特許拒絶査定不服審判
2016-007567
遊技機
- 審判番号
- 2016-007567
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-145558外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月24日
- 審決日
- 2017年01月23日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-145558「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 4日出願公開、特開2014-223450〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成24年1月13日に出願した特願2012-4858号の一部を平成26年7月16日に新たな特許出願としたものであって,平成27年7月30日付けで拒絶理由が通知され,それに対し,同年9月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成28年2月22日付けで拒絶査定がなされ,それに対して,同年5月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。
第2 平成28年5月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年5月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1~2の記載を含む補正であり,平成27年9月30日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ,以下のとおりである(下線部は補正を示す。)。
(補正前:平成27年9月30日付けの手続補正)
「【請求項1】
開始条件の成立に基づいて可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって,
前記遊技機における遊技を制御する遊技制御手段と,
前記遊技制御手段からの情報に基づいて演出を制御する演出制御手段と,を備え,
前記遊技制御手段は,
前記可変表示の可変表示パターンを決定する可変表示パターン決定手段と,
前記開始条件が成立していない前記可変表示について保留記憶として記憶する保留記憶手段と,
前記開始条件が成立する以前に,前記可変表示に関する開始前情報を出力する開始前情報出力手段と,
通常状態よりも前記有利状態に制御され易い特別状態に制御可能な状態制御手段と,を含み,
前記可変表示パターン決定手段は,前記特別状態が終了するときに,前記特別状態が終了しないときとは異なる可変表示パターンに決定可能であり,
前記演出制御手段は,
前記開始前情報に基づいて,該開始前情報に対応した前記可変表示が所定の状態となる可能性を予告する予告演出を,該可変表示の前記開始条件が成立する以前に実行する予告演出実行手段と,
前記開始前情報を正常に入力することができなかった場合に,前記予告演出を制限する予告演出制限手段と,を含む,
ことを特徴とする遊技機。」
(補正後:本件補正:平成28年5月24日付け手続補正)
「【請求項1】
開始条件の成立に基づいて可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって,
前記遊技機における遊技を制御する遊技制御手段と,
前記遊技制御手段からの情報に基づいて演出を制御する演出制御手段と,を備え,
前記遊技制御手段は,
前記可変表示の可変表示パターンを決定する可変表示パターン決定手段と,
前記開始条件が成立していない前記可変表示に関する情報を保留記憶として記憶する保留記憶手段と,
前記開始条件が成立する以前に,前記可変表示に関する開始前情報を出力する開始前情報出力手段と,
通常状態よりも前記有利状態に制御され易い特別状態に制御可能な状態制御手段と,を含み,
前記可変表示パターン決定手段は,前記特別状態が終了するときに,前記特別状態が終了しないときとは異なる可変表示パターンに決定可能であり,
前記演出制御手段は,
前記開始前情報に基づいて,該開始前情報に対応した前記可変表示が所定の状態となる可能性を予告する予告演出を,該可変表示の前記開始条件が成立する以前に実行する予告演出実行手段と,
前記開始前情報を正常に入力することができなかった場合に,前記予告演出を制限する予告演出制限手段と,を含み,
前記有利状態に制御されるときに前記予告演出を制限可能であることを特徴とする遊技機。」
2.補正の適否
補正前の請求項1に記載の「前記可変表示について保留記憶として記憶する」を,「前記可変表示に関する情報を保留記憶として記憶する」にする補正は,「可変表示について」「記憶する」対象を「可変表示に関する情報」に具体的に限定するものであるから,限定的減縮を目的とする補正である。
