特許拒絶査定不服審判
2016-002914
ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法
- 審判番号
- 2016-002914
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-240853外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月26日
- 審決日
- 2017年04月20日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ポリプラスチックス株式会社
- 【請求人代理人】正林 真之
- 【請求人代理人】林 一好
- 分類
- P18 .121-Z (C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-240853「ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 4日出願公開、特開2015-101599〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成25年11月21日に出願された特許出願であって、以降の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 5月19日 手続補正書提出
平成27年 6月15日付け 拒絶理由通知
平成27年 8月18日 意見書提出
平成27年11月24日付け 拒絶査定
平成28年 2月26日 審判請求書、手続補正書提出
平成28年 3月 2日 手続補足書提出
平成28年 3月22日付け 前置報告書
第2 平成28年2月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年2月26日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の、すなわち、平成27年5月19日に提出された手続補正書により補正された下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「共重合終了後に重合触媒を失活させているが、不安定末端基を安定化していない粗オキシメチレン共重合体に対し、前記不安定末端基を安定化する安定化処理を行うことなく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、エチレンメタクリル酸共重合樹脂若しくはエチレンアクリル酸共重合樹脂又はそれらの塩と、アルカリ土類金属化合物とを溶融混錬することで、前記安定化処理を行うことなくポリオキシメチレン樹脂組成物を製造する方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「共重合終了後に重合触媒を失活させているが、不安定末端基を安定化していない粗オキシメチレン共重合体に対し、前記不安定末端基を安定化する安定化処理を行うことなく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、エチレンメタクリル酸共重合樹脂若しくはエチレンアクリル酸共重合樹脂又はそれらの塩と、ステアリン酸カルシウム及び/又は酸化マグネシウムとを溶融混錬することで、前記安定化処理を行うことなく、押出成形品形成用のポリオキシメチレン樹脂組成物を製造する方法。」
(なお下線部は、補正個所である。)
2.本件補正の適否
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「アルカリ土類金属化合物」を「ステアリン酸カルシウム及び/又は酸化マグネシウム」に限定し、「ポリオキシメチレン樹脂組成物」について、「押出成形品形成用」なる限定を付加するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載等
引用刊行物:
1.特開2000-239484号公報(原審で引用された「引用文献1」)
(以下、「引用文献」という。また、下線は当審合議体による。)
ア 引用文献の記載
引用文献には、次の記載(以下、順に「記載a」ないし「記載h」という。)がある。
a 「【請求項1】 ポリアセタール樹脂と、pKaが3.6以上のカルボキシル基含有化合物とを含むポリアセタール樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項3】 ポリアセタール樹脂と、少なくともα,β-エチレン性不飽和カルボン酸を単量体単位とする重合体とを含む樹脂組成物であって、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、有効量以上であって1重量部未満の前記重合体を含むポリアセタール樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項5】 重合体が、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体である請求項3記載のポリアセタール樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項8】 さらに、酸化防止剤、アルカリ又はアルカリ土類金属化合物及び安定剤から選択された少なくとも一種を含む請求項1又は3記載のポリアセタール樹脂組成物。
