特許拒絶査定不服審判
2015-019138
対のMD接結ヤーンを有する製紙機用多層フォーミング織物
- 審判番号
- 2015-019138
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-115768外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年10月23日
- 審決日
- 2016年10月04日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ウィーヴェックス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
- 【請求人代理人】奥山 尚一
- 【請求人代理人】有原 幸一
- 【請求人代理人】松島 鉄男
- 【請求人代理人】河村 英文
- 分類
- P18 .113-Z (D21F) / P18 .575-Z (D21F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-115768「対のMD接結ヤーンを有する製紙機用多層フォーミング織物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日出願公開、特開2013-224507〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成22年2月10日を国際出願日とする特願2011-551121の一部を平成25年5月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年2月25日、アメリカ合衆国、2009年11月18日、アメリカ合衆国、2009年12月15日、アメリカ合衆国、2010年2月4日、アメリカ合衆国)に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。(なお、上記特願2011-551121号を、以下、「原出願」という。)
平成25年5月31日 上申書提出
平成26年8月27日付け 拒絶理由通知
平成26年12月25日 意見書提出
平成27年6月22日付け 拒絶査定
平成27年10月23日 本件審判請求、同時に手続補正書提出
第2 平成27年10月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年10月23日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1. 補正の内容
上記平成27年10月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本願出願当初の特許請求の範囲を補正するもので、請求項1についての補正を含むところ、本件補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1) 補正前
「【請求項1】
一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物において、前記繰返しユニットの各々は、
一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、前記トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、トップ側CMDヤーンと、
一組のボトム側MDヤーンと、
一組のボトム側CMDヤーンであって、前記ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、
前記トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれた一組のMD縫合ヤーンと、
を備えており、
前記トップ側MDヤーン、前記トップ側CMDヤーン、および前記縫合ヤーンは、前記トップ側織物層上に綾織製紙面を形成するように、織り込まれており、
前記ボトム側MDヤーンの各々は、それぞれのボトム側CMDヤーンの下に複数のナックルを形成しており、前記縫合ヤーンの各々は、それぞれのボトム側CMDヤーンの下に少なくとも1つのナックルを形成しており、前記縫合ヤーンのナックルは、いずれも、隣接するボトム側MDヤーンが下にナックルを形成しているボトム側CMDヤーンの下に形成されていないことを特徴とする製紙機用織物。」
(2) 補正後
「【請求項1】
一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物において、前記繰返しユニットの各々は、
一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、前記トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、トップ側CMDヤーンと、
一組のボトム側MDヤーンと、
一組のボトム側CMDヤーンであって、前記ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、
前記トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれた一組のMD縫合ヤーンと、
を備えており、
前記トップ側MDヤーン、前記トップ側CMDヤーン、および前記縫合ヤーンは、前記トップ側織物層上に綾織製紙面を形成するように、織り込まれており、前記トップ側織物層は、複数のナックルを前記トップ側CMDヤーンの上に備え、前記複数のナックルが前記トップ側織物層上に連続的な斜線を形成し、
前記ボトム側MDヤーンの各々は、それぞれのボトム側CMDヤーンの下に複数のナックルを形成しており、前記縫合ヤーンの各々は、それぞれのボトム側CMDヤーンの下に少なくとも1つのナックルを形成しており、前記縫合ヤーンのナックルは、いずれも、隣接するボトム側MDヤーンが下にナックルを形成しているボトム側CMDヤーンの下に形成されていないことを特徴とする製紙機用織物。」
2. 補正の適否
本件補正のうち、上記請求項1についてするものは、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記トップ側MDヤーン、前記トップ側CMDヤーン、および前記縫合ヤーン」について、「前記トップ側織物層は、複数のナックルを前記トップ側CMDヤーンの上に備え、前記複数のナックルが前記トップ側織物層上に連続的な斜線を形成し、」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、上記本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
(1) 刊行物記載の事項及び発明
原査定の拒絶の理由に引用された原出願優先日前に頒布された刊行物である特開2008-57052号公報(上記拒絶理由の「引用文献2」、拒絶査定の「引用文献1」である。)には、図面とともに、以下の記載がある。
ア.
