特許拒絶査定不服審判
2016-015105
ジェスチャ認識システム
- 審判番号
- 2016-015105
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-554024外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年10月07日
- 審決日
- 2017年05月02日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】笛田 秀仙
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .575-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-554024「ジェスチャ認識システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月30日国際公開、WO2012/114216、平成26年 3月 6日国内公表、特表2014-505955、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年2月21日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成28年2月26日付けで拒絶理由が通知され、同年5月25日付けで意見書とともに手続補正書が提出され、同年8月24日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年10月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の理由の概要
原査定(平成28年8月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献一覧
1.特開2002-358149号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとは認められない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 当審の判断」までに示すように、補正後の請求項1―6に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成28年10月7日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ユーザの身体部分のジェスチャを検出するジェスチャ認識システムであって、当該システムは、
前記身体部分における皮膚の第1領域と電気的に接続される第1電極、及び、前記身体部分における皮膚の、前記第1領域と異なる第2領域と、電気的に接続される第2電極を有し、
前記ジェスチャの検出が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導度を測定することを含み、前記ジェスチャが、前記身体部分の前記皮膚の特定の領域の伸び又は前記身体部分の前記皮膚の他の特定の領域の縮みを含み、
前記電気伝導度が前記伸び又は前記縮みに依存する、
ジェスチャ認識システム。」
なお、本願発明2-6の概要は、以下のとおりである。
本願発明2、3は、それぞれ本願発明1の構成を全て引用した発明である。
本願発明4-6は、本願発明1-3に対応する方法の発明であり、本願発明1-3とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
第5 引用文献、引用発明
1.引用文献1について
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ユーザがコンピュータに対してコマンドやデータなどを入力するためのユーザ入力装置に係り、特に、ユーザが人体の一部を用いて入力操作を行うユーザ入力装置に関する。
【0002】更に詳しくは、本発明は、人体に装着して用いられユーザの意思に忠実な入力操作を行うユーザ入力装置に係り、特に、ユーザが発現するジェスチャを認識してユーザ入力として取り込むユーザ入力装置に関する。」
「【0027】図示の例では、ユーザ入力装置1は、腕時計本体と一体的に構成されており、時計部5と、この時計部5をユーザの手首に巻設するとともに手首の動作を計測するベルト状の計測部10とで構成される。
・・・中略・・・
【0029】一方、計測部10には、手首の周方向に沿って、送信信号を送信する送信電極と、送信信号を受信する受信電極とが、交互に配設されており、各受信電極における受信信号の強度に基づいて、ユーザが「握る」あるいは「放す」などのジェスチャを発現したことを認識できるようになっている。
【0030】図2には、計測部10、並びにこの計測部10における検出信号を処理する処理部の構成を概略的に示している。
【0031】同図に示すように、計測部10は、手首の周方向に沿って配設された複数の送信電極12-1,12-2,…と、各送信電極12-1…に送信用の所定周波数(例えば100KHz)の交流電流を供給する発信器11と、各送信電極12-1…の間隙に挿設されて電極間の静電容量に応じた容量結合によって各送信電極12-1…からの交流電流を受信する複数の受信電極13-1,13-2,…と、各受信電極13-1…を流れる交流電流をAM変調やA/D変換などの信号処理を行う受信器16とで構成される。
【0032】受信器14は、所定周波数帯域の交流電流のみを通過させるバンド・パス・フィルタ(BPF)14Aと、増幅器14Bと、検波器14CとからなるAM変調器と、検波出力をデジタル形式の信号に変換するA/D変換器14Dとで構成される。デジタル変換された検出信号は、プロセッサ15により信号処理された後、例えば所定のユーザ入力信号としてコンピュータ(図示しない)などに外部出力される。
【0033】図1及び図2に示すように、ユーザは送信電極12及び受信電極13が交互に配置された腕輪状のユーザ入力装置1を手首に装着して用いる。
【0034】発信器11からは固有の周波数(例えば100KHz)を持つ波形信号が生成される。SW1は複数のアナログ・スイッチで構成され、あるアナログ・スイッチがオン状態に切り替わると、腕輪上の該当する送信電極12に波形信号を供給するようになっている。SW1の各アナログ・スイッチの開閉操作はプロセッサ15によって所定タイミングで順次切り替え制御される。より具体的には、ある時点では、ただ1つの送信電極12にのみ波形信号が流れるようにスイッチがスキャンされる。
