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特許異議申立

2017-701230

HFCとHFOとを含有する組成物

審判番号
2017-701230
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-111628
登録番号
特許第6153562号(P6153562)
請求日
2017年12月25日
審決日
2019年06月05日
公報発行日
2019年08月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダイキン工業株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
  • 【異議申立人】鈴木 愛子
審判長/審判官
  • 審判長 冨士 良宏
  • 審判官 佐々木 秀次
  • 審判官 日比野 隆治
分類
P1651.113-YAA(C09K) / P1651.121-YAA(C09K) / P1651.16 -YAA(C09K) / P1651.536-YAA(C09K) / P1651.537-YAA(C09K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第3項、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第184条の4第3項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6153562号発明「HFCとHFOとを含有する組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6153562号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。 特許第6153562号の請求項1~2に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6153562号の請求項1~2に係る特許(以下、各請求項に係る特許を項番号に合わせて「本件特許1」、「本件特許2」といい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、平成27年6月1日(優先権主張 平成26年9月25日)に出願された特許出願であって、平成29年6月9日にその特許権の設定登録がされ、同年6月28日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、本件特許1~2に対して、同年12月25日に特許異議申立人である鈴木愛子により特許異議の申立てがなされた。 本件特許異議申立事件における手続の経緯は、以下のとおりである。 平成30年 3月26日付け:(当審)取消理由通知 同年 5月28日  :(特許権者)意見書の提出 同年 8月20日付け:(当審)取消理由通知(決定の予告) 同年10月22日  :(特許権者)意見書及び訂正請求書の提出 同年12月 6日  :(特許異議申立人)意見書の提出 同年12月21日  :(特許権者)上申書の提出 平成31年 1月15日付け:(当審)取消理由通知 同年 3月22日  :(特許権者)意見書及び訂正請求書の提出 なお、平成30年10月22日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。また、平成31年3月22日になされた訂正の請求(その訂正を、以下、「本件訂正」という。)に対して特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えたが応答はなかった。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容(訂正事項) 本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~2について訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「HFCとHFOとを含有する冷媒組成物であって、 1)HFCとしてHFC-134a及びHFC-134の少なくとも一種、 2)HFOとしてHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、 3)第三成分としてHCFC-1122、HCFC-124及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも一種を含有し、 4)前記HFCと前記HFOとの総量が、前記HFC、前記HFO及び前記第三成分の合計量を100質量%として95質量%以上である、 ことを特徴とする冷媒組成物。」 とあるのを、 「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、 1)HFCがHFC-134a及びHFC-134、 2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、 3)第三成分がHCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンであり、 4)前記HFC-134a及びHFC-134と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99. 5質量%以上であり、 5)前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCFC-1122の含有量が0.3質量%以下、前記HCFC-124の含有量が0.1質量%以下、前記CFC-1113の含有量が0.05質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である、 ことを特徴とする冷媒混合物。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2についても同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「更に冷凍機油を含有し、前記冷凍機油の含有量が組成物中10~50質量%である、請求項1に記載の冷媒組成物。」 とあるのを、 「請求項1に記載の冷媒混合物と冷凍機油とを含有する冷媒組成物であって、前記冷凍機油の含有量が前記冷媒組成物中10~50質量%である、冷媒組成物。」 に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「HFCとHFOとを含有する冷媒組成物」を「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物」として、冷媒組成物の構成成分を限定し、また、「1)HFCとしてHFC-134a及びHFC-134の少なくとも一種、2)HFOとしてHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、3)第三成分としてHCFC-1122、HCFC-124及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも一種を含有し」としていたものを、「1)HFCがHFC-134a及びHFC-134、2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、3)第三成分がHCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンであり」として、各構成成分の範ちゅう(種類)について限定するものである。 さらに、訂正事項1は、各構成成分の配合割合についても、「4)前記HFCと前記HFOとの総量が、前記HFC、前記HFO及び前記第三成分の合計量を100質量%として95質量%以上である」としていたものを、「4)前記HFC-134a及びHFC-134と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99. 