特許拒絶査定不服審判
2016-007140
遊技機
- 審判番号
- 2016-007140
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-059042外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月16日
- 審決日
- 2017年02月06日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-59042号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日出願公開、特開2015-181575号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯の概要
本願は、平成26年3月20日の出願であって、平成27年6月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月4日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成28年2月12日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年2月23日)、それに対し、同年5月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
2 本願発明
平成28年5月16日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の請求項2、4を削除すると同時に、
本件補正前の請求項1に記載された「前記遊技領域における前記特定領域に遊技球を流下させることにより遊技球の入球が可能または容易な第1状態」を「前記遊技領域における前記特定領域に流下させた遊技球の入球が可能または容易な第1状態」(下線部は補正箇所を示す。以下同様。)に補正し、
本件補正前の請求項1に記載された「遊技者に対して前記第2の操作を行うように促す演出」を、「遊技者に対して前記第2の操作を行うように指示する演出を」に補正することを含むものである。
しかし、本件補正前の「遊技球を流下させることにより遊技球の入球が可能または容易」は、本件補正後の「流下させた遊技球の入球が可能または容易」と実質的に同じ内容である。
また、本件補正前の「第2の操作を行うように促す」は、本件補正後の「第2の操作を行うように指示する」と実質的に同じ内容である。
したがって、本件補正は、各補正内容を総合すると、特許法第17条の2第5項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものである。また、新規事項を追加するものではない。
よって、この出願の請求項1、2に係る発明は、平成28年5月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりであるところ(平成27年8月4日付けの手続補正書の請求項1、3に相当)、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
遊技球が流下する遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技領域へ遊技球を発射する発射手段と、
遊技者による第1の操作に基づいて、前記発射手段による遊技球の発射強度を制御する発射制御手段と、
遊技者による前記第1の操作とは異なる第2の操作に基づいて、前記発射手段による遊技球の発射強度を、前記遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する特殊発射制御手段と、
前記遊技領域における前記特定領域に流下させた遊技球の入球が可能または容易な第1状態と当該特定領域に遊技球を流下させても遊技球の入球が不可能または容易でない第2状態とに切り替え可能な可動部材と、
前記可動部材を前記第1状態に作動させる際に、遊技者に対して前記第2の操作を行うように指示する演出を行う演出手段と、
を備えることを特徴とする、遊技機。」
