特許拒絶査定不服審判
2016-010050
遊技機
- 審判番号
- 2016-010050
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-173309外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年07月04日
- 審決日
- 2017年03月01日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .575-Z (A63F) / P18 .121-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-173309「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日出願公開、特開2014- 28161〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成22年7月27日に出願した特願2010-168631号の一部を平成25年8月23日に新たに出願したものであって、平成26年4月14日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年3月23日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年11月30日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年2月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月28日付け(発送日:同年4月5日)で拒絶査定がなされ、これに対し同年7月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、平成28年9月15日付けで前置報告がなされ、平成28年11月17日付けで上申書が提出されたものである。
第2 平成28年7月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年7月4日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の概要
平成28年7月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、特許請求の範囲の請求項1は、
補正前(平成28年2月3日付け手続補正)の
「【請求項1】
基準位置と該基準位置とは異なる移動位置との間において移動する移動体と、該移動体を移動させる駆動源と、を備える遊技機であって、
識別情報の可変表示を行う可変表示手段と、
未だ開始されていない識別情報の可変表示について、保留記憶として記憶可能な保留記憶手段と、
前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示を表示する保留表示手段と、
前記駆動源を用いて前記移動体を前記基準位置から前記移動位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力に抗して該移動体の移動速度を調整する調整手段と、
を備え、
前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させるときにおいては前記調整手段は前記駆動源の動力を補い、
前記保留表示手段は、前記移動体の状態に応じて前記保留表示の表示態様を変更する
ことを特徴とする遊技機。」
から、
補正後(本件補正:平成28年7月4日付けの手続補正)の
「【請求項1】
A 基準位置と該基準位置とは異なる移動位置との間において移動する移動体と、該移動体を移動させる駆動源と、を備える遊技機であって、
B 識別情報の可変表示を行う可変表示手段と、
C 未だ開始されていない識別情報の可変表示について、保留記憶として記憶可能な保留記憶手段と、
D 前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示を表示する保留表示手段と、
E 前記駆動源を用いて前記移動体を前記基準位置から前記移動位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力に抗して該移動体の移動速度を調整する調整手段と、
を備え、
F 前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力が前記移動体に対し前記基準位置に移動させる方向に作用するとともに前記調整手段は該駆動源の動力を補い、
G 前記保留表示手段は、前記移動体の状態に応じて前記保留表示の表示態様を変更する
ことを特徴とする遊技機。」
へ補正された(下線部は補正箇所を示す。ただし、記号A~Gは分説するため当審にて付した。)。
2 補正の適否
(1)補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「駆動源」について、当該駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させるときにおいては、「前記駆動源の動力が前記移動体に対し前記基準位置に移動させる方向に作用するとともに」と限定する補正である。
また、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明と補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項
願書に最初に添付した明細書の【0162】には、「また、下降位置から発光表示器800を上昇させるには、昇降モータ533により従動ギヤ536を逆駆動させればよい。この場合、昇降アーム534の回転に伴って連結ピン563が上昇すると、第1連結孔591の上端縁に当接して第1スライド板531を上昇させる。」と記載されており、図15には、「昇降アーム534」の回動により「発光表示器800」が「上昇位置」と「下降位置」の間を移動することが図示されている。
ここで、「昇降モータ533」、「発光表示器800」、「上昇位置」、「下降位置」は、それぞれ、本件補正後の請求項1に係る発明の「駆動源」、「移動体」、「基準位置」、「移動位置」に相当する。
