特許拒絶査定不服審判
2016-013761
ドリル工具及びドリル装置
- 審判番号
- 2016-013761
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-087559外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月14日
- 審決日
- 2017年12月19日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B23B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-87559「ドリル工具及びドリル装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-215832〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)4月6日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年10月21日付け :拒絶理由の通知
平成27年12月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年5月27日付け :拒絶査定
平成28年9月14日 :審判請求書と同時に手続補正書の提出
第2 平成28年9月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「装置本体に収容した駆動源と、該駆動源によって回転駆動されるとともに上記装置本体の前方側に突出して設けられたビット駆動軸と、該ビット駆動軸の先端部に取り付けられたダイヤビットとを備え、
ダイヤビット駆動用モータとは別のモータの出力軸の軸線を挟んで対称位置に対向するとともに前記別のモータの出力軸の軸線に直交する軸線のまわりに回転可能に配置された偏心ウエイトを有する加振装置部を備え、前記モータで偏心ウエイトを互いに逆方向に回転駆動することにより、前記ビット駆動軸の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力と上記ビット駆動軸の回転方向に作用して大きさが脈動する加振モーメントとを発生させるドリル工具において、
前記ビット駆動軸に、圧縮空気を軸方向に供給可能な通気経路を形成するとともに、
前記ビット駆動軸の先端部に、前記通気経路に供給された圧縮空気が吹き出し可能な開口部を設け、
前記偏心ウエイトの駆動によって前記ダイヤビットの先端部と穿孔対象との接触圧を周期的に変動させることによって得られる、前記ダイヤビットの先端部から吹き出す脈動を有した圧縮空気を用いて、穿孔部から切粉を排出することを特徴とする、ドリル工具。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成27年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「装置本体に収容した駆動源と、該駆動源によって回転駆動されるとともに上記装置本体の前方側に突出して設けられたビット駆動軸と、該ビット駆動軸の先端部に取り付けられたダイヤビットとを備え、
ダイヤビット駆動用モータとは別のモータの出力軸の軸線を挟んで対称位置に対向するとともに前記別のモータの出力軸の軸線に直交する軸線のまわりに回転可能に配置された偏心ウエイトを有する加振装置部を備え、前記モータで偏心ウエイトを互いに逆方向に回転駆動することにより、前記ビット駆動軸の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力と上記ビット駆動軸の回転方向に作用して大きさが脈動する加振モーメントとを発生させるドリル工具において、
前記ビット駆動軸に、圧縮空気を軸方向に供給可能な通気経路を形成するとともに、
前記ビット駆動軸の先端部に、前記通気経路に供給された圧縮空気が吹き出し可能な開口部を設け、
前記偏心ウエイトの駆動によって前記ダイヤビットの先端部と穿孔対象との接触圧を周期的に変動させることによって、脈動を有した圧縮空気を吹き出すことを特徴とする、ドリル工具。」
2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「脈動を有した圧縮空気」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、上記の限定は、出願当初の明細書の段落【0044】に示されているので新規事項にも相当しない。
そこで補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)摘記事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2006-231457号公報(2006年9月7日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