3 刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-217636号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。)。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤に設けられた左右に分けられる第1遊技領域および第2遊技領域を有し、入賞領域への遊技球の入賞に応じて第1図柄を変動させて停止させることにより、第1図柄抽選の結果を確定するパチンコ遊技機であって、
遊技者による操作部への操作に応じて遊技球の発射強度を変更することにより前記第1遊技領域および前記第2遊技領域に遊技球を発射することが可能な発射手段と、
前記第2遊技領域に設けられた特定の入賞領域への遊技球の入賞に応じて第2図柄を変動させて停止させることにより、第2図柄抽選の結果を確定する第2図柄抽選手段と、
前記第2図柄抽選に当選した場合に動作して遊技球が入賞し易くなり、前記第2図柄抽選に当選しない場合に動作せずに遊技球が入賞し難くまたは入賞しなくなる可変入賞口と、
少なくとも前記可変入賞口への遊技球の入賞に応じて前記第1図柄を変動させて停止させることにより、前記第1図柄抽選の結果を確定する第1図柄抽選手段と、
前記可変入賞口が遊技者にとって比較的不利な動作をする傾向にある第1状態と、前記可変入賞口が遊技者にとって前記第1状態と比較して有利な動作をする傾向にある第2状態とに設定可能な状態設定手段と、
前記状態設定手段によって前記第2状態に設定された場合に、遊技者に前記第2遊技領域へ遊技球を発射させるための報知を行う報知手段と、を備え、
前記状態設定手段は、前記第1図柄抽選に所定の図柄で当選した場合、当該所定の図柄で当選してからの前記第1図柄抽選の実行回数に応じて、前記第1状態から前記第2状態、または、前記第2状態から前記第1状態に設定する、パチンコ遊技機。」
イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機に関する。より特定的には、本発明は、始動入賞口への遊技球の入賞を契機として大当たり抽選を実行し、その抽選結果に基づくコマンドを送信するメイン制御部と、当該メイン制御部から送信されたコマンドに基づいて演出を制御するサブ制御部とを具備するパチンコ遊技機に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1等に記載の従来のパチンコ遊技機では、補助遊技状態か非補助遊技状態かの状態を取りえるが、補助遊技状態における遊技の多様性および興趣性という観点では改良の余地があった。」
ウ 「【0013】
遊技盤2は、その前面に、遊技球により遊技を行うための遊技領域20が形成されている。遊技領域20には、下方(発射装置211;図4参照)から発射された遊技球が遊技盤2の主面に沿って上昇して遊技領域20の上部位置へ向かう通路を形成するレール部材(図示せず)とを備えている。」
エ 「【0028】
遊技者がハンドル51に触れてレバー52を時計方向に回転させる操作を行うと、その操作角度に応じた打球力にて所定の時間間隔(例えば、1分間に100個)で、発射装置211(図4参照)が遊技球を電動発射する。具体的には、遊技者がハンドル51を比較的小さい角度で回転させると(いわゆる、左打ちをすると)、発射装置211は遊技球を比較的弱い打球力で打ち出す。この場合、遊技球は画像表示器21の上方に設けられた遊技くぎに跳ね返されて、図1の矢印11で示されるように、遊技領域20の左側の領域を通って下方に流下する。一方、遊技者がハンドル51を比較的大きな角度で回転させると(いわゆる、右打ちをすると)、発射装置211は遊技球を比較的強い打球力で打ち出す。この場合、遊技球は画像表示器21の上方に設けられた遊技くぎを超えて、図1の矢印12で示されるように、遊技領域20の右側の領域を通って下方に流下する。」
オ 「【0046】
(サブ基板の概要)
また、サブ基板には、遊技球を遊技領域20の上部へ発射する発射装置211を制御する発射制御部200が構成された発射制御基板、賞球の払い出しを制御する払出制御部300が構成された払出制御基板、演出を統括的に制御する演出制御部400が構成された演出制御基板、画像および音による演出を制御する画像音響制御部500が構成された画像制御基板、および各種のランプ(枠ランプ56、盤ランプ23)や可動役物22による演出を制御するランプ制御部600が構成されたランプ制御基板等が配設されている。また、遊技盤2の後面には、パチンコ遊技機1に供給された24V(ボルト)の交流電力を各種電圧の直流電力に変換して、それぞれの電圧の直流電力を上述した各種の基板等に出力するスイッチング電源が配設されている。」
