特許拒絶査定不服審判
2022-017198
標識化核酸イメージング剤を使用した多重イメージングのための改善された方法
- 審判番号
- 2022-017198
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-530751外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年10月27日
- 審決日
- 2024年06月25日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アルティヴュー, インク.
- 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (C12Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-530751「標識化核酸イメージング剤を使用した多重イメージングのための改善された方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年6月14日国際公開、WO2018/107054、令和2年2月13日国内公表、特表2020-504600〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月8日(パリ条約による優先権主張 2016年12月9日 US(米国)、2017年1月13日 US(米国))を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 9月15日付け 拒絶理由通知書
令和4年 3月15日 意見書、手続補正書の提出
同 年 7月20日付け 拒絶査定
同 年10月27日 審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和4年3月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
2つ以上の標的の位置に関して組織試料を試験するための方法であって、
(1)2つ以上の標的の存在に関して試験される試料を2つ以上の標的特異的結合パートナーと接触させることであって、各標的特異的結合パートナーが核酸鎖に直接的に結び付けられ、前記核酸鎖がドッキング鎖であり、異なる特異性の標的特異的結合パートナーが異なるドッキング鎖に結び付けられ、前記試料が組織試料である、前記接触させることと、
(2)任意に、非結合標的特異的結合パートナーを除去することと、
(3)前記試料を、前記異なるドッキング鎖に対して相補性を有する環状アンプリファイアー鎖と接触させることと、
(4)任意に、非結合環状アンプリファイアー鎖を除去することと、
(5)前記ドッキング鎖の鎖状反復を含む増幅鎖を作り出すために前記ドッキング鎖をローリングサークル増幅で増幅させることと、
(6)前記試料を、前記増幅鎖に直接的に結合することが可能な標識化イメージャー鎖と接触させることであって、前記標識化イメージャー鎖の各々は、異なる蛍光標識が付着したイメージャー鎖を含む、前記接触させることと、
(7)前記試料をイメージングして、結合した標識化イメージャー鎖の存在と位置を検出することと、
(8)前記結合した標識化イメージャー鎖からシグナルを消失させることと、
(9)任意に、ステップ(1)~(8)またはこれらの任意のサブセットを反復することと、を含む、方法。」(以下、「本願発明」という。)
第3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶理由は、本願発明は、その優先日(2016年12月9日)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2~5に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。
記
引用文献2:国際公開第2015/138653号
引用文献3:特表2004-512017号公報
引用文献4:特表2016-518843号公報
引用文献5:国際公開第2016/028843号
第4 当審の判断
1.引用文献の記載事項
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2(国際公開第2015/138653号)には、以下の事項が記載されている。なお、以下の日本語訳による摘記は、引用文献2に対応する日本語出願の公表公報である特表2017-509872号公報の記載に基づくものであり、その段落番号も便宜上、公表公報に記載のものを記載した。下線は当審にて付記した。
