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特許拒絶査定不服審判

2016-014646

バイオベース可塑剤およびこれを用いる表面被覆

審判番号
2016-014646
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-501866外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年09月30日
審決日
2017年10月10日
公報発行日
2018年04月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-501866「バイオベース可塑剤およびこれを用いる表面被覆」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日国際公開、WO2013/142534、平成27年 5月18日国内公表、特表2015-514143〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2013年3月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年3月19日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年9月18日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月4日に手続補正書と意見書が提出され、同年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年5月9日に意見書が提出されたが、同年5月26日付け(発送日:同年5月31日)で拒絶査定された。これに対し、同年9月30日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたが、同年12月9日付けで前置報告書が作成されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年9月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであって、そのうち、本願の請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 バイオベースのフラン誘導体の反応生成物として形成されたエステルを含むバイオベース可塑剤組成物であって、当該エステルが下記の式を有する、 【化1】 上記のバイオベース可塑剤組成物。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 引用文献1:米国特許4170584号公報 引用文献7:特開2009-292758号公報 (新たに引用された文献;周知技術を示す文献) 引用文献8:特開平6-46869号公報 (新たに引用された文献;周知技術を示す文献) 引用文献9:特表2006-506423号公報 (新たに引用された文献;周知技術を示す文献)」 というものを含むものである。 第4 当審の判断 1 刊行物 1.米国特許4170584号公報 (原審で引用された「引用文献1」) 2.特開2009-292758号公報 (原審で引用された「引用文献7」) 3.特開平6-46869号公報 (原審で引用された「引用文献8」) 4.特表2006-506423号公報 (原審で引用された「引用文献9」) 5.化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典7」、縮刷版、共立出版株式会社、1997年9月20日発行、965-966頁 (当審で提示する周知技術を示す文献) 6.化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典8」、縮刷版、共立出版株式会社、1993年6月1日発行、56頁 (当審で提示する周知技術を示す文献) 7.「13398の化学商品」、化学工業日報社、1998年1月28日発行、779-780頁 (当審で提示する周知技術を示す文献) 8.特開2009-132656号公報 (当審で提示する周知技術を示す文献) 9.特表2011-522082号公報 (当審で提示する周知技術を示す文献) (以下、それぞれ項番に従い、「刊行物1」ないし「刊行物9」という。) 2 刊行物の記載 (1)刊行物1の記載 刊行物1には、次の事項が記載されている。なお、記載について括弧書きで合議体仮訳を付した。 ア「 」 (本発明の難燃防煙組成物は、塩化ビニル樹脂と安定剤からなるハロゲン化炭素ポリマー組成物に、以下の式の複素環式化合物を組み込むことで得られる。 