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特許拒絶査定不服審判

2016-000168

安定な抗体含有組成物

審判番号
2016-000168
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-554367外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年01月06日
審決日
2017年02月21日
公報発行日
2017年08月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .575-Z (A61K) / P18 .113-Z (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-554367「安定な抗体含有組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 1日国際公開、WO2011/104381、平成25年 6月 6日国内公表、特表2013-520476〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 [第1]手続の経緯 本願は、平成23年2月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年2月26日 欧州特許庁、2010年3月4日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年1月6日付の拒絶理由通知に応答して同年7月9日付で手続補正がなされたが、同年9月16日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年1月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。 [第2]平成28年1月6日付の手続補正についての補正却下の決定 1.補正却下の決定の結論 平成28年1月6日付の手続補正を却下する。 2.理由 (1)本件補正の内容及び目的 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、補正前の 『 タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であり、前記タンパク質が、50mg/mlから300mg/mlの間の濃度で組成物中に存在する抗体であることを特徴とする、安定な液体組成物。 』 から 『 タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であり、前記タンパク質が、100mg/mlから150mg/mlの間の濃度で組成物中に存在するモノクローナル抗体であることを特徴とする、安定な液体組成物。 』 とする補正事項を含むものであり、かかる補正事項は、「組成物中に存在する抗体である」「タンパク質」の濃度を補正前の「50mg/mlから300mg/mlの間の濃度」から「100mg/mlから150mg/mlの間の濃度」に限定するとともに、補正前の「抗体」を「モノクローナル抗体」に限定して、あらたな請求項1とするものである。 そして、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」ということがある)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。 なお、本願補正発明の「塩」ならびに「バッファー」に関する、本願明細書の以下の記載: 『 【0032】 1つの実施形態において、塩は塩化ナトリウム又は塩化マグネシウムであり、・・・ 【0033】 1つの実施形態において、塩はアミノ酸である。・・・。1つの実施形態において、塩はアルギニン、グリシン、リジン、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸又はそれらの組み合わせから選択される。1つの実施形態において、アミノ酸はアルギニン又はグリシンである。・・・。塩の型でも又は遊離型でも何でも適切な型のアミノ酸を組成物に添加することが可能である。 ・・・ 【0036】 1つの実施形態において、バッファーは適切な薬学的に許容されるバッファーであり、薬学的に許容される塩基及び薬学的に許容される酸の両方を含む。・・・ 【0037】 薬学的に許容される酸及び塩基の例は、当該技術分野で周知のものなどの無機の、同様に有機の非毒性の酸/塩基を包含し得る。例は、・・・、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、マレイン酸塩、コハク酸塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン又はそれらの混合物である。・・・。1つの実施形態において、薬学的に許容されるバッファーはヒスチジン、マレイン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩又はトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンを含む。 』(下線は当審による) によれば、本願補正発明にいう「塩」又は「バッファー」としては、塩化ナトリウムやリン酸塩等の通常「塩」又は「バッファー」と把握されるもののみならず、ヒスチジンやアルギニン等の遊離型アミノ酸もまたそのいずれかに該当することが意図されているものと解される。 このことを踏まえ、本願補正発明の「塩」又は「バッファー」には、ヒスチジンやアルギニン等の遊離型アミノ酸が含まれるものとして、以下判断する。 (2)独立特許要件の判断 (2-1)引用刊行物の記載 ・刊行物1:米国特許出願公開第2004/0191243号明細書(原査定時の引用文献A2) ・刊行物2:Journal of Pharmaceutical Sciences, (2010 Jan.) 99(1) p.82-93(同引用文献A3) ・刊行物3:国際公開第2008/086395号(同引用文献A4) 原査定で引用文献A2~A4として引用された、本願優先日の前に頒布されたことが明らかな上の刊行物1~3には、以下の事項が記載されている。(いずれも原文が英語のため、当審による日本語訳文にて記す。なお、刊行物3の訳文は対応する公表公報:特表2010-515742号公報の記載を参照して付したものである。また、文中の下線は当審による。) (i)刊行物1の記載事項 ・1a.12頁 請求項31-39 『 31.液体製剤であって、少なくとも1つの抗体、及び、その液体製剤中で当該少なくとも1つの抗体を安定化するのに十分な量のヒスチジンを含む、液体製剤。 32.請求項31の液体製剤であって、さらに賦形剤を含む、液体製剤。 ・・・ 34.請求項32の液体製剤であって、少なくとも1つの他の賦形剤がアルギニンである、液体製剤。 ・・・ 37.請求項31の液体製剤であって、少なくとも1つの抗体がヒトモノクローナルIgG2抗体である、液体製剤。 38.請求項31の液体製剤であって、十分な量のヒスチジンが6~40mMの間である、液体製剤。 39.請求項31の液体製剤であって、十分な量のヒスチジンが約15mMである、液体製剤。 』 ・1b.1頁[0006] 『 [0006] 抗体に影響を及ぼし得る2つの一般的な分解経路は物理的及び化学的分解である。物理的分解はより高次のタンパク質構造(2次、3次及び4次)における変化であり共有結合性の修飾を含まない。物理的分解の例は凝集、吸着、変性及び沈澱を含む。これに対し、化学的分解は、結合の形成又は開裂を介したタンパク質の一次構造の修飾を含み、よって新規な化学物質をもたらす。化学的分解の例は脱アミド化、異性化、酸化及び加水分解を含む。技術的には別個であるものの、物理的及び化学的分解はしばしば相互に関連する。例えば、部分的にほどかれたタンパク質(物理的に分解されている)は結果として酸化(化学的分解)の増大をもたらす。 』 ・1c.3頁[0036]~[0039] 『 抗体 [0036] ここでの記述に含まれる実施例は完全なヒトモノクローナルIgG2抗体に向けられたものであるが、本発明は任意の特定の型の抗体に限定されない。・・・ ・・・ [0039] 特定の実施形態において、抗体は外因性の抗体を産生するように遺伝子的に改変されたトランスジェニック動物により産生され得る。例えば、1つの完全ヒトモノクローナルIgG2抗体が・・・産生され得る。そのような抗体の1つはABX-IL8であり・・・。ABX-IL8抗体はインターロイキン-8(IL8)に対し特異的であり・・・ 』 ・1d.4~5頁[0052] 『 液体製剤 [0052] 固形の抗体製剤を安定化し得ることに加え、ヒスチジンは液体抗体製剤を安定化するために用いることもできる。したがって、ヒスチジンを含む液体製剤が当業者にとり容易に知られた賦形剤を用いて製造され得る。例えば液体製剤はバッファー、界面活性剤、抗酸化剤、安定化剤ならびにそのようなものを用いて調製され得る。・・・ 』 ・1e.9~10頁[0093] 『 実施例11 液体製剤の調製及び貯蔵 [0093] 精製された抗体が11の個別の製剤(表5)に・・・製剤化された。・・・ ・・・ 表5 溶液安定性研究のための製剤 製 剤   組 成                  注 Aa   40mMヒスチジン、40mMアルギニン、  ・・・ 150mMスクロース B    15mMヒスチジン、15mMアルギニン、  ・・・ 200mMスクロース Cb   ・・・                   ・・・ ・・・・・・ J    ・・・                   ・・・ a製剤A及びBは100mg/mLのABX-IL8を含む。 b製剤C~Jは・・・                                                      』 ・1f.10頁[0094]~[0095] 『 液体製剤におけるスクロース-ヒスチジン間の比較 [0094] 液体抗体製剤におけるヒスチジン-スクロース間の安定化効果の比較が行われた。ABX-IL8が2つの製剤A及びBに処方化された(表5)。製剤A及びBの双方共、ヒスチジン、アルギニン、スクロース及びポリソルベート20、ならびに濃度100mg/mLのABX-IL8から成っていた。2つの製剤の相違は、製剤Aが50mMのヒスチジン/アルギニン(25mMヒスチジン/25mMアルギニン)を製剤Bより多く含み、製剤Bは50mMのスクロースを製剤Aより多く含む点にあった。 [0095] 両製剤は2-8、25及び40℃で3ヶ月間貯蔵された。安定性プロファイルが毎月チェックされた。得られた結果のデータが点グラフで図9に提供されている。図9は、サンプルが25℃及び40℃で貯蔵された場合、製剤B(黒点)中のABX-IL8が製剤A(白点)におけるそれより高レベルの可溶性凝集物を有しており、40℃ではより顕著で高レベルの凝集物を有していたことを示す。丸は2-8℃で貯蔵されたサンプル、菱形は25℃で貯蔵されたサンプル、そして四角は40℃で貯蔵されたサンプルを表す。結果は、ヒスチジンがアルギニンと共に試験されたレベルでスクロースより良好な保護作用を与えることを示唆する。 』 ・1g.10頁[0098] 『 実施例15 液体製剤の安定性 100mg/mL抗体、40mMヒスチジン、40mMアルギニン、150mMスクロース、0.04%ポリソルベート20を含む液体製剤の安定性プロファイルが測定された。