特許拒絶査定不服審判
2016-002902
電気化学キャパシタ
- 審判番号
- 2016-002902
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-500260外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年02月26日
- 審決日
- 2017年09月25日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WZ (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-500260「電気化学キャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月27日国際公開、WO2012/126499、平成26年 5月29日国内公表、特表2014-513414〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)3月18日を国際出願日として出願したものであって、平成26年11月19日付け拒絶理由通知に対して平成27年5月8日付けで手続補正がなされたが、同年10月28日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成28年2月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正がなされ、同年12月12日付け当審の拒絶理由通知に対して平成29年2月27日付けで手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成29年2月27日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
電気化学キャパシタ(1)であって、
-前記電気化学キャパシタ(1)の充電中に、電源(6)の正端子に接続されるための第1の電極(2)と、
-前記電気化学キャパシタ(1)の充電中に、電源(6)の負端子に接続されるための第2の電極(3)と、
-前記第1と第2の電極(2、3)を離すための多孔性セパレータ(5)であって、5乃至9pHを有し且つ2つの前記電極(2、3)間に配置されており、可逆的ファラデー反応を生じさせるほぼ中性の水性電解液(4)に浸漬させた前記多孔性セパレータ(5)と、
を具備しており、
前記ほぼ中性の水性電解液(4)は、金属カチオンとアニオンとによって構成される塩を含み、
各電極(2、3)は、ナノポーラスカーボンから成る活性材料を含み、
前記第1の電極(2)は、前記第2の電極(3)と非対称である、電気化学キャパシタ(1)。」
第3 引用例
1.平成28年12月12日付け当審の拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)で引用された特開平4-177713号公報(以下、「引用例1」という。)には、「電気二重層キャパシタ」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
ア.「{電解液}
本発明の電気二重層キャパシタでは、上記のような分極性電極を電解液に浸漬する。
第1~第5までの発明で用いることの出来る電解液としては、例えば無機または有機の酸、アルカリ、あるいはこれらの塩の水溶液、例えばHCl、H2SO4、H3PO4、KOH、NaOH、LiOH、KCl、NaCl等の水溶液を用いることができる。」(第7頁左下欄2行~10行)
イ.「{セパレータ}
本発明の電気二重層キャパシタに用いることのできるセパレータとしては、電子伝導性が低く、かつイオン透過性を示すものであればどのようなものでも使用可能である。具体的には、プラスチックの多孔フィルム、あるいは、不織布、紙等が使用される。セパレータは、内部抵抗を減少する目的からは、できるだけ薄く、かつ電解液中に浮遊する炭素粒子による短絡を防ぐ目的からは、孔径が小さいことが望ましい。」(第7頁右下欄14行~第8頁左上欄3行)
ウ.「{電気二重層キャパシタ}
本発明の電気二重層キャパシタの構成は、基本的には通常次のような構成でなる。すなわち、第1図に示すように、セパレータ1と、活性炭素多孔体でなる1対の分極性電極2,3と、1対の集電体4,5とが電解液6に浸漬している。電解液6中で分極性電極2,3はセパレータ1を間にして互いに対向し、集電体4,5はその分極性電極2,3を更に外側から挟んで分極性電極2,3に接着し、分極性電極2,3に導通している。」(第8頁左上欄4行~13行)
上記アないしウから、引用例1には、電気二重層キャパシタについて以下の事項が記載されている。
・上記ウによれば、活性炭素多孔体でなる1対の分極性電極2,3と、1対の集電体4,5と、分極性電極2,3の間に配置されたセパレータ1とが、電解液6に浸漬されているものである。
・上記アによれば、電解液としてNaCl水溶液を用いたものである。
・上記イによれば、セパレータは多孔を有するものである。
そうすると、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「活性炭素多孔体でなる1対の分極性電極と、1対の集電体と、
