特許拒絶査定不服審判
2016-008917
標的核酸を検出する方法及び組成物
- 審判番号
- 2016-008917
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-511555外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月15日
- 審決日
- 2017年03月13日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ディクステリティー ダイアグノスティクス インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-Z (C12N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-511555「標的核酸を検出する方法及び組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日国際公開、WO2012/158967、平成26年 6月 5日国内公表、特表2014-513557〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成24年5月17日(パリ条約による優先権主張 平成23年5月17日 米国)を国際出願日とする出願であって、 平成28年2月9日に拒絶査定がなされ、平成28年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
本願の請求項1~17に係る発明は、審査請求と同時の平成27年4月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~17に記載の事項により特定される発明であり、そのうち、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
サンプル中の複数の異なる標的核酸を検出する方法であって、各標的核酸が、第2の標的ドメインに隣接する第1の標的ドメインと、前記第1及び第2の標的ドメインの上流又は下流に位置する第3の標的捕捉ドメインとを含み、前記方法が、
(a)複数の連結基質を提供する工程を含み、各基質が
(i)前記標的核酸の1つと、
(ii)第1のセットの連結プローブと、を含み、該第1のセットの連結プローブが、
(A)第1の核酸連結プローブを含み、該第1の核酸連結プローブが、
(1)前記1つの標的核酸配列の第1の標的ドメインとハイブリダイズする第1のプローブドメインと、
(2)5’連結部分と、を含み、更に、
(B)第2の核酸連結プローブを含み、該第2の核酸連結プローブが、
(1)前記1つの標的核酸配列の第2の標的ドメインとハイブリダイズする第2のプローブドメインと、
(2)3’連結部分と、を含み、更に、
(b)第1の複数の連結生成物を形成するために、リガーゼ酵素を使用せずに前記第1の連結プローブと前記第2の連結プローブを連結する工程と、
(c)標的複合体を形成するために、捕捉部分を含む標的捕捉プローブを、前記標的核酸の前記第3の標的ドメインとハイブリダイズさせる工程と、
(d)前記捕捉部分を使用して、表面上で前記標的複合体を捕捉する工程と、
(e)アンプリコンを形成するために、前記連結生成物を増幅する工程と、
(f)前記アンプリコンを検出する工程と、
を含み、それにより前記標的核酸を検出する、方法。」
第2 原査定の概要
原査定は、請求項1~17に係る発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
第3 当審の判断
1.引用例1
拒絶査定において引用された、J Clin Microbiol. 1996;34(3):501-507(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから、当審による翻訳文を記載する。
(1-1)「血清中のC型肝炎ウイルス(HCV)RNA検出の、単純、敏感、かつ特異的なライゲーション依存的PCR(LD-PCR)法について記述される。この分析法は、RNAの識別のための2つのDNA捕捉プローブと、その後のPCRのための2つのDNAヘミプローブが使用される。各捕捉プローブは、HCV RNAの保存された5’非翻訳領域に相補的な3’配列と、ストレプトアビジンを塗布した常磁性ビーズと相互作用することができるビオチン部分を5’末端に持つ。各ヘミプローブは、互いに近接する5’非翻訳領域に相補的な配列と、PCRプライマーが結合するための共通配列を含む。グアニジウム・チオシアン酸塩溶液中で、捕捉プローブとヘミプローブはそれぞれの標的とハイブリッドを作り、磁場の存在下で常磁性ビーズに捕捉プローブが結合することで、血清からハイブリッドが分離される。T4 DNAリガーゼとのインキュベーションにより、ヘミプローブは互いに結合して完全なプローブとなり、PCRのテンプレートとして用いられる。」(第501頁 要約1~10行)
(1-2)「
図2 HCV RNAの検出につながる、磁気分離、標的特異的ライゲーションおよびPCR増幅。HCV RNAを遊離させるため、患者の血清に溶解緩衝液が混合される。ヘミプローブ、捕捉プローブ、および常磁性ビーズが溶解混合物に添加され、HCV RNA、ヘミプローブ、捕捉プローブのハイブリッド構造が形成される。このハイブリッドは常磁性ビーズに捕捉されるから、結合しなかったプローブや血清の他の成分を洗浄できる。HCVの標的に整列したヘミプローブは、T4 DNAリガーゼとのインキュベーションによって互いに結合される。プライマーとTaqポリメラーゼを添加して、PCR増幅が行われる。」(第504頁 左欄)
2.引用例2
拒絶査定において引用された、国際公開第2010/114599号(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるから、引用例2のパテントファミリーである特表2012-531887号公報の記載を翻訳文として記載する。また、下線は当審による。
(2-1)「【請求項1】
配列が異なる複数の試料核酸を含む試料中において、本質的に互いに隣接して位置する第1および第2の標的ドメインを含む、少なくとも1つの特定の標的核酸配列の存在を検出する方法であって、
a)前記試料核酸を、複数の異なるプローブセットと接触させる工程であって、各プローブセットが、
i.
