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特許拒絶査定不服審判

2016-009488

ガスタービンエンジン

審判番号
2016-009488
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-195928外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年06月27日
審決日
2017年03月13日
公報発行日
2017年09月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (F02K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-195928「ガスタービンエンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 72010〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 1 手続の経緯 本願は、平成26年9月26日(パリ条約による優先権主張2013年10月3日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成27年8月27日付けで拒絶理由が通知され、平成27年11月27日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年3月25日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年6月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1ないし29に係る発明は、平成27年11月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし29に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 駆動軸を有するファンであって、バイパスダクトおよびエンジンコアに空気を案内するように構成されたファンと、 前記ファンの前記駆動軸に回転可能に連結された歯車減速構造と、 第1の圧縮機セクションと、 を備えたガスタービンエンジンであって、 前記ガスタービンエンジンは、前記第1の圧縮機セクションの出口のコア温度が離陸時に621.1~732.2°C(1150~1350°F)の範囲となるように構成され、 前記ガスタービンエンジンは、ファン流れ排気速度を一次流れ排気速度で割った比率が、0.75~0.90の範囲となるように構成され、 前記バイパスダクトを通流する空気の体積を、前記エンジンコアを通流する空気の体積で割った比率が、8.0よりも大きいことを特徴とする、ガスタービンエンジン。」 3 刊行物 (1) 刊行物1 ア 刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2012/0171018号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている(なお、全角半角等の文字の大きさ、書体、句読点等については、記載内容を損なわない限りで適宜表記した。また、[]内は、当審において作成した当審仮訳である。)。 (ア) 「[0036] FIG. 1 schematically illustrates an example gas turbine engine 10 including (in serial flow communication) a fan section 14 , a compressor section 19 that includes a low pressure (or first) compressor section 18 and a high pressure (or second) compressor section 22 , a combustor 26 , and a turbine section 21 that includes a high pressure (or second) turbine section 30 and a low pressure (or first) turbine section 34 . The gas turbine engine 10 is circumferentially disposed about an engine centerline X. During operation, air is pulled into the gas turbine engine 10 by the fan section 14 , pressurized by the compressors 18 , 22 mixed with fuel, and burned in the combustor 26 . Hot combustion gases generated within the combustor 26 flow through high and low pressure turbines 30 , 34 , which extract energy from the hot combustion gases. As used herein, a ‘‘high pressure’’ compressor or turbine experiences a higher pressure that