カ 「【0083】
(本実施形態におけるパチンコ遊技機の動作概要)
次に、本実施形態におけるパチンコ遊技機1の動作概要について説明する。本実施形態におけるパチンコ遊技機1では、大当たりの図柄に応じて、上記電チューサポート(電サポ)の設定が行われる。
【0084】
ここで、「電サポ」とは、電動チューリップ26が開放される頻度が通常よりも高い状態(補助遊技状態)であり、電動チューリップ26が開放される頻度が高くなることによって、第2始動口25bに遊技球が入賞しやすくなる。電動チューリップ26が開放される頻度が通常よりも高いことは、遊技球を遊技領域20に発射し続けた場合に所定期間における電動チューリップ26が開放されている時間が通常よりも長いことを意味する。遊技球がゲート27を通過した場合、普通図柄の変動が開始して所定時間(普通図柄変動時間)経過後に普通図柄が停止することにより、普通図柄抽選が行われる。停止した普通図柄が当りを示す図柄である場合、普通図柄抽選に当選したことになる。普通図柄抽選の結果が当りである場合、電動チューリップ26が開放されるが、その累計開放時間(1回あたりの開放時間×開放回数;開放パターンともいう)は、通常では比較的短い(例えば0.15秒×1回)ため、遊技球が第2始動口25bに入賞し難い。また、通常では、普通図柄抽選の当選確率が、所定の確率(例えば10/100)に設定され、普通図柄変動時間が所定の時間(例えば10秒)に設定される。
・・・
【0086】
なお、以下では、補助遊技状態でない通常の状態を「非補助遊技状態」と呼ぶことがある。補助遊技状態は、普通図柄抽選および普通図柄抽選に当選した時の遊技機1の動作に影響する状態である。上記のように遊技機1には低確率遊技状態(特別図柄抽選の当選確率が相対的に低い状態)と高確率遊技状態(特別図柄抽選の当選確率が相対的に高い状態)とがある。低確率遊技状態には、通常遊技状態と時短遊技状態とがある。通常遊技状態では、特別図柄抽選の当選確率は低確率であり、かつ、遊技機1は非補助遊技状態に設定される(補助遊技状態に設定されない)。時短遊技状態では、特別図柄抽選の当選確率は低確率であるが、遊技機1は補助遊技状態に設定される。また、高確率遊技状態には、確変遊技状態と潜確遊技状態とがある。確変遊技状態では、特別図柄抽選の当選確率は高確率であり、かつ、遊技機1は補助遊技状態に設定される。潜確遊技状態では、特別図柄抽選の当選確率は高確率であるが、遊技機1は非補助遊技状態に設定される。」
キ 「【0100】
上述のように、遊技機1が第2の補助遊技状態の場合は、電動チューリップ26が開放される頻度が高く設定されており、遊技球は第2始動口25bに入賞し易くなる。ゲート27および第2始動口25bは、遊技領域20の右側に配置されている。遊技者が右打ちすると、図1の矢印12に示すように、遊技領域20の右側に打ち出された遊技球が下方に流下すると、遊技領域20に設けられた遊技くぎ等によって誘導されて、遊技球はゲート27を通過し易くなる。また、遊技領域20の右側に打ち出された遊技球は、第2始動口25bの近辺を通過し易くなる。この場合において電動チューリップ26が開放されていると、遊技球は第2始動口25bに入賞する。一方、第2の補助遊技状態の場合において、遊技者が左打ちをすると、図1の矢印11に示すように、遊技領域20の左側に打ち出された遊技球は遊技領域20の左側(画像表示器21の左側)を通って下方に流下する。この場合、遊技球はゲート27を通過することはないため、遊技機1が第2の補助遊技状態に設定されていても、電動チューリップ26は開放せず、遊技者は第2の補助遊技状態であることの利益を得ることができない。従って、第2の補助遊技状態の場合は、遊技機1は、遊技者に右打ちをさせるために右打ち表示器36を点灯させて右打ちを促す報知をする。右打ち表示器36による報知に加えて、遊技機1は、さらに、画像表示器21に右打ちを促す報知をする。なお、遊技者に右打ちを促す報知はこれに限らず、例えば、音声等で遊技者に報知してもよい。」
ク 「【0204】
図16は、メイン制御部100が行う大入賞口処理を示したフローチャートである。
・・・
【0218】・・・エンディング時間が経過した場合(ステップ826でYES)、メイン制御部100は、遊技状態設定処理を実行する(ステップ827)。なお、遊技状態設定処理については、図17を参照しながら後述する。この後、メイン制御部100は、当たり遊技フラグ(すなわち、長当たり遊技フラグ、短当たり遊技フラグ、および、小当たり遊技フラグ)をオフにし(ステップ828)、当該詳細フローチャートの処理を終了する。」