そうすると、【0162】及び図15には、「駆動源」による昇降アーム534の回動により「移動体」が「基準位置」と「移動位置」の間を移動することが記載されており、「駆動源」の動力が作用することで「移動体」が「基準位置」に移動することが記載されているといえる。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。
3 独立特許要件
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1に記載したとおりのものである。
(2)刊行物
本願の遡及日前に頒布された刊行物である特開2010-35719号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下、同じ。)。
ア 「【0001】
本発明は、遊技機用演出装置及びこれを備えた遊技機に関する。」
イ 「【0015】
遊技盤3の盤面上に形成される遊技領域内には、中央部に図柄表示装置(液晶表示装置)8を備えたセンター役物12が設けられ、その周囲には図示しない釘、スルーチャッカー13、風車14、電動チューリップ15、アタッカー16、レール17、サイドランプ18などの盤面部品やアウト口19などが設けられている。」
ウ 「【0019】
また、機構ベース23には、駆動モータ(第1の駆動手段)28が一体に組み付けられている。駆動モータ28は、後述するギヤ列を通じて第1の可動体22を回動軸25を中心に所定範囲で回動(正逆いずれの方向にも回転)させる。また、図3において、機構ベース23には、ソレノイド(第2の駆動手段)29が一体に組み付けられている。図6(a)(b)において、ソレノイド29は、プランジャ29a(可動軸)をソレノイド本体29cより突出する突出位置と当該ソレノイド本体29cに引き込まれる引き込み位置との間で往復動させる。図7において、ソレノイド29は、第1の可動体22の回動軸25を中心とする径方向に往復動可能に組み付けられている第2の可動体(装飾体24a)の移動方向に対してプランジャ29aの移動方向が交差するように機構ベース23上に設けられている。ソレノイド29は、回動アーム30を通じて第2の可動体(装飾体24a)を往復動させる。」
エ 「【0026】
ここで、駆動モータ28からの駆動伝達機構の一例について説明する。図3において、機構ベース23の一端側背面に駆動モータ28が組み付けられている。駆動モータ28のモータ軸にはモータギヤ28aが組み付けられている。また、第1の可動体22の回動軸25には扇形ギヤ33が一体に組み付けられている。モータギヤ28aと扇形ギヤ33とは機構ベース23に回転可能に組み付けられたギヤ列34を介して互いに噛み合っている。扇形ギヤ33にはピン33aが突設されており機構ベース23に突設されたピン23aとの間に引っ張りばね35(補助手段)によって連結されている。引っ張りばね35は、第1の可動体22を図3の基準位置で保持するように常時引っ張り力を作用しており、駆動モータ28は、引っ張りばね35の引っ張り力に抗して第1の可動体22を可動位置へ回動軸25中心に所定範囲で回転させるようになっている。引っ張りばね35は第1の可動体22が可動位置から図3の元の位置へ戻る際には駆動モータ28の駆動負荷を軽減する作用するほかに、ギヤ間のバックラッシュを吸収する。図2において、ギヤ列34は機構ベース23に組み付けられる機構カバー36に覆われている。」
オ 「【0033】
引っ張りばね35による引っ張り力により第1の可動体22が基準位置から可動位置へ回動する際には常時引っ張り力を受けてがたつくことなく安定した状態で回動でき、更には第1の可動体22を確実に基準位置へ復帰させることができるうえに、第1の可動体22が可動位置から基準位置へ復帰する際の駆動モータ28の駆動負荷を軽減することができる。更には、パチンコ機1を搬送する際に第1の可動体22を振動等の衝撃から保護することができる。」
カ 「【0040】
よって、図1において、遊技者は図柄表示装置8の表示や入賞などの遊技状態に応じて、第1の可動体22と第2の可動体(装飾体24a)の回動と直動を組み合わせた動作を交互あるいは組み合わせて行なうことで、遊技者の興趣の尽きない、複雑な演出動作を行なわせて、多彩な演出を行なうことができる。」
キ 上記ウの「駆動モータ28は、後述するギヤ列を通じて第1の可動体22を回動軸25を中心に所定範囲で回動(正逆いずれの方向にも回転)させる」との記載、及び、上記オの「第1の可動体22が基準位置から可動位置へ回動する」、「第1の可動体22が可動位置から基準位置へ復帰する」との記載より、刊行物1には、「基準位置と可動位置との間で回動する第1の可動体22と、第1の可動体22を回動させる駆動モータ28」が記載されていると認められる。
ク 上記イの「遊技領域内には、中央部に図柄表示装置(液晶表示装置)8を備えたセンター役物12が設けられ」との記載において、当該「図柄表示装置」により図柄の可変表示を行うことは、遊技機の分野の技術常識より明らかなので、刊行物1には、「遊技領域内の中央部に設けられたセンター役物12に備えられ、図柄の可変表示を行う図柄表示装置8」が記載されていると認められる。
ケ 上記カの「図柄表示装置8の表示」との記載より、当該「図柄表示装置8」の表示を制御するための制御装置が備えられていることは明らかであるので、刊行物1には、「図柄表示装置8の表示を制御する制御装置」が記載されていると認められる。
コ 上記エの「引っ張りばね35は、第1の可動体22を図3の基準位置で保持するように常時引っ張り力を作用しており、駆動モータ28は、引っ張りばね35の引っ張り力に抗して第1の可動体22を可動位置へ回動軸25中心に所定範囲で回転させるようになっている」との記載において、「駆動モータ28」が「引っ張りばね35の引っ張り力に抗」するとは、「引っ張りばね35」が「駆動モータ28」の動力に抗することでもあるといえる。
そうすると、「引っ張りばね35は、第1の可動体22を図3の基準位置で保持するように常時引っ張り力を作用して」いるから、「第1の可動体22」が「基準位置」から「可動位置」に回転する間、「引っ張りばね35」は「駆動モータ28」の動力に抗しているといえる。