a corresponding ‘‘low pressure’’ compressor or turbine. [0037] In a two-spool design, the high pressure turbine 30 utilizes the extracted energy from the hot combustion gases to power the high pressure compressor 22 through a high speed shaft 38 , and a low pressure turbine 34 utilizes the energy extracted from the hot combustion gases to power the low pressure compressor 18 and the fan section 14 through a low speed shaft 42 . However, the invention is not limited to the two-spool gas turbine architecture described and may be used with other architectures such as a single-spool axial design, a three-spool axial design and other architectures. That is, there are various types of gas turbine engines, many of which could benefit from the examples disclosed herein, which are not limited to the design shown. [0038] The example gas turbine engine 10 is in the form of a high bypass ratio turbine engine mounted within a nacelle or fan casing 46 , which surrounds an engine casing 50 housing a core engine 54 . A significant amount of air pressurized by the fan section 14 bypasses the core engine 54 for the generation of propulsion thrust. The airflow entering the fan section 14 may bypass the core engine 54 via a fan bypass passage 58 extending between the fan casing 46 and the engine casing 50 for receiving and communicating a discharge airflow F 1 . The high bypass flow arrangement provides a significant amount of thrust for powering an aircraft. [0039] The gas turbine engine 10 may include a geartrain 62 for controlling the speed of the rotating fan section 14 . The geartrain 62 can be any known gear system, such as a planetary gear system with orbiting planet gears, a planetary system with non-orbiting planet gears or other type of gear system. The low speed shaft 42 may drive the geartrain 62 . In the disclosed example, the geartrain 62 has a constant gear ratio. It should be understood, however, that the above parameters are only exemplary of a contemplated geared gas turbine engine 10 . That is, aspects of the invention are applicable to traditional turbine engines as well as other engine architectures. [0040] The engine 10 in one example is a high-bypass geared aircraft engine. In a further example, the engine 10 bypass ratio is greater than about six (6), with an example embodiment being greater than ten (10), the geared architecture 62 is an epicyclic gear train, such as a planetary gear system or