特許拒絶査定不服審判
2016-009216
半導体装置とその製造方法
- 審判番号
- 2016-009216
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-500698外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月22日
- 審決日
- 2017年03月14日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .561-Z (H01L) / P18 .121-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第159条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-500698「半導体装置とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月29日国際公開、WO2013/125474〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)2月18日(優先権主張2012年2月24日、日本(JP))を国際出願日とする出願であって、平成26年3月31日付けで手続補正がなされ、平成27年8月18日付けで拒絶理由通知がされたのに対し、同年10月22日付けで手続補正がなされたが、平成28年3月22日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年6月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、同年8月26日付けで前置報告がされたのに対して、同年10月18日付けで上申書が提出されたものである。
第2 平成28年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年6月22日付の手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成28年6月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであって、本件補正前(すなわち、平成27年10月22日付け手続補正による補正後)に、
「 【請求項1】
相対向する第1の主面と第2の主面を有し、立設する複数のフィンと前記複数のフィンを包囲する盛上り部が前記第1の主面に設けられているベース板と、
前記ベース板の第2の主面に形成された絶縁層と、
前記絶縁層に固定された回路パターンと、
前記回路パターンに接続された半導体素子と、
前記絶縁層と前記回路パターンと前記半導体素子を封止する封止樹脂とを備え、
前記ベース板の第1の主面に設けられている盛上り部は前記複数のフィンの周囲を連続して包囲していて、
前記ベース板は、このベース板の第1の主面の外周端部に幅しろが設けられており、
前記盛上り部は、前記幅しろに形成されていて、しかも、この幅しろを盛上り部の外側に配置された外側幅しろと、盛上り部の内側に配置された内側幅しろに分割し、
前記封止樹脂は、前記盛上り部の外周側側面および前記外側幅しろを被覆していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数のフィンは一定の向きに整列していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数のフィンのそれぞれには、フィンの厚さ方向に貫通するスリットが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数のフィンのそれぞれに形成されているスリットは、一直線状に並んでいることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁層は、無機粉末を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ベース板に、金属板がかしめ固定されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子の少なくとも一部がワイドバンドギャップ半導体により形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンドのいずれかの半導体であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記盛上り部は、先端に向かうほど幅が狭くなっていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
複数のフィンが立設し、前記複数のフィンの周囲にしかも外周端部に幅しろを残して、前記複数のフィンを連続して包囲する盛上り部が設けられていて、この盛上り部は、前記幅しろに形成されていて、しかも、この幅しろを盛上り部の外側に配置された外側幅しろと、盛上り部の内側に配置された内側幅しろに分割しているベース板を一体加工により形成する工程と、
前記ベース板に半導体素子を固定する工程と、
底面よりも高い場所に載置面が設けられている成形金型に、前記複数のフィンを下側にして前記盛上り部と前記載置面を当接させて前記ベース板を載置する工程と、
前記ベース板が載置された前記成形金型にモールド樹脂を封入し、このモールド樹脂が前記盛上り部の外周側側面と前記外側幅しろを被覆する工程と、
前記封入されたモールド樹脂を加熱して硬化させる工程とを備えている半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記幅しろは、前記ベース板の外周端部から一定の幅を有していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記盛上り部は、前記幅しろの中央に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記外側幅しろと前記内側幅しろは、幅の大きさが異なることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」
とあったところを、
「 【請求項1】
相対向する第1の主面と第2の主面を有し、立設する複数のフィンと前記複数のフィンを包囲する盛上り部が前記第1の主面に設けられているベース板と、
前記ベース板の第2の主面に形成された絶縁層と、
前記絶縁層に固定された回路パターンと、