・・・(略)・・・
【請求項10】 請求項1又は3記載のポリアセタール樹脂組成物で構成されたポリアセタール樹脂成形品。」(請求項1ないし10)
b 「【0002】
【従来の技術】
・・・(略)・・・
【0003】化学的に活性な末端を安定化するため、ホモポリマーについては、重合体の末端をアセチル化などによりエステル化する方法、コポリマーについては、重合時にトリオキサンと環状エーテル、環状ホルマールなどの隣接炭素結合を有するモノマーとを共重合した後、不安定な末端部分を分解除去して不活性な安定末端とする方法などが知られている。しかしながら、加熱時にはポリマーの主鎖部分での解裂分解も起こり、その防止には、上記処理のみでは対処できず、実用的には酸化防止剤及びその他の安定剤の添加が必須とされている。
【0004】しかし、これら安定剤を配合しても、ポリアセタール樹脂の分解を完全に抑制することは困難であり、実際には組成物を調製するための押出や成形工程での溶融加工の際、押出機や成形機のシリンダー内で熱や酸素の作用を受け、主鎖の分解や充分に安定化されていない末端からホルムアルデヒドが発生し、押出成形加工時に作業環境を悪化させる。
・・・(略)・・・
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、ポリアセタール樹脂の熱安定性、特に成形加工時の溶融安定性を改善できる樹脂組成物、及び樹脂組成物を成形して得られた成形品を提供することにある。」(段落【0002】ないし段落【0011】)
c 「【0018】
【発明の実施の形態】ポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン基(-CH2O-)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、ポリアセタールホモポリマー(例えば、米国デュポン社製,商品名「デルリン」、旭化成(株)製、商品名「テナック4010」など)、オキシメチレン基以外に他のコモノマー単位を含有するポリアセタールコポリマー(例えば、ポリプラスチックス(株)製,商品名「ジュラコン」など)が含まれる。コポリマーにおいて、コモノマー単位には、炭素数2~6程度(好ましくは炭素数2~4程度)のオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(-CH2CH2O-)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基など)が含まれる。コモノマー単位の含有量は、少量、例えば、ポリアセタール樹脂全体に対して、0.01~20モル%、好ましくは0.03~10モル%(例えば、0.05~5モル%)、さらに好ましくは0.1~5モル%程度の範囲から選択できる。
【0019】ポリアセタールコポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマーなどであってもよい。ポリアセタールコポリマーは、ランダムコポリマーの他、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなどであってもよい。また、ポリアセタール樹脂は、線状のみならず分岐構造であってもよく、架橋構造を有していてもよい。さらに、ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸又はそれらの無水物とのエステル化などにより安定化してもよい。ポリアセタールの重合度、分岐度や架橋度も特に制限はなく、溶融成形可能であればよい。」(段落【0018】及び段落【0019】)
d 「【0032】また、本発明の他の態様において、ポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂と、重合性不飽和結合を有するカルボン酸類などを単量体単位として含む重合体とで構成してもよい。
・・・(略)・・・
【0035】好ましい共重合体としては、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体などが例示できる。特にエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。
・・・(略)・・・
【0038】カルボキシル基含有重合体を用いる場合、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、重合体の割合は、有効量以上であって1重量部未満(例えば、0.0001~0.5重量部、好ましくは0.001~0.1重量部)、特に0.0001~0.05重量部(例えば0.001~0.05重量部)程度であってもホルムアルデヒド発生を有効に抑制できる。また、カルボキシル基含有重合体は、pKa3.6以上の化合物と併用してもよい。」(段落【0032】ないし段落【0038】)