other gear system, with a gear reduction ratio of greater than about 2.3 and the low pressure turbine 34 has a pressure ratio that is greater than about 5. In one example, the geared architecture 62 includes a sun gear, a ring gear, and intermediate gears arranged circumferentially about the sun gear and intermeshing with the sun gear and the ring gear. The intermediate gears are star gears grounded against rotation about the axis X. The sun gear is supported by the low speed shaft 38 , and the ring gear is interconnected to the fan 14 .」(段落[0036]ないし[0040]) [当審仮訳:[0036] FIG.1は、ファンセクション14、低圧圧縮機セクション18と高圧圧縮機セクション22を含む圧縮機セクション19、燃焼器26、及び高圧タービンセクション30と低圧タービンセクション34を含むタービンセクション21を備えるガスタービンエンジン10の一例の概要説明図である。ガスタービンエンジン10は、中心軸Xの周囲に配置されている。作動時には、空気はファンセクション14によりガスタービンエンジン14に吸引され、圧縮機18、22により圧縮され、燃焼器26において燃料と混合されて燃焼する。生成した高温の燃焼ガスは、タービン30、34を流れてエネルギが取り出される。ここでは、高圧の圧縮機又はタービンは、対応する低圧の圧縮機又はタービンに比べて高圧であることをいう。 [0037] 2スプール型では、高圧タービン30は、燃焼ガスから取り出したエネルギを使用して、高速軸38を介して高圧圧縮機22を駆動し、低圧タービン34は、燃焼ガスから取り出したエネルギを使用して、低速軸42を介して低圧圧縮機18及びファンセクション14を駆動する。しかし、本願の発明は、2スプール型に限定されるものではない。 [0038] 図示したガスタービンエンジン10は、ナセル又はファンケーシング46内に据え付けられた高バイパス比のエンジンであり、ナセル又はファンケーシング46は、コアエンジン54を覆うエンジンケーシング50を囲っている。ファンセクション14により圧縮された空気の相当量がコアエンジン54をバイパスして、推進力を発生させる。ファンセクション14に流入する空気流は、ファンケーシング46とエンジンケーシング50の間に延びるファンバイパル路58を通ってコアエンジン54をバイパスし、バイパス流F1として分流される。 [0039] ガスタービンエンジン10は、ファンセクション14の回転速度を制御する歯車列62を備えている。歯車列62は任意の公知の歯車装置でよい。低速軸42が歯車列62を駆動する。図示の例では、歯車列62は、一定の歯車比を有している。しかし、これは本願の発明の一例にすぎないことに留意すべきである。 [0040] エンジン10の一例は、歯車列を備えた高バイパスの航空機エンジンである。他の例では、エンジン10のバイパス比は6より大きく、実施形態ではバイパス比は10より大きい。歯車列62は約2.3より大きい歯車減速比を有し、低圧タービン34は約5より大きい圧力比を有する。] イ 刊行物1発明 上記ア及び図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。 <刊行物1発明> 「低速軸42を有するファンセクション14であって、ファンバイパス路58およびコアエンジン54に空気を案内するように構成されたファンセクション14と、 前記ファンセクション14の前記低速軸42に回転可能に連結された歯車列62と、 高圧圧縮機セクション22と、 を備えたガスタービンエンジン10であって、 前記ガスタービンエンジン10は、前記ファンバイパス路58を通流する空気の体積を、前記コアエンジン54を通流する空気の体積で割った比率が、10よりも大きいガスタービンエンジン10。」 (2) 刊行物2 ア 刊行物2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-141662号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ガスタービン燃焼器、特に航空用又は産業用ガスタービン燃焼器における従来の金属ライナに代わる新規の燃焼室形成構造を有するガスタービン燃焼器に関する。」(段落【0001】) (イ) 「【0017】例えば、圧力比40のエンジンの場合には、燃焼器流入空気温度は1000K、火炎温度は2500Kとなる。従って、従来構造の金属ライナでは耐熱温度が1100~1300Kであるため、燃焼ガスからの対流熱伝達流束C1に1000K以上の温度差を作らねばならない。燃焼器流入空気の一部である冷却空気でこの温度差を作り出すには、ライナ燃焼室側壁面に沿う空気を多量に必要とし、それが低負荷では未燃焼ガスの排出の原因となっている。また、高負荷条件において従来のライナ構造の冷却では、例え今後金属材料の進歩によりライナの耐熱温度が上昇しても、その分外筒への輻射熱伝達流束R2が増加するため、外筒の高温化につながり安全上の問題が生じ、外筒冷却の対策が必要となってくる。」