また,補正前の請求項1に,「前記有利状態に制御されるときに前記予告演出を制限可能である」との記載を付加する補正は,補正前の「予告演出」と「有利状態」とを関連づけて,「演出制御手段」が「有利状態」に制御されるときに「予告演出」を制限可能であることを付加して限定するものであるから,限定的減縮を目的とする補正である。
補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また,本件補正は,新規事項を追加するものではない。
3.独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か,について以下に検討する。
(1)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願遡及日前に頒布された特開2011-160842号公報(以下,「刊行物」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(ア)「【請求項1】
所定の始動条件の成立に応じて複数種類の識別情報を変動表示させ,表示結果を導出することで遊技の結果を確定する変動表示装置を備え,遊技の結果が特定遊技結果となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機であって,
遊技の進行を制御するとともに,該遊技の進行に応じたコマンドを送信する遊技制御手段と,
前記遊技制御手段から送信されたコマンドを受信し,前記変動表示装置において識別情報を変動表示させ,表示結果を導出させる変動表示演出を含む演出の実行を,該受信したコマンドに基づいて制御する演出制御手段とを備え,
前記遊技制御手段は,
前記始動条件が成立したときに,前記変動表示装置での変動表示を行う権利を所定数まで記憶する保留記憶手段と,
前記始動条件が成立したときに,前記保留記憶手段に記憶された権利に基づいて実行される変動表示における結果および/または経過を先読み予告するのに必要な所定の先読み情報を含む開始前先読みコマンドを送信する開始前コマンド送信手段とを備え,
前記演出制御手段は,
前記開始前先読みコマンドを受信したときに,該開始前先読みコマンドに含まれる先読み情報に基づいて,該開始前先読みコマンドに対応した変動表示における結果および/または経過を先読み予告するか否かを決定する非特定先読み予告決定手段と,
前記非特定先読み予告決定手段の決定結果に従って,前記開始前先読みコマンドに含まれる先読み情報に基づいて前記先読み予告を実行する非特定先読み予告実行手段と,
前記開始前コマンド送信手段から送信された開始前先読みコマンドを受信したときに,該開始前先読みコマンドが示す先読み情報を所定の記憶領域に記憶させる手段であって,各々の先読み情報を少なくとも対応する変動表示が開始されるまでは記憶させておく先読み情報記憶手段と,
予め定められた特定条件が成立したときに,前記先読み情報記憶手段により前記所定の記憶領域に記憶された前記先読み情報を参照して,該所定の記憶領域に記憶された先読み情報に対応した変動表示における結果および/または経過を先読み予告するか否かを決定する特定先読み予告決定手段と,
前記特定先読み予告決定手段の決定結果に従って,前記所定の記憶領域に記憶された前記先読み情報に対応した変動表示における結果および/または経過を先読み予告する特定先読み予告実行手段を含む
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記遊技制御手段は,
前記保留記憶手段に記憶された権利により行う変動表示において特定遊技結果とするか否かを,該権利による表示結果を導出するよりも前に決定する特定決定手段と,
少なくとも前記特定決定手段の決定結果に応じて,前記識別情報の変動表示の表示結果が導出されるまでに前記変動表示装置において実行される識別情報の変動パターンを複数種類の変動パターンのうちから選択する変動パターン選択手段とをさらに備え,
前記先読み情報は,前記特定決定手段により前記特定遊技結果とする旨が決定されるか否かを特定可能な特定決定情報と,前記変動パターン選択手段により選択される変動パターンが特定の変動パターンであるかを特定可能な変動選択情報とを含み,
前記特定先読み予告決定手段は,前記特定遊技状態に制御されているときに,前記先読み情報に含まれる前記特定決定情報と前記変動選択情報との何れか一方に基づいて,前記先読み予告を実行するか否かを決定し,
前記非特定先読み予告決定手段は,前記特定遊技状態に制御されていないときに,前記先読み情報に含まれる前記特定決定情報と前記変動選択情報との何れか他方に基づいて,前記先読み予告を実行するか否かを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記開始前コマンド送信手段は,前記始動条件が成立したときに,該始動条件の成立までで前記保留記憶手段に記憶された権利の数を含む開始前権利数コマンドと,前記開始前先読みコマンドとを,それぞれ別個のコマンドとして順次送信し,
