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特許拒絶査定不服審判

2023-005500

過体重および肥満を治療する方法

審判番号
2023-005500
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-025247
請求日
2023年04月05日
審決日
2024年10月09日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】オレキシジェン・セラピューティクス・インコーポレーテッド
  • 【請求人代理人】村山 靖彦
  • 【請求人代理人】実広 信哉
  • 【請求人代理人】阿部 達彦
審判長/審判官
  • 審判長 原田 隆興
  • 審判官 岩下 直人
  • 審判官 田中 耕一郎
分類
P18 .575-Z (A61K) / P18 .14 -Z (A61K) / P18 .113-Z (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-25247「過体重および肥満を治療する方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月27日出願公開、特開2021-80274〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続きの経緯 本願は、2013年6月5日(パリ条約による優先権主張 2012年6月6日 米国(US))を国際出願日とする特願2015-516181号の一部を、2018年7月11日に新たな出願とした特願2018-131359号の一部を、2021年2月19日に新たな出願(特願2021-25247号)としたものであって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和 3年 3月 8日 :翻訳文提出書の提出 令和 4年 3月31日付け :拒絶理由通知書 同年10月11日 :意見書及び手続補正書の提出 同年11月29日付け :補正の却下の決定及び拒絶査定 令和 5年 4月 5日 :審判請求書及び手続補正書の提出 同年 5月12日付け :前置報告書 第2 令和5年4月5日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年4月5日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の記載は、補正前(令和3年3月8日提出の翻訳文提出書に添付された特許請求の範囲、当審注:令和4年10月11日提出の手続補正書でした補正は、同年11月29日付け補正の却下の決定により却下されている。)の、 「【請求項1】 有害な心血管アウトカムのリスクが増大している対象を過体重または肥満について治療する方法であって、 有害な心血管アウトカムのリスクが増大している過体重または肥満の対象を同定する工程、ならびに 前記対象に治療有効量の徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を投与する工程 を含む方法。 【請求項2】 前記過体重または肥満の対象が、 a)前記同定の3カ月前より以前に記録された心筋梗塞の病歴、 冠動脈バイパス移植手術、ステント留置、経皮経管冠動脈形成、またはレーザーアテローム切除を含む冠動脈血管再生の病歴、 頸動脈内膜切除、下肢アテローム硬化性疾患のアテローム切除、腹部大動脈瘤の修復、大腿または膝窩バイパスを含む頸動脈または末梢血管再生の病歴、 段階的運動負荷試験または陽性心臓画像研究での虚血性変化、ECG変化を伴う狭心症、 前記同定前の2年以内の簡単な触診で評価された0.9未満の足関節上腕血圧指数、および 前記同定前の2年以内の冠動脈、頸動脈、または下肢動脈の50%以上の狭窄 からなる群から選択される少なくとも1つのリスク因子を伴う心血管疾患を有すると診断されている、ならびに/または b)薬物療法で、または薬物療法なしで145/95mmHg未満にコントロールされた高血圧、 薬物療法を必要とする脂質異常症、 前記同定前の12カ月以内に女性で50mg/dL未満、男性で40mg/dL未満と記録された低HDLコレステロール、および 現タバコ喫煙者 からなる群から選択される少なくとも2つのリスク因子を伴う2型糖尿病を有すると診断されている場合、前記対象は、有害な心血管アウトカムのリスクが増大していると同定される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記対象が、2種の配列:徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を含む試験用有効薬剤を1日1回1週間、それに続いてプラセボを1日1回1週間;あるいはプラセボを1週間、それに続いて徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を含む試験用有効薬剤を1週間のうちの一方による治療を受ける、2週間の導入期間をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 対象が、前記同定前の3カ月以内の心筋梗塞;カナダ心臓血管学会の重症度分類によるIII度またはIV度の狭心症;脳卒中を含む脳血管性疾患の臨床病歴;洞性頻脈以外の頻脈性不整脈の病歴;抗高血圧薬での治療にもかかわらず145/95mmHg以上である血圧;前記同定前の3カ月以内の体重不安定;計画された肥満外科手術、心臓手術または冠動脈血管形成;30mL/分未満の予測GFRで定義される重症腎障害;肝不全の臨床病歴または正常上限の3倍を超えると記録されたALTまたはAST;HIVまたは肝炎への既知の感染;オピオイドの長期使用またはオピオイドスクリーニング陽性;ニコチン依存以外の前記同定前の6カ月以内の最近の薬物またはアルコール乱用または依存;熱性痙攣、頭蓋外傷、または対象を痙攣にかかりやすくするその他の状態を含む痙攣の病歴;躁病の病歴、または能動性精神病、むちゃ食い障害ではない活動性過食または神経性食欲不振であるとの最近の診断;自殺企画のリスク;抑うつ症に対する長期治療でも安定でない対象であるが、抑うつ症の新たな開始または症状の急性憎悪を含む急性抑うつ性疾病;鬱血性心不全NYHAクラス3または4を含む平均余命が4年未満と予想される任意の状態;非黒色腫皮膚がんまたは手術的に治療された頸部がんを含まない5年前以内の悪性腫瘍の病歴;その他のブプロピオンまたはナルトレキソン含有製品の最近の使用;ナルトレキソンまたはブプロピオンに対する過敏性または非耐性の病歴;前記同定前の14日以内のモノアミンオキシダーゼ阻害薬の使用;前記同定前の30日以内の任意の治験薬、デバイス、または処置の使用;妊娠または授乳中の女性、または最近、妊娠する努力をしている女性、または1年以内に月経周期を有し、かつ受胎調節の実践に同意しない閉経期前後の女性を含む潜在的出産能力のある女性;ブロードバンドインターネットに常にアクセスする能力がないことからなる群から選択される1つまたは複数の特徴を有さない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 【請求項5】 過体重または肥満の対象を同定する工程、および 前記対象に治療有効量の徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を、ウェブをベースにした体重管理プログラム、電話をベースにした体重管理プログラム、またはこれらの組合せと組み合わせて投与する工程を含む、対象を過体重または肥満について治療する方法。 【請求項6】 同定された対象が、30以上45kg/m2以下のBMIを有し、合併症のない肥満を伴う、請求項5に記載の方法。 【請求項7】 同定された対象が、27以上45kg/m2以下のBMIを有し、脂質異常症および/またはコントロールされた高血圧を伴う、請求項5に記載の方法。 