当該分極性電極の間に配置された多孔を有するセパレータとが、
NaCl水溶液を用いた電解液に浸漬されてなる
電気二重層キャパシタ。」
2.当審拒絶理由通知で引用された特開2001-278607号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
エ.「【0002】
【従来技術】従来より活性炭に代表される各種多孔質炭素材料は、その優れた吸着性能、分離機能を活用して気体や液体中の不純物の除去、ガス分離、溶剤回収等の分野に広く利用されている。近年、これらの用途とは別に、炭素材料中の微小な細孔を利用したメタンや水素の大量吸蔵材料、イオンや電解質を多量に充填及び放出する機能を備えた電子デバイス材料として、二次電池の負極材や電気二重層キャパシタ材料への利用が急速に拡大している。メタンや水素ガス等のガス状物の吸蔵材としては、数ナノ以下の細孔を有する多孔質体が有効であり、一方、電子デバイス用としては、イオンや電解質、あるいはこれらが溶媒和した状態のサイズに相当する1~数十nmの細孔を有する多孔質体が望ましい。
オ.「【0008】
本発明における多孔質炭素材料の製造方法は、次の3工程を有するものである。
(1)フッ素系樹脂とアルカリ金属またはアルカリ金属含有溶液とを反応させて、フッ素系樹脂中のフッ素原子をアルカリ金属で脱離させ、脱フッ素化物とアルカリ金属フッ素化物とを含む反応生成物を製造する。
(2)次に、その反応生成物を酸処理して、脱フッ素化物から副生したアルカリ金属フッ素化物を除去した脱フッ素化炭素質物質を炭素前駆体として得る。その際、その反応生成物を酸処理する前に、脱フッ素化物と副生したアルカリ金属フッ素化物とが共存する状態で、真空中において200~500℃の温度範囲で熱処理することが好ましい。
(3)次に、その炭素前駆体から多孔質炭素材料を製造する。その際、その炭素前駆体を不活性ガス雰囲気中において500~3000℃の温度範囲で高温熱処理することが好ましく、これにより1~50nmの範囲の細孔径を持つ多孔質炭素材料を得ることができる。」
カ.「【0017】
【発明の効果】本発明の製法により得られる多孔質炭素材料は、数nm~50nmの範囲で、均一に制御された所望の細孔径を有する優れた多孔質炭素材料であるから、各種ガスの吸蔵材料、例えば、水素やメタン等の低級炭化水素等の吸蔵材料、二次電池の電極材料、電気二重層キャパシタ材料等の広範な分野において極めて有用なものである。」
上記エないしカによれば、引用例2には、電気二重層キャパシタなど電子デバイスの電極として、「1~50nmの細孔径を持つ多孔質炭素材料」を用いることが記載されている。
3.当審拒絶理由通知で引用された特表2007-529403号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
キ.「【0044】
本方法は、多くの可能な平均ポア径の一つを有するポーラスカーボンを作製するために使用されることも可能ではあるが、ポーラスカーボンは約2nmと約50nmの間の平均ポア径によって特徴づけられることが好ましい。約2nmと約50nmの間の平均ポア径は、上文に記述されたメソポア領域に実質的に相当する。ポーラスカーボンが、約2nmと約30nmの間の平均ポア径によって特徴づけられることはなおさらに好ましい。」
ク.「【0048】
(炭素質電極を作製する方法)
さらにもう一つの側面においては、本発明は、本発明のメソポーラスカーボンを材料にして作られた炭素質電極および、それを作製する方法を含んでなる。本メソポーラスカーボンは、高い伝導性、高表面積、高いメソ多孔性、および高いキャパシタンスを有することから、二重層ウルトラキャパシタによるエネルギー貯蔵、および容量性脱イオン技術による汽水の脱塩に使用される電極用には理想的である。特に、メソポーラスを含有するカーボンは、それらが高表面積を可能にするとともに電解質イオンの自由な移動を可能にするという点で、いくつかの液体適用において利点をもつ。本カーボンは、非常に薄いカーボン電極として使用されやすく、カーボンの内外へのより迅速なイオンの移動を可能にすることから、増大された電力を生じる。さらに、薄板は電極のアレイ内へ容易に梱包されることが可能であり、コンパクトな装置を産生する。」
上記キないしクによれば、引用例3には、二重層キャパシタの電極として、「2~50nmの平均ポア径を備えたメソポーラスカーボン」を用いることが記載されている。
4.当審拒絶理由通知で引用された特表2010-511302号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
ケ.「【0031】
実施形態の一つに従って、上記電極の1つの炭素(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)の最大0.7nmの直径を有する微小孔の比体積は、他の電極よりも大きく、特に、第2の電極の炭素(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)の最大0.7nmの直径を有する微小孔の比体積は、第1の電極よりも大きい。
・・・(中略)・・・
【0038】
