審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2015-800143

ウェーハレベルパッケージングにおけるフォトレジストストリッピングと残渣除去のための組成物及び方法

審判番号
2015-800143
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2007-539278
登録番号
特許第5456973号(P5456973)
請求日
2015年06月26日
審決日
2017年04月25日
公報発行日
2018年11月30日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】富士フイルム 株式会社
  • 【請求人代理人】稲葉 良幸
  • 【請求人代理人】根本 浩
  • 【請求人代理人】赤堀 龍吾
  • 【請求人代理人】鷲尾 透
  • 【被請求人】イー.ケー.シー.テクノロジー.インコーポレーテッド
  • 【被請求人代理人】増井 和夫
  • 【被請求人代理人】橋口 尚幸
  • 【被請求人代理人】齋藤 誠二郎
審判長/審判官
  • 審判長 中田 誠
  • 審判官 樋口 信宏
  • 審判官 木村 敏康
分類
P1113.121-ZAA(G03F) / P1113.536-ZAA(G03F) / P1113.537-ZAA(G03F) / P1113.851-ZAA(G03F) / P1113.853-ZAA(G03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第1項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第123条、特許法第134条の2第3項、特許法第184条の3第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第169条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5456973号発明「ウェーハレベルパッケージングにおけるフォトレジストストリッピングと残渣除去のための組成物及び方法」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第5456973号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-9〕,〔10-15〕について訂正することを認める。 特許第5456973号の請求項1ないし9に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5456973号の請求項10ないし15についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は,被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 事案の概要 1 手続の経緯 特許第5456973号の請求項1~請求項15に係る発明についての特許(以下,それぞれ「本件特許1」~「本件特許15」といい,総称して「本件特許」という。)についての特許出願は,特許法184条の3第1項の規定により2005年10月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2004年10月29日 米国)にされたものとみなされ,平成26年1月17日に特許権の設定の登録がされたものである。 本件特許に対し,平成27年6月26日に,利害関係人である富士フイルム株式会社から無効審判(無効2015-800143号)が請求されたところ,その手続の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成27年6月26日提出:審判請求書 (甲1~甲13を添付。) 平成27年11月9日提出:審判事件答弁書 (乙1~乙4を添付。なお,訂正の請求はなかった。) 平成27年12月22日付け:審理事項通知書 平成28年2月26日提出:口頭審理陳述要領書(請求人) (甲14~甲21を添付。) 平成28年2月26日提出:口頭審理陳述要領書(被請求人) (乙5を添付。) 平成28年3月11日:口頭審理,証拠調べ,補正許否の決定 (補正許否の決定 審判請求書の補正を許可する。) 平成28年4月28日提出:上申書(請求人) (甲22~甲24を添付。) 平成28年4月28日提出:上申書(被請求人) (以下「被請求人上申書1」という。乙6~乙12を添付。) 平成28年6月23日付け:審尋 (請求人及び被請求人に対し,同年同月28日発送) 平成28年7月22日提出:回答書(請求人) (甲25及び26を添付。) 平成28年7月22日提出:回答書(被請求人) (乙13~乙15を添付。) 平成28年9月23日付け:審決の予告(同年同月29日送達) 平成28年12月28日提出:訂正請求書 (以下,この訂正請求書による訂正の請求を,「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を,「本件訂正」という。) 平成28年12月28日提出:上申書 (以下「被請求人上申書2」という。乙16及び乙17を添付。) 平成29年1月5日付け:訂正請求書副本の送付通知(同年同月11日発送) 平成29年2月10日:審判事件弁駁書 (甲27~甲32の4を添付。) 第2 本件訂正請求について 1 訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は,「特許第5456973号の明細書,特許請求の範囲を本件請求書に添付した訂正明細書,特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~15について訂正することを求める。」というものである。 2 本件訂正請求について 特許請求の範囲の請求項1~請求項15の引用関係からみて,本件訂正請求は特許法134条の2第3項に規定する一群の請求項である,〔請求項1~請求項9〕,〔請求項10~請求項15〕ごとにされたものである。 したがって,本件訂正請求は,特許法134条の2第3項の規定に適合する。 3 請求項1~請求項9からなる一群の請求項に係る訂正について (1) 訂正の内容 請求項1~請求項9からなる一群の請求項について,被請求人が求める訂正事項は,以下のとおりである。なお,下線部は訂正箇所を表す。 ア 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「R1は,アルキル基であり」とあるのを,「R1は,メチルであり」に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された請求項2~請求項4,請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 イ 訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「R2,R3,及びR4は,独立にアルキル又はヒドロキシアルキルである」とあるのを,「R2,R3,及びR4は,独立にメチル,エチル,ヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルである」に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された請求項2~請求項4,請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 ウ 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「を有する有機アンモニウム化合物と」とあるのを,「を有する0.4質量%~30質量%の有機アンモニウム化合物と」に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された請求項2~請求項4,請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 エ 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「,水素サルフェート,ホスフェート,水素ホスフェート,二水素ホスフェート,ニトレート,カルボキシレート,ハライド,カーボネート,水素カーボネート,ビフルオライド,又はそれらの組合せ」とあるのを,削除する(請求項1の記載を引用して記載された請求項2~請求項4,請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 オ 訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「を有するオキソアンモニウム化合物と」とあるのを,「を有する0.1質量%~5質量%のオキソアンモニウム化合物と」に訂正する(請求項1の記載を引用して記載された請求項2~請求項4,請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 カ 訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「前記有機アンモニウム化合物が1質量%~30質量%の量で存在し」とあるのを,「前記有機アンモニウム化合物が1質量%~10質量%の量で存在し」に訂正する(請求項4の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 キ 訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「前記オキソアンモニウム化合物が0.4質量%~10質量%の量で存在する」とあるのを,「前記オキソアンモニウム化合物が0.4質量%~3質量%の量で存在する」に訂正する(請求項4の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 ク 訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「ジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド,エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド,メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド,テトラブチルアンモニウムヒドロキシド,テトラエチルアンモニウムヒドロキシド,テトラメチルアンモニウムヒドロキシド,テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド及びその組み合わせからなる群より選択される有機アンモニウム化合物と」とあるのを,「テトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる有機アンモニウム化合物と」に訂正する(請求項5の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 ケ 訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「ヒドロキシルアミンサルフェート,ヒドロキシルアミンホスフェート,ヒドロキシルアミンクロライド,ヒドロキシルアミンニトレート,ヒドロキシルアミンシトレート,及びその組み合わせからなる群より選択されるオキソアンモニウム化合物と」とあるのを,「ヒドロキシルアミンサルフェートからなるオキソアンモニウム化合物と」に訂正する(請求項5の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 コ 訂正事項10 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「前記有機アンモニウム化合物が1質量%~30質量%の量で存在し」とあるのを,「前記有機アンモニウム化合物が1質量%~10質量%の量で存在し」に訂正する(請求項5の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 サ 訂正事項11 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「前記オキソアンモニウム化合物が0.4質量%~10質量%の量で存在し」とあるのを,「前記オキソアンモニウム化合物が0.4質量%~3質量%の量で存在し」に訂正する(請求項5の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 シ 訂正事項12 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「上に回路又は回路の一部が存在する」とあるのを,「上に銅又はアルミニウムの回路又は回路の一部が存在する」に訂正する(請求項6の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 ス 訂正事項13 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「オキソアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートと, 水とを含み,」とあるのを,「オキソアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートと, pH調整剤と, 水とを含み,」に訂正する(請求項6の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 セ 訂正事項14 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「前記有機アンモニウム化合物が1質量%~30質量%の量で存在し」とあるのを,「前記有機アンモニウム化合物が1質量%~10質量%の量で存在し」に訂正する(請求項6の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 ソ 訂正事項15 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「前記オキソアンモニウム化合物が0.5質量%~5質量%で存在し」とあるのを,「前記オキソアンモニウム化合物が0.5質量%~3質量%で存在し」に訂正する(請求項6の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 タ 訂正事項16 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「前記組成物のpHが7より高く,」とあるのを,「前記組成物のpHが7~12である,」に訂正する(請求項6の記載を引用して記載された請求項7~請求項9についても連動して訂正する。)。 チ 訂正事項17 訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「前記組成物のpHが7~12である,請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物」とあるのを,「前記組成物のpHが7~11である,請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物」に訂正する(請求項7の記載を引用して記載された請求項8及び請求項9についても連動して訂正する。)。 ツ 訂正事項18 訂正前の明細書の段落【0088】の表19において,組成物「W4」の行を全て削除する。 テ 訂正事項19 訂正前の明細書の段落【0088】の表19において,組成物「W14」の行を全て削除する。 ト 訂正事項20 訂正前の明細書の段落【0088】の表19において,組成物「W15」の行を全て削除する。 ナ 訂正事項21 訂正前の明細書の段落【0088】の表19において,組成物「W24」の行を全て削除する。 ニ 訂正事項22 訂正前の明細書の段落【0088】の表19において,組成物「W25」の行を全て削除する。 ヌ 訂正事項23 訂正前の明細書の段落【0088】の表19において,組成物「W26」の行を全て削除する。 (2) 訂正の適否 以下,本件訂正前の請求項1を「訂正前請求項1」といい,訂正前請求項1に係る発明を「訂正前発明1」という。他の請求項についても同様にいい,総称して「訂正前請求項」,「訂正前発明」ともいう。訂正後についても同様とする。 ア 訂正事項1及び訂正事項2について 訂正事項1及び訂正事項2による訂正は,ともに,有機アンモニウム化合物の構造に関する訂正なので,化合物全体の構造として検討すると,以下のとおりである。 訂正事項1及び訂正事項2による訂正は,願書に添付した明細書(以下「訂正前明細書」という。)の段落【0022】~【0029】の記載に基づいて,本件特許発明1の有機アンモニウム化合物の置換基R1~R4が取り得る置換基を,特定の置換基に限定する訂正である。また,本件特許発明2~本件特許発明4,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項1及び訂正事項2による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 イ 訂正事項3について 訂正事項3による訂正は,訂正前明細書の段落【0041】の記載に基づいて,本件特許発明1の有機アンモニウム化合物の分量を限定する訂正である。また,本件特許発明2~本件特許発明4,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項3による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項4について 訂正事項4による訂正は,訂正前明細書の段落【0033】の記載に基づいて,本件特許発明1のオキソアンモニウム化合物の対イオンX-が取り得る選択肢を減ずる訂正である。また,本件特許発明2~本件特許発明4,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項4による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 エ 訂正事項5について 訂正事項5による訂正は,訂正前明細書の段落【0041】の記載に基づいて,本件特許発明1のオキソアンモニウム化合物の分量を限定する訂正である。また,本件特許発明2~本件特許発明4,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項5による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 オ 訂正事項6について 訂正事項6による訂正は,訂正前明細書の段落【0041】の記載に基づいて,本件特許発明4の有機アンモニウム化合物の分量を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項6による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 カ 訂正事項7について 訂正事項7による訂正は,訂正前明細書の段落【0041】の記載に基づいて,本件特許発明4のオキソアンモニウム化合物の分量を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項7による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 キ 訂正事項8について 訂正事項8による訂正は,訂正前請求項5に記載された有機アンモニウム化合物の選択肢を減ずることにより,訂正前発明5に含まれる発明を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項8による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 ク 訂正事項9について 訂正事項9による訂正は,訂正前請求項5に記載されたオキソアンモニウム化合物の選択肢を減ずることにより,訂正前発明5に含まれる発明を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項9による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 ケ 訂正事項10について 訂正事項10による訂正は,訂正前明細書の段落【0041】の記載に基づいて,本件特許発明5の有機アンモニウム化合物の分量を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項10による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 コ 訂正事項11について 訂正事項11による訂正は,訂正前明細書の段落【0041】の記載に基づいて,本件特許発明5のオキソアンモニウム化合物の分量を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項11による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 サ 訂正事項12について 訂正事項12による訂正は,訂正前明細書の段落【0043】の記載に基づいて,本件特許発明6の回路の素材を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項12による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 シ 訂正事項13について 訂正事項13による訂正は,訂正前明細書の段落【0043】の記載に基づいて,本件特許発明6の組成物の構成を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項13による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 ス 訂正事項14について 訂正事項14による訂正は,訂正前明細書の段落【0041】の記載に基づいて,本件特許発明6の有機アンモニウム化合物の分量を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項14による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 セ 訂正事項15について 訂正事項15による訂正は,訂正前明細書の段落【0041】の記載に基づいて,本件特許発明6のオキソアンモニウム化合物の分量を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項15による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 ソ 訂正事項16について 訂正事項16による訂正は,訂正前明細書の段落【0044】の記載に基づいて,本件特許発明6の組成物のpHの範囲を限定する訂正である。