(段落【0017】) (3) 刊行物3 ア 刊行物3の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-69774号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア) 「【0001】 本発明は一般にガスタービンエンジンに関するもので、特に騒音低減特性を有する排気ノズルに関するものである。」(段落【0001】) (イ) 「【0003】 ジェットエンジンの騒音の主な音源は、排気空気流の剪断部、すなわち異なる高速の空気流が互いに混合する部分、およびより低速な周辺空気の動きと混合する部分にある。特にターボファンエンジンの場合、第二の空気流は約1000ft/秒でエンジンから排出され、コア空気流は約1600 ft/秒でエンジンから排出されるが、これらの異なる速度の空気流が混合すると大量の乱流とそれに伴う騒音が発生し、特に低周波騒音が発生する。」(段落【0003】) (ウ) 「【0010】 外側ノズル22はファン排気ガス36を外部空気34から分離し、内側ノズル24はファン排気ガス36をコア排気ガス38から分離する。テールコーン26は排気流、特にコア排気ガス38が、エンジン12から円滑に遷移して排出される助けとなる。前述したように、ファン排気ガス36は一般におよそ1000ft/秒(約304.8m/秒)、またコア排気ガス38は一般におよそ1600ft/秒(約487.7m/秒)で流れる。航空機10の飛行速度は300mph(約482.8kmph)程度まで遅くなるため、外気34は外側ノズル22をおよそ400ft/秒(約121.9m/秒)で通過する。空気流の流速の違いにより、各流れが混合する際、剪断に伴う一定量の低周波騒音および高周波騒音が発生する。空気流の混合と剪断によって生じる騒音量を低減するため、エンジン12は、その後縁部周辺42に鋸歯状部分28および非鋸歯状部分29を具備する。特に非鋸歯状部分29はこの後縁部の下方に配置され、下方向に伝播する騒音を低減する。パイロン11もまた鋸歯状部分43をその後縁部に含み、航空機10からの騒音をさらに低減する。」(段落【0010】) (4) 刊行物4 ア 刊行物4の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2005/085620号(以下、「刊行物4」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア) 「ファンのジェット速度VJBとコアのジェット速度VJCの比の最適値は、式(6)に示すようにファン断熱効率ηFとタービン断熱効率ηTの積であることが知られている。 VJB/VJC=ηF・ηT  ・・・・・(6) ここでは式(6)の証明は省略するが、VJBがVJCとηT及びηFの積に等しくあるべきだということは、ファン駆動タービンの出力を高めコアの排気残留エネルギからより多くの有効エネルギを取り出すことを意味する。 しかしながら実際のターボファンでは、重量及び価格の上昇や騒音発生を抑えるため、一般に単段のファンを使っており、VJBとVJCの比は式(6)よりずっと小さく、従来のターボファンはファンのジェット速度VJBに対しコアのジェット速度VJCが大き過ぎた。そこでファン直径を増さずとも、巡航時にファン駆動タービンの吸収エネルギを増し、ファン回転数一定でファン圧力比を上昇させることができれば、VJBが上昇し、速度が大きいVJCが低下する。よって式(4)からエンジンが作り出すエネルギWに占める排気残留エネルギの割合が減少し、式(5)からBPRを高めずとも推進効率ηPを向上させることができる。」(第4ページ第1ないし14行) 4 対比・判断 本願発明と刊行物1発明とを対比すると、その構造、機能又は技術的意義からみて、刊行物1発明における「低速軸42」は本願発明における「駆動軸」に相当し、以下同様に、「ファンセクション14」は「ファン」に、「ファンバイパス路58」は「バイパスダクト」に、「コアエンジン54」は「エンジンコア」に、「高圧圧縮機セクション22」は「第1の圧縮機セクション」に、「歯車列62」は「歯車減速構造」に、「10よりも大きい」は「8.0よりも大きい」に、それぞれ相当する。 以上から、本願発明の用語に倣って整理すると、本願発明と刊行物1発明とは、 「駆動軸を有するファンであって、バイパスダクトおよびエンジンコアに空気を案内するように構成されたファンと、 前記ファンの前記駆動軸に回転可能に連結された歯車減速構造と、 第1の圧縮機セクションと、 を備えたガスタービンエンジンであって、 前記ガスタービンエンジンは、前記バイパスダクトを通流する空気の体積を、前記エンジンコアを通流する空気の体積で割った比率が、8.0よりも大きいガスタービンエンジン。」である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 本願発明は、「前記ガスタービンエンジンは、前記第1の圧縮機セクションの出口のコア温度が離陸時に621.1~732.2°C(1150~1350°F)の範囲となるように構成され、前記ガスタービンエンジンは、ファン流れ排気速度を一次流れ排気速度で割った比率が、0.75~0.90の範囲となるように構成され」ているのに対し、 刊行物1発明は、そのような数値に関する事項を備えているかどうか、明確でない点(以下、「相違点」という。)。 上記相違点について検討する。 