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特許異議申立

2015-700157

発光ダイオード応用における使用のための赤色線放出蛍光体

審判番号
2015-700157
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2008-557338外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年11月09日
審決日
2017年07月18日
公報発行日
2017年10月27日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C09K) / P1651.121-YAA(C09K) / P1651.16 -YAA(C09K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第29条の2、特許法第120条の5第3項、特許法第184条の4第1項、特許法第113条第5号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第184条の18、特許法第120条の5第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5715327号発明「発光ダイオード応用における使用のための赤色線放出蛍光体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5715327号の明細書及び特許請求の範囲を、平成29年5月8日提出の訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、8~21〕、3~7、22~29について訂正することを認める。 特許第5715327号の請求項1、2、4~21に係る特許を維持する。 特許第5715327号の請求項3、22~29に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯等 1 本件特許異議申立に係る特許 本件特許異議申立に係る特許第5715327号は、特許権者であるジーイー ライティング ソリューションズ エルエルシーより、平成19年2月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成18年2月28日、米国(US))に国際出願されたものであって、特願2008-557338号として審査され、平成27年3月20日に、発明の名称を「発光ダイオード応用における使用のための赤色線放出蛍光体」、請求項の数を「29」として特許権の設定登録を受けたものである。 2 手続の経緯 本件特許異議申立における手続の経緯は、おおよそ次のとおりである。 平成27年11月 9日  永井義久より特許異議申立 平成28年 1月29日付 取消理由通知 同年 5月 6日  意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 同年 6月16日  意見書の提出(特許異議申立人) 同年 7月 7日付 取消理由通知 同年10月11日  意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 同年12月22日  上申書の提出(特許異議申立人) 平成29年 1月31日付 取消理由通知 同年 5月 8日  意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 同年 6月15日  意見書の提出(特許異議申立人) 第2 訂正の適否 1 訂正事項 平成29年5月8日になされた特許請求の範囲及び明細書についての訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定並びに同法同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1ないし21及び請求項22ないし29ごとに請求するものであり、かつ、当該明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて請求が行われたものであるところ、その内容は次のとおりである。 なお、平成28年5月6日及び同年10月11日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げされたものとみなす。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる蛍光体材料であり、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体を含む蛍光体材料」とあるのを、「緑色放出蛍光体と、少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体とを含む蛍光体材料」と訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「A2[MF6]:Mn4+を含む、光放出照明装置」とあるのを、「A2[MF6]:Mn4+を含み、及び前記蛍光体材料が光源の表面に被覆されている、光放出照明装置」と訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「蛍光体材料が光源の表面に被覆されている」とあるのを、「青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源;及び緑色放出蛍光体と、少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体とを含む蛍光体材料、を含み、前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含み、及び蛍光体材料が光源の表面に被覆されている」と訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1記載の照明装置」とあるのを、「光放出バックライト装置」と訂正する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5に「青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源;少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる第1の蛍光体材料であり、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