特許拒絶査定不服審判
2015-013921
化学的ライゲーション依存型プローブ増幅(CLPA)
- 審判番号
- 2015-013921
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-503419外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年07月23日
- 審決日
- 2017年02月08日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ディクステリティー ダイアグノーティクス インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-WZ (C12Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-503419「化学的ライゲーション依存型プローブ増幅(CLPA)」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月 7日国際公開、WO2010/114599、平成24年12月13日国内公表、特表2012-531887〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成22年3月29日(パリ条約による優先権主張 平成21年4月1日 米国)を国際出願日とする出願であって、 平成27年7月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成28年6月21日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対して同年12月22日に意見書および手続補正書が提出された。
本願の請求項1~15に係る発明は、平成28年12月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載の事項により特定される発明であり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
細胞、組織、又は血液の溶解物を含む粗試料中の複数の異なる標的核酸であって、各標的核酸配列が隣接する第1及び第2の標的ドメインを含む標的核酸を検出する方法であり、
a)i)前記異なる標的核酸の一つと、
ii)1)前記一つの標的核酸の第1の標的ドメインと相補的な第1のプローブドメイン;及び
2)5'側ライゲーション部分;
を備える第1の核酸ライゲーションプローブと、
iii)1)前記一つの標的核酸の第2の標的ドメインと相補的な第2のプローブドメイン;及び
2)3'側ライゲーション部分;
を備える第2の核酸ライゲーションプローブと、
をそれぞれが備える、複数のライゲーション基質を用意するステップであって、前記核酸ライゲーションプローブの一方又は両方が、前記標的核酸配列ごとに異なる長さを有するスペーサー配列を備えるステップと、
b)前記粗試料中で、前記第1及び第2の核酸ライゲーションプローブを、リガーゼ酵素の不在下においてライゲーションして、複数の異なるライゲーション産物を形成させるステップであって、前記異なるライゲーション産物が異なる標的特異的長さを有するステップと、
c)前記ライゲーション産物を前記粗試料から精製するステップと、
d)前記ライゲーション産物を増幅するステップと、
e)前記異なる標的長さに基づいて、前記異なるライゲーション産物の存在を検出するステップと、
を含む方法。」
第2 当審の判断
1.引用例1
当審拒絶理由において引用された、特表2004-507226号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審による。
ア 「【請求項1】
サンプル中の少なくとも1つの標的配列を検出するための方法であって、以下:
該サンプルを各標的配列に対するプローブセットと合わせてライゲーション反応混合物を形成する工程であって、該プローブセットは(a)標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含む、少なくとも1つの第1プローブ、ならびに(b)標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む、少なくとも1つの第2プローブを含み、ここで、各セット中の該プローブは、相補的な標的配列上で互いに隣接してハイブリダイズする場合に、一緒にライゲーションするのに適切であり、そしてここで、各プローブセット中の少なくとも1つのプローブは、該プライマー特異的部分と該標的特異的部分との間に配置されるアドレス可能支持体特異的部分をさらに含む、工程;