また,本件特許発明7~本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項16による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 タ 訂正事項17について 訂正事項17による訂正は,訂正前明細書の段落【0044】の記載に基づいて,本件特許発明7の組成物のpHの範囲を限定する訂正である。また,本件特許発明8及び本件特許発明9についても同様のことがいえる。 したがって,訂正事項17による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 チ 訂正事項18~訂正事項23について 訂正事項18~訂正事項23による訂正は,訂正前明細書の段落【0088】の表19において,その分量とpHが整合しないと解される組成物(組成物W4,W14,W15及びW24~W26)の行をそれぞれ削除する訂正である。 したがって,訂正事項18~訂正事項23による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 4 請求項10~請求項15からなる一群の請求項に係る訂正について (1) 訂正の内容 請求項10~請求項15からなる一群の請求項について,被請求人が求める訂正事項は,以下のとおりである。 ア 訂正事項24 訂正前の特許請求の範囲の請求項10を削除する。 イ 訂正事項25 訂正前の特許請求の範囲の請求項11を削除する。 ウ 訂正事項26 訂正前の特許請求の範囲の請求項12を削除する。 エ 訂正事項27 訂正前の特許請求の範囲の請求項13を削除する。 オ 訂正事項28 訂正前の特許請求の範囲の請求項14を削除する。 カ 訂正事項29 訂正前の特許請求の範囲の請求項15を削除する。 (2) 訂正の適否 訂正事項24~訂正事項29による訂正は,請求項を削除する訂正である。 したがって,訂正事項24~訂正事項29による訂正は,特許法134条の2第1項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当するとともに,同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 5 明細書の訂正について 訂正事項18~訂正事項23による訂正は,訂正前明細書の段落【0088】の表19において,その分量とpHが整合しないと解される組成物(組成物W4,W14,W15及びW24~W26)の行をそれぞれ削除する訂正である。そうしてみると,訂正事項18~訂正事項23による訂正と関連する訂正後の請求項は,組成物の分量及びpHが記載された,訂正後請求項1~訂正後請求項9である。また,訂正後請求項1~訂正後請求項9を含む一群の請求項は,〔請求項1~請求項9〕のみである。そして,訂正事項18~訂正事項23による訂正は,〔請求項1~請求項9〕についてする訂正である。 したがって,本件訂正請求は,願書に添付した明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われたものであるから,特許法134条の2第9項において準用する同法126条4項の規定に適合する。 なお,請求項10~請求項15は,訂正事項24~訂正事項29により削除されるから,訂正後請求項10~訂正後請求項15は,訂正事項18~訂正事項23による訂正と関連する請求項ということができない。 6 本件訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法134条の2第1項の規定に適合するとともに,同法同条第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。また,本件訂正請求は,同法134条の2第3項の規定に適合するとともに,同法同条第9項において準用する同法126条4項の規定に適合する。 よって,本件訂正を認める。 第3 無効理由について 1 訂正後発明1~訂正後発明9について 上記「第2」のとおり,本件訂正を認めることとなった。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項9に係る発明(訂正後発明1~訂正後発明9)は,訂正後請求項1~訂正後請求項9のそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりの,次のものである。 「【請求項1】 上に回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための組成物であって,前記組成物が, 下記構造: 【化1】 (式中: Xは,ヒドロキシドであり, R1は,メチルであり,かつ R2,R3,及びR4は,独立にメチル,エチル,ヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルである) を有する0.4質量%~30質量%の有機アンモニウム化合物と, 下記構造: 【化2】 (式中: Xは,サルフェートであり, R5は,水素であり,かつ R6及びR7は,水素である) を有する0.1質量%~5質量%のオキソアンモニウム化合物と, 水とを含み, 前記組成物のpHが7より高く, 前記組成物が,前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる,組成物。 【請求項2】 水と混和性の有機極性溶媒をさらに含む,請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 前記有機極性溶媒がN-メチル-ピロリドン,ジメチルスルホキシド,ジグリコールアミン,モノエタノールアミン,プロピレングリコール,又はそれらの混合物を含む,請求項2に記載の組成物。 【請求項4】 前記有機アンモニウム化合物が1質量%~10質量%の量で存在し,前記水が15質量%~94質量%の量で存在し,かつ前記オキソアンモニウム化合物が0.4質量%~3質量%の量で存在する,請求項1に記載の組成物。 【請求項5】 上に回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための組成物であって,前記組成物が, テトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる有機アンモニウム化合物と, ヒドロキシルアミンサルフェートからなるオキソアンモニウム化合物と, 水とを含み, 前記有機アンモニウム化合物が1質量%~10質量%の量で存在し,かつ前記オキソアンモニウム化合物が0.4質量%~3質量%の量で存在し, 前記組成物のpHが7より高く, 前記組成物が,前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる,組成物。 【請求項6】 上に銅又はアルミニウムの回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための組成物であって,前記組成物が, 有機アンモニウム化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドと, オキソアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートと, pH調整剤と, 水とを含み, 前記有機アンモニウム化合物が1質量%~10質量%の量で存在し,かつ前記オキソアンモニウム化合物が0.5質量%~3質量%で存在し, 前記組成物のpHが7~12である, 前記組成物が,前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる,組成物。 【請求項7】 前記組成物のpHが7~11である,請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項8】 上に回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための方法であって,前記集積回路基板,ウェーハレベルパッケージング基板,又はプリント基板と,請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物とを35℃~100℃で,かつ10秒~45分間接触させる工程を含み,それにより前記集積回路基板,ウェーハレベルパッケージング基板,又はプリント基板から,これら基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去する,方法。 【請求項9】 前記温度が45℃~75℃であり,かつ前記時間が5分~30分である,請求項8に記載の方法。」 2 請求人及び被請求人の主張 (1) 請求の趣旨 請求の趣旨は,「特許第5456973号の請求項1乃至15に係る特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」である。 (2) 請求人が主張する無効理由 請求人が主張する無効理由の概要は,以下のとおりである。 ア 無効理由1(進歩性欠如) 本件特許発明1~本件特許発明15は,本件特許の優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に頒布された刊行物である甲1及び甲2に記載された発明,並びに,本件優先日における技術常識に基づいて,本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許1~本件特許発明15は,同法123条1項2号に該当し無効とすべきである。 主引用例は,甲1である。 イ 無効理由2(進歩性欠如) 本件特許発明1~本件特許発明15は,本件優先日前に頒布された刊行物である甲12に記載された発明及び本件優先日における技術常識に基づいて,本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本件特許1~本件特許発明15は,同法123条1項2号に該当し無効とすべきである。 主引用例は,甲12である。 ウ 無効理由3-1(実施可能要件違反) 本件特許1~本件特許15は,以下の(ア)~(ウ)の理由により,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,本件特許1~本件特許15は,同法123条1項4号に該当し無効とすべきである。 (ア)本件特許明細書の段落【0088】(表19)に記載されたpH「<7」である比較例相当の組成物W14について,表19に記載された組成からなる組成物は,そのpHが7より大きい値となる。また,本件特許の発明の詳細な説明の記載を参照しても,どのようにして組成物W14の組成において,pHを7未満にしたのか,不明である。そうしてみると,本件特許発明1~本件特許発明15には,製造することができないものが包含されている。 したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 (イ)あるいは,組成物W14のpHが実際には7より大きい値である場合,本件特許発明1~本件特許発明15の構成要件の全てを備える組成物であっても,本件特許発明1~本件特許発明15の所期の作用効果を奏せず,使用することができないものが存在している。 したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 (ウ)本件特許発明1~本件特許発明15の解決すべき課題が,被請求人の主張のとおり,フォトレジスト残留物の除去だけでなく,回路を損傷しないことにもあるのであれば,本件特許における発明の詳細な説明の記載は,どのような組成物であれば回路を損傷しないのか不明である点において,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 エ 無効理由3-2(サポート要件違反) 本件特許1~本件特許15は,以下の(ア)~(ウ)の理由により,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願にされたものであるから,本件特許1~本件特許15は,同法123条1項4号に該当し無効とすべきである。 (ア)本件特許発明1~本件特許発明15に係る組成物が必須成分として含有する有機アンモニウム化合物及びオキソアンモニウム化合物には,極めて多くの化合物が該当する。 しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例では,有機アンモニウム化合物としてコリンヒドロキシドを用い,オキソアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートを用いた組成物の効果が確認されているのみである。 そうしてみると,本件特許発明1~本件特許発明15は,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できることを,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり,この点において,本件特許発明1~本件特許発明15と発明の詳細な説明に発明として記載されたものとが,実質的に対応しているとはいえない。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項15の記載は,本件特許発明1~本件特許発明15が発明の詳細な説明に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明1~本件特許発明15に係る組成物は,そのpHが7より高いことを必須要件としている。しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例では,pHが12より大きい組成物についてその効果が確認されているのみであるから,pHが7以上であれば発明の課題が必ず解決できるとはいえない。 そうしてみると,本件特許発明1~本件特許発明15は,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できることを,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり,この点において,本件特許発明1~本件特許発明15と発明の詳細な説明に発明として記載されたものとが,実質的に対応しているとはいえない。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項15の記載は,本件特許発明1~本件特許発明15が発明の詳細な説明に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 (ウ)本件特許発明1~本件特許発明15の解決すべき課題が,被請求人の主張のとおり,フォトレジスト残留物の除去だけでなく,回路を損傷しないことにもあるのであれば,本件特許発明1~本件特許発明15は,発明の詳細な説明において,回路を損傷しないという発明の課題が解決できることを,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項15の記載は,本件特許発明1~本件特許発明15が発明の詳細な説明に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 (3) 証拠方法(甲1~甲32の4) 請求人が提出した証拠方法は,以下のとおりである。 甲1:特表2002-520812号公報 甲2:特開2002-196510号公報 甲3:特開2002-278092号公報 甲4:特開2003-098691号公報 甲5-1:国際公開第2003/104185号 甲5-2:特表2005-528660号公報 甲6:特表2002-515537号公報 甲7:特開2001-288496号公報 甲8:Wen-Kuan Yeh他,「An Efficient Preclean of Aluminized Silicon Substrate for Chemical Vapor Deposition of Submicron Tungsten Plugs」,J.Electrochem.Soc., Vol.142, No.10, October 1995, 3584-3588頁 甲9:F.A.コットン他,「コットン ウィルキンソン ガウス 基礎無機化学 原書第3版」,株式会社培風館,1998年4月17日発行,392頁 甲10:今井他,「化学大百科」,株式会社朝倉書店,1997年10月25日発行,805頁 甲11:岡崎他,「ビギナーズブックス 29 はじめての半導体リソグラフィ技術」,株式会社工業調査会,2003年6月30日発行,232頁,234頁,237頁,241頁,248頁,251頁,252頁 甲12:米国特許第6245155号明細書 甲13:実験成績証明書 甲14:実験成績証明書 甲15:国際公開第2010/113616号 甲16:実験成績証明書 甲17:実験成績証明書 甲18-1:C-W.SHIN他,「Anisotropic copper etching with monoethanolamine-complexed cupric ion solutions」,Journal of Applied Electrochemistry 33,2003年,403-410頁 甲18-2:R J Oliphant,「CAUSES OF COPPER CORROSION IN PLUMBING SYSTEMS」,Foundation for Water Research,2003年,2-36頁 甲19:実験成績証明書 甲20-1:特開2001-240985号公報 甲20-2:特開2000-188278号公報 甲20-3:特開平11-293478号公報 甲21:実験成績証明書 甲22:国際公開第00/02238号公報 甲23:実験成績証明書 甲24:実験成績証明書 甲25:編著者表記なし,「配線」,発行者表記なし,発行年月日表記なし,頁表記なし 甲26:編著者表記なし,「MATERIAL SAFETY DATA SHEET」,FUJIFILM,発行年月日表記なし,1-8頁 甲27:知的財産高等裁判所 平成23年(行ケ)第10431号 審決取消請求事件 判決 甲28:編著者表記なし,「THE INTERNATIONAL TECHNOLOGY ROADMAP FOR SEMICONDUCTORS 1999」,発行者表記なし,変更年月日表記なし,3-6頁 甲29:H.H.ユーリック,「腐食反応とその制御 -原理と応用-」,産業図書株式会社,昭和43年3月25日発行,286-287頁 甲30:今村他,「水酸化テトラメチルアンモニウム」,有機合成化学 45巻9号,1987年,909-913頁 甲31:藤塚他,「シリコンと酸化剤を溶解したTMAHによるアルミをエッチングしないシリコン異方性エッチング」,R&D Review of Toyota CRDL Vol.39 No.2,発行年月日表記なし(原稿受領年は2004年),34-40頁 甲32の1:特開2003-270802号公報 甲32の2:特開2002-289569号公報 甲32の3:特開2002-20787号公報 甲32の4:特開2003-316028号公報 (4) 答弁の趣旨 答弁の趣旨は,「本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」である。 (5) 証拠方法(乙1~乙17) 被請求人が提出した証拠方法は,以下のとおりである。 乙1:実験報告書(組成物B5等について) 乙2:実験報告書(pHと銅の損傷について) 乙3:特表2003-515254号公報 乙4:実験報告書(組成物W11~W14について) 乙5:特開平6-192867号公報 乙6-1:ChemicalBook編,「ヒドロキシルアミン」,ChemicalBook Inc.,掲載日等不明,インターネット<URL:http://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB3345090.htm> 乙6-2:昭和化学株式会社,「硫酸ヒドロキシルアンモニウム」,安全データシート,発行年月日不明,1~2頁 乙7:実験報告書(組成物B5等のpHについて) 乙8:実験報告書(pHと銅の損傷について:COH含有組成物) 乙9:実験報告書(pHと残渣除去性能及び配線の損傷度との関係) 乙10:実験報告書(特許第5456973号組成物W4のpHについて) 乙11:実験報告書(特表2003-515254号実施例のpHについて) 乙12:実験報告書(「適量」について) 乙13:編著者表記なし,「MATERIAL SAFETY DATA SHEET」,FUJIFILM,2005年1月9日改訂,1,4及び5頁 乙14:実験報告書(pHとレジスト剥離性との関係) 乙15:富士フイルム株式会社,「ArF液浸リソグラフィープロセス用レジスト「FAiRS-900」シリーズ」,富士フイルム株式会社,平成18年12月6日(発表日),掲載日不明,インターネット<URL:http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/article/ffnr0072.html> 乙16:伊藤,「改訂 腐食化学と防食技術」,コロナ社,1979年10月30日(改訂版),272-279頁 乙17:実験報告書(pHと残渣除去性能及び配線の損傷度との関係) 第4 無効理由3について ここでは,まず,無効理由3について当合議体の判断を示し,その後,無効理由1及び2について当合議体の判断を示す。 