M’1-x2Eux2)a1Sib1AlOc1Nd1 (2)
(上記一般式(2)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす。
0<x2<1、
0.55<a1<0.95
2.0<b1<3.9、
0.<c1<0.6、
4<d1<5.7)
(Ba1-y2-z2-x3Cay2Srz2Eux3)a23Sib2Oc2 (3)
(上記一般式(3)中、x3、y2、z2、a2、b2、c2は、次の関係を満たす。
0<x3≦1、
0≦y2≦1、
0≦z2≦1、
1.5<a2<2.5
0.5<b2<1.5、
3.5<c2<4.5)
【請求項7】
前記第2の蛍光体層の温度が使用状態で100℃未満であることを特徴とする請求項6記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1の発光素子と前記第1の蛍光体層により白色光が出射され、かつ、前記第2の発光素子と前記第2の蛍光体層により白色光が出射されることを特徴とする請求項1ないし請求項7いずれか一項記載の発光装置。」
イ 「【背景技術】
【0002】
……
【0003】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、……高演色化あるいは高色域化には、青色の励起光と青色で励起され緑色の発光を示す蛍光体および青色で励起され赤色の発光を示す蛍光体を組み合わせた白色光源が望ましい。
【0004】
また、高負荷LEDは駆動により発熱し、蛍光体の温度が100~200℃程度まで上昇することが一般的である。このような温度上昇が起こると蛍光体の発光強度は一般に低下し、いわゆる温度消光が生ずる。このため、特に、高温領域、すなわち高電流(高電力)範囲で発光効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
……
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、低温から高温、すなわち低電流から高電流範囲で優れた発光効率を実現する発光装置を提供することにある。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。
【0010】
……
【0011】
また、本明細書中、「蛍光体の発光効率」とは、励起光の光エネルギーに対する、蛍光体の発する蛍光の光エネルギーの割合を意味する。また、「発光装置の発光効率」とは、発光装置の入力電力に対し、発光装置から発せられる全光束を意味する。
【0012】
また、本明細書中、「白色光」とは一般的に照明装置に用いられる異なる波長の光が混合した電球色、温白色、白色、昼白色、昼光色等を包含する概念である。」
エ 「【0014】
(第1の実施の形態)
……
【0015】
本実施の形態の発光装置は、低温で発光効率が高い蛍光体を含有する蛍光体層と、高温で発光効率が高い蛍光体含有する蛍光体層とを別個の発光素子上に備えることにより、全温度範囲すなわち、発光装置に入力される電流が低電流から高電流の全範囲で優れた発光効率を簡易に実現する。
【0016】
図1は、本実施の形態の発光装置の模式上面図である。図2は、図1のA-A模式断面図である。
【0017】
……
【0019】
……第1の発光素子14aおよび第2の発光素子16aは、例えば、青色LEDチップである。第1の発光素子14aと第2の発光素子16aは、同種の発光素子であっても異種の発光素子であってもかまわない。
【0020】
……
【0022】
本実施の形態では、上記特性を有する第1の蛍光体として、いわゆるサイアロン系の蛍光体を適用する。また、第2の蛍光体として、いわゆるシリケート系蛍光体を適用する。
【0023】
本実施の形態のサイアロン系の緑色蛍光体は下記一般式(1)で表わされる組成を有し、赤色蛍光体は下記一般式(2)で表わされる組成を有する。サイアロン系蛍光体は、比較的高温での発光効率の低下が少ない。すなわち、温度消光が少ないという特性を有する。」
【0024】
……
【0026】
上記一般式(1)で表わされる組成を有するサイアロン系蛍光体は緑色蛍光体(G)であり、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、青緑色から黄緑色にわたる領域の発光、すなわち波長490~580nmの間にピークを有する発光を示す。
【0027】
……
【0028】
上記一般式(2)で表わされる組成を有するサイアロン系蛍光体は赤色蛍光体(R)であり、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、橙色から赤色にわたる領域の発光、すなわち波長580~700nmの間にピークを有する発光を示す。
【0029】
……
【0030】
本実施の形態のシリケート系の蛍光体は、下記一般式(3)で表わされる組成を有する。シリケート系蛍光体は、比較的低温での発光効率が高いが、高温での発光効率の低下が大きい。すなわち、温度消光が大きいという特性を有する。
【0031】
……
【0032】
図3は、蛍光体の発光効率の比較図である。横軸は蛍光体の温度、縦軸は室温(25℃)でのサイアロン系蛍光体の発光効率で規格化した発光効率である。上記組成範囲内のサイアロン系とシリケート系の特性をプロットしている。