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側経糸とほぼ上下に配置される下経接結糸とを下経接結糸の組とし、下面側経糸とほぼ上下に配置される上経接結糸とを上経接結糸の組とする工業用二層織物において、下経接結糸の組では、上面側経糸が織物組織上本来通るべき上面側緯糸の上側を通らず、組になった下経接結糸が該上面側緯糸の上を通り、上面側表面に経糸1本分の組織を形成し、該下経接結糸と下面側緯糸が織り合わされて下面側表面に経糸1本分の組織を形成しており、上経接結糸の組では、下面側経糸が織物組織上本来通るべき下面側緯糸の下側を通らず、組になった上経接結糸が該下面側緯糸の下を通り、下面側表面に経糸1本分の組織を形成し、該上経接結糸と上面側緯糸が織り合わされて上面側表面に経糸1本分の組織を形成しており、完全組織中に、前記上経接結糸の組と前記下経接結糸の組とが各1組以上存在することを特徴とする工業用二層織物。」
イ.
「【技術分野】
【0001】
本発明は製紙用織物や搬送用ベルト、ろ布等の無端状工業用二層織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から工業用織物としては経糸、緯糸で製織した織物が広く使用されており、具体的には抄紙用織物や搬送用ベルト、ろ布等が挙げられ、夫々その使用用途や使用環境に適した織物特性が要求されている。特に織物の網目を利用して原料の脱水を行う抄紙用織物に対する要求は厳しく、紙に織物のワイヤーマークが転写されにくい表面平滑性、また原料に含まれる余分な水分を十分脱水するための脱水性、過酷な環境下においても好適に使用することができる程度の剛性、耐摩耗性、そして良好な紙を製造するために必要な条件を長期間持続することができる織物としての特性が要求されている。その他にも繊維支持性、製紙の歩留まりの向上、寸法安定性、走行安定性等が要求されている。さらに近年では抄紙マシンが高速化しているため、それに伴い抄紙用織物への要求も一段と厳しいものとなっている。
このように工業用織物の中でも要求が最も厳しい抄紙用織物について説明すればほとんどの工業用織物の要求とその解決について理解できるので、以下抄紙用織物を代表して本発明を説明する。」
ウ.
「【実施例】
【0028】
本発明の工業用二層織物に係る実施例について、図面を参照して説明する。
図1~9は本発明の実施例であって、意匠図を示している。意匠図とは織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3で示し、そのうち上面側経糸と下経接結糸からなる下経接結糸の組はaを付した数字、例えば1a、3aで示し、下面側経糸と上経接結糸からなる上経接結糸の組はbを付した数字、例えば1b、3bで示し、上面側経糸と下面側経糸からなる経糸の組は1、2、3で示した。緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1’、2’、3’で示した。配置比率によって上面側緯糸と下面側緯糸が上下に配置されている場合と、上面側緯糸のみの場合がある。
【0029】
また、×印は上面側経糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、□印は下面側経糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。●印は上経接結糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印はその上経接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。そして、◆印は下経接結糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、◇印はその下経接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。」
エ.
「【0039】
(実施例8)
図8は本発明の実施例8の織物の意匠図である。実施例7では経糸10組、20本から構成された織物であったが、本実施例は経糸12組、24本の経糸からなる。そして、上経接結糸の組と下経接結糸の組が配置され、その後、2組の上下経糸の組が連続して配置される。上面側緯糸と下面側緯糸は実施例4と同様の1:1の配置である。
このように、接結糸の組と上下経糸の組の割合を変えても構わなく何ら問題はない。そして前実施例同様ナックル高さ、織物密度が均一となる。
上面側表面組織は実施例3と同じで組織であり、1本の上面側緯糸の上、3本の上面側緯糸の下を通る1/3組織、そして上面側緯糸は1本の経糸の下を通り、次いで3本の経糸の上を通る1/3組織を形成している。そして、下面側表面は下面側緯糸が経糸3本分のロングクリンプを形成する組織であり、剛性、走行安定性に優れる。
前実施例と同様に、織物上下層の緩み、ナックルの表面高さの不均一性がなく、密着性、ろ水性も均一にすることができる。」
オ.【図8】
カ.