e 「【0046】好ましい酸化防止剤には、フェノール系酸化防止剤(特に、ヒンダードフェノール類)などが含まれる。ヒンダードフェノール類の中でも、特に、例えば、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2-10アルキレンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-分岐C3-6アルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC2-4アルキレンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-分岐C3-6アルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、グリセリントリス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3-8アルキレントリオール-ビス[3-(3,5-ジ-分岐C3-6アルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4-8アルキレンテトラオールテトラキス[3-(3,5-ジ-分岐C3-6アルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが好ましい。」(段落【0046】)
f 「【0065】本発明のポリアセタール樹脂組成物は、さらに窒素含有化合物を含んでいてもよい。窒素含有化合物には、低分子化合物や高分子化合物(窒素含有樹脂)が含まれる。窒素含有低分子化合物としては、例えば、モノエタノールアミン,ジエタノールアミンなどの脂肪族アミン,芳香族アミン類(o-トルイジン,p-トルイジン,p-フェニレンジアミンなどの芳香族第2級アミン又は第3級アミン)、アミド化合物(マロンアミド,イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド,p-アミノベンズアミドなど)、尿素又はその誘導体(尿素、N-メチル尿素などのモノN-置換尿素、アルデヒドとの縮合体など)、ヒドラジン又はその誘導体(ヒドラジン、ヒドラゾン、多価カルボン酸ヒドラジドなどのヒドラジドなど)、アミジン誘導体[ポリアミノトリアジン類(グアナミン,アセトグアナミン,ベンゾグアナミンなどのグアナミン類又はそれらの誘導体、メラミン又はその誘導体)、グアニジン又はその誘導体(クレアチニン又はその誘導体など)]、ウラシル又はその誘導体(ウラシル,ウリジンなど)、シトシン又はその誘導体(シトシン,シチジンなど)などが例示できる。
【0066】また、窒素含有樹脂としては、例えば、ホルムアルデヒドとの反応により生成するアミノ樹脂(グアナミン樹脂,メラミン樹脂,グアニジン樹脂などの縮合樹脂、フェノール-メラミン樹脂,ベンゾグアナミン-メラミン樹脂,芳香族ポリアミン-メラミン樹脂などの共縮合樹脂など)、芳香族アミン-ホルムアルデヒド樹脂(アニリン樹脂など)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン3,ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11,ナイロン12,ナイロンMXD6,ナイロン4-6,ナイロン6-10,ナイロン6-11,ナイロン6-12,ナイロン6-66-610などの単独又は共重合ポリアミド、メチロール基やアルコキシメチル基を有する置換ポリアミドなど)、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルアミド、ポリアミノチオエーテルなどが例示できる。」(段落【0065】及び段落【0066】)
g 「【0089】本発明のポリアセタール樹脂組成物は、その成型加工(特に溶融成型加工)工程において、ポリアセタール樹脂の酸化又は熱分解などによるホルムアルデヒドの生成を顕著に抑制でき、作業環境を改善できる。また、金型への分解物などの付着(モールドデポジット)、成形品からの分解物の浸出を顕著に抑制し、ヒートエージング性を大幅に改善でき、成形加工時の諸問題を改善できる。そのため、本発明の樹脂組成物は、慣用の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクションモールディングなどの方法で、種々の成形品を成形するのに有用である。
【0090】前記ポリアセタール樹脂組成物で構成された本発明のポリアセタール樹脂成形品は、特定のカルボキシル基含有化合物を含んでおり、ホルムアルデヒド発生量が極めて少ない。すなわち、酸化防止剤などの安定剤を含む従来の前記ポリアセタール樹脂で構成された成形品は、比較的多量のホルムアルデヒドを生成し、腐食や変色などの他、生活環境や作業環境を汚染する。例えば、一般に市販されているポリアセタール樹脂成形品からのホルムアルデヒド発生量は、乾式(恒温乾燥雰囲気下)において、表面積1cm2当たり2~5μg程度であり、湿式(恒温湿潤雰囲気下)において、表面積1cm2当たり3~6μg程度である。また、成形条件を制御しても、乾式(恒温乾燥雰囲気下)において表面積1cm2当たり1.5μg以下、湿式(恒温湿潤雰囲気下)において、表面積1cm2当たり2.5μg以下の成形品を得ることが困難である。」(段落【0089】及び段落【0090】)