1)前記第1の標的ドメインと実質的に相補的な第1のプローブドメインと;
2)前記標的核酸と本質的に非相補的な第1の非相補的領域と;
3)5’側ライゲーション部分と
を含む第1のライゲーションプローブと;
ii.
1)前記第2の標的ドメインと実質的に相補的な第2のプローブドメインと;
2)前記標的核酸と本質的に非相補的な第2の非相補的領域と;
3)3’側ライゲーション部分と
を含む第2のライゲーションプローブと
を含み、前記ライゲーションプローブのうちの少なくとも1つが、可変スペーサー配列を含む工程と;
b)前記第1および第2のライゲーションプローブを、リガーゼ酵素の不在下においてライゲーションして、ライゲーション産物を形成させる工程と;
c)前記ライゲーション産物を増幅する工程と;
d)前記ライゲーション産物の存在を検出する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記標的配列が、RNAおよび/またはDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的配列が、未精製RNAを含む、請求項1に記載の方法。」(特許請求の範囲)
(2-2)「[0017] 効率的かつ特異的に核酸を検出するための方法および組成物が、なおも必要とされている。したがって、本発明は、極めて迅速に標的を検出し、核酸標的を検出および測定するプロセスを大幅に簡略化する、酵素によらない化学的ライゲーション反応のための方法および組成物を提供する。」
(2-3)「ライゲーション部分
[0048] ライゲーションドメインに加えて、本発明のライゲーションプローブは、ライゲーション部分も有する。したがって、一態様では、本発明が、第1および第2のライゲーションプローブのライゲーション部分が自発的に反応して、外因的なリガーゼの不在下において、すなわち、外因的なリガーゼを反応物に添加せずに、該プローブを併せてライゲーションすることが可能であるような条件下において、少なくとも第1および第2のライゲーションプローブを、標的核酸に結合させて「ライゲーション基質」を形成させる工程を含む、化学的ライゲーションの方法に関する。」
(2-4)「[0051] 化学的ライゲーションは、さらなる活性化試薬を添加するか、またはさらなる刺激を加えることなしに、適切な条件下で自発的に生じうる。」
(2-5)「[00152] CLPAは、他の配列ベースのハイブリダイゼーション法を上回る、複数の顕著な利点を有する。第1に、CLPAは、あらかじめDNAのコピーを作製する必要なしに、直接RNA解析に適用することができる。第2に、CLPAは、試料中の夾雑物に対して比較的低感度であり、血液、尿、唾液、および便などの体内試料を含めた不純試料に直接適用することができる。第3に、CLPAは、伴う工程が他の既知の方法より少なく、このため、結果を得るのに必要とされる時間が短縮される。さらに、CLPAプローブは、乾燥保存が可能であり、相補的な標的配列の存在下において、適正にデザインした系を自発的に反応させて、2つ以上のオリゴヌクレオチドを連結することもできる。化学的ライゲーション反応は、優れた配列選択性を示し、一塩基多型を識別するのに用いることができる。
[00153] 酵素によるライゲーション法と異なり、CLPAは、DNA標的およびRNA標的に対してほぼ同一の反応性を示すことが重要であり、下記でより完全に説明する通り、このことが、CLPAを他の既知の系より効率的とし、CLPAを用いうる適用の範囲を広いものにしている。
[00154] CLPAアッセイは、結果を達成するのに必要とされる工程の数を削減し、これにより、大幅な短時間内で結果を達成する可能性をもたらしている。例えば、標準的な逆転写酵素(RT)マルチプレクスリガーゼ依存型プローブライゲーション(MLPA)の一般的な工程の流れは、以下の通りである:
1.全RNAを単離する工程。
2.逆転写酵素を用いてcDNAコピーを作製する工程。
3.一晩にわたり、MLPAプローブセットを、cDNA標的とハイブリダイズさせる工程。
4.DNAリガーゼを添加して、標的に結合したプローブを連結する工程。