上記摘記事項ウ.の、「図1~9は本発明の実施例であって、意匠図を示している。意匠図とは織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。」との記載、及び、上記摘記事項エ.の「図8は本発明の実施例8の織物の意匠図である。」との記載から、刊行物に記載の「抄紙用織物」は、図8の意匠図で示された一連の繰り返し単位を備えたものであるといえる。
キ.
上記摘記事項ウ.の「本発明の工業用二層織物」との記載、及び、上記摘記事項エ.の「前実施例と同様に、織物上下層の緩み、ナックルの表面高さの不均一性がなく、密着性、ろ水性も均一にすることができる。」との記載から、刊行物に記載の「工業用二層織物」は、上下に配置された二つの「層」から構成されていて、それぞれを「上層」及び「下層」と呼ぶことができる。
ク.
上記摘記事項ウ.の「意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3で示し、そのうち上面側経糸と下経接結糸からなる下経接結糸の組はaを付した数字、例えば1a、3aで示し、下面側経糸と上経接結糸からなる上経接結糸の組はbを付した数字、例えば1b、3bで示し、上面側経糸と下面側経糸からなる経糸の組は1、2、3で示した。緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1’、2’、3’で示した。配置比率によって上面側緯糸と下面側緯糸が上下に配置されている場合と、上面側緯糸のみの場合がある。」との記載、及び、「また、×印は上面側経糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、□印は下面側経糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。●印は上経接結糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印はその上経接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。そして、◆印は下経接結糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、◇印はその下経接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。」との記載、並びに、上記オ.に図示された意匠図について検討する。
「a」あるいは「b」が付されていない、図8の右図に示された「3」には、「上面側緯糸」が「上面側経糸」に織り込まれて「上層」を形成していることの図示があり、下面側緯糸」が「下面側経糸」に織り込まれていることの図示がある。そして図8をみると、「a」あるいは「b」が付されていない位置の「上側経糸」、「上側緯糸」、「下側経糸」、「上側緯糸」のそれぞれは複数本有るから、刊行物記載の「繰り返し単位」は、それぞれ複数本ある「上側経糸」、「上側緯糸」、「下側経糸」、「上側緯糸」から構成される。ここで、本願明細書の「繰返しユニットの各々は、一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、トップ側CMDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組のボトム側CMDヤーンであって、ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、を備えている。各ボトム側MDヤーンは、そのごく隣接するトップ側MDヤーンが下を通っているトップ側CMDヤーンの上を通っている。」(段落【0013】)との記載から、補正発明において、「製紙機用織物」を構成する「繰返しユニット」を構成する「トップ側MDヤーン」等の「ヤーン」をその種類毎にまとめて「一組」と呼称しているから、刊行物記載の「繰り返し単位」に含まれる、それぞれの「複数本」の「糸」についても、ひとまとめにして「一組」ということができる。
「上面側経糸と下経接結糸からなる」「a」が付された「経糸」について、図8の右図の「3a」を見ると、「下経接結糸」が、「上面側緯糸」及び「下面側緯糸」に対して織り込まれたものであることが、図示されている。そして、それらをまとめて、「一組」ということができる。