ケ 上記カの「ここで、「電サポ」とは、電動チューリップ26が開放される頻度が通常よりも高い状態(補助遊技状態)であり、電動チューリップ26が開放される頻度が高くなることによって、第2始動口25bに遊技球が入賞しやすくなる。・・・通常では比較的短い(例えば0.15秒×1回)ため、遊技球が第2始動口25bに入賞し難い。」(【0084】)との記載、「補助遊技状態でない通常の状態を「非補助遊技状態」と呼ぶことがある。」(【0086】)との記載、及び、上記キの「上述のように、遊技機1が第2の補助遊技状態の場合は、電動チューリップ26が開放される頻度が高く設定されており、遊技球は第2始動口25bに入賞し易くなる。・・・また、遊技領域20の右側に打ち出された遊技球は、第2始動口25bの近辺を通過し易くなる。この場合において電動チューリップ26が開放されていると、遊技球は第2始動口25bに入賞する。」(【0100】)との記載から、刊行物1には、補助遊技状態は、電動チューリップ26が開放される頻度が通常よりも高い状態に設定されており、一方、非補助遊技状態は、電動チューリップ26が開放される頻度が通常の状態に設定ていることが記載されているといえる。
したがって、刊行物1には、「第2の補助遊技状態に設定された場合は、開放される頻度が通常よりも高い状態に設定されており、遊技者が右打ちすると遊技球が入賞し易くなり、非補助遊技状態の場合は、開放される頻度が通常の状態に設定されており、遊技球が入賞し難くなる第2始動口25bの電動チューリップ26」について示されている。
コ 上記ア~クの記載事項、及び、上記ケの認定事項から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
「前面に遊技球により遊技を行うための遊技領域20が形成されている遊技盤2(【0013】)と、
遊技球を遊技領域20の上部へ発射する発射装置211(【0046】)と、
遊技者がハンドル51を比較的小さい角度で回転させると(いわゆる、左打ちをすると)、遊技球を比較的弱い打球力で打ち出すように発射装置211を制御し(【0028】、【0046】)、遊技者がハンドル51を比較的大きな角度で回転させると(いわゆる、右打ちをすると)、遊技球を比較的強い打球力で打ち出すように発射装置211を制御する発射制御部200(【0028】、【0046】)と、
第2の補助遊技状態の場合は、開放される頻度が通常よりも高い状態に設定されており、遊技者が右打ちすると遊技球が入賞し易くなり、非補助遊技状態の場合は、開放される頻度が通常の状態に設定されており、遊技球が入賞し難くなる第2始動口25bの電動チューリップ26(認定事項ケ)と、
第2の補助遊技状態に設定された場合は、遊技者に右打ちをさせるために右打ち表示器36を点灯させて右打ちを促す報知をすると共に、画像表示器21に右打ちを促す報知をする報知手段(【請求項1】、【0100】)と
を備え、
遊技領域20の右打ちされた遊技球は、遊技領域20の右側に打ち出されて、電動チューリップ26が開放されていると第2始動口25bに入賞する(【0100】)パチンコ遊技機。」
(2)原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-147722号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技者の発射操作に応じて遊技球を発射させて、発射した遊技球を用いて遊技を行う遊技機に関する。」
イ 「【0126】
リレー168は、AND回路166から信号が出力されると通電状態となり、スイッチがONになり、AND回路166から信号が出力されないと非通電状態となり、スイッチがOFFになる。
これにより、第1の大当たりおよび時短遊技状態の場合に、右打ちボタン9の操作が開始されると、リレー168のスイッチがONになり、出力電圧Voutが増加し、発射強度も増加することになる。
本実施形態では、発射ボリューム3bおよびリレー168が発射強度決定手段を構成する。
【0127】
(遊技球の発射強度)
次に、発射された遊技球の飛距離について説明する。図11は、発射された遊技球の飛距離を示す発射強度と操作ハンドル3の回転角度との関係を示した図である。
【0128】