前記演出制御手段は,
前記開始前権利数コマンドと前記開始前先読みコマンドとを所定の時間以内の間隔で受信したか否かを判定する受信間隔判定手段と,
前記受信間隔判定手段により前記所定の時間以内の間隔で受信していないと判定されたときに,前記開始前先読みコマンドに含まれる先読み情報に基づいて前記先読み予告決定手段が先読み予告を実行する旨を決定することを禁止する先読み予告禁止手段とをさらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の遊技機。」
(イ)「【0012】
上記遊技機では,遊技の進行を制御する遊技制御手段と演出の実行を制御する演出制御手段とに分かれて制御手段が構成され,遊技の進行に応じて遊技制御手段から送信されるコマンドに基づいて演出制御手段により演出の実行が制御されるものとなっている。ここで,遊技制御手段においては,始動条件が成立したときに,該始動条件の成立に対して即座に変動表示が実行される場合(先に成立した始動条件に基づく変動表示が実行されていない場合)を除いて変動表示装置での変動表示を行う権利が保留記憶手段に保留記憶されるが,このときに先読み情報を含む開始前先読みコマンドを,演出制御手段へと送信するものとなっている。
・・・
【0018】
ここで,前記特定決定情報に基づいて前記先読み予告を実行するか否かが決定された場合には,前記保留記憶手段に記憶された権利のうちに前記特定遊技結果とする旨が決定される権利が含まれているか否かが先読み予告されるものとなり(先読み予告では,保留記憶中に大当たりとなるものが含まれているかが予告される),前記変動選択情報に基づいて前記先読み予告を実行する旨が決定された場合には,前記保留記憶手段に記憶された権利のうちに前記特定の変動パターンが選択される権利が含まれているか否かが先読み予告されるものとなる(先読み予告演出では,保留記憶中にスーパーリーチとなるものが含まれているかが予告される)。」
(ウ)「【0021】
ここで,
前記遊技制御手段が,前記特定遊技状態が終了した後に,前記特定決定手段が前記特定遊技結果とする旨を決定する確率を通常遊技状態よりも高くする確率変動状態(確率変動状態)に遊技状態を制御する確率変動状態制御手段(CPU56)をさらに備える場合においては,
前記特定先読み予告決定手段は,前記先読み情報に含まれる前記特定決定情報に基づいて,前記先読み予告を実行するか否かを決定し,
前記非特定先読み予告決定手段は,前記先読み情報に含まれる前記変動選択情報に基づいて,前記先読み予告を実行するか否かを決定するものとすることが好ましい。
【0022】
なお,前記確率変動状態制御手段は,該特定遊技状態の終了からの変動表示の実行回数が特定回数(9回または10回)となるまで,前記確率変動状態に制御するものとすることができる。
この場合において,前記特定回数は,前記所定数以上であることが好ましい。
・・・
【0025】
上記遊技機において,
前記開始前コマンド送信手段は,前記始動条件が成立したときに,該始動条件の成立までで前記保留記憶手段に記憶された権利の数を含む開始前権利数コマンド(始動入賞コマンドA101,始動入賞コマンドB102)と,前記開始前先読みコマンドとを,それぞれ別個のコマンドとして順次送信するものであってもよい。この場合において,
前記演出制御手段は,
前記開始前権利数コマンドと前記開始前先読みコマンドとを所定の時間以内の間隔で受信したか否かを判定する受信間隔判定手段(表示制御基板80の表示制御用CPU)と,
前記受信間隔判定手段により前記所定の時間以内の間隔で受信していないと判定されたときに,前記開始前先読みコマンドに含まれる先読み情報に基づいて前記先読み予告決定手段が先読み予告を実行する旨を決定することを禁止する先読み予告禁止手段とをさらに備えるものとすることができる(始動入賞コマンドA101または始動入賞コマンドB102の受信から所定時間以内に始動入賞コマンドC103を受信していなければ,対応する変動表示を先読み予告演出の対象としない:図7)。」
(エ)「【0038】
上記遊技機は,
前記始動条件が成立したときに,所定の数値範囲内で所定の数値データを更新する数値データ更新手段から,前記識別情報の変動表示が停止されるまでに前記変動表示装置において行われる識別情報の変動パターンを選択するための変動パターン決定用数値データ(変動パターン判定用乱数)とを含む数値データを抽出する数値データ抽出手段(CPU56)と,
前記始動条件が成立したときに,前記変動表示装置での変動表示を行う権利を所定数まで記憶する手段であって,前記数値データ抽出手段により抽出された数値データを該権利として記憶する保留記憶手段(RAM55の保留記憶バッファには,始動入賞時に抽出した各種乱数を格納)と,