a「以下、図面によって本発明に係るドリル工具の実施形態について説明する。図1において符号1はコンクリートドリルを示す。このコンクリートドリル1は、装置本体2に収容した駆動源によりビット駆動軸3を回転駆動して、前記装置本体2の前方に突出させたビット駆動軸3の先端に取り付けたダイヤビット4を回転させることによりコンクリートに穿孔させるようにしたものである。」(段落【0016】)
b「装置本体2には図2に示されるように、駆動源として電力で作動する加振装置用モータ5とビット駆動軸用モータ6とが設けられている。加振装置用モータ5は加振装置7に作動連結されている。・・・」(段落【0017】)
c「上記構成によれば、加振装置用モータ5を作動させることにより、その回転力はベベルギア9、10、11を介して偏心ウエイト15、16に伝達され、対向する2つの偏心ウエイト15、16は互いに逆方向に回転する。」(段落【0018】)
d「ところで、図3に示されるように、加振装置用モータ5の出力軸8とビット駆動軸3は同一軸線P上にあり、また上記2つの偏心ウエイト15、16は、ビット駆動軸3の軸線Pの互いに反対側でかつ上記軸線Pに直交する同一軸線Q上に、軸線P、Qの交点から等距離の位置に対向するように配置されている。また、2つの偏心ウエイト15、16は装置本体2をア側からみたときと反対のイ側からみたときとで、一方が前方又は後方を向いているときは、他方も同じ側を向くように配置されている。」(段落【0020】)
e「ところで、偏心ウエイト15、16が互いに逆回転することにより、1回転の位相を90°ずつずらしてみると、図3のように、コンクリートドリルには次のような力が加えられる。
(1)のときは偏心ウエイト15は上方、偏心ウエイト16は下方に回転し、装置本体2に捩り力を加える。
(2)のときは偏心ウエイト15は前方(ダイヤビット4側)、偏心ウエイト16も前方に回転し、装置本体2に加振力を加える。
(3)のときは偏心ウエイト15は下方、偏心ウエイト16は上方に回転し、装置本体2に捩り力を加える。
(4)のときは、偏心ウエイト15は後方、偏心ウエイト16も後方に回転し、装置本体2に加振力を加える。」(段落【0025】)
f「このように、コンクリートドリル1には、ビット駆動軸3の回転に対して、大きさが脈動して変化し、上記(2)(4)のときは、図3の矢印Aに示されるように、ビット駆動軸3に沿った同位相の加振力、(1)(3)のときには、同図の矢印Bに示されるように、ビット駆動軸3の回転方向へ捩り力に基づく逆位相の加振モーメントがそれぞれ付与されることになる。以上をグラフに示せば、図5のようになる。」(段落【0026】)
g「上述のように、上記コンクリートドリルによれば、次の作用効果を得ることができる。
(a)ビット駆動軸3の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力と、ビット駆動軸の回転方向に作用して大きさが脈動する加振モーメントとをビット駆動軸に発生させるので、ドリル工具の押付力を作業者の押付力と加振力との総和とすることができ、加振力によって作業者の押付力を補うことができる。
・・・
(e)ビット駆動軸3の軸線に直交する同一軸線上にビット駆動軸3の軸線を挟んで略対称の位置に対向して配設された2つの偏心ウエイト15、16を、同一軸線上に配設した駆動軸による偏心ウエイト駆動部で互いに逆回転駆動して、加振力と加振モーメントとを発生させるので、ハンマードリルの打撃機構による打撃力や振動ドリルの振動機構による振動力の如く、ダイヤビットなどのビット工具を変位させ得るほどの力をビット工具に加えてコンクリートを衝撃破壊する機構となっておらず、静音施工が可能となる。」(段落【0028】)
(イ)引用文献1に記載された発明
a 摘記事項aからみて、引用文献1には「コンクリートドリル1」が「装置本体2に収容した駆動源」、「該駆動源により回転駆動され前記装置本体2の前方に突出させたビット駆動軸3」及び「該ビット駆動軸3の先端に取り付けたダイヤビット」を備えることが記載されている。
b 摘記事項b、d及びgからみて、引用文献1には「コンクリートドリル1」が「ビット駆動軸用モータ6とは別の加振装置用モータ5の出力軸8とビット駆動軸3との同一の軸線Pに直交する軸線Q上にビット駆動軸3の軸線Pを挟んで略対称の位置に対向して配設され、軸線Q上に配設した駆動軸による偏心ウエイト駆動部で互いに逆回転駆動される偏心ウエイト15、16を有する加振装置7」を備えることが記載されている。
c 摘記事項c、e、f及びgからみて、引用文献1には「前記加振装置用モータ5を作動させて、偏心ウエイト15、16を互いに逆方向に回転させることにより、ビット駆動軸3の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力と、ビット駆動軸3の回転方向に作用して大きさが脈動する加振モーメントとを発生させる」ことが記載されている。