5質量%以上であり、5)前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCFC-1122の含有量が0.3質量%以下、前記HCFC-124の含有量が0.1質量%以下、前記CFC-1113の含有量が0.05質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である」として限定するものである。 このように訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された冷媒組成物の構成成分、並びに、当該構成成分の範ちゅう(種類)及び配合割合を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 なお、訂正事項1は、上記構成成分の範ちゅうの明瞭化を図るものと捉えて、その目的を、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明と解することもできる。 イ 新規事項の有無 上記のとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された冷媒組成物の構成成分、並びに、当該構成成分の範ちゅう(種類)及び配合割合を限定するものであるところ、当該限定は、本件特許明細書の【0019】~【0022】に記載された実施形態1の組成物に関する記載事項、及び、【0048】~【0052】に記載された実施例1(実施形態1の冷媒組成物)に関する記載事項に基づくものであり、特に【0049】【表2】に記載された、HFC-134a+HFC134(60質量%)、HFO-1234yf(39.5質量%)、HCFC-1122(0.3質量%)、HCFC-124(0.1質量%)CFC-1113(0.05質量%)及び3,3,3-トリフルオロプロピン(0.05質量%)から構成される冷媒組成物(【0005】の記載からみて冷媒混合物と同意と解される。)からみて、当業者によって、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」(本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであると認められる。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものということができるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮(又は明瞭でない記載の釈明)を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2に係る請求項2の訂正は、「冷媒組成物」の構成成分を、訂正事項1に係る「冷媒混合物」と「冷凍機油」に限定するものである(この点も、訂正事項1に係る「冷媒混合物」という用語との異同を明瞭化したものということができる。)。 したがって、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮ないし同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 イ 新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記のとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮、あるいは、訂正事項1及び訂正事項2に伴ってなされた請求項2の記載の明瞭化にすぎないものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものと認められる。 3 小括 上記1、2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~2について訂正を求めるものであり、その訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。 第3 本件特許請求の範囲の記載 上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正後の、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を項番号に合わせて「本件発明1」及び「本件発明2」といい、まとめて「本件発明」という。)。 「【請求項1】 HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、 1)HFCがHFC-134a及びHFC-134、 2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、 3)第三成分がHCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンであり、 4)前記HFC-134a及びHFC-134と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99. 5質量%以上であり、 5)前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCFC-1122の含有量が0.3質量%以下、前記HCFC-124の含有量が0.1質量%以下、前記CFC-1113の含有量が0.05質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である、 ことを特徴とする冷媒混合物。 【請求項2】 請求項1に記載の冷媒混合物と冷凍機油とを含有する冷媒組成物であって、前記冷凍機油の含有量が前記冷媒組成物中10~50質量%である、冷媒組成物。」 第4 平成30年8月20日付けの取消理由通知(決定の予告)及び平成31年1月15日付けの取消理由通知で通知した取消理由についての判断 1 標記取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~2に係る本件特許に対して通知した標記取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号に該当)。 (2)(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号に該当)。 (3)(新規性)本件発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである(特許法第113条第2号に該当)。 (4)(進歩性)本件発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものである(特許法第113条第2号に該当)。 (5)(拡大先願)本件発明1~2は、本件特許の優先日前の外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、その優先日後に国際公開がされた下記の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許1~2は、特許法第29条の2の規定(同法第184条の13参照)に違反してされたものである(特許法第113条第2号に該当)。 2 取消理由(1)(明確性要件)について 取消理由(1)において指摘した明確性要件違反は、要するに、本件訂正前の請求項に係る組成物は、その構成成分の範ちゅうが不明瞭であるというものである(例えば、「HFC」は「HFC-134a及びHFC-134」のみから構成されるものであるのかなど)。 しかしながら、本件訂正後の請求項に係る組成物は、例えば、請求項1において、「HFC」が「HFC-134a及びHFC-134」である点が特定されるなど、その構成成分の範ちゅうは明確に把握できるものとなっており、上記の不明瞭な点は解消されているということができる。 したがって、本件訂正後の本件特許に、取消理由(1)は存しない。 