前記回路パターンに接続された半導体素子と、
前記絶縁層と前記回路パターンと前記半導体素子を封止する封止樹脂とを備え、
前記ベース板の第1の主面に設けられている盛上り部は前記複数のフィンの周囲を連続して包囲していて、
前記ベース板は、このベース板の第1の主面の外周端部に幅しろが設けられており、
前記盛上り部は、前記幅しろに形成されていて、しかも、この幅しろを盛上り部の外側に配置された外側幅しろと、盛上り部の内側に配置された内側幅しろに分割し、
前記封止樹脂は、前記盛上り部の外周側側面および前記外側幅しろを被覆していて、
前記フィンには厚さ方向に貫通するスリットが形成されており、このスリットの底面には押し当てられた跡が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数のフィンは一定の向きに整列していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数のフィンのそれぞれには、フィンの厚さ方向に貫通するスリットが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数のフィンのそれぞれに形成されているスリットは、一直線状に並んでいることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁層は、無機粉末を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ベース板に、金属板がかしめ固定されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子の少なくとも一部がワイドバンドギャップ半導体により形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンドのいずれかの半導体であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記盛上り部は、先端に向かうほど幅が狭くなっていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
複数のフィンが立設し、前記複数のフィンの周囲にしかも外周端部に幅しろを残して、前記複数のフィンを連続して包囲する盛上り部が設けられていて、この盛上り部は、前記幅しろに形成されていて、しかも、この幅しろを盛上り部の外側に配置された外側幅しろと、盛上り部の内側に配置された内側幅しろに分割しているベース板を一体加工により形成する工程と、
前記ベース板に半導体素子を固定する工程と、
底面よりも高い場所に載置面が設けられていて、この底面から衝立部が立設する下金型に、前記複数のフィンを下側にして前記盛上り部と前記載置面を当接させて前記ベース板を載置する工程と、
前記ベース板が載置された前記下金型に上金型をかぶせて成形金型を構成し、モールド樹脂を封入し、このモールド樹脂が前記盛上り部の外周側側面と前記外側幅しろを被覆する工程と、
前記封入されたモールド樹脂を加熱して硬化させる工程とを備え、
前記フィンの高さは、前記載置面から前記底面までの深さおよび前記衝立部の高さよりも小さいことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記幅しろは、前記ベース板の外周端部から一定の幅を有していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記盛上り部は、前記幅しろの中央に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記外側幅しろと前記内側幅しろは、幅の大きさが異なることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。」
とするものである。なお、下線は請求人が補正箇所を明示するために付したものである。
2.新規事項の有無について
本件補正は、補正前の請求項1の「フィン」について、補正後の請求項1の「前記フィンには厚さ方向に貫通するスリットが形成されており、このスリットの底面には押し当てられた跡が形成されていること」とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含むものである。
しかしながら、当該補正事項1は、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「スリットの底面には押し当てられた跡が形成されている」ことは記載されておらず、当初明細書等に記載された事項の範囲とはいえない。
平成28年6月22日付けの審判請求書において、審判請求人は上記補正事項1に関連して、
「 (2)補正の根拠の明示
請求項1において、「前記フィンには厚さ方向に貫通するスリットが形成されて」いることは、段落0026、図7および図8に示されています。「このスリットの底面には押し当てられた跡が形成されている」ことは、段落0027および図10に補正の根拠があります。すなわち、下金型の衝立部がスリットの底面に押し当てられると、必然的に押し当てられた跡が形成されます。 」
と主張している。
また、平成28年10月18日付けの上申書においても、審判請求人は上記補正事項1に関連して、
「2.上申の内容
(1)
請求項1に係る発明では、スリットの底面には押し当てられた跡が形成されていることが特定されています。段落0028には、スリット構造を成形金型で支えることにより、成形時の圧力に対してベース板の変形量を最小限に抑えることが可能となるとの記載があります。この実施の形態2に係る効果は、スリット9の底面9aに衝立部11の先端が接触してはじめて、なしうる効果です。もし、スリット9の底面9aに衝立部11の先端が接触しないのであれば、下金型に衝立部が設けられていない、実施の形態1と同じ状況になります。
実施の形態2では、わざわざ下金型10aに衝立部11を設けているのですから、スリット9の底面9aに衝立部11の先端が接触することは自明です。したがって、下金型の衝立部をスリットの底面に“押し当てる”こと、および、衝立部がスリットの底面に接することは、図10およびこれに関連する段落の記述に示されていると考えております。
(2)
段落0027には、衝立部11の先端部12とスリットの底面9aとの間には僅かな隙間を設けておいてもよいと記載されています。隙間があっても僅かであれば、成形時の圧力により、盛上り部20が押しつぶされて、衝立部11とスリットの底面9aが接触します。このとき、ベース板は、封止樹脂による成形圧力と衝立部11からの抗力および載置面15からの抗力を受けて、釣り合いを保とうとします。