ここで、R'は水素かC1からC8の直鎖または分岐アルキルカルボン酸エステルであり、R"は水素、C1からC8の直鎖または分岐アルコキシ、直鎖または分岐のC1からC8のアルコキシで置換されたC1からC8のアルコキシかフルフリルオキシである。 ここで、xは1か2であり;xが1の場合、R'''はC1からC8の直鎖または分岐アルコキシアルキルかC1からC10のアルコキシアルコキシアルキルである。そして、xが2の場合、R'''はC1からC8の直鎖または分岐アルキレン、C1からC10の直鎖または分岐オキシアルキレンかC1からC10の直鎖または分岐ポリオキシアルキレンである。 3.あるいは、それらの混合物。 これらの高酸素含有複素環式可塑剤をハロゲン化炭素ポリマー材料に組み込んだ結果として、難燃性であって、発炎モード及び非発炎モードの両方において実質的に煙の発生が低減されたポリマー組成物が形成される。 ここで使用される「高酸素含有」の用語は、ポリハロゲン化炭素系において最も一般的で広く使用されている可塑剤の1つである、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)に基づくものである。この可塑剤は16%の酸素を含有する。本発明の高酸素含有複素環式可塑剤はDOP、例えば16%のそれよりも大きな酸素含有率を有するものである。例えば、複素環式可塑剤3-フルフリルオキシ 2-プロパノールは酸素含有率30.8%であり、メチレンジフロエートは酸素含有率41.2%であって、いずれも、DOPよりも酸素含有率が実質的に大きい。)(第2欄第42行~第3欄第17行) イ「 ・・・ 」 (実施例12 エチレングリコール ジフロエート 0℃-5℃で、66g(0.51ml)のフランカルボン酸クロリドに14g(0.23ml)のエチレングリコール、70g(0.69ml)のEtN3と230gのジクロロメタンが添加された。HClをろ過により除去した。CH2Cl2溶液を希釈したHClで洗浄し、水で2回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、CH2Cl2を蒸発させた。イソプロピルアルコールから結晶化させて34g収量を得た。(110-111°m.p.) ・・・ 実施例19 ブタンジオール ジフロエート 5℃で、66g(0.5m)のフランカルボン酸クロリドを、69.7g(0.69m)のトリエチルアミンと230gのジクロロメタン中の20.7g(0.23m)の1,4-ブタンジオールに添加した。イソプロピルアルコールから再結晶化させて37.2g、66.5°-67.4°m.p.の収量を得た。 実施例20 2-ブトキシエチルフロエート 121g(1.02m)の2-ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、95g(0.85m)のフランカルボン酸と1gのジブチルスズジオクトエートがキシレン共沸混合物と共に酸値3まで加熱された。キシレンを200°のポット温度で蒸留により除去し、反応生成物を蒸留した。2-ブトキシエチルフロエートが画分2、111°-104°で収集された。収量162g、86%。」(第8欄第1行~第9欄第9行) ウ「 」 (本発明の煙抑制剤として使用されるフラン含有可塑剤は、以下の標準ポリ塩化ビニル樹脂含有配合物に混合される。添加剤はポリ塩化ビニル樹脂100重量部あたりの重量部である。 マスタースイッチ ポリ塩化ビニルコポリマー、エスカンビア2016、エスカンビア ケミカル社 ASTM-D-1243-60-Bによる固有粘度0.02 100 シンプロン744、オクタン酸亜鉛/バリウムフェネート/アリールホスファイト、シンセチックケミカル社                4.0 アドメクス710(エポキシ化大豆油)             1.0 フラン含有可塑剤                        36 )(第9欄第41行~第56行) エ「 」 (実施例1  R'''  ブラベンダー粘度メートル/g NBS煙密度fl 35 (CH2)2            575       374 36 C2H4OC2H4         575       315 37 C2H4OC2H42phr,ZnO 800       218 38 (CH2)6            525       336 39 C3H6OC3H6         550       324 40 (CH2)4             750       305 1ここでは可塑剤は40重量部の濃度で組み込まれた。x=2)(第10欄上から3つめの表) (2)刊行物2の記載 「2-フランカルボン酸の入手は、糖や炭水化物の熱分解により5-ヒドロキシメチルフルフラールおよびフルフラール等と共に生成するため、糖や炭水化物を含む植物を加熱して、抽出、分離、精製してもよいが、微量であるためコスト的に不利である。