前記特定決定手段の決定結果と,前記識別情報の変動表示が開始されるときに前記保留記憶手段に記憶されている権利の数と,前記数値データ抽出手段により抽出された前記変動パターン決定用数値データの値とに基づいて(ハズレ変動パターンを選択する乱数の範囲は,変動表示の開始時の保留記憶数が2以下か3以上かで異なる:図4),前記変動パターン(変動パターン)を決定する変動パターン選択手段(表示制御基板80の表示制御用CPU)とをさらに備え,
前記保留記憶手段は,前記数値データ抽出手段により抽出された数値データを,前記変動表示装置での変動表示を行う権利として記憶するものとしてもよい(RAM55の保留記憶バッファには,始動入賞時に抽出した各種乱数を格納)。この場合において,
前記特定変動パターンに対応した判定値は,前記識別情報の変動表示が開始されるときに前記保留記憶手段に記憶されている権利の数に関わらずに,同一判定値が設定され(スーパーリーチの変動パターンを選択する乱数の範囲は,保留記憶数が2以下のときも3以上のときも同じ:図4),
前記特定変動パターンと異なる非特定変動パターンに対応した判定値は,前記識別情報の変動表示が開始されるときに前記保留記憶手段に記憶されている権利の数に応じて異なる判定値が設定されたものとすることができる(非リーチハズレ,ノーマルリーチハズレの変動パターンを選択する乱数の範囲は,保留記憶数が2以下のときと3以上のときとで異なる:図4)。」
(オ)「【0062】
可変表示装置9の表示領域のうちの下部の表示領域に,始動入賞口14a,14bに遊技球が入り始動条件が成立したが未だ特別図柄表示器10a,10bの開始条件(例えば,前回の特別図柄の変動表示の終了,大当たり遊技状態の終了)が成立していない始動条件の成立回数として後述する主基板31のRAM55(図2参照)に記憶された保留記憶を表示する保留記憶数表示手段として特別図柄保留記憶表示部11が設定されている。」
(カ)「【0111】
一方,大当たり遊技状態が終了した後の9回目または10回目(大当たりの種別による),すなわち確率変動状態に制御されるラスト1回の変動表示では,ラストチャンス演出が実行されるものとなっている。このラストチャンス演出を実行する時間を確保するため,確率変動状態のラスト1回の変動表示では,決定された変動パターンの種別に関わらずに,必ず18秒以上の変動時間を要し,最初の飾り図柄の変動停止が8秒以降となる変動パターンだけが選択されるように変動パターンの振り分けがなされている。
【0112】
また,確率変動状態に制御されるラスト1回の変動表示における選択で振り分けられる変動パターンには,確率変動状態に制御されるラスト1回以外の変動表示における選択では振り分けられることのない変動パターンが含まれている。非リーチハズレで変動時間が18秒ある変動パターンには,確率変動状態に制御されるラスト1回の変動表示の選択でしか振り分けられることはない。」
(キ)「【0115】
前述したとおり,特別図柄表示器10a,10bにおいて特別図柄が変動表示されるときにおいては,可変表示装置9において飾り図柄が変動表示される。特別図柄表示器10a,10bにおける特別図柄の変動表示は,開始条件の成立によって直ちに開始されるものとなるが,可変表示装置9における飾り図柄の変動表示は,開始条件の成立によって直ちに開始されるのではなく,開始条件の成立から一定の遅延時間を経過してから開始されるものとなっている。なお,特別図柄の変動表示は,開始条件が成立してから選択された変動パターンに応じて定められた変動表示時間を経過するまで実行されることとなる。」
(ク)「【0120】
そこで,この実施の形態にかかるパチンコ遊技機1では,このような遊技者の期待感を煽るために,飾り図柄の変動表示が行われている間には保留記憶により次以降に行われる変動でスーパーリーチとなる可能性があることを報知する先読み予告演出を行うものとしている。また,大当たりラウンド演出のエンディング演出が実行されている間に,始動入賞口14a,14bについての保留記憶中に大当たりとなるものが含まれているかどうかを先読み予告するものとしている。なお,先読み予告演出と先読み予告は,別のものを意味することに注意を要する。
【0121】
飾り図柄の変動表示が行われている間に実行される先読み予告演出は,先読み予告演出の対象となる変動表示の始動入賞後,開始条件の成立前に終了した変動表示において「リンゴ」が可変表示装置9に1つ以上停止されたときに,次の変動表示(先読み予告演出の対象となる変動表示,または先読み予告演出の対象となる変動表示の開始条件が成立する前に実行される別の変動表示)が開始される前に「リンゴ」を所定のキャラクタ図柄に変更して表示させることにより行われる。」
(ケ)「【0158】