特に、各製剤のモノマーの割合が様々な時期及び温度にわたり測定され記録された。結果は下の表6に提供されている。 表6 ABX-IL8液体製剤の安定性プロファイル 時点(月)  貯蔵温度(℃)   pH     %モノマー 6     2-8       6.0    99.8 6     25        6.0    99.5 3     40        6.0    98.4 』 ・1h.11頁[0101]~[0105] 『 実施例16 溶液の粘度研究 [0101] 溶液の粘性は抗体製剤において非常に重要な特性である。タンパク質又は抗体は可逆的に会合する傾向を有するという事実に起因して、より高濃度の抗体を含む製剤は粘性が高くなり、スケールアップして投与形態のものを製造することを困難とするであろう。したがって、高濃度のタンパク質を含む製剤において溶液の粘度を効果的に減少させ得る任意の手段が所望される。 [0102] 異なるレベルのヒスチジンを含むABX-IL8液体製剤の溶液の粘度が試験された。 [0103] 精製されたABX-IL8抗体が・・・5mMヒスチジン中pH6下で150mg/mLに濃縮された。ヒスチジン単独(0.5M)又はヒスチジン/アルギニン(0.5M/0.5M)のストック溶液が等分され・・・濃縮された。濃縮された塩は粘度測定のため異なる濃度で抗体溶液中に添加された。最も高い添加濃度での容量変化は5%未満であった。したがって、抗体の濃度は塩の添加において維持され、それはA280を用いた濃度測定により確認された。粘度測定は室温下で・・・行われた。 ・・・ [0105] 図12はヒスチジン(黒丸)又はヒスチジン/アルギニン(白四角)のABX-IL8抗体の溶液の粘度に対する効果を示す点グラフである。製剤は異なる濃度の賦形剤(ヒスチジン又はヒスチジン/アルギニン)を5mM~60mM含んでいた。結果として得られたデータは、製剤中のヒスチジンレベルの増加が濃度依存的に粘度の減少を誘導したことを実証する。ヒスチジン含有製剤中のアルギニンの添加はさらに溶液の粘度を減少させた。 』 ・1i.図9 『 』 ・1j.図12 『 』 (ii)刊行物2の記載事項 ・2a.標題 『モノクローナル抗体製剤におけるオパール色及び粘性の理解及び調節』 ・2b.要約 『 要約: オパール色及び高粘性は抗体の高濃度製剤への課題を提起し得る。両現象は、溶液のイオン強度を以て調節され得るタンパク質-タンパク質の分子間の相互作用に起因する。我々は、低イオン強度下で高い粘性を示し(90mg/mL及び23℃で~20cP)等張性イオン強度下で顕著なオパール色を示す(90mg/mL及び23℃でおよそ100ネフェロ分析濁度単位)治療用モノクローナル抗体を研究した。これらの作用の原因となる分子間の相互作用が膜浸透圧法、静的光散乱、及びゼータ電位の測定を用いて特徴付けされた。正味のタンパク質-タンパク質間の相互作用は低イオン強度下(~4mM)で反発性であり、等張イオン強度下で誘引性であった。高い粘性は低イオン強度下では電気粘性力に起因し、等張イオン強度下における顕著なオパール色は誘引性の抗体相互作用と関連を有する。さらに、これらは臨界現象と関係を有すると思われ、オパール色の程度は臨界点との近接に依存することが示唆される。我々が実証するのは、中程度のイオン強度を介して反発力及び誘引力のバランスを保つことにより、そしてmAb濃度を見かけ上の臨界濃度を超えて増大させることにより、オパール色及び粘度の双方とも同時に最小化し得るということである。 』 ・2c.82頁右欄1~8行 『 皮下投与は<1.5mlの容量上の制限を課し、それはいくつかのタンパク質、特に抗体の場合には、100mg/mLを超え得るタンパク質の濃縮を必要とする。2高タンパク質濃度下での加速された凝集率に加え3、高濃度の抗体製剤は望ましくないオパール色及び高粘性を示すかもしれない。4-6 』 ・2d.84頁左欄3~9行 『 本研究は高い粘性及び顕著なオパール色を30mg/mL超の濃度下で示す治療用mAbに関するものであり、それらの両方共溶液の条件に依存する。pH6の典型的な液体mAb製剤において、イオン強度は両方の溶液の挙動に影響を与える鍵となる溶液のパラメーターである。・・・ 』 ・2e.84頁左欄30~34行 『 MedImmune Inc, Gaithersburg, MDにより製造された完全なIgG1サブクラスのヒト化mAbがmAbとされ、分子量は148kDaである。・・・』 ・2f.図1 『 [※図1説明文の抄訳] 図1.pH6及び3つのイオン強度におけるmAb溶液の粘度の濃度依存性。溶液の条件:(●)10mMヒスチジン;(□)2.2mMリン酸ナトリウム;・・・;(◆)10mMヒスチジン、2mM NaCl;・・・ 』 2g.図2 『 [※図2説明文の抄訳] 図2.ネフェロ分析濁度により測定された、pH6におけるmAb濃度の関数としての、オパール色。溶液条件:(●)10mMヒスチジン;(□)2.2mMリン酸ナトリウム;・・・ 』 2h.図5 『 [※図5説明文の抄訳] 図5.pH6におけるmAbのオパール色に対するイオン強度の影響。オパール色はネフェロ分析濁度により測定され、イオン強度はNaClで調整された。溶液条件:(●)10mMヒスチジン・・・;(◆)10mMヒスチジン、2mM NaCl、・・・;(□)10mMヒスチジン、5mM NaCl、・・・;(■)10mMヒスチジン、10mM NaCl、・・・;・・・ 』 (iii)刊行物3の記載事項 ・3a.請求の範囲 『 1.抗IL-13抗体製剤であって、 (a)抗IL-13抗体と、 (b)抗凍結剤と、 (c)前記製剤のpHが約5.5~約6.5の範囲にある緩衝液と、 を含む製剤。 2.前記製剤が液体製剤、凍結乾燥製剤、液体として再構成される凍結乾燥製剤、またはエアロゾル製剤である請求項1に記載の製剤。 3.