d 上記の摘記事項a~gを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「装置本体2に収容した駆動源と、該駆動源により回転駆動され前記装置本体2の前方に突出させたビット駆動軸3と、該ビット駆動軸3の先端に取り付けたダイヤビットとを備え、
ビット駆動軸用モータ6とは別の加振装置用モータ5の出力軸8とビット駆動軸3との同一の軸線Pに直交する軸線Q上にビット駆動軸3の軸線Pを挟んで略対称の位置に対向して配設され、軸線Q上に配設した駆動軸による偏心ウエイト駆動部で互いに逆回転駆動される偏心ウエイト15、16を有する加振装置7を備え、前記加振装置用モータ5を作動させて、偏心ウエイト15、16を互いに逆方向に回転させることにより、ビット駆動軸3の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力と、ビット駆動軸3の回転方向に作用して大きさが脈動する加振モーメントとを発生させるコンクリートドリル1。」
イ 引用文献2
(ア)摘記事項及び図示事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開昭63-200905号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に次の記載がある。
a「ここでのドリル14は軸線に沿って貫通する流路16を有している。ドリル14の先端には、ダイヤモンド等を含む超硬質の砥粒を焼結して円筒状に成形した切刃17が設けられている。」(第3ページ下左欄第2行~第5行)
b「そこで、導管P1に接続されたコンプレッサ等を駆動させて流体供給管11、流体溜め室8を介して回転軸5、ドリル14を貫通する流路7、16に圧力流体を導入すると同時に、接続管P2に接続されたポンプ等を駆動させて抜気口28からカバー21の内部の空気を排出させる。これによって、ドリル14の先端から流出する空気は図中で矢印で示すように、ドリル14の外側を軸方向に逆行して抜気口28に流入する。こうした流体供給状態でスイッチ13を操作して回転駆動器3を回転駆動させ、ドリル14を回転させることで穿孔対象物Sに孔が穿設される。この穿孔加工時において、穿孔対象物Sから切粉乃至粉塵が発生するが、ドリル先端から流出し抜気口28に流入する気流が上記切粉を搬出する。これによって、加工中の孔の内部の切粉は効果的に排除される。」(第4ページ上右欄第18行~同ページ下左欄第14行)
c「さらに、流路7、16から圧縮空気を導入する場合を説明したが・・・」(第5ページ上左欄第5行~第6行)
d 第1図の図示によると、切刃17の先端部に、流路16の開口部が開口している点が見て取れる。
(イ)引用文献2記載の技術
上記摘記事項及び図示事項から、引用文献2には、次の技術が記載されている。
「ドリル14に圧縮空気が導入可能な軸心に沿って貫通する流路16を有し、ビット駆動軸の先端に、前記流路16に導入された圧縮空気が流出可能な前記流路16の開口部を設け、ドリル14の先端に設けられたダイヤモンドを含む超硬質の砥粒を焼結して円筒状に成形した切刃17の先端部から流出し、カバー21の抜気口28に流入する気流を用いて、孔から切粉を搬出する技術。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「コンクリートドリル1」は、本件補正発明の「ドリル工具」に相当する。
(イ)引用発明の「ビット駆動軸用モータ6」は、ダイヤビットを回転させるものだから、本件補正発明の「ダイヤビット駆動用モータ」に相当する。
(ウ)引用発明の「加振装置用モータ5」は、「ビット駆動軸用モータ6」と別のものであるのは明らかだから、本件補正発明の「ダイヤビット駆動用モータとは別のモータ」に相当する。
また、引用発明において、「偏心ウエイト」が「軸線Q上に配設した駆動軸による偏心ウエイト駆動部で互いに逆回転駆動される」ことから、「偏心ウエイト」が「軸線Q」のまわりに回転可能であることも技術的に明らかである。
よって、引用発明の「加振装置用モータ5の出力軸8とビット駆動軸3との同一の軸線Pに直交する軸線Q上にビット駆動軸3の軸線Pを挟んで略対称の位置に対向して配設され、軸線Q上に配設した駆動軸による偏心ウエイト駆動部で互いに逆回転駆動される偏心ウエイト15、16を有する加振装置7」は、本件補正発明の「別のモータの出力軸の軸線を挟んで対称位置に対向するとともに前記別のモータの出力軸の軸線に直交する軸線のまわりに回転可能に配置された偏心ウエイトを有する加振装置部」に相当する。
(エ)引用発明の「前記加振装置用モータ5を作動させて、偏心ウエイト15、16を互いに逆方向に回転させることにより、ビット駆動軸3の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力と、ビット駆動軸3の回転方向に作用して大きさが脈動する加振モーメントとを発生させるコンクリートドリル1」は、本件補正発明の「前記モータで偏心ウエイトを互いに逆方向に回転駆動することにより、前記ビット駆動軸の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力と上記ビット駆動軸の回転方向に作用して大きさが脈動する加振モーメントとを発生させるドリル工具」に相当する。