該ライゲーション反応混合物を少なくとも1サイクルのライゲーションに供する工程であって、ここで隣接してハイブリダイズする相補的なプローブが互いにライゲーションされて、該5’プライマー特異的部分、該標的特異的部分、少なくとも1つのアドレス可能支持体特異的部分、および該3’プライマー特異的部分を含むライゲーション産物を形成する工程;
該ライゲーション反応混合物を(a)少なくとも1つのプライマーセット、および(b)ポリメラーゼと合わせて、第1増幅反応混合物を形成する工程であって、該プライマーセットは(i)該ライゲーション産物の該5’プライマー特異的部分の配列を含む、少なくとも1つの第1プライマー、および(ii)該ライゲーション産物の該3’プライマー特異的部分に相補的な配列を含む、少なくとも1つの第2プライマーを含み、ここで、該プライマーセットの少なくとも1つのプライマーがさらにレポーター基を含む、工程;
該第1増幅反応混合物を少なくとも1サイクルの増幅に供して、少なくとも1つのレポーター基を含む第1増幅産物を生成する工程;
該第1増幅産物の該アドレス可能支持体特異的部分または少なくとも1つのレポーター基を含む該第1増幅産物の部分を、支持体に結合された捕獲オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる工程;ならびに
該少なくとも1つのレポーター基を検出する工程、
を包含する、方法。
・・・・
【請求項12】
増幅の前に前記ライゲーション産物を精製する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。」(特許請求の範囲)
イ 「【0015】
なお他の実施形態において、ライゲーションは、非酵素学的に行なわれる。限定されないが、非酵素学的ライゲーションは、化学的ライゲーション(「活性化」剤および/または還元剤の存在下での自己ライゲーションおよびライゲーション)を含む。非酵素学的ライゲーションは、結合されるべきプローブのそれぞれの3’末端および5’末端で、特異的な反応基を利用し得る。」
ウ 「【0047】
本発明に従うライゲーション因子は、任意の数の酵素的薬剤または化学的(すなわち、非化学的)薬剤を含み得る。例えば、リガーゼは、適切な条件下で、DNA分子もしくはRNA分子、またはハイブリッド中の隣接ヌクレオチドの3’-OHおよび5’-リン酸の間のリン酸ジエステル結合を形成する、酵素的ライゲーション因子である。温度感受性リガーゼとしては、バクテリオファージT4リガーゼおよびE.Coliリガーゼが挙げられるが、これらに限定されない。温度安定性リガーゼとしては、Taqリガーゼ、TthリガーゼおよびPfuリガーゼが挙げられるが、これらに限定されない。温度安定性リガーゼは、好熱生物または超好熱生物から獲得され得る。
【0048】
化学的ライゲーション因子としては、限定でなく、活性化剤、濃縮剤および還元剤(例えば、カルボジイミド、臭化シアン(BrCN)、N-シアノイミダゾール、イミダゾール、1-メチルイミダゾール/カルボジイミド/シスタミン、ジチオトレイトール(DTT)および紫外線光)が挙げられる。ライゲーション因子非存在下での自己ライゲーション、すなわち、自然ライゲーションはまた、本発明の範囲内である。」
エ 「【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明の特定の実施形態に従う、プローブセットを示す概略図である。
各プローブは、標的に相補的または実質的に相補的である部分(「標的特異的部分」T-SP)およびプライマーとしての同じ配列に相補的であるかまたはそれを有する部分(「プライマー特異的部分」P-SP)を含む。各プローブセットにおける少なくとも1つのプローブは、標的特異的部分とプライマー特異的部分との間に位置するアドレス可能な支持体特異的部分(AS-SP)をさらに含む(ここで、プローブZ)。
各プローブセットは、第1のプローブ(ここで、プローブA)の3’末端が第2のプローブの5’末端に直ぐに隣接しそしてこれに対立する状態で、標的とハイブリダイズするように設計された、少なくとも1つの第1のプローブおよび少なくとも1つの第2のプローブ(ここで、プローブZ)を含む。」
オ 「
」
カ 「【0106】
さらに他の実施形態において、異なる標的および/または異なる対立遺伝子は、支持体上の捕獲オリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションよりもむしろ分離技術(例えば、電気泳動、質量分析法またはクロマトグラフィー)を使用する移動度の区別によって検出される。これらの実施形態において、プローブは、識別可能な固有の長さまたは分子量の、アドレス可能な支持体特異的部分を含み得る。あるいは、それぞれのアドレス可能な支持体特異的な部分は、増幅産物のアドレス可能な支持体特異的部分に選択的に結合するためのタグ相補体、および移動度依存性の分析技術(例えば、電気泳動(例えば、米国特許出願09/522,640、1999年3月15日出願))において特定の移動度をもたらすためのテールを含む、特定の移動性変更因子(mobility-modifier)に対して相補的である。従って、この増幅産物は、分子量または分子の長さによって分離されて、個々の増幅配列を区別し得る。特定の分子量または分子の長さのビン(bin)における増幅産物の検出は、サンプル中の標的配列の存在を示す。」
