特許拒絶査定不服審判
2016-007908
プレフィルドシリンジ用外筒の製造方法、及び射出成形用金型の製造方法
- 審判番号
- 2016-007908
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-284401外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月31日
- 審決日
- 2017年03月21日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ポリプラスチックス株式会社
- 【請求人代理人】正林 真之
- 【請求人代理人】林 一好
- 分類
- P18 .121-WZ (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-284401号「プレフィルドシリンジ用外筒の製造方法、及び射出成形用金型の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 8日出願公開、特開2013-132394号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件出願は、平成23年12月26日の特許出願であって、平成27年9月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月11日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲について補正がなされたが、平成28年2月25日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成28年5月31日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされ、その後、同年12月14日付けで当審から拒絶の理由が通知され、平成29年2月17日に意見書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、上記平成27年11月11日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
環状オレフィン樹脂組成物を射出成形してなるプレフィルドシリンジ用外筒を製造する方法であって、
射出成形用金型を構成するコアの表面粗さRz(十点平均粗さ)が50μm以下であり、さらにダイヤモンドライクカーボン(DLC)、又はCrNから構成される潤滑性硬質皮膜が形成され、さらに前記潤滑性硬質皮膜の表面が研磨された射出成形用金型を用い、
プレフィルドシリンジ用外筒の側壁に対して垂直に入射する波長450nmの光が前記側壁を透過したときの光線透過率が70%以上であるプレフィルドシリンジ用外筒の製造方法。」
第3 引用文献記載の発明又は事項
これに対して、当審での平成28年12月14日付けの拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である特開平8-84773号公報(引用文献1)、特開2001-287227号公報(引用文献2)、及び特開2002-225088号公報(引用文献3)には、以下の発明又は事項が記載されていると認められる。
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「非晶性樹脂製の抜き勾配を有しない注射筒及びその射出成形方法」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
(ア)特許請求の範囲の請求項7
「【請求項7】非晶性樹脂から抜き勾配を有しない樹脂製の注射筒を射出成形する方法であって、該非晶性樹脂として環構造を分子主鎖に組込まれた形態で含有すると共に下記の性状(1)~(5)を備えている非晶性環状ポリオレフィンを用いる成形方法:
(1)熱変形温度(ASTM D648に準拠)70℃以上、(2)熱膨張係数(ASTM D696に準拠;縦横共)≦7×105、(3)成形収縮率(縦横共)[大成化工社法]≦0.8(%)、(4)吸水率[JIS K7209;23℃;水中に1日浸漬]≦0.01(%)及び(5)ガス(O2)透過性(ASTM D3985に準拠)≦60(g/m2・24H)。」
(イ)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抜き勾配を有しない非晶性環状樹脂製注射筒(別称「シリンジ」)及びその射出成形方法であって、非晶性又は低結晶性(「非晶性」と総称することがある)の熱可塑性樹脂製で成形されているものに関する。詳しくは環構造を分子主鎖に組込まれた形態で含有する非晶性環状ポリオレフィンである非晶性樹脂製注射筒及び射出成形方法並びにその応用である薬剤封入注射筒キットに関する。」
(ウ)
「【0032】[注射筒キットAの基本的構成]抜き勾配を有しない非晶性樹脂製注射筒の内部に薬液が封入されたシングルバレル型注射筒キットA。」
(エ)