成形圧力は、ベース板2の表側面全体で受けますが、抗力は衝立部11の先端および盛上り部20の先端で受けます。盛上り部の先端の面積および衝立部の先端の面積は、ベース板2の表側面の全面積に比べると圧倒的に小さくなっています。成形圧力によって盛上り部20の先端が押しつぶされるのと同様に、スリットの底面9aには、衝立部の先端から受ける抗力によって、押し当てられた跡が形成されることは自明であると考えています。」
と主張している。
しかしながら、衝立部については、明細書の【0027】、【0028】、【0040】、【0041】、【図10】に記載があるものの、例えば、段落【0027】には、「成形金型10には衝立部11が設けられている。衝立部11は下金型10aのスリット9に対応する位置に設けられている。衝立部11は下金型10aの底面13から立設している。図10のように成形金型10に載置して封止樹脂を流し込む。衝立部11の先端部12とスリットの底面9aの間には僅かな隙間を設けておいてもよい。」、段落【0028】には、「実施の形態2ではスリット構造を備えたベース板を用いることを特徴にする。このスリット構造を成形金型で支えることにより、成形時の圧力に対してベース板の変形量を最小限に抑えることが可能となる。」との記載があることを鑑みると、仮に成形時の圧力で盛上り部の先端が押しつぶされることで衝立部11の先端部12とスリットの底面9aが接したとしても、スリットの底面9aに押し当てられた跡が形成されることまで自明な事項であるとはいえない。
特に、審判請求人は、「盛上り部の先端の面積および衝立部の先端の面積は、ベース板2の表側面の全面積に比べると圧倒的に小さくなっています。成形圧力によって盛上り部20の先端が押しつぶされるのと同様に、スリットの底面9aには、衝立部の先端から受ける抗力によって、押し当てられた跡が形成されることは自明であると考えています。」と主張しているが、「盛上り部」は、例えば、明細書の段落【0021】に「盛上り部20のサイズや形状は、フィン8に対して高さや幅が小さい範囲にあれば限定されることはないが、樹脂の成形圧力によってベース板2の全体が反りなどで変形する力よりも小さな力で盛上り部20の先端が変形できる程度の大きさや先端形状を有する。」と記載されているように、「盛上り部」の形状は変形しやすいような大きさや先端形状を有するものであることが特定されているのに対して、「衝立部11」については、【図10】を参酌しても、衝立部の先端から受ける抗力によって、押し当てられた跡が形成されるような大きさや先端形状であることは記載されておらず、衝立部の先端の面積は、ベース板2の表側面の全面積に比べると小さいとはいっても、盛上り部20の先端が押しつぶされるのと同様に、スリットの底面9aには、衝立部の先端から受ける抗力によって、押し当てられた跡が形成されるという審判請求人の主張は採用できない。
そうすると、補正事項1の「スリットの底面には押し当てられた跡が形成されている」との発明特定事項は、当初明細書等に記載されているとはいえない。
よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
3.むすび
以上のとおり、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3.本願発明について
1.本願発明
平成28年6月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成27年10月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1.補正後の本願発明」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
2.引用例とその記載事項
(1)引用例1
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された文献である特開2010-199494号公報(平成22年9月9日公開。以下、「引用例1」という。)には、「半導体装置及び半導体装置の製造方法」に関して図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
ア.「【0008】
そこで、放熱板の露出部分に凹凸等を形成して、放熱板の外気に接する表面積を大きくすることも考えられる。しかし、樹脂系材料によってモールドする際には、凹凸等を形成した放熱板の露出部が樹脂系材料によって覆われることを防ぐ必要がある。従来の半導体装置のように放熱板の露出部が全面にわたって平坦であれば、放熱板の露出部を金型に密着させることで、放熱板の露出部が樹脂系材料によって覆われることを容易に防ぐことが可能であるが、放熱板の露出部分に凹凸等を形成した場合には、放熱板の凹凸と金型との間に隙間ができやすく、放熱板と金型とを密着させることが難しくなる。
【0009】
樹脂系材料によって放熱板の凹凸の一部が覆われた場合には、放熱板の外気と接する表面積が減ってしまい、放熱性能を十分に発揮させることができなくなる。したがって、放熱板の凹凸と金型との密着不良により、歩留まりが低下するといった問題が生じる。
【0010】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ヒートシンクの放熱性能を高めつつ、樹脂系材料をモールドする際のヒートシンクと金型との密着不良を抑えて歩留まりを向上させることのできる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。更には放熱部材や熱伝導グリスを不要とすることにより、半導体装置が適用される機器の生産性向上や低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る半導体装置は、リードフレームと、リードフレームの表面に実装された半導体素子と、リードフレームの裏面に接着される接着部を一方面側に有し、他方面側には放熱用の凹凸部を有するヒートシンクと、リードフレーム及び半導体素子を一体的にモールドするモールド樹脂とを備えたものであって、凹凸部の周囲に形成されるとともに金型と密着することによりモールド樹脂が凹凸部に漏れ出ることを防ぐための突起部をヒートシンクに設けたものである。」
イ.「【0016】
実施の形態1.