5.ライゲーションされたプローブを増幅する工程、例えば、Taqポリメラーゼおよび蛍光標識したPCRプライマーを用いるPCR増幅工程。
6.例えば、CEにより試料を解析する工程。
[00155] 標準的なRT-MLPAと異なり、CLPAは、細胞および血液の溶解物に対して、ならびにRNA標的に対して直接解析を行うことを可能とする。したがって、RT-MLPAと異なり、CLPAは、RNAを単離し、次いで、逆転写を実施してcDNAコピーを作製した後にライゲーションを実施する必要を回避する。これにより、結果を達成するための時間が短縮され、より迅速な解析を達成するための手段がもたらされる。」
(2-6)「[00157] 本発明のこの態様の別の実施形態では、より高いプローブ濃度でハイブリダイゼーション反応を駆動することにより、反応時間の短縮がさらに促進される。したがって、例えば、投入されるプローブセットを、例えば、MLPA反応で典型的に用いられる濃度より約100倍高い、比較的高濃度のCLPA反応に組み込むことができる。プローブ濃度を著明に上昇させることにより、ハイブリダイゼーション工程に必要とされる時間を、典型的には、一晩から、約15分間~約1時間へと短縮する。
[00158] より高いプローブ濃度を用いる場合、とりわけ、高度なマルチプレックス解析(例えば、約5種類を超える標的)の場合は一般に、増幅の前に精製工程を組み込むことが好ましい。本発明のこの態様の一実施形態では、膜による捕捉、磁気ビーズによる捕捉、および/または粒子による捕捉を含めた、固相支持体ベースの捕捉法を用いることができる。好ましい実施形態では、ライゲーションの後で、かつ、酵素による増幅の前に、ビオチン/ストレプトアビジンを有する磁気ビーズによる精製プロトコールを用いる。ある場合には、後続の増幅反応に干渉することなく、磁気粒子を、増幅マスター混合物に直接添加することができる。他の場合には、捕捉されたオリゴヌクレオチドをビーズから放出させ、その後、放出されたオリゴヌクレオチド溶液を、捕捉粒子または捕捉表面を存在させることなしに増幅することが好ましい。」
3.引用発明
上記(1-1)(1-2)より、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「患者血清中の標的HCV RNAを検出するための方法であって、
(A)HCV RNAの保存された5’非翻訳領域において、互いに近接する2つの領域の配列に相補的な配列を含む2つのヘミプローブと、
(B)上記2つのヘミプローブが標的とする領域のそれぞれ上流、下流の領域の配列に相補的な3’配列と、ビオチン部分を5’末端に持つ2つの捕捉プローブと、
(C)ストレプトアビジンを塗布した常磁性ビーズを準備し、
患者血清に(A)~(C)を混合し、
捕捉プローブのビオチン部分により常磁性ビーズに捕捉された、標的HCV RNAと2つのヘミプローブ、2つの捕捉プローブのハイブリッドを形成し、
常磁性ビーズに捕捉されたハイブリッドを洗浄し、
リガーゼを添加してハイブリッド上の2つのヘミプローブ結合し、
2つのヘミプローブの結合物をPCR増幅し、
PCR増幅物を検出して、標的HCV RNAを検出する、方法。」
4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「患者血清中の標的HCV RNA」は本願発明の「サンプル中の・・・標的核酸」に相当し、引用発明の「互いに近接する2つの領域」は本願発明の「第2の標的ドメイン」および「第2の標的ドメインに隣接する第1の標的ドメイン」に相当し、引用発明の「2つのヘミプローブが標的とする配列のそれぞれ上流、下流の領域」は、捕捉プローブが結合する領域であるから、本願発明の「前記第1及び第2の標的ドメインの上流又は下流に位置する第3の標的捕捉ドメイン」に相当すると認められる。
そして、引用発明の「2つのヘミプローブ」は、「互いに近接する2つの領域に相補的な配列を含む」ものであり、互いに結合するものであるから、本願発明の「(ii)第1のセットの連結プローブ」であって、「該第1のセットの連結プローブが、
(A)第1の核酸連結プローブを含み、該第1の核酸連結プローブが、
