特許拒絶査定不服審判
2016-007603
ズボン
- 審判番号
- 2016-007603
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-112654外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月06日
- 審決日
- 2016年12月01日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】福山 尚志
- 分類
- P18 .121-WZ (A41D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-112654「ズボン」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本件出願は、平成27年5月16日の特許出願であって、同年8月20日に手続補正がなされ、同年12月24日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年1月29日に手続補正がなされ、同年4月7日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、同年5月6日に本件審判の請求がなされ、当審において、同年6月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月24日に意見書が提出され、同年8月16日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月23日に意見書が提出された。
2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年1月29日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「第一のポケットの内部に第二のポケットを備えているズボン。
前記第一のポケットは、前身頃に設けられている。
前記第一のポケットは、外観で視認することができる。
前記第二のポケットは、前記第一のポケットの口からはみ出しておらず、それが故に、外観で視認することができない。
前記第二のポケットは、前記第一のポケットの内部のうち、足に近い側の面に設けられている。
前記第二のポケットは、前記第二のポケットの口を閉じるための閉口手段を有している。
前記閉口手段は、ファスナー、ボタン又はホックである。
前記第二のポケットの口を覆うフラップを備えている。
前記閉口手段の一部は、前記フラップに設けられている。」
3.拒絶理由に引用された刊行物
これに対し、本件出願前に頒布された刊行物であって、平成28年8月16日付けで通知した拒絶理由に引用された刊行物は、以下のとおりであり、順に刊行物1~7とする。
1.実願昭60-180075号(実開昭62-88718号)のマイクロフイルム
2.実願昭59-54439号(実開昭60-165423号)のマイクロフイルム
3.登録実用新案第3044776号公報
4.実願昭55-15830号(実開昭56-119422号)のマイクロフイルム
5.実願昭53-183042号(実開昭55-99217号)のマイクロフイルム
6.実願昭57-191408号(実開昭59-95114号)のマイクロフイルム
7.実公昭12-13552号公報
4.対比・判断1(刊行物1を主)
(1)刊行物1発明
刊行物1には、以下が記載されている。
(明細書1ページ4~9行)
「ズボン・シャツ等の衣服(1)全般の外側面に小荷物を収納出来る外ポケット(2)を取り付け、該外ポケット(2)の内側に、同じく小荷物が収納できるポケットバック(3)を設け、その開口部(4)には開閉自在な係止器具(5)を装着したことを特徴とするダブルポケット。」
(明細書3ページ17行~4ページ11行)
「本考案の実施例を図面に基づいて説明すれば、ズボン・シャツ等の衣服(1)全般の外側面に小荷物を収納出来る外ポケット(2)を取り付け、該外ポケット(2)の内側に、同じく小荷物が収納できるポケットバック(3)を設け、その開口部(4)には開閉自在な係止器具(5)ファスナー・ベルクロ[登録商標]等を装着することによって常時携帯を必要とする貴重品・パスポート等を鞄等を使用せずとも携帯することが可能となる。従って貴重品・パスポート等をポケットバッグ(3)内に収納しておくことにより、隠しポケットとして盗難防止に効果がある。尚このポケットバッグ(3)へ荷物を収納する際、外ポケット(2)ヘハンカチ等の小荷物を収納しておけば一層の効果がある。なお本考案の形状および取り付け箇所、取り付け方法については何等定めるものではない」
(明細書5ページ10~13行)
「また開口部(4)の開閉自在な係止器具(5)を装着したことにより、国内外での旅行等の際、貴重品・パスポート等を収納しておくことにより盗難等の事故防止が一層効果的となる。」
(第1図、第2図)
ズボンの前見頃に、外ポケット2が設けられ、外観で視認できること、ポケットバッグ3は外ポケット2の口からはみ出しておらず、外観で視認できないこと。
これらを、図面を参照しつつ、技術常識を踏まえ、整理する。
刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されている。
「外ポケット2の内側にポケットバッグ3を備えているズボン。
前記外ポケット2は、前身頃に設けられている。
前記外ポケット2は、外観で視認することができる。
前記ポケットバッグ3は、前記外ポケット2の口からはみ出しておらず、それが故に、外観で視認することができない。
前記ポケットバッグ3は、前記外ポケット2の内側に設けられている。
前記ポケットバッグ3は、前記ポケットバッグ3の開口部4を開閉自在な係止器具5を有している。
前記係止器具5は、ファスナー・ベルクロ等である。」
(2)対比
刊行物1発明の「外ポケット2」は本願発明の「第一のポケット」に相当し、同様に「内側」は「内部」に、「ポケットバッグ3」は「第二のポケット」に、「ポケットバッグ3の開口部4」は「第二のポケットの口」に、「開閉自在な」は「閉じるための」に、「係止器具5」は「閉口手段」に、相当する。
刊行物1発明の「ファスナー・ベルクロ等」と、本願発明の「ファスナー、ボタン又はホック」とは、本願明細書の段落0012の記載からみて、「面ファスナー」である限りにおいて、一致する。
そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「第一のポケットの内部に第二のポケットを備えているズボン。
前記第一のポケットは、前身頃に設けられている。
前記第一のポケットは、外観で視認することができる。
前記第二のポケットは、前記第一のポケットの口からはみ出しておらず、それが故に、外観で視認することができない。
前記第二のポケットは、前記第一のポケットの内部に設けられている。
前記第二のポケットは、前記第二のポケットの口を閉じるための閉口手段を有している。
前記閉口手段は、面ファスナーである。」
そして、以下の点で相違する。
相違点1:第二のポケットの位置について、本願発明は第一のポケットの内部の「足に近い側の面」と特定されているが、刊行物1発明はかかる特定がない点。
相違点2:第二のポケットの閉口手段について、本願発明は「ファスナー、ボタン又はホックである。第二のポケットの口を覆うフラップを備えている。閉口手段の一部は、前記フラップに設けられている。」が、刊行物1発明は「ファスナー・ベルクロ等」であり、フラップを備えていない点。
(3)判断
相違点1について検討する。
本願には、図面が添付されていない。発明の詳細な説明の段落0011には、以下の記載がある。
「第二のポケットは、袋状に形成されている第一のポケットの内部のうち、足に近い側の面に設けられていることが好ましい。」
第一のポケットとは、袋状に形成されている「通常のポケット」のことである(段落0008)から、ポケットの外部側の布地と身体側の布地から構成されている。すなわち、第一のポケットの内部は、外部側の面と身体側の面とから構成される。
そうすると、本願発明において、「足に近い側の面」とは、第一のポケットの内部の「身体側の面」と言うことができ、この点、請求人も平成28年9月23日の意見書で認めている。
刊行物1の第2図、特にポケットバッグ3の下部と衣服1との関係、によれば、第二のポケット(ポケットバッグ3)は、第一のポケット(外ポケット2)内部の「身体側の面」である衣服1に設けられていることが看取できる。
したがって、この点は、実質的相違点ではない。
仮に、刊行物1の第2図からは関係が看取できないとしても、第二ポケットを第一のポケットの内部の「身体側の面」に設けることは、刊行物2(第2図)、刊行物7(第1図)に示すごとく周知であり、周知技術の選択にすぎない。
相違点2について検討する。
刊行物2には、以下が記載されている。
(実用新案登録請求の範囲)
「内側をかくし袋(1)、外側を普通のポケット(2)と二重にし、内側のかくし袋(1)には、蓋(3)を設け、蓋(3)とかくし袋(1)の上縁(5)にマジックテープ(登録商標)(4)をつけて密着するようにしたズボンのかくし袋つき尻ポケット。」
(明細書1ページ13~18行)
「従来、ズボンの尻ポケツトは一つ袋であり、・・・盗難や紛失の危険性が非常に大きいという欠点があつた。本案は、この欠点を除くために考案されたもの」
(明細書2ページ16~18行)
「・・・、ズボンのかくし袋つき尻ポケツトは、貴重品の保持、紛失、盗難予防の上で画期的な効果が得られる」
刊行物3には、以下が記載されている。
「【0017】 ・・・。ポケット16は、通常の携帯電話を収納できる横幅と長さの平面形状を有し、・・・。ポケット16の細幅フラップ18は、上縁12に対応して上端部を斜めに縫着し、該フラップの裏側およびポケット上方に面ファスナ19の接合面材をそれぞれ縫着する。細幅フラップ18は、面ファスナ19によって携帯電話が取り出しやすいように容易に開閉自在である。」
「【0021】 ・・・。脇ポケットの少なくとも一方には、携帯電話用などの細長いポケットを縫着するので便利であり、面ファスナ付きの細幅フラップを取り付けることで携帯電話が作業中に抜け出ることがなく、その収納・取り出しも容易になる。」