以下に、図面を用いて本発明の実施の形態1に係る半導体装置である樹脂モールド型半導体モジュールについて説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。図1は本発明の実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す横断面図である。図において、半導体装置2は、主としてヒートシンク4と、半導体素子6と、リードフレーム8と、モールド樹脂(樹脂モールド部)9より構成される。
【0017】
ヒートシンク4は、半導体装置2のベース基板として機能するとともに、半導体素子6が駆動した際に発する熱を放熱する機能を有する。ヒートシンク4としては、熱伝導率が高く放熱性の良好な金属材料が用いられ、例えば、アルミニウムが用いられる。ヒートシンク4は、ベース部5とフィン部(凹凸部)10とから構成されている。
【0018】
ベース部5は、リードフレーム8に接着される接着面(接着部)5aを一方面側に有する。ベース部5の接着面5aの外側領域には傾斜面(間隙形成面)5bが形成されている。半導体装置2にモールド樹脂9がモールドされる前の状態において、傾斜面5bとリードフレーム8との間に間隙7が形成される。傾斜面5bは、接着面5aから外側に向かうにしたがって間隙7が広くなるような傾斜で形成されている。
【0019】
図2は、ヒートシンク4をフィン部10側から見た平面図である。フィン部10は、接着面5aの他方面側に形成された複数の放熱フィンによって形成されている。フィン部10は、凹凸からなる放熱面10aによって放熱性能を向上させることができる。フィン部10の周囲であって接着面5aの他方面側には、突起部5cが形成されており、突起部5cの先端面は接着面5aと略平行に形成されている。
【0020】
リードフレーム8は、半導体素子6に電力を供給するためのものであり、リードフレーム8を介して半導体素子6に電力が供給される。リードフレーム8は、正極側の正極側リードフレーム8aと、負極側の負極側リードフレーム8bとから構成されている。正極側リードフレーム8aは、半導体素子6がはんだ付けされて実装される実装部(表面)8cを有する。なお、はんだ付けに用いられるはんだは、銀や錫などを含む導電性部材により構成される。
【0021】
正極側リードフレーム8aの実装部8cには、複数の半導体素子6が実装されている。半導体素子6としては、例えばフリーホイールダイオード(FrDi)や絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ(IGBT)が用いられる。半導体素子6同士は、アルミ等のワイヤ12によって電気的に接続されている。また、半導体素子6と負極側リードフレーム8bとは、ワイヤ12で電気的に接続されている。正極側リードフレーム8aの実装部8cの裏面がヒートシンクとの接着面(裏面)8dになっており、ヒートシンク4の接着面5aがはんだ、または窒化ホウ素や窒化アルミまたはアルミナなど、熱伝導率の高い絶縁性の微粒子を含む樹脂系材料によって接着されるようになっている。本実施の形態でははんだによって接合されている場合について説明する。
【0022】
モールド樹脂9は、樹脂系材料からなるモールド部材を構成しており、モールド樹脂9は、半導体素子6、リードフレーム8を一体的にモールドして、半導体装置2のケースとして機能する。樹脂系材料であるモールド部材により、半導体素子6やリードフレーム8を隙間無くモールドすることができる。又モールド樹脂9はフィン部10を覆わないように構成されると共に、ベース部5に設けられた突起部5cにおいては、その外周側のみを覆うように構成されている。
【0023】
半導体素子6と正極側リードフレーム8aとヒートシンク4とが、はんだ11を介して結合されている。はんだ11としては、導電性の材料が用いられるため、熱伝導率は高い。従って半導体素子6で発生した熱は、はんだ11及び正極側リードフレーム8aを介して効率よくヒートシンク4に伝わり放熱性能が向上する。
【0024】
なお図1では、正極側リードフレーム8aに半導体素子6とヒートシンク4を取り付けた場合について説明したが、負極側リードフレーム8bに半導体素子6とヒートシンク4を取り付けるようにしてもよい。すなわち、正極側リードフレーム8a又は負極側リードフレーム8bのいずれか一方に対して半導体素子6とヒートシンク4の両方が取り付けられていれば、半導体素子6で発生した熱を、ヒートシンク4を介して効率よく放熱させることができる。」
ウ.「【0030】
ここで、ヒートシンク4に設けられた突起部5cの先端部と下側金型18bの密着面18dとが密着することにより、モールド部材がフィン部10側に漏れ出るのを防いでいる。突起部5cの先端面は概略同一平面上になるように構成されているが、実際にはベース部5の反りや歪み等により、完全に同一平面上になるように構成することは困難である。また、下側金型18bの密着面18dも完全な平面に加工することは困難である。
【0031】
このような状況でヒートシンク4に設けられた突起部5cの先端面と下側金型18bの密着面18dとを密着させるために圧力を加えると、まず突起部5cの先端面の一部が下側金型18bの密着面18dに接触し、その他の部分には隙間がある状態となる。そこからさらに圧力を加えると、先に下側金型18bの密着面18dに接触した突起部5cの先端面の一部が変形することにより、その他の部分が下側金型18bの密着面18dに接触する。このように突起部5cの先端面が順次下側金型18bの密着面18dに接触して変形し、最終的に突起部5cの先端面全体が下側金型18bの密着面18dに接触するように変形するまで圧力を加えることで、ヒートシンク4と下側金型18bの間に隙間がなくなり、ヒートシンク4のフィン部10がモールド樹脂9によって覆われることを防止することができる。