3 取消理由(2)(サポート要件)について 取消理由(2)において指摘したサポート要件違反は、要するに、本件訂正前の請求項に係る組成物は、その構成成分の範ちゅうが不明瞭であることも相まって、例えば、特定のHFC、HFO以外のものが大半を占める態様など、多様な組成物を包含するものと解し得るところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、実際に、本件発明の課題(潤滑性能の向上)が解決できることが検証されている具体例は、実施例1に係る特定の態様しかなく、また、上記の多様な組成物の全般にわたって、本件発明の課題を解決することができることを類推するに足りる根拠(作用機序に関する説明や技術常識)も見当たらないから、上記本件訂正前の請求項に係る組成物の範囲(特許請求の範囲)は、発明の詳細な説明の記載から当業者が課題解決できると認識できる範囲(上記実施例1に記載された特定の態様か、これに類似する場合)に対して、広範にすぎるというものである。 しかしながら、本件訂正により、請求項に係る組成物は、その構成成分やそれらの配合割合が十分特定され、さらに、発明の詳細な説明に記載された上記実施例1、すなわち、HFC-134a+HFC134(60質量%)、HFO-1234yf(39.5質量%)、HCFC-1122(0.3質量%)、HCFC-124(0.1質量%)CFC-1113(0.05質量%)及び3,3,3-トリフルオロプロピン(0.05質量%)から構成される冷媒組成物、に対応する範囲に限定されたということができる。 そうすると、本件訂正後の請求項に係る組成物の範囲、すなわち、特許請求の範囲は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識を参酌して、当業者において、本件発明の課題が解決できると認識できる範囲、すなわち、上記実施例1に記載された特定の態様か、これに類似する場合に対して、もはや広範にすぎるものではなくなったと解するのが相当である。 したがって、本件特許に、取消理由(2)は存しない。 4 取消理由(3)、(4)(新規性、進歩性)について (1)証拠一覧 取消理由(3)、(4)において採用した、特許異議申立人が提出した証拠は以下のとおりである(以下、甲第1号証などを単に「甲1」という。)。 ・主引用例として提示された刊行物 甲1:特表2013-529703号公報 ・周知技術に関する文献 甲2:特表2003-525918号公報 甲3:特表2007-529730号公報 甲4:特表2010-533678号公報 (2)甲1の記載事項 ア-1「【請求項1】 ジフルオロメタンと、ペンタフルオロエタンと、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとを含む、熱伝達組成物。」 ア-2「【0013】 本発明の熱伝達組成物は、ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)で構成されている。 【0014】 本発明の一実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、約1重量%~97重量%のR-32、約1重量%~97重量%のR-125、約1重量%~97重量%のR-1234yf、そして約1重量%~97重量%のR-134aで構成されている。本発明の別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、重量ベースで約10%~35%のR-32、約10%~35%のR-125、約10%~60%のR-1234yf及び約10%~60%のR-134aを含む。本発明の別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、重量ベースで約15%~30%のR-32、約15%~30%のR-125、約15%~40%のR-1234yf及び約15%~40%のR-134aを含む。」 ア-3「【0019】 本発明の熱伝達組成物は、既存の冷媒、特により高いオゾン層破壊ポテンシャル(ODP)又はより高い地球温暖化ポテンシャル(GWP)を有する冷媒の代替品として使用することができる。一実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、R-134aの代替品として使用でき、好ましくはここで本発明の熱伝達組成物は、約20wt%未満のR-32、より好ましくは約15wt%未満のR-32、より好ましくは約10%未満のR-32そしてさらに一層好ましくは約2wt%~10wt%のR-32と;約20wt%未満のR-125、より好ましくは約15wt%未満のR-125、より好ましくは約10%未満のR-125、そしてさらに一層好ましくは約2wt%~10wt%のR-125とを含む。一実施形態において、本発明の熱伝達組成物はR-410Aの代替品として使用でき、好ましくはここで、本発明の熱伝達組成物は、約40wt%超のR-32、より好ましくは約50wt%超のR-32、より好ましくは約60%超のR-32そしてさらに一層好ましくは、約80wt%超のR-32を含む。一実施形態において、本発明の熱伝達組成物はR-22又はR-404Aの代替品として使用でき、好ましくはここで本発明の熱伝達組成物は、約10wt%~50wt%のR-32、より好ましくは約10wt%~30wt%のR-32を含む。」 ア-4「【0035】 【表4】 」 ア-5「【0043】 本発明の熱伝達組成物は、潤滑油と組合せて使用されてよい。例示的潤滑油には、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、鉱油、アルキルベンゼン油、ポリアルファオレフィン及びその混合物が含まれる。本発明の潤滑油は、極低粘度のものから高粘度のものまであり、好ましくは100°Fで15~800cSt、そしてより好ましくは20~100cStの粘度を有する。本発明において使用される典型的な冷凍用潤滑油は、100°Fで15、32、68及び100cStの粘度を有していた。 ・・・・・・ 【0053】 冷媒/潤滑剤混合物の熱安定性/化学安定性は、ANSI/ASHRAE規格97-2007(ASHRAE97)などの当業者にとって公知のさまざまな試験を用いて評価可能である。このような試験において、任意には触媒又は水、空気、金属、金属酸化物、セラミックなどを含めた他の材料の存在下で、冷媒と潤滑剤の混合物が、典型的には高温で規定のエージング期間中、エージングされる。エージングの後、混合物は、混合物の分解又は劣化があった場合それを評価するために分析される。試験のための典型的組成は、冷媒/潤滑剤の50/50wt/wt混合物であるが、他の組成を用いることも可能である。典型的には、エージング条件は約140℃~200℃で1~30日間であるが、175℃で14日間のエージングが非常に典型的である。」 ア-6「【0055】 冷媒/潤滑剤の組合せの安定性に対する水の効果は、非常に乾燥している(水10ppm未満)から非常に湿っている(水10000ppm超)の範囲内のさまざまな水分レベルでエージング試験を実施することにより評価可能である。酸化安定性は、空気の存在下又は不在下のいずれかでエージング試験を実施することによって評価可能である。本発明の熱伝達組成物は、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロクロロカーボン、炭水化物、ヒドロフルオロエーテル、フルオロケトン、クロロフルオロカーボン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、二酸化炭素、アンモニア、ジメチルエーテル、プロピレン及びその混合物などの他の冷媒と組合せて使用されてよい。 【0056】 例示的ヒドロフルオロカーボン(HFC)としては、ジフルオロメタン(HFC-32);1-フルオロエタン(HFC-161);1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a);1,2-ジフルオロエタン(HFC-152);1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a);1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a);1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134);1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC-125);・・・・・・、及びその混合物が含まれる。