引2a
「【請求項1】
方法であって、
(1)1つ以上の標的の存在について試験されるサンプルを1つ以上の標的特異的結合パートナーに接触させるステップであって、各標的特異的結合パートナーがドッキング鎖に連結され、異なる特異性の標的特異的結合パートナーが異なるドッキング鎖に連結される、ステップ、
(2)任意選択的に、結合しなかった標的特異的結合パートナーを除去するステップ、
(3)前記サンプルを、ドッキング鎖に相補的なヌクレオチド配列を有する標識イメージャー鎖に接触させるステップ、
(4)任意選択的に、結合しなかった標識イメージャー鎖を除去するステップ、
(5)前記サンプルをイメージングして、結合した標識イメージャー鎖の位置及び数を検出するステップ、
(6)前記結合した標識イメージャー鎖からのシグナルを消光するステップ、及び
(7)他の全ての標識イメージャー鎖に対してユニークなヌクレオチド配列を有する標識イメージャー鎖を毎回用いてステップ(3)~(6)を繰り返すステップ
を含む、方法。
・・・
【請求項3】
前記標的特異的結合パートナーが抗体又は抗体断片である、請求項1に記載の方法。
・・・
【請求項6】
前記標識イメージャー鎖が、蛍光標識イメージャー鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルが、細胞、細胞溶解物、又は組織溶解物である、請求項1に記載の方法。」
引2b
「【背景技術】
【0003】
蛍光顕微鏡検査法は、例えば、生物系における分子を研究するための強力なツールである。しかしながら、区別可能に同時に視覚化され得る異なる種の数(即ち、多重化能)が、フルオロフォア間のスペクトルの重複によって限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、とりわけ、目的の標的(例えば、生体分子)を検出、イメージング、及び/又は定量するための方法及び組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される一部の方法は、(1)分析されるべきサンプル(例えば、1つ以上の目的の標的を含む疑いのあるサンプル)を、標的に特異的に結合する部分(各部分が、所与の標的の結合パートナーである)に接触させるステップであって、各部分が、核酸(本明細書ではドッキング鎖と呼ばれる)にコンジュゲートされ、異なる特性の結合パートナーが異なるドッキング鎖にコンジュゲートされる、ステップ、(2)任意選択的に、結合しなかった結合パートナーを除去するステップ、(3)1つのドッキング鎖に相補的であり、従って1つのドッキング鎖に特異的なヌクレオチド配列を有する標識(例えば、蛍光標識)核酸にサンプルを接触させるステップ(このような標識核酸は、本明細書では標識イメージャー鎖(labeled imaer strand)と呼ばれる)、(4)任意選択的に、結合しなかったイメージャー鎖を除去するステップ、(5)サンプルの全体又は一部をイメージングして結合イメージャー鎖の位置及び数を検出するステップ、(6)サンプルの標識イメージャー鎖からのシグナルを(例えば、光退色を含む退色によって)消光するステップ、及び(7)この方法に使用される他の全てのイメージャー鎖に対してユニークなヌクレオチド配列を有するイメージャー鎖を毎回用いてステップ(3)~(6)を繰り返すステップを含む。
・・・
【0007】
このように、2つ以上の標的からのシグナルが同時に観察されたときにサンプル中の標的の位置が区別できないほど互いに近接しているか否かにかかわらないこと含め、サンプル中の標的の位置にかかわらず、サンプル中の2つ以上の標的を検出、イメージング、及び/又は定量することが可能である。従って、2つ以上の標的間の距離は、標的を検出するために使用されるイメージングシステムの解像度距離よりも短くすることができ、本明細書に記載される方法をなお使用すると、2つ以上の標的を互いに区別することが可能であり得、従って、このような標的のより正確でロバストな検出及び定量が容易になる。場合によっては、解像度距離は、一例として、約50nmであり得る。」
引2c
「【0009】
結合パートナーは、本来はタンパク質、例えば、抗体又は抗体断片であり得る。抗体又は抗体断片である結合パートナーに関連して、ドッキング鎖は、一定の領域で結合パートナーにコンジュゲートし得る。結合パートナーは、抗体、例えば、モノクローナル抗体であっても良く、又は抗原結合抗体断片、例えば、モノクローナル抗体からの抗原結合断片であっても良い。一部の実施形態では、結合パートナーは受容体である。