また,始動入賞コマンドの生成や送受信における異常が発生していないと考えられる場合や,始動入賞コマンドを受信した時点で確率変動状態に制御されていないときであっても,先に受信した始動入賞コマンドに対応した変動表示(すなわち,保留記憶されている変動表示)に,既に先読み予告演出の対象とされている変動表示,或いは大当たりとなることが決定される変動表示が含まれている場合には,今回受信した始動入賞コマンドに対応した変動表示を,必ず先読み予告演出の対象としないことと決定し,先読み予告演出の対象とすることと決定することはない。」
(コ)上記(ア)の【請求項1】には,複数種類の識別情報を変動表示させ,遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御する遊技機,上記(キ)の段落【0115】には,変動表示は,開始条件の成立によって開始されること,上記(ク)の段落【0120】には,パチンコ遊技機1,とが記載されていることから,刊行物には,開始条件の成立によって識別情報の変動表示が開始され,遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御するパチンコ遊技機1,が記載されているといえる。
(サ)上記(ア)の【請求項1】には,変動表示を行う権利を所定数まで記憶する保留記憶手段,上記(エ)の段落【0038】には,識別情報の変動パターンを選択するための変動パターン決定用数値データとを含む数値データを該権利として記憶する保留記憶手段,上記(オ)の段落【0062】には,保留記憶は,開始条件が成立していない始動条件の成立回数として記憶されること,とが記載されており,刊行物には,開始条件が成立していない変動表示の識別情報の変動パターンを選択するための変動パターン決定用数値データとを含む数値データを,変動表示を行う権利として記憶する保留記憶手段,が記載されているといえる。
(シ)上記(ア)の【請求項1】には,変動表示における結果を先読み予告するのに必要な所定の先読み情報を含む開始前先読みコマンドを送信する開始前コマンド送信手段,上記(イ)の段落【0012】には,変動表示を行う権利が保留記憶手段に保留記憶されるが,このときに先読み情報を含む開始前先読みコマンドを演出制御手段へと送信すること,上記(オ)の段落【0062】には,保留記憶は開始条件が成立していない始動条件の成立回数として記憶されること,とが記載されており,開始条件が成立していないときは,開始条件が成立する前であることは自明であるから,刊行物には,開始条件が成立する前に,変動表示における結果を先読み予告するのに必要な所定の先読み情報を含む開始前先読みコマンドを送信する開始前コマンド送信手段,が記載されていることは明らかである。
(ス)上記(ア)の【請求項1】には,先読み情報に対応した変動表示における結果を先読み予告する特定先読み予告実行手段,上記(イ)の段落【0018】には,特定遊技結果とする旨が決定される権利が含まれているか否かが先読み予告されること,上記(ク)の段落【0121】には,先読み予告演出は,先読み予告演出の対象となる変動表示の始動入賞後,開始条件の成立前に行われること,とが記載されていることから,刊行物には,開始前先読みコマンドが示す先読み情報に対応した変動表示における結果が特定遊技結果か否かを,当該変動表示の開始条件の成立前に先読み予告する特定先読み予告実行手段,が記載されているといえる。
(セ)上記(ア)の【請求項3】には,開始前コマンド送信手段は,開始前権利数コマンドと,前記開始前先読みコマンドとを,それぞれ別個のコマンドとして順次送信し,演出制御手段は,前記開始前権利数コマンドと前記開始前先読みコマンドとが所定の時間以内の間隔で受信していないと判定されたときに,前記開始前先読みコマンドに含まれる先読み情報に基づいて前記先読み予告決定手段が先読み予告を実行する旨を決定することを禁止する先読み予告禁止手段を備えること,が記載されている。そして,開始前権利数コマンドと開始前先読みコマンドとが所定の時間以内の間隔で受信していないと判定されたときとは,開始前先読みコマンドを正常に受信していないと判定したときであるといえるから,刊行物には,開始前先読みコマンドを正常に受信していないと判定したときに,前記開始前先読みコマンドに含まれる先読み情報に基づいて前記先読み予告決定手段が先読み予告を実行する旨を決定することを禁止する先読み予告禁止手段,が記載されているといえる。
(ソ)上記(ウ)の段落【0025】には,開始前先読みコマンドは,始動入賞コマンドC103に対応すること,上記(ケ)の段落【0158】には,保留記憶されている変動表示に大当たりとなることが決定される変動表示が含まれている場合には,受信した始動入賞コマンドに対応した変動表示を先読み予告演出の対象としないこと,とが記載されていることから,刊行物には,保留記憶されている変動表示に大当たりとなることが決定される変動表示が含まれている場合には,受信した開始前先読みコマンドに対応した変動表示を先読み予告演出の対象としない,ことが記載されていることは明らかである。