「【0040】<発明の好適態様>本発明の「抜き勾配を有しない樹脂製注射筒」(「本発明の無勾配注射筒」と略称することがある)は特定の非晶性熱可塑性樹脂を射出成形することによって作成されることを要する。この特定の非晶性熱可塑性樹脂とは、環構造をその分子主鎖に組み込まれた形態で含有する樹脂であって、その化学構造は下記の一般式「化9」(=「化1」~「化8」)で表わされる:
【0041】
【化9】
【0042】[式中、R1~R12は水素、アルキル基及びハロゲンから選ばれる基であって、互に別異であってもよい。更に、R9及びR10から選ばれる1以上がR11及びR12から選ばれる1以上と互に環を形成していてもよい。nは0以上の数である。R5~R8が複数回出現する場合(n≧2の場合)には、それらが互に別異でもよい。]
・・・」
(オ)
「【0044】上掲の各種性状の中で「抜き勾配無し」の射出成形に特に重要なものは熱膨張係数及び成形収縮率である。それに加えて更に、容器という観点で重要な性状としては防湿性、吸水率及び気体透過性を挙げることができる。これに加えて注射筒用の樹脂には光線透過率(上掲には不含)であって、無色容器の場合には波長400~800nmの領域において80%以上を達成すること及び加圧水蒸気滅菌温度である120℃に耐えることが要求される。なお、医薬品容器の場合には厚生省の認可を受けるべきことは当然であることから、その中で要求されている性状には上記の諸性状と重複するものが有り得るが、その儘で考察を進める。」
(カ)
「【0056】図4及び図5は本発明の「勾配無し注射筒」を具体化した薬液封入注射筒の具体的応用例である。図4は通称「シングルバレル」型、図5は通称「ダブルバレル」型の薬液封入注射筒を示す。図から判る様に、「シングルバレル」型とは注射筒全体を単一の区画として薬液を封入したものであるから、1種類の薬液しか収容できない。」
(キ)図面の簡単な説明の図2欄
「【図2】図2は本発明の成形に用いられる環状ポリオレフィンを本発明の射出成形法において用いられる抜き勾配を有しない中心ピン装着金型で成形して得られた抜き勾配無し注射筒の模式的縦断面図である。図2の(a)はピストンが無勾配注射筒の入口に完全に進入した状態を示す。図2の(b)はプランジャーによってピストンが該注射筒の最奥部へ到達した状態を示す。」
(ク)上記記載事項(カ)に「図4及び図5は本発明の「勾配無し注射筒」を具体化した薬液封入注射筒の具体的応用例である。図4は通称「シングルバレル」型、図5は通称「ダブルバレル」型の薬液封入注射筒を示す。」とあることから、引用文献1には、上記記載事項(ア)の「注射筒」の具体例として、「薬液封入注射筒」が示されているといえる。
(2)引用文献1発明
そこで、引用文献1の上記記載事項(ア)ないし(キ)及び上記認定事項(ク)を図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「引用文献1発明」という。)
「環状ポリオレフィン樹脂組成物を射出成形してなる薬液封入注射筒を製造する方法であって、
射出成形法において用いられる抜き勾配を有しない中心ピン装着金型を用い、
薬液封入注射筒に入射する波長400~800nmの光が透過したときの光線透過率が80%以上である薬液封入注射筒の製造方法。」
2 引用文献2
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、「成形用金型及び成形方法」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂成形用金型であって、金型表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.2~3.0μmである成形用金型、及び該金型を使用して離型抵抗力を低下させる樹脂の成形方法に関するものである。」
(イ)
「【0007】本発明の成形用金型の基体となる金属は特に制約はなく、例えばSUS420J2等のステンレス鋼・・・金型の表面硬度に特に制約はないが、本発明が金型の成形品部の表面粗さを特徴とするため、成形中の磨耗による表面粗さの乱れを防ぐ必要性から、ある程度表面硬度を高めておくことが好ましい。このため、金属材料は浸炭焼入れ、高周波焼入れ、表面窒化等の熱処理を行うことも可能である。また本発明には基体となる金型表面に表面処理を施すことも可能である。表面処理の種類に制約はなく、例えばTiN、CrN、TiAlN等のセラミックコーティング、硬質クロム等の電解メッキ及び無電解メッキが挙げられる。この場合表面処理後の表面粗さが重要となる。本発明では、金型表面を研磨、放電、エッチング、シボ加工、手磨き、サンドブラスト等で表面仕上げを行い、表面粗さRzが0.2~3.0μmになるようにすることができる。」
(ウ)
「【0008】樹脂としては、一般に成形可能な樹脂であれば、合成樹脂でも天然に由来する樹脂でも、結晶性であっても、非晶性であっても使用可能である。好ましくは熱可塑性樹脂であり・・・」
(エ)
「【0011】本発明の金型は、本発明の効果が発揮できるものであれば特に制限はなく、射出成形用、押出し成形用、圧縮成形用などに適用できるが、筒型入れ子を有する射出成形用金型に適用すると、特に効果を発揮する。・・・筒部の抜き勾配は、5度以内でも可能であり、特に0~2度でも可能である。」
3 引用文献3