【0033】
サイアロン系蛍光体は、比較的高温での発光効率の低下が少ない。シリケート系蛍光体は、比較的低温での発光効率が高いが、高温での発光効率の低下が大きい。シリケート系蛍光体は、温度50℃での発光効率がサイアロン系より高く、150℃での発光効率が第1の蛍光体より低いという特性を有する。
【0034】
……
【0038】
そして、シリケート系蛍光体を用いた第2の蛍光体層の温度が100℃未満であることが、発光効率を維持する観点から望ましい。なお、蛍光体層、発光素子および発光素子が実装された直下の基板は、極めて近接しているため、蛍光体層の温度は、発光素子または発光素子が実装された直下の基板の温度を測定することによっても評価可能である。
【0039】
なお、本実施の形態において、例えば、発光装置や白色LEDの発色を調整するために、第1または第2の蛍光体層に、サイアロン系蛍光体やシリケート系蛍光体に加え、その他の組成の蛍光体を用いてもかまわない。蛍光体層は複数の蛍光体が混合されて形成されていても、異なる蛍光体を含有する蛍光体層が積層されるものであってもかまわない。」
オ 「【0061】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0062】
……
【0063】
また、蛍光体は、発光素子として青色LEDが用いられた場合は、赤色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせに限られず、黄色発光蛍光体、黄色蛍光体と赤色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と黄色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせ、橙色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と青緑色蛍光体との組み合わせ、橙色蛍光体と青緑色蛍光体との組み合わせも考えられる。さらに、発光素子として近紫外LEDが用いられた場合は、赤色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体との組み合わせ、赤色蛍光体と黄色蛍光体と緑色蛍光体と青色蛍光体との組み合わせなどが考えられる。」
カ 図1及び図2は、以下のものである。
図1
図2
キ 図3は、以下のものである。
(2)引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アの記載からして、引用文献には、
「基板と、
前記基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第1の発光素子と、
前記基板上に実装され、波長250nm乃至500nmの光を発する複数の第2の発光素子と、
前記第1の発光素子上に形成され、第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、
前記第2の発光素子上に形成され、50℃での発光効率が前記第1の蛍光体より高く、150℃での発光効率が前記第1の蛍光体より低い第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、を有し、
前記第2の蛍光体層の温度が使用状態で100℃未満であり、
前記第1の発光素子と前記第1の蛍光体層により白色光(以下「第1の白色光」という。)が出射され、かつ、前記第2の発光素子と前記第2の蛍光体層により白色光(第2の白色光」という。)が出射される、発光装置。」(請求項1、請求項7及び請求項8を参照。)が記載され、具体的には(請求項6を参照。)、
上記「第1の蛍光体」は、一般式(1)または一般式(2)で表わされる組成を有し、
上記「第2の蛍光体」は、一般式(3)で表わされる組成を有するものであってもよいものと認められる。
イ 上記(1)ウの記載を踏まえて、図1及び図2を見ると、以下のことが理解できる。
(ア)上記アの「第1の発光素子」及び「第2の発光素子」は、それぞれ、基板10上に実装された、「青色LEDチップ14a」及び「青色LEDチップ16a」であってもよいこと。
(イ)上記アの「一般式(1)または一般式(2)で表わされる組成」の「第1の蛍光体」は、サイアロン系蛍光体であり、
上記アの「一般式(3)で表わされる組成」の「第2の蛍光体」は、シリケート系蛍光体であること。
ウ また、上記(1)ウの記載を踏まえて、図3を見ると、
シリケート系蛍光体は、約100℃未満では、発光効率がサイアロン系蛍光体よりも高く、約100℃以上になると、発光効率がサイアロン系蛍光体よりも低下することが理解できる。
エ 上記(1)イ及びオの記載からして、
上記アの「第1の蛍光体層」及び「第2の蛍光体層」は、それぞれ、「赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する第1の蛍光体層14a」及び「赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する第1の蛍光体層16a」であってもよいことが理解できる。
オ 上記アないしエより、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基板10と、