したがって、刊行物1には、「駆動モータ28が第1の可動体22を基準位置から可動位置へ回転させるとき、駆動モータ28の動力に抗する引っ張りばね35」が記載されていると認められる。
サ 上記カの「図柄表示装置8の表示や入賞などの遊技状態に応じて、第1の可動体22と第2の可動体(装飾体24a)の回動と直動を組み合わせた動作を交互あるいは組み合わせて行なう・・・演出を行う」との記載において、「第1の可動体22と第2の可動体」を「交互あるいは組み合わせて」動作させる場合のいずれであっても、「第1の可動体22」は回動されることがあるので、刊行物1には、「図柄表示装置8の表示や入賞などの遊技状態に応じて、第1の可動体22を回動する演出を行う」ことが記載されていると認められる。
上記ア~カの記載事項、及び、キ~サの認定事項より、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ただし、記号a、b、d~gは、本件補正発明の記号A、B、D~Gに対応させて付した。
「a 基準位置と可動位置との間で回動する第1の可動体22と、第1の可動体22を回動させる駆動モータ28と、を備えた遊技機であって、(ア、キ)
b 遊技領域内の中央部に設けられたセンター役物12に備えられ、図柄の可変表示を行う図柄表示装置8と、(ク)
d 図柄表示装置8の表示を制御する制御装置と、(ケ)
e 駆動モータ28が第1の可動体22を基準位置から可動位置へ回転させるとき、駆動モータ28の動力に抗する引っ張りばね35と、(コ)
を備え、
f 引っ張りばね35は第1の可動体22が可動位置から元の位置へ戻る際には駆動モータ28の駆動負荷を軽減する作用をし、(エ)
g 図柄表示装置8の表示や入賞などの遊技状態に応じて、第1の可動体22を回動する演出を行う(サ)
遊技機。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを分説にしたがい対比する。
(a)引用発明の「基準位置」、「可動位置」、「第1の可動体22」、「駆動モータ28」は、それぞれ、本件補正発明の「基準位置」、「移動位置」、「移動体」、「駆動源」に相当する。
したがって、引用発明の「基準位置と可動位置との間で回動する第1の可動体22と、第1の可動体22を回動させる駆動モータ28と、を備えた遊技機」は、本件補正発明の「基準位置と該基準位置とは異なる移動位置との間において移動する移動体と、該移動体を移動させる駆動源と、を備える遊技機」に相当する。
(b)引用発明の「図柄」は、本件補正発明の「識別情報」に相当する。
したがって、引用発明の「遊技領域内の中央部に設けられたセンター役物12に備えられ、図柄の可変表示を行う図柄表示装置8」は、本件補正発明の「識別情報の可変表示を行う可変表示手段」に相当する。
(e)本件補正発明の「調整手段」が「移動体の移動速度を調整する」点について本願の明細書を参照すると、【0154】に「また、下降させる際において、連結ピン595が回動軸539の直上位置を乗り越えた後に、昇降モータ533への電力の供給を停止することで、可動ユニット502の自重により可動ユニット502を一気に落下させてもよく、このような場合において、引張りバネ535が下降速度を抑制するとともに、下降位置における衝撃を緩和させることになる。」との記載があるのみであり、「移動速度の調整」とは、「調整手段」(引張りバネ535)が移動体の移動速度を抑制する方向に力を作用させることと解される。
そうすると、引用発明の「引っ張りばね35」は、「駆動モータ28が第1の可動体22を基準位置から可動位置へ回転させるとき、駆動モータ28の動力に抗する」ので、第1の可動体22の移動速度を抑制する方向に力を作用させていることは明らかであり、「移動体の移動速度を調整」しているといえる。
したがって、引用発明の「引っ張りばね35」は、本件補正発明の「調整手段」に相当する。
以上より、引用発明の「駆動モータ28が第1の可動体22を基準位置から可動位置へ回転させるとき、駆動モータ28の動力に抗する引っ張りばね35」は、本件補正発明の「前記駆動源を用いて前記移動体を前記基準位置から前記移動位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力に抗して該移動体の移動速度を調整する調整手段」に相当する。
(f)引用発明の「第1の可動体22が可動位置から元の位置へ戻る」ことは、本件補正発明の「前記移動体」が「前記移動位置から前記基準位置に移動」することに相当する。
また、引用発明の「引っ張りばね35は・・・駆動モータ28の駆動負荷を軽減する作用をし」との記載より、「引っ張りばね35」と「駆動モータ28」は、どちらも「第1の可動体22が可動位置から元の位置へ戻る」方向に力を作用させており、「駆動モータ28」は、その動力が「第1の可動体22」を「元の位置(基準位置)」に移動させる方向に作用し、これを「引っ張りばね35」が補っているといえる。
したがって、引用発明の「引っ張りばね35は第1の可動体22が可動位置から元の位置へ戻る際には駆動モータ28の駆動負荷を軽減する作用をし」は、本件補正発明の「前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力が前記移動体に対し前記基準位置に移動させる方向に作用するとともに前記調整手段は該駆動源の動力を補い」に相当する。
上記(a)、(b)、(e)、(f)の対比より、本件補正発明と引用発明は、構成A、B、E、Fに関する次の点で一致している。
「A 基準位置と該基準位置とは異なる移動位置との間において移動する移動体と、該移動体を移動させる駆動源と、を備える遊技機であって、
B 識別情報の可変表示を行う可変表示手段と、
E 前記駆動源を用いて前記移動体を前記基準位置から前記移動位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力に抗して該移動体の移動速度を調整する調整手段と、
を備え、
F 前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力が前記移動体に対し前記基準位置に移動させる方向に作用するとともに前記調整手段は該駆動源の動力を補う
遊技機。」
そして、本件補正発明と引用発明は、構成C、D、Gに関する次の点で相違している。
(相違点1)