h 「【0108】実施例1~20及び比較例1~4
ポリアセタール樹脂100重量部に、カルボキシル基含有化合物、酸化防止剤、金属化合物、安定剤及び窒素含有化合物を表1に示す割合で混合した後、二軸押出機により溶融混合し、ペレット状の組成物を調製した。このペレットを用いて、溶融体からのホルムアルデヒド発生量を評価した。さらに、射出成形機により、試験片を成形し、この試験片からのホルムアルデヒド発生量を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0109】なお、比較のため、カルボキシル基含有化合物を添加しない例及びpKaが3.6未満のフタル酸をカルボキシル基含有化合物として用いた例について、上記と同様にして評価した。
【0110】実施例および比較例で使用したポリアセタール樹脂、カルボキシル基含有化合物、酸化防止剤、金属化合物、安定剤、窒素含有化合物は以下の通りである。
【0111】1.ポリアセタール樹脂
(a):ポリアセタール樹脂コポリマー
ポリプラスチックス(株)製,「ジュラコン」
2.カルボキシル基含有化合物
(b-1):エチレン-アクリル酸共重合体
アクリル酸変性率:5重量%
アライド・シグナル(株)製,「ACLYN #540」
(b-2):エチレン-メタクリル酸共重合体
メタクリル酸変性率:5重量%
三井・デュポンポリケミカル(株)製,「ニュクレルAN4214C」
(b-3):エチレン-メタクリル酸共重合体
メタクリル酸変性率:9重量%
三井・デュポンポリケミカル(株)製,「ニュクレルN0908C」
(b-4):エチレン-メタクリル酸共重合体
メタクリル酸変性率:12重量%
三井・デュポンポリケミカル(株)製,「ニュクレルAN1207C」
(b-5):エチレン-メタクリル酸共重合体
メタクリル酸変性率:15重量%
三井・デュポンポリケミカル(株)製,「ニュクレルAN1525」
(b-6):アジピン酸(pKa1=4.26)
(b-7):安息香酸(pKa=4.00)
(b-8):ステアリン酸(pKa>4)
(b-9):12-ヒドロキシステアリン酸(pKa>4)
(b-10):シクロヘキサンカルボン酸(pKa=4.70)
(b-11):フタル酸(pKa1=2.75)
3.酸化防止剤
(c-1):ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(c-2):トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
4.金属化合物
(d):酸化マグネシウム
5.安定剤
(e-1):グリセリンモノステアレート
(e-2):ポリエチレングリコールモノステアリン酸エステル
日本油脂(株)製,「ノニオンS-40」
(f-1):2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール
(f-2):ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
6.窒素含有化合物
(g-1):メラミン
(g-2):メラミン-ホルムアルデヒド樹脂
メラミン1モルに対してホルムアルデヒド1.2モルを用い、水溶液中、pH8,温度70℃で反応させ、反応系を白濁させることなく、水溶性初期縮合体のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を生成させた。次いで、攪拌しながら反応系をpH6.5に調整し、攪拌を継続し、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を析出させ、乾燥により粗製メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の粉粒体を得た。この粉粒体を60℃の温水で30分間洗浄し、濾過した後、残渣をアセトンで洗浄し、乾燥することにより白色粉末の精製メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を得た。
【0112】
・・・(略)・・・
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
」(段落【0108】ないし段落【0114】)
イ 引用文献の記載事項
記載hの段落【0108】には、「ポリアセタール樹脂100重量部に、カルボキシル基含有化合物、酸化防止剤、金属化合物、安定剤及び窒素含有化合物を表1に示す割合で混合した後、二軸押出機により溶融混合し、ペレット状の組成物を調製」することが記載されており、当該ペレット状組成物を調製する方法に用いられる具体的成分は、実施例11を参酌すると、段落【0113】の表1及び段落【0111】の記載から、ポリアセタール樹脂は「ポリアセタール樹脂コポリマー」であり、上記カルボキシル基含有化合物は「エチレン-メタクリル酸共重合体」であり、上記酸化防止剤は「ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]」であり、金属酸化物は「酸化マグネシウム」であり、他に安定剤及び窒素含有化合物が記載されていることから、引用文献には、上記具体的成分を含むペレット状組成物を調製する方法が記載されていると認められる。