上述した通り、操作ハンドル3を回転させることにより、可変抵抗器からなる発射ボリューム3bによって抵抗値が変化し、出力電圧Voutが発射駆動回路162に入力されることになる。
ここで、正確には電圧値に基づいた電流値によって遊技球の発射強度が定まるのであるが、発射駆動回路162によって入力した電圧値に正比例する発射用の電流値が生成されることから、結果的には入力した電圧値に基づいて発射強度が定まるといえる。
【0129】
そして、本実施形態における発射ボリューム3bの可変抵抗器は、操作ハンドル3の回転角度が大きくなるほど、段々と小さくなるように調整されていくので、図11に示すように、操作ハンドル3の回転角度が大きくになるにつれて、発射駆動回路162に入力させる出力電圧Voutも大きくなるように構成されている。
・・・
【0131】
図11に示すM1は、リレー168のスイッチがOFFのときの発射強度(出力電圧Vout)と操作ハンドル3の回転角度との関係を示した直線であり、第1の発射状態を示すものである。これに対し、図11に示すM2は、リレー168のスイッチがONのときの発射強度(出力電圧Vout)と操作ハンドル3の回転角度との関係を示した直線であり、第2の発射状態を示すものである。
【0132】
そして、第1の発射状態M1から第2の発射状態M2に切り替わるのは、第1の大当たりおよび時短遊技状態の場合に、右打ちボタン9の操作が開始されたときである。
ここで、一度、第1の発射状態M1から第2の発射状態M2に切り替わると、再び右打ちボタン9の操作を開始するか、操作ハンドル3が初期位置に戻るか、右打ち状態信号の入力が終了しない限りは、第2の発射状態M2が保持されることになる。これにより、右打ち状態のときに合わせた発射強度が調整され、より発射操作の操作性を向上させることができる。」
ウ 上記イの「図11に示すように、操作ハンドル3の回転角度が大きくになるにつれて、発射駆動回路162に入力させる出力電圧Voutも大きくなるように構成されている。」との記載、及び、【図11】の図示内容から、刊行物2には、「操作ハンドル3の回転角度が大きくになるにつれて、発射駆動回路162に入力させる発射強度(出力電圧)も大きくなるように構成されている遊技機」について記載されていると認められる。
エ 上記ア、イの記載事項、及び、上記ウの認定事項から、から、刊行物2には次の発明(以下「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「操作ハンドル3の回転角度が大きくになるにつれて、発射駆動回路162に入力させる発射強度(出力電圧)が大きくなるように構成されている遊技機において、
右打ちボタン9の操作が開始されると、発射強度(出力電圧)が増加する遊技機。」
4 対比
本願発明と刊行物発明とを対比する。
ア 刊行物発明における「前面に遊技球により遊技を行うための遊技領域20が形成されている遊技盤2」は、本願発明における「遊技球が流下する遊技領域を有する遊技盤」に相当する。
イ 刊行物発明における「遊技球を遊技領域20の上部へ発射する発射装置211」は、本願発明における「遊技領域へ遊技球を発射する発射手段」に相当する。
ウ 刊行物発明における「遊技者がハンドル51を比較的小さい角度で回転させると(いわゆる、左打ちをすると)、遊技球を比較的弱い打球力で打ち出すように発射装置211を制御し、遊技者がハンドル51を比較的大きな角度で回転させると(いわゆる、右打ちをすると)、遊技球を比較的強い打球力で打ち出すように発射装置211を制御する発射制御部200」と、本願発明における「遊技者による第1の操作に基づいて、発射手段による遊技球の発射強度を制御する発射制御手段と、遊技者による第1の操作とは異なる第2の操作に基づいて、発射手段による遊技球の発射強度を、遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する特殊発射制御手段」とを対比する。
刊行物発明における「遊技者がハンドル51を比較的小さい角度で回転させる」、いわゆる「左打ち」操作は、本願発明における「遊技者による第1の操作」に相当する。
そうすると、刊行物発明における「遊技球を比較的弱い打球力で打ち出すように発射装置211を制御」する「発射制御部200」は、本願発明における「遊技者による第1の操作に基づいて、発射手段による遊技球の発射強度を制御する発射制御手段」としての機能を有する。
また、刊行物発明における「遊技者がハンドル51を比較的大きな角度で回転させる」、いわゆる「右打ち」操作は、本願発明における「遊技者による」「第2の操作」に相当する。