キ 「【0110】
好ましい実施形態において、アドレス可能な支持体特異的部分およびタグ相補体は、それぞれポリヌクレオチドを含む。好ましいポリヌクレオチドタグ相補体において、このタグ相補体は、例えば、3’-リン酸、3’-アセチル、2’-3’-ジデオキシ、3’-アミノおよび2’-3’-デヒドロのような糖修飾を含むことによって、ポリメラーゼによって伸長不可能になる。
【0111】
特に好ましいアドレス可能な支持体特異的部分およびタグ相補体対は、従来の合成ポリヌクレオチドであるアドレス可能な支持体特異的部分、およびPNAであるタグ相補体を含む。PNAタグ相補体がタグと三重鎖構造を形成するように設計される場合、このタグ相補体は、タグとタグ相補体との間の三重鎖結合を容易にするために、「ヒンジ」領域を含み得る。より好ましい実施形態において、アドレス可能な支持体特異的部分およびタグ相補体配列は、反復配列を含む。アドレス可能な支持体特異的部分およびタグ相補体におけるこのような反復配列は、その(1)高い結合親和性、(2)高い結合特異性、および(3)高い可溶性に起因して、好ましい。二重鎖形成アドレス可能な支持体特異的部分またはタグ相補体配列として使用するための特に好ましい反復配列は、(CAG)nであり、ここで、この3塩基配列は、約1~10回反復される(例えば、Boffaら、PNAS(USA)、92:1901~05(1995);Wittungら、Biochemistry、36:7973~79(1997)を参照のこと)。三重鎖形成アドレス可能な支持体特異的部分またはタグ相補体配列として使用するための特に好ましい反復配列は、(TCC)nである。」
2.周知例
当審拒絶理由において引用された、特開平9-187277号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 ヒト体内から採取した全血液であって、白血球からもたらされる標的DNAを含む血液試料に、該標的DNAに相補的なオリゴヌクレオチドである2種またはそれ以上のプライマー、デオキシリボヌクレオチドフォスフェートおよび耐熱性DNAポリメラーゼを緩衝液中にて作用させて、(a)上記2種またはそれ以上のプライマーを該標的DNAにアニールさせ、(b)耐熱性DNAポリメラーゼの作用によりプライマー伸長反応を行って2本鎖DNAを合成し、(c)得られた2本鎖DNAを1本鎖DNAに分離し、そして(d)得られたDNA増幅産物を鋳型として、上記工程(a)~(c)を繰り返すことことを特徴とする鋳型として全血液を用いた核酸の直接的PCR増幅法。」(特許請求の範囲)
当審拒絶理由において引用された、特開2008-278774号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
全血試料と所定の濃度に調製された前処理試薬とを混合する前処理工程と、
前記前処理工程から得られる混合溶液を核酸増幅反応溶液に希釈混合する希釈混合工程と、
前記希釈混合工程から得られる希釈混合溶液について核酸増幅反応を行う核酸増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。」
当審拒絶理由において引用された、国際公開2008/117782号(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
遺伝子増幅法により2種類の遺伝子を同時に増幅するためのプライマーセットであって、
前記2種類の遺伝子が、CYP2C9遺伝子およびVKORC1遺伝子であり、
下記(1)および(2)の2種類のプライマーセットを含むことを特徴とする遺伝子増幅用プライマーセット。・・・・
【請求項3】
前記遺伝子増幅用プライマーセットが、生体試料中のCYP2C9遺伝子およびVKORC1遺伝子を増幅するためのプライマーセットである、請求の範囲1記載の遺伝子増幅用プライマーセット。
【請求項4】
前記生体試料が、全血である、請求の範囲3記載の遺伝子増幅用プライマーセット。」
当審拒絶理由において引用された、特表2008-543311号公報(以下、「引用例5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
少なくとも1つの細胞溶解物と、
少なくとも1つのプライマーと、
固有なゲノム核酸配列、目的の標的核酸、またはその両方を検出するための少なくとも1つのプローブと、