(オ)引用発明の「偏心ウエイト15、16を互いに逆方向に回転させることにより」発生する「ビット駆動軸3の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力」が、「ビット駆動軸3の先端部に取り付けられたダイヤビット」の先端部と穿孔対象との接触圧を脈動に応じて周期的に変動させるように作用することは、技術的に明らかである。
よって、引用発明の「コンクリートドリル1」が「偏心ウエイト15、16を互いに逆方向に回転させることにより、ビット駆動軸3の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力」を「発生させる」ことは、本件補正発明の「ドリル工具」が「前記偏心ウエイトの駆動によって前記ダイヤビットの先端部と穿孔対象との接触圧を周期的に変動させる」ことに相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「装置本体に収容した駆動源と、該駆動源によって回転駆動されるとともに上記装置本体の前方側に突出して設けられたビット駆動軸と、該ビット駆動軸の先端部に取り付けられたダイヤビットとを備え、
ダイヤビット駆動用モータとは別のモータの出力軸の軸線を挟んで対称位置に対向するとともに前記別のモータの出力軸の軸線に直交する軸線のまわりに回転可能に配置された偏心ウエイトを有する加振装置部を備え、前記モータで偏心ウエイトを互いに逆方向に回転駆動することにより、前記ビット駆動軸の軸線方向に作用して大きさが脈動する加振力と上記ビット駆動軸の回転方向に作用して大きさが脈動する加振モーメントとを発生させるドリル工具において、
前記偏心ウエイトの駆動によって前記ダイヤビットの先端部と穿孔対象との接触圧を周期的に変動させる、ドリル工具。」
<相違点>
本件補正発明では、「前記ビット駆動軸に、圧縮空気を軸方向に供給可能な通気経路を形成するとともに、前記ビット駆動軸の先端部に、前記通気経路に供給された圧縮空気が吹き出し可能な開口部を設け、前記偏心ウエイトの駆動によって前記ダイヤビットの先端部と穿孔対象との接触圧を周期的に変動させることによって得られる、前記ダイヤビットの先端部から吹き出す脈動を有した圧縮空気を用いて、穿孔部から切粉を排出する」のに対し、引用発明では、「前記偏心ウエイトの駆動によって前記ダイヤビットの先端部と穿孔対象との接触圧を周期的に変動させる」ものの、圧縮空気を用いた穿孔部からの切粉の排出を行っていない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点について
引用文献2には、ドリル工具のビット駆動軸に、圧縮空気を軸方向に供給可能な通気経路を形成するとともに、前記ビット駆動軸の先端部に、前記通気通路に供給された圧縮空気が吹き出し可能な開口部を設け、前記ビット駆動軸の先端のビットの先端部から吹き出す圧縮空気を用いて、穿孔から切粉を排出するという技術的事項が示されているところ、実願平1-79448号(実開平3-20113号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。特に、第5ページ第15行~第6ページ第6行、第7ページ第9行~第8ページ第2行を参照。)、実願昭61-65332号(実開昭62-178009号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献4」という。特に、第10ページ第4行~第9行、第11ページ第6行~第17行を参照。)、及び、実願昭61-193813号(実開昭63-100110号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献5」という。特に、第4ページ第1行~第9行を参照。)の記載からみて、上記の技術的事項は従来周知であるということができる。
また、切粉の排出という課題についても、引用文献2には「ドリル先端から流出し抜気口28に流入する気流が上記切粉を搬出する」(第4ページ下左欄第11行~第12行を参照。)と記載されており、引用文献3には「ドリル先端から噴出する・・・圧縮空気により・・・穿孔時の切り粉は・・・穿孔している孔から圧縮空気と共に順次・・・排出される。」(第7ページ第17行~第8ページ第2行を参照。)と記載され、引用文献4には「繰粉を確実に排出できる」(第5ページ第16行~第17行を参照。)と記載され、引用文献5にも「削屑除去用の空気を該ドリル刃の先端部に供給する」(第4ページ第7行~第8行を参照。)と記載されている。
さらに、引用文献1の段落【0012】に「切粉を排出しやすくなるため」と記載されているように、切粉の排出はドリル工具の技術分野においてきわめて一般的な課題にすぎない。