【0032】
したがって、本発明に係る半導体装置2は、ヒートシンク4の凹凸部10の周囲に突起部5cが形成されているので、突起部5cの先端面が完全に同一平面上になく、下側金型18bのヒートシンク4と密着する密着面18dが完全な平面でなくても、下側金型18bとヒートシンク4とを密着させるときの圧力で、突起部5cが変形し、樹脂系材料をモールドする際の下側金型18bとヒートシンク4との隙間をなくすことができるので、ヒートシンク4や上側金型18a及び下側金型18bの形状精度がそれほど厳密でなくても良く、よって低コスト化を図ることができ、更には樹脂系材料の漏れを防ぐとともに、図4において説明したように樹脂系材料が金型内に流れ込んでもワイヤ12がはずれることも防止することができるので、歩留まりを向上させることができる。また、凹凸部10を設けることによってヒートシンク4の表面積を拡大することができ、放熱部材や熱伝導グリスなどを使用しなくても外気への放熱を効率的に行うことができる。」
上記アないしウの記載から、引用例1には以下の事項が記載されている。
・上記アによれば、樹脂系材料によってモールドする際には、凹凸等を形成した放熱板の露出部が樹脂系材料によって覆われることを防ぐ必要があり、この発明に係る半導体装置は、リードフレームと、リードフレームの表面に実装された半導体素子と、リードフレームの裏面に接着される接着部を一方面側に有し、他方面側には放熱用の凹凸部を有するヒートシンクと、リードフレーム及び半導体素子を一体的にモールドするモールド樹脂とを備えたものであって、凹凸部の周囲に形成されるとともに金型と密着することによりモールド樹脂が凹凸部に漏れ出ることを防ぐための突起部をヒートシンクに設けたものである。
・上記イによれば、半導体装置2は、主としてヒートシンク4と、半導体素子6と、リードフレーム8と、モールド樹脂(樹脂モールド部)9より構成されるものである。また、ヒートシンク4は、半導体装置2のベース基板として機能するとともに、半導体素子6が駆動した際に発する熱を放熱する機能を有しており、ヒートシンク4は、ベース部5とフィン部(凹凸部)10とから構成され、ベース部5は、リードフレーム8に接着される接着面(接着部)5aを一方面側に有するものである。そして、リードフレーム8は、正極側の正極側リードフレーム8aと、負極側の負極側リードフレーム8bとから構成され、正極側リードフレーム8aは、半導体素子6がはんだ付けされて実装される実装部(表面)8cを有し、正極側リードフレーム8aの実装部8cの裏面がヒートシンクとの接着面(裏面)8dになっており、ヒートシンク4の接着面5aがはんだ、または窒化ホウ素や窒化アルミまたはアルミナなど、熱伝導率の高い絶縁性の微粒子を含む樹脂系材料によって接着されるようになっているものである。さらに、樹脂系材料であるモールド部材により、半導体素子6やリードフレーム8を隙間無くモールドされ、フィン部10の周囲であって接着面5aの他方面側には、突起部5cが形成されており、突起部5cの先端面は接着面5aと略平行に形成され、モールド樹脂9はフィン部10を覆わないように構成されると共に、ベース部5に設けられた突起部5cにおいては、その外周側のみを覆うように構成されるものである。
・上記ウによれば、半導体装置2は、ヒートシンク4の凹凸部10の周囲に突起部5cが形成されているものであり、下側金型18bとヒートシンク4とを密着させるときの圧力で、突起部5cが変形し、樹脂系材料をモールドする際の下側金型18bとヒートシンク4との隙間をなくすことができるので、樹脂系材料の漏れを防ぐことができるものである。
以上の点を踏まえて、上記記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「半導体装置2は、主としてヒートシンク4と、半導体素子6と、リードフレーム8と、モールド樹脂9より構成されるものであって、
ヒートシンク4は、ベース部5とフィン部10とから構成され、ベース部5は、リードフレーム8に接着される接着面5aを一方面側に有し、フィン部10の周囲であって接着面5aの他方面側には、突起部5cが形成されており、
リードフレーム8は、正極側の正極側リードフレーム8aと、負極側の負極側リードフレーム8bとから構成され、正極側リードフレーム8aは、半導体素子6がはんだ付けされて実装される実装部8cを有し、
正極側リードフレーム8aの実装部8cの裏面がヒートシンクとの接着面8dになっており、ヒートシンク4の接着面5aがはんだ、または窒化ホウ素や窒化アルミまたはアルミナなど、熱伝導率の高い絶縁性の微粒子を含む樹脂系材料によって接着されており、
樹脂系材料であるモールド部材により、半導体素子6やリードフレーム8を隙間無くモールドされ、
ヒートシンク4のフィン部10の周囲に突起部5cが形成され、モールド樹脂9はフィン部10を覆わないように構成されると共に、ベース部5に設けられた突起部5cにおいては、突起部5cの外周側のみを覆うように構成されている半導体装置。」
(2)引用例2
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された文献である特開平4-129253号公報(平成4年4月30日公開。以下、「引用例2」という。)には、「半導体パツケージ」に関して図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
カ.「[作用]