【請求項8】 対象が、1型または2型糖尿病診断の病歴;前記同定前の6カ月以内の心筋梗塞;カナダ心臓血管学会の重症度分類によるIII度またはIV度の狭心症;虚血性および出血性脳卒中を含む大型血管皮質脳卒中の臨床病歴;149/95mmHg以上の血圧;前記同定前の4週間以内の脂質低下薬の開始または変更;痙攣、頭蓋外傷、過食、食欲不振、または対象を痙攣にかかりやすくするその他の状態の病歴;前記同定前の3カ月以内の体重不安定;前記同定前の1カ月以内の体重減少を意図した処方薬またはOTC薬の使用、あるいは体重減少プログラムへの参加;肥満に対して計画された手術またはデバイスでの介入;30mL/分/1.73m2未満の予測糸球体濾過速度(GFR)で定義される重症腎障害の最近の病歴;肝不全または正常上限の3倍を超えて最近記録されたアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(AST)の臨床病歴;126mg/dL以上の絶食時グルコースまたは400mg/dL以上の絶食時トリグリセリド;HIVまたは肝炎への既知の感染;オピオイドの長期使用またはオピオイドスクリーニング陽性;前記同定前の6カ月以内の薬物またはアルコール乱用または依存、あるいは尿中薬物スクリーニング陽性;前記同定前の6カ月以内のタバコ製品の規則的使用またはニコチン置換製品の使用;躁病の病歴、または能動性精神病の最近の診断;自殺企画のリスク;抑うつ症に対する長期治療で安定でない対象であるが、抑うつ症の新たな開始または症状の急性憎悪を含む急性抑うつ性疾病;その他のブプロピオンまたはナルトレキソン含有製品の最近の使用;ナルトレキソンまたはブプロピオンに対する過敏性または非耐性の病歴;前記同定前の14日以内の抗痙攣薬、ドーパミン作動薬、テオフィリン、もしくは経口コルチコステロイドの最近の使用、またはモノアミンオキシダーゼ阻害薬の使用;前記同定前の30日以内の任意の治験薬、デバイス、または処置の使用;妊娠または授乳中の女性、最近、妊娠する努力をしている女性、1年以内に月経周期を有し、かつ受胎調節の実践に同意しない閉経期前後の女性を含む潜在的出産能力のある女性;規則的な中強度の運動を実施する能力がないか気が進まないこと;eメールの使用およびCLIプログラムへのアクセスの試験を完了する能力がないことからなる群から 選択される1つまたは複数の特徴を有さない、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 前記対象が、少なくとも26週間治療される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 前記対象に、ウェブをベースにした体重管理プログラム、電話をベースにした体重管理プログラム、またはこれらの組合せを提供することをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 前記電話をベースにした体重管理プログラムが、前記対象に対する1または複数回の指導通話を含む、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記電話をベースにした体重管理プログラムが、任意選択で、1つまたは複数のウェブでの指導ツールを含む、請求項10または11に記載の方法。 【請求項13】 前記ウェブをベースにした、または電話をベースにした体重管理プログラムが、前記対象に、1または複数回の行動、栄養またはフィットネス教育を提供する、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。 【請求項14】 前記教育が、訓練された健康またはフィットネス指導員および/または公認栄養士によって実現される、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記訓練された健康またはフィットネス指導員および/または公認栄養士が、電話を介してまたは前記対象のためのウェブサイトを介して対象に助言し、秘訣および動機づけのメッセージ;質疑応答を介する指導;ウェブサイトを介する前記対象の質問に対する即時応答のための毎週の診断時間;毎週の教育資料;ビデオ授業;バッジ授与を伴う体重、運動または食事の追跡;目標設定;進捗状況の追跡;および体重管理プログラムに従事するように対象を激励するためのコミュニケーションからなる群から選択される話題の1つまたは複数を提供する、請求項14に記載の方法。 【請求項16】 前記体重管理プログラムが、各週の新たな行動、栄養および/またはフィットネス教育のテーマ、および2つまたはそれ以上の目標を導入する工程;各週の前記新たなテーマおよび目標に関連する情報コンテンツおよび/またはビデオ授業を提供する工程;ならびに週の1日または複数日に前記訓練された健康またはフィットネス指導員から前記対象への1回または複数回の動機づけのメッセージを提供する工程を含む、請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。 【請求項17】 前記体重管理プログラムが、前記訓練された健康またはフィットネス指導員が前記対象に即時的な質問および返答応答のための予定表を提供することを含む、請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。 【請求項18】 前記体重管理プログラムが、前記対象の体重を毎週記録する工程、前記対象の食物摂取を毎日誌録する工程、および前記対象の活動を毎日誌録する工程から選択される1つまたは複数の活動を含む、請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。 【請求項19】 前記体重管理プログラムが、前記対象が前記対象の食物摂取を記録する工程を含み、前記プログラムが、特定食物および/または食事に関するカロリーのコンピューターデータベースを使用して、前記記録された食物摂取についてのカロリーを追跡することができる、請求項10から18のいずれか一項に記載の方法。 【請求項20】 前記ウェブをベースにした体重管理プログラムが、前記対象が特定のプログラムの目標を満たした場合に、前記対象にバッジを授与することを含む、請求項10から19のいずれか一項に記載の方法。 【請求項21】 前記体重管理プログラムが、前記対象に、体重減少の進捗状況のグラフ表示を提供する工程を含む、請求項10から20のいずれか一項に記載の方法。 【請求項22】 前記対象が、体重管理プログラムの一部として記録される体重減少目標を設定する、請求項10から21のいずれか一項に記載の方法。 【請求項23】 前記体重管理プログラムが、前記対象に、ストレッチング、ウォーキングまたはその他の軽度の心血管活動の指示を提供する工程を含む、請求項10から22のいずれか一項に記載の方法。 【請求項24】 前記体重管理プログラムが、ストレッチおよび運動活動の実行法を実演する短いビデオを提供する工程を含む、請求項10から23のいずれか一項に記載の方法。 【請求項25】 前記体重管理プログラムが、前記対象によって記録された運動および活動記録に基づいて前記対象によって燃焼されたカロリーを追跡する工程を含む、請求項10から24のいずれか一項に記載の方法。 【請求項26】 体重管理プログラムが、少なくとも26、52または78週の期間を有する、請求項10から25のいずれか一項に記載の方法。 【請求項27】 1日当たり32mgの徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩、および1日当たり360mgの徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩が、前記対象に投与される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。 【請求項28】 対象に、前記徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩、および前記徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を、8mgの徐放性ナルトレキソンおよび90mgの徐放性ブプロピオンを含む錠剤として投与する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。 【請求項29】 ナルトレキソンおよびブプロピオンでの前記治療が、前記対象の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させない、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。 【請求項30】 ナルトレキソンおよびブプロピオンでの前記治療が、前記対象の有害な心血管アウトカムのリスクを低減する、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。 【請求項31】 前記有害な心血管アウトカムが、心血管疾患死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中である、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。 【請求項32】 対象が、少なくとも5%、10%または15%の体重減少比率を達成する、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。 