そして、刊行物発明は、「遊技球を比較的強い打球力で打ち出すように発射装置211を制御する」ことにより、比較的強い打球力で右打ち発射された遊技球が、「遊技領域20の右側に打ち出され」、遊技領域20の右側を流下するものである。ここで、刊行物発明における「遊技領域20の右側」は、本願発明における「遊技領域における特定領域」に相当する。
そうすると、刊行物発明における「遊技球を比較的強い打球力で打ち出すように発射装置211を制御する発射制御部200」は、本願発明における「遊技者による」「第2の操作に基づいて、発射手段による遊技球の発射強度を、遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する」発射制御手段としての機能も有する。
したがって、刊行物発明における「発射制御部200」は、本願発明における「遊技者による第1の操作に基づいて、発射手段による遊技球の発射強度を制御する発射制御手段」に相当する。
また、刊行物発明における「発射制御部200」と、本願発明における「遊技者による第1の操作とは異なる第2の操作に基づいて、発射手段による遊技球の発射強度を、遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する特殊発射制御手段」とは、「遊技者による第2の操作に基づいて、発射手段による遊技球の発射強度を、遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する発射制御手段」である点で共通する。
エ 刊行物発明における「第2の補助遊技状態の場合は、開放される頻度が通常よりも高い状態に設定されており、遊技者が右打ちすると遊技球が入賞し易くなり、非補助遊技状態の場合は、開放される頻度が通常の状態に設定されており、遊技球が入賞し難くなる第2始動口25bの電動チューリップ26」と、本願発明における「遊技領域における特定領域に流下させた遊技球の入球が可能または容易な第1状態と当該特定領域に遊技球を流下させても遊技球の入球が不可能または容易でない第2状態とに切り替え可能な可動部材」とを対比する。
まず、刊行物発明における「第2始動口25bの電動チューリップ26」は、「開放される」ものであることから、本願発明における「可動部材」に相当する。
そして、刊行物発明において、「遊技者が右打ちすると」、「遊技球は、遊技領域20の右側に打ち出され」、遊技領域20の右側を流下するものである。そうすると、刊行物発明における「第2の補助遊技状態」は、「遊技者が右打ちする」ことにより、遊技領域20の右側を流下する遊技球が、「第2始動口25bの電動チューリップ26」へ「入賞し易くな」くなる状態であることから、刊行物発明における「第2始動口25bの電動チューリップ26」は、本願発明における「遊技領域における特定領域に流下させた遊技球の入球が」「容易な第1状態」を取り得る「可動部材」に相当する。
同様に、刊行物発明における「非補助遊技状態」は、「遊技者が右打ち」したとしても、遊技領域20の右側を流下する遊技球が、「第2始動口25bの電動チューリップ26」へ「入賞し難」くなる状態であることから、刊行物発明における「第2始動口25bの電動チューリップ26」は、本願発明における「特定領域に遊技球を流下させても遊技球の入球が」「容易でない第2状態」を取り得る「可動部材」に相当する。
また、刊行物発明における「第2始動口25bの電動チューリップ26」は、「第2の補助遊技状態」と「非補助遊技状態」とに切り換え可能なものである。
したがって、刊行物発明における「第2の補助遊技状態」と「非補助遊技状態」と切り換え可能な「第2始動口25bの電動チューリップ26」は、本願発明における「第1状態」と「第2状態とに切り替え可能な可動部材」に相当する。
オ 刊行物発明における「第2の補助遊技状態に設定された場合は、遊技者に右打ちをさせるために右打ち表示器36を点灯させて右打ちを促す報知をすると共に、画像表示器21に右打ちを促す報知をする報知手段」と、本願発明における「可動部材を第1状態に作動させる際に、遊技者に対して第2の操作を行うように指示する演出を行う演出手段」とを対比する。
刊行物発明における「第2の補助遊技状態」が、本願発明における「第1状態」に相当することは、上記エにおいて検討したとおりであるから、刊行物発明における「第2始動口25bの電動チューリップ26」が「第2の補助遊技状態に設定された場合」は、本願発明における「可動部材を第1状態に作動させる際」に相当する。