本件補正発明は、未だ開始されていない識別情報の可変表示について、保留記憶として記憶可能な保留記憶手段(構成C)を備え、当該保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示を表示する保留表示手段(構成D)を備えるのに対し、引用発明は、このような特定がなされていない点。
(相違点2)
本件補正発明は、保留表示手段は、移動体の状態に応じて保留表示の表示態様を変更する(構成G)のに対し、引用発明は、このような特定がなされていない点。
(4)判断
ア 相違点1について
まず、本件補正発明の「保留表示手段」について、本願の明細書の【0187】、【0213】~【0216】、図22を参照すると、発明の詳細な説明において、保留記憶表示制御処理を実行している「演出制御用CPU120」が、本件補正発明の「保留表示手段」に対応するといえるので、「保留表示手段」は、保留表示を制御する制御手段のことといえる。
そうすると、遊技機の分野において、未だ開始されていない識別情報の可変表示について、保留記憶として保留可能な保留記憶手段と、保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示を画面上に表示する保留表示手段を備えることは、慣用技術であり、また、例えば、特開2004-24277号公報(特に【0040】、【0051】、図11参照。)、特開2004-49325号公報(特に【0070】~【0074】、図10参照。)、特開平7-213706号公報(特に【0038】、【0152】、図19参照。)、及び、特開2008-253848号公報(特に【0018】、【0019】、【0042】、図3参照。)に示されるように、本願の遡及日前における周知技術である。
そして、引用発明は、「図柄表示装置8の表示を制御する制御装置」を有するものであり、「図柄表示装置8」における図柄の可変表示について、保留記憶手段により保留記憶し、「図柄表示装置8の表示を制御する制御装置」により、「図柄表示装置8」上に当該保留記憶に対応した保留表示をできるように、上記周知・慣用技術を適用し、未だ開始されていない識別情報の可変表示について、保留記憶として記憶可能な保留記憶手段を備え、当該保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示を表示する保留表示手段の機能を備えるものとして、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
遊技機の分野において、保留表示手段が、演出に応じて、画面上の保留表示の表示位置等の表示態様を変更することは、例えば、上記特開2004-24277号公報(特に【0055】、【0096】-【0098】、図11参照。)、上記特開2004-49325号公報(特に【0076】、【0077】、図10参照。)、上記特開平7-213706号公報(特に【0157】、【0158】、図19、21、22参照。)、及び、上記特開2008-253848号公報(特に【0131】、図3参照。)に示されるように、本願の遡及日前における周知技術である。
そして、演出の興趣を向上させるために、引用発明の「第1の可動体22を回動する演出」において、「保留表示手段が、演出に応じて、画面上の保留表示の表示態様を変更する」という上記周知技術を適用して、「保留表示手段が、移動体(第1の可動体22)の状態に応じて保留表示の表示態様を変更する」ものとして、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
ウ 効果について
上記相違点1に係る「保留記憶手段と保留表示手段を備える」ことにより奏される効果は、上記アに記載したとおり、これらの手段を備えることは周知・慣用技術であって、当該周知・慣用技術が有する効果であることは明らかである。
また、上記相違点2に係る「保留表示手段は、移動体の状態に応じて保留表示の表示態様を変更する」ことにより奏される効果は、移動体と保留表示による演出上の効果にすぎず、引用発明の「発光表示器800」(移動体)を動作させること、及び、上記イに記載した「保留表示手段が、演出に応じて、画面上の保留表示の表示位置等の表示態様を変更する」という周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものとはいえない。
(5)請求人の主張
請求人は、審判請求書の「(4)本願発明と引用文献との対比」において、「本願発明では、移動体を移動位置から基準位置に移動させるときは、駆動源の動力が移動体に対し基準位置に移動させる方向に作用する、すなわち、駆動源の動力で移動体を移動させるものにおいて調整手段が駆動源の動力を補うものであるのに対し、引用文献1に記載の発明では、移動体(可動部材31)を移動位置(終位置)から基準位置(原位置)に移動させるときは、専らバネ部材40の弾性力のみにより移動体(可動部材31)を移動位置(終位置)から基準位置(原位置)へ向けて引っ張り上げているものであって、駆動モータ38はカム39を回す動力に過ぎず、駆動モータ38の動力が移動体(可動部材31)に作用して基準位置(原位置)へ移動させるものではない」(第7頁第16~24行)と主張している。
しかしながら、上記(3)(f)に記載したとおり、当審で新たに引用した刊行物1に記載の引用発明は、駆動源の動力で移動体を移動させるものにおいて調整手段が駆動源の動力を補うものである。
そして、引用発明が当該構成を備えることにより、移動体の移動をスムースに行い、演出上の効果を向上させることができることは、当業者にとって自明である。
よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
また、請求人は、平成28年11月17日付けで提出した上申書においても、上記と同様に、引用文献1は、本願発明のように移動体を駆動源の動力により移動位置から基準位置に移動させる構成ではない旨主張するが、上記の理由によりこれを採用することはできない。
(6)小括
上記(4)のとおり、本件補正発明は、当業者が引用発明、上記周知・慣用技術、及び、上記周知技術にもとづいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成28年2月3日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。ただし、記号A.~G.は分説するため当審にて付した。