【請求項33】 対象が、体重管理プログラムの一部として対面カウンセリングを受けることはない、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。 【請求項34】 対象が、体重管理プログラムの一部として5回を超える対面カウンセリングの会合を受けることはない、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。 【請求項35】 対象が、体重減少のための集中的行動修正(BMOD)プログラムを受けることはない、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。」(これらの発明を、請求項の番号順に、「本願発明1」等といい、これらをまとめて「本願発明」という。)から、 補正後の、 「 【請求項1】 過体重または肥満についての対象の治療における使用のための、徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を含む組成物であって、 前記対象が、有害な心血管アウトカムのリスクが増大しており、 ナルトレキソンおよびブプロピオンでの前記治療が、前記対象の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させず、ならびに、 前記有害な心血管アウトカムが、心血管疾患死、非致死性心筋梗塞、または、非致死性脳卒中である、 組成物。 【請求項2】 前記過体重または肥満の対象が、 a)前記同定の3カ月前より以前に記録された心筋梗塞の病歴、 冠動脈バイパス移植手術、ステント留置、経皮経管冠動脈形成、またはレーザーアテローム切除を含む冠動脈血管再生の病歴、 頸動脈内膜切除、下肢アテローム硬化性疾患のアテローム切除、腹部大動脈瘤の修復、大腿または膝窩バイパスを含む頸動脈または末梢血管再生の病歴、 段階的運動負荷試験または陽性心臓画像研究での虚血性変化、ECG変化を伴う狭心症、 前記同定前の2年以内の簡単な触診で評価された0.9未満の足関節上腕血圧指数、および 前記同定前の2年以内の冠動脈、頸動脈、または下肢動脈の50%以上の狭窄 からなる群から選択される少なくとも1つのリスク因子を伴う心血管疾患を有すると診断されている、ならびに/または b)薬物療法で、または薬物療法なしで145/95mmHg未満にコントロールされた高血圧、 薬物療法を必要とする脂質異常症、 前記同定前の12カ月以内に女性で50mg/dL未満、男性で40mg/dL未満と記録された低HDLコレステロール、および 現タバコ喫煙者からなる群から選択される少なくとも2つのリスク因子を伴う2型糖尿病を有すると診断されている場合、前記対象は、有害な心血管アウトカムのリスクが増大していると同定される、請求項1に記載の使用のための組成物。 【請求項3】 前記対象が、2種の配列:徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を含む試験用有効薬剤を1日1回1週間、それに続いてプラセボを1日1回1週間;あるいはプラセボを1週間、それに続いて徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を含む試験用有効薬剤を1週間のうちの一方による治療を受ける、2週間の導入期間をさらに含む、請求項1または2に記載の使用のための組成物。 【請求項4】 対象が、前記同定前の3カ月以内の心筋梗塞;カナダ心臓血管学会の重症度分類によるIII度またはIV度の狭心症;脳卒中を含む脳血管性疾患の臨床病歴;洞性頻脈以外の頻脈性不整脈の病歴;抗高血圧薬での治療にもかかわらず145/95mmHg以上である血圧;前記同定前の3カ月以内の体重不安定;計画された肥満外科手術、心臓手術または冠動脈血管形成;30mL/分未満の予測GFRで定義される重症腎障害;肝不全の臨床病歴または正常上限の3倍を超えると記録されたALTまたはAST;HIVまたは肝炎への既知の感染;オピオイドの長期使用またはオピオイドスクリーニング陽性;ニコチン依存以外の前記同定前の6カ月以内の最近の薬物またはアルコール乱用または依存;熱性痙攣、頭蓋外傷、または対象を痙攣にかかりやすくするその他の状態を含む痙攣の病歴;躁病の病歴、または能動性精神病、むちゃ食い障害ではない活動性過食または神経性食欲不振であるとの最近の診断;自殺企画のリスク;抑うつ症に対する長期治療でも安定でない対象であるが、抑うつ症の新たな開始または症状の急性憎悪を含む急性抑うつ性疾病;鬱血性心不全NYHAクラス3または4を含む平均余命が4年未満と予想される任意の状態;非黒色腫皮膚がんまたは手術的に治療された頸部がんを含まない5年前以内の悪性腫瘍の病歴;その他のブプロピオンまたはナルトレキソン含有製品の最近の使用;ナルトレキソンまたはブプロピオンに対する過敏性または非耐性の病歴;前記同定前の14日以内のモノアミンオキシダーゼ阻害薬の使用;前記同定前の30日以内の任意の治験薬、デバイス、または処置の使用;妊娠または授乳中の女性、または最近、妊娠する努力をしている女性、または1年以内に月経周期を有し、かつ受胎調節の実践に同意しない閉経期前後の女性を含む潜在的出産能力のある女性;ブロードバンドインターネットに常にアクセスする能力がないことからなる群から選択される1つまたは複数の特徴を有さない、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項5】 前記対象が、少なくとも26週間治療される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項6】 前記対象に、ウェブをベースにした体重管理プログラム、電話をベースにした体重管理プログラム、またはこれらの組合せを提供することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項7】 前記電話をベースにした体重管理プログラムが、前記対象に対する1または複数回の指導通話を含む、請求項6に記載の使用のための組成物。 【請求項8】 前記電話をベースにした体重管理プログラムが、任意選択で、1つまたは複数のウェブでの指導ツールを含む、請求項6または7に記載の使用のための組成物。 【請求項9】 前記ウェブをベースにした、または電話をベースにした体重管理プログラムが、前記対象に、1または複数回の行動、栄養またはフィットネス教育を提供する、請求項6から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項10】 前記教育が、訓練された健康またはフィットネス指導員および/または公認栄養士によって実現される、請求項9に記載の使用のための組成物。 【請求項11】 前記訓練された健康またはフィットネス指導員および/または公認栄養士が、電話を介してまたは前記対象のためのウェブサイトを介して対象に助言し、秘訣および動機づけのメッセージ;質疑応答を介する指導;ウェブサイトを介する前記対象の質問に対する即時応答のための毎週の診断時間;毎週の教育資料;ビデオ授業;バッジ授与を伴う体重、運動または食事の追跡;目標設定;進捗状況の追跡;および体重管理プログラムに従事するように対象を激励するためのコミュニケーションからなる群から選択される話題の1つまたは複数を提供する、請求項10に記載の使用のための組成物。 【請求項12】 前記体重管理プログラムが、各週の新たな行動、栄養および/またはフィットネス教育のテーマ、および2つまたはそれ以上の目標を導入する工程;各週の前記新たなテーマおよび目標に関連する情報コンテンツおよび/またはビデオ授業を提供する工程;ならびに週の1日または複数日に前記訓練された健康またはフィットネス指導員から前記対象への1回または複数回の動機づけのメッセージを提供する工程を含む、請求項6から11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項13】 前記体重管理プログラムが、前記訓練された健康またはフィットネス指導員が前記対象に即時的な質問および返答応答のための予定表を提供することを含む、請求項6から12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項14】 前記体重管理プログラムが、前記対象の体重を毎週記録する工程、前記対象の食物摂取を毎日誌録する工程、および前記対象の活動を毎日誌録する工程から選択される1つまたは複数の活動を含む、請求項6から13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項15】 