好ましいヒドロフルオロカーボンとしては、HFC-134a、HFC-32、HFC-152a、HFC-125及びその混合物が含まれる。 【0057】 例示的ヒドロフルオロオレフィン(HFO)としては、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1234zf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、特にE-異性体、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、・・・・・・及びその混合物が含まれる。好ましいヒドロフルオロオレフィンとしては3,3,3-トリフルオルプロペン(HFO-1234zf)、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)及びその混合物が含まれる。 ・・・・・・ 【0060】 例示的ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)としては、クロロ-ジフルオロメタン(HCFC-22)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HCFC-142b)、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(HCFC-141b)、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-123)及び1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)が含まれる。」 (3)甲1発明 ア 甲1発明A(任意成分を含むことを特定する場合) 甲1には、上記ア-1、ア-2の記載より、「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)とを含む、熱伝達組成物。」が記載され、上記ア-6の記載より、当該熱伝達組成物は、 「ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン」等の他の冷媒と組合せて使用されてよいこと(【0055】)、ヒドロフルオロカーボン(以下、「HFC」という。)として、「ジフルオロメタン(HFC-32)」、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)」、「1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)」、「1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC-125)」及びその混合物が含まれること(【0056】)、ヒドロフルオロオレフィン(以下、「HFO」という。)として、「1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)」、「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)」及びその混合物が含まれること(【0057】)、ヒドロクロロフルオロカーボン(以下、「HCFC」という。)として、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)が含まれること(【0060】)が、それぞれ記載されている。 そうすると、これらの記載から、「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)とを含む、熱伝達組成物。」のうち、ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)は、「HFC」に、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)は、「HFO」に、それぞれ該当すること、当該熱伝達組成物には、さらに、任意成分として、HFCである「1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)」、HFOである「1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)」、HCFCである「1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)」のいずれかを含むことができるといえるので、甲1には、「HFCとして、ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)、HFOとして2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)とを含む、熱伝達組成物において、さらに、HFCとして、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、HFOとして1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、HCFCとして、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)を含む、熱伝達組成物。」の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認められる。 イ 甲1発明B(任意成分を含むことを特定しない場合) 甲1には、上記ア-1、ア-2の記載より、「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)とを含む、熱伝達組成物。」が、また、上記ア-6の記載より、当該熱伝達組成物に含まれる「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)」は、ヒドロフルオロカーボン(以下、「HFC」という。)であること、同「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)」は、ヒドロフルオロオレフィン(以下、「HFO」という。)であることが、それぞれ記載されている。 そうすると、これらの記載から、甲1には、「HFCとして、ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)、HFOとして2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)とを含む、熱伝達組成物」の発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されていると認められる。 (4)甲1発明Aを主引用発明とする新規性・進歩性の判断 ア 本件発明1について (ア)対比 甲1発明Aの「HFCとして」「1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)」とさらに、「1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)」を含むことは、本件発明1の「1)HFCがHFC-134a及びHFC-134」であることに相当し、甲1発明Aの「HFOとして2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)」とさらに、「1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)」を含むことは、本件発明1の「2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種」であることに相当する。 