前記製剤中の前記抗IL-13抗体が、約0.5mg/ml~約250mg/ml、・・・約100mg/ml~約200mg/ml、または・・・の濃度にある請求項1に記載の製剤。 4.前記抗IL-13抗体がヒト化抗体である請求項1に記載の製剤。 ・・・ 7.前記抗IL-13抗体がモノクローナル抗体である請求項1に記載の製剤。 8.前記抗IL-13抗体がIMA-638またはIMA-026である請求項1に記載の製剤。 9.前記抗凍結剤が約2.5%~約10%(重量/容量)のスクロースまたはトレハロースである請求項1に記載の製剤。 10.前記緩衝液が、約4mM~約60mMのヒスチジン緩衝液、約5mM~約25mMのコハク酸塩緩衝液、または約5mM~約25mMの酢酸塩緩衝液である請求項1に記載の製剤。 ・・・ 13.前記製剤が、さらに、約0.01%~約5%のアルギニンを含む請求項1に記載の製剤。 ・・・ 』 ・3b.6頁1~25行 『 特定の実施態様では、該抗体の品位は、・・・、2℃~8℃で少なくとも18ヶ月間、2℃~8℃で少なくとも24ヶ月間、25℃で少なくとも18ヶ月間、または25℃で少なくとも24ヶ月間貯蔵後該製剤中に保持される。場合によっては、・・・、2℃~8℃で少なくとも18ヶ月後、2℃~8℃で少なくとも24ヶ月後、25℃で少なくとも18ヶ月後、25℃で少なくとも24ヶ月後、該製剤は、10%未満の高分子量(HMW)種を含む。・・・。本発明は、該製剤が、・・・、2℃~8℃で少なくとも18ヶ月後、2℃~8℃で少なくとも24ヶ月後、25℃で少なくとも18ヶ月後、25℃で少なくとも24ヶ月後、10%未満の低分子量(LMW)種を含む実施態様も含む。・・・ 』 ・3c.14頁19~27行 『 図34は、IMA-638抗体の重鎖(配列番号:1)および軽鎖(配列番号:2)のアミノ酸配列を提示している。重鎖DNA配列によりコード化された・・・ 』 ・3d.16頁15~23行 『 ・・・。許容できる製剤のHMW種の総パーセンテージは、少なくとも1年間2℃~40℃・・・において凍結乾燥物または液体として貯蔵後、・・・10%HMW種未満であるか、あるいは、少なくとも1年間2℃~40℃で凍結乾燥物または液体として貯蔵後は、約10%LMW種未満である。・・・。通常、安定性の特徴は、冷蔵製品では2℃~8℃において、および室温製品では25℃において、HMW/LMWが10%未満である。・・・ 』 ・3e.19頁21行~20頁2行 『 ・・・。限定されない実施例の1つにおいて、皮下に高用量を注入するために、容量制限は小さく・・・、抗体の濃度は、一般に、100mg/ml以上、例えば、・・・または100mg/ml~150mg/mlである。このような高濃度は、例えば、適切な容量の希釈剤(例えば、注射用滅菌水、緩衝食塩水)において凍結乾燥した製剤を再構成することにより達成することができる。場合によっては、該再構成製剤は、約100mg/mlと500mg/mlとの間の濃度・・・を有する。・・・ 』 ・3f.20頁17~19行 『 ・・・。本発明で使用することができる抗IL-13抗体の限定されない例には、IMA-638(図34)およびIMA-026(図35)がある。・・・ 』 ・3g.22頁16~22行 『 一般に、製剤の粘度は、該製剤の投与ルートに適合する、1である。一部の実施態様では、該製剤の粘度は、1cPと2cPとの間にあるか、または水(約1cP)に似ている。他の実施態様では、該製剤の粘度は、約5cPと約40cPとの間にある。・・・ 』 ・3h.38頁1行~39頁3行 『 実施例2:高濃度の液体製剤の安定性 場合によっては、抗IL-13抗体製剤は、液体フォーマットで貯蔵するのが望ましい。したがって、比較的高濃度の抗IL-13抗体を含む液体抗IL-13製剤の長期安定性について調べた。つまり、ヒト抗IL-13抗体(100mg/ml)、10mMのヒスチジン、5%のスクロース(重量/容量)を含み、pH6.0である製剤は、発熱物質を除いたガラスのバイアルに該製剤を無菌ろ過して調製し、貯蔵した。該製剤は、2℃~8℃、15℃または25℃において、約6週間、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、および24ヶ月あるいは40℃において約6週間、3ヶ月、および6ヶ月貯蔵し、HMW種、LMW種の存在、生物活性、および各時間における濃度についてアッセイした。 HMW種のパーセンテージは、SEC-HPLCを用いてアッセイした。貯蔵前の製剤中の高分子量種のパーセンテージは、製剤中の総たんぱく質の2%~3%の間にあり、最長9ヶ月2℃~8℃、15℃および25℃において貯蔵した試料では約2%~4%の間にあり(図3)、2℃~8℃および15℃で最長24ヶ月の場合は約2%~4%の間にあつた。40℃で9ヶ月貯蔵後、該製剤のHMW種含有量は9%未満であった(図3)。したがって、比較的低温条件で24ヶ月貯蔵した試料中のHMW種では、レベルの実質的な増加はなかった。 抗IL-13抗体製剤中のLMW種のパーセンテージは、100mg/ml抗IL-13抗体製剤についてもアッセイした。貯蔵前の製剤中のLMW種のパーセンテージは、貯蔵前の製剤中の総たんぱく質の約1%~2%の間にあり、2℃~8℃、15℃、および25℃で最長9ヶ月貯蔵した試料では約1%~3%の間にあり(図4)、さらに、2℃~8℃で最長24ヶ月の場合は約1%~3%の間であった。40℃で6ヶ月貯蔵後、該製剤のLMW種の濃度は、11%未満であった(図4)。したがって、比較的低温条件で24ヶ月貯蔵した試料中のLMW種では、レベルの実質的な増加はなかった。』 ・3i.57頁3行~61頁2行 『 実施例8:IL-13抗体製剤 IL-13抗体液体製剤の使用可能な賦形剤を選別するために、短期加速安定性試験を、貯蔵温度40℃で6週間、・・・100mg/mlのIMA-638抗体の0.5mlを用いて行った。