前記体重管理プログラムが、前記対象が前記対象の食物摂取を記録する工程を含み、前記プログラムが、特定食物および/または食事に関するカロリーのコンピューターデータベースを使用して、前記記録された食物摂取についてのカロリーを追跡することができる、請求項6から14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項16】 前記ウェブをベースにした体重管理プログラムが、前記対象が特定のプログラムの目標を満たした場合に、前記対象にバッジを授与することを含む、請求項6から15のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項17】 前記体重管理プログラムが、前記対象に、体重減少の進捗状況のグラフ表示を提供する工程を含む、請求項6から16のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項18】 前記対象が、体重管理プログラムの一部として記録される体重減少目標を設定する、請求項6から17のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項19】 前記体重管理プログラムが、前記対象に、ストレッチング、ウォーキングまたはその他の軽度の心血管活動の指示を提供する工程を含む、請求項6から18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項20】 前記体重管理プログラムが、ストレッチおよび運動活動の実行法を実演する短いビデオを提供する工程を含む、請求項6から19のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項21】 前記体重管理プログラムが、前記対象によって記録された運動および活動記録に基づいて前記対象によって燃焼されたカロリーを追跡する工程を含む、請求項6から20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項22】 体重管理プログラムが、少なくとも26、52または78週の期間を有する、請求項6から21のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項23】 1日当たり32mgの徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩、および1日当たり360mgの徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩が、前記対象に投与される、請求項1から22のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項24】 対象に、前記徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩、および前記徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を、8mgの徐放性ナルトレキソンおよび90mgの徐放性ブプロピオンを含む錠剤として投与する、請求項1から23のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項25】 ナルトレキソンおよびブプロピオンでの前記治療が、前記対象の有害な心血管アウトカムのリスクを低減する、請求項1から24のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項26】 対象が、少なくとも5%、10%または15%の体重減少比率を達成する、請求項1から25のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項27】 対象が、体重管理プログラムの一部として対面カウンセリングを受けることはない、請求項1から26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項28】 対象が、体重管理プログラムの一部として5回を超える対面カウンセリングの会合を受けることはない、請求項1から26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。 【請求項29】 対象が、体重減少のための集中的行動修正(BMOD)プログラムを受けることはない、請求項1から26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。」(下線部は補正箇所を示す。)に補正された。 2 補正の適否について (1)補正の目的について 本件補正は、 (i)発明のカテゴリーを、本件補正前の請求項1~35に記載された「有害な心血管アウトカムのリスクが増大している対象を過体重または肥満について治療する方法」という方法の発明から、補正後の請求項1~29に記載された「過体重または肥満についての対象の治療における使用のための」「組成物」という物の発明に変更する補正、 (ii)上記(i)の発明のカテゴリーの変更に伴い、補正前の請求項1における「有害な心血管アウトカムのリスクが増大している過体重または肥満の対象を同定する工程」、並びに「前記対象に治療有効量の徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を投与する工程」を含む「治療する方法」を、補正後の請求項1における「過体重または肥満についての対象の治療における使用のための」「徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を含む組成物」に変更する補正、 (iii)補正前の請求項29、31の記載に基づき、補正後の請求項1を「ナルトレキソンおよびブプロピオンでの前記治療が、前記対象の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させず、ならびに、 前記有害な心血管アウトカムが、心血管疾患死、非致死性心筋梗塞、または、非致死性脳卒中である、」と限定する補正、 (iv)補正前の請求項5~8、29、31の削除、 (v)上記(iv)の請求項の削除に伴い、補正前の請求項9~35における引用請求項の番号の補正 を含む。 そして、上記(iii)の補正は、「ナルトレキソンおよびブプロピオン」での「治療」を、「対象の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させ」ないという下位概念のものに限定する補正であり、また、「有害な心血管アウトカム」を、下位概念である「心血管疾患死、非致死性心筋梗塞、または、非致死性脳卒中」に限定する補正であって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の記載の限定的減縮を目的とするものに該当する。また、上記(iv)及び(v)の補正は、同条第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 しかしながら、上記(i)及び(ii)に係る補正は、本件補正前の請求項1に係る「有害な心血管アウトカムのリスクが増大している対象を過体重または肥満について治療する方法」という発明を特定するために必要な事項である「工程」を限定するものではなく、本件補正前の請求項1の発明のカテゴリーを「治療する方法」から、本件補正後の「治療における使用のための」「組成物」に変更するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものということはできない。 また、上記(i)及び(ii)に係る補正が、請求項の削除、誤記の訂正、又は、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことは明らかである。 (2)新規事項について 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の記載に基づくものであり、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、上記(i)及び(ii)に係る補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれを目的とするものでもない。 よって、上記(i)及び(ii)に係る補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。 