【0010】
結合パートナーは、中間リンカーによってドッキング鎖に連結され得る。一部の実施形態では、中間リンカーは、ビオチン及び/又はストレプトアビジンを含む。
【0011】
イメージャー鎖は、蛍光標識され得る(即ち、イメージャー鎖がフルオロフォアにコンジュゲートされる)。異なるヌクレオチド配列のイメージャー鎖にコンジュゲートされたフルオロフォアは、互いに同一であっても良く、又は他方のフルオロフォアの放出プロフィールと重複するか、又は重複しない放出プロフィールを有しても良い。蛍光標識イメージャー鎖は、少なくとも1つのフルオロフォアを含み得る。
・・・
【0014】
従って、本発明は、任意選択的に同一に標識される(例えば、同一に蛍光標識される)イメージャー鎖に繰り返し結合し、検出し、および消光すること(例えば、退色、例えば、光退色)によって、分析物をそれぞれの結合パートナーに結合させて、このような結合パートナーの存在を連続的に検出することにより、分析物を検出する方法を提供することを理解されたい。」
引2d
「【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、とりわけ、核酸ベースのイメージングプローブ(例えば、DNAベースのイメージングプローブ)を使用して、例えば、細胞環境内で多重化蛍光イメージングするための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載される方法は、核酸のドッキング鎖及びイメージャー鎖のプログラマビリティにある程度基づいている。即ち、例えば、ドッキング鎖及びイメージャー鎖は、一定の条件下で一定期間、互いに結合するように設計することができる。このプログラマビリティにより、本明細書に記載されるように、イメージャー鎖とドッキング鎖との安定な結合が可能となる。一般に、本明細書に記載される方法は、特定のサンプル(例えば、生物学的サンプル)中で1つ以上の標的(例えば、生体分子、例えば、タンパク質又は核酸)を同定することに関する。場合によっては、1つ以上の標的がサンプル中に存在するか否かは未知である。従って、本開示の方法を使用して、標的を含むと疑われるサンプル中の1つ以上の標的の存在又は非存在を決定することができる。本明細書に記載される態様及び実施形態のいずれか1つにおいて、サンプルは、1つ以上の標的を含み得るか、又は1つ以上の標的を含むと疑われ得る。
【0045】
従って、本発明は、プログラム可能な核酸(例えば、DNA)プローブに基づいて、高スループット及び高度多重化イメージング並びに分析物/標的の検出を行うための方法を提供する。これらの方法は、結合パートナー、例えば、抗体に固定された相補的なドッキング鎖に安定に付着することができる直交イメージャー鎖を利用する順次イメージングアプローチに依存する(図1)。イメージャー鎖を用いたハイブリダイゼーション及びイメージング後に、消光ステップ(例えば、光退色ステップ)が、ハイブリダイズした(結合した)イメージャー鎖から蛍光を除去/低減するために行われる。
・・・
【0047】
多重化する場合は、例えば、シグナルを消光するための光退色若しくは他の方法、又はイメージャー鎖の不活性化若しくは除去の各ステップの後に、異なるレザバーの直交イメージャー鎖が、無数の標的を潜在的にイメージングするために同じサンプルに連続的に加えられる。多重化がカラーチャネル間のスペクトル重複によって限定される従来のイメージングアプローチとは異なり、本明細書に記載される方法は、(ドッキング鎖或いはイメージャー鎖の)可能な直交ヌクレオチド配列の数によってのみ限定される。多数の直交ヌクレオチド配列を容易に設計することができるため、このアプローチは、単一フルオロフォアを使用するだけで本質的にスケーラブル多重化能力を有する。この方法は、標準的な顕微鏡検査装置(例えば、共焦点顕微鏡又は落射蛍光顕微鏡)と容易に組み合わせることができ、サンプルの高スループット分析が可能となる。
【0048】
方法は、例えば、高スループットスクリーニングアッセイ、例えば、薬物スクリーニングアッセイに適用性を有する。このイメージングアプローチにより、標準的な共焦点顕微鏡又は落射蛍光顕微鏡を用いてイメージングしながら、超多重化形式で細胞の大集団(約1,000~10,000)又は組織サンプルを分析することが可能となる。同じサンプルの多数の標的、例えば、タンパク質の高スループット方式でのスクリーニングは、新しい薬物又は変性剤についての情報を提供すると共に、細胞の不均質性の情報を提供する。高スループットでの組織サンプルの大規模スクリーニング及び超多重化イメージング能力は、例えば、病院又は他のサービス提供施設における病理分析に有用であろう。」