【0035】また、腕輪上には、各送信電極11-1,11-2,…とは交互になるように、複数の受信電極12-1,12-2,…が配設されている。
【0036】いま、各1つの送信電極12及び受信電極13の組み合わせに着目すると、送受信電極間ではコンデンサと等価な回路が形成されている。したがって、発信器11から所定周波数の波形信号を供給することにより送信電極12で発生された電界は、静電容量に応じた容量結合によって、受信電極13側に受信される。
【0037】また、送信電極12と受信電極13の間には、図3に示すように人体(手首)が介在している。人体は仮想的に接地されているグランドとみなされるので、送信電極から発生した電界によって生じる電荷の移動は、手首経由でアースに流れるようになる。この電荷の移動量は、電極と手首の位置関係に依存する。例えば、手を握る、放すなどの動作によって、手首の形状が微妙に変化するが、このような手首の形状変化に応じて、送信電極12と受信電極13の間で形成されるコンデンサの静電容量は変化する。
【0038】SW2は複数のアナログ・スイッチで構成され、各アナログ・スイッチは、該当する受信電極13-1,13-2,…を受信器14に接続して、その受信信号を送信周波数と同じ値に設定されたバンドパスフィルタ(BPF)14A、増幅器14B、検波器14Cを経由してA/D変換された結果をプロセッサ15で読み取るようになっている。
【0039】SW2を構成する各アナログ・スイッチの開閉操作はプロセッサ15によって所定タイミングで順次切り替え制御される。より具体的には、ある時点では、ただ1つの受信電極13による受信信号が受信機14で読み取られるようにスイッチがスキャンされる。
【0040】送信電極12-1…側のSW1と受信電極13-1…側のSW2それぞれにおける開閉操作の組み合わせにより、ある瞬間には1つの送信電極と1つの受信電極の組み合わせのみが接続されている。プロセッサ15は、これらのSW1及びSW2を所定のタイミングで順次切り替えていくことにより、すべての送受信電極組み合わせ(図2にし雌例では4×4=16通り)についてのA/D変換された値を所定周期で得ることができる。この結果、ユーザ入力装置1としては、ユーザの手首から16次元の値を時々刻々と取得することができる。
【0041】ユーザ入力装置1が実際にジェスチャーを認識するには、ユーザはユーザ入力装置1を手首に装着した状態で、まず「握る」あるいは「放す」などという動作を何度か行い、計測された多次元ベクトルの組を記録しておく。すなわち、今後利用していきたいジェスチャを登録する作業を行う。そして、ユーザ入力時には、ユーザ入力装置1から得られたベクトル値と、これら記録された各ベクトル値とを比較照合して、その距離を基に該当するジェスチャーを認識する。
【0042】図4には、ユーザ入力装置1上でジェスチャを他次元ベクトルとして登録するための処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0043】この場合、ユーザは、腕時計タイプのユーザ入力装置1を自分の手首に装着した状態で、所望のジェスチャを提示する(ステップS1)。
【0044】そして、ユーザ入力装置1側では、すべての送受信電極の組み合わせについて読取処理を行い、検出された多次元ベクトル値をデータベースに記録する(ステップS2)。データベース登録の際、当該ジェスチャに割り当てたい意味(例えば、コンピュータに対するコマンドや、特定のデータ値など)を併せて記録するようにしてもよい。」
したがって、上記下線部の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「送信電極12及び受信電極13が交互に配置された腕輪を手首に装着して用いる、ユーザが発現するジェスチャを認識してユーザ入力として取り込むユーザ入力装置であって、
手首の周方向に沿って配設された複数の送信電極12-1,12-2,…と、各送信電極12-1…に送信用の所定周波数(例えば100KHz)の交流電流を供給する発信器11と、各送信電極12-1…の間隙に挿設されて電極間の静電容量に応じた容量結合によって各送信電極12-1…からの交流電流を受信する複数の受信電極13-1,13-2,…と、各受信電極13-1…を流れる交流電流をAM変調やA/D変換などの信号処理を行う受信器14で構成され、
発信器11からは固有の周波数(例えば100KHz)を持つ波形信号が生成され、SW1は複数のアナログ・スイッチで構成され、あるアナログ・スイッチがオン状態に切り替わると、腕輪上の該当する送信電極12に波形信号を供給するようになっており、SW1の各アナログ・スイッチの開閉操作はプロセッサ15によって所定タイミングで順次切り替え制御され、ある時点では、ただ1つの送信電極12にのみ波形信号が流れるようにスイッチがスキャンされ、
送信電極12と受信電極13の間には、人体(手首)が介在し、人体は仮想的に接地されているグランドとみなされるので、送信電極から発生した電界によって生じる電荷の移動は、手首経由でアースに流れるようになり、この電荷の移動量は、電極と手首の位置関係に依存し、例えば、手を握る、放すなどの動作によって、手首の形状が微妙に変化するが、このような手首の形状変化に応じて、送信電極12と受信電極13の間で形成されるコンデンサの静電容量は変化し、
SW2は複数のアナログ・スイッチで構成され、各アナログ・スイッチは、該当する受信電極13-1,13-2,…を受信器14に接続して、その受信信号を送信周波数と同じ値に設定されたバンドパスフィルタ(BPF)14A、増幅器14B、検波器14Cを経由してA/D変換された結果をプロセッサ15で読み取り、
送信電極12-1…側のSW1と受信電極13-1…側のSW2それぞれにおける開閉操作の組み合わせにより、ある瞬間には1つの送信電極と1つの受信電極の組み合わせのみが接続され、これらのSW1及びSW2を所定のタイミングで順次切り替えていくことにより、すべての送受信電極組み合わせ(4×4=16通り)についてのA/D変換された値を所定周期で得ることができ、ユーザの手首から16次元の値を時々刻々と取得することができ、