「【請求項1】
A.基準位置と該基準位置とは異なる移動位置との間において移動する移動体と、該移動体を移動させる駆動源と、を備える遊技機であって、
B.識別情報の可変表示を行う可変表示手段と、
C.未だ開始されていない識別情報の可変表示について、保留記憶として記憶可能な保留記憶手段と、
D.前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示を表示する保留表示手段と、
E.前記駆動源を用いて前記移動体を前記基準位置から前記移動位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力に抗して該移動体の移動速度を調整する調整手段と、
を備え、
F.前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させるときにおいては前記調整手段は前記駆動源の動力を補い、
G.前記保留表示手段は、前記移動体の状態に応じて前記保留表示の表示態様を変更する
ことを特徴とする遊技機。」
2 刊行物
本願の遡及日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において提示された特開2005-110862号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次に事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、遊技機に関し、更に詳細には、遊技球が始動入賞具に入賞した際に得られる始動情報を記憶手段に記憶すると共に、該記憶手段が記憶する始動情報の記憶数を始動情報数表示手段により表示するようにした遊技機に関するものである。」
イ 「【0018】
(図柄表示装置について)
図2~図4に示すように、実施例のパチンコ機Pに搭載される図柄表示装置22は、前記表示制御装置23からの制御信号に基づいて、前記表示部22aで図柄を停止または可変表示する図柄組み合わせゲームを行なうよう構成される。なお、前記図柄表示装置22には、前記表示部22aに図柄を停止および可変表示し得る3つの表示領域(図示せず)が横並び状に設けられると共に、各表示領域に表示可能な図柄として、「0」~「9」の10種類の数字を設定してある。そして、左右に位置する表示領域に同一の図柄が停止表示されると共に、真中に位置する表示領域で図柄が可変表示されている場合には、リーチが発生し(例えば、「0,可変表示,0」や「7,可変表示,7」等)、図柄表示装置22での遊技演出の結果として、真中の表示領域に同一の図柄が停止表示されて全ての図柄が揃った場合(例えば、「0,0,0」や「7,7,7」等)に、遊技者に有利な大当り遊技状態が発生するようになっている。すなわち、前記大当り遊技状態が発生すると、前記入賞装置Mの開閉板17が閉成状態から開放状態に変位されて、遊技者は多数のパチンコ球を得られるようになる。」
ウ 「【0023】
(始動情報数表示手段について)
図2~図4に示すように、前記装飾部材20における前記可視表示部22aの上方位置には、前記RAM27が記憶する抽出乱数の記憶数を表示し得る始動情報数表示手段30が配置されている。前記始動情報数表示手段30は、図5に示すように、前記装飾部材20の前面側に揺動自在に枢支された可動部材31と、前記発光制御装置29からの制御信号に基づいて点灯または消灯可能なLED(発光体)37,37,37,37と、装飾部材20の裏側に配設されて、前記表示制御装置23からの制御に基づいて可動部材31を作動する駆動モータ(駆動手段)38と、当該可動部材31の原位置を検出する原位置検出手段41とから基本的に構成されている。なお、図3に示すように、前記可動部材31は、前記装飾部材20の外周壁部20cに囲繞されており、前記遊技盤Jの遊技領域Iに打ち出されたパチンコ球が、該可動部材31の停止時および揺動時(動作時)に接触しないようになっている。また、前記駆動モータ38は、回転角度を制御可能なステッピングモータが採用され、前記表示制御装置23からの制御信号に基づいて所定角度だけ回転し得るよう構成されると共に、該駆動モータ38の回転軸38aに、円板状のカム39を偏心して取り付けてある。」
エ 「【0024】
前記可動部材31は、図5に示すように、後面を構成する平板状のベース部32と、該ベース部32の前側に取り付けられて前面を構成し、後方に開口する略箱状に形成された透光性のカバー部35と、ベース部32およびカバー部35の間に画成される空間部に配置されて、光の照射方向がカバー部35を指向するよう前記各LED37を配設した配線基板36とから構成される。ここで、前記可動部材31は、前記ベース部32とカバー部35の右端部に穿設した軸孔32a,35a(図5参照)に、前記装飾部材20に設けた軸部21(図6参照)を挿通することにより該装飾部材20に枢支されて、可動部材31が前記開口部20aの上端縁に沿って延在する原位置(図4または図6に実線で示す)、および可動部材31が前記表示部22aの前側に向けて移動した際の表示部22aの対角線方向に延在する終位置(図4または図6に2点鎖線で示す)の間を揺動し得るようになっている。なお、前記可動部材31の枢支部位は、前記装飾部材20で被覆されて、前側から直接見えないよう構成してある。すなわち、前記可動部材31(始動情報数表示手段30)が前記終位置に揺動した際に、該可動部材31の略全体で前記表示部22aの一部を覆うようになっており、該表示部22aの前側で所要の動作を行ない得るよう構成される。」
オ 「【0025】
そして、前記LED37,37,37,37は、前記配線基板36の長手方向に沿って所定間隔毎に4つ配設されており、前記RAM27が記憶する抽出乱数の記憶数が1つ増加するのに伴い左側に位置するLED37から順に点灯し、該RAM27が記憶する抽出乱数の記憶数が1つ減少するに伴い右側に位置するLED37から順に消灯するよう設定されている。すなわち、前記RAM27が4つの抽出乱数を記憶した場合には全てのLED37,37,37,37が点灯し、該RAM27が抽出乱数を記憶していない場合には全てのLED37,37,37,37が消灯するようになっている。」