3 独立特許要件について 仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (1)本件補正発明1 本件補正発明1は、上記1(1)に記載した、本件補正後の以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 過体重または肥満についての対象の治療における使用のための、徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を含む組成物であって、 前記対象が、有害な心血管アウトカムのリスクが増大しており、 ナルトレキソンおよびブプロピオンでの前記治療が、前記対象の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させず、ならびに、 前記有害な心血管アウトカムが、心血管疾患死、非致死性心筋梗塞、または、非致死性脳卒中である、 組成物。」 (2)引用文献、及び周知技術を示す文献 ア 引用文献1について 原査定の拒絶理由で引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特表2011-521973号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審が付した。以下、同じ。)。 (ア)「【請求項1】 第1の化合物がナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩であり、第2の化合物がブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩である、処置を必要とすると同定または診断されたヒトにおける内臓脂肪の状態の処置のための薬物の調製における、前記第1の化合物及び前記第2の化合物の使用。 …(略)… 【請求項9】 前記ヒトがメタボリックシンドロームを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。 …(略)… 【請求項21】 前記第1の化合物及び前記第2の化合物を単一の剤形において一緒に投与する、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用。 …(略)… 【請求項26】 前記ナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩が、徐放性のナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩である、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用。 【請求項27】 前記ブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩が、徐放性のブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩である、請求項1~26のいずれか一項に記載の使用。」(【特許請求の範囲】) (イ)「【0026】 本発明のいくつかの実施形態は、メタボリックシンドロームを処置する方法を目的とする。例えば、一実施形態において、本明細書に記載する通り、ナルトレキソン及びブプロピオンを投与して内臓脂肪(内臓脂肪の絶対量もしくは皮下脂肪に対する内臓脂肪の比)を低減し、メタボリックシンドロームに付随する症状、状態、障害、または疾患(例えば、心疾患)を低減する。メタボリックシンドローム(シンドロームXとしても知られる)は、肥満及びインスリン耐性につながっており、約4700万人のアメリカ人に現れる一群の危険因子を表している。このシンドロームは、後に糖尿病または心血管疾患を発症する危険性を増大させることがあり、過剰な体重を減少させることによって低減することができる。メタボリックシンドローム(成人処置パネルガイドラインIII(Adult Treatment panel Guidelines III)を参照されたい)は、次の症状の3つ以上:腹部肥満、トリグリセリドレベルの上昇、高比重リポタンパク質(HDL)コレステロールレベルの低下、高血圧、及び空腹時血糖の障害を有する対象に付随する状態である。腹部肥満は、男性ではウエスト40インチを超え、女性ではウエスト35インチを超えて顕在化し得る。…(略)…」 (ウ)「【0035】 患者は内臓脂肪の状態に罹患していてよい。例えば、患者は、冠状動脈性心疾患、ある種の癌、糖尿病、耐糖能異常、高インスリン血症、高血圧、歯周病、メタボリックシンドローム、及び糖尿病の1つまたは複数に罹患していてよく、または罹患する危険性があってよい。状態は、過体重である患者に関連し得る。状態は、体重の減少によっても阻害され得る。いくつかの実施形態において、患者は、内臓脂肪の相対値または絶対値における増大をもたらす異なる薬物を投与されている。 【0036】 本発明における使用に適するナルトレキソン及びブプロピオンの組成物は、その意図された目的を実現するのに有効な量の有効成分が含まれている組成物を含む。「治療有効量」は、典型的には臨床医または内科医が決定して、内臓脂肪の状態を処置または管理するのに十分であるナルトレキソン及び/またはブプロピオンの組成物の量を意味する。いくつかの実施形態において、2つ以上の化合物を、別々に、または単一の剤形において提供する。これらの実施形態において、治療有効量を、2つ以上の化合物の併用効果に基づいて決定することができる。例えば、ナルトレキソン及びブプロピオンの併用が内臓脂肪含量を低減するのに有効である投与量のナルトレキソン及びブプロピオンを投与することができるが、この投与量は、ナルトレキソン及びブプロピオンのいずれかを単独で投与した場合には有効でない。一実施形態において、ナルトレキソン及びブプロピオンの量は、併用が、ナルトレキソンまたはブプロピオンいずれかを単独で投与した効果に比べて、内臓脂肪含量及び/またはメタボリックシンドロームの低減において相加性を超える(例えば、相乗的に有効である)効果をもたらすように選択される。」 (エ)「【0039】 (実施例) (実施例1) 二重盲検の、プラセボ対照多施設試験を、285人の健康な非糖尿病の肥満対象で行った。対象に、ブプロピオン200mg1日2回、プラセボ(P)、ナルトレキソン48mg毎日(N1)、またはブプロピオン400mgとナルトレキソン32mg毎日(BN2)のいずれかを投与した。対象182人が24週の処置を完了した。サブセットの対象60人が二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)及びマルチスライスCTスキャンを受けて、体脂肪、除脂肪組織、及び内臓脂肪(米国糖尿病協会2007年年次会合)を測定した。 【0040】 ベースラインに群をマッチさせた。インスリン抵抗性のマーカーは、体重減少単独から予想されたよりもBN2で改善した。内臓脂肪の低減に対する頑強な効果も明らかであった。 【0041】 【表1】 [図:0001419687000001.jpg] 【0042】 (実施例2) 対象(n=117)に、6つの処置の1つを投与した:プラセボ2つ(P+P)、プラセボ及びナルトレキソン(P+Nal)、ブプロピオン及びプラセボ(Bup+P)、ブプロピオン及びナルトレキソン48mg(Bup+Nal 48)、ブプロピオン及びナルトレキソン32mg(Bup+Nal 32)、またはブプロピオン及びナルトレキソン16mg(Bup+Nal 16) 【0043】 対象はDEXAボディスキャンを受けて、ベースライン時及び6ヶ月目に、総体脂肪、除脂肪組織、及び骨塩量を測定した。対象はまた、マルチスライスCTスキャンを受けて、同じ時間点の内臓脂肪体積を決定した。選択的な内臓のマスの減少は、総脂肪及び内臓脂肪の体積をもとに算出することができる。 【0044】 内臓ボディマスにおける変化の平均を、4つの処置に対して図1に示す。Bup+Nal 32を投与した患者は、内臓ボディマスにおいて投与量に関連する減少を経験した。血漿グルコース、血清インスリン、及び血漿トリグリセリドを含めたいくつかの重要なメタボリックパラメータにおいて、統計的に有意な改善がやはり観察された。 【0045】 【表2】 [図:0001419687000002.jpg] 【0046】 【表3】 [図:0001419687000003.jpg] 【0047】 【表4】 [図:0001419687000004.jpg] 【0048】 【表5】 [図:0001419687000005.jpg] 【0049】 結果は、Bup+Nal 32に付随する体重減少は、除脂肪組織ではなく、本質的に脂肪組織の低減によるものであったことを実証している。この低減のパーセント値は、内臓脂肪組織及び全脂肪組織の両方における規模に類似するものであった。内臓脂肪組織の減少は、ブプロピオン及びナルトレキソンの併用(例えば、Bup+Nal 32)は肥満に付随する心臓血管の危険因子に利益を与える可能性があることを指摘している。