体を含む第1の蛍光体材料;第2の緑色放出蛍光体材料;及び」との文言を追加する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項5に「光源及び蛍光体材料を取り囲むカプセル材料をさらに含む」とあるのを、「前記光源及び前記第1及び第2の蛍光体材料を取り囲むポリマーカプセル材料であって、前記第1及び第2の蛍光体材料が前記ポリマーカプセル材料中に分散されている、ポリマーカプセル材料、を含み」と訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項5に「前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含む、」との文言を追加する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1記載の照明装置」とあるのを、「白色光放出照明装置」と訂正する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項6に「青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源;少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる第1の蛍光体材料であり、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体を含む第1の蛍光体材料;第2の緑色放出蛍光体材料;及び」との文言を追加する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項6に「蛍光体材料がカプセル材料中に分散されている」とあるのを、「前記光源及び前記第1及び第2の蛍光体材料を取り囲むポリマーカプセル材料であって、前記第1及び第2の蛍光体材料が前記ポリマーカプセル材料中に分散されている、ポリマーカプセル材料、を含み」と訂正する。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項6に「前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含む、」との文言を追加する。 (13) 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項6に「請求項5記載の照明装置」とあるのを、「光放出バックライト装置」と訂正する。 (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項7に「さらにリフレクターカップを含む、請求項1記載の照明装置」とあるのを、「青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源;緑色放出蛍光体と、少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体とを含む蛍光体材料;及びリフレクターカップ、を含み、前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含む、光放出照明装置」と訂正する。 (15) 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項22を削除する。 (16) 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項23を削除する。 (17) 訂正事項17 特許請求の範囲の請求項24を削除する。 (18) 訂正事項18 特許請求の範囲の請求項25を削除する。 (19) 訂正事項19 特許請求の範囲の請求項26を削除する。 (20) 訂正事項20 特許請求の範囲の請求項27を削除する。 (21) 訂正事項21 特許請求の範囲の請求項28を削除する。 (22) 訂正事項22 特許請求の範囲の請求項29を削除する。 (23) 訂正事項23 本件特許明細書の【0014】、【0015】に「シリコン」(計3箇所)とあるのを、「シリコーン」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1、2 ア 訂正の目的について 訂正事項1、2は、請求項1に係る発明の光放出照明装置に含まれる蛍光体材料を、緑色放出蛍光体と、特定の複合フッ化物蛍光体とを含む蛍光体材料に限定するとともに、当該蛍光体材料が「光源の表面に被覆されている」との限定を追加するものであるから、当該訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アに記載したとおり、訂正事項1、2は、請求項1に記載の蛍光体材料をさらに限定するものであり、構成を特定する事項を直列的に付加する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、本件特許明細書の【0019】、【0023】、【0024】などに付加蛍光体として記載された緑色放出蛍光体に関する記載に基づくものであり、また、訂正事項2は、同【0015】、【図1】などに記載された態様に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (2) 訂正事項3、15~22 訂正事項3、15~22は、請求項の削除を目的とするものであるから特許請求の範囲の減縮に該当し(特許法第120条の5第2項ただし書第1号)、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3) 訂正事項4、5 ア 訂正の目的について 訂正事項4、5は、本件訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であったものを、独立形式請求項に書き下すとともに、「緑色放出蛍光体」の付加、「光放出バックライト装置」への限定を行うものであるから、当該訂正事項4、5は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号及び第1号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アに記載した、独立形式請求項への書き下し、「緑色放出蛍光体」の付加、「光放出バックライト装置」への限定は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 