なお,「pH」の表記及びpH値については,引用記載も含めて一律に全角で表記し,「アルミニウム」及び「Al」についても,一律に「アルミニウム」と表記する。 1 無効理由3-1(実施可能要件違反)について (1) 段落【0088】(表19)に記載された組成物について ア 組成物W14,W15及びW24~W26 (ア)組成物W14等のpHについて 訂正前明細書の段落【0088】の表19には,組成物W14,W15及びW24~W26のpHについて,それぞれ,「<7」,「7<>12」,「<7」,「<7」及び「<7」と記載されている。 (当合議体注:表19(訂正前)は,以下の表である。) これに対して,甲21(実験成績証明書)の表1によると,これら組成物のpHは,それぞれ,「12.06」,「>14」,「9.46」,「9.52」及び「8.96」である。 (当合議体注:甲21の表1は,以下の表である。) (イ)判断 前記(ア)のとおりであるから,本件特許についての出願時(以下「本件出願時」という。)のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は,表19の記載どおりに組成物W14等を調製しても,表19に記載されたpHの組成物を得ることができない。このような表19の記載では,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は,組成物W1~W31を実際に調製し,それらを比較することにより訂正後発明の組成物の除去能力を確認することができない。 したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,訂正後発明1~訂正後発明7の「組成物」という「物の発明」について,その物を使用できるように記載されているとはいえない。同様に,訂正後発明8及び訂正後発明9の方法の発明について,その方法を使用できるように記載されているとはいえない。 ところで,本件訂正により,表19から組成物W14,W15及びW24~W26についての記載が削除された。 そうしてみると,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が表19の記載どおりに組成物を調製しても表19に記載されたpHの組成物が得られないという問題は,一応,解消したといえる。 しかしながら,訂正後発明の組成物のpHの下限は,本件訂正後においても,依然として「7」である。また,本件訂正により,組成物W5及びW6(訂正後発明の実施例)と同様の,コリンヒドロキシドが主成分であるけれどもpHが「<7」又は「7<>12」である組成物が,表19から全て削除されてしまった。したがって,pH7の近傍の訂正後発明の組成物との関係においては,ますます,組成物を比較することにより訂正後発明の組成物の除去能力を確認することができなくなった。 そうしてみると,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,依然として,訂正後発明の組成物又は方法を使用できるように記載したものであるということができない。 イ 組成物W4 (ア)組成物W4のpHについて 訂正前明細書の段落【0088】の表19(前記ア参照。)に記載された組成物W4のpHについて,表19には「<7」と記載されている。 しかしながら,甲21(実験成績証明書)の表1(前記ア参照。)によると,組成物W4のpHは「7.26」(25℃)である。また,乙10(実験報告書)の表によっても,組成物W4のpHは「6.96」(25℃)である。 (当合議体注:乙10の表は,以下の表である。) (イ)判断 甲21及び乙10からみて,組成物W4のpHは,「7」の近傍と解するのが相当である。また,表19の組成物W4の評価は「除去せず」である。したがって,組成物W4のような,pH7の近傍の組成物は,レジストストリッピング用組成物として,使用不可能である。この点は,レジストが,通常,アルカリ水溶液等には可溶であるが,中性水溶液には難溶であるという技術常識にも合致する。 (当合議体注:表19の評価は,「除去せず」,「部分的な除去」及び「完全な除去」の3段階であるから,「部分的な除去」は,除去できない部分を残していることを意味すると解される。そして,このような「部分的な除去」しかできない組成物は,レジストストリッピング用組成物として,「使用」できるものとは解せない。すなわち,レジストストリッピング用組成物としては,「完全な除去」ができなければ,使い物にならない。) ここで,本件訂正(訂正事項18による訂正)により,表19から,組成物W4の行が削除された。しかしながら,組成物W4が削除されたとしても,pH7の近傍の訂正後発明の組成物がレジストを除去できないことは,事実として変わらない。加えて,「ベークせず」とされたレジストを除去できないpH7の近傍の訂正後発明の組成物は,発明の詳細な説明の段落【0005】及び【0006】に開示されているような化学的に変化したレジストや,より密着性の高いレジストも除去できない。訂正後請求項,例えば,訂正後請求項1には,「上に回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための」という,組成物の用途(以下,括弧付きで「訂正後発明の用途」という。)が記載されている。また,訂正後請求項には,「前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる」という,組成物の効果(以下,括弧付きで「訂正後発明の機能」という。)も記載されている。すなわち,訂正後発明の組成物は,「訂正後発明の用途」において使用したときに,「訂正後発明の機能」が得られるべき組成物であるところ,当該組成物のpHの下限値は,訂正後請求項1に記載されているとおり,「7」である。 しかしながら,発明の詳細な説明の記載,例えば,本件訂正後の表19を参照すると,そこには,pH>12である組成物W5及び組成物W6(訂正後発明1の実施例といえる。)や,pH<7である組成物W13(pHを除き,訂正後発明1の構成を具備する点で,比較例といえる。)は記載されているが,pHの下限値「7」に対応する訂正後発明の実施例は記載されていない。 (当合議体注:本件訂正後の表19は,以下の表である。) したがって,表19からは,pHの下限である「7」近傍において,訂正後発明の組成物又は方法を使用することができることが,確認できない。 この点は,発明の詳細な説明の他の記載を参照しても,同様である。 したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,訂正後発明の組成物又は方法を使用できるように記載したものであるということができない。 (ウ)被請求人の主張について 被請求人は,被請求人上申書2において,「pH7.4~7.5では,60秒より長い5分を適用することで,残渣を完全に除去しつつ,かつ,配線を損傷しませんでした」(13頁10~12行)として,乙17(実験報告書)を示している。 (当合議体注:乙17に記載された組成物及び実験結果は,以下のとおりである。) しかしながら,乙17の組成物は,pH7.4~7.5であるとしても,有機アンモニウム化合物及びオキソアンモニウム化合物の分量の双方が表19のものと比して著しく小さく調整されている。たとえ技術常識を考慮しても,表19に記載された組成物W4等の組成から,このような組成を導き出すことはできない(表19に記載されたレジストストリッピング用組成物に対応しない。)。また,乙17の組成物には,表19には記載されていなかったクエン酸(キレート剤)が含まれている。キレート剤は,訂正後発明が具備する構成ではない。 このような実験報告書により,発明の詳細な説明における記載の不足を補うことはできない。 仮に,乙17を参照しても,乙17には,残渣の種類や配線の集積度などが記載されていない。例えば,発明の詳細な説明の段落【0046】には,「より小さい外形サイズ(例えば,0.18ミクロン以下,又は約0.10ミクロン)のIC,WLP,及びPCB基板を製作する会社は,いわゆる“193”フォトレジストに移動している。」と記載されている。したがって,訂正後発明の組成物は,このような用途において回路を損傷することなく,「完全な除去」ができなければ回路を製造できない。しかしながら,乙17を参照しても,pHが7の近傍である訂正後発明の組成物を,腐食に対する許容量が極めて小さい回路における化学変化した比較的厚いレジストに使用したときに,「訂正後発明の機能」が得られるのか(例:銅の配線を損傷することなくレジスト剥離が可能なのか),判らない。また,乙17は,訂正後請求項に記載されている広範な「訂正後発明の用途」において,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が訂正後発明を実施することができることを裏付ける証拠であるとはいえない。加えて,被請求人は,本件訂正後においても,特許を受けようとする発明を特定するために必要と認めるpHの数値範囲の下限値を「7」としているが,乙17において残渣の除去が確認された組成物のpHは,7.4~7.5である(被請求人は,乙2や乙8ではpH7.2の組成物を調製し,銅の損傷の程度を実験している。)。 なお,訂正後請求項には,「前記組成物が,前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる」という,「訂正後発明の機能」が記載されている。しかしながら,このような記載があるからといって,訂正後請求項に記載されたpHの範囲を離れて,訂正後発明の組成物のpHの範囲を,「訂正後発明の機能」が得られるpHの範囲に限定的に解釈することは許されない。 したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 (2) 回路を損傷しないことについて ア 回路の材料及びpHについて 訂正後発明は,組成物が適用される回路の素材が銅やアルミニウムである場合を発明の要旨に含むものである。ここで,本件特許の発明の詳細な説明には,回路の素材が銅であり,かつ,組成物のpHが12を超える訂正後発明の実施例は,一応,記載されている。しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明には,回路の素材がアルミニウムである訂正後発明の実施例は1つも記載されていない。また,回路の素材が銅であり,かつ,組成物のpHが7に近い訂正後発明の実施例も明記されていない。 これに対して,甲19(実験成績証明書)の表及び図1~図4によると,有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシド,オキソアンモニウム化合物がヒドロキシルアミンサルフェートである組成物は,銅の場合と,銅以外(アルミニウム,アルミニウム-銅合金,タングステン)の場合で,組成物のpHを変えたときのエッチング速度の傾向が全く異なるものである。 (当合議体注:甲19の表及び図1~図4は,以下のとおりである。) イ 判断 発明の詳細な説明の段落【0046】には,「より小さい外形サイズ(例えば,0.18ミクロン以下,又は約0.10ミクロン)のIC,WLP,及びPCB基板を製作する会社は,いわゆる“193”フォトレジストに移動している。」と記載されている。このような微細な回路は,腐食に対する許容量が極めて小さい回路といえるから,組成物によるエッチング速度が,特に問題となる。また,前記(ア)のとおり,訂正後発明の組成物は,銅の場合と,銅以外の場合で,組成物のpHを変えたときのエッチング速度の傾向が全く異なる。 しかしながら,発明の詳細な説明には,訂正後発明の組成物を使用するときに,回路の素材によってエッチングの傾向が異なることや,回路の素材に応じて組成物の調製を変えてpHを最適化する必要がある旨の記載はない。また,被請求人は,訂正後発明の組成物の使用する場合において,このような事項が技術常識であったことを示す証拠を提出していない。 したがって,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 ウ 被請求人の主張に対して 被請求人は,発明の詳細な説明の段落【0043】~【0045】の記載を指摘し,また,乙16を提出して「回路の素材に応じて,本件訂正発明1の組成物のpHを,7以上のアルカリ性側で適宜調整すればよいことは容易に理解できることから,本件訂正発明1は実施可能要件を充足します」(被請求人上申書2の13頁18~21行)と主張している。 そこで,まず,段落【0043】~【0045】が含まれる,実施態様の説明(段落【0021】~【0056】)全体の記載を参照する。 段落【0021】~【0040】には,有機アンモニウム化合物,オキソアンモニウム化合物,有機極性溶媒,キレート剤の態様が,それぞれ網羅的に記載されている。また,段落【0041】~【0043】(初段落まで)においては,有機アンモニウム化合物,オキソアンモニウム化合物,水,有機溶媒及びキレート剤の好ましい分量が記載されている。そして,段落【0043】の2段落には,pH調整剤が記載されている。さらに,段落【0044】の初段落には,組成物の好ましいpH,及び,組成物に実質的に含まれなくて良い化合物が記載されている。加えて,段落【0045】~【0056】には,組成物の用途や機能が記載されている。 しかしながら,これら記載は,いずれも,具体的なものとはいえず,訂正後発明との関係においては,実施することができない態様をも含む一般論を述べたにすぎない記載と解される。例えば,発明の詳細な説明の段落【0043】には,使用する個々のpH調整剤に関して,組成物中での溶解度;有機アンモニウム化合物,オキソアンモニウム化合物,水,及びいずれの任意成分(例えば,有機溶媒など)との混和性;金属(例えば,銅,アルミニウム等)に対する腐食性;などの因子を勘案することが記載されている。しかしながら,発明の詳細な説明には,訂正後発明の組成物を前提として,これら種々の因子をどのように勘案すべきか,その指針が記載されていない。また,段落【0043】には,pH調整剤として,無機酸,例えば塩酸,硝酸,硫酸,リン酸など;有機酸,例えば炭酸,クエン酸など;及びその組合せが記載されている。しかしながら,発明の詳細な説明には,訂正後発明の組成物を前提として,これら化合物をどのように選択すべきか,そして,どのような分量とすべきか,その指針が記載されていない。 そもそも,段落【0043】には,使用する個々のpH調整剤が,所望のpHシフト及びいくつかの他の因子によって決まること,すなわち,所望のpHシフト及び金属に対する腐食性等を勘案して,使用する個々のpH調整剤を決めることが記載されているのであって,金属に対する腐食性を勘案して,pHシフトを決めることは記載されていない。 pHの調整に関して,段落【0043】には,「任意に,また必要な場合だけ通常,pH調整剤を用いて,pHが,基板と関係がある回路,又は回路の一部の動作性を維持しながら,基板からポリマーを除去し,残渣を除去し,或いはその両方を除去するために有効な特定範囲内であるように,本発明の組成物のpHを維持及び/又は修正することができる。」という,抽象的な記載しかない。加えて,pH調整剤は,任意に,また通常は必要な場合だけ用いるものにすぎない。また,段落【0043】には,前記抽象的な記載に基づいてpHを修正すること,そして,所望のpHシフト及びいくつかの他の因子に基づいて使用する個々のpH調整剤を決めること,また,pH調整剤としては,塩酸等の無機酸や炭酸等の有機酸が挙げられることが,何らの具体例もなく開示されているにとどまる。 なお,実施態様の説明全体の記載を考慮すると,回路の腐食防止については,キレート剤の使用が検討されていたと考えるのが妥当である。 次に,乙16を参照すると,乙16には,大気中や水中のアルミニウム表面に形成される被膜や,mm/yを単位とした試薬水溶液中でのアルミニウムの侵食度等の基本的な事項が開示されているにとどまる。乙16には,訂正後発明の組成物は記載されていない。乙16は,そもそも,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄するための組成物と方法」(段落【0001】)の技術分野の文献ですらない。 念のため,乙16を参照すると,図14・30(273頁)からは,試薬の種類に応じてアルミニウムの侵食度が変わることが理解できるにとどまる。したがって,乙16には,特定の試薬(化合物)の特定の組み合わせからなる,訂正後発明の組成物と,アルミニウムの侵食度の関係が記載されているとはいえない。 (当合議体注:図14・30は,以下の図である。) 加えて,乙16の277頁下から4行~278頁5行には,アルミニウムを腐食させる有害なイオンとして,OH-が例示されている。そうしてみると,乙16の記載を考慮した本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者ならば,有機アンモニウム化合物の対イオンX-がOH-に限定された訂正後発明の組成物は,アルミニウムに適したものではないと理解する。したがって,乙16を心得た本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者を仮定するならば,むしろ,回路の素材がアルミニウムの場合についてまで,訂正後発明を実施するべきではないと理解する。 念のため,乙16を心得た本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者を仮定し,それにもかかわらず,回路の素材がアルミニウムである場合への適用を仮定すると,乙16の図14・29(273頁)には,アルミニウムの水和酸化物の溶解度がpH5近傍において最も低くなることが記載されている。 (当合議体注:図14・29は,以下の図である。) したがって,仮定を重ねたとしても,乙16から導き出される,有機アンモニウム化合物及びオキソアンモニウム化合物を含む組成物のpHは,酸性であって,アルカリ性ではない(なお,本件出願時の特許請求の範囲の請求項1には,pHを限定する記載がなかった。)。また,有機アンモニウム化合物及びオキソアンモニウム化合物を含むフォトレジスト剥離用組成物においては,組成物のpHが酸性のものが知られていたところである(甲6の段落【0024】,甲12の3欄51~52行に記載の「Microstrip 5002」,乙3の段落【0019】)。 乙16には,アルミニウムの腐食特性については記載があるが,銅の腐食特性については記載がない。ここで,銅の腐食特性に関して,被請求人は,乙2(有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである実験報告書)及び乙8(有機アンモニウム化合物がコリンヒドロキシドである実験報告書)を提出している。 (当合議体注:乙2の実験結果は以下のとおりである。) (当合議体注:乙8の実験結果は以下のとおりである。) これら実験結果からは,訂正後発明の有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドであるかコリンヒドロキシドであるかによっても,組成物のpHを変えたときのエッチング速度の傾向が異なること(組成物を使用可能なpHの範囲が異なること)が理解できる。また,乙2及び乙8の実験報告書からは,組成物中にクエン酸を含むとしても,pHが約7の場合にはpHが約12の場合に比して約10倍(テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの場合)又は約40倍(コリンヒドロキシドの場合),エッチング速度が速くなることが理解できる。 さらにすすんで検討すると,発明の詳細な説明の段落【0044】には,回路の素材が銅であるかアルミニウムであるかに関係なく,組成物のpHの望ましい範囲が記載されている。また,段落【0044】には,例えば,「pHを約7より高く」と記載され,「pHを約7より高く,かつ,回路の素材に応じてpHを調整し」とは記載されていない。特許請求の範囲においても同様である。例えば,訂正後請求項6には,回路の素材に関係なく「前記組成物のpHが7~12である」と記載され,「前記組成物のpHが7~12であり,かつ,回路の素材に応じて調整されたpHであり」とは記載されていない。 したがって,「回路の素材に応じて,本件訂正発明1の組成物のpHを,7以上のアルカリ性側で適宜調整すればよい」という被請求人の主張は,特許請求の範囲の記載にも,発明の詳細な説明の記載にも基づかないものである。そして,「回路の素材」がアルミニウムである場合に,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄する」(段落【0001】)ための具体的な条件は,発明の詳細な説明に記載がなく,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が過度の試行錯誤をしたとしても,これを実現できるとはいえず,少なくとも,過度の試行錯誤をすることなく,実施することができるといえる根拠は見当たらない。 