本願発明は、ガスタービンエンジンにおいて必要な多数のパラメータないし数値のうち、「第1の圧縮機セクションの出口のコア温度」、「ファン流れ排気速度を一次流れ排気速度で割った比率」、及び「バイパスダクトを通流する空気の体積を、エンジンコアを通流する空気の体積で割った比率」の3つのみを特に取り上げてそれらの数値範囲を限定している。これらのパラメータないし数値はいずれも、通常、効率や燃費等の所与の要求仕様等に基づいて適宜選択・設計すべき事項にすぎない。そこで、相違点に係る本願発明の各数値範囲及びそれらの組み合わせ(兼ね備えること)について格別の技術的意義があるか否かについて、以下、検討する。 (a) まず、「第1の圧縮機セクションの出口のコア温度」について検討する。 刊行物2には、航空用のガスタービン燃焼器において、燃焼器流入空気温度が1000Kである例が開示されている(以下、「刊行物2技術」という。)。本願発明においては、「第1の圧縮機セクションの出口のコア温度」が離陸時に621.1~732.2°C(1150~1350°F)の範囲であることが限定されているが、該数値範囲の技術的意義、例えば従来例との構成(離陸時の温度)及び効果の差異、また該数値範囲の上限値及び下限値の技術的意義について、本願明細書等をみても特に説明がなく、かつ、該上下限値に格別顕著な技術的意義があるとは認められない。してみると、刊行物1発明に刊行物2技術を適用して、高圧圧縮機セクション22の出口のコア温度が離陸時に621.1~732.2°C(1150~1350°F)の範囲内の温度となるように構成することは、上述のとおり、適宜の設計にすぎないといわざるを得ない。 (b) 次に、「ファン流れ排気速度を一次流れ排気速度で割った比率」について検討する。 刊行物3には、ジェットエンジンの騒音の主な音源は、排気空気流の剪断部、すなわち異なる高速の空気流が互いに混合する部分、およびより低速な周辺空気の動きと混合する部分にあること、また、ファン排気ガス36は一般におよそ1000ft/秒(約304.8m/秒)、またコア排気ガス38は一般におよそ1600ft/秒(約487.7m/秒)で流れ、ファン排気ガスの速度をコア排気ガスの速度で割った比率はおよそ0.625であるが、これでは、排気騒音の低減が十分でないことが開示されている(以下、「刊行物3技術」という。)。 また、刊行物4には、従来のターボファンではファンのジェット速度VJBに対しコアのジェット速度VJCが大き過ぎたが、ファン駆動タービンの出力を高めコアの排気残留エネルギからより多くの有効エネルギを取り出す等により、VJBを上昇させ、VJCを低下させて推進効率を向上し得ることが開示されている(以下、「刊行物4技術」という。)。 以上のとおり、刊行物3技術及び刊行物4技術はともに、ファンの排気速度をコアエンジンの排気速度で割った比率をもっと大きくすることが好適であることを示唆している。 そして、刊行物1発明においても、騒音を低減し、また推進効率を向上することが望ましいことは明らかであるから、例えば騒音のいっそうの低減という点から、刊行物1発明に刊行物3技術を適用して、ファンバイパス路58の排気速度をコアエンジン54の排気速度で割った比率を従来の一般的な値(例えば0.625)よりさらに大きい値にすること、また、例えば推進効率の更なる向上という点から、刊行物1発明に刊行物4技術を適用して、ファンの排気速度に対しコアエンジンの排気速度が大き過ぎる従来のものより、ファンバイパス路58の排気速度を大きくし、コアエンジン54の排気速度を小さくして、ファンバイパス路58の排気速度をコアエンジン54の排気速度で割った比率を大きな値とすることは、至極当然ないし自然な合理的な設計であって、何ら困難性はない。 本願発明は、さらに、「ファン流れ排気速度を一次流れ排気速度で割った比率」について、特に「0.75~0.90の範囲」という限定を加えている。しかし、該数値範囲の特に上限値及び下限値の技術的意義について、本願明細書等をみても特に説明がなく、かつ、該上下限値に格別顕著な技術的意義があるとは認められない。してみると、上記のように刊行物1発明に刊行物3技術や刊行物4技術を適用して、ファンバイパス路58の排気速度をコアエンジン54の排気速度で割った比率をもっと大きな値とするに際して、該比率を、0.75~0.90の範囲内の値となるように構成することは、上述のとおり、適宜の設計にすぎないといわざるを得ない。 (c) 続けて、「第1の圧縮機セクションの出口のコア温度」、「ファン流れ排気速度を一次流れ排気速度で割った比率」、及び「バイパスダクトを通流する空気の体積を、エンジンコアを通流する空気の体積で割った比率」の3つの各数値範囲ないし該数値範囲内の数値の組み合わせ(兼ね備えること)について検討する。 本願発明は、上記の3つの数値範囲を兼ね備えているが、本願明細書等をみても、特に各上下限値の近傍において該3つの数値範囲をすべて満たすものがそうでないもの(例えば、2つの数値範囲を満たすが残りの1つ数値範囲を満たさないもの)と比べて、推進効率等の性能を具体的にどの程度向上できるのかについて、特に説明がないばかりか、定量的・実証的な具体的根拠が何も示されていない。そうすると、上記の3つの数値範囲を兼ね備えることにより、格別顕著な効果を奏し得るとは到底認められず、上述のとおり、適宜の設計・選択といわざるを得ない。 そして、本願発明は、全体としてみても、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術及び刊行物4技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 以上に関して、請求人は、審判請求書において、『すなわち、引用文献5は、コアノズルを用いることにより、バイパス比を高めずに推進効率を高めるようにした点に技術的思想を有するものであるが、エンジン排気速度比を具体的にどのような数値範囲とすればよいかについての開示が一切ない。