(1)前記1つの標的核酸配列の第1の標的ドメインとハイブリダイズする第1のプローブドメインと、
(2)5’連結部分と、を含み、更に、
(B)第2の核酸連結プローブを含み、該第2の核酸連結プローブが、
(1)前記1つの標的核酸配列の第2の標的ドメインとハイブリダイズする第2のプローブドメインと、
(2)3’連結部分と、を含み」に相当すると認められる。
また、引用発明の「ビオチン部分を持つ」「捕捉プローブ」は、2つのヘミプローブが標的とする配列の上流、下流の領域の配列にハイブリダイズするから、本願発明の「第1及び第2の標的ドメインの上流又は下流に位置する第3の標的捕捉ドメイン」にハイブリダイズする「捕捉部分を含む標的捕捉プローブ」に相当すると認められる。
さらに、引用発明のビオチン部分によるストレプトアビジンを塗布した常磁性ビーズへの捕捉は、常磁性ビーズの表面上であると認められる。
以上から、両者は、
「サンプル中の標的核酸を検出する方法であって、標的核酸が、第2の標的ドメインに隣接する第1の標的ドメインと、前記第1及び第2の標的ドメインの上流又は下流に位置する第3の標的捕捉ドメインとを含み、前記方法が、
(a)連結基質を提供する工程を含み、基質が
(i)前記標的核酸と、
(ii)第1のセットの連結プローブと、を含み、該第1のセットの連結プローブが、
(A)第1の核酸連結プローブを含み、該第1の核酸連結プローブが、
(1)前記1つの標的核酸配列の第1の標的ドメインとハイブリダイズする第1のプローブドメインと、
(2)5’連結部分と、を含み、更に、
(B)第2の核酸連結プローブを含み、該第2の核酸連結プローブが、
(1)前記1つの標的核酸配列の第2の標的ドメインとハイブリダイズする第2のプローブドメインと、
(2)3’連結部分と、を含み、更に、
(b)連結生成物を形成する、前記第1の連結プローブと前記第2の連結プローブを連結する工程と、
(c)標的複合体を形成するために、捕捉部分を含む標的捕捉プローブを、前記標的核酸の前記第3の標的ドメインとハイブリダイズさせる工程と、
(d)前記捕捉部分を使用して、表面上で前記標的複合体を捕捉する工程と、
(e)アンプリコンを形成するために、前記連結生成物を増幅する工程と、
(f)前記アンプリコンを検出する工程と、
を含み、それにより前記標的核酸を検出する、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明では、「(b)・・・リガーゼ酵素を使用せずに前記第1の連結プローブと前記第2の連結プローブを連結する工程」と特定されており、リガーゼ酵素を使用しない方法であるのに対して、引用発明はリガーゼ酵素を使用する方法である点。
(相違点2)
本願発明では、標的核酸が「複数の異なる」ものであり、そのため、用いられる連結基質が複数提供されること、連結生成物が複数であることが特定されているのに対し、引用発明ではこれらの事項が特定されていない点。
5.判断
(相違点1)について
上記(2-2)(2-5)(2-6)には、酵素によるライゲーションよりも化学的なライゲーションが優れていることが記載されており、特に(2-6)には、化学的なライゲーションでは、高度なマルチプレックス解析(例えば、約5種類を超える標的)のような、高いプローブ濃度を用いる場合において有利であることが示されている。
したがって、引用発明の酵素によるライゲーションに代えて、酵素を使用しない化学的なライゲーションを採用することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、引用発明において化学的なライゲーションを採用すれば、本願発明に特定される(b)工程が存在することになる。
したがって、相違点1は、当業者が容易になし得ることである。
(相違点2)について
上記のとおり、化学的なライゲーションを用いることで、「複数の異なる」標的を検出するマルチプレックス解析が可能となると認められる。実際、上記(2-1)のとおり、引用例2の請求項1には、複数の異なるプローブセットを用いて、複数の異なる標的を検出する方法が記載されている。