前記基板10上に実装された第1の青色LEDチップ14aと
前記基板10上に実装された第2の青色LEDチップ16aと
前記第1の青色LEDチップ14a上に形成され、サイアロン系蛍光体の赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する第1の蛍光体層14bと、
前記第2の青色LEDチップ16b上に形成され、約100℃未満では、発光効率が前記サイアロン系蛍光体よりも高く、約100℃以上になると、発光効率が前記サイアロン系蛍光体よりも低下するシリケート系蛍光体の、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する第2の蛍光体層16bと、を有し、
前記第2の蛍光体層16bの温度が使用状態で100℃未満であり
前記第1の青色LEDチップ14aと前記第1の蛍光体層14bにより第1の白色光が出射され、かつ、前記第2の青色LEDチップ16aと前記第2の蛍光体層16bにより第2の白色光が出射される、発光装置。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア(ア)引用発明の「第1の青色LEDチップ14a」及び「サイアロン系蛍光体の赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する第1の蛍光体層14b」は、それぞれ、本願発明1の「第1発光素子」及び「第1発光素子から放射される光の一部を第1波長帯域の光に変換する蛍光体を含有する第1波長変換部材」に相当する。
(イ)引用発明の「第2の青色LEDチップ16a」及び「シリケート系蛍光体の赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する第2の蛍光体層16b」は、それぞれ、本願発明1の「第2発光素子」及び「第2発光素子から放射される光の一部を第2波長帯域の光に変換する蛍光体を含有する第2波長変換部材」に相当する。
(ウ)引用発明においては、「第1の青色LEDチップ14aと第1の蛍光体層14bにより第1の白色光が出射され」、かつ、「第2の青色LEDチップ16aと第2の蛍光体層16bにより第2の白色光が出射される」ことから、引用発明は、二つの発光部を備えたものであるといえる。
(エ)そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「第1発光素子と、当該第1発光素子から放射される光の一部を第1波長帯域の光に変換する蛍光体を含有する第1波長変換部材とを有し、前記第1発光素子から放射される光の残りの部分と前記第1波長変換部材で変換された前記第1波長帯域の光とを混合して第1の光を発する第1発光部と、
第2発光素子と、当該第2発光素子から放射される光の一部を第2波長帯域の光に変換する蛍光体を含有する第2波長変換部材とを有し、前記第2発光素子から放射される光の残りの部分と前記第2波長変換部材で変換された前記第2波長帯域の光とを混合して、第2の光を発する第2発光部とを備え」る点で一致する。
イ(ア)引用発明の「第2の蛍光体層16b」に含有される「赤色蛍光体及び緑色蛍光体」はシリケート系蛍光体であって、「第1の蛍光体層14b」に含有されるサイアロン系蛍光体とは、蛍光体の量子効率の温度依存性が異なるものである。
(イ)引用発明の「シリケート系蛍光体」は、本願発明1の「珪酸塩系蛍光体」に相当する。
(ウ)そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「第1波長変換部材に含有される蛍光体の量子効率の温度依存性と、第2波長変換部材に含有される蛍光体の量子効率の温度依存性とが異なり、
前記第1波長変換部材が含有する蛍光体は、赤色蛍光体と第1緑色蛍光体であり、
前記第2波長変換部材が含有する蛍光体は、赤色蛍光体と、珪酸塩系蛍光体からなり前記第1緑色蛍光体とは量子効率の温度依存性が異なる第2緑色蛍光体であ」る点で一致する。
ウ(ア)引用発明の「第2の蛍光体層16b」の温度は、使用状態で100℃未満であり、「第2の青色LEDチップ16a」と組合わせることにより白色光が出射されるものであるから、「赤色蛍光体」と「緑色蛍光体」それぞれの含有量と含有比率は、温度が100℃未満では、CIE xy色度図において、白色光の色度yが黒体軌跡の近傍領域に存在するように設定されていることは、当業者にとって明らかである。
(イ)そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「第2波長変換部材における、赤色蛍光体および第2緑色蛍光体それぞれの含有量と含有比率は、
前記第2波長変換部材の温度が100℃未満では、CIE xy色度図において、第2の光の色度yが黒体軌跡の近傍領域に存在するように設定されており、
前記第2緑色蛍光体の温度上昇に対する量子効率の低下率は、前記第1緑色蛍光体の温度上昇に対する量子効率の低下率に比べて大きく、
前記第1の光と前記第2の光とを混合した光は白色光である」点で一致する。
エ 引用発明の「発光装置」は、本願発明1の「発光モジュール」に相当する。
オ 以上のことから、本願発明1と引用発明は、次の点で一致する。