そして、刊行物発明における「右打ちを促す」ことは、上記ウにおいて検討したように「右打ち」が本願発明における「遊技者による前記第1の操作とは異なる第2の操作」に相当するものであることから、本願発明における「遊技者に対して第2の操作を行うように指示する」ことに相当する。
また、刊行物発明における「右打ち表示器36を点灯させて右打ちを促す報知をする」こと、「画像表示器21に右打ちを促す報知をする」ことは、本願発明における「演出を行う」ことに含まれるものである。
したがって、刊行物発明における「報知手段」は、本願発明における「演出手段」に相当する。
カ 上記ア~オより、本願発明と刊行物発明とは、
「遊技球が流下する遊技領域を有する遊技盤と、
前記遊技領域へ遊技球を発射する発射手段と、
遊技者による第1の操作に基づいて、前記発射手段による遊技球の発射強度を制御する発射制御手段と、
遊技者による第2の操作に基づいて、前記発射手段による遊技球の発射強度を、前記遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する発射制御手段と、
前記遊技領域における前記特定領域に流下させた遊技球の入球が可能または容易な第1状態と当該特定領域に遊技球を流下させても遊技球の入球が不可能または容易でない第2状態とに切り替え可能な可動部材と、
前記可動部材を前記第1状態に作動させる際に、遊技者に対して前記第2の操作を行うように指示する演出を行う演出手段と、
を備える遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
第2の操作に基づく発射制御手段に関して、
本願発明は、第1の操作とは異なる第2の操作に基づいて遊技球の発射強度を制御する特殊発射制御手段であるのに対して、
刊行物発明は、そのような手段が特定されていない点で一応相違する。
5 当審の判断
(1)相違点について
上記相違点について検討する。
刊行物2に記載された技術事項は、遊技機の操作に、右打ちボタン9が操作されないで操作ハンドル3のみが操作される場合と、右打ちボタン9が操作されて、かつ、操作ハンドル3が操作される場合の2通りあることを示すものである。
ここで、刊行物2に記載された技術事項の「右打ちボタン9が操作されないで操作ハンドル3のみが操作される」操作は、本願発明の「第1の操作」に対応し、刊行物2に記載された技術事項の「右打ちボタン9が操作されて、かつ、操作ハンドル3が操作される」操作は、「右打ちボタン9が操作されないで操作ハンドル3のみが操作される」操作とは異なるものであるから、本願発明の「第1の操作とは異なる第2の操作」に対応する。
また、刊行物2に記載された技術事項の「発射強度(出力電圧)が増加する」ことは、本願発明における「遊技球の発射強度」が「制御」されることに含まれる。
すなわち、刊行物2には、第1の操作とは異なる第2の操作に基づいて遊技球の発射強度を制御する発射制御手段を備える遊技機についての技術事項が記載されているといえる。
そして、刊行物発明と刊行物2に記載された技術事項とは、遊技者による第1の操作と、「遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する」(右打ちを行う)ための「第2の操作」が行われる遊技機である点で共通するものである。
そうすると、刊行物発明に刊行物2に記載された技術事項を適用して、「第1の操作」と、「遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する」(右打ちを行う)ための第2の操作とを異なる操作とすると共に、刊行物発明における「遊技球を比較的強い打球力で打ち出すように発射装置211を制御する発射制御部200」に、本願発明における「遊技者による第1の操作とは異なる第2の操作に基づいて、発射手段による遊技球の発射強度を、遊技領域における特定領域に遊技球が流下する発射強度に制御する」特殊発射制御手段としての機能を果たさせ、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるといえる。
(2)請求人の主張について