上記の記載事項(ア)~(ケ),及び上記の認定事項(コ)~(ソ)から,刊行物には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「開始条件の成立によって識別情報の変動表示が開始され,遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御するパチンコ遊技機1であって,
遊技の進行を制御する遊技制御手段と,
前記遊技制御手段から送信されたコマンドを受信し,演出の実行を,該受信したコマンドに基づいて制御する演出制御手段とを備え,
前記遊技制御手段は,
識別情報の変動パターンを選択する変動パターン選択手段と,
開始条件が成立していない変動表示の識別情報の変動パターンを選択するための変動パターン決定用数値データとを含む数値データを,変動表示を行う権利として記憶する保留記憶手段と
開始条件が成立する前に,変動表示における結果を先読み予告するのに必要な所定の先読み情報を含む開始前先読みコマンドを送信する開始前コマンド送信手段と,
特定遊技結果とする旨を決定する確率を通常遊技状態よりも高くする確率変動状態に遊技状態を制御する確率変動状態制御手段と,を備え,
確率変動状態に制御されるラスト1回の変動表示における選択で振り分けられる変動パターンには,確率変動状態に制御されるラスト1回以外の変動表示における選択では振り分けられることのない変動パターンが含まれており,
前記演出制御手段は,
開始前先読みコマンドが示す先読み情報に対応した変動表示における結果が特定遊技結果か否かを,当該変動表示の開始条件の成立前に先読み予告する特定先読み予告実行手段と,
開始前先読みコマンドを正常に受信していないと判定したときに,前記開始前先読みコマンドに含まれる先読み情報に基づいて前記先読み予告決定手段が先読み予告を実行する旨を決定することを禁止する先読み予告禁止手段と,を備え,
保留記憶されている変動表示に大当たりとなることが決定される変動表示が含まれている場合には,受信した開始前先読みコマンドに対応した変動表示を先読み予告演出の対象としない,
パチンコ遊技機1。」
(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「開始条件」,「識別情報の変動表示」,「特定遊技状態」及び「パチンコ遊技機1」は,それぞれ本願補正発明の「開始条件」,「可変表示」,「有利状態」及び「遊技機」に相当する。
したがって,引用発明の「開始条件の成立によって識別情報の変動表示が開始され,遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御するパチンコ遊技機1」は,本願補正発明の「開始条件の成立に基づいて可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。
(b)引用発明の「遊技の進行を制御する遊技制御手段」は,本願補正発明の「前記遊技機における遊技を制御する遊技制御手段」に相当する。
(c)引用発明の「コマンド」及び「演出」は,それぞれ本願補正発明の「情報」及び「演出」に相当する。
このことから,引用発明の「前記遊技制御手段から送信されたコマンドを受信し,演出の実行を,該受信したコマンドに基づいて制御する演出制御手段」は,本願補正発明の「前記遊技制御手段からの情報に基づいて演出を制御する演出制御手段」に相当する。
(d)引用発明の「変動パターン」は,本願補正発明の「可変表示パターン」に相当する。
そして,引用発明の変動パターンを「選択する」ことは,変動パターンを選択して決定することに他ならないから,引用発明の「識別情報の変動パターンを選択する変動パターン選択手段」は,本願補正発明の「前記可変表示の可変表示パターンを決定する可変表示パターン決定手段」に相当する。
(e)引用発明の「開始条件が成立していない変動表示」,「識別情報の変動パターンを選択するための変動パターン決定用数値データとを含む数値データ」及び「変動表示を行う権利」は,それぞれ本願補正発明の「前記開始条件が成立していない前記可変表示」,「(前記可変表示に)関する情報」及び「保留記憶」に相当する。
したがって,引用発明の「開始条件が成立していない変動表示の識別情報の変動パターンを選択するための変動パターン決定用数値データとを含む数値データを,変動表示を行う権利として記憶する保留記憶手段」は,本願補正発明の「前記開始条件が成立していない前記可変表示に関する情報を保留記憶として記憶する保留記憶手段」に相当する。
(f)引用発明の「変動表示における結果を先読み予告するのに必要な所定の先読み情報を含む開始前先読みコマンド」は,本願補正発明の「前記可変表示に関する開始前情報」に相当する。