PCR反応のための1つまたは複数の成分と
を含む組成物。」
3.引用発明
上記アより、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「サンプル中の少なくとも1つの標的配列を検出するための方法であって、以下:
該サンプルを各標的配列に対するプローブセットと合わせてライゲーション反応混合物を形成する工程であって、該プローブセットは(a)標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含む、少なくとも1つの第1プローブ、ならびに(b)標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む、少なくとも1つの第2プローブを含み、ここで、各セット中の該プローブは、相補的な標的配列上で互いに隣接してハイブリダイズする場合に、一緒にライゲーションするのに適切であり、そしてここで、各プローブセット中の少なくとも1つのプローブは、該プライマー特異的部分と該標的特異的部分との間に配置されるアドレス可能支持体特異的部分をさらに含む、工程;
該ライゲーション反応混合物を少なくとも1サイクルのライゲーションに供する工程であって、ここで隣接してハイブリダイズする相補的なプローブが互いにライゲーションされて、該5’プライマー特異的部分、該標的特異的部分、少なくとも1つのアドレス可能支持体特異的部分、および該3’プライマー特異的部分を含むライゲーション産物を形成する工程;
前記ライゲーション産物を精製する工程;
前記ライゲーション産物を(a)少なくとも1つのプライマーセット、および(b)ポリメラーゼと合わせて、第1増幅反応混合物を形成する工程であって、該プライマーセットは(i)該ライゲーション産物の該5’プライマー特異的部分の配列を含む、少なくとも1つの第1プライマー、および(ii)該ライゲーション産物の該3’プライマー特異的部分に相補的な配列を含む、少なくとも1つの第2プライマーを含み、ここで、該プライマーセットの少なくとも1つのプライマーがさらにレポーター基を含む、工程;
該第1増幅反応混合物を少なくとも1サイクルの増幅に供して、少なくとも1つのレポーター基を含む第1増幅産物を生成する工程;
該第1増幅反応混合物を少なくとも1サイクルの増幅に供して、少なくとも1つのレポーター基を含む第1増幅産物を生成する工程;
該第1増幅産物の該アドレス可能支持体特異的部分または少なくとも1つのレポーター基を含む該第1増幅産物の部分を、支持体に結合された捕獲オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる工程;ならびに
該少なくとも1つのレポーター基を検出する工程、
を包含する、方法。」
4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明は、複数の異なる標的核酸を検出することを含んでいると認められるから、引用発明の「サンプル中の少なくとも1つの標的配列」は本願発明の「試料中の複数の異なる標的核酸」に相当する。
また、引用発明の「(a)標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含む、少なくとも1つの第1プローブ」は、3’側でライゲーションすると認められるから、本願発明の「iii)1)前記一つの標的核酸の第2の標的ドメインと相補的な第2のプローブドメイン;及び 2)3'側ライゲーション部分; を備える第2の核酸ライゲーションプローブ」に相当し、引用発明の「(b)標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む、少なくとも1つの第2プローブ」は5’側でライゲーションすると認められるから、本願発明の「ii)1)前記一つの標的核酸の第1の標的ドメインと相補的な第1のプローブドメイン;及び 2)5'側ライゲーション部分; を備える第1の核酸ライゲーションプローブ」に相当すると認められる。
引用発明の第1のプローブと第2のプローブとは、相補的な標的配列上で互いに隣接してハイブリダイズするものであるから、隣接する標的配列を標的とするものと認められ、また、上記エ、オから、引用発明の「該プライマー特異的部分と該標的特異的部分との間に配置されるアドレス可能支持体特異的部分」とは、ポリヌクレオチドであって、本願発明の「スペーサー配列」に相当すると認められる。