請求人は、平成28年5月16日付けの審判請求書において、請求項1に関して、「これに対し、引用文献1には、遊技者にとって有利な状態である間に、『右打ち』の文字を表示することが開示されている。つまり、引用文献1には、遊技者に対して特定領域に遊技球を流下させることを指示する演出を行うことが開示されているに過ぎず、特定領域に遊技球を流下させるために必要な操作自体である第2の操作を行うように指示する演出を行うことについては、開示も示唆もされていない。」(審判請求書第6頁第1~6行)と主張する。
請求人の上記主張は、本願発明の「第2の操作を行うように指示する演出」を、本願の【図33】に示される「発射ボタンを押してください!」のように、第1の操作を行う操作手段とは異なる操作手段に対して、第2の操作を行うように指示することまでを特定するかのように捉えるが、本願発明の「演出」は、あくまで、「第2の操作を行うように」指示するものであって、第1の操作を行う操作手段と異なる操作手段に対する第2の操作を行うように指示するものと解釈することはできない。
しかしながら、仮に、「第1の操作」と「第2の操作」とが、異なる操作手段に対するものであり、本願発明の「指示する演出」が、第1の操作を行う操作手段と異なる操作手段に対する第2の操作を行うように「指示」する演出であるとしても一応検討する。
遊技機の技術分野において、遊技球の発射強度の制御を、第1の操作手段による操作と、第1の操作手段と異なる第2の操作手段による操作に基づき行うことは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開平9-206427号公報には、ハンドルレバー19に対する回動操作量による発射モータ24のトルクの制御と、変則打ちを開始するためのプッシュボタン28に対するプッシュ操作(右打ちのための操作)による発射モータ24のトルクの制御とが行われること(【0006】、【0014】、【0021】、【0022】、【図1】)が記載され、特開2002-346073号公報には、遊技者が右打操作部13を操作すると、球発射機構19に供給される電力を制御する制御部9に、予め設定された右打対応電力が供給されること(【0015】、【0018】、【図1】)が記載されている。)。
そして、刊行物発明は、第1の操作(左打ちのための操作)は、「ハンドル51を比較的小さい角度で回転させる」操作であり、第2の操作(右打ちのための操作)は、「ハンドル51を比較的大きな角度で回転させる」操作であって、操作手段の機能を回転角度の大小により区別可能とするものである。
そして、刊行物発明と上記周知の技術事項とは、第2の操作に基づいて発射強度の制御を行う発射制御手段を備える点で共通する。
したがって、刊行物発明に上記周知の技術事項を適用して、操作手段を、機能を区別可能とするのみならず構成も異なるものとすること、すなわち、第1の操作(左打ちのための操作)を行う操作手段と、第2の操作(右打ちのための操作)を行う操作手段とに分けることは当業者が容易になし得たものである。そして、「遊技者に対して第2の操作を行うように指示する演出」を、第1の操作(左打ちのための操作)を行う操作手段と異なる操作手段に対する第2の操作を指示する演出(例えば、「プッシュボタンを押してください。」の表示)とすることは、上記周知の技術事項においても、第2の操作手段による操作が可能であることを遊技者に知らせる必要があることから、上記周知の技術事項から当然導かれるものである。
よって、この場合についても、本願発明は、刊行物発明に周知の技術事項を適用し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。
(3)効果
本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明、及び、刊行物2に記載された技術事項から、あるいは、刊行物発明、及び、周知の技術事項から予測し得た範囲内のものであって、格別のものではない。
(4)小括
上記(1)~(3)において検討したように、本願発明は、当業者が刊行物発明、及び、刊行物2に記載された技術事項に基づいて、あるいは、刊行物発明、及び、周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物発明、及び、刊行物2に記載された技術事項に基づいて、あるいは、刊行物発明、及び、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明において検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-007140