このことから,引用発明の「開始条件が成立する前に,変動表示における結果を先読み予告するのに必要な所定の先読み情報を含む開始前先読みコマンドを送信する開始前コマンド送信手段」は,本願補正発明の「前記開始条件が成立する以前に,前記可変表示に関する開始前情報を出力する開始前情報出力手段」に相当する。
(g)引用発明の「通常遊技状態」及び「確率変動状態」は,それぞれ本願補正発明の「通常状態」及び「特別状態」に相当するから,引用発明の「特定遊技結果とする旨を決定する確率を通常遊技状態よりも高くする確率変動状態に遊技状態を制御する確率変動状態制御手段」は,本願補正発明の「通常状態よりも前記有利状態に制御され易い特別状態に制御可能な状態制御手段」に相当する。
(h)引用発明の「確率変動状態に制御されるラスト1回の変動表示」及び「確率変動状態に制御されるラスト1回以外の変動表示」は,それぞれ本願補正発明の「特別状態が終了するとき」の「可変表示」及び「特別状態が終了しないとき」の「可変表示」に相当する。
そして,引用発明の「確率変動状態に制御されるラスト1回以外の変動表示における選択では振り分けられることのない変動パターン」は,本願補正発明の「前記特別状態が終了しないときとは異なる可変表示パターン」に相当する。
以上より,引用発明の「確率変動状態に制御されるラスト1回の変動表示における選択で振り分けられる変動パターンには,確率変動状態に制御されるラスト1回以外の変動表示における選択では振り分けられることのない変動パターンが含まれ」ることは,当該ラスト1回の変動表示において,当該ラスト1回以外の変動表示で選択される変動パターンとは異なる変動パターンに決定可能であることに他ならないから,本願補正発明の「前記可変表示パターン決定手段は,前記特別状態が終了するときに,前記特別状態が終了しないときとは異なる可変表示パターンに決定可能であ」ることに相当する。
(i)引用発明の「特定遊技結果か否か」及び「変動表示の開始条件の成立前」は,それぞれ本願補正発明の「所定の状態となる可能性」及び「該可変表示の前記開始条件が成立する以前」に相当する。
したがって,引用発明の「開始前先読みコマンドが示す先読み情報に対応した変動表示における結果が特定遊技結果か否かを,当該変動表示の開始条件の成立前に先読み予告する特定先読み予告実行手」は,本願補正発明の「前記開始前情報に基づいて,該開始前情報に対応した前記可変表示が所定の状態となる可能性を予告する予告演出を,該可変表示の前記開始条件が成立する以前に実行する予告演出実行手段」に相当する。
(j)引用発明の「正常に受信していないと判定したとき」は,本願補正発明の「正常に入力することができなかった場合」に相当する。
そして,引用発明の「先読み予告を実行する旨を決定することを禁止する」ことは,先読み予告の実行を制限されているといえることから,本願補正発明の「前記予告演出を制限する」ことに相当することは明らかである。
したがって,引用発明の「開始前先読みコマンドを正常に受信していないと判定したときに,前記開始前先読みコマンドに含まれる先読み情報に基づいて前記先読み予告決定手段が先読み予告を実行する旨を決定することを禁止する先読み予告禁止手段」は,本願補正発明の「前記開始前情報を正常に入力することができなかった場合に,前記予告演出を制限する予告演出制限手段」に相当するといえる。
(k)本願補正発明の「前記有利状態に制御されるときに前記予告演出を制限可能である」との記載について,予告演出が該可変表示の前記開始条件が成立する以前に実行することに基づけば,該可変表示の開始条件が成立する以前に「有利状態に制御されるとき」に,該可変表示の「予告演出を制限可能である」といえる。
このことから,引用発明の「保留記憶されている変動表示に大当たりとなることが決定される変動表示が含まれている場合」は,本願補正発明の該可変表示の開始条件が成立する以前に「有利状態に制御されるとき」に相当する。
そして,引用発明の「受信した開始前先読みコマンドに対応した変動表示を先読み予告演出の対象としない」ことは,先読み予告の実行を制限されているといえることから,本願補正発明の「前記予告演出を制限可能であること」に相当することは,明らかである。
したがって,引用発明の「保留記憶されている変動表示に大当たりとなることが決定される変動表示が含まれている場合には,受信した開始前先読みコマンドに対応した変動表示を先読み予告演出の対象としない」ことは,本願補正発明の「前記有利状態に制御されるときに前記予告演出を制限可能であること」に相当するといえる。
なお,仮に,本願補正発明の「前記有利状態に制御されるとき」が,現在の遊技状態が有利状態(大当り中の状態)であるときを指し示したとしても,本件出願遡及日前に遊技機の分野において,大当り遊技中に予告演出が行われない構成は,例示するまでもない周知慣用技術にすぎない。
(l)引用発明の「パチンコ遊技機1」は,本願補正発明の「遊技機」に相当する。