(1)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、「表面処理を施した鏡面仕上げ金型及び成形方法」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】 熱可塑性樹脂用射出成形金型に、金属被膜表面処理、非金属被膜表面処理、又はそれらの複合被膜表面処理を施し、必要に応じて磨きを行った処理金型であって、金型の表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.001~0.5μmである処理金型。
【請求項2】 表面処理が、硬質クロムメッキ処理、窒化クロム処理、窒化チタン処理、窒素を過飽和に固溶したクロム膜処理のいずれか一つである請求項1に記載の処理金型。
・・・
【請求項8】 請求項1~7のいずれかに記載の処理金型を使用して熱可塑性樹脂を射出成形する離型性の改善された成形方法。」
(イ)「【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題点に鑑み、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂、特にガラス、無機フィラー等が含まれていない樹脂において、金型の離型性の向上についてく鋭意探索、検討を行ったところ、金型表面に特定の表面処理を施すことにより製品デザインを変えることなく、離型剤を使用することなく、著しく離型性を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(ウ)
「【0006】本発明に係る表面被膜処理は、(1)一般的な表面処理、又は(2)特異的な表面処理である。
(1)一般的な表面処理としては、電気メッキ、拡散メッキ、蒸着メッキ、無電解メッキ、溶射等の金属被膜処理;CVD、PVD、イオンプレーティング、スパッタリング、真空蒸着などによるセラミックコーティング等の非金属被膜処理、又はそれらの複合被膜処理等が挙げられる。具体的には、硬質クロム等の電解メッキ及び無電解メッキ;窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)、窒化チタンアルミ(TiAlN)等のセラミックコーティング処理等が挙げられる。・・・」
(エ)
「【0008】本発明の金型は、鏡面仕上げを行った金型の表面に、表面処理を行って得られる。表面処理を行う前の金型の表面粗さは、Rz(十点平均粗さ)で表した場合に、Rzが0.001~0.5μm、好ましくは0.001~0.2μmの範囲内である。表面処理を行う前の表面粗さRzが0.5μmより大きすぎると所望の滑らかな表面粗さの範囲でなくなり、また粗すぎて離型がよくなり、表面処理の効果が見いだしにくくなる。表面処理後の表面粗さは表面処理前と殆ど変わらないので、予め表面処理前にほぼ目的の表面粗さにしておくことが重要である。表面処理後の表面粗さは表面処理前と殆ど変わらないので、表面処理を行った後の金型、又はさらに必要に応じて磨きを行った後の金型の表面粗さもまた、Rz(十点平均粗さ)で表した場合に、Rzが0.001~0.5μm、好ましくは0.001~0.2μmの範囲内である。」
(オ)
「【0011】本発明の金型は、本発明の効果が発揮できるものであれば特に制限はなく、射出成形用、押出し成形用、圧縮成形用などに適用できるが、筒型入れ子を有する射出成形用金型に適用すると、特に効果を発揮する。筒型入れ子の形状は・・・筒部の抜き勾配は、5度以内でも可能であり、特に0~2度でも可能である。金型表面は、上記表面粗さRzを示す部分は、キャビティ全面であってもよいが、少なくとも離型性が大きく影響する表面部分、例えば筒型入れ子の表面部分のみであってもよい。」
(カ)
「【0012】本発明の金型により、上記樹脂を成形すると、成形品の表面粗さを小さくしても、離型剤を殆ど使用せずに、多くの場合に全く使用せずに、成形することが可能である。従って、本発明は、食品、薬品、化粧品などの容器;OA・AV機器、電子機器などのカバー、ハウジング、シャーシー類;ランプリフレクター、ランプエクステンションなどの光反射部品;コネクタ、リレーケースなどの電子部品;OA・AV機器、自動車用などの歯車等の成形に、殊に連続成形に有効であり、特に光反射部品やレンズの成形に好ましく用いられる。」
(2)引用文献3事項
引用文献3の上記記載事項(ア)ないし(カ)を技術常識を踏まえて整理すると、引用文献3には以下の事項が記載されていると認められる。(以下「引用文献3事項」という。)
「熱可塑性樹脂を射出成形してなる薬品などの容器を製造する成形方法において、
金型の表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.001~0.5μmであり、さらに離型性を改善するためにCrNのコーティングによる表面処理がなされ、さらに表面処理後に磨きを行った射出成形用金型を用いること。」
第4 対比
本願発明と引用文献1発明とを対比すると、引用文献1発明の「注射筒」が本願発明の「シリンジ用外筒」に相当することは、その機能及び技術常識に照らして明らかであり、同様に「射出成形法において用いられる抜き勾配を有しない中心ピン装着金型」は「射出成形用金型」に相当することも明らかである。