そうすると、切粉を排出しやすくするという課題を有する引用発明に接した当業者であれば、切粉を排出しやすくするための従来周知な技術的事項を組み合わせてみようとすることは容易に想到しえたことである。
そして、具体的構成においても、引用発明において、引用文献2に示された技術的事項を適用することに困難性は認められない。
さらに、引用発明は「ダイヤビットの先端部と穿孔対象との接触圧を周期的に変動させ」るものであるから、引用発明に従来周知の技術的事項を適用すれば、接触圧が高い時には圧縮空気が吹き出しにくく(流れにくく)なり、接触圧が低下した時には圧縮空気が吹き出されやすくなるので、脈動が発生することは明らかであり、その結果自ずと、「ダイヤビットの先端部から吹き出す脈動を有した圧縮空気を用いて、穿孔部から切粉を排出すること」になるのは技術的に明らかである。
イ したがって、本件補正発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は審判請求書の第6ページ下から3行~第7ページ第4行で「本願発明1の構成を念頭に置かなければ、「(引用文献2のようなポンプで吸引しなくても)圧縮空気だけで切粉を効率的に排出できるようにする」という解決課題も、「脈動を有した圧縮空気を用いて切粉を排出する」という解決手段も、引用文献のいずれにおいても記載も示唆もされておらず、しかも引用文献1記載の構成と引用文献2記載の構成とは互いに異なる課題に基づくものであるから、引用文献を組み合わせる動機付けがなく、本願発明1の構成に容易に想到できたはずはない。」と主張している。
しかしながら、「引用文献2のようなポンプで吸引しなくても」という点については、引用文献2の吸引ポンプは、穿孔時の粉塵が散逸することを防ぐものであり、穿孔内の切粉の排出は圧縮空気で行われているから、引用文献2において、穿孔内の切粉の排出に吸引ポンプが必須というわけではない。
また、ポンプによる吸引を伴わずに圧縮空気のみで粉塵を穿孔から排出することは、引用文献4及び5や、引用文献2において従来技術として引用している特開昭61-146412号公報に示されているように従来周知な技術手段であるし、そもそも、本件補正発明も、吸引するための構成を除外する旨の特定がなされているわけではない。
したがって、吸引ポンプが不要である旨の請求人の主張は採用できない。
また、「脈動を有した圧縮空気を用いて切粉を排出する」点については、上述のように引用発明に引用文献2に示された技術的事項を適用すれば必然的に得られる結果にすぎないものであり、この主張も採用できない。
そもそも、脈動の作用効果を主張しているものの、単に圧縮空気を供給する場合に比して脈動させたことの作用効果がどの程度あるのかは明細書からは不明であり、実際にどの程度の脈動が発生していたのか、脈動の周期や、具体的な圧力変動の値も示されておらず、「脈動」に格別の作用効果を見い出すことはできない。実際には、かなり狭い場所を空気が流れるため、かなり乱れた空気の流れとなると考えられ、脈動させなかったら吹き飛ばせなかった切粉が、脈動させることによって始めて吹き飛ばすことができるようになったという事象が生じるものとは考えにくいと合議体は判断している。
また、審判請求書の第5ページ下から6行~第6ページ第3行で、「この点、「コンクリート粉の排出」という課題が仮に常識的な課題であるとしても、そこで組み合せることが可能な技術は無数にあり得るのであって、それらの組合せのすべてが容易想到といえるものでないことはいうまでもない。
また、「コンクリート粉の排出」という課題の解決手段についても無数にあり得るのであるから、無数にあり得るであろう技術の組み合わせの中から偶然に引用文献1と引用文献2とを組み合わせ、無数にあり得るであろう解決手段の中から「ダイヤビットの先端部から吹き出す脈動を有した圧縮空気を用いて、穿孔部から切粉を排出する」という本願発明1の構成を採用する、といったことが何の動機付けもなく容易にできたはずもない。」と主張している。
しかしながら、上述したように、引用文献2に示された技術が公知であり、引用発明と組み合わせる動機付けが存在する以上、本願補正発明のように構成することは容易というより他なく、上記主張は採用できない。
(6)本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年9月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「脈動を有した圧縮空気」の用途を「穿孔部から切粉を排出する」とした限定事項、及び、「脈動を有した圧縮空気」の吹き出し元を「ダイヤビットの先端部」とした限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(4)で検討したように、引用発明及び従来周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び従来周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-013761