以上,上記(a)から(l)により,本願補正発明と引用発明とは,
「開始条件の成立に基づいて可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって,
前記遊技機における遊技を制御する遊技制御手段と,
前記遊技制御手段からの情報に基づいて演出を制御する演出制御手段と,を備え,
前記遊技制御手段は,
前記可変表示の可変表示パターンを決定する可変表示パターン決定手段と,
前記開始条件が成立していない前記可変表示に関する情報を保留記憶として記憶する保留記憶手段と,
前記開始条件が成立する以前に,前記可変表示に関する開始前情報を出力する開始前情報出力手段と,
通常状態よりも前記有利状態に制御され易い特別状態に制御可能な状態制御手段と,を含み,
前記可変表示パターン決定手段は,前記特別状態が終了するときに,前記特別状態が終了しないときとは異なる可変表示パターンに決定可能であり,
前記演出制御手段は,
前記開始前情報に基づいて,該開始前情報に対応した前記可変表示が所定の状態となる可能性を予告する予告演出を,該可変表示の前記開始条件が成立する以前に実行する予告演出実行手段と,
前記開始前情報を正常に入力することができなかった場合に,前記予告演出を制限する予告演出制限手段と,を含み,
前記有利状態に制御されるときに前記予告演出を制限可能であることを特徴とする遊技機。」
である点で一致し,相違点はない。
(3)審判請求人の主張について
審判請求書において,請求人は,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(刊行物)との対比において,「引用文献1には,始動入賞コマンドにより示される保留記憶数が,正常な数を示すものでないときに,先読み予告演出の実行を禁止するとの記載がある一方で,単に大当り遊技状態に制御されるときに先読み予告演出の実行を禁止するような構成は開示されておりません。」(第4頁第6~9行)と主張している。
しかしながら,上記(2)(k)で検討したとおり,本願補正発明の「前記有利状態に制御されるときに前記予告演出を制限可能である」とは,当該可変表示の開始条件が成立する以前に「有利状態に制御されるとき」に,当該可変表示の「予告演出を制限可能である」といえることから,引用文献1には,当該可変表示の開始条件が成立する以前に大当り遊技状態に制御されるときに先読み予告演出の実行を禁止する構成が記載されているものである。
また仮に,本願補正発明の「前記有利状態に制御されるとき」が,現在の遊技状態が有利状態(大当り中の状態)であるときを指し示したとしても,本件出願遡及日前に遊技機の分野において,大当り遊技中に予告演出が行われない構成は,例示するまでもない周知慣用技術にすぎない。
したがって,請求人の主張は採用できない。
(4)まとめ
したがって,本願補正発明は,刊行物に記載された発明であるので,特許法第29条第1項第3号の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4.むすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第5項及び第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1~3に係る発明は,平成27年9月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1.本件補正の概要」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
1.刊行物
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物の記載事項及び引用発明の認定については,上記「第2[理由]3.(1)刊行物に記載された事項」に記載したとおりである。
2.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明は,上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明に対し,「可変表示について」「記憶する」対象を「可変表示に関する情報」に具体的にする限定,及び,「演出制御手段」が「有利状態」に制御されるときに「予告演出」を制限可能であることにする限定を省くものである。
そうすると,上記「第2[理由]3.(2)対比」において検討したように,本願発明と引用発明とは相違点はなく一致するといえる。
したがって,本願発明は刊行物に記載された発明である。
4.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物に記載された発明であるので,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-007567