該抗体の安定性は、次いで、280nmにおける吸光度を用いた濃度測定およびSEC-HPLCによりテストした。 テストした製剤には、pHを5.0から5.5へ、さらに、6.0へ変えたヒスチジン、コハク酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムなどの種々の緩衝液、種々の濃度(0%、2.5%、5.0%、および10%)のスクロース、およびソルビトール、グリシン、アルギニン、およびメチオニンなどの他の添加剤が含まれていた。下の表6には、この選別でテストした製剤を提示している。 表6.液体製剤[※当審注:表の枠線・罫線は省略した] No.        製剤 1.  10mMヒスチジン、0%スクロース、pH6.0 2.  10mMヒスチジン、2.5%スクロース、pH6.0 3.  10mMヒスチジン、5%スクロース、pH6.0 4.  10mMヒスチジン、10%スクロース、pH6.0 5.  10mMヒスチジン、0%スクロース、pH5.5 6.  10mMヒスチジン、2.5%スクロース、pH5.5 7.  10mMヒスチジン、5%スクロース、pH5.5 8.  10mMヒスチジン、10%スクロース、pH5.5 9.  10mMヒスチジン、5%ソルビトール、pH6.0 10.  10mMヒスチジン、1%グリシン、pH6.0 11.  10mMコハク酸塩、5%スクロース、pH6.0 12.  10mM酢酸塩、5%スクロース、pH5.0 13.  10mM酢酸塩、5%スクロース、pH5.5 14.  10mMヒスチジン、5%スクロース、2%アルギニン、pH6.0 15.  10mMヒスチジン、5%スクロース、100mMメチオニン、pH6.0 40℃で6週間貯蔵した場合の回収率(%)は、UV/可視により抗体の濃度を測定して評価し、図21に示している。回収率は製剤間ではほぼ類似していたが、最高回収率は製剤4と8とで得られた。 40℃で6週間貯蔵している間の高分子量種のパーセントの増加は、図22に示している。薬液充填済みシリンジは、バイアルに比べて高分子量凝集物の含有量が少なかった(図22、製剤4を参照のこと)。製剤6、8、14および15は、高分子量種の増加が最小であった(0.5%と1.25%との間)。 40℃で6週間貯蔵している間の低分子量種のパーセントの増加は、図23に示している。HMWとは対照的に、薬液充填済みのシリンジは、ガラスバイアルに比べてLMW種の増加が少なかった。製剤1-13の%LMWの変化は約3%~4%であった。 結論として、大抵の製剤は、許容できる安定性を示し、最適pHは5~6.5であることを確認し、種々の適切な賦形剤の添加が可能であり、すなわち、賦形剤がないことはたんぱく質の安定性にとって有害であった。 実施例9:該製剤のTween必要性の評価 ・・・ 表7.主要な候補[※当審注:表の枠線・罫線は省略した] No.        製剤 1.  10mMヒスチジン、0%スクロース、pH6.0 2.  10mMヒスチジン、5%スクロース、pH6.0 3.  10mMヒスチジン、10%スクロース、pH6.0 4.  10mMヒスチジン、5%スクロース、0.01%Tween80、pH6.0 5.  10mMヒスチジン、5%スクロース、2%アルギニン、pH6.0 6.  10mMヒスチジン、5%スクロース、2%アルギニン、0.01%Tween80、pH6.0 7.  10mMヒスチジン、5%スクロース、70mMメチオニン、pH6.0 8.  10mMヒスチジン、5%スクロース、70mMメチオニン、0.01%Tween80、pH6.0 振とう試験は、ガラスバイアル中の100mg/mlのIMA-638液体製剤を0.25ml用い、ゲルシェーカー上約200rpmにて24時間該ガラスバイアルを室温で振とうして行った。振とうした試料の濃度は、振とうしなかった試料(対照)と比較した。種々の抗体製剤の振とう後のIMA-638の濃度は、図24に示している。濃度は製剤間でほとんど差はなかった。図25は、IMA-638製剤の振とう後HMW種(%)を提示している。該製剤のHMW種は、約1.2%~約1.5%の範囲内にあった。 冷凍-解凍試験は、ポリプロピレン・チューブ中で100mg/mlのIMA-638液体製剤を0.25ml用いて行った。・・・。冷凍-解凍後のHMW種(%)も測定し、図27に示している。冷凍-解凍後の製剤中のHMW種(%)は、約1.2%~約1.5%の範囲内にあった。 ・・・ 実施例10:薬液充填済みシリンジにおける液体IL-13抗体製剤の評価 下の表8に載せた100mg/mlのIMA-638抗体製剤の安定性は、West 4432/50の栓をつけた薬液充填済みのBD Hypak(商標)シリンジに1mlの製剤を詰めて、7ヶ月にわたり4℃、25℃、および40℃においてHMW種(%)を測定して評価した。これらの試験の結果は、図28、29、および30に示している。 表8.薬液充填済みのHypakTMシリンジ製剤[※当審注:表の枠線・罫線は省略した] No.        製剤 1.  10mMヒスチジン、5%スクロース、pH6.0 2.  10mMヒスチジン、5%スクロース、0.01%Tween80、pH6.0 3.  10mMヒスチジン、10%スクロース、0.01%Tween80、pH6.0 4.  10mMヒスチジン、10%スクロース、2%アルギニン、0.01%Tween80、pH6.0 5.  10mMヒスチジン、10%スクロース、55mMNaCl、0.01%Tween80、pH6.0 4℃では、t=0ヶ月からt=7ヶ月まで、HMW種は0.70%と0.90%との間にあった。25℃では、HMW種は約0.75%と約2.00%との間にあり、凝集物は時間と共に増加した。40℃では、凝集物は、すべての製剤において時間と共に増加し、製剤1~3および5では7ヶ月目に、4.5%と6.5%との間にあった。