念のために,訂正後発明1~訂正後発明9について,具体的に検討する。 まず,本件訂正により,訂正後請求項6には「pH調整剤」が記載されたから,訂正後発明6は,組成物中に「pH調整剤」を含むものである。したがって,訂正後発明6の組成物は,そのpHが,例えば,下限である「7」や,上限である「12」に調整されたものと,一応,解することができる。 しかしながら,pHの調整に関して,発明の詳細な説明には,「pH調整剤を用いて,pHが,基板と関係がある回路,又は回路の一部の動作性を維持しながら,基板からポリマーを除去し,残渣を除去し,或いはその両方を除去するために有効な特定範囲内であるように,本発明の組成物のpHを維持及び/又は修正することができる。」(段落【0043】)という,抽象的な記載しかない。したがって,訂正後発明6の組成物を前提として,「基板と関係がある回路,又は回路の一部の動作性を維持」することと,「基板からポリマーを除去し,残渣を除去し,或いはその両方を除去するために有効な特定範囲内であるように,本発明の組成物のpHを維持及び/又は修正すること」とを両立させるために,どのようにpHを選定すべきなのか,発明の詳細な説明には,その指針が記載されているとはいえない。また,訂正後発明6の組成物を前提として,かつ,所望のpHシフト及び他の因子を考慮して,使用する個々のpH調整剤をどのように選ぶのかに関しても,発明の詳細な説明には,その指針が記載されているとはいえない。すなわち,発明の詳細な説明の段落【0043】には,典型的な酸性pH調整剤として,無機酸,例えば塩酸,硝酸,硫酸,リン酸など;有機酸,例えば炭酸,クエン酸など;及びその組合せが列挙されているにとどまり,その選択指針は記載されていない。 そもそも,本件特許発明の詳細な説明には,訂正後発明6に対応する具体的な実施例が一つも記載されていない。すなわち,発明の詳細な説明には,回路の素材がアルミニウムである実施例は一つも記載されていない。かえって,発明の詳細な説明には,回路の素材がアルミニウムではない実施例(銅の実施例)が多数記載されている。さらに,発明の詳細な説明には,pH調整剤を含む実施例が一つも記載されていない。かえって,発明の詳細な説明には,pH調整剤を含まない実施例のみが,多数記載されている。また,段落【0043】には,任意に,また通常は必要な場合だけ(Optionally, and usually only if necessary)pH調整剤を用いることが記載されている。加えて,発明の詳細な説明には,有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである実施例は一つも記載されていない。かえって,発明の詳細な説明には,有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドではない実施例(コリンヒドロキシドの実施例)のみが,多数記載されている。 発明の詳細な説明には,訂正後発明6の全体の構成を満たす実施例が一つも記載されていないことはもちろん,個々の構成についてみても,その構成を満たす実施例が一つも記載されていない,という構成の寄せ集めで訂正後発明6は成り立っている。このような発明の詳細な説明の記載では,本件優先日時点のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が訂正後発明6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない(この点は,訂正後発明5についても同様である。)。 訂正後発明7~訂正後発明9についても同様である。 次に,訂正後発明1についてみると,訂正後請求項1には,そもそも,「pH調整剤」が記載されていない。また,発明の詳細な説明には,有機アンモニウム化合物,オキソアンモニウム化合物及び水の量について,「除去すべきフォトレジスト/ポリマー及び/又は残渣の化学的及び/又は物理的性質に依存して変化しうる」(段落【0041】及び【0042】)と記載されている。すなわち,発明の詳細な説明には,回路の素材あるいは所望のpHシフトに依存して有機アンモニウム化合物,オキソアンモニウム化合物及び水の量を調整するという技術的事項は記載されていない。発明の詳細な説明の記載にしたがうと,訂正後発明1においては,除去すべきフォトレジスト/ポリマー及び/又は残渣の化学的及び/又は物理的性質に依存して調整された有機アンモニウム化合物,オキソアンモニウム化合物及び水の量により,組成物のpHが決まることとなる。発明の詳細な説明に基づいて理解される訂正後発明1においては,pHを所望する分だけシフトさせることそれ自体が予定されていない。なお,訂正後請求項1には,pH調整剤の構成が記載されていないから,pH調整剤に関する段落【0043】の記載を考慮して訂正後発明1の発明の要旨を認定することはできない。また,乙17では,pH調整剤ではなく,有機アンモニウム化合物の量により組成物のpHを変えているが,前記段落【0041】の記載に反するpH調整方法である。 訂正後発明2~訂正後発明5,及び訂正後発明7~訂正後発明9についても同様である。 以上のとおりであるから,本件特許の発明の詳細な説明の記載は,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることの要件に適合するものであるとはいえない。 (3) 小括 本件特許1~本件特許9は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許法123条1項4号に該当し,無効とすべきものである。 2 無効理由3-2(サポート要件違反)について 訂正後発明の,発明が解決しようとする課題について,本件特許の発明の詳細な説明の段落【0001】には,「本実施態様は,下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄するための組成物と方法に関する。」と記載されている。したがって,訂正後発明の,発明が解決しようとする課題は,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄する」ことと解するのが相当である。 ただし,技術常識を考慮すると,「下層にある基板又は材料を傷つけず」という技術的事項は,下層にある基板又は材料を全く傷つけないことを意味するのではなく,損傷を許容しうるレベルの範囲内に抑えることを意味する。また,許容しうるレベルの程度が基板の種類(集積度等)に依存することは,明らかである。 以上の理解を前提に,検討する。 (1) 化合物の組み合わせについて ア 訂正後発明5及び訂正後発明6について 訂正後請求項5には,「前記組成物が,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる有機アンモニウム化合物と,ヒドロキシルアミンサルフェートからなるオキソアンモニウム化合物と,水とを含み」と記載されている。 したがって,訂正後発明5の組成物は,少なくとも,有機アンモニウム化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド,及びオキソアンモニウムアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートを含むものである。 これに対して,発明の詳細な説明には,有機アンモニウム化合物としてコリンヒドロキシド,及びオキソアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートを含む組成物は記載されているが,有機アンモニウム化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド,及びオキソアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートを含む組成物は記載されていない。オキソアンモニウム化合物がヒドロキシルアミンサルフェートであることを措くとしても,発明の詳細な説明には,有機アンモニウム化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む組成物は記載されていない。 コリンヒドロキシドとテトラメチルアンモニウムヒドロキシドは,有機アンモニウム化合物の窒素原子に結合した4つの置換基のうち,3つがメチルである点では共通するが,残り1つがヒドロキシエチルであるかメチルであるかの点で相違する。 (当合議体注:下図左側がコリンヒドロキシド,右側がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。) この点に関して,被請求人は,有機アンモニウム化合物の窒素原子に結合した置換基がヒドロキシエチルであるかメチルであるかは本質的な問題ではなく,発明の詳細な説明の段落【0011】~【0015】及び【0021】~【0024】においても特に区別していない旨主張している(被請求人上申書2の19頁17~21行)。 しかしながら,発明の詳細な説明において,文言上,ヒドロキシエチルとメチルが区別せずに記載されているからといって,直ちに,訂正後発明5が,発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できることを本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲内のものであるということはできない。 被請求人は,甲1の段落【0013】及び【0041】,並びに,乙3の段落【0020】の記載を挙げて,コリンヒドロキシドのようにヒドロキシエチルを有する場合も,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドのように全部メチルである場合も,残渣の除去に有効であることが周知となっていたと主張する(被請求人上申書2の19頁22~25行)。 確かに,コリンヒドロキシド及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシドがともに水溶液中で強塩基性を示し,レジスト残渣の除去に有効であることは,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者における技術常識である。したがって,水溶液中で強塩基性を示す化合物に腐食されない回路との関係や,残渣の除去を主に考慮すれば良い用途(腐食に対する許容量が大きい回路)との関係においては,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は,コリンヒドロキシドをテトラメチルアンモニウムヒドロキシドに単に置き換えても良いと認識すると考えられる。 しかしながら,腐食に対する許容量が極めて小さい回路との関係においてまで,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が,同様に認識するとはいえない(なお,被請求人は,本件訂正後においてもなお,回路の素材を銅に限定しなかった。また,被請求人は,本件訂正後においてもなお,pHの数値範囲の下限値を「7」とした。)。 すなわち,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者ならば,組成物に含まれる化合物の種類や分量が相違すれば,回路の腐食の程度やレジスト残渣等の除去効率が変化することを心得ている。したがって,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者ならば,腐食に対する許容量が極めて小さい回路との関係においては,コリンヒドロキシドをテトラメチルアンモニウムヒドロキシドに単に置き換えるだけでは済まず,試行錯誤等を経た組成物の化学の再設計が必要と認識するといえる。しかしながら,発明の詳細な説明には,有機アンモニウム化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを含む組成物の実施例はなく,特に,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドとヒドロキシルアミンサルフェートの組み合わせに関しては,記載も示唆もない。したがって,組成物に含まれる化合物を,コリンヒドロキシドとヒドロキシルアミンサルフェートの組み合わせからテトラメチルアンモニウムヒドロキシドとヒドロキシルアミンサルフェートの組み合わせに変えた場合に組成物の化学をどのように設計すれば発明の課題が解決できるかについて,発明の詳細な説明には指針となる記載が存在しないというべきである。 そうしてみると,訂正後発明5は,腐食に対する許容量が極めて小さい回路との関係においては,発明の詳細な説明において,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄する」という発明の課題が解決できることを本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲内のものであると,直ちにいうことはできない。 訂正後発明6の組成物も,同様に,少なくとも,有機アンモニウム化合物としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド,及びオキソアンモニウムアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートを含むものである。 したがって,訂正後発明6も,訂正後発明5と同様に,腐食に対する許容量が極めて小さい回路との関係においては,発明の詳細な説明において,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄する」という発明の課題が解決できることを本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲内のものであると,直ちにいうことはできない。 イ 訂正後発明1について 訂正後発明1の発明の要旨には,有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドであり,オキソアンモニウム化合物がヒドロキシルアミンサルフェートである組成物が含まれている。 したがって,訂正後発明1も,訂正後発明5と同様に,腐食に対する許容量が極めて小さい回路との関係においては,発明の詳細な説明において,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄する」という発明の課題が解決できることを本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲内のものであると,直ちにいうことはできない。 ウ 訂正後発明2等について 訂正後発明2~訂正後発明4及び訂正後発明7~訂正後発明9の発明の要旨にも,有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドであり,オキソアンモニウム化合物がヒドロキシルアミンサルフェートである組成物が含まれている。 したがって,これら訂正後発明も,訂正後発明5と同様に,腐食に対する許容量が極めて小さい回路との関係においては,発明の詳細な説明において,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄する」という発明の課題が解決できることを本件優先日時点のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲内のものであると,直ちにいうことはできない。 エ 小括 以上のとおりであるから,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項9の記載は,いずれも,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることの要件に適合するものであるということができない。 (2) pHが12以下の組成物について 訂正後発明の組成物は,pHが7より高いことを要件としている。したがって,訂正後発明の組成物のpHは,7より高く12以下を含んでいる。 しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明においては,pHが12より高い場合についてのみ,訂正後発明の組成物の効果が確認されており,pHが7より高く12以下である訂正後発明の組成物については,具体的な開示がなく,また,その効果も確認されていない。 なお,表19には,pHが「7<>12」において「部分的な除去」が確認された組成物(W20及びW28)が開示されている。しかしながら,W20及びW28の組成物のオキソアンモニウム化合物は,ヒドロキシルアミンであるから,訂正後発明のオキソアンモニウム化合物(ヒドロキシルアミンサルフェート)の要件を満たさない(なお,有機アンモニウム化合物も,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドではない。)。 ここで,前記(1)でも述べたとおり,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者ならば,組成物に含まれる化合物の種類や分量が相違すれば,回路の腐食の程度やレジスト残渣等の除去効率が変化することを心得ている。したがって,本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者ならば,腐食に対する許容量が極めて小さい回路との関係においては,ヒドロキシルアミンをヒドロキシルアミンサルフェートに単に置き換えるだけでは済まず,試行錯誤等を経た組成物の化学の再設計が必要と認識するといえる。しかしながら,発明の詳細な説明には,pHが7~12の範囲において,オキソアンモニウム化合物としてヒドロキシルアミンサルフェートを含む組成物の実施例はなく,記載も示唆もない。また,pHが7~12の範囲で発明が解決しようとする課題を解決できるという本件出願時における技術常識も見当たらない。したがって,pHが7~12の範囲において,組成物に含まれるオキソアンモニウム化合物を,ヒドロキシルアミンサルフェートとした場合が発明の課題が解決できるとその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できる範囲にあると認めることができない。 そうしてみると,訂正後発明は,腐食に対する許容量が極めて小さい回路との関係においては,発明の詳細な説明において,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄する」という発明の課題が解決できることを本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲内のものであると,いうことができない。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の請求項1~請求項9の記載は,いずれも,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることの要件に適合するものであるということができない。 (3) 回路の損傷について 訂正後発明は,回路の素材を銅に限定するものではない。したがって,回路の素材は,銅以外(アルミニウム等)であっても良い。 しかしながら,発明の詳細な説明には,銅以外(アルミニウム等)を回路の素材として用いた場合において,「下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄する」という,発明の課題が解決できることを裏付ける具体的な実験データについての記載がない。加えて,甲19(実験成績証明書)の図1~図4によると,有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシド,オキソアンモニウム化合物がヒドロキシルアミンサルフェートである組成物は,銅の場合と,銅以外(アルミニウム,アルミニウム-銅合金,タングステン)の場合で,組成物のpHを変えたときのエッチング速度の傾向が全く異なるという具体的な実験データが示されている。このため,回路の素材が銅に限定されていない訂正後発明に含まれる範囲の組成物全てが,発明の詳細な説明の記載により,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず,また,その記載や示唆がなくともその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。 そうしてみると,訂正後発明は,本件特許の発明の詳細な説明において,発明の課題が解決できることを本件出願時のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が認識できるように記載された範囲内のものであるということができない。 したがって,本件特許の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであることの要件に適合するものであるということができない。 (4) 小括 本件特許は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許法123条1項4号に該当し,無効とすべきものである。 第5 無効理由1(甲1に基づく進歩性)について 1 刊行物の記載内容及び甲1発明 (1) 甲1の記載内容 本件優先日前に頒布された刊行物である甲1には,以下の事項が記載されている。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明と対応する箇所を表す。 