好ましい実施形態に従うと、上記方法はまた、第2の電極の炭素(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)が、第1の電極の炭素(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)に適用されたものと異なる酸化処理を受けるステージを含む。穏やかな酸化処理の後、第2の電極の炭素表面(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)の原子の官能化の程度と、上記未処理の炭素(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)との間の比率は、最大1.5、又はさらに最大1.32である。
【0039】
別の好ましい実施形態に従う変形では、上記方法は、第2の電極の炭素(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)が還元処理を受け、その後、第2の電極の炭素表面(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)の原子の官能化の程度の、上記未処理の炭素(活性化されている又は活性化されていないとは無関係)に対する比率が最大0.06であるステージを含む。」
コ.「【0046】
図1は、充電の際の本発明に従うコンデンサを示す。上記コンデンサ1を、以下、ABと称する。
コンデンサ1は、以下を含む;
以下に示される高度な酸化処理を受けた活性炭Aの第1の電極2:及び
以下に記載される穏やかな酸化処理を受けた活性炭Bの第2の電極3。
【0047】
上記2つの電極2及び3は、お互いに向かい合うように配置され、そして1モル/Lの水性硫酸溶液から作られた電解質4で満たされたスペースにより分離されている。
Fischer Bioblockから市販される0.18mm厚のガラスマイクロファイバーペーパーの多孔質セパレータ5を、2つの電極2及び3の間の電解質4内に配置し、そして電解質4を含むスペースを2つの区画に分離している。
【0048】
充電の際、第1の電極2は、導線7を用いて、電力供給源6の陽極に接続される。第2の電極3は、別の導線8を用いて供給源6の陰極に接続される。充電は、2つの方法により蓄電される。図2に示される第1の方法は、静電荷分離現象に相当する。図2は、具体的には、供給源6の陽端子に接続された第1の電極2を示す。電流の通過の際、アニオン11を含む層9が、電極2の正に分極した表面を有する界面のところで、電解質4内に形成される。第2の層10が、電解質4内の第1の層9上に形成される。第2の層10は、上記電解質の溶媒13により溶媒和されているカチオン12を含む。従って、カチオン12は、負に分極した陰極3に移動する。この電荷貯蔵現象と平衡して、レドックス反応がまた、各電極2及び3のところで行われ、酸素系官能基の場合には、キノン/ヒドロキノン基、及び窒素系官能基の場合には、官能基ペアーC=NH/CH-NH2及びC-NHOH/C-NH2の一般的な関与が生じる。
【0049】
未処理の活性炭Aは、例えば、Noritにより製造された活性炭、SUPER 50(商標)である。
高度な酸化処理が、電解質4と接触することを目的とする炭素の表面に適用される。上記高度な酸化処理は、1gの活性炭を、30%HNO320mLと、1時間、80℃で混合することから成る。酸化された活性炭Aは、そのようにして得られる。次いで、酸化された活性炭Aを蒸留水で洗浄し、次いで120℃で12時間乾燥する。約1gの酸化された活性炭Aが、そのようにして得られる。
【0050】
未処理の活性炭Bは、例えば、KansaiからのMaxsorb(商標)活性炭である。
穏やかな酸化処理が、電解質4と接触することを目的とする炭素の表面に適用される。上記穏やかな酸化処理は、1gの活性炭を、20%のH2O240mLと、室温で1時間、混合することから成る。次いで、得られた炭素を蒸留水で洗浄し、次いで120℃で12時間乾燥する。約1gの穏やかに酸化された活性炭Bが、そのようにして得られる。」
上記ケないしコによれば、引用例4には、コンデンサの電極として、「nmサイズの直径を有する微小孔」を備えたものを用い、それぞれ「微小孔の比体積、酸化処理が異なる」ものを用いたことが記載されている。
5.当審拒絶理由通知で引用された特表2006-503441号公報(以下、「引用例5」という。)には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
サ.「【0008】
発明者は、電極の種々異なる最大電荷が極性および電解質にのみ影響されるのではなく、電極のサイズ、構造(デザイン)、質量並びに表面サイズおよび表面構造によっても影響されることを見いだした。従って、各腐食電位で異なっている電極の最大電荷を相互に整合させることが可能である。これは、従来の電気二重層コンデンサの場合では不可能である。」
シ.「【0058】