したがって、引用発明において化学的なライゲーションを採用し、「複数の異なる」標的を検出すること、そのため、複数のヘミプローブ(連結プローブ)のセットを用いることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明において、引用例1、2から予測できない効果が奏されたとは認められない。
6.審判請求人の主張について
審判請求人は審判請求書において、以下の主張をしている。
「本願発明の「サンプル中の複数の異なる標的核酸を検出する方法」においては、請求項1の工程(a)としての第1及び第2の連結プローブと標的核酸とのハイブリダイゼーションと、請求項1の工程(b)としての第1及び第2の連結プローブの連結とが、標的捕捉プローブのハイブリダイゼーションと標的複合体の捕捉の前に起こります。
このことは、本源明細書段落0203において、「標的複合体の捕捉を使用して、結合していない標的核酸及び連結プローブから標的複合体を分離することができる。すなわち、標的捕捉プローブの使用は、連結生成物の形成に成功したこれらの標的核酸を単離する方法を提供する。」と記載されているとおりであります。
これに対して、引用例1では、連結プローブと標的捕捉プローブの標的核酸へのハイブリダイゼーションは同時に起こると共に、連結プローブの連結はマグネチックビーズへの捕捉の後に起こります。
また、引用例2は、単に、化学連結について教示しているに過ぎませんので、引用例2は、引用例1における本願発明に対する相違点を補填し得る文献といえるものではありません。」
この主張は、本願発明では(b)連結工程、(d)捕捉工程の順序であるが、引用発明では捕捉工程、連結工程の順序であり、工程の順序が異なることを主張していると理解される。
そこで、以下検討する。
まず、本願発明では各工程を含むことは特定されているが、各工程の順序が(a)(b)(c)(d)・・・であることが特定されているとは認められない。
実際、本願明細書の実施例7に記載される方法では、サンプルに標的捕捉プローブとSプローブを添加したあと、加熱、冷却を行ってからLプローブを添加しており、(b)の連結工程と(c)の捕捉プローブのハイブリダイズ工程の順序は、(c)工程の後に(b)工程が行われていると認められる。
また、上記(2-3)(2-4)に記載されるように、化学的ライゲーションは、自発的に生じるものであるから、標的核酸上に2つの連結プローブが並んでハイブリダイズし、一方の連結プローブの3’ともう一方の連結プローブの5’とが近接することで、2つの連結プローブが連結すると認められる。このことは、本願明細書の【0107】段落にも、「[0119] 一態様では、本発明は化学的連結の方法に関し、第1及び第2の連結プローブの連結部分が自発的に反応して、外部リガーゼがない状態で、すなわち外部リガーゼが反応に追加されず、リガーゼを使用せずに反応が進行する状態でプローブを相互に連結するような状態で、「連結基質」を形成するために少なくとも第1及び第2の連結プローブを標的核酸に結合することを含む。」と記載されている。
したがって、本願発明の「(b)第1の複数の連結生成物を形成するために、リガーゼ酵素を使用せずに前記第1の連結プローブと前記第2の連結プローブを連結する工程」のタイミングとは、サンプルと2つの連結プローブとが混合され、サンプル中の標的核酸上に2つの連結プローブが並んでハイブリダイズするタイミングであるといえる。
一方、引用発明において、酵素を用いるライゲーションに代えて化学的なライゲーションを採用すれば、連結工程は、本願発明と同じく、血清(サンプル)と2つのヘミプローブ(連結プローブ)が混合されるタイミングとなるといえる。
確かに、引用発明におけるヘミプローブのリガーゼ(酵素)による連結は、常磁性ビーズへの捕捉・洗浄の後であるが、引用発明において化学的なライゲーションを採用すれば、酵素による連結工程が不要になるのである。
したがって、上記審判請求人の主張は採用できない。
7.小活
したがって、本願発明は引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-008917