ア 「【請求項1】 集積回路から残留物を除去するための組成物であって,コリン化合物,水及び有機溶媒を含む組成物。 【請求項2】 前記組成物が,約10質量%~約50質量%の前記コリン化合物を含む,請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 前記組成物が,約10質量%~約80質量%の前記水を含む,請求項2に記載の組成物。 【請求項4】 前記組成物が,約20質量%~約80質量%の前記有機溶媒を含む,請求項3に記載の組成物。 【請求項5】 前記コリン化合物が,水酸化コリン,炭酸水素コリン又は塩化コリンを含む,請求項1に記載の組成物。 【請求項6】 前記コリン化合物が,水酸化コリンである請求項5に記載の組成物。 【請求項7】 前記有機溶媒が,プロピレングリコール,ジメチルスルホキシド,モノメタノールアミン,又はジグリコールアミンを含む,請求項5に記載の組成物。 【請求項8】 前記組成物が,さらにヒドロキシルアミンを含む,請求項1に記載の組成物。」 イ 「【請求項10】 集積回路から残留物を除去するための方法であって,前記集積回路を,コリン化合物,水及び有機溶媒を含む組成物と,前記集積回路から前記残留物を除去するのに十分な温度で,かつ十分な時間,接触させる工程を含む方法。 【請求項11】 前記組成物が,約10質量%~約50質量%の前記コリン化合物を含む,請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記組成物が,約10質量%~約80質量%の前記水を含む,請求項11に記載の方法。 【請求項13】 前記組成物が,約20質量%~約80質量%の前記有機溶媒を含む,請求項12に記載の方法。 【請求項14】 前記コリン化合物が,水酸化コリン,炭酸水素コリン又は塩化コリンを含む,請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記コリン化合物が,水酸化コリンである請求項14に記載の方法。 【請求項16】 前記集積回路中の銅伝導線上に第1シリコン化合物エッチング停止層を形成する工程,この第1シリコン化合物エッチング停止層上に,第2シリコン化合物バルク誘電体を形成する工程,この第2シリコン化合物バルク誘電体をエッチングして,前記エッチング停止層を露出させる工程,前記集積回路から残留物を除去する工程,前記エッチング停止層をエッチングして,銅伝導線を露出させる工程,及び請求項7に従って前記集積回路から残留物を除去する工程を含む,請求項10に記載の方法。 【請求項17】 前記組成物が,さらにヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む,請求項10に記載の方法。」 ウ 「【0001】 (発明の背景) 1.発明の分野: 本発明は,一般的に金属相互接続を組み込んだ半導体デバイスの製造に関する。さらに詳細には,本発明は,好ましくはダマシン/デュアルダマシン構造を組み込む銅冶金によるような,相互接続レベルにおけるエッチング後残留物を洗浄する組成物及び方法に関する。さらに,本発明は,アルミニウム,又は誤配列タングステンプラグとのアルミニウム合金相互接続のような他のエッチング後残留物洗浄用途の組成物に関する。 0.18μm技術のような低減幾何デバイスにおける主要な挑戦は,デバイス性能の制限因子となる相互接続RC遅延時間である。この遅延は,トラック間の低誘電率と,良導体としての銅の使用を併用することによって改善することができる。本出願は,このタイプの相互接続を組み込む上での困難のいくつかを解決すること,及び誘電体エッチング後洗浄法の新規な戦略に関する。銅及び低-k誘電体に適合する新規な洗浄化学及びそれらを使用する方法の開発は,プロセス統合に重要である。 銅は,容易にはドライエッチングできないので,ダマシン又はデュアルダマシン構造の使用が,この組込みを現実化する重要な解決法になっている。有機ポリマーのような金属間誘電体用の新規な材料の出現,及び誘電体の複合層のエッチングの必要性により,フォトレジスト除去及び洗浄工程は,新規な戦略的アプローチを必要とする。 【0002】 2.先行技術の説明: マイクロサーキットの二次加工の際,フォトレジスト材料を用いてパターン化し,適切な材料上にパターンを移動する。例えば,相互接続レベルにおいて適切な材料は,電気伝導路用の金属又は伝導線の中間にある物質を絶縁するための誘電体のどちらかである。伝統的な相互接続は,アルミニウム又は誘電物質,例えば二酸化シリコンによって絶縁されたアルミニウム合金から作られる。 最近開発された相互接続は,伝導物質及び低-k誘電物質(二酸化シリコンの誘電率より低い誘電率εを有する誘電体)として銅を使用する。図1及び図2は,この場合に使用する典型的な構造を示す。銅及び最終的にはアルミニウムを組み込むために,パターンを誘電体(2)を介してフォトレジスト(3)から移動させる。そして,隙間を伝導層によって充填する。この方法は,ダマシンと呼ばれ,ひとつの平坦な相互接続のみ(シングルダマシン)又は水平な相互接続とバイアと呼ばれる垂直な相互接続の両方(デュアルダマシン)のいずれかを組み込むことができる。バイアは,常に下地金属配線(1)上に開口しており,かつ相互接続に沿った電気抵抗を最少化するために,該バイアは非常に清浄であることが必要である。 【0003】 種々の方法が,例えば,米国特許第5,739,579号;米国特許第5,635,423号;米国特許第5,705,430号及び米国特許第5,686,354号に開示されているように,それらの構造を造るために開発され,誘電体スタック(5,6)中に任意の層を含むことができるが,すべてそれらの方法は,共通して以下を有する: ・第2金属層が蒸着されうる前に,金属を破損せずに,すべてのエッチング後残留物(7及び8)から,バイアを洗浄する必要がある。 ・「開口」と呼ばれるエッチングングの最終部分の際,下地の銅の側壁及び上面(8)上にバックスパッターされた銅化合物から,全誘電物質を洗浄する必要がある。 ・さらなる加工のためにウェーハをエッチングングチャンバーから周囲空気に移動して,酸化銅化合物CuO又はCu2Oを造り,洗浄してバイア抵抗を最小化する必要がある。 銅は非常に容易に二酸化シリコン及び他の誘電物質中に拡散して,最終的には製造失敗(デバイスを「台無しにする」)のおそれがあるので,IC製造は,銅残留物の完璧な洗浄を必要とする。 【0004】 従来,少量(通常1質量%~5質量%)のコリン及び他の化合物を含んで,金属不純物の除去又は吸着の回避をすることによって,半導体業界で使用する物質を洗浄することが開示されている(US第4,239,661号,US第4,339,340号,PAJ第6,163,495号,PAJ第6,041,773号,PAJ第2,275,631号,PAJ第1,191,450号)。コリン塩基は,ポジティブ作用フォトレジストの現像液としての用途としても周知である(US第4,294,911号,US第4,464,461号)。コリン塩基は,薄膜層画定用の金属のエッチングング剤として作用可能なこと(PAJ第62,281,332号,US第4,172,005号)及びエッチングング時にエッチングングチャンバー中にコリン原子を添加すると,銅がプロセス温度を下げ,それによって銅の酸化の最少化を助けることが認識されている。US第5,846,695号は,集積回路二次加工におけるフォトレジスト及びフォトレジスト残留物の除去のための求核アミン及び糖及び/又は糖アルコールと共にコリンを含む水酸化四級アンモニウム水溶液について開示している。 【0005】 本発明は,誘電物質のエッチングング後に残される残留物及び銅層上の開口を洗浄することを目的とする。主なエッチングング残留物及びフォトレジストが,銅上に開口を形成する最終工程の前に洗浄されると,それら残留物を最少にすることができ,この場合「開口」エッチング工程のみ,例えば開口の底面上の銅リッチ残留物及び誘電物質表面上にバックスパッターされた銅による残留物を処理する。しかし,「開口」エッチングが主要エッチングの後に直接為される場合は,残留物は複雑になり,この場合,エッチング後処理は,主要エッチング残留物(CFX,CHFX…を含む)を洗浄し,底面残留物(Cu,CuO,CuO2を含む)を洗浄し,かつバックスパッターされた銅も洗浄する必要がある。 半導体業界で用いられる洗浄組成物が存在することは,以下の理由のため適当でない: ・アミン含有生成物は銅と適合せず,かつ露出領域で該金属を溶解する; ・希薄フッ化水素酸溶液(DHF)は,誘電体の側壁を攻撃的に攻撃することによって側壁ポリマー及びCuO化合物を除去して,それによって設計されたデバイスの寸法を変えてしまう。さらにそれら溶液は,Cu2O又はCFX化合物の洗浄には有効でない。 【0006】 任意に,フォトレジストは,銅が露出される前に除去され或いは除去されなくてよい。伝統的なフォトレジスト除去技術を使用することは,以下の理由のために理想的でない: ・酸素プラズマ工程は,銅をCuO及びCu2O状態に酸化し,バイア抵抗が増加する。 ・有機誘電物質を使用する場合,酸素プラズマ工程は,コントロールされない状態でその物質をエッチングングすることにより,その物質にとって有害である。 ・例えばN-メチルピロリドン含有生成物のようなフォトレジストを除去するのに用いる伝統的な溶液は,有機誘電体の誘電率及び特性を回復させるために余分な硬化工程を必要とする。 【0007】 高速デバイスの要求は,デザインルールのスケールを下げてきた。今日の0.18μm技術は,0.25μmの穴寸法に到達している。0.25μm技術の導入以来,相互接続は,相互接続抵抗率及び隣接の相互接続によって誘発されるRC遅延によって,デバイスの律速因子になっていることがわかった。相互接続の抵抗を低減する解決法は,相互接続金属をアルミニウムから銅へ切り換えることである。 同様に,隣接金属配線間の低減されたキャパシタンスの解決法は,配線の中間の金属の誘電率を減少させることである。これは,明らかになってきた新しい低-k材料の使用によって達成することができる。 【0008】 銅は,アルミニウム(ρ=2.7Ω.cm)より優れた伝導率(ρ=1.7Ω.cm)を有し,比較的安価なので選択されてきた。しかし,この材料の主な欠点は,第1に,シリコン中への高い拡散性であり,フロントエンドデバイスを台無しにしてしまうおそれがあり,第2に,伝統的な方法でそれをドライエッチングし,かつ組み込むことの困難性である。さらに,銅は,周囲条件下(アルミニウムが形成するようには)酸化物パシベーション層を形成せず,この金属を協働させることを非常に困難にしている。 隙間-充填の側面においては,種々の候補が示唆されているが,低-k誘電物質の業界での選択はまだ現れていない。低誘電率を達成するための一般的な傾向は,シリコンが少なく,かつ炭素が多い材料を使用することである。そして,無機材料(SiO2[ε=4],SiOF[ε=3.5]のような)からシルセスキオキサン型の材料(HSQ,MSQ[3.0<ε<3.5]のような]へ,ベンジルクロロブタン(BCB)のような有機材料又はエアギャップで達成される究極の低-k値を有するシリコン低k(SiLK)[ε=2.7]に向けて論理的に進化している。 【0009】 SIAロードマップは,1998年末までに,一方で銅の組込みによって,かつ他方で低-k材料によって為される研究の出現を予想した。ここで選択される戦略は,まず銅を導入し,次いで低-k材料へそのプロセスを移行することである。しかし,両プロジェクトは一緒に進行しており,この段階で,最終プロセスで使用されるすべての材料の要求を考慮して,洗浄戦略を開発しなければならない。 ここ数年にわたり,我々は,誘電層中にエッチングし,伝導ワイヤで充填して平坦化するという設計のダマシン型構造の出現を調べてきた(図1)。デュアルダマシン構造は,1回の蒸着工程で配線とバイアの両方を組み込むという利点を有し;これは工程数を低減し,それゆえコスト的に有効である。しかし,今日このような構造が出現した主な理由は,これが銅を導入する最も簡単な方法であるという事実である。 デュアルダマシン構造の変形が存在し,増透膜,付着促進材,吸湿防止材,拡散防止材,研磨ストップ,埋設エッチングマスク等のようなプロセス目的のための一連の層を組み込んでいる。それらのいずれを使用するかしないか,またそのためにどの材料(SiOxNy又はSixNy)を使用すべきかの選択は,低-k材料の最終的な選択によって決まることが多い。」 エ 「【0010】 (発明の概要) 従って,本発明の目的は,半導体デバイス製造におけるエッチング後残留物及び銅を露出させる時に生じる銅含有高分子残留物を洗浄するための組成物及び方法を提供することである。 本発明の他の目的は,相互接続で使用される銅及び誘電物質と適合するような洗浄組成物及び洗浄方法を提供することである。 また,本発明の他の目的は,ほとんどの低-k誘電物質と適合し,かつ使用後にこのような物質のFT-IRスペクトル,誘電率,屈折率(RI)又は厚さを実質的に変化させないような洗浄組成物及び洗浄方法を提供することである。 さらに,本発明の他の目的は,バイアの側壁とトップの両方で効率的に残留物を洗浄するような洗浄組成物及び洗浄方法を提供することである。 また,本発明のさらなる他の目的は,バイア底面からエッチング後残留物を効率的に洗浄するような洗浄組成物及び洗浄方法を提供することである。 【0011】 本発明の一観点に従い,デュアルダマシン構造を洗浄する伝統的な方法は,この組合せの材料には適用できないことがわかった。「2工程エッチング法」を用いて,ULSI製造の要求を達成することができる。 本発明の他の観点に従い,デュアルダマシン二次加工の問題を取り扱うために,新規な洗浄化学が提供される。この研究は,本発明のこの観点で関心のある2つの主要な材料である銅及びSiLKと適合する可能性のある候補の広範なスクリーニングで始まり,その結果新規な化学の設計をもたらす。この新規な洗浄化学は,ダマシン構造について評価される。この研究は,組み込んだ銅の特徴についての走査型電子顕徴鏡(SEM),透過型電子顕微鏡(TEM)及び飛行時間型二次イオン質量分光測定(TOF-SIMS)解析,及びSiLK組込みのFT-IR及びC(V)測定によって支持される。本発明のこの観点では,集積回路からの残留物の除去用組成物は,コリン化合物,水及び有機溶媒を含む。 【0012】 本発明の他の観点に従い,集積回路から残留物を除去する方法は,集積回路を,コリン化合物,水及び有機溶媒を含有する組成物に,該集積回路から残留物を除去するのに十分な温度で,かつ十分な時間接触させる工程を含む。 本発明のさらに別の観点に従い,デュアルダマシン構造の底面のエッチング停止無機層は,銅の下地相互接続を保護し,かつより良い洗浄を進めることができる。本発明のこの観点では,集積回路二次加工法は,集積回路の銅伝導線上に,第1シリコン化合物エッチング停止層を形成する工程を含む。第2シリコン化合物バルク誘電体が,この第1シリコン化合物エッチング停止層上に形成される。この第2シリコン化合物バルク誘電体が,エッチングされてエッチング停止層が露出される。残留物が集積回路から除去される。エッチング停止層が,エッチングされて銅伝導線が露出される。有効量のコリン化合物を含有する残留物除去組成物によって,残留物が集積回路から除去される。 【0013】 (発明の詳細な説明) 本発明の組成物及び方法において,コリン化合物は,水酸化コリン,炭酸水素コリン又は塩化コリンのような水酸化物又は塩の形態でありうる。ここで,用語「コリン化合物」は,水酸化テトラエチルアンモニウム(TMAH),水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAM),それらの塩等のような関連する四級アンモニウム化合物をも包含する。 組成物中の本方法の実施のために好適な有機溶媒としては,ジメチルスルホキシド,エチレングリコール,エチレングリコールアルキルエーテル,ジエチレングリコールアルキルエーテル,トリエチレングリコールアルキルエーテル,プロピレングリコール,プロピレングリコールアルキルエーテル,N-置換ピロリドン,エチレンジアミン及びエチレントリアミンのような極性溶媒が挙げられる。さらに,技術的に公知の極性溶媒も本発明の組成物に使用することができる。」 オ 「【0014】 任意に,露出された銅が存在するダマシン構造を洗浄するために使用される製剤に,腐蝕防止剤を含むことができる。腐蝕防止剤は,銅が腐蝕するのを防止するために存在し,本技術を含む他の系で銅の腐蝕防止のために使用されるいずれの化合物も含め,種々の分類の化学物質から選択することができる。さらに詳細には,以下の一般的な分類の化合物を使用でき, 【化1】 式中,X,Y,及びZは,C,N,O,S及びPから選択される。これらの条件下で,原子価要求及びペンダントR基の存在が適当に設定されうる。ペンダントR基R1~R5は,独立に,H,任意に置換されたC1~C6の直鎖,分岐鎖若しくはシクロアルキル,アルケニル若しくはアルキニル基,直鎖若しくは分岐鎖アルコキシ基,任意に置換されたアシル基,直鎖若しくは分岐鎖アルコキシ基,アミジル基,ヒドロキシル基,ハロゲン,カルボキシル基,アルコキシアルキル基,アルキルアミノ基,アルキルスルホニル基若しくはスルホン酸基;又はこのような化合物の塩として選択されうる。好ましい実施形態では,X,Y及びZが,それぞれ窒素,窒素及び炭素であり,かつR1~R5はが水素である。他の好ましい実施形態では,X,Y及びZはが窒素であり,R3が水素,かつR4及びR5がベンゼン環を構成する。 【0015】 他の分類の銅腐蝕防止剤,ヒドロキシベンゼンは,独立して又は前述の分類のものと併用して本発明に利用できる。これらは,下記の一般分類を含み, 【化2】 式中,n=1~4であり,R6は,2~5個存在してよく,かつ独立に,H,任意に置換されたC1~C6の直鎖,分岐鎖若しくはシクロアルキル,アルケニル若しくはアルキニル基,直鎖若しくは分岐鎖アルコキシ基,任意に置換されたアシル基,直鎖若しくは分岐鎖アルコキシ基,アミジル基,ハロゲン,カルボキシル基,アルコキシアルキル基,アルキルアミノ基,アルキルスルホニル基若しくはスルホン酸基;又はこのような化合物の塩として選択されうる。腐蝕防止剤の好適な特定の例としては,カテコール,t-ブチルカテコール及びベンゾトリアゾールが挙げられる。 本組成物は,任意にヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む。存在する場合,該組成物は,望ましくは約2~約12質量%のヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む。 【0016】 実際には,本組成物は,約10質量%~約50質量%のコリン化合物,約10質量%~約80質量%の水,及び約20質量%~約80質量%の有機溶媒を含む。存在する場合,腐蝕防止剤は,通常約0.5質量%~約5質量%の量で与えられる。 伝統的な洗浄溶媒は,パシベーション層を造る能力がないため,通常攻撃的な錯化剤を含むので,銅と協働させるにはあまり適さない。スクリーニングを行って,存在する相互接続を傷つけることなく,銅エッチング残留物を穏やかに除去するための新しい候補を調べた。ブランケット銅上のエッチング率は,4点探針を用いたシート抵抗測定によって計測した。 【0017】 ヒドロキシルアミン化学品を含む,いくつかの溶媒は,銅との高度の不適合性を示す。Cuのヒドロキシルアミン含有化学品との不適合性は,ほとんど次の2つの要因:ヒドロキシルアミンの公知の還元剤としての強さ,及び効率的に金属イオンと錯化かつ可溶化する傾向(アミン溶媒及び他のキレート剤と共に)の結果と考えられる。高度に酸化状態(CuII)の銅含有エッチング残留物は,以下の平衡プロセスで,CuIに還元かつ可溶化され,それから水又は解離された酸素によって再酸化されて,CuIIに戻される。 2CuIIOxFy+2H2NOH+2OH- →2CuI+N2+(2y)F-+(4+2x)H2O   (1) H2O/O2 CuI+6L ―――――→ CuII(L)6    (2) 式中,Lは利用可能な配位子である。反応(1)が作用して,おそらく不明確な化学量論の不定形の高度に酸化されたCu残留物であるものを分解するのを助け,一方,(2)は,そのプロセスでCuを錯化し,大部分それを酸化してCuII(特に水の存在で)に戻すと考えられる。同時に,解離された水及び/又は酸素は,未変性銅(Cu0)を,ヒドロキシルアミン含有化学品を含む強い錯化剤で解離されうる酸化状態に酸化することができる。重要なことは,未変性Cuを溶液中に引き出す熱力学的な原動力を妨げながら,酸化されたCu残留物を解離可能な化学を設計することであり;これは,使用するイオン媒体を注意深く変更することによって達成される。 防止 Cu0―――――→CuI,CuII」 カ 「【0018】 1.銅を組み込んだダマシン型構造の洗浄: 本発明の主目的は,銅が露出されるときにダマシン型構造を洗浄することである。ここに提示される第1実施例において(図3),試料は,エッチングされたTEOS(二酸化シリコン型の誘電体)の単一層を有するブランケット銅である。エッチングは,次の2工程で行われる:まずバルク誘電体による主要エッチング,次いでフォトレジスト及び主要エッチング後残留物が従来の溶媒中に除去されるが,銅はまだ薄いニトリド層で保護されている;それから第2のショートエッチングが行われ,該構造の底面及び側壁の残留物を最少にとどめて,該構造を銅に開口する。 水酸化コリン溶液(溶液B6)を用いて,50℃10分間で,それらの残留物をうまく洗浄した(図3)。 このような構造のXPS(X線写真分光法)解析は,本発明のCuO及びCuO2化合物の除去における効果を示す(図4)。 【0019】 表1は,このような構造を洗浄するのに用いた種々の組成物,及び洗浄効率と構造の底面での銅の攻撃についての結果をまとめている。結果は,SEM写真を主観的に解析して0~10で評価している。