前記独立形式請求項への書き下しは、実質的な内容の変更を伴うものではないし、「緑色放出蛍光体」の付加、「光放出バックライト装置」への限定については、それぞれ、本件特許明細書の【0019】、【0023】、【0024】などの緑色放出蛍光体に関する記載、同【0018】、【0023】、【0024】などのバックライトに関する記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (4) 訂正事項6~9 ア 訂正の目的について 訂正事項6~9は、請求項5の独立形式請求項への書き下し、「第2の緑色放出蛍光体材料」の付加、蛍光体材料とカプセル材料に関する限定、「白色放出照明装置」への限定を行うものであるから、当該訂正事項6~9は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号及び第1号に規定する事項を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アに記載した、独立形式請求項への書き下し、「第2の緑色放出蛍光体材料」の付加、蛍光体材料とカプセル材料に関する限定、「白色放出照明装置」への限定は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 前記独立形式請求項への書き下しは、実質的な内容の変更を伴うものではないし、「第2の緑色放出蛍光体材料」の付加、蛍光体材料とカプセル材料に関する限定、「白色放出照明装置」への限定については、それぞれ、本件特許明細書の【0019】、【0023】、【0024】などの緑色放出蛍光体に関する記載、同【0014】、【0016】、【図2】などに記載された態様、同【0012】、【0013】、【0016】、【0017】、【0019】などの白色光の照明装置等に関する記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (5) 訂正事項10~13 ア 訂正の目的について 訂正事項10~13は、請求項6の独立形式請求項への書き下し、「第2の緑色放出蛍光体材料」の付加、蛍光体材料とカプセル材料に関する限定、「光放出バックライト装置」への限定を行うものであるから、当該訂正事項10~13は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号及び第1号に規定する事項を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アに記載した、独立形式請求項への書き下し、「第2の緑色放出蛍光体材料」の付加、蛍光体材料とカプセル材料に関する限定、「光放出バックライト装置」への限定は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 前記独立形式請求項への書き下しは、実質的な内容の変更を伴うものではないし、「第2の緑色放出蛍光体材料」の付加、蛍光体材料とカプセル材料に関する限定、「光放出バックライト装置」への限定については、それぞれ、本件特許明細書の【0019】、【0023】、【0024】などの緑色放出蛍光体に関する記載、同【0014】、【0016】、【図2】などに記載された態様、同【0018】、【0023】、【0024】などのバックライトに関する記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (6) 訂正事項14 ア 訂正の目的について 訂正事項14は、請求項7の独立形式請求項への書き下し、「緑色放出蛍光体材料」の付加を行うものであるから、当該訂正事項14は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号及び第1号に規定する事項を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アに記載した、独立形式請求項への書き下し、「緑色放出蛍光体材料」の付加は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 前記独立形式請求項への書き下しは、実質的な内容の変更を伴うものではないし、「緑色放出蛍光体材料」の付加は、本件特許明細書の【0019】、【0023】、【0024】などの緑色放出蛍光体に関する記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (7) 訂正事項23 ア 訂正の目的について 本件特許に係る出願は、特許法第184条の4第1項の外国語特許出願であるところ、同法第120条の5第9項が準用する同法第126条第5項の規定は、同法第184条の19による読み替えにより、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とする訂正の場合にあっては、当該外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「国際出願の明細書等」という。)に記載した事項の範囲内での訂正を許容する。 当該法条の規定の照らし、訂正事項23についてみると、その訂正の内容は、本件特許明細書の【0014】、【0015】に「シリコン」(計3箇所)とあるのを、国際出願の明細書等の[0044]及び[0046]に「silicone」と記載されていることに基づき、「シリコーン」に誤訳訂正するものと認められる。また、同「シリコン」は、本件特許明細書の【0014】において、ポリマー材料のひとつとして挙げられていることから、「シリコーン」の誤記を訂正するものともいえる。 したがって、当該訂正事項23は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 前記アのとおり、訂正事項23は、誤記を訂正する程度のものと解することができるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 国際出願の明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項23は、前記のとおり、国際出願の明細書等の[0044]及び[0046]に基づくものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する、同法第184条の19により読み替えられた同法第126条第5項に適合するものである。 3 小括 前記2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定並びに同法同条第9項において準用する同法第126条第4項の規定に従って請求され、その訂正事項はいずれも、同法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1~29について訂正することを認める。 