「
[図:0001416956000001.jpg]
」(図1)
引2e
「【0092】
シグナル又はイメージャー核酸の不活性化
本明細書に記載される一部の方法においてイメージャー核酸の不活性化を達成するために、イメージャー鎖を含むイメージャー核酸を、例えば、限定されるものではないが、温度の上昇;対イオン(例えば、遊離Mg++)の濃度の低下;変性剤(例えば、ホルムアミド、尿素、及びDMSOなど)の導入又は変性剤の濃度の上昇;及びイメージャー鎖の化学的切断、光化学的切断、若しくは酵素的切断、修飾、又は分解、又はこれらの任意の組合せによって結合パートナーを含む標的認識部分(図3)から除去することができる。
【0093】
本明細書に記載される一部の方法においてイメージャー核酸の不活性化を達成するために、イメージャー鎖を含むイメージャー核酸は、ドッキング鎖からイメージャー核酸の核酸部分全体を除去することなく、シグナル放出部分を除去及び/又は修飾することによって不活性化させ得る(図4)。
・・・
【0095】
一部の実施形態では、イメージャー核酸は、(例えば、UV暴露によって)光化学的に切断され得る光切断可能なリンカーを含む。一部の実施形態では、イメージャー核酸は、酵素によって切断され得る部分を含む。このような酵素的に切断可能な部分の例としては、限定されるものではないが、様々なRNA分解酵素によって切断され得るリボヌクレオチド、酵素の組み合わせ、例えば、USER(New England Biolabs)によって切断され得るデオキシウリジン;及び配列特異的切断酵素又は制限酵素によって切断され得る制限部位が挙げられる。一部の実施形態では、制限酵素は、イメージャー核酸及びドッキング核酸の両方を切断し得る。なお他の実施形態では、イメージャー核酸の除去は、ドッキング核酸に結合して、安定性が低下した(又は溶融温度が低い)二重鎖を形成する形態にイメージャー核酸を修飾することによって容易にすることができる。」
「
[図:0001416956000002.jpg]
」(図4)
(2)引用文献3の記載事項
引用文献3(特表2004-512017号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は当審で付記した。
引3a
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、1またはそれ以上の分析物を検出する方法:
(a)1またはそれ以上の分析物サンプルおよび1またはそれ以上のレポーター結合プライマーを接触させ、ここに各レポーター結合プライマーは特異的結合分子およびローリングサークル複製プライマーを含み、各特異的結合分子は分析物と直接または間接的に相互作用し、ならびに、
特異的結合分子および分析物の相互作用を促進する条件下で、分析物サンプルおよびレポーター結合プライマーをインキュベートし、
(b)工程(a)の前に、工程(a)と同時に、あるいは工程(a)の後に、レポーター結合プライマーおよび1またはそれ以上の増幅標的サークルを接触させ、ここに増幅標的サークルはそれぞれ、プライマー相補部分を含む一本鎖環状DNA分子を含み、このプライマー相補部分は、少なくとも1つのローリングサークル複製プライマーと相補的であり、ならびに、
増幅標的サークルおよびローリングサークル複製プライマーのハイブリダイゼーションを促進する条件下でレポーター結合プライマーおよび増幅標的サークルをインキュベートし、
(c)工程(b)の後でかつ、工程(a)の前に、工程(a)と同時に、あるいは工程(a)の後に、増幅標的サークルの複製を促進する条件下で、レポーター結合プライマーおよび増幅標的サークルをインキュベートし、
ここに増幅標的サークルの複製は、直列型配列DNAの形成を生じさせ、この直列型配列DNAの検出は対応する分析物の存在を示し、
ここに分析物は、工程(a)、(b)、または(c)の前に、工程(a)、(b)、または(c)と同時に、あるいは工程(a)、(b)、または(c)の後に分析物サンプルから分離される。」
引3b
「【0027】
発明の要旨