図4には本発明による電気二重層コンデンサの可能な別の形態が示されている。この電気二重層コンデンサは、交互に配置された第1の電極層1と第2の電極層5と、その間に位置するセパレータ3から構成されている積層体を含む。本発明の電気二重層コンデンサではここで、電極材料が同じである場合の第1の電極層と第2の電極層の最大電荷が例えば電極層1, 5の種々異なる厚さによって整合される。突出している金属帯50を介して、電気二重層コンデンサのケーシング45に存在する電極ターミナル55が接触接続される。
【0059】
図5には、本発明による電気二重層コンデンサの別の可能な実施形態が、コンデンサ巻(Kondensatorwickels)の形で示されている。ここは、その距離に応じて孔55が残る中心管(例えばマンドレル)の周りに、第1の電極層1並びにセパレータ3並びに第2の電極層5が巻かれる。電気二重層コンデンサのこのような実施形態でも、各電極層は突出した帯50を介して接触接続され、最大電荷を整合させるために、電極材料が同じ場合には例えば異なる厚さを有する。
上記サないしシによれば、引用例5には、電気二重層コンデンサにおいて、「厚さの異なる電極」を用いたことが記載されている。
6.当審拒絶理由通知で引用された特開2001-185452号公報(以下、「引用例6」という。)には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
ス.「【0016】さらに、電極2中の活性炭の酸素含有量は主として活性炭表面にある-OH(フェノール基)、-COOH(カルボキシル基)、-CHO(アルデヒド基)等の官能基に起因するものであるが、これら活性炭表面の官能基は、2.5V以上の電圧を印加すると、負極側で電気二重層コンデンサ中に存在する水と酸化または還元反応を生じる結果、活性炭質構造体中の前記官能基が還元されて炭酸ガス、酸素ガス等のガスやその他不純物が発生し、該不純物が活性炭表面に付着し、イオン吸着の妨げとなるとともに、活性炭質構造体中の粒子間の結合力を弱めて内部抵抗が増加し活性炭質構造体の保形性が低下するため、負極側の電極2bの活性炭表面の官能基量は少ない、すなわち、負極側の電極2b中の活性炭の酸素量は少ないことが望ましい。
【0017】なお、正極側では静電容量を高めるために活性炭表面の官能基量が多い、すなわち活性炭の酸素量は多いことが望ましいことから、正極側の電極2aの活性炭の酸素含有量が負極側の電極2b中の活性炭の酸素含有量よりも多いことが望ましい。」
上記ス、段落【0050】の表によれば、引用例6には、電気二重層コンデンサにおいて、「酸素含有量の異なる電極」を用いたことが記載されている。
7.当審拒絶理由通知で引用された特開昭57-53923号公報(以下、「引用例7」という。)の特許請求の範囲、第3頁の表によれば、電気二重層キャパシタにおいて、「分極性電極量を異ならせた電極」を用いたことが記載されている。
第4 対比・判断
1.本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「活性炭素多孔体でなる1対の分極性電極と、1対の集電体と」は、分極性電極と集電体との組み合わせでそれぞれコンデンサ(キャパシタ)の正極と負極を形成するから、本願発明の「キャパシタの充電中に、電源の正端子に接続されるための第1の電極と、キャパシタの充電中に、電源の負端子に接続されるための第2の電極と」に相当する。
そして、引用発明の「活性炭素多孔体でなる1対の分極性電極」は、電極に炭素の活性材料を含んでいるから、本願発明の「各電極は、カーボンから成る活性材料を含み」に相当する。但し、電極に含まれるカーボンについて、本願発明は「ナノポーラス」構造であるのに対し、引用発明にはその旨の特定がない点で相違する。
また、電極について、本願発明は互いに「非対称」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない点で相違する。
(2)引用発明の「NaCl水溶液を用いた電解液」は、ほぼ中性の水溶液といえ、金属の陽イオン(Na+)と陰イオンを備えているから、本願発明の「ほぼ中性の水性電解液は、金属カチオンとアニオンとによって構成される塩を含み」に相当する。
なお、審判請求人は、平成29年2月27日付け意見書において、「引用文献1には、水性電解液のタイプ(すなわち、中性、アルカリ性、または、酸性)の選択に対する特定の選好についての指摘はありません。」と主張している。しかしながら、引用発明の「NaCl水溶液を用いた電解液」は、上記アからすると多数の中から選択する記載となっているが、引用例1の<実施例9>(第12頁左下欄15~19行を参照。)で使用されているように、単なる選択肢の1つではなく、引用例1の記載全体から引用発明として認定し得る事項である。よって、審判請求人の主張を認めることはできない。
そして、本願発明の「可逆的ファラデー反応を生じさせるほぼ中性の水性電解液」における「可逆的ファラデー反応」とは、そもそも本願明細書に記載のない用語であるが、本願明細書の段落【0014】、【0024】ないし【0025】、【0032】ないし【0033】、【0058】を参照すると、「(中性の)水性電解液」であれば「可逆的ファラデー反応」が生じるものとしか読めないから、引用発明の「NaCl水溶液を用いた電解液」は、本願発明の「可逆的ファラデー反応を生じさせるほぼ中性の水性電解液」に相当する。