ウ 引用発明
したがって、引用文献には、上記記載aないし記載hを整理すると、特に記載hから、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「ポリアセタール樹脂コポリマーに、エチレン-メタクリル酸共重合体、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、酸化マグネシウム、安定剤及び窒素含有化合物を混合した後、二軸押出機により溶融混合し、ペレット状組成物を調製する方法。」
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「ポリアセタール樹脂コポリマー」は、本件補正発明における「オキシメチレン共重合体」に、また、引用発明における「エチレン-メタクリル酸共重合体」は、本件補正発明における「エチレンメタクリル酸共重合樹脂若しくはエチレンアクリル酸共重合樹脂又はそれらの塩」の「エチレンメタクリル酸共重合樹脂」の場合に、そして、引用発明における「酸化マグネシウム」は、本件補正発明における「ステアリン酸カルシウム及び/又は酸化マグネシウム」の「酸化マグネシウム」の場合にそれぞれ相当する。
イ 引用発明における「ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]」は、ヒンダードフェノール類のフェノール系酸化防止剤として例示されることから(記載e)、本件補正発明における「ヒンダードフェノール系酸化防止剤」に相当する。
ウ 引用発明における「ポリアセタール樹脂」に各成分を「混合した後、二軸押出機により溶融混合し、ペレット状組成物を調製する方法」について、当該「混合した後、二軸押出機により溶融混合」は、一般的な溶融混錬方法であるから本件補正発明の「溶融混錬」に相当し、当該「ペレット状組成物」は、組成からみて、本件補正発明の「ポリオキシメチレン樹脂組成物」に相当する。よって、引用発明における「ポリアセタール樹脂」に各成分を「混合した後、二軸押出機により溶融混合し、ペレット状組成物を調製する方法」は、本件補正発明における「オキシメチレン共重合体」に対し、各成分を「溶融混錬」することで、「ポリオキシメチレン樹脂組成物を製造する方法」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「オキシメチレン共重合体に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、エチレンメタクリル酸共重合樹脂若しくはエチレンアクリル酸共重合樹脂又はそれらの塩と、ステアリン酸カルシウム及び/又は酸化マグネシウムとを溶融混錬することで、ポリオキシメチレン樹脂組成物を製造する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
オキシメチレン共重合体について、本件補正発明は、「共重合終了後に重合触媒を失活させているが、不安定末端基を安定化していない」粗オキシメチレン共重合体を用いて、「前記不安定末端基を安定化する安定化処理を行うことなく」ポリオキシメチレン樹脂組成物を製造するのに対して、引用発明は、上記粗オキシメチレン共重合体を用いること、及び不安定末端基を安定化する安定化処理を行わないことが特定されていない点。
<相違点2>
用途について、本件補正発明は、「押出成形品形成用」のポリオキシメチレン樹脂組成物であるのに対し、引用発明は、当該用途が特定されていない点。
<相違点3>
成分について、本件補正発明は、「粗オキシメチレン共重合体」に対し「ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「エチレンメタクリル酸共重合樹脂若しくはエチレンアクリル酸共重合樹脂又はそれらの塩」、及び「ステアリン酸カルシウム及び/又は酸化マグネシウム」のみを溶融混錬するものだが、引用発明は、他の成分として更に「安定剤及び窒素含有化合物」も加えて溶融混合する点。
(4)相違点についての判断
そこで、相違点1ないし3について、以下に検討する。
ア 相違点1について
引用発明のポリアセタール樹脂コポリマーの製造方法について、引用文献では重合触媒について記載されていないが、一般的にポリアセタール樹脂コポリマーを得る際、共重合反応を重合触媒を利用して進めることが知られていることから(必要ならば、高野菊雄編、ポリアセタール樹脂ハンドブック、初版、日刊工業新聞社、1992年2月28日、第48ページないし第58ページの「3.3. コポリマーの製造方法」欄を参照)、引用発明のポリアセタール樹脂コポリマーも当然、重合触媒を利用して共重合反応が進められているといえる。
併せて、共重合終了後のポリアセタール樹脂コポリマーに対して、安定化工程として重合触媒の失活や末端安定化の処理を行うことは、当業者に周知の技術である(必要ならば、高野菊雄編、ポリアセタール樹脂ハンドブック、初版、日刊工業新聞社、1992年2月28日、第56ページないし第58ページの「3.3.4 ポリマーの安定化」欄を参照)。