そうすると、引用発明の「サンプル中の少なくとも1つの標的配列を検出するための方法」は、本願発明の「試料中の複数の異なる標的核酸であって、各標的核酸配列が隣接する第1及び第2の標的ドメインを含む標的核酸を検出する方法」に相当し、引用発明の「該サンプルを各標的配列に対するプローブセットと合わせてライゲーション反応混合物を形成する工程であって、該プローブセットは(a)標的特異的部分および5’プライマー特異的部分を含む、少なくとも1つの第1プローブ、ならびに(b)標的特異的部分および3’プライマー特異的部分を含む、少なくとも1つの第2プローブを含み、ここで、各セット中の該プローブは、相補的な標的配列上で互いに隣接してハイブリダイズする場合に、一緒にライゲーションするのに適切であり、そしてここで、各プローブセット中の少なくとも1つのプローブは、該プライマー特異的部分と該標的特異的部分との間に配置されるアドレス可能支持体特異的部分をさらに含む、工程;」は、本願発明の
「a)i)前記異なる標的核酸の一つと、
ii)1)前記一つの標的核酸の第1の標的ドメインと相補的な第1のプローブドメイン;及び
2)5'側ライゲーション部分;
を備える第1の核酸ライゲーションプローブと、
iii)1)前記一つの標的核酸の第2の標的ドメインと相補的な第2のプローブドメイン;及び
2)3'側ライゲーション部分;
を備える第2の核酸ライゲーションプローブと、
をそれぞれが備える、複数のライゲーション基質を用意するステップ」に相当すると認められる。
上記イ、ウのとおり、引用発明のライゲーションは、非酵素学的に行われる場合を含んでいるから、引用発明の「該ライゲーション反応混合物を少なくとも1サイクルのライゲーションに供する工程であって、ここで隣接してハイブリダイズする相補的なプローブが互いにライゲーションされて、該5’プライマー特異的部分、該標的特異的部分、少なくとも1つのアドレス可能支持体特異的部分、および該3’プライマー特異的部分を含むライゲーション産物を形成する工程;」は、本願発明の「前記第1及び第2の核酸ライゲーションプローブを、リガーゼ酵素の不在下においてライゲーションして、複数の異なるライゲーション産物を形成させるステップであって、前記異なるライゲーション産物が異なる標的特異的長さを有するステップ」と、「前記第1及び第2の核酸ライゲーションプローブを、リガーゼ酵素の不在下においてライゲーションして、複数の異なるライゲーション産物を形成させるステップ」である点で共通すると認められる。
さらに、引用発明の「前記ライゲーション産物を精製する工程;」は、本願発明の「c)前記ライゲーション産物を・・・精製するステップ」に相当し、引用発明の「前記ライゲーション産物を(a)少なくとも1つのプライマーセット、および(b)ポリメラーゼと合わせて、第1増幅反応混合物を形成する工程であって、・・・ここで、該プライマーセットの少なくとも1つのプライマーがさらにレポーター基を含む、工程; 該第1増幅反応混合物を少なくとも1サイクルの増幅に供して、少なくとも1つのレポーター基を含む第1増幅産物を生成する工程;」は、本願発明の「d)前記ライゲーション産物を増幅するステップ」に相当し、引用発明の「該第1増幅産物の該アドレス可能支持体特異的部分または少なくとも1つのレポーター基を含む該第1増幅産物の部分を、支持体に結合された捕獲オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる工程;ならびに 該少なくとも1つのレポーター基を検出する工程」は、本願発明の「e)前記異なる標的長さに基づいて、前記異なるライゲーション産物の存在を検出するステップ」と「異なるライゲーション産物の存在を検出するステップ」である点で共通すると認められる。
以上から、両者は、
「試料中の複数の異なる標的核酸であって、各標的核酸配列が隣接する第1及び第2の標的ドメインを含む標的核酸を検出する方法であり、
a)i)前記異なる標的核酸の一つと、
ii)1)前記一つの標的核酸の第1の標的ドメインと相補的な第1のプローブドメイン;及び
2)5'側ライゲーション部分;
を備える第1の核酸ライゲーションプローブと、
iii)1)前記一つの標的核酸の第2の標的ドメインと相補的な第2のプローブドメイン;及び
2)3'側ライゲーション部分;
を備える第2の核酸ライゲーションプローブと、
をそれぞれが備える、複数のライゲーション基質を用意するステップであって、前記核酸ライゲーションプローブの一方又は両方が、スペーサー配列を備えるステップと、
b)前記試料中で、前記第1及び第2の核酸ライゲーションプローブを、リガーゼ酵素の不在下においてライゲーションして、複数の異なるライゲーション産物を形成させるステップと、
c)前記ライゲーション産物を前記試料から精製するステップと、
d)前記ライゲーション産物を増幅するステップと、
e)前前記異なるライゲーション産物の存在を検出するステップと、
を含む方法。」
である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
(相違点1)
本願発明では、検出する試料が「細胞、組織、又は血液の溶解物を含む粗試料」に特定され、各ステップにおける試料が「粗試料」に特定されているのに対し、引用発明では特定されていない点。