0評価は悪く,10は良い意である。しかし,洗浄が悪い場合,残留物は銅材料を保護するので通常腐蝕防止は良いことがわかった。これは,例えば純水(A1)の例である。 溶液A1,A2,A3,A4,及びA5から,コリン濃度が20%に達する場合に洗浄効率が高まることがわかる。しかし,このような濃度は溶液の表面に薄泡を生じさせ,かつ例えばプロピレングリコールのような溶媒を添加することによって洗浄効率を低下させることなくこの起泡効果を低減することがわかった(溶液B1,B2,B3,B4,B5及びB6)。しかし,この起泡効果は水酸化コリンの原材料と共に用いる安定剤のタイプによって低減され,かつ該原材料が正しく選択すれば,溶液は付加的な溶媒を必要としないだろう。 【0020】 我々は,それら洗浄溶液のプロセス条件を調査し,50℃以下の温度で良い結果となることがわかった。時間は重要でないと考えられるが,残留物の除去の困難性によって10~30分のプロセス時間が推奨される。 代わりに,TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム),又はTBAH(水酸化テトラブチルアンモニウム)のような他の四級アンモニウム系を使用しても,このような構造の洗浄に十分な結果を達成できる。」 キ 「【0023】 このような構造の高いアスペクト比,ウェーハの不均一のエッチング,及びエッチングラグは,すべて銅中への該構造の最小限の過剰エッチングを要求し,その結果処理する必要のある2つの主要な問題をもたらす: 第1に,銅は,構造全体(側壁及びトップ)にバックスパッターされ,その後誘電物質中に拡散され,最後にはフロントエンドデバイスに到達すると考えられる;及び第2に,この場合に生じるエッチング後残留物は,より除去しにくい。それらは壁に非常に強く固着され,複雑な組成を有している(Cu,CuO,Cu2O,誘電体由来のシリコン,フォトレジスト由来の炭素,エッチングガス由来のフッ素種等)。 【0024】 これら残留物について種々の伝統的な洗浄処理を試験したが,十分な結果は得られなかった。従って,プロセス統合の観点から,銅上へ直接1工程で開口をエッチングするのは理想的でない。 本研究で選択された戦略の1つは,薄いSixNy層を該構造の底面に導入することであり,主要エッチング工程のエッチング停止として使用される。これは,銅上の開口から生じる残留物から,誘電体エッチングによって生じる残留物を分離しながら,フォトレジストの除去を可能にする。 同時に,フォトレジスト除去は,露出された銅がない場合に進行することができる。ここでもまた,未変性の銅酸化物層の欠点が,フォトレジスト除去工程を問題にする。実際,フォトレジストストリッピングの伝統的な方法(プラズマO2のような)は,ほとんどの場合に,金属を酸化かつ攻撃するだろう。 【0025】 リソグラフィーは,DUV248nmASML/90ステッパーで行い,ダマシン構造はTEL Unity 85 DRM上にエッチングした。フォトレジストは,下流酸素と生成ガスプラズマ(IPC Branson 3500L)を併用して,次いで銅適合性生成物で除去して,SixNy層の早期の突抜け現象の可能性を補正した。Posistrip(登録商標)EKC(登録商標)LEは,SEMITOOLからのWSST640で,60℃で15分間使用した。 残留している残留物は,今や容易に除去される。しかし,第2エッチング工程で銅が露出されるので,該構造の側壁にバックスパッターされる銅による問題がまだ残っている。この段階で生成される残留物は,大量の銅を含んでいるが,上述したように除去できる。図26のTEM写真に示されるように,最終エッチングは,該構造の側壁及び上面に大量の銅残留物をバックスパッターする。このコンタミネーションは,次のメタライゼーション工程の前に除去しなければならず;そうでなければそれは拡散バリア下にトラップされるだろう。 種々の論文で,これらの種類の残留物を洗浄するために希薄HF溶液を使用することが報告されている。これら溶液の洗浄能力は,フロントエンド加工についてよく知られているが,相互接続レベルでは,誘電体の攻撃で洗浄を進めるので,限界寸法に損失をもたらすという点でいくつかの欠点が見られる。これら溶液は,Cu2O型の残留物を除去するには有効でないことも報告されている。」 ク 「【0037】 3.フォトレジストストリッピング: フォトレジストで覆われた試料上のフォトレジストを除去するために,本発明を試験した。この実施例の試料は,TEOSの二重層にエッチングされたデュアルダマシン構造である。表4に示される溶液は,以下の種々の程度でフォトレジストの攻撃に成功した。 ・濃縮水酸化コリン溶液(A5)は,うまくフォトレジストを除去した(図11,12); ・他のコリン型の溶液は,低濃度でさえ(例えば10%塩化コリン[D2],又は3%炭酸水素コリン[D20]),フォトレジストを除去するのに無視できない効果を有する(図13,14); ・例えば,ジメチルスルホキシド(DMSO)(溶液D4)又はモノエタノールアミン(EMA)(溶液D6)のような他の溶媒と混合された低濃度の(実施例では2.3%)水酸化コリン含有溶液は,フォトレジストにリフトオフ効果を及ぼす(図15,16); コリン(水酸化物,塩化物,又は炭酸水素塩)の溶液は,高濃度でフォトレジストを除去できる。 【0038】 【表4】 【0039】 少量の塩基溶液中ヒドロキシルアミンを添加すると,溶液の銅との適合性を維持しながら除去効率が高まる。表5は,パターン化された二酸化シリコンを有するブランケットSiLK膜(有機低-k誘電体)から成る試料2についての結果を示す。この結果は,これら化学品が有機誘電体を傷つけることなく有機レジストを効率的に除去できることを示している。 【0040】 【表5】 【0041】 溶媒は,ジメチルアセトアミド(DMAc),DMSO,プロピレングリコール(PG),ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM),N-メチルピロリドン(NMP),又はシクロヘキシルピロリドン(CHP)でよく,一方塩基は,モルフォリン,MEA,ジエタノールアミン,ジグリコールアミン,炭酸水素コリン,水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH),又は水酸化コリンから成る。 四級アンモニウムヒドロキシド化合物のような強塩基を有する2%~12%のヒドロキシルアミンから構成される化学品は,露出された有機物質を有する無機基板上の強靱なレジストを除去するのに使用できる。この化学品は,銅と有機物質の両方と適合する。」 (当合議体注:段落【0039】の「少量の塩基溶液中ヒドロキシルアミンを添加すると,溶液の銅との適合性を維持しながら除去効率が高まる。」における「少量」は,ヒドロキシルアミンが「少量」であることを意味する。) ケ 「【0044】 5.バイアエッチング後の残留物除去: 表7:バイアエッチング後残留物除去の効率 溶液   温度    時間   洗浄結果 D4   65℃   15分   良い    図無し D5   65℃   15分   良い    図無し D6   65℃   15分   良い    図無し D7   65℃   15分   良い    図無し D8   65℃   15分   良い    図無し D9   65℃   15分   良い    図無し 【0045】 バイアエッチング後の高分子を除去するために本発明を試験した。例えばDMSO(溶液D4及びD5),又はMEA(溶液D6及びD7)のような溶媒を添加し或いは添加しない水酸化コリンの希薄溶液(2%~5%)は,バイア試料から残留物をうまく洗浄する(表7)。これら溶液は,誘電基板の洗浄には良い結果を与えたが,下地アルミニウム配線は,ここで高温を使用したため攻撃されやすい。」 コ 「【0049】 【表7】 」 (2) 甲1に記載された発明及び当業者について ア 甲1発明A 甲1の段落【0040】(表5)には,溶液F4として,次の発明が記載されている(以下「甲1発明A」という。)。 「 溶液F4であって,組成が, 5%のヒドロキシルアミン, 45%の溶媒, 12%の塩基, 38%の水からなる, 溶液F4。」 イ 甲1発明B 甲1には,請求項10の記載を引用して記載された請求項17に係る発明として,次の発明が記載されている(以下「甲1発明B」という。)。 「 集積回路から残留物を除去するための方法であって,前記集積回路を,コリン化合物,水及び有機溶媒を含む組成物と,前記集積回路から前記残留物を除去するのに十分な温度で,かつ十分な時間,接触させる工程を含み, 前記組成物が,さらにヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む,方法。」 ウ 当業者について 甲1に記載された発明の背景(段落【0001】~【0009】)の記載からみて,甲1に記載された発明に接する,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は,半導体デバイスの製造の技術分野のうち,特に,フォトレジスト除去及び洗浄工程に携わる者と解するのが妥当である(以下「当業者」という。)。 (3) 甲2の記載内容 本件優先日前に頒布された刊行物である甲2には,以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,ICやLSI等の半導体素子や液晶パネル素子製造において使用されるポジ型レジスト用剥離液に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ICやLSI等の半導体素子や液晶パネル素子を製造する際,下地に配線層や絶縁膜を形成した後,その上にレジストを塗布,乾燥し,レジスト基板を得た後,露光,現像してレジストパターンを形成する。次いでそのパターンをマスクにしてエッチング処理をし,下地の配線層や絶縁膜にパターンを転写する。その後,不要になったレジスト膜を除去する工程があり,一般的には次の二つの方法が採用されている。一つは,剥離液を使用して不要になったレジスト膜を直接除去する方法であり,もう一つは,酸素プラズマ等によりレジストを灰化除去した後,レジストやその残さ物を剥離液を用いて除去する方法である。いずれの方法であっても,生産工程において剥離液は,ディップ法,スプレー法などの方法でレジスト除去に用いられている。 【0003】従来これらの剥離液として,アルキルベンゼンスルホン酸にフェノール系化合物や塩素系溶剤を配合した酸系剥離液や水溶性有機アミンと極性溶剤とからなるアルカリ性剥離液が使用されている。アルカリ性剥離液の中でも比較的アルカリ性の強いものは,前述のいずれの方法にも使用できるものが多く,種々のアルカリ性剥離液が提案されている。このような剥離液として,特にヒドロキシルアミンを含有する剥離液が,きわめて剥離力にすぐれた剥離液として知られ広く用いられている(特開平7-325404号公報,特開平4-289866号公報など)。 【0004】ところで,剥離液として用いるヒドロキシルアミンは,通常,塩などを形成していない遊離のヒドロキシルアミン(以下,単にヒドロキシルアミンという)を用いている。こうした剥離液中のヒドロキシルアミンは希釈されているため安定であるが,高濃度のヒドロキシルアミンは極めて不安定な化合物である。剥離液に使用されるヒドロキシルアミンは高純度のものであり,ヒドロキシルアミンを高純度で得る工程や剥離液を調整する工程などに危険が伴う。実際,ヒドロキシルアミンによる爆発事故は各国で生じており,安全性と供給安定性の観点から,ヒドロキシルアミンを用いない強力な剥離性能を有する剥離液の開発が求められていた。」 イ 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】かかる従来技術のもと,本発明者らは,安全に製造することのできる新規なレジスト剥離液を得るべく鋭意検討した結果,ヒドロキシルアミンの代わりにヒドロキシルアミン硫酸塩を用いるとこの目的を達成できることを見いだし本発明を完成するに至った。 【0006】 【課題を解決するための手段】かくして本発明によれば,ヒドロキシルアミン硫酸塩とアルカノールアミン類と水とを配合してなるレジスト用剥離液が提供される。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明の剥離液は,ヒドロキシルアミン硫酸塩とアルカノールアミン類と水とを配合することにより得られる。本発明に使用するヒドロキシルアミン硫酸塩は,合成ゴム製造,油脂精製,染色,写真,等,幅広い産業分野で使用されているもので,容易に入手することができる。 【0008】本発明に使用するアルカノールアミン化合物としては,例えば,モノエタノールアミン,ジエタノールアミン,トリエタノールアミンなどのエタノールアミン類;モノプロパノールアミン,ジプロパノールアミン,トリプロパノールアミン,イソプロパノールアミン,ジイソプロパノールアミンなどのプロパノールアミン類;N-メチルエタノールアミン,N,N-ジメチルエタノールアミン,N-エチルエタノールアミン,N,N-ジエチルエタノールアミンなどのN-置換エタノールアミン類,N-メチルプロパノールアミン,N,N-ジメチルプロパノールアミン,N,N-ジエチルプロパノールアミン,2-(2-アミノエトキシ)エタノール,2-(2-アミノエトキシ)プロパノール,2-アミノ-1-プロパノール,1-アミノ-2-プロパノールなどのN-置換プロパノールアミン類;等が挙げられる。これらの化合物は1種でも,2種以上を組み合わせて用いても良い。上記化合物の中でも,剥離性の観点からエタノールアミン類やN-置換エタノールアミン類が好ましく,とりわけモノエタノールアミン,トリエタノールアミン,およびN-メチルエタノールアミンが好適である。 【0009】本発明の剥離液は,上述した各成分を混合して調製されるが,剥離性向上などを目的として,芳香族ヒドロキシ化合物,トリアゾール化合物などから選ばれる化合物を1種,あるいは2種以上を組み合わせて添加することができる。芳香族ヒドロキシ化合物としては,カテコール,ピロガロール,アントラニール酸,没食子酸等が挙げられる。」 ウ 「【0012】本発明の剥離液の調整方法は,上述した各成分を混合して調製される。混合する順序は,特に制限されず,例えば,[1]ヒドロキシルアミン硫酸塩とアルカノールアミン類とを混合した後,水を加える方法,[2]アルカノールアミン類と水とを混合した後ヒドロキシルアミン硫酸塩を加える方法,[3]ヒドロキシルアミン硫酸塩とアルカノールアミン類と水とを同時に混合容器に投入する方法などが例示される。又,本発明においては,必要に応じて極性溶剤を添加することができる。極性溶剤の具体例としては,ホルムアミド,ジメチルホルムアミド,N-メチルホルムアミドなどのホルムアミド類,N,N-ジメチルアセトアミド,N-メチルアセトアミド,N,N-ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド類,N-メチル-2-ピロリジノン,N-エチル-2-ピロリジノンなどのピロリジン類,ジメチルイミダゾリジンなどのイミダゾリジン類,ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。これらの化合物は1種でも,2種以上を組み合わせて用いてもよい。 【0013】本発明の剥離液100重量部中,各成分の配合量は,ヒドロキシルアミン硫酸塩が2~35重量部,好ましくは10~35重量部,水が2~40重量部,好ましくは5~30重量部,アルカノールアミン類が2~90重量部,好ましくは10~75重量部である。極性溶剤が使用される場合には,極性溶剤は通常30~95重量部,好ましくは40~90重量部で使用される。また芳香族ヒドロキシ化合物およびトリアゾール化合物を用いる場合は,それぞれ,0.1~10重量部,好ましくは0.5~10重量部で配合される。また,ヒドロキシルアミン硫酸塩は,ヒドロキシルアミンと組み合わせて用いてもよい。」 (当合議体注:丸数字の1~3を,[1]~[3]で置き換えて表記した。) エ 「【0015】例えば,次のような工程に本発明の剥離液を用いることができる。シリコンウエハのような基板上に,アルミニウムなどの金属をCVDなどの方法により金属層を形成させ,次いで金属層の上に酸化ケイ素などの酸化膜を形成させた金属配線用基板を得る。この基板の酸化膜上にレジストを塗布し,乾燥してレジスト膜を形成させた後,g線,i線,遠紫外線などの活性放射線を用いてレジスト膜にパターンの潜像を形成させる。潜像は現像液により現像することで顕像化し,このパターンをマスクとして酸化膜をフッ素系エッチングガス,プラズマ等によりドライ・エッチングする。その後,レジストの残る基板を本発明の剥離液と接触させて,直接レジストを除去するか,あるいは,常法に従ってレジストを灰化させ,レジストの一部を除去した後,本発明の剥離液に基板を接触させレジストやその残さ物を除去する。」 オ 「【0017】 【実施例】以下,実施例を用いて,本発明を具体的に説明するが,本発明の内容がこれらに限定されるものではない。 (実施例1~8)シリコンウエハ上にアルミニウム,酸化膜を順次成膜し,その酸化膜上に市販のポジ型レジスト組成物を塗布,乾燥してレジスト膜を形成した後,ビア・ホール パターンを転写し,これをマスクとして酸化膜をエッチングし除去した。続いてアッシングすることによりレジスト膜を80%以上除去し,無機-有機質が混在する残さ物が残存しているウエハを得た。またアルミニウム膜上にポジ型レジストを塗布し,以下上記と同様に処理することによって,ライン・アンド・スペースのパターンのウエハを得た。次に液温65℃に保持した表1に示す組成を有する剥離液中に,このウエハを浸漬した後,超純水で洗浄の後,スピン乾燥を行った。処理後のウエハはSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察し,残存するレジスト膜やエッチング残さ物の有無から剥離性を確認し,またエッチングにより出てきたアルミニウムの腐食の度合いを確認した。すべての実験において,アルミニウムの腐食は認められなかった。剥離性の判断基準は以下の通りである。得られた結果を表1に示す。 【0018】(1)剥離性 ◎:10分以下で剥離する ○:10~20分で剥離する ×:20分以上経過しても剥離できない (2)腐食抑制効果 ◎:全く腐食なし ○:銅表面が若干劣化しているが,腐食のレベルではない。 △:一部腐食あり ×:激しく腐食,もしくは完全に溶解 【0019】 【表1】 」 カ 「【0023】以上の結果から,安全に製造することのできる本発明の剥離液を用いることによって,フリーヒドロキシルアミンを用いて調製した場合と同等の性能でエッチング工程やアッシング工程に曝され変質したフォトレジストやその残さ物を十分に剥離できることが判った。また半導体製造上好ましくない,硫酸イオン(SO42-)による汚染の心配もないことが判った。」 2 甲1発明Aに基づく容易推考 (1) 対比 ア 有機アンモニウム化合物 甲1発明Aの「溶液F4」は,「12%の塩基」を含む。また,訂正後発明1の「有機アンモニウム化合物」は,その構造からみて「塩基」である。 したがって,甲1発明Aの「塩基」と訂正後発明1の「有機アンモニウム化合物」は,「塩基」の点で共通する。 イ オキソアンモニウム化合物 甲1発明Aの「溶液F4」は,「5%のヒドロキシルアミン」を含む。また,「ヒドロキシルアミン」は,その構造からみて「アンモニウム化合物」である。 したがって,甲1発明Aの「ヒドロキシルアミン」と訂正後発明1の「オキソアンモニウム化合物」は,「アンモニウム化合物」の点で共通する。 ウ 水 甲1発明Aの「溶液F4」は,「38%の水」を含む。 したがって,甲1発明Aの「溶液F4」は,訂正後発明1の「組成物」の,「水」「を含み」の要件を満たす。 エ 組成物 甲1発明Aの「溶液F4」は,化合物の混合溶液であるから,「組成物」といえる。 したがって,甲1発明Aの「溶液F4」は,訂正後発明1の「組成物」に相当する。 (2) 一致点及び相違点 ア 一致点 訂正後発明1と甲1発明Aは,次の構成で一致する。 「 組成物であって,前記組成物が, 塩基と, アンモニウム化合物と, 水とを含む, 組成物。」 イ 相違点 訂正後発明1と甲1発明Aは,以下の点で相違する。 (相違点1) 訂正後発明1の「塩基」は,「下記構造: 【化1】 (式中: Xは,ヒドロキシドであり, R1は,メチルであり,かつ R2,R3,及びR4は,独立にメチル,エチル,ヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルである) を有する0.4質量%~30質量%の」有機アンモニウム化合物であるのに対して,甲1発明Aの「塩基」は,これが明らかではない点。 (相違点2) 訂正後発明1の「オキソアンモニウム化合物」は,「下記構造: 【化2】 (式中: Xは,サルフェートであり, R5は,水素であり,かつ R6及びR7は,水素である) を有する0.1質量%~5質量%のオキソアンモニウム化合物」であるのに対して,甲1発明Aの「ヒドロキシルアミン」は,訂正後発明1の「オキソアンモニウム化合物」に該当する化合物ではない点。 (相違点3) 訂正後発明1の「組成物」は,「組成物のpHが7より高く」なっているのに対して,甲1発明Aの「溶液F4」は,これが明らかではない点。 (相違点4) 訂正後発明1の「組成物」は,「上に回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための」組成物であって,「前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる」組成物であるのに対して,甲1発明Aの「溶液F4」は,一応,これが明らかではない点。 なお,被請求人は,被請求人上申書2において,相違点1~3は相互に関連すると主張する(21頁下から1行~22頁4行)。しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づくと,有機アンモニウム化合物とオキソアンモニウム化合物は,多様な選択肢から各々選択可能なものにすぎず,pHはその結果にすぎない。 (3) 判断 ア 相違点1~相違点3について (ア) 有機アンモニウム化合物の選択について 甲1の段落【0041】には,「塩基は,モルフォリン,MEA,ジエタノールアミン,ジグリコールアミン,炭酸水素コリン,水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH),又は水酸化コリンから成る。」及び「四級アンモニウムヒドロキシド化合物のような強塩基を有する2%~12%のヒドロキシルアミンから構成される化学品は,露出された有機物質を有する無機基板上の強靱なレジストを除去するのに使用できる。この化学品は,銅と有機物質の両方と適合する。」と記載されている。 ここで,上記列挙された塩基のうち,「四級アンモニウムヒドロキシド化合物のような強塩基」に該当する塩基は,「水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)」及び「水酸化コリン」であるところ,これら化合物は,訂正後発明1の「有機アンモニウム化合物」の構造の要件を満たす。 甲1発明Aの「塩基」として,「水酸化コリン」又は「水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)」を採用し,相違点1に係る構成を採用することは,甲1の示唆にしたがう当業者が行う事項にすぎない。 (イ)オキソアンモニウム化合物の選択について [A]甲1発明Aの段落【0039】及び【0041】には,それぞれ,「少量の塩基溶液中ヒドロキシルアミンを添加すると,溶液の銅との適合性を維持しながら除去効率が高まる。」及び「四級アンモニウムヒドロキシド化合物のような強塩基を有する2%~12%のヒドロキシルアミンから構成される化学品は,露出された有機物質を有する無機基板上の強靱なレジストを除去するのに使用できる。この化学品は,銅と有機物質の両方と適合する。」と記載されている。また,[B]甲1の請求項17及び段落【0015】には,それぞれ,「前記組成物が,さらにヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む」及び「本組成物は,任意にヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む。存在する場合,該組成物は,望ましくは約2~約12質量%のヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む。」と記載されている。さらに,[C]甲1の段落【0017】には,「ヒドロキシルアミン化学品を含む,いくつかの溶媒は,銅との高度の不適合性を示す。Cuのヒドロキシルアミン含有化学品との不適合性は,ほとんど次の2つの要因:ヒドロキシルアミンの公知の還元剤としての強さ,及び効率的に金属イオンと錯化かつ可溶化する傾向(アミン溶媒及び他のキレート剤と共に)の結果と考えられる。…重要なことは,未変性Cuを溶液中に引き出す熱力学的な原動力を妨げながら,酸化されたCu残留物を解離可能な化学を設計することであり;これは,使用するイオン媒体を注意深く変更することによって達成される。」と記載されている。 これら甲1の記載からは,[A]塩基溶液中にヒドロキシルアミンを少量添加すると,レジストの除去効率が高まること,[B]「ヒドロキシルアミン」と「ヒドロキシルアミン塩」は,「又は」の関係にある置換物であること,[C]ヒドロキシルアミン化学品を含む溶媒は銅との不適合性を示すため,未変性の銅の溶出を防止しかつ酸化された銅残留物を解離可能なように,使用するイオン媒体を注意深く変更することが重要であること,が理解できる。 そうしてみると,甲1に接した当業者において,甲1発明Aの「ヒドロキシルアミン」を,[C]銅との不適合とならない[A]少量添加の範囲内で[B]ヒドロキシルアミン塩に置換することは,甲1が示唆する「化学を設計すること」にすぎない。 ここで,甲1には,「ヒドロキシルアミン塩」の具体例は開示されていないけれども,「ヒドロキシルアミン塩」として,ヒドロキシルアミン硫酸塩は例示するまでもない周知のものであり,しかも,「ヒドロキシルアミン」を「ヒドロキシルアミン硫酸塩」に置換可能であることも,当業者に既に知られている(甲2の段落【0005】等。)。また,甲1発明Aの「ヒドロキシルアミン」を,[C]銅との不適合とならない[A]少量添加の範囲内(後記(ウ)の化学の設計の範囲内)で[B]ヒドロキシルアミン硫酸塩に置換しても,そのpHが7より高くなることは,技術的にみて明らかである(「ヒドロキシルアミン硫酸塩」と「ヒドロキシルアミンサルフェート」は同一の化合物であり,訂正後発明1の「オキソアンモニウム化合物」の構造の要件を満たす。)。少なくとも,銅との不適合の程度と除去効率との兼ね合いを考慮した結果として,pHを7より高くすることは,当業者における通常の試行錯誤による化学の設計の範囲内の事項にすぎない。 (ウ)分量について 前記(ア)及び(イ)にしたがって溶液を調製するに際し,当業者は試行錯誤により化合物の分量を調整すると考えられる。また,調整に際して参考にする,とりあえずの分量は,甲1発明Aの分量,すなわち,甲1発明Aの溶液F4の分量である。 そうしてみると,甲1発明Aの塩基としてコリンヒドロキシド又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを選択したときの分量を,少なくとも12質量%を含む範囲で変化させ,また,甲1発明Aのヒドロキシルアミンをヒドロキシルアミンサルフェートに置き換えたときの分量を,少なくとも5質量%を含む少量添加の範囲で変化させてなる種々の分量の組み合わせの組成物を調製することは,当業者における通常の試行錯誤による化学の設計の範囲内の事項にすぎない。 イ 相違点4について 甲1の段落【0001】には,「本発明は,一般的に金属相互接続を組み込んだ半導体デバイスの製造に関する。さらに詳細には,本発明は,好ましくはダマシン/デュアルダマシン構造を組み込む銅冶金によるような,相互接続レベルにおけるエッチング後残留物を洗浄する組成物及び方法に関する。」と記載されている。また,甲1発明Aにおいて,上記イで述べたように塩基が選択されて,「四級アンモニウムヒドロキシド化合物のような強塩基を有する2%~12%のヒドロキシルアミンから構成される化学品は,露出された有機物質を有する無機基板上の強靱なレジストを除去するのに使用できる。この化学品は,銅と有機物質の両方と適合する。」(段落【0041】)。 そうしてみると,甲1発明Aにおいて,当業者が,上記アで述べたように試行錯誤して得られた組成物は,訂正後発明1の「組成物」の,「上に回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための」及び「前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる」の要件を満たす組成物になるといえる。 したがって,相違点4は,上記アで述べた容易推考に伴い自ずともたらされる事項にすぎない。 (4) 効果について 訂正後発明1の効果に関して,本件特許の発明の詳細な説明の段落【0001】には,「本実施態様は,下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄するための組成物と方法に関する。」と記載されている。 しかしながら,前記(3)アで述べたとおりであるから,訂正後発明1の効果は,甲1の示唆にしたがう当業者が期待する効果にすぎない。 (5) 被請求人の主張について 被請求人は,被請求人上申書2において,甲2が開示する技術思想に鑑みれば,アルカノールアミン類との組み合わせを捨象して,ヒドロキシルアミンサルフェートに関する言及部分のみを取り出して甲1発明Aと組み合わせることはできないと主張している(27頁4~8行)。 しかしながら,甲1には,甲1記載の組成物を前提として,「ヒドロキシルアミン」と「ヒドロキシルアミン塩」が「又は」の関係にある置換物であることが記載されている。そうしてみると,甲1発明Aの「ヒドロキシルアミン」を「ヒドロキシルアミン塩」に置換するに際し,甲2に記載の「ヒドロキシルアミン硫酸塩」は参考になるとしても,他の化合物まで参考にする必要はない。また,甲2には,安全(防爆)を目的として「ヒドロキシルアミン」を「ヒドロキシルアミン硫酸塩」に置換したレジスト剥離液の技術が記載されている。安全(防爆)を目的とした置換において,甲2記載のレジスト剥離液に含まれる他の化合物を考慮する必要もない。 被請求人は,被請求人上申書2において,甲23(実験成績証明書)の表によると,5%のヒドロキシルアミンを2.5~6.2%のヒドロキシルアミンサルフェートに置換し,塩基としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを採用した場合にはpHが14を越えるから,当業者はpHを調整する必要性を認識し,当業者がpHを調整する際には,技術常識(特に,乙3)にしたがい酸性側を選択するのが「化学の設計」として合理的であり,敢えてpHを7より高くするアルカリ性側を選択する動機付けがないと主張している(27頁下から3行~28頁5行)。 (当合議体注:甲23の表は,以下の表である。) 確かに,被請求人が技術常識として挙げる乙3に記載された実施例3及び実施例4の組成物のpHは,乙11(実験報告書)の表によると,それぞれ,4.6及び4.2である。 (当合議体注:乙11の表は,以下の表である。) しかしながら,実施例3及び実施例4に含まれるヒドロキシルアミンサルフェートの分量(0.21質量%及び20.5質量%)は,甲1の段落【0041】に記載されたヒドロキシルアミンの分量の数値範囲(2%~12%)から大きく逸脱した分量である。また,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの分量(0.01質量%及び0.23質量%)も,甲1の【請求項2】に記載された分量の数値範囲(約10質量%~約50質量%)から大きく逸脱した分量である。 当業者ならば,化合物の組み合わせや分量を種々変えて,乙2,乙8及び甲24に示されるような損傷実験やレジスト剥離実験を,いくらでも行うことができる。しかしながら,仮に網羅的に実験を行うとしても,甲1に記載された望ましい数値範囲の約1/10と約1/100の組み合わせ(乙3の実施例3)や,約1.7倍と約1/40の組み合わせ(乙3の実施例4)といった数値範囲にある乙3を参考にしてまで実験を行うとは考えがたい。 なお,甲1に記載された組成物は,塩基を主成分として設計された組成物である。これに対して,乙3に記載された組成物は,ヒドロキシルアミンサルフェート(ヒドロキシルアンモニウム化合物)を主成分として設計された組成物である。両者は,主成分に対する設計思想が異なるものであり,相容れない発明と解するのが相当である。 (6) 訂正後発明1についてのまとめ 訂正後発明1は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 (7) 訂正後発明2~訂正後発明9について ア 訂正後発明2について 甲1発明Aの「溶液F4」は,「45%の溶媒」を含むところ,甲1の段落【0041】に列挙された溶媒(ジメチルアセトアミド(DMAc),DMSO,プロピレングリコール(PG),ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM),N-メチルピロリドン(NMP),又はシクロヘキシルピロリドン(CHP))は,いずれも,「水と混和性の有機極性溶媒」である。 「水と混和性の有機極性溶媒をさらに含む」という構成は,甲1発明Aも具備する構成にすぎない。 その余は,訂正後発明1と同様である。 したがって,訂正後発明2は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 イ 訂正後発明3について 訂正後発明2と同様である。 あるいは,当業者において,訂正後発明3の選択肢のものは例示するまでもない周知の溶媒である。 その余は,訂正後発明1及び2と同様である。 したがって,訂正後発明3は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 ウ 訂正後発明4について 当業者が,甲1発明Aを出発点として,前記(3)ア(ウ)で述べたような試行錯誤を行うに際しては,甲1発明Aの塩基としてコリンヒドロキシド又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを選択したときの分量を,少なくとも12質量%を含む範囲で変化させ,また,甲1発明Aのヒドロキシルアミンをヒドロキシルアミンサルフェートに置き換えたときの分量を,少なくとも5質量%を含む範囲で変化させてなる種々の分量の組み合わせの組成物を調製すると考えられる。 そうしてみると,当業者が,コリンヒドロキシド又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの分量が1質量%~10質量%の範囲内で,かつ,ヒドロキシルアミンサルフェートの分量が0.4質量%~3質量%の範囲内である組成物を調製することは,当業者における通常の試行錯誤による化学の設計の範囲内の事項にすぎない。 なお,被請求人は,被請求人上申書2において,甲1発明Aに基づいて,有機アンモニウム化合物の量を1質量%~10質量%の範囲内にまで減らすこと,及びオキソアンモニウム化合物の量を0.4質量%~3質量%の範囲内にまで減らすことはないと主張する(29頁下から5行~32頁15行)。 しかしながら,甲1の段落【0041】には,「四級アンモニウムヒドロキシド化合物のような強塩基を有する2%~12%のヒドロキシルアミンから構成される化学品は,露出された有機物質を有する無機基板上の強靱なレジストを除去するのに使用できる。」と記載されている。したがって,当業者ならば,少なくとも2%までは試行錯誤すると考えられる。また,甲1の段落【0041】には,塩基の分量の下限値は規定されておらず,甲1の【請求項1】においても規定されていない。ただし,甲1の【請求項2】には,塩基(コリン化合物)の下限値として約10質量%が規定されている。したがって,当業者ならば,少なくとも10質量%までは試行錯誤すると考えられる。あるいは,甲1の表5には,銅に対して適合し,また,SiLKに対して不完全であった溶液F6が記載されているが,本件優先日を基準とする当業者ならば,ダマシン又はデュアルダマシン構造において採用されうる誘電物質として,実用上,SiLKのような有機膜とは異なるものも想定する。したがって,当業者ならば,5%までは試行錯誤すると考えられる。さらにまた,甲1の表5の試験結果は,強靱なレジストのストリッピングを前提としたものであるが,残留物除去を目的とする程度ならば,少なくとも塩基濃度については10質量%を下回る範囲で十分と考えられる(例えば,段落【0044】に記載の組成物D4~D9の水酸化コリン濃度は,1.19%~4.60%である。)。 そうしてみると,訂正後請求項4に記載された数値範囲の要件を満たす組成物についても,当業者は調製するといえる。 その余は,訂正後発明1と同様である。 したがって,訂正後発明4は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 エ 訂正後発明5について 有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる点については,前記(3)ア(ア)と同様である。 分量については,前記ウと同様である。 なお,甲1には,コリン化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである組成物の実施例は記載されていない(段落【0041】に記載された「四級アンモニウムヒドロキシド化合物のような強塩基」の選択肢(2つ)の一方である。)。しかしながら,本件特許の発明の詳細な説明にも,有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである組成物の実施例は記載されていない(段落【0024】~【0029】に列挙された幾多の化合物の1つでしかない。なお,段落【0081】記載の「TMAH」は現像液であり,訂正後発明の組成物に該当するものではない。)。 前記「第4」で述べたとおり,当合議体は,訂正後発明5のような組成物が,特許法36条4項1号及び同法同条6項に規定する要件を満たすとは考えていない。ただし,発明の詳細な説明の記載に実施例の記載がない範囲であって,かつ,多数列挙された選択肢やpHの範囲を事後的に組み合わせてなるような組成物についてまでも,発明の詳細な説明に記載したものでありかつ実施をすることができるという程度に当業者の技術水準を設定する(当業者が幅広に試行錯誤する前提で考える)ならば,甲1には,コリン化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドである組成物が優に記載されているに等しいと考える(この点は,訂正後発明6についても,同様である。)。少なくとも,甲1の場合には,2つのうちの一方の選択肢にすぎない。 したがって,訂正後発明5は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 オ 訂正後発明6について 甲1発明Aが対象とする回路の素材は,銅である。 pH調整剤は,周知慣用技術にすぎない(必要ならば,甲32の1の段落【0031】,甲32の2の【0028】,甲32の3の段落【0100】,甲32の4の【請求項3】を参照。)。また,pHは,当業者の試行錯誤によるpH調製の結果にすぎない。 有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる点については,前記(3)ア(ア)と同様である。 分量については,前記ウと同様である。 なお,甲1の段落【0001】及び【0002】には,それぞれ,「本発明は,一般的に金属相互接続を組み込んだ半導体デバイスの製造に関する。さらに詳細には,本発明は,好ましくはダマシン/デュアルダマシン構造を組み込む銅冶金によるような,相互接続レベルにおけるエッチング後残留物を洗浄する組成物及び方法に関する。さらに,本発明は,アルミニウム,又は誤配列タングステンプラグとのアルミニウム合金相互接続のような他のエッチング後残留物洗浄用途の組成物に関する。」及び「図1及び図2は,この場合に使用する典型的な構造を示す。銅及び最終的にはアルミニウムを組み込むために,パターンを誘電体(2)を介してフォトレジスト(3)から移動させる。」と記載されている。甲1全体の記載や甲1発明Aは,回路の素材が銅であることを念頭にしたものであるが,甲1の段落【0001】及び【0002】の記載内容,及び当業者が幅広に試行錯誤する前提で考えるならば,当業者は,甲1発明Aの組成物の用途を,回路の素材がアルミニウムの場合についても検討するといえる。 したがって,訂正後発明6は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 カ 訂正後発明7について 訂正後発明6と同様である。 したがって,訂正後発明7は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 キ 訂正後発明8について フォトレジスト等を除去する際の温度及び時間として,通常の範囲内のものにすぎない。例えば,甲1の段落【0038】の表4においても,65℃,15分との値が示されている。 その余は,訂正後発明1~訂正後発明7と同様である。 したがって,訂正後発明8は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 ク 訂正後発明9について 訂正後発明8と同様である。 したがって,訂正後発明9は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 (8) 小括 訂正後発明1~訂正後発明9は,甲1発明A及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許1~本件特許9は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 3 甲1発明Bに基づく容易推考 (1) 対比 ア 有機アンモニウム化合物 甲1発明Bの「組成物」は,「コリン化合物」を含む。また,甲1発明Bでいう「コリン化合物」について,甲1の段落【0013】には,「本発明の組成物及び方法において,コリン化合物は,水酸化コリン,炭酸水素コリン又は塩化コリンのような水酸化物又は塩の形態でありうる。ここで,用語「コリン化合物」は,水酸化テトラエチルアンモニウム(TMAH),水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAM),それらの塩等のような関連する四級アンモニウム化合物をも包含する。」と記載されている。 したがって,甲1発明Bの「コリン化合物」と訂正後発明1の「有機アンモニウム化合物」は「有機アンモニウム化合物」の点で共通する。 イ オキソアンモニウム化合物 甲1発明Bの「組成物」は,「ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩」を含む。また,「ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩」は,いずれも,「アンモニウム化合物」である。 したがって,甲1発明Bの「ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩」と訂正後発明1の「オキソアンモニウム化合物」は,「アンモニウム化合物」の点で共通する。 