なお、平成29年5月8日提出の訂正請求書における「ウ 引用関係の解消の求め」(27頁)に応じて、請求項1、2、8~21を一群の請求項とし、他の各請求項については、これとは別の請求単位として扱う。 第3 本件特許請求の範囲の記載 前記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし29の記載は、次のとおりである。 「 【請求項1】 青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源;及び 緑色放出蛍光体と、少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体とを含む蛍光体材料、を含み、 前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含み、及び 前記蛍光体材料が光源の表面に被覆されている、 光放出照明装置。 【請求項2】 前記蛍光体材料が、K2SiF6:Mn4+を含む、請求項1記載の照明装置。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源;及び 緑色放出蛍光体と、少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体とを含む蛍光体材料、を含み、 前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含み、及び 蛍光体材料が光源の表面に被覆されている、光放出バックライト装置。 【請求項5】 青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源;及び 少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる第1の蛍光体材料であり、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体を含む第1の蛍光体材料; 第2の緑色放出蛍光体材料;及び 前記光源及び前記第1及び第2の蛍光体材料を取り囲むポリマーカプセル材料であって、前記第1及び第2の蛍光体材料が前記ポリマーカプセル材料中に分散されている、ポリマーカプセル材料、を含み、 前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含む、白色光放出照明装置。 【請求項6】 青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源;及び 少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる第1の蛍光体材料であり、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体を含む第1の蛍光体材料; 第2の緑色放出蛍光体材料;及び 前記光源及び前記第1及び第2の蛍光体材料を取り囲むポリマーカプセル材料であって、前記第1及び第2の蛍光体材料が前記ポリマーカプセル材料中に分散されている、ポリマーカプセル材料、を含み、 前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含む、光放出バックライト装置。 【請求項7】 青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源; 緑色放出蛍光体と、少なくとも光源から放出される放射の部分を610~650nmのピーク放出波長を有する光へ転換することができる、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体とを含む蛍光体材料;及び リフレクターカップ、 を含み、 前記複合フッ化物蛍光体が、AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含む、光放出照明装置。 【請求項8】 前記蛍光体材料がさらに1以上の付加的な蛍光体を含む、請求項1記載の照明装置。 【請求項9】 前記1以上の付加的な蛍光体が、430~500nmの領域のピーク放出を有する、請求項8記載の照明装置。 【請求項10】 前記1以上の付加的な蛍光体が、500~610nmの領域のピーク放出を有する、請求項8記載の照明装置。 【請求項11】 前記1以上の付加的な蛍光体が、1以上のCe3+で活性化されたガーネット又はEu2+で活性化されたアルカリ土類珪酸塩である、請求項10記載の照明装置。 【請求項12】 前記1以上の付加的な蛍光体が、 (Ba,Sr,Ca)5(PO4)3(Cl,F,Br,OH):Eu2+,Mn2+; (Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu2+,Mn2+; (Sr,Ca)10(PO4)6*υB2O3:Eu2+ (式中0<υ≦1); Sr2Si3O8*2SrCl2:Eu2+; (Ca,Sr,Ba)3MgSi2O8:Eu2+,Mn2+; BaAl8O13:Eu2+; 2SrO*0.84P2O5*0.16B2O3:Eu2+; (Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu2+,Mn2+; (Ba,Sr,Ca)Al2O4:Eu2+; (Y,Gd,Lu,Sc,La)BO3:Ce3+,Tb3+; ZnS:Cu+,Cl-; ZnS:Cu+,Al3+; ZnS:Ag+,Cl-; ZnS:Ag+,Al3+; (Ba,Sr,Ca)2Si1-ξO4-2ξ:Eu2+(式中0≦ξ≦0.2); (Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu2+; (Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)2S4:Eu2+; (Y,Gd,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)5-αO12-3/2α:Ce3+(式中0≦α≦0.5); (Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO4)4Cl2:Eu2+,Mn2+; Na2Gd2B2O7:Ce3+,Tb3+; (Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2P2O7:Eu2+,Mn2+; (Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu3+,Bi3+; (Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu3+,Bi3+; (Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu3+,Bi3+; (Ca,Sr)S:Eu2+,Ce3+; SrY2S4:Eu2+; CaLa2S4:Ce3+; (Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu2+,Mn2+; (Y,Lu)2WO6:Eu3+,Mo6+; (Ba,Sr,Ca)βSiγNμ: Eu2+(式中 2β+4γ=3μ); Ca3(SiO4)Cl2:Eu2+; (Lu,Sc,Y,Tb)2-u-vCevCa1+uLiwMg2-wPw(Si,Ge)3-wO12-u/2(式中-0.5≦u≦1, 0<v≦0.1, 及び0≦w≦0.2); (Y,Lu,Gd)2-ψCaψSi4N6+ψC1-ψ:Ce3+, (式中0≦ψ≦0.5); Eu2+ 及び/又はCe3+ を添加した(Lu,Ca,Li,Mg,Y)alpha-SiAlON; (Ca,Sr,Ba)SiO2N2:Eu2+,Ce3+; 3.5MgO*0.5MgF2*GeO2:Mn4+; Ca1-c-fCecEufAl1+cSi1-cN3, (式中0<c≦0.2, 0≦f≦0.2); Ca1-h-rCehEurAl1-h(Mg,Zn)hSiN3, (式中0<h≦0.2, 0≦r≦0.2); Ca1-2s-tCes(Li,Na)sEutAlSiN3, (式中0≦s≦0.2, 0≦f≦0.2, s+t>0); 及びCa1-σ-χ-φCeσ(Li,Na)χEuφAl1+σ-χSi1-σ+χN3, (式中 0≦σ≦0.2, 0<χ≦0.4, 0≦φ≦0.2)を含む群から選択される、請求項8記載の照明装置。 【請求項13】 前記照明装置が白色光を生産する、請求項8記載の照明装置。 【請求項14】 前記白色光が4500Kより小さいCCTを有する、請求項13記載の照明装置。 【請求項15】 前記白色光が80より大きい一般CRI(Ra)を有する、請求項13記載の照明装置。 【請求項16】 前記白色光が90より大きい一般CRIを有する、請求項13記載の照明装置。 【請求項17】 前記白色光が330lm/Wより大きいLERを有する、請求項13記載の照明装置。 【請求項18】 前記白色光がプランク軌跡上に色点を有する、請求項13記載の照明装置。 【請求項19】 前記白色光の色点が、CIE1931色度図上で垂直方向にプランク軌跡から0.01以内にある、請求項18記載の照明装置。 【請求項20】 前記1以上の付加的な蛍光体が、1以上のCe3+で活性化されたガーネットである、請求項8記載の照明装置。 【請求項21】 前記1以上の付加的な蛍光体が、(Y,Gd,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)5-αO12-3/2α:Ce3+(式中0≦α≦0.5)である、請求項8記載の照明装置。 【請求項22】(削除) 【請求項23】(削除) 【請求項24】(削除) 【請求項25】(削除) 【請求項26】(削除) 【請求項27】(削除) 【請求項28】(削除) 【請求項29】(削除)」 以下、請求項1、2、4~21に記載された事項により特定される発明をそれぞれ「本件訂正発明1」などといい、それらを総称して「本件訂正発明」という。また、これらの発明に対応する特許を「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。さらに、本件訂正後の明細書を「本件訂正明細書」という。 第4 パリ条約による優先権の主張の効果の有無 本件特許に係る出願は、米国における一部継続(CIP)出願(出願番号:US11/364,611、下記甲第1号証参照、以下、「優先基礎出願」という。)を基礎として、パリ条約による優先権の主張をするものである。そして、当該優先基礎出願は、2つの原出願(1つは、出願番号:US11/285,442、下記甲第2号証参照、以下、「原出願1」という。もう1つは、出願番号:US11/049,598、下記甲第3号証参照、以下、「原出願2」という。)に基づく優先権の主張を伴うものである。 ・甲第1号証:米国特許出願公開第2006/0169998号明細書 (出願番号US11/364,611;優先基礎出願) ・甲第2号証:米国特許出願公開第2007/0114562号明細書 (出願番号US11/285,442:原出願) ・甲第3号証:米国特許出願公開第2006/0169986号明細書 (出願番号US11/049,598) ここで、パリ条約による優先権の主張の効果の有無についてみると、前記優先基礎出願の出願書類(甲第1号証)の全体に記載された事項のうち、前記原出願1あるいは原出願2の出願書類(甲第2あるいは3号証)の全体に記載されている事項については、当該優先基礎出願がパリ条約第4条C(2)にいう「最初の出願」とはならず、優先権の主張の効果は認められないから、以下、当該原出願1、2及び優先基礎出願の出願書類の全体に記載された事項を比較しながら、当該優先権の主張の効果の有無について検討する(審査基準(特許庁HP掲載)「第V部第1章パリ条約による優先権」の5.4.2参照)。 1 原出願1、2の出願書類(甲第2、3号証)の全体に記載された事項 (1) 原出願1の出願書類(甲第2号証)の全体に記載された事項 まず、原出願1の出願書類(甲第2号証)の全体に記載された事項をみると(甲第2号証の訳文参照)、その特許請求の範囲の請求項11には、250~500nmのピーク放射を有するInGaN半導体発光素子と発光物質を含む赤色発光LED照明システムが記載され、同請求項12には、当該発光物質は「3.5MgO*0.5MgF2*GeO2:Mn4+」、「A2[MF6]:Mn4+, ここで A=Li, Na, K, Rb 又は Cs 及び M=Ge, Si, Sn, Ti 又は Zr」などのグループから選択される一つ以上であることが記載されている。 また、甲第2号証の段落[0061]には、発光物質をカプセル材料中に分散させることも記載されている。 そうすると、原出願1の出願書類(甲第2号証)には、以下の技術的事項が記載されているといえる。 「青色領域を含むピーク放射を有するInGaN半導体発光素子と、『3.5MgO*0.5MgF2*GeO2:Mn4+』、『A2[MF6]:Mn4+, ここで A=Li, Na, K, Rb 又は Cs 及び M=Ge, Si, Sn, Ti 又は Zr』などのグループから選択される一つ以上の発光物質を含み、当該発光物質がカプセル材料中に分散された赤色発光LEDシステム。』 