この発明においては、金属キャップに設けたリング状の突起の部分は、金属キャップ上に、ステムおよびキャリアテープに接続された半導体素子を載置し金型で樹脂封止する際に、上下金型でキャリアテープのサポートリング部および金属キャップのつばの部分を挟んだ際に、金属キャップに設けたリング状の突起の部分が下金型に圧着されるか、突起がやや押しつぶされることにより、リング状の突起の内側へ樹脂がにじみ出すことを防止する。
キ.「[実施例]
以下、この発明の一実施例を図について説明する。第1図はこの発明による半導体パッケージの断面構造を示し、第1図において、符号(1)から(12)迄に既に従来の技術の項で示したものと同様の部分であり、説明を省略する。(14)は金属キャップ(9)の半導体素子(1)を載置しない面にリング状に形成した突起であり、突起(14)の高さは数十ミクロンから0.5mmの範囲である。
以上の構成により、リング状の突起(14)は、樹脂封止の際に下金型と密着することにより、封止樹脂(12)のにじみ出しを防ぐ。
なお、上記実施例では、半導体素子(1)と外部との電気的接続をテープキャリアを用いて行ったが、通常のリードフレーム及び金属細線を用いても良い。
第2図はこの発明の他の実施例による半導体パッケージの断面構造を示す。第2図において、符号(1)および(9)から(12)、さらに(14)は既に説明したものと同様であり、説明を省略する。(15)はリードフレーム、(16)は半導体素子(1)とリードフレーム(15)を接続する金属細線、(17)はリードフレーム(15)と金属キャップ(9)の間に存在し、リードフレーム(15)と金属キャップ(9)を電気的に絶縁する絶縁層である。
かかる構成により、同様の効果が得られる。
なお、金属キャップのリング状の突起の内側で金属が露出している部位に、放熱フィンを取付けて放熱性を向上してもよい。
また、リング状突起の形成は、金属キャップの絞り加工時に同時に形成してもよいし、金属キャップの絞り加工後、追加工の工程を設定して金型により突起を形成してもよい。
[発明の効果]
以上のように、この発明によれば、金属キャップの半導体素子を載置しない面にリング状に突起を設けたので、装置にバリが発生せず外観が美しく、かつ、例えばバリを介せず放熱フィンを接着できるため、放熱性のよいバッケージが得られる効果がある。」
・上記カによれば、金属キャップに設けたリング状の突起の部分は、金属キャップ上に、ステムおよびキャリアテープに接続された半導体素子を載置し金型で樹脂封止する際に、上下金型でキャリアテープのサポートリング部および金属キャップのつばの部分を挟んだ際に、金属キャップに設けたリング状の突起の部分が下金型に圧着されるか、突起がやや押しつぶされることにより、リング状の突起の内側へ樹脂がにじみ出すことを防止するものである。
・上記キによれば、リング状の突起(14)は、金属キャップ(9)の半導体素子(1)を載置しない面に形成され、樹脂封止の際に下金型と密着することにより、封止樹脂(12)のにじみ出しを防ぐものである。
・第1図、第2図によれば、金属キャップのリング状の突起(14)は、金属キャップの底面の周端縁からやや内側の位置に設けられており、金属キャップのリング状の突起の外側が封止樹脂で覆われるものである。
上記カないしキ、第1図ないし第2図の記載から、引用例2には以下の事項が記載されている。
「金属キャップ(9)の半導体素子(1)を載置しない面にリング状の突起を形成し、
金属キャップに設けたリング状の突起の部分が下金型に圧着されるか、突起がやや押しつぶされることにより、リング状の突起の内側へ封止樹脂がにじみ出すことを防止するものであって、
金属キャップのリング状の突起(14)は、金属キャップの底面の周端縁からやや内側の位置に設けられており、金属キャップのリング状の突起の外側が封止樹脂で覆われる」こと。
(3)引用例3
原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された文献である特開平11-150216号公報(平成11年6月2日公開。以下、「引用例3」という。)には、「樹脂封止型半導体部品及びその製造方法」に関して図面とともに以下の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
サ.「【0025】さて、図1及び図2に示すように、前記放熱板12の露出面12aには、下方に突出する突起部20が、放熱板12の周端縁からやや内側の位置を全周に連続して延びて一体に形成されている。この突起部20は、例えばプレス等の機械加工あるいはエッチング加工により、断面三角形状をなすように先端部(下端部)がやや外側に向けて尖った形状に形成されている。また、このときの突起部20の突出寸法は、例えば0.2~1mm程度とされている。そして、詳しくは後述するように、この突起部20は、モールド金型内で放熱板12が型締め力を受けることにより、塑性変形してキャビティ面に密着するようになっている。」
シ.「【0033】このように本実施例によれば、モールド金型21の型締め力により、放熱板12の露出面12aに形成された突起部20がキャビティ面に押付けられて密着するようになるので、放熱板12の下面に樹脂が漏れて侵入することを防止することができ、樹脂ばりの発生を防止することができ、この結果、樹脂ばりを除去する工程が不要となる。このとき、突起部20は、型締め力を受けて塑性変形することによりキャビティ面に密着するので、高い密着力を得ることができ、樹脂もれ防止の効果を高いものとすることができる。これと共に、放熱板12とキャビティ面との隙間に応じて塑性変形量が変化するので、寸法誤差を吸収することが可能となり、突起部20の形成あるいは放熱板12とリードフレーム13との連結に高い寸法精度が必要なくなる。」