凝集物の増加が最も少なかったのは、製剤4であった(7ヶ月で約3%)。 』 ・3j.61頁9~19行 『 実施例11:薬液充填済みシリンジにおけるIMA-638液体製剤に対するアルギニンの効果 10mMのヒスチジン、5%のスクロース、および0.01%のTween80で処方した100mg/mlのIMA-638抗体製剤の安定性に対する低濃度のアルギニン(0.1%~2%)の添加効果を、West W4023 Durafluor栓をつけた、薬液充填済みの1mlのBD Hypak(商標)SCFシリンジを40℃で4週間、8週間、12週間、および28週間貯蔵後、HMW種のパーセント変化により調べた。この試験の結果は、図31に示している。 このデータは、アルギニンを添加すると時間と共に形成されたHMW凝集物の量が低下することを示している。 』 ・3k.図31 『 [※図31標題及びグラフ線の説明の訳] 液体IMA-638を充填したシリンジの40℃における総高分子量凝集物の%変化 -◆- 10mMヒスチジン、5%スクロース、0.01%Tween80 -■- 10mMヒスチジン、5%スクロース、0.1%アルギニン、0.01%Tween80 -▲- 10mMヒスチジン、5%スクロース、0.2%アルギニン、0.01%Tween80 -×- 10mMヒスチジン、5%スクロース、0.4%アルギニン、0.01%Tween80 -*- 10mMヒスチジン、5%スクロース、0.6%アルギニン、0.01%Tween80 -●- 10mMヒスチジン、5%スクロース、2%アルギニン、0.01%Tween80 』 (2-2)対比・判断 (2-2-1)刊行物1記載の発明との対比及び判断 (i) (2-1)(i)の摘記事項によれば、刊行物1には、少なくとも1つの抗体、及び、当該抗体を安定化するのに十分な量のヒスチジンを含む液体製剤について記載されており(1a)、さらに賦形剤としてアルギニンを含むものやヒスチジン量が6~40mMの間であるものについても記載されている(1a)。また、ここでいう抗体は特定のものに限定されず、例えばヒトモノクローナルIgG2抗体であるABX-IL8を用い得ること(1c)、ヒスチジンは液体抗体製剤を安定化するために用いられること(1d)も記載されている。 そして、そのような液体製剤の調製例として、上記モノクローナル抗体ABX-IL8を100mg/mLの濃度で含み、ヒスチジン及びアルギニンを各40mM又は15mM加えてなるもの(1e,1g)が、例えば40℃3ヶ月間の貯蔵条件下でも、抗体に影響を及ぼす分解経路に関連する凝集(1b)の発生割合が高々4%程度であり(1i)、モノマーとして存在する抗体の割合も98.4%であって(1gの表6)、製剤中の抗体が安定に維持されたことが記載されており、また、図12(1j)中のプロット点の位置によれば、同ABX-IL8抗体を150mg/mL含む液体製剤にヒスチジン及びアルギニンを異なる濃度(Concentraions)で添加してなる複数種の調製製剤(1h)のうち、15mMヒスチジン、40mMヒスチジン、60mMヒスチジン、15mMヒスチジン+15mMアルギニン、40mMヒスチジン+40mMアルギニンがそれぞれ添加されてなるものについて、それらの粘度(Viscosity)が順に約16cSt、約11cSt、約9cSt、約12cSt、約8cStであったことが把握できる(1j)。 そうすると、これら調製例の液体製剤(1e~1j)に係る記載から、刊行物1には 「 液体製剤であって、以下の1)~7)のいずれかの組成で、モノクローナル抗体ABX-IL8と、同抗体を安定化する量のヒスチジン及びアルギニンとを含む、液体製剤: 1)ABX-IL8抗体100mg/mL、40mMヒスチジン、40mMアルギニン 2)ABX-IL8抗体100mg/mL、15mMヒスチジン、15mMアルギニン 3)ABX-IL8抗体150mg/mL、15mMヒスチジン 4)ABX-IL8抗体150mg/mL、40mMヒスチジン 5)ABX-IL8抗体150mg/mL、60mMヒスチジン 6)ABX-IL8抗体150mg/mL、15mMヒスチジン、15mMアルギニン 7)ABX-IL8抗体150mg/mL、40mmヒスチジン、40mMアルギニン 」 の発明(以下、引用発明1という)が記載されているといえる。 (ii) 本願補正発明と引用発明1を対比する。 引用発明1のヒスチジンならびにアルギニンは、本願補正発明の「塩」又は「バッファー」に相当する。また、1)~7)におけるモノクローナル抗体の量はいずれも100mg/mL又は150mg/mLであり、ヒスチジン量もしくはヒスチジン及びアルギニンの総量はいずれも合わせて100mM未満である。そして、これら1)~7)の液体製剤のいずれも、当該ヒスチジン及びアルギニンにより「安定」(例えば1a、1d、1g)化されてなるものである。 そうすると、両者はいずれも 「 タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であり、前記タンパク質が、100mg/mlから150mg/mlの間の濃度で組成物中に存在するモノクローナル抗体であることを特徴とする、安定な液体組成物 」 であって、両者の間に差異はない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明である。 (2-2-2)刊行物2記載の発明との対比及び判断 (i) (2-1)(ii)の摘記事項によれば、刊行物2には、場合により100mg/mL超の抗体量を含み得る凝集率の加速された(2c)高濃度モノクローナル抗体(mAb)含有液体製剤(2a,2b,2d)における、オパール色及び高粘性の調節のための液剤のイオン強度について検討されたことが記載されており、かかる検討のために調製された液剤の例として、MedImmune Inc, Gaithersburg, MD製の分子量148kDaのIgG1ヒト化mAbを様々な濃度で含み、かつ、10mMヒスチジン、もしくは10mMヒスチジン及び2mM又は5mMのNaClを添加されてなるものを含む、イオン強度において異なる各種の液体製剤について、その粘度(2f)やネフェロ分析濁度(2g,2h)の測定結果を示したグラフが記載されている。 そして、それら各種の液体製剤のうち、 ・図1(2f)において、-●-及び-◆-の各最も右のプロット点の位置からみて、mAb約110g/L(=110mg/mL)かそれ以上を10mMヒスチジンと共に含む液体製剤の粘度が40~45cP程度であり、mAb約100g/L(=100mg/mL)を10mMヒスチジン+2mMNaClと共に含む液体製剤の粘度が10cP程度であったことが把握でき; ・図2,5(2g,2h)において、各図の-●-の最も右のプロット点の位置からみて、mAb約110g/L(=110mg/mL)かそれ以上を10mMヒスチジンと共に含む液体製剤のネフェロ分析濁度が約20NTU程度であったことが把握でき; ・図5(2h)において、-□-及び-◆-の各最も右のプロット点の位置からみて、mAb約100g/L(=100mg/mL)を10mMヒスチジン+5mMNaClと共に含む液体製剤のネフェロ分析濁度が約50NTU程度であり、mAb約120g/L(=120mg/mL)を10mMヒスチジン+2mMNaClと共に含む液体製剤のネフェロ分析濁度が約30NTU程度であったことが把握できる。 そうすると、それら各プロット点の調製例の液体製剤に係る記載から、刊行物2には 「 モノクローナル抗体(mAb)含有液体製剤であって、以下の1)~4)のいずれかの組成で、MedImmune Inc, Gaithersburg, MD製の分子量148kDaのIgG1ヒト化mAbと、ヒスチジン又はヒスチジン及びNaClの組合せとを含む、液体製剤: 1)mAb約110mg/mL、10mMヒスチジン 2)mAb約100mg/mL、10mMヒスチジン、2mMNaCl 3)mAb約100mg/mL、10mMヒスチジン、5mMNaCl 4)mAb約120mg/mL、10mM]ヒスチジン、2mMNaCl 」 の発明(以下、引用発明2という)が記載されているといえる。 (ii) 本願発明1と引用発明2を対比する。 引用発明2のヒスチジンならびにNaClは、本願補正発明の「塩」又は「バッファー」に相当する。また、引用発明2の1)~4)において、mAbの量はいずれも100~120mg/mL程度であり、ヒスチジン或いはヒスチジン+NaClの総量はいずれも100mM未満であることを踏まえると、両者は 「 タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であり、前記タンパク質が、100mg/mlから150mg/mlの間の濃度で組成物中に存在するモノクローナル抗体であることを特徴とする、液体組成物」の点で一致するが、 前者は「安定な」ものであることの限定があるのに対し、後者ではそのような特段の限定はない、 という点において、一応相違する。 しかしながら、引用発明2の組成物は、モノクローナル抗体の濃度、ならびに「塩及び/又はバッファー」の添加割合において、本願補正発明のそれと一致しており、その成分組成において同等といえるから、両者は「安定」性において同様の性質を示すものと推認される。また、(2-1)(i)の刊行物1の例えば摘記1aの記載からみて、ヒスチジンが元来、高濃度モノクローナル抗体含有液体製剤において同抗体の安定化に寄与する性質を有しているものと認められ、この点を踏まえても、ヒスチジンを含む引用発明2の上記1)~4)の各液体組成物もまた、mAbが「安定」化されてなるものであるといえる。 そうすると、結局、上記相違点は実質的な相違点とはいえず、両者はいずれも 「 タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であり、前記タンパク質が、100mg/mlから150mg/mlの間の濃度で組成物中に存在するモノクローナル抗体であることを特徴とする、安定な液体組成物 」 であって、両者間に実質的差異はない。 したがって、本願補正発明は、刊行物2に記載された発明である。 (2-2-3)刊行物3記載の発明との対比及び判断 (i) (2-1)(iii)の摘記事項によれば、刊行物3には、抗IL-13抗体製剤であって、抗IL-13抗体と、抗凍結剤と、前記製剤のpHが約5.5~約6.5の範囲にある緩衝液とを含む、液体製剤について記載されており(3a)、抗凍結剤としてのスクロース等と共に緩衝液として約4mM~約60mMのヒスチジン緩衝液、約5mM~約25mMのコハク酸塩緩衝液又は約5mM~約25mMの酢酸塩緩衝液を用いること、さらに約0.01~5%のアルギニン含み得ること等も記載されている(3a)。そして、それら製剤が、諸条件での貯蔵後の高分子(HMW)種及び/又は低分子(LMW)種の生成を指標とする安定性(3d)を指標とした場合、HMWあるいはLMWが10%未満であること(3b、3d)や、粘度が約5~40cPであること(3g)も記載されている。また、製剤中の抗IL-13抗体について、その濃度は100mg/mL以上であり得ること(3a、3e)や、例えばIMA-638抗体を用い得ることも記載されている(3c、3f)[ここで、図34が当該IMA-638抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を示したものであること等が示されている3cの記載からみて、当該IMA-638抗体は、単一の重鎖及び軽鎖で構成される均一な抗体であり、モノクローナル抗体といえるものである。