そこで、引用文献の従来技術をみると、「化学的に活性な末端を安定化」や「酸化防止剤及びその他の安定剤の添加」を実施しても(記載bの段落【0003】)、「熱や酸素の作用を受け、主鎖の分解や充分に安定化されていない末端からホルムアルデヒドが発生」(記載bの段落【0004】)することが記載されており、末端からのアルデヒド発生の抑制も含めた改善効果を期待してなされてきたものである。これを踏まえて、「ポリアセタール樹脂の熱安定性、特に成形加工時の溶融安定性を改善」(記載bの段落【0011】)するという引用文献の課題の検討においては、末端安定化は、あくまで従来から知られた任意に選択される処理手段に留まるものと解することができる。これは、末端安定化について、引用文献の他の記載では、「ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸又はそれらの無水物とのエステル化などにより安定化してもよい」(記載cの段落【0019】)とあり、引用文献では末端安定化は必須の処理として認識されていない点からも裏付けられる。
してみると、引用文献の課題を達成する過程の中で、必要とされる熱安定性や溶融安定性の改善水準に応じ、重合触媒の失活を行い、引用文献において任意とされる末端安定化は行わないことは、当業者であれば適宜なし得たことに過ぎず、実際に触媒を失活させた不安定末端基を有するポリアセタール樹脂コポリマーは周知のものであるから(例えば、特開2010-37445号公報の段落【0067】の「a-2」、特開2008-31348号公報の段落【0028】等参照。)、当該ポリアセタール樹脂コポリマーを採用することについても格別困難なことではない。また、その結果、得られるポリアセタール樹脂コポリマーは、粗オキシメチレン共重合体に相当する。
そして、本件補正発明の効果について検討すると、本願明細書では「成形時のホルムアルデヒド発生量を十分に抑えたポリオキシメチレン樹脂組成物を、上記安定化処理を行うことなく提供できる」ことが記載されており(段落【0017】)、ホルムアルデヒド発生量の改善に加え、他に長期色相安定性や長期物性である引張強度保持率が向上することも示されている(段落【0078】及び段落【0079】)。
しかしながら、引用文献にはペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]は、ポリアセタール樹脂組成物に用いられる特に好ましいヒンダードフェノール系酸化防止剤として例示されており(記載e)、酸化マグネシウムはポリアセタール樹脂の熱安定性、長期熱安定性や耐熱安定性を向上させる化合物として知られたものである(必要ならば、特開2010-37445号公報の段落【0044】、【0046】、特開2009-286874号公報の段落【0047】、段落【0049】、特開2008-156489号公報の段落【0045】、段落【0047】、特開2008-31348号公報の段落【0023】等参照。)。
さらに、引用文献にはポリアセタール樹脂組成物にカルボキシル基含有重合体を用いるとホルムアルデヒド発生を有効に抑制できることが記載され(記載dの段落【0038】)、エチレンメタクリル酸共重合樹脂は、その様なカルボキシル基含有重合体として例示されており(記載dの段落【0035】)、当該エチレンメタクリル酸共重合樹脂がアルデヒドの発生を抑制することは、引用文献の実施例1ないし5及び比較例1との対比からホルムアルデヒドの発生量が大きく抑制されていることが読み取れ、その点からも明らかである。
これらを勘案すると、引用発明において、上記エチレンメタクリル酸共重合樹脂に加え、さらにペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、酸化マグネシウムを有することで、重合触媒が失活されているが不安定基を安定化していないポリアセタール樹脂組成物を用いた場合でも、ホルムアルデヒドの発生が抑制されることは予測されることに過ぎず、それに伴いホルムアルデヒドを起因とした変色(記載gの段落【0090】)も当然防止できるものと理解でき、長期熱安定性や耐熱安定性の向上からみて、色相安定性や長期物性である引張強度保持率が向上することについても予測の範囲内といえる。
してみると、本件補正発明の上記効果は、引用文献に記載の事項及び周知技術から、当業者にとって格別顕著なものではない。
イ 相違点2について
引用文献では、「ポリアセタール樹脂成形品」(記載aの請求項10)とすることが記載されるが、その具体的な成形方法としては、「押出成形」(記載g)が例示されている。
よって、引用発明のペレット状組成物を押出成形品形成用とすることは、当業者であれば適宜なし得たことに過ぎない。
ウ 相違点3について
本願明細書では段落【0052】には「ホルムアルデヒド捕捉剤」を添加することを妨げず、段落【0053】ないし段落【0055】には「[他の添加剤]やその他の公知の添加剤を配合することが可能であることが記載されていることを踏まえると、本件補正発明は必須成分として「粗オキシメチレン共重合体」、「ヒンダードフェノール系酸化防止剤」、「エチレンメタクリル酸共重合樹脂若しくはエチレンアクリル酸共重合樹脂又はそれらの塩」、及び「ステアリン酸カルシウム及び/又は酸化マグネシウム」を溶融混錬するポリオキシメチレン樹脂組成物を製造する方法と解釈するのが相当である。してみると、本件補正発明は、引用発明の「安定剤及び窒素含有化合物」を任意成分としてさらに溶融混錬する場合も包含するものである。