<一致点>
「第1発光素子と、当該第1発光素子から放射される光の一部を第1波長帯域の光に変換する蛍光体を含有する第1波長変換部材とを有し、前記第1発光素子から放射される光の残りの部分と前記第1波長変換部材で変換された前記第1波長帯域の光とを混合して、第1の光を発する第1発光部と、
第2発光素子と、当該第2発光素子から放射される光の一部を第2波長帯域の光に変換する蛍光体を含有する第2波長変換部材とを有し、前記第2発光素子から放射される光の残りの部分と前記第2波長変換部材で変換された前記第2波長帯域の光とを混合して第2の光を発する第2発光部とを備え、
前記第1波長変換部材に含有される蛍光体の量子効率の温度依存性と、前記第2波長変換部材に含有される蛍光体の量子効率の温度依存性とが異なり、
前記第1波長変換部材が含有する蛍光体は、赤色蛍光体と第1緑色蛍光体であり、
前記第2波長変換部材が含有する蛍光体は、赤色蛍光体と、珪酸塩系蛍光体からなり前記第1緑色蛍光体とは量子効率の温度依存性が異なる第2緑色蛍光体であり、
前記第2波長変換部材における、前記赤色蛍光体および前記第2緑色蛍光体それぞれの含有量と含有比率は、
前記第2波長変換部材の温度が100℃未満では、CIE xy色度図において、前記第2の光の色度yが黒体軌跡の近傍領域に存在するように設定されており、
前記第2緑色蛍光体の温度上昇に対する量子効率の低下率は、前記第1緑色蛍光体の温度上昇に対する量子効率の低下率に比べて大きく、
前記第1の光と前記第2の光とを混合した光は白色光である、発光モジュール。」
カ 一方、本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
<相違点1>
第1の光の及び第2の光の色温度に関して、
本願発明1は、「第1の光の色温度は、第2の光の色温度よりも高い」のに対して、
引用発明は、色温度が同じなのか、異なるのか不明である点。
<相違点2>
第2波長変換部材における、赤色蛍光体および第2緑色蛍光体それぞれの含有量と含有比率に関して、
本願発明1は、「第2波長変換部材の温度が100℃未満では、CIE xy色度図において、第2の光の色度yが黒体軌跡の色度y以上となる領域に存在し、
前記第2波長変換部材の温度が100℃以上では、CIE xy色度図において、前記第2の光の色度yが黒体軌跡の色度yより小さい領域に存在するように設定されて」いるのに対して、
引用発明は、そのように設定されているか否か不明である点。
<相違点3>
第2緑色蛍光体の温度上昇に対する量子効率の低下率に関して、
本願発明1は、「赤色蛍光体の温度上昇に対する量子効率の低下率に比べて大きい」のに対して、
引用発明は、(シリケート系の)赤色蛍光体の低下率に比べて大きいか否か不明である点。
(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1について検討する。
(ア)上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項の技術的意義は、全温度範囲で白色光の色温度を、「第1の光の色温度」と「第2の光の色温度」に基づいて決定することにあるものと解される。
(イ)一方、引用発明の「発光装置」は、引用文献の【背景技術】及び【発明が解決しようとする課題】等の記載からして、全温度範囲で優れた発光効率を実現する発光装置であって、低温では温度消光が生じないことから、「第1の白色光の色温度」と「第2の白色光の色温度」を異ならせる動機がない。
(ウ)よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。
イ 次に、上記相違点3について検討する。
(ア)上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項の技術的意義は、第2波長変換部材に含まれる「赤色蛍光体」と「第2緑色蛍光体」の量子効率の温度依存性を異ならせることにより、温度上昇に伴って、第2緑色蛍光体の相対的な発光強度を低下させ、第2の光の色温度を徐々に変化させることにあるものと解される。
(イ)一方、引用発明の「第2の蛍光体層16b」に含まれる「赤色蛍光体及び緑色蛍光体」は、ともに、低温で発光効率が高いシリケート系蛍光体であるから、両者の量子効率の温度依存性を異ならせる動機がない。
(ウ)よって、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。
(3)本願発明1についてのまとめ
上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし本願発明14について
本願発明2ないし本願発明14も、本願発明1と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1は「前記第1の光の色温度は、前記第2の光の色温度よりも高く、前記第1の光と前記第2の光とを混合した光は白色光である」という発明特定事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び引用文献2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-016298