刊行物2の「かくし袋(1)」は本願発明の「第二のポケット」に相当し、同様に、「蓋(3)」は「フラップ」に、「マジックテープ(4)」は「ファスナー、ボタン又はホック」に、相当する。そして、「マジックテープ(4)」であるから、「蓋(3)」(フラップ)に、閉口手段の一部が設けられていることは明らかである。
刊行物3の「ポケット16」は本願発明の「第二のポケット」に相当し、同様に、「細幅フラップ18」は「フラップ」に、「面ファスナ19」は「ファスナー、ボタン又はホック」に、相当する。そして、「フラップの裏側・・・に面ファスナ19の接合面材をそれぞれ縫着」であるから、「細幅フラップ18」(フラップ)に、面ファスナ19の接合面材(閉口手段の一部)が設けられている。
すなわち、刊行物2、3のいずれにも、閉口手段が「面ファスナーである。第二のポケットの口を覆うフラップを備えている。閉口手段の一部は、前記フラップに設けられている。」という、相違点2に係る閉口手段が記載されている。しかも、その技術的意義は、刊行物2のものは「貴重品の保持、紛失、盗難予防」、刊行物3のものは「抜け出ること」の防止のためのものである。
刊行物1発明は、盗難等の事故防止のためのものであるから、盗難等の事故防止をより確実にするという課題が存在しており、相違点2に係る閉口手段により、更なる盗難防止が図られる。また、相違点2に係る閉口手段により、抜け出ること、すなわち、落下、紛失の防止効果も生じる。
刊行物2のものは、「尻ポケット」であるが、ズボンの前身頃に、フラップ付き二重ポケットを有するものは、刊行物3(図1、図4)、刊行物4(第2図)、刊行物5(第4図)、刊行物6(第4図、第5図)に示すごとく周知であるから、盗難等の事故防止、落下、紛失の防止のため、刊行物2の尻ポケットの閉口手段を、刊行物1発明に適用することに困難性は認められない。
また、刊行物3のものは、第二のポケット(16)が外側であるが、相違点2に係る閉口手段自体は、第二のポケットが内側か外側かというポケットの位置にかかわらず、採用可能なものであるから、盗難等の事故防止、落下、紛失の防止のため、刊行物3の閉口手段を、刊行物1発明に適用することに困難性は認められない。
請求人は、刊行物2のものは「尻ポケット」であり前提が異なる旨、主張する。
しかし、ズボンのポケットにおける盗難等の事故防止、落下、紛失の防止という課題は、前身頃のポケット、尻ポケット、いずれにも妥当する。刊行物2の尻ポケットにおける閉口手段を、刊行物1発明に適用できないとする理由はない。
請求人は、また、前身頃のポケット内にフラップが存在すると履き心地が犠牲になるから、刊行物2の閉口手段の適用は阻害要因がある旨、主張する。
しかし、被服には、履き心地、費用、保温性、安全性、耐久性、美観等、求められる機能は多様であり、いかなる機能を重視するかは、需用者、用途により異なることは、以下に例示するように、技術常識である。
例1.日本繊維機械学会編「被服科学総論(下巻)」昭和56年10月12日、日本繊維機械学会
(第3ページのC)
「被服をどのような側面から評価するか、これは当然評価の目的、評価者の立場によって選ばれる項目が変る。」
(第4ページの表1.2)
「消費者の立場からの評価構造」、「費用、安全性、快適性、適応性、装身性、耐久性、使い勝手」
例2.小川安朗ほか編「被服学事典」1986年4月20日初版第6刷、朝倉書店
(第21~22ページの「被服設計」)
「被服設計の過程は、(1)被服の目的・用途の検討、着装の対象となる人・・の吟味、着装する場・・の調査などによる基礎条件の設定、(2)・・・」
現に、刊行物1発明においては、前身頃の外ポケット2の内側にポケットバッグ3を設けており、ポケットバッグ3がないものと比較して、履き心地が犠牲になるものの、盗難等の事故防止のために、ポケットバッグ3を設けている。刊行物4のものにおいても、前身頃の開口ポケット2の内部に開口ポケット袋4を設けており、開口ポケット袋4がないものと比較して、履き心地が犠牲になるものの、盗難等の事故防止のために、開口ポケット袋4を設けている。刊行物5、6のものにおいても、同様である。
すなわち、盗難等の事故防止、落下、紛失の防止を重視し、履き心地の更なる犠牲は、程度問題にすぎず、適用の阻害要因となるものではなく、ズボン等被服の需用者、用途に応じて定められる事項である。
請求人は、刊行物3のものは、「物の出し入れを容易とするため」に、第二のポケットを外側に設けたものであるから、内側とする発想がない旨、主張する。
しかし、刊行物3の段落0021に「面ファスナ付きの細幅フラップを取り付けることで携帯電話が作業中に抜け出ることがなく、その収納・取り出しも容易になる」とあるとおり、細幅フラップにより、抜け防止、すなわち盗難等の事故防止ができることは明らかである。
請求人の主張は、いずれも根拠がない。
よって、本願発明は、刊行物1発明に、刊行物2記載事項又は刊行物3記載事項、及び周知技術を適用し、容易想到である。
5.むすび
本願発明は、刊行物1発明に、刊行物2記載事項又は刊行物3記載事項、及び周知技術を適用し、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-007603