ユーザはユーザ入力装置1を手首に装着した状態で、まず「握る」あるいは「放す」などという動作を何度か行い、計測された多次元ベクトルの組を記録しておき、ジェスチャを登録し、ユーザ入力時には、ユーザ入力装置1から得られたベクトル値と、これら記録された各ベクトル値とを比較照合して、その距離を基に該当するジェスチャを認識する、ユーザ入力装置。」
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると次のことがいえる。
ア 引用発明は「手を握る、放すなどの動作」等の「ユーザが発現するジェスチャを認識してユーザ入力として取り込むユーザ入力装置」であるから、本願発明1と同様の「ユーザの身体部分のジェスチャを検出するジェスチャ認識システム」に相当するといえる。
イ 引用発明は、「送信電極12及び受信電極13が交互に配置された腕輪を手首に装着して」用いており、「送信電極12と受信電極13の間には、人体(手首)が介在し、人体は仮想的に接地されているグランドとみなされるので、送信電極から発生した電界によって生じる電荷の移動は、手首経由でアースに流れるようになり」、「送信電極12-1…からの交流電流を」「受信電極13-1」で受信しているから、引用発明の「送信電極12」、「受信電極13」は、それぞれ、本願発明1の「前記身体部分における皮膚の第1領域と電気的に接続される第1電極」、「前記身体部分における皮膚の、前記第1領域と異なる第2領域と、電気的に接続される第2電極」に相当するといえる。
ウ 引用発明の「交流電流を供給する発信器11と、各送信電極12-1…の間隙に挿設されて電極間の静電容量に応じた容量結合によって各送信電極12-1…からの交流電流を受信する複数の受信電極13-1,13-2,…と、各受信電極13-1…を流れる交流電流」を測定し、「該当するジェスチャを認識する」構成は、本願発明1の「前記ジェスチャの検出が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導度を測定すること」を含む構成と、「前記ジェスチャの検出が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気的特性を測定すること」を含む構成である点は共通するといえる。
エ 引用発明の「送信電極12と受信電極13の間には、人体(手首)が介在し、人体は仮想的に接地されているグランドとみなされるので、送信電極から発生した電界によって生じる電荷の移動は、手首経由でアースに流れるようになり、この電荷の移動量は、電極と手首の位置関係に依存し、例えば、手を握る、放すなどの動作によって、手首の形状が微妙に変化するが、このような手首の形状変化に応じて、送信電極12と受信電極13の間で形成されるコンデンサの静電容量は変化」する構成は、本願発明の「前記ジェスチャが、前記身体部分の前記皮膚の特定の領域の伸び又は前記身体部分の前記皮膚の他の特定の領域の縮みを含み、前記電気伝導度が前記電気伝導度が前記伸び又は前記縮みに依存する」構成と、「前記ジェスチャが、前記身体部分の前記皮膚の特定の領域の変形又は前記身体部分の前記皮膚の他の特定の領域の変形を含み、前記電気的特性が前記変形に依存する」構成である点では共通するといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「ユーザの身体部分のジェスチャを検出するジェスチャ認識システムであって、当該システムは、
前記身体部分における皮膚の第1領域と電気的に接続される第1電極、及び、前記身体部分における皮膚の、前記第1領域と異なる第2領域と、電気的に接続される第2電極を有し、
前記ジェスチャの検出が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気的特性を測定することを含み、前記ジェスチャが、前記身体部分の前記皮膚の特定の領域の変形又は前記身体部分の前記皮膚の他の特定の領域の変形を含み、
前記電気的特性が前記変形に依存する、
ジェスチャ認識システム。」
(相違点1)測定する「電気的特性」が、本願発明1では、「前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導度」であるのに対し、引用発明では、「送信電極12と受信電極13の間で形成されるコンデンサの静電容量」である点。
(相違点2)「変形」が、本願発明1では、「前記身体部分の前記皮膚の特定の領域の伸び又は前記身体部分の前記皮膚の他の特定の領域の縮み」であるのに対し、引用発明では、「手首の形状変化」である点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の「前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導度」を測定するという構成は、引用文献1に記載されておらず、示唆されてもいない。また、「ジェスチャの検出が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導度を測定すること」を含むという技術的事項は、本願優先日前において周知技術であったとはいえない。
したがって、上記相違点2を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
2.本願発明2、3について
本願発明2、3は、本願発明1の「ジェスチャの検出が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導度を測定することを含む」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3.本願発明4-6について
本願発明4-6は、本願発明1-3に対応する方法の発明であり、本願発明1の「ジェスチャの検出が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導度を測定することを含む」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-6は「ジェスチャの検出が、前記第1電極と前記第2電極との間の電気伝導度を測定することを含む」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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