(3) 引用発明の「該分極性電極の間に配置された多孔を有するセパレータ」は、電極同士を離すものであり、NaCl水溶液を用いた電解液に「浸漬されてなる」ものだから、本願発明の「前記第1と第2の電極を離すための多孔性セパレータであって・・・2つの前記電極間に配置されており、可逆的ファラデー反応を生じさせるほぼ中性の水性電解液に浸漬させた前記多孔性セパレータ」に相当する。
そして、引用発明の「セパレータ」は、ほぼ中性であるNaCl水溶液に浸漬されるものであるから、当然にほぼ中性であることは技術常識であり(わざわざ強酸性や強アルカリ性のものを使用する意義は認められない。)、本願発明の「5乃至9pH」を有するセパレータに相当するといえる。なお、本願発明のセパレータが「5乃至9pH」と特定されている点については、直接本願明細書に記載されていない事項であり、単にほぼ中性の水性電解液(段落【0023】、【0027】、【0048】のpHを参照。)に浸漬させるから同等のpHに特定したとしか読めない。
(4)引用発明の「電気二重層コンデンサ」は、上記(1)ないし(3)のとおり、カーボンから成る活性材料を含む2つの電極、ほぼ中性の水性電解液、多孔性セパレータを備えたものだから、本願発明の「電気化学キャパシタ」に相当する。
上記(1)ないし(4)から、本願発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。
<一致点>
電気化学キャパシタであって、
-前記電気化学キャパシタの充電中に、電源の正端子に接続されるための第1の電極と、
-前記電気化学キャパシタの充電中に、電源の負端子に接続されるための第2の電極と、
-前記第1と第2の電極を離すための多孔性セパレータであって、5乃至9pHを有し且つ2つの前記電極間に配置されており、可逆的ファラデー反応を生じさせるほぼ中性の水性電解液に浸漬させた前記多孔性セパレータと、
を具備しており、
前記ほぼ中性の水性電解液は、金属カチオンとアニオンとによって構成される塩を含み、
各電極は、カーボンから成る活性材料を含む、
電気化学キャパシタ。
<相違点1>
電極に含まれるカーボンについて、本願発明は「ナノポーラス」構造であるのに対し、引用発明にはその旨の特定がない。
<相違点2>
電極について、本願発明は互いに「非対称」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない。
2.相違点についての判断
<相違点1>について
ナノポーラス(メソポーラス)カーボンを電気化学キャパシタの電極材料に採用することは、例えば引用例2ないし引用例4に記載されているように(上記「第3 2.ないし4.」を参照。1nm~50nmの孔は、一般的にメソポーラスといえる。)、周知の技術事項である。
よって、引用発明の分極性電極に周知の技術事項を採用して相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、電極が「ナノポーラスカーボン」を含む点については、本願明細書には記載されていない事項であるから、格別な効果を奏することとは認められない。
<相違点2>について
本願発明でいう電極同士を「非対称」にすることは、本願の特許請求の範囲の請求項3、請求項4、請求項6を参照すると、電極を互いに異なる材料、異なる酸化状態、異なる質量にすることと認められるところ、例えば引用例4ないし7に記載されているように(上記「第3 4.ないし7.」を参照。)、周知の技術事項である。
よって、引用発明の分極性電極に周知の技術事項を採用して相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
なお、出願人は、平成29年2月27日付け意見書において、いずれの引用文献においても「第1の電極と第2の電極とが非対称である電気化学キャパシタ」および「ほぼ中性の水性電解液」を備えた実施例は開示も示唆もされていない旨を主張している。しかしながら、本願明細書の例えば段落【0041】に「第1と第2の電極は同じであってもよい。・・・ほぼ中性の水性電解液を使用すると、1.6Vの最大電圧に到達することができ」と記載され、段落【0042】に「第1の電極は、第2の電極と異なっていてもよい。この場合は、システムは非対称キャパシタと呼ばれる。これは、最大電圧窓を、例えば1.9Vまで上げることができる。」と記載されているように、あくまでも非対称キャパシタ(非対称の電極)を選択することは更に電圧を上げるための「付加的」な構成要素であるから、「非対称」と「ほぼ中性の水性電解液」とが共に記載された引用文献でなければ進歩性を否定できないわけではなく、ほぼ中性の水性電解液を使用した電気化学キャパシタ(引用発明)に、周知の技術事項(非対称な電極を用いる点。)を組み合わせることは当業者であれば容易になし得ることである。
そして、本願発明が奏する効果は、引用例1、引用例2ないし7から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明および周知の技術技術により当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について言及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-002902