(相違点2)
本願発明では、複数のライゲーション基質を用意するステップにおける一方又は両方プローブのスペーサー配列が「前記標的核酸配列ごとに異なる長さ」を有し、複数の異なるライゲーション産物を形成するステップで形成される異なるライゲーション産物が「異なる標的特異的長さを有する」ものであり、検出するステップで「前記異なる標的長さ」に基づいて異なるライゲーション産物の存在を検出することが特定されているのに対して、引用発明ではこれらの事項が特定されていない点。
5.判断
(相違点1)について
細胞、組織、又は血液の溶解物のような粗試料中の核酸を分析する際、粗試料から核酸を精製することなく、直接分析することによって、簡便で迅速な検出を行うことは、当業者の周知の技術課題であると認められる。
また、引用例2~5の記載からも分かるように、血液や細胞溶解物のような粗試料を用いても、粗試料中の核酸と検出に用いる核酸とがハイブリダイズできることは技術常識であるから、引用発明においてサンプルとして粗試料を用いた場合に、プローブが標的核酸にハイブリダイズすること、そしてプローブがハイブリダイズすればライゲーション産物が得られることは、当業者が理解することと認められる。
したがって、引用発明においてサンプルとして細胞、組織、又は血液の溶解物を含む粗試料を用いることは当業者が容易になし得ることである。
そして、サンプルとして粗試料を用いれば、各ステップにおいても該粗試料から使用されることになるから、そのような事項を特定することも、当業者が容易になし得ることである。
(相違点2)について
上記カのとおり、引用例1には「異なる標的および/または異なる対立遺伝子は、支持体上の捕獲オリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションよりもむしろ分離技術(例えば、電気泳動、質量分析法またはクロマトグラフィー)を使用する移動度の区別によって検出される。これらの実施形態において、プローブは、識別可能な固有の長さまたは分子量の、アドレス可能な支持体特異的部分を含み得る。」と、支持体上の捕獲オリゴヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションにより検出する方法に代えて、分離技術を使用する移動度の区別によって標的核酸を検出する方法が採用できることが記載されているから、引用発明の
「該第1増幅産物の該アドレス可能支持体特異的部分または少なくとも1つのレポーター基を含む該第1増幅産物の部分を、支持体に結合された捕獲オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる工程;ならびに
該少なくとも1つのレポーター基を検出する工程」に代えて、分離技術を使用する移動度の区別によって標的核酸を検出する工程を採用すること、そのために用いるプローブとして「識別可能な固有の長さまたは分子量の、アドレス可能な支持体特異的部分」を含むものを用いることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、「識別可能な固有の長さまたは分子量の、アドレス可能な支持体特異的部分」とは、本願発明にいう「前記標的核酸配列ごとに異なる長さ」を有するスペーサー配列であると認められる。
さらに、上記キのとおり、引用例1には、アドレス可能支持体特異的部分が(CAG)n(nは1~10)のような反復配列であることも記載されており、このような反復配列を用いてアドレス可能とすることは、標的核酸配列ごとに繰り返し数nを異なるようにすることであると認められ、それはすなわち、「標的核酸配列ごとに異なる長さ」とすることであると認められる。
したがって、引用発明において、「標的核酸配列ごとに異なる長さ」のスペーサー配列を有するプローブを用いることは当業者が容易になし得ることである。
そして、引用発明において、分離技術を使用する移動度の区別によって標的核酸を検出する工程を採用して、「前記標的核酸配列ごとに異なる長さ」のスペーサー配列を有するプローブを用いれば、異なる標的特異的長さを有するライゲーション産物が生成し、検出するステップでは異なる標的長さに基づいて異なるライゲーション産物の存在が検出されることとなると認められる。
したがって、相違点2は当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明において、引用例1から予測できない効果が奏されたとは認められない。
6.小活
したがって、本願発明は引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第3 むすび
以上のとおり、この出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-013921