ウ 水 甲1発明Bの「組成物」は「水」を含む。 したがって,甲1発明Bの「組成物」は,訂正後発明1の「組成物」の,「水」「を含み」の要件を満たす。 エ 組成物 甲1発明Bの「組成物」は,化合物の混合溶液であるから,「組成物」といえる。 したがって,甲1発明Bの「組成物」は,訂正後発明1の「組成物」に相当する。 (2) 一致点及び相違点 ア 一致点 訂正後発明1と甲1発明Bは,次の構成で一致する。 「 組成物であって,前記組成物が, 有機アンモニウム化合物と, アンモニウム化合物と, 水とを含む, 組成物。」 イ 相違点 訂正後発明1と甲1発明Bは,以下の点で相違する。 (相違点1) 訂正後発明1の「有機アンモニウム化合物」は,「下記構造: 【化1】 (式中: Xは,ヒドロキシドであり, R1は,メチルであり,かつ R2,R3,及びR4は,独立にメチル,エチル,ヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルである) を有する0.4質量%~30質量%の」有機アンモニウム化合物であるのに対して,甲1発明Bの「コリン化合物」は,この構造に限られない点。 (相違点2) 訂正後発明1の「オキソアンモニウム化合物」は,「下記構造: 【化2】 (式中: Xは,サルフェートであり, R5は,水素であり,かつ R6及びR7は,水素である) を有する0.1質量%~5質量%のオキソアンモニウム化合物」であるのに対して,甲1発明Bの「ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩」のうち,「ヒドロキシルアミン」は,訂正後発明1の「オキソアンモニウム化合物」に該当する化合物ではなく,また,「ヒドロキシルアミン塩」は,訂正後発明1の「オキソアンモニウム化合物」の構造に限られない点。 (相違点3) 訂正後発明1の「組成物」は,「組成物のpHが7より高く」なっているのに対して,甲1発明Bの「組成物」は,これが明らかではない点。 (相違点4) 訂正後発明1の「組成物」は,「上に回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための」組成物であって,「前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる」組成物であるのに対して,甲1発明Bの「組成物」は,一応,これが明らかではない点。 (3) 判断 ア 相違点1~相違点3について 甲1発明Bの具体的実施例のコリン化合物は,水酸化コリンである。また,甲1の段落【0013】,【0020】及び【0041】には,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが記載されている。 そうしてみると,甲1発明Bの「コリン化合物」として,水酸化コリンやテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを選択することは,甲1の記載にしたがう当業者が当然行う事項にすぎない。 甲1発明Bの組成物は「ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩」を含むところ,「ヒドロキシルアミン塩」として,ヒドロキシルアミン硫酸塩は例示するまでもない周知のものであり,しかも,「ヒドロキシルアミン」を「ヒドロキシルアミン硫酸塩」に置換可能であることも,当業者に既に知られている(甲2の段落【0005】等。)。 また,甲1の段落【0015】及び【0019】には,それぞれ,「本組成物は,任意にヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む。存在する場合,該組成物は,望ましくは約2~約12質量%のヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む。」及び「コリン濃度が20%に達する場合に洗浄効率が高まることがわかる。」と記載されている。 そうしてみると,甲1発明Bの「ヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩」として「ヒドロキシルアミン硫酸塩」を選択するとともに,甲1発明Bの組成物の分量及びpHを訂正後発明1の数値範囲内のものとすることは,甲1の記載にしたがう当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項である。 イ 相違点4について 甲1の段落【0001】には,「本発明は,一般的に金属相互接続を組み込んだ半導体デバイスの製造に関する。さらに詳細には,本発明は,好ましくはダマシン/デュアルダマシン構造を組み込む銅冶金によるような,相互接続レベルにおけるエッチング後残留物を洗浄する組成物及び方法に関する。」と記載されている。加えて,甲1の「1.銅を組み込んだダマシン型構造の洗浄」(【0018】から【0021】)の記載内容からみて,甲1発明Bの「組成物」は,洗浄効率(洗浄効率が高いこと)と銅腐食(銅の腐食を抑制すること)の両立を図ったものといえる。 そうしてみると,引用発明Bの「組成物」は,「上に回路又は回路の一部が存在する,集積回路基板から,ウェーハレベルパッケージング基板から,又はプリント基板から,ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去するための」組成物であって,「前記基板と関係がある回路,又はその一部の動作性を維持しながら,前記基板から,前記ポリマー,エッチング残渣,アッシング残渣,又はそれらの組合せを除去することができる」組成物である。 したがって,相違点4は,相違点ではない。 (4) 効果について 訂正後発明1の効果に関して,本件特許の発明の詳細な説明の段落【0001】には,「本実施態様は,下層にある基板又は材料を傷つけずに,ポリマーを除去し,エッチング/アッシング残渣を洗浄するための組成物と方法に関する。」と記載されている。 しかしながら,前記(3)ウで述べたとおりであるから,訂正後発明1の効果は,甲1の示唆にしたがう当業者が期待する効果にすぎない。 (5) 訂正後発明1についてのまとめ 訂正後発明1は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 (6) 訂正後発明2~訂正後発明9について ア 訂正後発明2について 甲1の段落【0013】には,「組成物中の本方法の実施のために好適な有機溶媒としては,ジメチルスルホキシド,エチレングリコール,エチレングリコールアルキルエーテル,ジエチレングリコールアルキルエーテル,トリエチレングリコールアルキルエーテル,プロピレングリコール,プロピレングリコールアルキルエーテル,N-置換ピロリドン,エチレンジアミン及びエチレントリアミンのような極性溶媒が挙げられる。さらに,技術的に公知の極性溶媒も本発明の組成物に使用することができる。」と記載されている。 「水と混和性の有機極性溶媒をさらに含む」という構成は,甲1発明Bも具備する構成にすぎない。 その余は,訂正後発明1と同様である。 したがって,訂正後発明2は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 イ 訂正後発明3について 訂正後発明2と同様である。 あるいは,当業者において,訂正後発明3の選択肢のものは例示するまでもない周知の溶媒である。 その余は,訂正後発明1及び2と同様である。 したがって,訂正後発明3は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 ウ 訂正後発明4について 甲1の段落【0015】には,「本組成物は,任意にヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む。存在する場合,該組成物は,望ましくは約2~約12質量%のヒドロキシルアミン又はヒドロキシルアミン塩を含む。」と記載されている。また,甲1の段落【0019】には,「コリン濃度が20%に達する場合に洗浄効率が高まることがわかる。」と記載されているが,甲1の【請求項2】には,コリン化合物の下限値として約10質量%が規定されているから,当業者ならば,コリン化合物の分量が10%前後の組成物を調製することができる。あるいは,残留物除去を目的とする程度ならば,10質量%を下回る組成物も調製することができる(例えば,段落【0044】に記載の組成物D4~D9の水酸化コリン濃度は,1.19%~4.60%である。【請求項1】においても,分量は規定されていない。)。 その余は,訂正後発明1と同様である。 したがって,訂正後発明4は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 エ 訂正後発明5について 有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる点については,前記(3)アと同様である。 分量については,前記ウと同様である。 したがって,訂正後発明5は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 オ 訂正後発明6について 回路の素材については,前記2(7)オと同様である。 pH調整剤は,周知慣用技術にすぎない。pHは,pH調製の結果にすぎない。 有機アンモニウム化合物がテトラメチルアンモニウムヒドロキシドからなる点については,前記(3)アと同様である。 分量については,前記ウと同様である。 したがって,訂正後発明6は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 カ 訂正後発明7について 訂正後発明6と同様である。 したがって,訂正後発明7は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 キ 訂正後発明8について フォトレジスト等を除去する際の温度及び時間として,通常の範囲内のものにすぎない。例えば,甲1の段落【0018】においても,「50℃10分間」との値が示されている。 その余は,訂正後発明1~訂正後発明7と同様である。 したがって,訂正後発明8は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 ク 訂正後発明9について 訂正後発明8と同様である。 したがって,訂正後発明9は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 (7) 小括 訂正後発明1~訂正後発明9は,甲1発明B及び甲2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,本件特許1~本件特許9は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 第6 無効理由2(甲12に基づく進歩性)について 1 甲12及び乙13の記載内容 (1) 甲12の記載内容 甲12には,以下の事項が記載されている。 ア Claim 1 「1. A cleaning method for removing photoresist and plasma etch residues from a substrate comprising the steps of: (i) contacting said substrate with an aqueous based cleaning composition having a pH of from about 2 to about 6, wherein said cleaning composition comprises: (a) water; (b) at least one basic compound selected from the group consisting of amines or quaternary ammonium hydroxides; and (c) at least one acidic hydroxylammonium compound; and (ii) rinsing said substrate with ozonated water.」 (訳文:「1. 基板からフォトレジスト及びプラズマエッチング残渣を除去するための洗浄方法であって, (i) 約2から約6のpHである水溶性洗浄組成物を前記基板に接触させる工程であって,前記洗浄組成物は, (a) 水, (b) アミン及び4級アンモニウム水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物,及び (c) 酸性ヒドロキシルアンモニウム化合物,を含む工程と, (ii) オゾン水によって前記基板をリンスする工程と,を含む,洗浄方法。」) イ 3欄45~53行 「DETAILED DESCRIPTION OF A PREFERRED EMBODIMENT In the first step of the method of the present invention, the substrate is contacted with an aqueous-based cleaning composition having a substantially neutral or slightly acidic pH. One particularly suitable cleaning composition is Microstrip 5002, commercially available from Olin Microelectronic Materials.」 (訳文:好ましい態様の詳細な説明 本発明の方法では,実質的に中性又はわずかに酸性のpH値である水溶性洗浄組成物を基板に接触させる。特に好適な洗浄組成物の一例は,商品名「Microstrip 5002」であり,これは,「Olin Microelectronic Materials」社より入手可能である。) ウ 5欄37~42行 「Because the preferred cleaning composition is a non-corrosive and neutral to weakly acidic aqueous solution and will not harm the environment. Furthermore, the cleaning compositions used in the present cleaning method may be disposed of in a regular drain system for aqueous chemical wastes.」 (訳文:好ましい洗浄組成物は,非腐食性であり中性から弱酸性の水溶液であるから,環境を害しない。さらに,本洗浄方法に用いられる洗浄組成物は,水性薬品廃棄用の標準の排出システムにより処理することができる。) (2) 乙13の記載内容 乙13には,以下の事項が記載されている。なお,フォントや下線は考慮せず,テキストの記載のみ摘記する。 ア 「Page1 of 8」の項目「2.」 「2. COMPOSITION/INGORMATION ON INGREDIENTS CAS or CHEMICAL NAME      CAS #    % Range Hydroxylamine, sulfate     10039-54-0  15-25 Tetramethylammonium hydroxide  75-59-2   0.01-1」 (訳文:2.組成/成分情報 CAS又は化合物名           CAS#  %レンジ ヒドロキシルアミン,サルフェート    10039-54-0 15-25 テトラメチルアンモニウムヒドロキシド  75-59-2   0.01-1) イ 「Page 4 of 8」の末行~「Page 5 of 8」の5行 「9. PHYSICAL AND CHEMICAL PROPERTIES …(省略)… pH 4-4.5」 (訳文:9.物理的及び化学的性質 …(省略)… pH 4-4.5) (3) 判断 甲12に記載された水溶組成物(以下「甲12水溶組成物」という。)の液性について,甲12の「好ましい態様の詳細な説明」には「実質的に中性又はわずかに酸性のpH値」(前記(1)イ)と記載されている。 しかしながら,甲12水溶組成物について,甲12の「Claim 1」では,「約2から約6のpH」(前記(1)ア)と記載され,また,「好適な洗浄組成物の一例」である「Microstrip 5002」(前記(1)イ)の液性は,「pH 4-4.5」(乙13,前記(2)イ)である。そして,これら液性は,通常の意味での「実質的に中性」には該当しないし,また,「わずかに酸性」といえるのかも疑問である。 すなわち,甲12に記載された「実質的に中性又はわずかに酸性のpH値」が意味する「pH値」については,必ずしも明確に理解できる状況にはない。そこで,甲12水溶組成物のpHの技術的意義について,甲12の記載を参酌すると,甲12には,「好ましい洗浄組成物は,非腐食性であり中性から弱酸性の水溶液であるから,環境を害しない。」(前記(1)ウ)と記載されている。 そうしてみると,甲12に記載された「実質的に中性又はわずかに酸性のpH値」とは,「環境を害しない」,すなわち,強酸のように腐食性でないことを意味すると考えられるから,甲12の「実質的に中性又はわずかに酸性のpH値」の記載の本質は,「腐食性でない範囲の酸性」にあり,通常の意味での「中性」の組成物は,事実上開示されていないと解するのが相当である。 したがって,甲12には,訂正後発明の「組成物のpHが7より高く」の構成を満たす組成物は,記載も示唆もされていないというべきである。 (4) 小括 訂正後発明は,甲12に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるということができない。 第7 まとめ 本件特許1~本件特許9は,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許法123条1項4号に該当し無効とすべきものである。また,本件特許1~本件特許9は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,特許法123条1項4号に該当し無効とすべきものである。さらに,本件特許1~本件特許9は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから,特許法123条1項2号に該当し無効とすべきである。 本件訂正により,請求項10~請求項15は削除された。 審判に関する費用については,特許法169条2項の規定において準用する民事訴訟法61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2015-800143

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決351件(イー.ケー.シー.テクノロジー.インコーポレーテッド、富士フイルム 株式会社)
  • 2022-800021無効審判 / 2023-09-12 / 請求不成立撮像装置
    同じ当事者: 富士フイルム 株式会社
  • 2020-800010無効審判 / 2021-03-12 / 請求不成立撮像装置
    同じ当事者: 富士フイルム 株式会社
  • 2019-800059無効審判 / 2020-02-28 / 請求成立(無効)過カルボン酸濃度測定方法
    同じ当事者: 富士フイルム 株式会社
  • 2016-800128無効審判 / 2018-11-06 / 請求成立(無効)磁気記録媒体
    同じ当事者: 富士フイルム 株式会社
  • 2017-800135無効審判 / 2018-10-23 / 請求不成立磁気記録媒体、磁気信号再生システムおよび磁気信号再生方法
    同じ当事者: 富士フイルム 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)450件(121・G03F、536・G03F、537・G03F ほか)
  • 2024-701219異議申立 / 2026-03-06 / 維持感光性樹脂組成物、樹脂膜、および電子装置
    共通の審決分類: 121・G03F、536・G03F、537・G03F
  • 2024-008565拒絶査定不服審判 / 2026-03-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)電界誘導フォトレジストパターン形成工程のためのフィルム構造
    共通の審決分類: 121・G03F、536・G03F、537・G03F
  • 2024-020186拒絶査定不服審判 / 2026-01-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)薬液、レジストパターン形成方法、半導体チップの製造方法、薬液収容体、薬液の製造方…
    共通の審決分類: 121・G03F、536・G03F、537・G03F
  • 2024-019297拒絶査定不服審判 / 2025-12-15 / 原査定取消(特許/登録すべき)薬液、薬液収容体、レジストパターン形成方法、半導体チップの製造方法
    共通の審決分類: 121・G03F、536・G03F、537・G03F
  • 2023-015084拒絶査定不服審判 / 2025-08-07 / 請求不成立EUV容器及びEUVコレクタのターゲット材料デブリクリーニングのためのシステム、…
    共通の審決分類: 121・G03F、536・G03F、537・G03F

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存