ブプロピオン及びナルトレキソン32mgは、体重減少及び内臓脂肪マスの減少に対して相乗効果を示した。Bup+Nal 48に付随する総脂肪マス及び内臓脂肪マスにおける変化は著しいものではなかった。しかし、Bup+Nal 48を投与した患者の群は、試料数を低減し、それによって有意性の計算値に影響を及ぼす高比率の初期のドロップアウトがあった。 【0050】 メタボリックシンドロームは、肥満、インスリン抵抗性につながっている一群の危険因子を表し、約4700万人のアメリカ人に存在する。このシンドロームは、糖尿病または心血管疾患を後に発症する危険性を増大させることがあり、過剰な体重を減少させることによって低減することができる。 【0051】 成人処置パネルIIIガイドライン(Adult Treatment Panel III Guideline)によって規定されているように、事後評価を、361人の評価可能な対象間のメタボリックシンドロームのベースライン時の有病率に対して適用した。試験対象約3人中1人が、ベースライン時にメタボリックシンドロームを示していたと決定された。ブプロピオン及びナルトレキソンでの処置は、プラセボでみられるよりも、処置24週後にメタボリックシンドロームの診断基準をもはや満たさない対象が有意に高比率であることと関連した(p=0.04)。対象に、実施例2に記載したのと同じ処置を投与した。ブプロピオン及びナルトレキソンの剤形の中で、Bup+Nal 32は最高の全体の危険性対利益比を実証し、保守的なITT-LOCF分析を用いるとメタボリックシンドロームは30%から14%に低減した(p0.05)。メタボリックシンドロームを規定するパラメータをまたいでBup+Nal 32処置に関連する改善は、トリグリセリド(0.6% P+P、-33.6% Bup+Nal 32、p.01)及びウエスト周囲長(-1.8% P+P、-6.4% Bup+Nal 32、p=.06)における低減に対して最も劇的であり、またHDLコレステロール(0.3% P+P、15.1% Bup+Nal 32、p.01)を好都合に上昇させた。HDLコレステロールが1%上昇すると心臓血管の危険性は2%低減すると文献が指摘しているので、HDLコレステロールにおける上昇は、とりわけ注目に値する。これらのデータは、本明細書に記載するブプロピオン及びナルトレキソンの剤形、特に32/400投与量は、メタボリックシンドロームの有病率を低減し、危険性を低減する必要が最も高い個体間の心臓血管の危険性を改善することを指摘するものである。ブプロピオン及びナルトレキソンでの処置は、プラセボの同齢集団内で38%から30%にすぎなかったのに比べて、プールされたNB群においてメタボリックシンドロームを有する試験集団のパーセントを31%から15%に有意に低減した(p=0.04)。」 イ 周知技術を示す文献Aについて 前置報告書で新たに引用された文献6であって、本願優先日前に頒布された刊行物である、「篠原幸人ら編,脳卒中治療ガイドライン2009,2009年,p.40-41,URL: https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_01.pdf、https://www.jsnt.gr.jp/guideline/nou.html」には、以下の事項が記載されており、これらは本願優先日前に周知の事項と認められる(当審注:証拠の本文中における、参照文献があることを示す数字は、適宜省略した。以下、同じ。)。 (ア)「メタボリックシンドロームは、脳梗塞の危険因子であり、適切な体重までの減量と、運動・食事による生活習慣の改善を基本とし、各コンポーネントに対して必要に応じて薬物療法を行うことが推奨される(グレードB)。」(40頁の「推奨」(原文では丸囲み文字)の項目) (イ)「肥満は、メタボリックシンドローム(Met S)の重要なコンポーネントであり、Met Sに特有の腹部内臓肥満はインスリン抵抗性に深く関与し、糖尿病、脂質異常症、高血圧を次々と引き起こし(メタボリックドミノ)、心血管イベントの発症リスクを高める。 米高第3次国民栄養調査(1988年~1994年)…(略)…の対象者15,922名の検討によると、Met S(NCEP基準)は、性、年齢、人種、喫煙を補正した場合、心筋梗塞(オッズ比2.01、95%CI 1.53~2.64)のみならず脳卒中(オッズ比2.16、95%CI 1.48~3.16)の独立した危険因子であることが示されている。」(40頁の「●エビデンス」の項目) ウ 周知技術を示す文献Bについて 本願優先日前に頒布された刊行物である、「IRYO,2008年,Vol.62,No.8,p.444-450, URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/iryo1946/62/8/62_8_444/_pdf」には、以下の事項が記載されており、これらは本願優先日前に周知の事項と認められる。 (ア)「メタボリックシンドロームは,内臓脂肪の蓄積をともなう腹部肥満に脂質異常,血圧高値,血糖高値が重複合併した病態である.…(略)…わが国のメタボリックシンドロームの診断基準は腹部肥満を必須項目としており,腹囲径で男性85cm以上,女性90cm以上とされているが,外国の診断基準では男性が女性より腹囲径は大きくなっている.メタボリックシンドロームは,過食や運動不足など日常の生活習慣に密接に関連しており,心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性の心血管疾患をきたしやすいことから注目されている.」(444頁の「要旨」の項目) (イ)「脂肪細胞は単にエネルギーを貯蔵しているばかりでなく,生理活性物質であるアディポネクチンなどを分泌する臓器である。内臓脂肪蓄積によっておこるアディポネクチンの分泌異常がメタボリックシンドローム病態形成に関与していることも明らかにされつつある.つまりメタボリックシンドロームは,内臓脂肪蓄積というキープレーヤーが上流に存在し,そこに高血糖,高脂血症,高血圧がともない,心筋梗塞・脳梗塞に罹りやすい病態といえる.」(446頁左欄8行~16行) (ウ)「…(略)…,メタボリックシンドロームとして考えた場合には,内臓脂肪を減らす指導が重要となる.内臓脂肪型肥満は2型糖尿病や心血管病の発症リスクであることを理解してもらうことから治療がはじまる.そのため,治療の主体は生活習慣の修正による肥満の是正となる.これによって単に動脈硬化のリスクが減るだけでなく,糖尿病,高脂血症,高血圧がともに改善するという効率のよい治療が展開できる.」(446頁右欄21行~29行) (エ)「目標は体重など具体的な数値目標のほうが立てやすく,また評価もしやすい.体重の目標は,現体重の5%減に設定する.3~6カ月をかけてゆっくり体重を減量し,目標体重を維持するようにする.わずかな減量によっても,患者にとっては驚きであり強力な治療効果につながる.」(447頁右欄9行~15行) (3)引用発明1 上記(2)ア(ア)に基づけば、引用文献1には、「ナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩」、及び「ブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩」の使用であって、「処置を必要とすると同定または診断されたヒトにおける内臓脂肪の状態の処置のための薬物の調製」における使用について記載され、ヒトがメタボリックシンドロームを有すること、並びに、ナルトレキソン及びブプロピオンのそれぞれについて、徐放性のものを用いることについても記載されている。 また、実施例では、健康な非糖尿病肥満対象において、内臓脂肪低減などについての有効性が示されるとともに、3人に1人がメタボリックシンドロームである対象において、内臓脂肪組織及び体重が減少すること、また、メタボリックシンドロームの有病率やトリグリセリド、ウエスト周囲長を低減し、心臓血管の危険性と関連するHDLコレステロールを上昇させたことから、心臓血管の危険性を改善することが指摘されることが記載されている(上記(2)ア(エ))。 ここで、引用文献1には、「薬物の調製における使用」について記載されていることから、「薬物」自体についても記載されているといえる。 そうすると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものといえる。 「メタボリックシンドロームを有するヒトにおける内臓脂肪の状態の処置のための、徐放性のナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩及び徐放性のブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩を含む薬物。」 (4)対比 本件補正発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1における「徐放性のナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩」、「徐放性のブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩」は、それぞれ、本件補正発明1における「徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩」、「徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩」に相当する。 引用発明1における「ヒト」は、本件補正発明1における「対象」に相当する。 引用発明1における「薬物」は、本件補正発明1における「組成物」に相当する。 また、引用発明1における「メタボリックシンドロームを有するヒトにおける内臓脂肪の状態の処置のため」は、本件補正発明1における「過体重または肥満についての対象の治療における使用のため」と、「対象の治療における使用のため」である点で共通する。 そうすると、本件補正発明1と引用発明1との、一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「対象の治療における使用のための、徐放性ナルトレキソン又はその薬学上許容される塩及び徐放性ブプロピオン又はその薬学上許容される塩を含む組成物。」 <相違点1> 本件補正発明1では、用途が、「過体重または肥満についての対象の治療における使用のため」であるのに対し、引用発明1では「メタボリックシンドロームを有するヒトにおける内臓脂肪の状態の処置のため」である点。 <相違点2> 本件補正発明1では、「前記対象が、有害な心血管アウトカムのリスクが増大しており、 ナルトレキソンおよびブプロピオンでの前記治療が、前記対象の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させず、ならびに、 前記有害な心血管アウトカムが、心血管疾患死、非致死性心筋梗塞、または、非致死性脳卒中である、」と特定されているのに対し、引用発明1では、そのような特定がなされていない点。 (5)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用文献1には、実施例において、ナルトレキソン及びブプロピオンの組合せの投与により、メタボリックシンドロームの患者を含む対象において、内臓脂肪組織及び体重が減少することが示されていること(上記(2)ア(エ))を考慮すると、引用発明1の「メタボリックシンドロームを有するヒトにおける内臓脂肪の状態の処置」は、メタボリックシンドロームを有する対象における内臓脂肪組織及び体重を減少させることを、その具体的な態様としているといえる。 ここで、メタボリックシンドロームは腹部肥満を伴うものであること(上記(2)イ(イ)、ウ(ア))、メタボリックシンドロームに対し「適切な体重までの減量」が推奨されること(上記(2)イ(ア))、メタボリックシンドロームにおいて体重の減量が治療につながること(上記(2)ウ(エ))は周知であるから、メタボリックシンドロームを有する対象において内臓脂肪組織及び体重を減少させるところの引用発明1の用途は、本件補正発明1の「過体重または肥満についての対象の治療における使用のため」という用途と区別することはできず、相違点1は、実質的な相違点ではない。 イ 相違点2について 上記(2)イ、ウに記載されるとおり、メタボリックシンドロームが脳卒中(当審注:脳梗塞は脳卒中の一種である。(脳梗塞が脳卒中の一種であることについて、要すれば、https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_01.pdfにおける「日本脳卒中データバンクに登録された47,782例の解析では脳卒中の病型別頻度は、一過性脳虚血発作(TIA)5.8%、アテローム血栓性梗塞24.1%、ラクナ梗塞22.7%、心原性脳塞栓症19.2%、その他の脳梗塞5.1%、高血圧性脳出血13.7%、脳出血(その他)3.0%、クモ膜下出血6.4%となっている。」(脳卒中治療ガイドライン2009,2頁17行~21行)との記載や、https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/nou2009_02.pdfにおける「国内死因の第3位を占める脳卒中の死亡者数は年約13万人であり、その60%が脳梗塞による。」との記載(脳卒中治療ガイドライン2009,46頁3行~4行)を参照。))や心筋梗塞のリスクを増大することは周知であり、引用文献1にも、メタボリックシンドロームは、心血管疾患を発症する危険性を増大させることがあると記載される(上記(2)ア(イ))。 したがって、脳卒中や心筋梗塞のリスクは「メタボリックシンドロームを有するヒト」において増大すると解するのが相当であり、ここで、脳卒中及び心筋梗塞は、致死性か非致死性のいずれかであるので、引用発明1の「メタボリックシンドロームを有するヒト」は、致死性の脳卒中や心筋梗塞に相当する「心血管疾患死」、「非致死性心筋梗塞、または、非致死性脳卒中」である「有害な心血管アウトカムのリスクが増大して」いる対象であるといえる。 そして、(2)ウの記載から、メタボリックシンドロームの治療において、肥満を是正して内臓脂肪を減らすことにより、心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化性の心血管疾患の発症リスクを減少させることは周知であるので、メタボリックシンドロームを有するヒトを対象とする引用発明1の薬物について、メタボリックシンドロームに起因する各種の有害な心血管アウトカムのリスクを検証し、これを増大させないことを確認することは、当業者が容易に想到し得た事項といえる。 したがって、引用発明1において、本件補正発明1の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうるものである。 ウ 本件補正発明1の効果について 本件明細書の記載を検討しても、臨床試験の手順などが説明されるのみで、具体的な試験結果については示されておらず、引用文献1の記載及び周知技術からみて、本件補正発明1が当業者の予測を超えるような格別に顕著な効果を奏するということはできない。 エ 請求人の主張について (ア) 請求人は、令和4年10月11日提出の意見書において、以下の主張を行っている。 引用文献1から5のいずれも、ナルトレキソン及びブプロピオンでの治療が、対象の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させることなく、有害な心血管アウトカムのリスクが増大している対象の過体重又は肥満を治療できることを開示しておらず、代わりに、参考資料1のとおり、本願出願日当時多くの減量薬がそのような患者の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させることが知られていたことをふまえれば、対象の有害な心血管アウトカムのリスクを増大させることなく、対象の過体重又は肥満を治療する、本願発明の組成物は、引用文献1から5に対して新規性及び進歩性を有する。 しかしながら、上記イで説示したとおり、メタボリックシンドロームを有するヒトを対象とする引用発明1の薬物について、各種の有害な心血管アウトカムのリスクを検証し、これを増大させないことを確認することは、当業者が容易に想到し得た事項といえるのであり、引用発明1の薬物とは異なる、他の減量薬についての知見が上記判断を否定するものともいえない。 請求人の上記主張は上記判断に影響しない。 (イ) 請求人は、令和5年4月5日提出の審判請求書において、引用文献1は、「心血管疾患死、非致死性心筋梗塞、または、非致死性脳卒中である有害な心血管アウトカム」を全く開示しない旨主張する。 しかしながら、上記イで説示したとおり、引用発明1の「メタボリックシンドロームを有するヒト」は、「心血管疾患死、非致死性心筋梗塞、または、非致死性脳卒中である有害な心血管アウトカム」のリスクが増大している対象であるといえる。 請求人の上記主張は上記判断に影響しない。 