図8の左図に記載された●、◆、×について、上記の摘記事項ウ.の記載から、上面の表面に現れる「経糸」は、●、◆、×が付された位置のみであることは明らかであるところ、図8の左図には、「●、◆、×」のいずれからが付された位置は、斜めの方向に一直線に配置されたものが平行に何本も走っていることの図示がある。さらに、上記摘記事項イ.の「以下抄紙用織物を代表して本発明を説明する」との記載を踏まえると、引用発明の「工業用二層織物」を、「抄紙用織物」に用いたならば、当該「上面の表面」が製紙面となることは、技術常識である。そして、経糸と緯糸からなる織物のうち、経糸緯糸の交錯する点が斜め方向に走る一直線のように見える織物の組織を一般に「綾織」ということを踏まえると、刊行物に記載されたものは、「上層に綾織製紙面」を形成するものであるといえる。さらに、●、◆、×を構成する「経糸」のうち、◆は「下経接結糸」で、×は「上面側経糸」がそれぞれ「上面側緯糸」に織り込まれたものであるから、刊行物には、「上面側経糸、上面側緯糸、および下経接結糸は、上層に綾織製紙面を形成するように、織り込まれ」たものであるといえる。
上記の摘記事項ウ.には、□が付された位置について、「下面側経糸が下面側緯糸の下側に位置」することを示すものであり、さらに、そうした位置では「下面側緯糸」の下に「下面側経糸」の「ナックル」が形成されることは技術常識である。そうすると、「経糸」が「下面型経糸」にあたる、図8の左図に図示されたアラビア数字のみの位置、及び、「b」が付された位置を見ると、それぞれの位置は、「経糸」に沿って□が複数付されていることの図示があるから、刊行物に記載された「下面側経糸」の各々は、ぞれぞれの「下面側緯糸」の下に複数の「ナックル」を形成していることは明らかである。
また、上記摘記事項ウ.によれば、◇が付された位置は、「その下経接結糸が下面側緯糸の下側に位置」を示すものであり、そこでは、「下経接結糸」が、「下面側緯糸」の下に複数の「ナックル」を形成することは技術常識である。そして、図8の左図の、「a」が付された位置を見ると、「経糸」に沿って、◇が複数付された位置があるから、刊行物に記載された「下経接結糸」のそれぞれが、「下面側緯糸」の下に少なくとも1つの「ナックル」を形成したものであることは、明らかである。
そして、図8の左図に示された上記□と◇が付された位置をみると、全ての◇の左右に隣接した位置には□が付されていないから、「下経接結糸」の「ナックル」は、いずれも、隣接する「下面側経糸」が下に「ナックル」を形成している「下側緯糸」の下に形成されていないことは明らかである。
上記摘記事項ア.ないしエ、オの図示、並びに、認定事項カないしクを、技術常識を考慮して整理すると、刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものといえる。
「一連の繰り返し単位を備えている抄紙用織物において、前記繰り返し単位の各々は、
一組の上面側経糸と、
一組の上面側緯糸であって、前記上面側経糸に織り込まれ、上層を形成している、上面側緯糸と、
一組の下面側経糸と、
一組の下面側緯糸であって、前記下面側経糸に織り込まれ、下層を形成している、一組の下面側緯糸と、
前記上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた一組の下経接結糸と、
を備えており、
前記上面側経糸、前記上面側緯糸、および前記下経接結糸は、前記上層に綾織製紙面を形成するように、織り込まれており、
前記下面側経糸の各々は、それぞれの下面側緯糸の下に複数のナックルを形成しており、前記下経接結糸の各々は、それぞれの下面側緯糸の下に少なくとも1つのナックルを形成しており、前記下経接結糸のナックルは、いずれも、隣接する下面側経糸が下にナックルを形成している下側緯糸の下に形成されていない抄紙用織物。」
(2) 対比
補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「繰り返し単位」は、補正発明の「繰り返しユニット」に相当する。
引用発明の「上面側経糸」、「上面側緯糸」、「下面側経糸」及び「下面側緯糸」は、補正発明の「トップ側マシン方向(MD)ヤーン」、「トップ側マシン横断方向(CMD)ヤーン」、「ボトム側MDヤーン」及び「ボトム側CMDヤーン」にそれぞれ相当する。
引用発明の「上層」及び「下層」は、それぞれ「トップ側織物層」及び「ボトム側織物層」にそれぞれ相当する。
引用発明の「縫合ヤーン」は、補正発明の「下経接結糸」に相当する。
引用発明の「抄紙用織物」は、補正発明の「製紙機用織物」に相当する。
そうすると、補正発明と引用発明は以下の点で一致し、かつ、一応相違する。
<一致点>
一連の繰返しユニットを備えている製紙機用織物において、前記繰返しユニットの各々は、
一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンであって、前記トップ側MDヤーンに織り込まれ、トップ側織物層を形成している、トップ側CMDヤーンと、