少量の分析物、例えばタンパク質およびペプチドを検出するための組成物および方法が開示されている。この方法には、核酸プライマーを分析物と結合させ、次いでこのプライマーを用いて、環状DNA分子のローリングサークル複製を媒介することが関与する。DNAサークルの増幅は、このプライマーの存在に依存する。したがって、開示されている方法は、ローリングサークル増幅を介して、任意の目的分析物から増幅されたシグナルを生じさせるものである。この増幅は、等温性であり、各プライマーから大量の核酸の生産を導くことができる。増幅されたDNAは、プライマーを介して分析物と結合したままであり、これにより分析物の空間的検出が可能である。
【0028】
開示されている方法は、好ましくは、タンパク質およびペプチドを検出および分析するために用いられる。好ましい態様では、複数の種々のタンパク質または分析物が直接または間接的に結合されているマイクロアレイを用いて、(それらが試験されるサンプル中に存在する場合、)複数のタンパク質が検出可能である。次いで、プライマーおよび特異的結合分子、例えば検出されるタンパク質に特異的な抗体、のコンジュゲートを用いて、ローリングサークル複製プライマーを種々のタンパク質と結合させる。このプライマーによってプライムされるローリングサークル複製は、このタンパク質が固定されているアレイの部位において、大量のDNA生産を生じさせる。アレイ中の種々のタンパク質はいくつかの方法によって識別可能である。例えば、種々のタンパク質がアレイ中のあらかじめ決められた位置に固定されている場合、増幅DNAの位置は関与するタンパク質を指し示すことが可能である。また、種々のタンパク質はそれぞれ、後に異なるDNAサークルのローリングサークル複製をプライムする異なるローリングサークル複製プライマーと結合可能である。この結果、種々のタンパク質それぞれに対して別個の増幅されたDNAが生じる。この異なる増幅DNAsは任意の適当な配列に基づく核酸検出技術を用いて区別できる。
・・・
【0030】
発明の詳しい記述
ここに開示するのは、少量の分析物、例えばタンパク質およびペプチドを検出するための組成物および方法である。この方法は、核酸シグナル増幅の能力を核酸ではない分析物の検出に適用する。核酸増幅技術に匹敵する増幅技術が存在しない分析物の検出は、一般に、十分な量の分析物の検出または極度に感度のよいラベルの使用に依存する。このようなラベルの使用は厄介であり、制限されている。開示されている方法は、任意の所望の分析物に関する増幅されたシグナルを生じさせる単純で感度のよい方法を提供する。
【0031】
開示されている方法は、1つの型のRCAであり、ここではレポーター結合プライマーが増幅標的サークルの増幅用のローリングサークル複製プライマーを提供する。開示されている方法は、RCAが、レポーター結合プライマーと標的分子(これは分析物とも称される)の結合に基づいて、増幅されたシグナル(すなわち、直列型配列DNA(TS-DNA))を生じることを可能にする。レポーター結合プライマーの一部である特異的プライマー配列は、分析物に対するレポーター結合プライマーの(レポーター結合プライマーのアフィニティー部分を介する)特異的相互作用およびRCAの結び付けを提供する。レポーター結合プライマーが分析物と結合すると、増幅標的サークル(ATC)がレポーター結合プライマーのローリングサークル複製プライマー配列とハイブリダイズし、次いでATCがRCAによって増幅される。得られたTS-DNAは一端にレポーター結合プライマーのローリングサークル複製プライマー配列を含み、これによりTS-DNAが分析物のその部位にアンカーされる。開示されている方法は、任意の分析物を用いて行うことができる。好ましい分析物は、増幅された核酸、例えばTS-DNAおよび増幅標的サークルを含む核酸、抗原およびリガンドである。開示されている方法に関する標的分子は、本明細書中では概して、分析物と称する。
【0032】
開示されている方法を用いて、タンパク質およびペプチドを検出し、分析するのが好ましい。好ましい態様では、種々のタンパク質が固定されているマイクロアレイを用いて複数のタンパク質を分析できる(これらが試験されるサンプル中に存在する場合)。次いでローリングサークル複製プライマーは、プライマーおよび、検出されるべきタンパク質に対して特異的な特異的結合分子、例えば抗体のコンジュゲートを用いて、種々のタンパク質と結合させる。このプライマーによってプライムされたローリングサークル複製は、このタンパク質が固定されているアレイの部位において大量のDNA生産を生じさせる。増幅されたDNAはこのタンパク質に関する容易に検出可能なシグナルとして働く。アレイ内の種々のタンパク質はいくつかの方法によって識別できる。例えば、種々のタンパク質がアレイ内のあらかじめ決められた位置に固定されている場合、増幅されたDNAの位置は関与するタンパク質を指し示すことができる。別法では、異なるタンパク質はそれぞれ、異なるDNAサークルのローリングサークル複製をプライムする異なるローリングサークル複製プライマーと結合させることができる。その結果、それぞれの異なるタンパク質に関して別個に増幅されたDNAが得られる。種々の増幅されたDNAsは任意の適当な配列に基づく核酸検出技術を用いて識別できる。