甲1発明Aの「熱伝達組成物」は、上記ア-3の記載より、冷媒に用いることが明らかであることから、本件発明1の「冷媒混合物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明Aとは、「HFCがHFC-134a及びHFC-134、HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種である冷媒混合物」である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点1>(構成成分について) 構成成分について、本件発明1は、 「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、 1)HFCがHFC-134a及びHFC-134、 2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、 3)第三成分がHCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピン」であると特定しているのに対して、 甲1発明Aは、さらに「HFCとして、ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を必須成分とし、「HCFCとして、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)」を構成成分として含むものであり、本件発明1においてHFCの必須成分となっていない「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を含み、第三成分として「1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)」以外の残り3つの化合物を含有していない点。 <相違点2>(各構成成分の配合割合について) 各構成成分の配合割合について、本件発明1は、 「4)前記HFC-134a及びHFC-134と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99. 5質量%以上であり、 5)前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCFC-1122の含有量が0.3質量%以下、前記HCFC-124の含有量が0.1質量%以下、前記CFC-1113の含有量が0.05質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である」 と特定しているのに対して、 甲1発明Aは、各構成成分の配合割合について特定していない点。 (イ)相違点1(構成成分について)の検討 甲1には、甲1発明AにおいてHFCの必須成分となっている「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を、任意成分とする動機付けは存在しない。また、周知文献として採用した甲2~4には、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)を製造する際に含有される不純物についての記載は認められるものの、当該動機付けとなるような記載は見当たらない。 したがって、甲1発明Aの「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を任意成分として、上記相違点1に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到し得るものではない。 そして、本件発明1は、当該相違点1に係る構成及び上記相違点2に係る構成を備えることにより、本件特許明細書の【0015】などに記載された「潤滑性能の向上」という甲1発明Aなどからは予測し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 よって、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明Aであるとはいえないし、当該相違点1に係る本件発明1の構成、なかでも、構成成分であるHFC及びHFOに関する構成がそもそも容易想到の事項でない以上、上記した第三成分の有無や、各構成成分の配合割合に係る相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明Aに基づいて当業者が容易に想到し得るものでもない。 イ 本件発明2について 本件発明2に係る冷媒組成物は、本件発明1に係る冷媒混合物を含有するものであるから、上記相違点1は、本件発明2と甲1発明Aの対比においても生じるものである。そして、当該相違点が容易想到の事項でないことは上記のとおりである。 したがって、本件発明2も、甲1発明Aであるとはいえないし、甲1発明Aから容易に想到し得るものではない。 (5)甲1発明Bを主引用発明とする新規性・進歩性の判断 ア 本件発明1について (ア)対比 甲1発明Bは、「HFCとして」「1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)」を含んでおり、本件発明1の「1)HFCがHFC-134a及びHFC-134」の一方を含む点で共通しており、甲1発明Bの「HFOとして2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)」を含むことは、本件発明1の「2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種」であることに相当する。 甲1発明Bの「熱伝達組成物」は、上記ア-3の記載より、冷媒に用いることが明らかであることから、本件発明1の「冷媒混合物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明Bとは、「HFCがHFC-134a、HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種である冷媒混合物」である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点3>(構成成分について) 構成成分について、本件発明1は、 「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、 1)HFCがHFC-134a及びHFC-134、 2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、 3)第三成分がHCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピン」であると特定しているのに対して、 甲1発明Bは、HFCとして、「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を必須成分とし、「1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)」を含まず、第三成分として「1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)」以外の残り3つの化合物を含有していない点。 <相違点4>(各構成成分の配合割合について) 各構成成分の配合割合について、本件発明1は、 「4)前記HFC-134a及びHFC-134と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99. 5質量%以上であり、 5)前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCFC-1122の含有量が0.3質量%以下、前記HCFC-124の含有量が0.1質量%以下、前記CFC-1113の含有量が0.05質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である」 と特定しているのに対して、 甲1発明Bは、各構成成分の配合割合について特定していない点。 (イ)相違点3(構成成分について)の検討 甲1には、甲1発明BにおいてHFCの必須成分となっている「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を、任意成分とすること、「1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)」を必須成分とすることの動機付けは存在しない。