従って、一般にはフルフラールを原料に化学合成して製することができる。」(段落【0017】) (3)刊行物3の記載 ア「フルフラールは、例えばペントザンを含む植物体を水蒸気蒸留または鉱酸等で処理することによって容易に得ることができ、工業的には燕麦の籾殻や麦藁から製造されている。従って、フルフラールはフラン化合物のなかで最も廉価に得られるものであり、潤滑油の選択精製溶剤、可硫促進剤、染料惨透剤などに広く利用されている。」(段落【0003】) イ「フルフラールを2-フランカルボン酸に変換する方法として、化学反応を利用する種々の方法が知られているが、これらはいずれも過激な反応を必要とし、最終反応液に微生物の生育に好ましくない種々の有害物質が高濃度に存在するので、これらの化学的方法で得られた2-フランカルボン酸を発酵原料として利用する場合には、最終反応液からこれらの有害物質を分離するという煩雑な操作が必須となる。」(段落【0011】) (4)刊行物4の記載 「本発明で用いる2-フランカルボン酸は、強いアルカリ性の状態でのフルフラールのカニッツァロ反応によって一般に大量に製造されるので、結晶形態で市販されている。他の供給源からの2-フランカルボン酸も使用できることを認識されたい。例えば、それはセルロースの微生物分解によって得ることができる。」(段落【0025】) (5)刊行物5の記載 「 」(「2-フランカルボンさん」の項) (6)刊行物6の記載 「 」(「フルフラール」の項) (7)刊行物7の記載 「 」(「フルフラール」の項) (8)刊行物8の記載 「フランはテトラヒドロフランやピロール、チオフェン等の製造原料に用いることができる有用な中間体化学品であり、フルフラールの脱カルボニル反応により製造される。フルフラールは通常は石油由来の原料ではなく、植物に含まれるヘミセルロース分であるペントザンより製造されるため、誘導されるフランも石油原料由来ではなく植物原料由来の化学品に分類される。」(段落【0002】) (9)刊行物9の記載 ア「PVC樹脂は、機械的性質、耐薬品性、および耐候性などの良好な物理的性質を有するが、これらの費用は依然として比較的高くない。・・・ これらの性能は、多くの多様な添加剤を加えることによって得られる、最も多くの重量を占めるのは可塑剤であり、これによって特に可撓性および耐寒性が得られる。自動車内装への使用が意図されたPVC系組成物は、石油起源のアルコールから調製されるために再生可能起源の炭素を非常にわずかしか含有しない可塑剤を使用して従来は調製されている。・・・ これらの材料を使用すると、これらの耐用年数を終えたときの分解または焼却の間に温室効果が増加する。さらに、世界中の石油資源が減少すると、これらの原材料の供給源も徐々に使いつくされるようになる。 逆に、バイオマス由来の原材料は、環境への影響が少ない。植物性材料は、要求に応じてほぼ世界中で大量に栽培することができ、再生可能であるという利点も有する。 従って、化石起源の原材料に依存せず、その代わりに再生可能起源の原材料を使用する合成方法および新規組成物が必要と思われる。 今日、消費者は、環境に対してより安全で清浄であるという評判を有する植物起源の製品に対する関心が増加している。」(段落【0002】~【0008】)) イ「好ましい一実施形態では、再生可能起源の可塑剤の石油起源の可塑剤に対する重量比は1.5以上である。 別の一実施形態では、組成物のすべての可塑剤が再生可能起源である。・・・ 再生可能起源の可塑剤の例としては、再生可能起源であることが好ましいカルボン酸と、バイオマス由来が必須であるアルコール類とのエステル化によって得られる化合物を挙げることができる。・・・ 再生可能起源の可塑剤として、イソソルビド型のグリーン可塑剤を挙げることもできる。 グリセロールから誘導される植物起源の他のエステル類を使用することができ、・・・」(段落【0061】~【0069】) 3 引用発明 刊行物1には、特に上記摘示2(1)アより、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「以下の式2の複素環式化合物を含む、高酸素含有複素環式可塑剤。 ここで、xは2であり;R'''はC1からC8の直鎖または分岐アルキレン、C1からC10の直鎖または分岐オキシアルキレンかC1からC10の直鎖または分岐ポリオキシアルキレンである。」 4 本願発明と引用発明との対比 引用発明の式2の複素環式化合物は と表され、両端のフラン環の間に2つのエステル結合が存在する構造であるから、本願発明の「 」と「フラン誘導体の反応生成物として形成されたエステルであって、当該エステルが下記の式を有する。 Rは直鎖アルキレン」である限りにおいて相当する。 