また、引用文献1発明の「注射筒に入射する波長400~800nmの光が透過したときの光線透過率が80%以上である」ことは、本願発明の「シリンジ用外筒の側壁に対して垂直に入射する波長450nmの光が前記側壁を透過したときの光線透過率が70%以上である」ことを充足するといえる。
次に、引用文献1発明の「薬液封入注射筒」は、上記対応関係を踏まえ「薬液封入シリンジ用外筒」と言い改められるところ、一般に「薬液封入シリンジ」は「プレフィルドシリンジ」と同義の用語であることは技術常識であるから(例えば、再公表特許(A1)WO2008/075460には、「【0001】本発明は、薬液を予め注射筒に充填封入したシリンジ製剤(薬液充填封入シリンジ製剤)用シリンジ外筒とその製造方法並びに薬液充填封入シリンジ製剤(所謂「プレフィルドシリンジ製剤」)に関する。」と記載されている。)、これらを踏まえれば、引用文献1発明の「薬液封入注射筒」は、本願発明の「プレフィルドシリンジ用外筒」に相当するということになる。
したがって、本願発明と引用文献1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「環状ポリオレフィン樹脂組成物を射出成形してなるプレフィルドシリンジ用外筒を製造する方法であって、
射出成形用金型を用い、
プレフィルドシリンジ用外筒の側壁に対して垂直に入射する波長450nmの光が前記側壁を透過したときの光線透過率が70%以上であるプレフィルドシリンジ用外筒の製造方法。」
そして、本願発明と引用文献1発明とは、以下の点で相違している。
<相違点>
「射出成形用金型を用い」ることに関し、本願発明は、射出成形用金型を構成するコアの表面粗さRz(十点平均粗さ)が50μm以下であり、さらにダイヤモンドライクカーボン(DLC)、又はCrNから構成される潤滑性硬質皮膜が形成され、さらに前記潤滑性硬質皮膜の表面が研磨された射出成形用金型を用いるのに対し、引用文献1発明が用いる射出成形用金型はそのようなものか不明な点。
第5 相違点の検討
1 <相違点>について
上記第3の3(2)にて述べたように、引用文献3事項は、「熱可塑性樹脂を射出成形してなる薬品などの容器を製造する成形方法において、金型の表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.001~0.5μmであり、さらに離型性を改善するためにCrNのコーティングによる表面処理がなされ、さらに表面処理後に磨きを行った射出成形用金型を用いること。」というものであるところ、これを本願発明の用語で表現すれば、引用文献3事項の「金型の表面粗さRz(十点平均粗さ)」は「射出成形用金型を構成するコアの表面粗さRz(十点平均粗さ)」と表現でき、以下同様に、「CrNのコーティングによる表面処理がなされ」は「CrNから構成される潤滑性硬質皮膜が形成され」と、「さらに表面処理後に磨きを行った」は「さらに潤滑性硬質皮膜の表面が研磨された」と表現できる。
したがって、引用文献3事項は、「熱可塑性樹脂を射出成形してなる薬品などの容器を製造する成形方法において、射出成形用金型を構成するコアの表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.001~0.5μmであり、さらに離型性を改善するためにCrNから構成される潤滑性硬質皮膜が形成され、さらに潤滑性硬質皮膜の表面が研磨された射出成形用金型を用いること。」と言い改めることができる。
ここで、(i)引用文献1発明と引用文献3事項は、いずれも、医療で用いられる液体用の樹脂製品の製造方法である点で技術分野が共通していること、(ii)一般に射出成形において、金型からの離型性を改善することは内在する課題であるところ、殊に刊行物1発明は「抜き勾配を有しない」金型を用いていることから、離型性を改善する必要性が高いこと、(iii)上記第3の2(1)に示すように、刊行物2にも刊行物3事項と同様の技術事項が記載されていることからすれば、刊行物3事項は従来周知の技術事項ともいえることに鑑みれば、引用文献3に接した当業者がこれを引用文献1発明に適用することを試みることに格別困難性はない。
そうした場合、刊行物3事項を適用した引用文献1発明の射出成形用金型を構成するコアの表面粗さRz(十点平均粗さ)は0.001~0.5μmとなり、相違点に係る本願発明の「射出成形用金型を構成するコアの表面粗さRz(十点平均粗さ)が50μm以下」という範囲内のものとなる。
以上を総合すると、引用文献1発明に引用文献3事項を適用することにより、CrNから構成される潤滑性硬質皮膜を形成する等して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというのが相当である。
2 小括
したがって、本願発明は、引用文献1発明、引用文献3事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1発明、引用文献3事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-007908