・上記サによれば、放熱板12の露出面12aには、下方に突出する突起部20が、放熱板12の周端縁からやや内側の位置を全周に連続して延びて一体に形成されており、突起部20は、断面三角形状をなすように先端部がやや外側に向けて尖った形状に形成されているものである。
・上記シによれば、モールド金型21の型締め力により、放熱板12の露出面12aに形成された突起部20がキャビティ面に押付けられて密着するようになるので、放熱板12の下面に樹脂が漏れて侵入することを防止することができるものである。
上記サないしシの記載から、引用例3には以下の事項が記載されている。
「放熱板12の露出面12aには、下方に突出する突起部20が、放熱板12の周端縁からやや内側の位置を全周に連続して延びて一体に形成されており、モールド金型21の型締め力により、放熱板12の露出面12aに形成された突起部20がキャビティ面に押付けられて密着するようにして、放熱板12の下面に樹脂が漏れて侵入することを防止する」こと。
3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「ベース部5」、「フィン部10」は、本願発明の「ベース板」、「立設する複数のフィン」に相当する。また、引用発明の「ベース部5」は、リードフレーム8に接着される接着面5aを一方面側に有し、フィン部10の周囲であって接着面5aの他方面側を有しており、引用発明の「ベース部5」の「リードフレーム8に接着される接着面5aを一方面側」及び「フィン部10の周囲であって接着面5aの他方面側」とするそれぞれの面を有していることを鑑みれば、本願発明と同様に「第2の主面」、「第1の主面」を有しているといえる。さらに、引用発明の「突起部5c」は、フィン部10の周囲であって接着面5aの他方面側に形成されていることを鑑みれば、本願発明の「複数のフィンを包囲する盛上り部が第1の主面に設けられている」といえる。
したがって、引用発明の「ヒートシンク4は、ベース部5とフィン部10とから構成され、ベース部5は、リードフレーム8に接着される接着面5aを一方面側に有し、フィン部10の周囲であって接着面5aの他方面側には、突起部5cが形成され」ていることは、本願発明の「相対向する第1の主面と第2の主面を有し、立設する複数のフィンと前記複数のフィンを包囲する盛上り部が前記第1の主面に設けられているベース板」を有しているといえる。
b.引用発明の「リードフレーム8」は、正極側の正極側リードフレーム8aと、負極側の負極側リードフレーム8bとから構成され、正極側リードフレーム8aは、半導体素子6がはんだ付けされて実装される実装部8cを有し、正極側リードフレーム8aの実装部8cの裏面がヒートシンクとの接着面8dになっており、ヒートシンク4の接着面5aがはんだ、または窒化ホウ素や窒化アルミまたはアルミナなど、熱伝導率の高い絶縁性の微粒子を含む樹脂系材料によって接着されていることを鑑みれば、接着面8d及び接着面5aは、はんだ、または樹脂系材料によって接着されることから、はんだ、または樹脂系材料の層を有しているといえる。してみると、引用発明の「正極側リードフレーム8」は、ヒートシンク4のベース部5にはんだ、または樹脂系材料によって接着されていることから、引用発明の「正極側リードフレーム8aの実装部8cの裏面がヒートシンクとの接着面8dになって」いることは、本願発明の「ベース板の第2の主面に形成された層」を有し、「層に固定された回路パターン」を有しているといえる。また、引用発明の「正極側リードフレーム8aは、半導体素子6がはんだ付けされて実装される実装部8cを有」することは、本願発明の「前記回路パターンに接続された半導体素子」を備えていることに相当する。
ただし、半導体装置について、本願発明は、「前記ベース板の第2の主面に形成された絶縁層と、前記絶縁層に固定された回路パターン」なる絶縁層を備えていることが特定されているのに対して、引用発明には、そのような特定がなされていない。
c.引用発明の「樹脂系材料であるモールド部材」は、本願発明の「封止樹脂」に相当する。そして、引用発明の「樹脂系材料であるモールド部材」は、半導体素子6やリードフレーム8を隙間無くモールドしていることを鑑みれば、本願発明と同様に「層と回路パターンと半導体素子を封止」しているといえる。
また、引用発明の「突起部5c」は、引用例1の【図2】を参酌すれば、フィン部10の周囲に形成された突起部5cの内側とフィン部10の間に、隙間を有していることを勘案すると、本願発明と同様に、「盛上り部は、幅しろに形成されており、盛上り部の内側に配置された内側幅しろ」を有しているといえる。また、引用発明の「モールド樹脂9はフィン部10を覆わないように構成されると共に、ベース部5に設けられた突起部5cにおいては、突起部5cの外周側のみを覆う」ことは、本願発明の「前記封止樹脂は、前記盛上り部の外周側側面を被覆している」ことに相当する。
したがって、引用発明の「樹脂系材料であるモールド部材により、半導体素子6やリードフレーム8を隙間無くモールドされ、ヒートシンク4のフィン部10の周囲に突起部5cが形成され、モールド樹脂9はフィン部10を覆わないように構成されると共に、ベース部5に設けられた突起部5cにおいては、突起部5cの外周側のみを覆うように構成されている」ことは、本願発明の「前記ベース板は、このベース板の第1の主面の外周端部に幅しろが設けられており、前記盛上り部は、前記幅しろに形成されていて、前記封止樹脂は、前記盛上り部の外周側側面を被覆している」といえる。