さらに、引用文献2に記載のガスタービンエンジン10は、ギアード構造(geared architecture)62を備えた「高バイパス比」のギアード式航空機エンジン(high-bypass geared aircraft engine)であり(段落[0040])、そもそも引用文献5の課題である「高バイパス比化が限界となっている背景」を有していない。この点からも、引用文献5記載の技術的思想は、引用文献2における課題でないことは明らかであり、引用文献2の技術分野において当然に要求される課題であることを示す証拠もない。従って、引用文献5記載の技術的思想を引用文献2に適用しようとする動機付けもない。』と主張する(ここでの引用文献2ないし引用文献5は本審決における刊行物1ないし刊行物4である。)。しかし、刊行物1発明に刊行物2技術、刊行物3技術及び刊行物4技術を適用して相違点に係る本願発明の事項に想到することが容易であることは上述した。また、刊行物4に刊行物4技術が開示されていることは上述のとおりであり、刊行物4技術がバイパス比や歯車減速機構の有無を問わず、普遍的一般的な知見であることは当業者に明らかである。 請求人はまた、審判請求書において、『引用文献4についても同様、引用文献4の課題は、エンジン排気速度比が「0.625」であると認められるガスタービンエンジンから発生する「低周波騒音の削減」であり、引用文献4と、引用文献5とは、課題解決の前提が異なるから、引用文献4の解決課題からは、エンジン排気速度比を「0.625」より大きい比率である「0.75~0.90」に増大させるための動機付けは生じない。』と主張する。しかし、刊行物1発明に刊行物2技術、刊行物3技術及び刊行物4技術を適用して相違点に係る本願発明の事項に想到することが容易であることは上述した。補足すると、数値範囲を限定する場合、その技術的意義(例えば、その上下限値が格別顕著な技術的意義を有すること等)について何ら説明・実証することなく、刊行物1ないし4にたまたま開示されていない数値を限定しても、創作性は極めて乏しいといわざるを得ない。 請求人はまた、審判請求書において、「結局のところ、引用文献2~7は、いずれも本願発明の構成要素を個々に分解して提示しているに過ぎず、ここには本願発明のように、離陸時の第1の圧縮機セクションにおける出口のコア温度が621.1~732.2°C(1150~1350°F)の範囲となるように構成し、ファン流れ排気速度を一次流れ排気速度で割った比率が、0.75~0.90の範囲となるように構成し、かつ、バイパスダクト流の体積を、エンジンコア流の体積で割った比率が、8.0よりも大きくなるように構成したことにより、従来のガスタービンエンジンに比較して、航行時の全燃料消費率の低減を実現する、とする技術的思想は存在しない。」と主張する。しかし、刊行物1発明に刊行物2技術、刊行物3技術及び刊行物4技術を適用して相違点に係る本願発明の事項に想到することが容易であることは上述した。補足すると、本願明細書には、例えば、「【0054】運転中、「エンジン排気流速度比」(または「排気速度比」)と称される、ファン流れ排気口64を通流する流れの速度の、一次流れ排気口68を通流する流れの速度に対する比率は、約0.75~約0.90の範囲である。換言すれば、排気速度比=(ファン流れ排気速度)/(一次流れ排気速度)である。特に、2.3~4.2の減速比を有する(特に、約6.0を上回るバイパス比、約1.50未満のファン圧力比、約1200ft/sec未満のファン先端速度、および、約5.0を上回る低圧タービン圧力比のうち一つ以上と組み合わせて使用した場合の)ギアード・エンジン設計では、上記の所望の範囲の排気速度比は、この範囲を超えた関係を有するエンジンと比較して、全燃料消費率を低減することが判明した。」と記載されている。どの程度、全燃料消費率を低減することができたのか、また、その定量的・実証的根拠が何ら示されていないが、それはひとまず措くとして、段落【0054】には、ファン流れ排気口64を通流する流れの速度の一次流れ排気口68を通流する流れの速度に対する比率が約0.75~約0.90であり、かつ2.3~4.2の減速比及び約6.0を上回るバイパス比を備えれば、この範囲を超えた関係を有するエンジンと比較して、全燃料消費率を低減することが判明したことが明記されている。そうすると、2.3~4.2という範囲にない減速比を備える場合には、全燃料消費率を低減することは判明していないことが論理必然的に導かれる。一方、本願発明(請求項1に係る発明)においては、減速比は不特定であり、2.3~4.2という範囲にない減速比を備えるものを許容し包含しているのであるから、本願発明が全燃料消費率を低減することが判明したとはいえないことは明らかである。 5 まとめ 以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2技術、刊行物3技術及び刊行物4技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6 結語 以上に述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-009488

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