しかしながら、同出願書類には、本件訂正発明が有する緑色放出蛍光体に関する記載は見当たらない。 (2) 原出願2の出願書類(甲第3号証)の全体に記載された事項 次に、原出願2の出願書類(甲第3号証)の全体に記載された事項をみると(甲第3号証の訳文参照)、そこには、赤色放出蛍光体に関する記載を認めることができる。 しかしながら、本件訂正発明が有する複合フッ化物蛍光体、すなわち「AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+」に関する記載は見当たらない。 (3) 小括 以上のとおり、本件訂正発明は、原出願1の出願書類(甲第2号証)の全体及び原出願2の出願書類(甲第3号証)の全体にそれぞれ記載された事項とはいえない。 2 優先基礎出願の出願書類(甲第1号証)の全体に記載された事項 一方、本件特許に係る出願が優先権主張の基礎としている前記優先基礎出願の出願書類(甲第1号証)を俯瞰すると、そこには、本件訂正発明を含む技術的事項が開示されているということができる(特許権者が平成29年5月8日に提出した意見書に添付された資料2参照)。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明は、前記優先基礎出願の出願書類の全体に記載された事項であって、かつ、前記原出願1あるいは2の出願書類の全体に記載された事項ではないから、パリ条約による優先権の主張の効果を認めることができる。 したがって、本件訂正発明についての、特許法第29条第1項第3号(新規性)、同法同条第2項(進歩性)及び同法第29条の2(拡大先願)の判断にあたっては、優先日である平成18年(2006年)2月28日を基準とする。 第5 取消理由・異議申立理由の概要(適用条文と証拠) 当審において通知した取消理由及び特許異議申立人が主張する異議申立理由は、適用法令と証拠について整理すると、以下のとおりである。 なお、下記甲第1~3号証は、前記「第4」に列記したものであり、下記甲第13号証は、特願2005-289594号(特開2007-390303号公報参照)の特許出願に係るものである。 1 平成28年1月29日付け取消理由 特許法第113条第2号関連 ・特許法第29条第1項第3号(新規性)  甲第1号証 ・特許法第29条の2(拡大先願)     甲第13号証 2 平成28年7月7日付け取消理由 特許法第113条第2号関連 ・特許法第29条第1項第3号(新規性)  甲第1号証 3 平成29年1月31日付け取消理由 特許法第113条第5号(原文新規事項) 特許法第113条第4号関連 ・特許法第36条第6項第2号(明確性要件) ・特許法第36条第6項第1号・第4項第1号 (サポート要件・実施可能要件) 4 異議申立理由 特許法第113条第2号関連 ・特許法第29条第1項第3号(新規性)  甲第1~3号証 ・特許法第29条第2項(進歩性)     甲第1~3号証 ・特許法第29条の2(拡大先願)     甲第13号証 第6 甲第1~3号証に基づく特許法第29条第1項第3号(新規性)及び同法同条第2項(進歩性)に係る取消理由・異議申立理由について 前記「第4」のとおり、新規性・進歩性・拡大先願の判断にあたっては、優先日である平成18年(2006年)2月28日が基準となることから、甲第1~3号証は、公知文献とはなり得ない。そのため、これらの証拠に基づく、新規性及び進歩性についての取消理由・異議申立理由については理由がない。 第7 甲第13号証に基づく特許法第29条の2(拡大先願)に係る取消理由・異議申立理由について 1 先願明細書等の記載事項 甲第13号証の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、まとめて「先願明細書等」という。)には、次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 結晶化ガラス基材とガラス焼結層とを有する発光色変換部材であって、結晶化ガラス基材の片面若しくは両面にガラス焼結層が形成されてなり、励起光が照射されたときに、結晶化ガラス及びガラス焼結層が互いに異なる波長の蛍光を発する性質を有することを特徴とする発光色変換部材。 ・・・ 【請求項7】 結晶化ガラス基材及びガラス焼結層が青色光の一部または全部を吸収し、結晶化ガラス基材からは黄色の蛍光を発し、ガラス焼結層からは赤色及び/または緑色の蛍光を発する性質を有しており、青色光を照射すると、発光色変換部材中を透過する青色光と結晶化ガラス基材及びガラス焼結層から発せられる蛍光とが合成されて、白色光を発することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の発光色変換部材。 ・・・ 【請求項10】 結晶化ガラス基材が、ガーネット結晶中にCe3+を含む結晶を析出してなることを特徴とする請求項1~4及び7~9のいずれかに記載の発光色変換部材。 【請求項11】 ガーネット結晶が、YAG結晶またはYAG結晶固溶体であることを特徴とする請求項10記載の発光色変換部材。 ・・・ 【請求項16】 ガラス焼結層が、ガラス粉末、無機蛍光体粉末を含む混合物を焼成してなることを特徴とする請求項1、2及び5~9のいずれかに記載の発光色変換部材。」 ・「【発明の効果】 【0008】 本発明の発光色変換部材は、発光強度の低下や短寿命化を抑制でき、演色性が高く、しかも、色温度の高い白色光(昼光色)から色温度の低い白色光(電球色)までの様々な色温度に対応した白色光を発することができる。それ故、照明、ディスプレイ等の発光装置、自動車等の前照光として用いる部材として好適である。」 ・「【0014】 尚、本発明において、青色光とは、波長430~480nmに中心波長を有する光を、緑色光とは、波長500~535nmに中心波長を有する光を、黄色光とは、波長535~590nmに中心波長を有する光を、赤色光とは、波長610~780nmに中心波長を有する光を意味する。」 ・「【0048】 ガラス焼結層として、ガラス粉末と、無機蛍光体粉末を含む混合物を焼成してなるものを用いる場合、ガラス焼結層に含まれる無機蛍光体粉末としては、一般的に市中で入手できるものであれば使用でき、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物、ハロリン酸塩化物などからなるものがある。