引用発明の「高酸素含有複素環式可塑剤」は、本願発明の「可塑剤組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 [一致点] 「フラン誘導体の反応生成物として形成されたエステルを含む可塑剤組成物であって、当該エステルが下記の式を有する、 Rは直鎖アルキレンである、上記の可塑剤組成物。」 である点で一致し、 次の点で相違する。 [相違点1] 原料の由来およびそれによる分類に関し、本願発明は「バイオベースのフラン誘導体」の反応生成物として形成されたエステルを含む「バイオベース可塑剤組成物」と特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。 [相違点2] 式中の直鎖アルキレン基に関し、本願発明は「 」、すなわち、「-(CH2)3-」と特定するのに対して、引用発明では「R'''はC1からC8の直鎖アルキレンである」点。 5 相違点についての判断 (1)相違点1について 本願明細書の段落【0013】の「『バイオベース』という用語は、非石油源から誘導された少なくとも1つの物質を有することをいう。」との記載より、本願発明の「バイオベースのフラン誘導体」とは、反応生成物の反応原料となるフラン誘導体がバイオベースであること、すなわち、フラン誘導体が非石油源から誘導された物質であることを意味すると解される。 また、「バイオベース可塑剤組成物」については、同様に可塑剤組成物がバイオベースであること、すなわち、可塑剤組成物の構成成分として、非石油源から誘導された少なくとも1つの物質を有することを意味すると解される。 そして、本願発明において、前記可塑剤組成物は構成成分として「バイオベースのフラン誘導体より得られたエステルを含」み、先に述べたようにフラン誘導体が非石油源から誘導された物質であるから、該フラン誘導体より反応生成物として形成されたエステルもまた非石油源から誘導された物質であるといえる。 そうすると、本願発明の「バイオベースのフラン誘導体の反応生成物として形成されたエステルを含むバイオベース可塑剤組成物」と「バイオベースのフラン誘導体(非石油源から誘導された物質)の反応生成物として形成されたエステル(非石油源から誘導された物質)を含む可塑剤組成物」とは同義であるといえる。 引用発明において、式2のジエステルの生成反応は特定されていないものの、刊行物1には上記摘示2(1)イの実施例12、実施例19、実施例20より、フラン環を有するモノ、ジエステルの生成反応として、フランカルボン酸クロリドとジオールとの反応、および、フランカルボン酸とアルコールとの反応が記載されていることから、式2のジエステルの生成反応として、少なくともフランカルボン酸クロリドとジオール、および、フランカルボン酸とジオールの2通りが存在することが理解できる。 ここで、刊行物2ないし8の上記摘示2(2)~(8)の記載事項より、フラン化合物の原料および製法について、非石油源である植物原料よりフルフラールを製造し、フルフラールを反応させて、フランカルボン酸およびその誘導体であるフランカルボン酸クロリドを合成する手法が工業的にも一般的であって、そのような手法により製造された製品が本願優先日において一般的な製品として市販されていることが見てとれる。 そして、非石油源より誘導された物質、すなわち、バイオベースのフルフラールより誘導される、フランカルボン酸、フランカルボン酸クロリドの各フラン誘導体もまた非石油源より誘導された物質、すなわち、「バイオベースのフラン誘導体」といえるものである。 そうすると、バイオベースのフランカルボン酸、フランカルボン酸クロリドは、本願優先日の時点で、周知の一般的なバイオベースのフラン誘導体であったと認められる。 引用発明において、エステルの原料となるフランカルボン酸、フランカルボン酸クロリドが石油源から誘導された物質(非バイオベース)か、非石油源から誘導された物質(バイオベース)かは特定されず、また、刊行物1にはいずれであるかの記載はないものの、上記のとおり、フランカルボン酸、フランカルボン酸クロリドとしてバイオベースのものは周知の一般的なものであるから、引用発明において、フランカルボン酸、フランカルボン酸クロリドを、周知で一般的なバイオベースのフラン誘導体であるものとすることは、当業者にとり想到容易である。 よって、引用発明において、バイオベースのフランカルボン酸、フランカルボン酸クロリドの反応生成物として形成されたエステルを含む可塑剤組成物とすること、すなわち、バイオベースのフラン誘導体の反応生成物として形成されたエステルを含むバイオベース可塑剤組成物とすることは、当業者にとり想到容易である。 (2)相違点2について 引用発明において、R'''がC3の直鎖アルキレンである場合、2つのエステル結合の酸素原子間の炭化水素基が-(CH2)3-となるが、刊行物1には、具体例としてR'''がC3の直鎖アルキレンであるものの記載はない。 しかしながら、刊行物1には、上記摘示2(1)イのExample12および摘示2(1)エのExample35に具体例として引用発明に含まれるR'''がC2の直鎖アルキレンであるものが記載され、上記摘示2(1)イのExample19および摘示2(1)エのExample40に具体例として引用発明に含まれるR'''がC4の直鎖アルキレンであるものが記載されているから、引用発明において、R'''として同様にその範囲に含まれ、具体例のものと炭素数が順に並ぶC3の直鎖アルキレン構造のものとすることは、当業者にとり想到容易である。 (3)相違点に係る効果について 本願優先日の時点において、本願明細書の背景技術や刊行物9の上記摘示2(9)ア、イにも記載されるように、非石油源由来の可塑剤が知られ、様々なものが存在していたことは明らかであって、環境に配慮した原料の使用は、本願優先日の時点において一般的な技術志向の一つであったといえるから、バイオベースの原料とすることで環境問題の解決が図られるという効果は、当然に予測されることである。 一方、本願明細書には、本願発明の特定の両末端フラン環含有ジエステルを用いた実施例の記載はなく、2-フロン酸(フランカルボン酸)より誘導された2-オクチルフラノエート、および、1,3-プロパンジオールと2,5-フランジカルボン酸を反応させたものをそれぞれ含むバイオベース可塑剤の具体例が記載されるのみである。そして、それぞれの可塑剤を含むフロア被覆組成物の効果についてみると、バイオベース可塑剤を含む実施例は非バイオベース可塑剤を含む比較例よりも物性が同等以下であって、可塑剤として使用できる以外に予想外の効果が奏されているとも認められない。 そして、本願発明の特定の両末端フラン環含有ジエステルについて、その化学構造および本願明細書の記載全体からも、本願明細書に記載される具体例の各エステルに比べ、必ず何らかの異質の効果を有するともいえない。 そうすると、本願発明で上記各相違点に係る発明特定事項としたことにより、予想外の格別顕著な効果を奏すると認めることができない。 (4)請求人の主張について 請求人は、審判請求書の手続補正書(方式)において、「当業者から見て、引用文献1における普通の石油ベースの物質を引用文献7、8及び又は9のバイオベースの物質に置換することは容易に想到可能と言えない。・・・ 生体構成物質のような非石油源から製造される場合は、バイオベースの原料及びその合成物は、石炭や石油のような石油ベースの原料に由来する物質には存在しない非石油源由来の副産物(副生成物)を含む。 副産物を厳格にコントロール可能な石油ベースの原料をバイオベースの合成物に置換すれば、全体的な合成物中に、予期されない副産物の量が増加することは明らかである。・・・ すなわち、本願発明の前にバイオベースの2-フランカルボン酸が知られていたことだけでは、引用文献1の石油ベースの反応物質を、引用文献7、8及び又は9によって教示されるバイオベースの化合物に置換し、2-フロン酸エステルを製造することが容易想到であったかを決めることはできないのである。 当業者の立場から見れば、バイオベースの反応物質を含むことは、引用文献1の煙抑制組成物において、予期できない副産物を増量させることは明らかである(引用文献7の第〔0017〕段落の不純物増加に関する記載がそれを証明する)。それゆえ、当業者は、そのようなバイオベースの化合物に替えることを回避するのが当然である。というのは、代替により煙抑制組成物が高温や火炎に曝されたときに煙発生が起こり易くなるからである。 煙抑制組成物の煙抑制能力を直接損なうことは、引用文献1の課題と本質的に矛盾することになる。」と主張する。 上記主張に関し、そもそも刊行物1(引用文献1)には、記載される全ての物質が「普通の石油ベースの物質」であることの記載はなく、具体例のフラン誘導体の入手元も記載されていないから、各物質は特段の制約がない限り、石油ベース、バイオベースの点で限定されるものではない。 また、フラン誘導体に関して、刊行物2ないし8に記載される工業生産される市販品のフラン誘導体であれば、ある程度の純度を有するものであって、煙抑制能力を損うような低品質のものしか存在しないとまではいえない。 さらに、引用発明においてはフラン誘導体を反応原料とするから、副反応が生じないように、必要に応じ反応前に精製処理を施す程度のことは当業者が適宜行うことにすぎない。 よって、請求人の主張は採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-014646

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