一組のボトム側MDヤーンと、
一組のボトム側CMDヤーンであって、前記ボトム側MDヤーンに織り込まれ、ボトム側織物層を形成している、一組のボトム側CMDヤーンと、
前記トップ側CMDヤーンおよびボトム側CMDヤーンに織り込まれた一組のMD縫合ヤーンと、
を備えており、
前記トップ側MDヤーン、前記トップ側CMDヤーン、および前記縫合ヤーンは、前記トップ側織物層上に綾織製紙面を形成するように、織り込まれており、
前記ボトム側MDヤーンの各々は、それぞれのボトム側CMDヤーンの下に複数のナックルを形成しており、前記縫合ヤーンの各々は、それぞれのボトム側CMDヤーンの下に少なくとも1つのナックルを形成しており、前記縫合ヤーンのナックルは、いずれも、隣接するボトム側MDヤーンが下にナックルを形成しているボトム側CMDヤーンの下に形成されていないことを特徴とする製紙機用織物。
<相違点>
補正発明の「トップ側織物層」は、複数の「ナックル」を「トップ側CMDヤーン」の上に備え、複数の「ナックル」が「トップ側織物層上に連続的な斜線を形成」するものであるのに対し、引用発明の「上層」がそのようなものであるか、不明である点。
(3) 相違点についての判断
上記(1)オ.の図8に示された「意匠図」について、刊行物には、上記(1)の摘記事項ウ.の「また、×印は上面側経糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、□印は下面側経糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。●印は上経接結糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印はその上経接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。そして、◆印は下経接結糸が上面側緯糸の上側に位置していることを示し、◇印はその下経接結糸が下面側緯糸の下側に位置していることを示す。」との記載がある。当該記載によれば、「上面側緯糸」の上側に、何らかの糸が位置しているのは、当該意匠図において、「×」、「●」、「◆」で示されている箇所である。そして、図8の意匠図を見ると、そのような箇所が「繰り返し単位」の上層上に連続的な斜線を形成するように配置されていることが看取できる。さらに、当該箇所は、「上面側緯糸」の上に「経糸」が位置しているから、当該「経糸」が「ナックル」を形成していることは技術常識である。
そうすると、引用発明の「上層」は、複数の「ナックル」を「上面側緯糸」の上に備え、複数の「ナックル」が「上層」上に連続的な斜線を形成するものであるから、上記相違点は、実質的な相違点ではない。
請求人は、審判請求書の理由[3-2]で、刊行物には「連続的な斜線のある綾織製紙面を有する布の記載がありません。」と主張するが、上記のとおり根拠のない主張である。
そうすると、補正発明と引用発明との間には相違点がないから、補正発明は刊行物に記載された発明である。
(4) 小括
以上のとおりであるから、補正発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3. むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明
1. 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし11は、本願出願当初の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし11にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1.に示したとおりのものと認める。
2. 刊行物の記載及び発明
刊行物に記載された事項及び発明は、上記第2.の2.(1)に示したとおりである。
3. 対比・検討
本願発明は、補正発明の発明特定事項から、上記第2の2.に示した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する補正発明が、上記第2の2.(3)に示したとおり、刊行物に記載された発明であるから、本願発明も、刊行物に記載された発明であるといえる。
そうすると、本願発明も、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、特許を受けることができない。
4. むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-019138