また、周知文献として採用した甲2~4には、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)を製造する際に含有される不純物についての記載は認められるものの、当該動機付けとなるような記載は見当たらない。 したがって、甲1発明Bの「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を任意成分として、さらに、「1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)」を必須成分として、上記相違点3に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到し得るものではない。 そして、本件発明1は、当該相違点3に係る構成及び上記相違点4に係る構成を備えることにより、本件特許明細書の【0015】などに記載された「潤滑性能の向上」という甲1発明Bなどからは予測し得ない顕著な作用効果を奏するものである。 よって、上記相違点3は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明Bであるとはいえないし、当該相違点1に係る本件発明1の構成、なかでも、構成成分であるHFC及びHFOに関する構成がそもそも容易想到の事項でない以上、上記した第三成分の有無や、各構成成分の配合割合に係る相違点4について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明Bに基づいて当業者が容易に想到し得るものでもない。 イ 本件発明2について 本件発明2に係る冷媒組成物は、本件発明1に係る冷媒混合物を含有するものであるから、上記相違点3は、本件発明2と甲1発明Bの対比においても生じるものである。そして、当該相違点が容易想到の事項でないことは上記のとおりである。 したがって、本件発明2も、甲1発明Bであるとはいえないし、甲1発明Bから容易に想到し得るものではない。 (6)小括 以上のとおり、本件特許に、取消理由(3)、(4)は存しない。 5 取消理由(5)(拡大先願)について (1)証拠(先願) 標記取消理由において採用した、特許異議申立人が提出した証拠は以下のとおりである。 ・先願(甲5に係る出願) 外国語特許出願:PCT/US2014/065610 (国際公開第2015/077134号) パテントファミリー:特願2016-555452号 (特表2017-503907号公報) 以下、当該外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面を「甲5明細書等」という。また、当該「甲5明細書等」に記載された事項については、便宜上、パテントファミリーである特願2016-555452号の公表公報(特表2017-503907号公報)を訳文として使用し、該当箇所(段落番号等)についても、当該公表公報(訳文)の該当箇所をそのまま示すこととする。 (2)甲5明細書等の記載事項 ア「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、および1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、熱伝達組成物。」 イ「【0001】 本発明は、冷凍、空調、ヒートポンプシステム、冷却器、および他の熱伝達利用分野において使用するための、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、および1,1,2,2-テトラフルオロエタンを含む熱伝達組成物に関する。発明的な熱伝達組成物は、優れた能力および性能を提供する一方で、低い地球温暖化ポテンシャルを有することができる。」 ウ「【0011】 本発明においては、低いGWPのみならず能力と性能の間の予想外に優れた平衡を有する熱伝達組成物が発見された。好ましくは、本発明の熱伝達組成物は低い可燃性を有し、より好ましくは本発明の熱伝達組成物は不燃性であり、さらに一層好ましくは、本発明の熱伝達組成物は不燃性でかつさまざまな漏洩シナリオの後でも不燃性であり続け、さらに一層好ましくは、ASHRAE SSPC34にしたがった不燃性を有する。本発明の別の実施形態は、R-422Dなどの少量の炭化水素を取込んだものを含め、熱伝達装置内においてHFC冷媒に比べ改善された油の戻り特性を有する冷媒組成物である。いかなる形であれ本発明の範囲を限定することは意図されていないものの、本発明の熱伝達組成物は、新規の冷凍、空調、ヒートポンプ、冷却器、または他の熱伝達装置において有用である。別の実施形態において、本発明の熱伝達組成物は、R-22、R-407C、R-427A、R-404A、R-507、R-407A、R-407F、R-417A、R-422D他を含む(ただしこれらに限定されない)既存の装置内の冷媒のためのレトロフィットとして有用である。 ・・・・・・ 【0013】 本発明の熱伝達組成物は、ジフルオロメタン(HFC-32すなわちR-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125すなわちR-125)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234zeすなわちR-1234ze)、および1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134すなわちR-134)からなっている。HFO-1234zeは、cis-異性体、trans-異性体、またはそれらの混合物であってよく、本発明の極めて好ましい実施形態においては、HFO-1234zeが、trans-異性体(HFO-1234ze(E)すなわちR-1234ze(E))である。 【0014】 本発明の一実施形態において、その熱伝達は、約1重量%~97重量%のR-32、約1重量%~97重量%のR-125、約1重量%~97重量%のR-1234ze、そして約1重量%~97重量%のR-134からなっている。」 エ「【0022】 本発明の熱伝達組成物は、例えば以下の冷媒(これらの限定される訳ではない)と組み合わせて使用してもよい:ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロクロロカーボン、炭化水素、ヒドロフルオロエーテル、フルオロケトン、クロロフルオロカーボン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、二酸化炭素、アンモニア、ジメチルエーテル、プロピレンおよびそれらの混合物。 【0023】 ヒドロフルオロカーボン(HFC)の例としては、以下のものが挙げられる:ジフルオロメタン(HFC-32);1-フルオロエタン(HFC-161);1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a);1,2-ジフルオロエタン(HFC-152);1,1,1-トリフルオロエタン(HFC-143a);1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143);1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a);1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134);1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC-125);・・・・・・、およびそれらの混合物。好ましいヒドロフルオロカーボンとしては、HFC-134a、HFC-32、HFC-152a、HFC-125およびそれらの混合物が挙げられる。 【0024】 ヒドロフルオロオレフィン(HFO)の例としては、以下のものが挙げられる:3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1234zf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、特にE-異性体、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1255ye)、特にZ-異性体、・・・・・・およびそれらの混合物。