ただし、半導体装置の盛上り部について、本願発明は、「幅しろを盛上り部の外側に配置された外側幅しろと、盛上り部の内側に配置された内側幅しろに分割し、前記封止樹脂は、前記盛上り部の外周側側面および前記外側幅しろを被覆している」と特定するのに対して、引用発明には、そのような特定がなされていない。
d.引用発明の「半導体装置」は、ヒートシンク4と、半導体素子6と、リードフレーム8と、モールド樹脂9を有しており、上記a.ないしc.を鑑みれば、引用発明の「半導体装置」は、本願発明の「半導体装置」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
「 相対向する第1の主面と第2の主面を有し、立設する複数のフィンと前記複数のフィンを包囲する盛上り部が前記第1の主面に設けられているベース板と、
ベース板の第2の主面に形成された層と、
層に固定された回路パターンと、
前記回路パターンに接続された半導体素子と、
層と前記回路パターンと前記半導体素子を封止する封止樹脂とを備え、
前記ベース板の第1の主面に設けられている盛上り部は前記複数のフィンの周囲を連続して包囲していて、
前記ベース板は、このベース板の第1の主面の外周端部に幅しろが設けられており、
前記盛上り部は、前記幅しろに形成されていて、
前記封止樹脂は、前記盛上り部の外周側側面を被覆していることを特徴とする半導体装置。」
<相違点1>
半導体装置について、本願発明は、ベース板の第2の主面に形成された「絶縁層」を有すると特定しているのに対して、引用発明には、そのような特定がなされていない点。
<相違点2>
半導体装置について、本願発明は、回路パターンが固定される層が「絶縁層」であると特定しているのに対して、引用発明には、そのような特定がなされていない点。
<相違点3>
半導体装置の盛上り部について、本願発明は、「幅しろを盛上り部の外側に配置された外側幅しろと、盛上り部の内側に配置された内側幅しろに分割し、前記封止樹脂は、前記盛上り部の外周側側面および前記外側幅しろを被覆している」と特定するのに対して、引用発明には、そのような特定がなされていない点。
4.判断
以下、相違点について検討する。
ア.相違点1及び2について
基板の上に絶縁層を設け、該絶縁層の上にリードフレームを形成することは、例えば、原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された文献である特開平8-298299号公報(特に、【0027】ないし【0029】、【図1】等 参照)、特開2002-110867号公報(特に、【0006】ないし【0008】、【図1】等 参照)、特開2012-28421号公報(特に、【0035】ないし【0041】、【図3】、【図6】等 参照)に記載されているように周知の技術事項であり、引用発明の半導体装置において、絶縁性の信頼性を向上するために、上記周知の技術事項を採用して相違点1及び2の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことにすぎない。
イ.相違点3について
突起部の外側に配置された外側幅しろを設けることは、例えば、原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された文献である引用例2(特に、上記2.(2) 参照)、引用例3(特に、2.(3) 参照)に記載のように、突起部を周端縁からやや内側の位置に設けることで、幅しろを盛上り部の外側に配置された外側幅しろと、突起部の内側に配置された内側幅しろに分割することは周知の技術事項であり、引用発明において、上記周知の技術事項を採用し、突起部を周端縁からやや内側の位置に設けることで、幅しろを突起部の外側に配置された外側幅しろと突起部の内側に配置された内側幅しろに分割することは当業者であれば容易に想到し得たことであり、その際、封止樹脂が突起部の外周側側面および外側幅しろを被覆するようにすることも当業者であれば容易に想到し得たことである。さらに、相違点3の技術的意義について検討しても、本願の出願当初明細書の【0017】に「ベース板2には外周端部から一定の幅で幅しろ2bが設けられている。盛上り部20は幅しろ2bに形成され、平坦面2aの全周を継ぎ目無く包囲している。盛上り部20を成形金型に押し当てることにより、ベース板2の裏側面に設けられたフィン8に封止樹脂を漏らすことなく、ベース板2の側面まで覆って樹脂成形することが可能となる(図5参照)。盛上り部20は、幅しろ2bの中央に形成してもよいが、外側や内側のどちらかに片寄っていてもよい。」と記載されているように、幅しろ2bに盛上り部20を形成することで、幅しろ2bが盛上り部20により仕切られることによりその外側と内側が生じたものであり、幅しろ2bを外側幅しろと内側幅しろとに分割することに格別な技術的意義があるとは認められない。
したがって、引用発明に、上記周知の技術事項を採用し、相違点3の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことにすぎない。
してみれば、引用発明に周知の技術事項を採用することで相違点1ないし3の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は、引用発明および周知の技術事項に基づいて当業者が容易になし得たものである。そして、本願発明の作用効果も、引用発明および周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知の技術事項により当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-009216