なお、この点については本願明細書中でも「【0048】 ・・・「モノクローナル抗体」とは実質的に均一な抗体の集団から取得される抗体をいい、・・・」と記載されている。]。 そして、このような抗IL-13抗体含有液体製剤の例として、上記IMA-638抗体を100mg/mLの上記IMA-638抗体を、スクロース等の抗凍結剤及び10mMのヒスチジン等と共に含む各種の液体製剤が調製され、その多くが一定条件下での貯蔵後もHMW種及び/又はLMW種の生成が10%未満であり、安定性が向上されてなるものであったことが記載されている(3h、3i)。また、図31(3k)によれば、さらにアルギニンを0.1%、0.2%、0.4%又は0.6%添加してなる液体製剤が、一定条件下での貯蔵後のHMW凝集物の生成量をさらに低下させることも記載されている(3j、3k)。 そうすると、これら調製例の各種液体製剤(3h~3k)の記載から、刊行物3には、 「 抗IL-13抗体と、抗凍結剤と、前記製剤のpHが約5.5~約6.5の範囲にある緩衝液とを含む液体製剤であって、抗凍結剤であるスクロースと共に、抗IL-13モノクローナル抗体IMA-638と、緩衝剤であるヒスチジン、コハク酸塩又は酢酸塩、もしくはこれらに加えてアルギニンとを、以下の1)~7): 1)IMA-638抗体100mg/mL、10mMヒスチジン 2)IMA-638抗体100mg/mL、10mMコハク酸塩 3)IMA-638抗体100mg/mL、10mM酢酸塩 4)IMA-638抗体100mg/mL、10mMヒスチジン、0.1%アルギニン 5)IMA-638抗体100mg/mL、10mMヒスチジン、0.2%アルギニン 6)IMA-638抗体100mg/mL、10mMヒスチジン、0.4%アルギニン 7)IMA-638抗体100mg/mL、10mMヒスチジン、0.6%アルギニン のいずれかの組成で含む、液体製剤 」 の発明(以下、引用発明3という)が記載されているといえる。 (ii) 本願補正発明と引用発明3を対比する。 引用発明3のヒスチジン、コハク酸塩、酢酸塩、ならびにアルギニンは、本願補正発明の「塩」又は「バッファー」に相当する。また、引用発明3の1)~7)におけるモノクローナル抗体IMA-638の量はいずれも100mg/mLである。さらに、アルギニンの分子量を174.20(要すれば、例えば今堀・山川監修「生化学辞典(第3版)」(1998年第1刷)(株)東京化学同人 92頁「アルギニン」の項参照)とすると、引用発明3の4)~7)におけるアルギニンの量はモル濃度換算で順に約5.74mM、約11.48mM、約22.96mM、約34.44mMとなるから、1)~7)における「塩」又は「バッファー」相当成分の総量はいずれも100mM未満である。 そうすると、両者は 「 タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であり、前記タンパク質が、100mg/mlから150mg/mlの間の濃度で組成物中に存在するモノクローナル抗体であることを特徴とする、液体組成物」の点で一致するが、 前者は「安定な」ものであることの限定があるのに対し、後者ではそのような特段の限定はない、 という点において、一応相違する。 しかしながら、引用発明3の液体組成物が、一定条件下での貯蔵後のHMW種及び/又はLMW種の生成量において低く、いずれも安定性において優れたものであることは、刊行物3の記載(3b、3d、3h~3k)にみられるとおりであることから、引用発明3の液体組成物もまた「安定な」ものであると認められる。 そうすると、結局、上記相違点は実質的な相違点とはいえず、両者はいずれも 「 タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であり、前記タンパク質が、100mg/mlから150mg/mlの間の濃度で組成物中に存在するモノクローナル抗体であることを特徴とする、安定な液体組成物 」 であって、両者間に実質的差異はない。 したがって、本願補正発明は、刊行物3に記載された発明である。 (2-3)小括 以上(2-2)の検討のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物1、2又は3に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [第3]本願発明について 1.本願発明 平成28年1月6日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~13に係る発明は、平成27年7月9日付の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下、「本願発明」ということがある)。 『 タンパク質、塩及び/又はバッファーを含み、前記塩及び/又はバッファーの総濃度が100mM未満であり、前記タンパク質が、50mg/mlから300mg/mlの間の濃度で組成物中に存在する抗体であることを特徴とする、安定な液体組成物。 』 2.引用刊行物とその記載事項 原査定における引用文献A2~A4、即ち[第2]2.(2)の刊行物1~3、とそれら各刊行物の記載事項は、[第2]2.(2)に記載したとおりである。 3.対比・判断 [第2]2.(1)によれば、本願発明は、本願補正発明を包含するものである。 そして、上記[第2]2.(2)で検討したとおり、本願補正発明が刊行物1、2又は3に記載された発明である以上、当該本願補正発明を含む本願発明もまた、刊行物1、2又は3に記載された発明である。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-000168

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