上記の無機蛍光体の中でも、特に、波長300~500nmに励起帯を有し、波長500~780nmに発光ピークを有するもの、特に、赤色及び/または緑色に発光するものを用いることが好ましい。具体的には、青色光を照射すると赤色の蛍光を発する蛍光体として、CaS:Eu2+、ZnS:Mn2+,Te2+、Mg2TiO4:Mn4+、K2SiF6:Mn4+、SrS:Eu2+、Na1.23K0.42Eu0.12TiSi4O11、Na1.23K0.42Eu0.12TiSi5O13:Eu3+、CdS:In,Te、CaAlSiN3:Eu2+、CaSiN3:Eu2+、(Ca,Sr)2Si5N8:Eu2+、Eu2W2O7を用いることができる。また、青色光を照射すると緑色の蛍光を発する蛍光体として、SrAl2O4:Eu2+、SrGa2S4:Eu2+、SrBaSiO4:Eu2+、CdS:In、CaS:Ce3+、Y3(Al,Gd)5O12:Ce2+、Ca3Sc2Si3O12:Ce3+、SrSiON:Eu2+を用いることができる。これらの蛍光体の中には、焼結時の加熱によりガラスと反応し、発泡や変色などの異常反応を起こす物もあり、その程度は、焼結温度が高温であればあるほど著しくなる。しかし、このような無機蛍光体であっても、焼成温度とガラス組成を最適化することで使用できる。」 ・「【実施例5】 【0114】 実施例5は、結晶化ガラス表面に、ガラス粉末と無機蛍光体粉末(SrS:Eu2+及びSrBaSiO4:Eu2+)を含む混合物をグリーンシートの形態で積層し焼成して作製した発光色変換部材である。 【0115】 実施例4と同様にして、結晶化ガラスの表面に、グリーンシート(肉厚50μm)積層し、熱圧着によって一体化して積層体を作製した後、400℃で1時間脱脂し、900℃で20分焼成した後、冷却して発光色変換部材を作製した。 【0116】 このようにして得られた発光色変換部材について、ガラス焼結層の肉厚を測定したところ、40μmであった。結晶化ガラス側から波長465nmにピークを有する青色発光ダイオードの光を照射しガラス焼結層側から発する光を、色度計を用いて測定したところ、CIE座標でCIE座標でx=0.430、y=0.380でありであり、演色性の高い電球色の白色光が得られた。」 2 先願明細書等の記載された発明 前記1の記載事項を総合すると、先願明細書等には以下の発明が記載されているといえる。 「波長430~480nmに中心波長を有する青色光を放射する青色発光ダイオードと、 結晶化ガラス基材及びガラス焼結層が青色光の一部または全部を吸収し、結晶化ガラス基材からは波長535~590nmに中心波長を有する黄色の蛍光を発し、ガラス焼結層からは波長610~780nmに中心波長を有する赤色の蛍光及び/または波長500~535nmに中心波長を有する緑色の蛍光を発する性質を有しており、青色光を照射すると、発光色変換部材中を透過する青色光と結晶化ガラス基材及びガラス焼結層から発せられる蛍光とが合成されて、白色光を発する発光色変換部材であって、当該結晶化ガラス基材は、YAG結晶などのガーネット結晶中にCe3+を含む結晶を析出してなり、当該ガラス焼結層は、ガラス粉末、無機蛍光体粉末を含む混合物を焼成してなり、当該無機蛍光体粉末として、青色光を照射すると赤色の蛍光を発する『K2SiF6:Mn4+』などの蛍光体と、青色光を照射すると緑色の蛍光を発する『SrAl2O4:Eu2+』などの蛍光体を適宜組み合わせて用いたものと、 を含む、照明。」 3 本件訂正発明と先願明細書等に記載された発明との対比・検討 本件訂正発明と先願明細書等に記載された発明とを対比すると、先願明細書等に記載された発明は、本件訂正発明1、2、4、8~21の「前記蛍光体材料が光源の表面に被覆されている」、本件訂正発明5、6の「前記光源及び前記第1及び第2の蛍光体材料を取り囲むポリマーカプセル材料であって、前記第1及び第2の蛍光体材料が前記ポリマーカプセル材料中に分散されている、ポリマーカプセル材料」及び本件訂正発明7の「リフレクターカップ」という発明特定事項を具備していない点において、本件訂正発明とは相違すると認められる。 そして、これらの相違点はいずれも、発明を具体化する上での微差程度の事項(具体化手段における微差)ということもできないから、両者は実質的に同一であるとも認められない。 したがって、本件訂正発明は、先願明細書等に記載された発明と同一であるとも、実質的に同一であるとも認められない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、拡大先願についての取消理由・異議申立理由は理由がない。 第8 特許法第113条第5号(原文新規事項)に係る取消理由について 1 法条の規定 本件特許に係る出願は、特許法184条の4第1項の外国語特許出願にあたるところ、当該外国語特許出願の場合、特許法は、翻訳文新規事項の追加については取消理由とはせず(特許法第184条の18において読み替えられた同法第113条第1号)、原文新規事項の追加について取消理由とする旨規定する(特許法第184条の18において読み替えられた同法第113条第5号)。 上記の点を踏まえ、平成29年1月31日付け取消理由通知では、当該外国語特許出願に該当する本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、国際出願の明細書等に記載した事項の範囲内にあるか否かにつき、特に、下記「本件赤色複合フッ化物蛍光体」と「ピーク放出波長を特定しない青色LED」との組合せに係る態様などに着目して検討し、その結果、当該態様は、「バックライト装置」に関するものに限定解釈すべきなどの理由から、当該範囲内にあるとはいえない旨結論づけた。 以下、本件訂正後においても、当該結論が妥当であるか否かにつき、平成29年5月8日に特許権者が提出した意見書の内容も斟酌しながら検討する。 2 「本件赤色複合フッ化物蛍光体」と「ピーク放出波長を特定しない青色LED」との組合せに係る態様について (1) 本件訂正発明は、「AがLi、Na、K、Rb、Cs、NH4及びその組み合わせから選択され、MがGe、Si、Sn、Ti、Zr及びその組み合わせから選択されるA2[MF6]:Mn4+を含む、Mn4+で活性化された複合フッ化物蛍光体」(以下「本件赤色複合フッ化物蛍光体」という。)を有し、これと組み合わせる光源として、ピーク放出波長に関する特定のない「青色半導体発光ダイオード(LED)を含む光源」(以下「ピーク放出波長を特定しない青色LED」という。)を用いるものである。 (2) そこで、前記「本件赤色複合フッ化物蛍光体」と「ピーク放出波長を特定しない青色LED」との組合せに係る態様が、国際出願の明細書等に記載した事項の範囲内のものか否かについて検討する。 