カ 「【0026】
また、図5または図6に示すように、前記ベース部32の右側上端縁における前記軸孔32aの穿設位置より左側には、後方に向けて延出すると共に左端部に爪部33aを形成したアーム33が設けられている。ここで、前記爪部33aには、一方の端部を前記装飾部材20に形成した係止片20b(図7または図8参照)に係止したバネ部材40の他方の端部が係止され、該可動部材31を常には上方(前記原位置)に向けて引っ張るようになっている。このとき、前記アーム33の上面に前記駆動モータ38に取り付けた前記カム39の外周面が当接している。なお、前記可動部材31が、前記原位置にある場合には、前記カム39の外周面とアーム33とが当接する当接部位から該モータの回転軸38aまでの距離寸法が最も小さくなるよう設定してある(図6または図7参照)。すなわち、前記可動部材31が原位置にある状態で前記駆動モータ38(カム39)を回転させると、前記アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなり、これに伴い前記バネ部材40の弾性力に抗して可動部材31が下方に押し下げられて前記終位置に変位する(図6または図8参照)。そして、前記アーム33とカム39との当接部位から回転軸38aまでの距離寸法が小さくなるに伴い、バネ部材40の弾性力により上方に引っ張られて可動部材31が原位置に変位するようになっている。」
キ 「【0029】
前記上球皿Eにパチンコ球を貯留した状態で遊技者が前記打球発射装置Hを操作すると、該上球皿Eに貯留したパチンコ球が1球ずつ遊技盤Jの遊技領域Iに打ち出され、前記案内車13,13等により流下方向を変えられつつ遊技盤Jの盤面上を流下する。このとき、前記始動入賞具11の入賞口にパチンコ球が入賞すると、前記入賞スイッチ12が入賞検出信号を前記主制御装置25へ送信し、該主制御装置25のCPU28は多数の大当り判定用乱数から一つの乱数を抽出する。そして、前記主制御装置25は、この抽出乱数に基づいて前記表示制御装置23や前記発光制御装置29等の各制御装置に制御信号を送信し、該表示制御装置23は受信した制御信号に基づいて前記図柄表示装置22において図柄を可変表示すると共に、前記発光制御装置29は前記電飾装置18,18を発光して、所要の遊技演出が行なわれる。このとき、遊技者は、前記抽出乱数と大当り判定値とが一致するか否か、すなわち大当り遊技状態が発生するか否かを知り得ないから、大当り遊技状態が発生する期待感を持って遊技を楽しむことができる。更に、駆動モータ38により揺動し得る可動部材31を設けたから、前記図柄表示装置22での遊技演出に合わせて該可動部材31を揺動することにより、遊技の面白みをより増大させることができる。」
ク 「【0030】
また、前記図柄表示装置22において遊技演出が行なわれているときに前記始動入賞具11に別のパチンコ球が入賞すると、前記主制御装置25は、抽出乱数を一時的にRAM27に記憶すると共に、前記始動情報数表示手段30の配線基板36に設けた左側のLED37が点灯して遊技者に報知するようになっているから、該RAM27が抽出乱数を記憶しているか否かを遊技者に正確に報知することができる。また、前記RAM27が記憶する抽出乱数の記憶数に応じて、前記各LED37を点灯または消灯するよう構成したから、遊技者はRAM27が記憶する抽出乱数の記憶数を正確に把握し得る。すなわち、遊技者は、その時点で大当り遊技状態が発生するチャンスが何回あるのか知ることができるから、大当り遊技状態が発生する期待感を持って遊技を楽しむことができると共に、前記始動情報数表示手段30(LED37の発光)に対する遊技者の注目度が高められる。」
ケ 上記カの「前記可動部材31が原位置にある状態で前記駆動モータ38(カム39)を回転させると、前記アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなり、これに伴い前記バネ部材40の弾性力に抗して可動部材31が下方に押し下げられて前記終位置に変位する」との記載より、刊行物2には、「可動部材31を変位させる駆動モータ38」が記載されていると認められる。
また、「駆動モータ38(カム39)を回転させると」、「バネ部材40の弾性力に抗して可動部材31が下方に押し下げられ」との記載において、「駆動モータ38」が「バネ部材40」の弾性力に抗して作動していることは明らかであり、これは「バネ部材40」が「駆動モータ38」の動力に抗しているともいえる。
そうすると、「可動部材31が原位置にある状態で駆動モータ38(カム39)を回転させると、アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなり、これに伴い、バネ部材40が駆動モータ38の動力に抗し、可動部材31が下方に押し下げられて終位置に変位する」といえる。
これを言い換えると、刊行物2には、「可動部材31が原位置にある状態で駆動モータ38(カム39)を回転させると、アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなり、可動部材31が下方に押し下げられて終位置に変位し、アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなるに伴い駆動モータ38の動力に抗するバネ部材40」が記載されていると認められる。
上記ア~クの記載事項、及び、ケの認定事項より、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。ただし、記号a.~g.は、本願発明の記号A.~G.に対応させて付した。
「a.開口部20aの上端縁に沿って延在する原位置および表示部22aの前側に向けて移動した際の表示部22aの対角線方向に延在する終位置の間を揺動し得るようになっている可動部材31と、可動部材31を変位させる駆動モータ38とを備える遊技機であって、(ア、エ、ケ)
b.表示制御装置23からの制御信号に基づいて、表示部22aで図柄を停止または可変表示する図柄組み合わせゲームを行なう図柄表示装置22と、(イ)
c.前記図柄表示装置22において遊技演出が行なわれているときに前記始動入賞具11に別のパチンコ球が入賞すると、抽出乱数を一時的に記憶するRAM27と、(ク)