好ましいヒドロフルオロオレフィンとしては3,3,3-トリフルオルプロペン(HFO-1234zf)、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)およびそれらの混合物が挙げられる。 ・・・・・・ 【0027】 ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の例としては、以下のものが挙げられる:クロロ-ジフルオロメタン(HCFC-22)、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン(HCFC-142b)、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(HCFC-141b)、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-123)および1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)。 ・・・・・・ 【0031】 本発明の一実施形態において、本発明の熱伝達組成物にはさらに、HFO-1234yf、HFC-134a、およびそれらの混合物から選択される冷媒が、好ましくは全熱伝達組成物の約1重量%~50重量%、より好ましくは全熱伝達組成物の約1重量%~25重量%の量で含まれていてもよい。本発明の別の実施形態においては、本発明の熱伝達組成物にはさらに、HFO-1234yfとHFC-134aとの組合せが含まれていてもよく、好ましくはそのHFO-1234yfとHFC-134aとの組み合わせが、約25重量%~75重量%のHFO-1234yf、好ましくは約45重量%~65重量%のHFO-1234yfである。」 オ「【0035】 本発明の範囲を何らかの形で限定することが意図されているわけではないが、R-22、R-407C、R-404A、および/またはR-507の代替品として使用するための本発明の熱伝達組成物の例が表1に示されている。組成における少しの変動、例えば±2重量%以内、好ましくは±1重量%以内(これらの数値に限定される訳ではない)の組成の変動は本発明の範囲内であると考えるべきであるということは理解されたい。 【0036】 【表1】 」 カ「【0055】 本発明の熱伝達組成物は、潤滑油と組合せて使用されてよい。例示的潤滑油には、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、鉱油、アルキルベンゼン油、ポリアルファオレフィンおよびその混合物が含まれる。本発明の潤滑油は、極低粘度のものから高粘度のものまであり、好ましくは100°Fで15~800cSt、そしてより好ましくは20~100cStの粘度を有する。本発明において使用される典型的な冷凍用潤滑油は、100°Fで15、32、68および100cStの粘度を有していた。 ・・・・・・・ 【0062】 冷媒/潤滑剤混合物の熱安定性/化学安定性は、ANSI/ASHRAE規格97-2007(ASHRAE97)などの当業者にとって公知のさまざまな試験を用いて評価可能である。このような試験において、任意には触媒または水、空気、金属、金属酸化物、セラミックなどを含めた他の材料の存在下で、冷媒と潤滑剤の混合物が、典型的には高温で規定のエージング期間中、エージングされる。エージングの後、混合物は、混合物の分解または劣化があった場合それを評価するために分析される。試験のための典型的組成は、冷媒/潤滑剤の50/50 wt/wt混合物であるが、他の組成を用いることも可能である。典型的には、エージング条件は約140℃~200℃で1~30日間であるが、175℃で14日間のエージングが非常に典型的である。」 (3)甲5発明 甲5明細書等には、上記ア~ウの記載より、「ジフルオロメタン(HFC-32すなわちR-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125すなわちR-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134すなわちR-134)、および、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234zeすなわちR-1234ze)を含む、熱伝達組成物。」が記載され、上記エの記載より、当該熱伝達組成物は、 「ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロオレフィン」等の他の冷媒と組合せて使用してよいこと(【0022】)、ヒドロフルオロカーボン(以下、「HFC」という。)として、「ジフルオロメタン(HFC-32)」、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)」、「1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)」、「1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(HFC-125)」及びその混合物が含まれること(【0023】)、ヒドロフルオロオレフィン(以下、「HFO」という。)として、「1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)」、「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)」及びその混合物が含まれること(【0024】)、ヒドロクロロフルオロカーボン(以下、「HCFC」という。)として、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)が含まれること(【0027】)が、それぞれ記載されている。 そうすると、これらの記載から、「ジフルオロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、および、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を含む、熱伝達組成物。」のうち、ジフルオロメタン、ペンタフルオロエタン及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンは、「HFC」に、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、「HFO」に、それぞれ該当すること、当該熱伝達組成物には、さらに、HFCとして、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)」、HFOとして「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)」、HCFCとして、「1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)」のいずれかを含むことができるといえるので、甲5明細書等には、 「HFCとして、ジフルオロメタン(HFC-32)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)及び1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、HFOとして1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)とを含む、熱伝達組成物において、さらに、HFCとして、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、HFOとして2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、HCFCとして、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)を含む、熱伝達組成物。」