よって、上記相違点3は実質的な相違点とは認められない。
なお仮に本件補正発明が上記必須成分のみからなる組成物であったとしても、引用文献では「安定剤及び窒素含有化合物」は任意成分であることから(記載aの請求項8、記載fの段落【0065】)、これら成分を含まない組成物を調製することは当業者であれば所望に応じて適宜なし得たことである。
(5)請求人の主張
請求人は、平成28年2月26日提出の審判請求書において、概略、以下の点を主張する。
ア 引用文献には、「不安定な末端部分を安定末端とする」処理を行った「ポリアセタール樹脂」に対し、 「酸化防止剤」と、 「エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体」と、 「アルカリ又はアルカリ土類金属化合物」とを混合することで、 「慣用の成形方法」に用いられるポリオキシメチレン樹脂組成物を製造する方法、の発明が記載されている点。
イ 引用文献には、ポリオキシメチレンの末端の安定化処理に代わるような、ホルムアルデヒドの低減手段については、開示も示唆もなく、引用文献に記載の安定化処理を必須に行う方法に基づいて、本件補正発明のように、不安定末端基の安定化処理を行わないことを動機付ける記載はない点。
しかし、上記ア及びイについて、上記(4)アにおいて述べたとおり、引用文献では、「ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸又はそれらの無水物とのエステル化などにより安定化してもよい」(記載cの段落【0019】)と記載されており、末端安定化は任意の処理手段として開示されていると解することが相当であり、実際にその様な不安定末端基を有するポリアセタール樹脂も知られている。
この点、末端安定化を必須の処理としない場合、不安定なポリアセタール樹脂コポリマーの利用を許容し、引用発明であるペレット状組成物の安定性が損なわれると解釈される余地があり得るかもしれないが、上記(4)アの本件補正発明の効果において述べたとおり、引用文献では、引用発明で示される各成分を有することで、不安定末端基の安定化を必須とせずとも、ホルムアルデヒドを抑制できることを踏まえると、あくまで末端安定化は任意の処理手段として開示されていると考えるのが自然であり、またこのことから末端安定化に代わる安定化手段が引用文献では開示されているとも理解することができる。そして、このような任意の末端安定化は、所望に応じて当業者が適宜選択すればよいことに過ぎない。
したがって、上記主張は失当であって、採用できない。
(6)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.むすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるということはできないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるから、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1.本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明は、平成27年5月19日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、出願当初の明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1.(1)のとおりである。
2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その出願前に頒布された下記引用文献に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2000-239484号公報
2.特開2000-017144号公報」
というものを含むものである。
3.引用文献の記載等
引用文献の記載、引用文献の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2.(2)アないしウのとおりである。
4.対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2.(1)で述べたとおり、本件補正発明における「ステアリン酸カルシウム及び/又は酸化マグネシウム」を、これを含む上位概念の化合物である「アルカリ土類金属化合物」とし、また「押出成形品形成用」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2.(2)ないし(4)に記載したとおり、引用文献及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもあるから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
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2016-002914