オ 小括 以上のとおり、本件補正発明1は、引用発明1、並びに引用文献1に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、上記2のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるとしても、本件補正は、上記3のとおり、本件補正発明1が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明1 上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(本願発明1)は、令和3年3月8日提出の翻訳文提出書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 有害な心血管アウトカムのリスクが増大している対象を過体重または肥満について治療する方法であって、 有害な心血管アウトカムのリスクが増大している過体重または肥満の対象を同定する工程、ならびに 前記対象に治療有効量の徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩を投与する工程 を含む方法。」 2 原査定の理由 原査定の拒絶の理由は、本願発明1は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない、という理由(以下「理由2」という。)、及び、本願発明1は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由(以下「理由3」という。)を含むものである。 3 理由2について 本願発明1は、対象から人間が除外されておらず、人間を手術又は治療する方法を含むものであるから、産業上利用することができる発明に該当しない。 4 理由3について (1)引用文献の記載事項 ア 引用文献1には、上記第2の3(2)アに示した事項に加え、以下のイの事項も記載されている。周知技術を示す文献A、Bの記載事項は、上記第2の3(2)イ、ウに示したとおりである。 イ 引用文献1の記載事項 「【請求項28】 第1の化合物がナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩であり、第2の化合物がブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩である、内臓脂肪の状態を処置するために、前記内臓脂肪の状態に対する処置を必要とすると同定または診断されたヒトに前記第1の化合物及び前記第2の化合物を投与するステップを含む、内臓脂肪の状態を処置する方法。 【請求項29】 前記第1の化合物が、前記第2の化合物の単独の投与に比べて前記第2の化合物の処置効果を増強するのに有効な量である、請求項28に記載の方法。 【請求項30】 前記第2の化合物が、前記第1の化合物の単独の投与に比べて前記第1の化合物の処置効果を増強するのに有効な量である、請求項28に記載の方法。 …(略)… 【請求項36】 前記ヒトがメタボリックシンドロームを有する、請求項28~35のいずれか一項に記載の方法。 …(略)… 【請求項53】 前記ナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩が、徐放性のナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩である、請求項28~52のいずれか一項に記載の方法。 【請求項54】 前記ブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩が、徐放性のブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩である、請求項28~53のいずれか一項に記載の方法。」(【特許請求の範囲】) (2)引用発明2 上記(1)イ及び第2の3(2)アに基づけば、引用文献1には、「内臓脂肪の状態を処置するために、前記内臓脂肪の状態に対する処置を必要とすると同定または診断されたヒト」に「ナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩」及び「ブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩」を投与するステップを含む、「内臓脂肪の状態を処置する方法」について記載され、ヒトがメタボリックシンドロームを有すること、並びに、ナルトレキソン及びブプロピオンのそれぞれについて、徐放性のものを用いることについても記載されている。引用文献1には、「ナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩」が、「ブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩」の単独の投与に比べて、その「処置効果を増強するのに有効な量」であることが記載される(【請求項29】)ので、「ナルトレキソンまたは薬学的に許容されるその塩」と「ブプロピオンまたは薬学的に許容されるその塩」を治療有効量で用いることが記載されるといえる。 また、実施例には、上記第2の3(3)で説示した記載がある。 そうすると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものといえる。 「内臓脂肪の状態を処置するために、前記内臓脂肪の状態に対する処置を必要とすると同定又は診断された、メタボリックシンドロームを有するヒトに、治療有効量の徐放性のナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩及び徐放性のブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、内臓脂肪の状態を処置する方法。」 (3)本願発明1と引用発明2との対比・判断 本願発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2における「徐放性のナルトレキソン又は薬学的に許容されるその塩」、「徐放性のブプロピオン又は薬学的に許容されるその塩」は、それぞれ、本願発明1における「徐放性ナルトレキソンまたはその薬学上許容される塩」、「徐放性ブプロピオンまたはその薬学上許容される塩」に相当する。引用発明2における「ヒト」は、本願発明1における「対象」に相当する。引用発明2における「処置する方法」は、本願発明1における「治療する方法」に相当する。引用発明2における「ステップ」は、本願発明1における「工程」に相当する。 また、引用発明2における「ヒト」は「同定又は診断され」ているので、引用発明2は、対象を同定する工程を有するといえる。 そうすると、本願発明1と引用発明2との、一致点及び一応の相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「対象を治療する方法であって、 対象を同定する工程、並びに 前記対象に治療有効量の徐放性ナルトレキソン又はその薬学上許容される塩および徐放性ブプロピオン又はその薬学上許容される塩を投与する工程 を含む方法。」 <相違点3> 本願発明1では、「過体重または肥満について治療する」のに対し、引用発明2では「内臓脂肪の状態を処置する」点。 <相違点4> 本願発明1では、対象が「有害な心血管アウトカムのリスクが増大している過体重または肥満の対象」であるのに対し、引用発明2では「内臓脂肪の状態に対する処置を必要とすると同定又は診断された、メタボリックシンドロームを有するヒト」である点。 相違点3に関し、上記第2の3(5)アで示したのと同様の理由により、メタボリックシンドロームを有する対象において内臓脂肪組織及び体重を減少させるところの引用発明2の方法は、「過体重または肥満について治療する」ものであるともいえる。相違点3は実質的な相違点ではない。 相違点4に関し、上記第2の3(5)イで示したのと同様の理由により、引用発明2の「メタボリックシンドロームを有するヒト」は、「有害な心血管アウトカムのリスクが増大して」いる対象であるといえる。そして、上記第2の3(2)イ、ウに示したように、メタボリックシンドロームは腹部肥満を伴うものであるから、引用発明2の対象は「過体重または肥満の対象」であるともいえる。相違点4は実質的な相違点ではない。 したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明と同一である。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから特許を受けることができず(理由2)、また、同条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない(理由3)。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-005500

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