d.RAM27が記憶する抽出乱数の記憶数に応じて、点灯または消灯する4つ配設されたLED37と、(オ、ク)
e.可動部材31が原位置にある状態で、表示制御装置23からの制御信号に基づいて所定角度だけ回転し得るよう構成されたステッピングモータであり、回転軸38aに円板状のカム39を偏心して取り付けてある駆動モータ38(カム39)を回転させると、アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなり、可動部材31が下方に押し下げられて終位置に変位し、アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなるに伴い駆動モータ38の動力に抗するバネ部材40と、(ウ、ケ)
を備え、
f.アーム33とカム39との当接部位から回転軸38aまでの距離寸法が小さくなるに伴い、バネ部材40の弾性力により上方に引っ張られて可動部材31が原位置に変位し、(カ)
g.図柄表示装置22での遊技演出に合わせて該可動部材31を揺動する(キ)
遊技機。」
3 対比
本願発明と引用発明2を分説にしたがい対比する。
(a)引用発明2の「原位置」、「終位置」、「可動部材31」、「駆動モータ38」は、それぞれ、本願発明の「基準位置」、「移動位置」、「移動体」、「駆動源」に相当する。
したがって、引用発明2の「開口部20aの上端縁に沿って延在する原位置および表示部22aの前側に向けて移動した際の表示部22aの対角線方向に延在する終位置の間を揺動し得るようになっている可動部材31と、可動部材31を変位させる駆動モータ38とを備える遊技機」は、本願発明の「基準位置と該基準位置とは異なる移動位置との間において移動する移動体と、該移動体を移動させる駆動源と、を備える遊技機」に相当する。
(b)引用発明2の「図柄」は、本願発明の「識別情報」に相当する。
したがって、引用発明2の「表示制御装置23からの制御信号に基づいて、表示部22aで図柄を停止または可変表示する図柄組み合わせゲームを行なう図柄表示装置22」は、本願発明の「識別情報の可変表示を行う可変表示手段」に相当する。
(c)引用発明2において、「図柄表示装置22において遊技演出が行なわれているときに前記始動入賞具11に別のパチンコ球が入賞」した場合、当該入賞の可変表示は開始されないので、これに対応する「抽出乱数」(本願発明の「保留記憶」に相当)は「未だ開始されていない識別情報の可変表示について」のものといえる。
したがって、引用発明2の「前記図柄表示装置22において遊技演出が行なわれているときに前記始動入賞具11に別のパチンコ球が入賞すると、抽出乱数を一時的に記憶するRAM27」は、本願発明の「未だ開始されていない識別情報の可変表示について、保留記憶として記憶可能な保留記憶手段」に相当する。
(d)引用発明2における「RAM27(保留記憶手段)が記憶する抽出乱数(保留記憶)の記憶数に応じ」た「4つ配設されたLED37」の「点灯または消灯」は、本願発明の「前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示」に相当する。
したがって、引用発明2の「RAM27が記憶する抽出乱数の記憶数に応じて、点灯または消灯する4つ配設されたLED37」は、本願発明の「前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示を表示する保留表示手段」に相当する。
(e)引用発明2において、「可動部材31が原位置にある状態で・・・駆動モータ38(カム39)を回転させ」、「可動部材31が下方に押し下げられて終位置に変位」することは、本願発明の「前記駆動源を用いて前記移動体を前記基準位置から前記移動位置に移動させる」ことに相当する。
ここで、本願発明の「調整手段」が「移動体の移動速度を調整する」とは、上記第2の3(3)(e)に示したとおり、「調整手段」(引張りバネ535)が移動体の移動速度を抑制する方向に力を作用させることと解されるから、引用発明2の「バネ部材40」は、本願発明の「調整手段」に相当し、また、可動部材31を変位させる「駆動モータ38の動力に抗する」ものであるので、「可動部材31」の移動速度を抑制する方向に力を作用させていることは明らかであり、「可動部材31」の移動速度を調整しているといえる。
したがって、引用発明2の「可動部材31が原位置にある状態で、表示制御装置23からの制御信号に基づいて所定角度だけ回転し得るよう構成されたステッピングモータであり、回転軸38aに円板状のカム39を偏心して取り付けてある駆動モータ38(カム39)を回転させると、アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなり、可動部材31が下方に押し下げられて終位置に変位し、アーム33とカム39との当接部位から該モータ38の回転軸38aまでの距離寸法が大きくなるに伴い駆動モータ38の動力に抗するバネ部材40」は、本願発明の「前記駆動源を用いて前記移動体を前記基準位置から前記移動位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力に抗して該移動体の移動速度を調整する調整手段」に相当する。
(f)引用発明2は、構成e.より、「可動部材31が原位置にある状態で、表示制御装置23からの制御信号に基づいて所定角度だけ回転し得るよう構成されたステッピングモータであり、回転軸38aに円板状のカム39を偏心して取り付けてある駆動モータ38(カム39)を回転させる」ものであるが、可動部材31が原位置から移動するときと同様に、原位置に戻るときにも、制御信号に基づいて「駆動モータ38」を回転させることにより、「駆動モータ38」を用いて「カム39」を回転させるものといえる。
そうすると、引用発明2において、「アーム33とカム39との当接部位から回転軸38aまでの距離寸法が小さくなるに伴い」、「可動部材31が原位置に変位」することは、「カム39」の回転に「駆動モータ38」を用いるのであるから、「駆動モータ38」を用いて、「アーム33とカム39との当接部位」を変位させて、「可動部材31」を「原位置」に移動させることであるといえるので、本願発明の「前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させる」ことに相当する。