なお、国際出願の明細書等の記載内容を理解するにあたっては、その翻訳文(すなわち、本件特許に係る外国語特許出願の公表公報である特表2009-528429号公報に記載されたもの)を参照することとし、当該国際出願の明細書等の該当箇所を示す際には、当該公表公報の対応箇所も併記した。 (3) 「本件赤色複合フッ化物蛍光体」と「ピーク放出波長を特定しない青色LED」との組合せに係る態様については、国際出願の明細書等の[0066]~[0068]、[0074]、Fig.9、Fig.10、Fig.12、Fig.13(前記公表公報の【0024】、【0028】の実施例1、【図9】、【図10】、【図12】、【図13】)に、当該態様と関連する記載(「青色チップ」に関する記載)を認めることができる。 そして、当該[0067]、[0068]、[0074])などの記載からすると、当該態様は、「バックライト装置」に限定したものとして記載されているとまでは言い難く、また、当該「バックライト装置」は、「照明装置」の一例として記載されたものと理解するのが合理的である。 そうすると、「本件赤色複合フッ化物蛍光体」と「ピーク放出波長を特定しない青色LED」との組合せに係る上記態様は、バックライト装置、さらには照明装置に関するものとして記載されているというべきであるから、当該態様を具備する本件訂正発明は、国際出願の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないと認められる。 3 まとめ 以上のとおりであるから、原文新規事項についての取消理由は理由がない。 第9 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)に係る取消理由について 平成29年1月31日付けの取消理由通知は、本件訂正前の「カプセル材料」及び「蛍光体材料がカプセル材料中に分散されている」という発明特定事項の内容が不明確である点を指摘するものであったが、これらの点は、本件訂正により解消され、本件訂正発明5、6において、その内容は明確に記載されていると認められる。 したがって、明確性要件についての取消理由は理由がない。 第10 特許法第36条第6項第1号・第4項第1号(サポート要件・実施可能要件)に係る取消理由について 1 取消理由における指摘 平成29年1月31日付けの取消理由通知における、サポート要件及び実施可能要件に関する指摘は、おおよそ以下のとおりである。 (1) 「本件赤色複合フッ化物蛍光体」と「ピーク放出波長を特定しない青色LED」との組合せに係る態様は、バックライト装置に関するものというべきであり、また、「本件赤色複合フッ化物蛍光体」は、本件特許明細書の【0008】に記載された「Eu3+を添加した現在の赤色蛍光灯蛍光体は、紫外LEDランプ中で正常に使用することができない」点を課題の一つとして開発されたものと解され、実際、当該「本件赤色複合フッ化物蛍光体」の特性を検証する実験に際しては、同明細書の【0021】(【図5】、【図6】)のとおり、365nmの紫外光を励起光として使用していることから、当該「本件赤色複合フッ化物蛍光体」のための光源として主に予定されているのは、青色光というよりは、むしろ紫外光であると解することができる。 そうすると、「本件赤色複合フッ化物蛍光体」と「ピーク放出波長を特定しない青色LED」との組合せに係る態様を発明特定事項とし、バックライト装置以外の装置をも含む本件訂正発明については、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された範囲を超えるものといわざるを得ないから、本件特許に係る出願は、サポート要件に適合しない。 (2) さらに、バックライト装置以外の装置を含む本件訂正発明につき、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明が所期の効果を奏するように、これを製造し、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないため、本件特許に係る出願は、実施可能要件も満足しないというべきである。 2 検討 「本件赤色複合フッ化物蛍光体」と「ピーク放出波長を特定しない青色LED」との組合せに係る態様については、前記「第8」においても検討したところ、当該「第8」において、当該態様に関する記載の有無を検討した国際出願の明細書等の記載内容は、本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載内容と実質的に変わりはないから、当該「第8」における検討のとおり、当該態様は、バックライト装置、さらには照明装置に関するものとして記載されていると解するのが相当である。また、本件訂正明細書の【0006】~【0008】の記載(例えば、【0006】の「必要に応じて青色又は近紫外LEDチップと共にしようされる場合」などの記載)を総合すると、本件訂正発明の課題が、紫外光を励起光として使用する場合に特化されたものとまで解するのは妥当でない。 したがって、当該態様を発明特定事項とし、バックライト装置以外の装置をも含む本件訂正発明についても、本件訂正明細書の発明の詳細な説明に開示された範囲を超えるものということはできず、また、当該本件訂正発明につき、本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明が所期の効果を奏するように、これを製造し、使用することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないということもできない。 したがって、サポート要件及び実施可能要件についての取消理由は理由がない。 第11 結び 以上のとおりであるから、本件特許1、2、4~21は、特許法第29条又は同法第29条の2の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいえず、同法第113条第2号又は第4号に該当するとは認められない上、同法第113条第5項に該当するとも認められないから、前記取消理由及び異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、前記のとおり、本件訂正により、請求項3、22~29は削除されたので、これらの請求項に係る本件特許3、22~29に対する特許異議の申立てについては、却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2015-700157

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