の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 (4)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明の「HFCとして」「1,1,2,2-テトラフルオロエタン(R-134)」とさらに、「1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)」を含むことは、本件発明1の「1)HFCがHFC-134a及びHFC-134」であることに相当し、甲5発明の「HFOとして1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)」とさらに、「2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(R-1234yf)」を含むことは、本件発明1の「2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種」であることに相当する。 甲5発明の「熱伝達組成物」は、上記イ、ウの記載より、冷媒に用いることが明らかであることから、本件発明1の「冷媒混合物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲5発明とは、「HFCがHFC-134a及びHFC-134、HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種である冷媒混合物」である点で一致し、以下の点で相違している。 <相違点5>(構成成分について) 構成成分について、本件発明1は、 「HFCとHFOと第三成分とからなる冷媒混合物であって、 1)HFCがHFC-134a及びHFC-134、 2)HFOがHFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、 3)第三成分がHCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピン」であると特定しているのに対して、 甲5発明は、さらに「HFCとして、ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を必須成分とし、「HCFCとして、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)」を構成成分として含むものであり、本件発明1においてHFCの必須成分となっていない「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を含み、第三成分として「1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)」以外の残り3つの化合物を含有していない点。 <相違点6>(各構成成分の配合割合について) 各構成成分の配合割合について、本件発明1は、 「4)前記HFC-134a及びHFC-134と前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種との総量が、前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として99. 5質量%以上であり、 5)前記HFC-134a及びHFC-134、前記HFO-1234yf及びHFO-1234zeの少なくとも一種、並びに、前記HCFC-1122、HCFC-124、CFC-1113及び3,3,3-トリフルオロプロピンの合計量を100質量%として、前記HCFC-1122の含有量が0.3質量%以下、前記HCFC-124の含有量が0.1質量%以下、前記CFC-1113の含有量が0.05質量%以下、及び前記3,3,3-トリフルオロプロピンの含有量が0.05質量%以下である」 と特定しているのに対して、 甲5発明は、各構成成分の配合割合について特定していない点。 イ 相違点5(構成成分について)の検討 「甲5明細書等」には、甲5発明においてHFCの必須成分となっている「ジフルオロメタン(R-32)、ペンタフルオロエタン(R-125)」を、任意成分とすることについては何ら記載されていない。また、当該HFCの構成成分を任意成分とすることが、課題解決のための具体化手段における微差であると解するに足りる証拠は見当たらない。 したがって、上記第三成分の有無や、各構成成分の配合割合に係る相違点6について判断するまでもなく、本件発明1は、甲5発明と同一であるとも、実質同一であるともいえない。 (5)本件発明2について 本件発明2に係る冷媒組成物は、本件発明1に係る冷媒混合物を含有するものであるから、上記相違点5は、本件発明2と甲5発明の対比においても生じるものである。そして、当該相違点が実質的なものであり、課題解決のための具体化手段における微差程度のものでもないことは、上記のとおりである。 したがって、本件発明2も、甲5発明と同一であるとも、実質同一であるともいえない。 (6)小括 以上のとおり、本件特許に、取消理由(5)は存しない。 6 まとめ 以上の検討のとおり、平成30年8月20日付けの取消理由通知(決定の予告)及び平成31年1月15日付けの取消理由通知で通知した取消理由については、いずれも理由がない。 第5 平成30年3月26日付け取消理由通知で通知した取消理由についての判断 1 標記取消理由通知においては、上記第4において検討した取消理由のほかに、実施可能要件、サポート要件及び明確性要件に関する取消理由(上記第4で検討した事項とは異なる記載不備に関するもの)を通知した。 以下、これらの取消理由について検討をする(なお、これらの取消理由についての判断は、既に平成30年8月20日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載している。)。 2 上記実施可能要件、サポート要件及び明確性要件についての取消理由は、次の2点に起因するものである。 ・本件特許明細書に記載された「摩耗試験」及び「焼き付け試験」の内容が明確でない点。 ・本件発明は、第三成分の含有量の下限値についての規定がない点。 しかしながら、特許権者が平成30年5月28日に提出した意見書に添付された乙第4号証(山口英宏ら著「代替冷媒環境下におけるコンプレッサ材の摩擦摩耗特性に及ぼす冷凍機油添加剤の影響」、日本冷凍空調学会論文集、Trans.of the JSRAE、Vol.16、No.3(1999)、pp.229~238)のFig.3に記載された高圧冷媒雰囲気摩擦摩耗試験器などを参酌すると、冷媒(冷凍機油)に関する試験を熟知する当業者であれば、本件特許明細書に記載された「摩耗試験」及び「焼き付け試験」を理解し、これを行うことは可能であると解するのが妥当であるから、これらの試験内容の不明確さを論拠とする実施可能要件違反及びサポート要件違反を認めることはできない。 また、第三成分の含有量の下限値についての規定がないことのみによって、ただちに、本件発明の内容が明確でなくなるわけではないから、明確性要件違反についても認められない。 したがって、当該取消理由に理由があるとはいえない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断 特許異議申立書に記載された特許異議申立理由は、上記第4及び第5において検討した取消理由と重複するものである。 したがって、当該特許異議申立理由に理由があるとはいえない。 第7 結び 以上のとおり、本件特許1~2は、特許法第29条又は第29条の2の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第4項第1号又は第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるともいえず、同法第113条第2号又は第4号のいずれにも該当するものではないから、上記取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、ほかに本件特許1~2を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-701230

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