さらに、引用発明2では、「バネ部材40の弾性力により上方に引っ張られて可動部材31が原位置に変位」し、このとき「アーム33とカム39との当接部位から回転軸38aまでの距離寸法が小さくなる」ので、「バネ部材40」は「カム39」に対して「アーム33とカム39との当接部位から回転軸38aまでの距離寸法が小さくなる」方向に力を及ぼしているといえる。
そうすると、「駆動モータ38」が「カム39」を回転させているところ、「アーム33とカム39との当接部位から回転軸38aまでの距離寸法が小さくなる」ときには、「バネ部材40」は「カム39」に「駆動モータ38」と同じ方向に力を及ぼすことにより、「駆動モータ38」の動力を補うものといえる。
したがって、引用発明2の「アーム33とカム39との当接部位から回転軸38aまでの距離寸法が小さくなるに伴い、バネ部材40の弾性力により上方に引っ張られて可動部材31が原位置に変位する」ことにおいて、「バネ部材40」が「弾性力により上方に引っ張」ることは、本願発明の「前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させるときにおいては前記調整手段は前記駆動源の動力を補」うことに相当する。
上記(a)~(f)の対比より、本願発明と引用発明2は、構成A.~F.に関する次の点で一致している。
「A.基準位置と該基準位置とは異なる移動位置との間において移動する移動体と、該移動体を移動させる駆動源と、を備える遊技機であって、
B.識別情報の可変表示を行う可変表示手段と、
C.未だ開始されていない識別情報の可変表示について、保留記憶として記憶可能な保留記憶手段と、
D.前記保留記憶手段に記憶されている保留記憶に対応した保留表示を表示する保留表示手段と、
E.前記駆動源を用いて前記移動体を前記基準位置から前記移動位置に移動させるときにおいては前記駆動源の動力に抗して該移動体の移動速度を調整する調整手段と、
を備え、
F.前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させるときにおいては前記調整手段は前記駆動源の動力を補う
遊技機。」
そして、本願発明と引用発明2は、構成G.に関する次の点で相違している。
(相違点)
本願発明は、保留表示手段は、移動体の状態に応じて保留表示の表示態様を変更する(構成G.)のに対し、引用発明2は、このような特定がなされていない点。
4 判断
上記第2の3(4)に記載したとおり、保留表示手段が、演出に応じて、画面上の保留表示の表示態様を変更することは、上記特開2004-24277号公報、特開2004-49325号公報、特開平7-213706号公報、及び、特開2008-253848号公報に示されるように、本願の遡及日前の遊技機の分野における周知技術である。
そして、演出の興趣を向上させるために、引用発明2の「図柄表示装置22での遊技演出に合わせて該可動部材31を揺動する」演出において、「保留表示手段が、演出に応じて、画面上の保留表示の表示態様を変更する」という上記周知技術を適用して、「保留表示手段が、移動体(可動部材31)の状態に応じて保留表示の表示態様を変更する」ものとして、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、上記相違点に係る「保留表示手段は、移動体の状態に応じて保留表示の表示態様を変更する」ことにより奏せられる効果は、移動体と保留表示による演出上の効果にすぎず、引用発明2の「可動部材31」(移動体)を動作させること、及び、上記した「保留表示手段が、演出に応じて、画面上の保留表示の表示位置等の表示態様を変更する」という周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものとはいえない。
5 請求人の主張
請求人は、平成28年2月3日付け意見書の「(4)本発明と引用文献に記載の発明との対比」において、相違点として、「本発明では、移動体を移動位置から基準位置に移動させるときは、専ら駆動源の動力によるものであり、調整手段は駆動源の動力を補う役割りをするものであるのに対し、引例1に記載のものでは、移動体(可動部材31)を移動位置(終位置)から基準位置(原位置)に移動させるときは、専らバネ部材40の弾性力のみにより移動体(可動部材31)を基準位置(原位置)へ向けて引っ張り上げており、駆動源(駆動モータ38)は何ら関与せず、むしろ、駆動源(駆動モータ38)の動力により回るカムは、バネ部材40の動きに抗して移動速度を抑制している点」(第4頁第11~17行)を挙げている。
しかしながら、本願発明の請求項1には、「移動体を移動位置から基準位置に移動させるときは、専ら駆動源の動力による」との限定はなく、「前記駆動源を用いて前記移動体を前記移動位置から前記基準位置に移動させる」と記載されているのみである。
そして、上記3(f)に記載したとおり、引用発明2は、「駆動モータ38」を用いて「カム39」を回転させることで、可動部材31を原位置へ移動させるものであり、また、「バネ部材40」が「駆動モータ38」の動力を補う点も、上記3(f)に記載したとおり、引用発明2が備えるものである。
したがって、請求人の上記主張は、請求項の記載に基づくものではなく、これを採用することはできない。
なお、加えて、請求人が相違点として主張する「移動体を移動位置から基準位置に移動させるときは、専ら駆動源の動力によるものであり、調整手段は駆動源の動力を補う役割りをする」ことは、上記刊行物1(特開2010-35719号公報、特に【0026】、図3参照。「第1の可動体22」(移動体)が可動位置から元の位置へ戻る際に、「引っ張りばね35」(調整手段)が「駆動モータ28」の駆動負荷を軽減することが記載されている。)、及び、特開2008-272228号公報(特に【0052】、【0053】、図8参照。「可動体」(移動体)を原点位置に復帰させるときに、「ばね部材36」(調整手段)の周方向の分力F1が補助的な力として作用し、モータ25にかかる負荷を小さくすることが記載されている。)に示されるように、本願の遡及日前における遊技機の分野の周知技術にすぎず、これを引用発明2に適用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-010050