【0033】
開示されている方法の別の好ましい態様には、2またはそれ以上の異なるサンプル中で発現されているタンパク質を比較することが含まれる。作成される情報は、核酸発現プロファイルにおいて蓄積された情報のタイプと同様である。例えば、異なるサンプル由来の同一の分析物(群)は、異なるDNAサークルの複製をプライムする異なるプライマーと結合でき、異なる増幅DNAsを生産する。この方法では、あるサンプル由来の分析物は、異なるサンプル中の同一分析物から異なる増幅DNAを生産する。この例は実施例11に示され、ここでは、2つの異なるサンプル由来の同一の分析物は2つの異なるDNAサークルの増幅を生じる。
【0034】
サンプルが混合されている場合でさえ、プライマーが分析物と結合することによって、このサンプル特異的な検出を達成できる(本方法の好ましい様式)。例えば、図11では、分析物捕獲物質(ハプテン1およびハプテン2とカップリングされた抗体)はそれぞれサンプル1およびサンプル2と混合することができる。別の好ましい態様では、各サンプル中の分析物は異なるハプテンで直接ラベルされている。これは種々のハプテンを異なるサンプル中の同一型分析物と結合させる。好ましい態様では、サンプルをともに混合する。図11に示されるように、分析物は基質上に捕獲可能で、レポーター結合プライマーは分析物捕獲物質と結合させることができ、DNAサークルはローリングサークル複製プライマーから増幅される。異なるサンプル由来の分析物が基質上の同一部位に捕獲される場合(本方法の好ましい様式)でさえ、異なる増幅DNAsが生産されるせいで、その位置に存在する各分析物のソースおよび量が測定できる。
【0035】
分析物のソース(すなわち分析物が由来するサンプル)は、例えば種々の増幅DNAs(すなわち種々のサンプルに調節されたプライマーから生じるもの)に関する種々のラベルを用いて測定できる。他のラベルと同時に検出された場合に識別可能なラベル(例えば区別される発光スペクトルを有する蛍光ラベル)を用いて、すべてのサンプルをいっしょに混合し、いっしょに分析できる。検出されたラベルは、連鎖の成分:ラベル-増幅DNA-環状DNA-プライマー-分析物を経て、間接的に分析物のソースを同定するものである。
【0036】
免疫RCAと称される、開示されている方法の別の好ましい形態では、ローリングサークル複製プライマーの5’末端を抗体と結合させる。開示されている方法の好ましい一形態では、抗体はハプテンに対するものである。開示されている方法の別の好ましい形態では、抗体は分析物それ自体に対するものである。環状DNA(増幅標的サークルと称される)、DNAポリメラーゼ、およびヌクレオチドの存在下、ローリングサークル反応により多重コピーの環状DNA配列からなるDNA分子(直列型配列DNAと称される)が生じ、これは抗体と結合したままである(図1)。増幅されたDNAは、ハプテンラベルまたは蛍光ラベルされたヌクレオチドの直接包含、または蛍光または酵素ラベルされた相補的オリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションによるものを含む種々の方法で検出可能である。RCA反応は、線形または幾何学的な動力学を用いて行うことができる(Lizardi et al., 1998)が、開示されているシグナル発生方法では線形RCAを用いるのが好ましい。」
引3c
「【0161】・・・
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は免疫RCAアッセイの例を示す図である。左上:オリゴヌクレオチドとコンジュゲートされた抗体からなるレポーター結合プライマーは、共有結合または分析物捕獲物質により固形表面に捕獲されている分析物と結合する。右上:増幅標的サークルは、このオリゴヌクレオチド内の相補配列とハイブリダイズする。左下:得られた複合体は洗浄され、過剰の試薬が取り除かれ、増幅標的サークルはRCAによって増幅される。右下:増幅された生成物は、蛍光ラベルされたオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによってインサイチュでラベルされる。」
「
[図:0001416956000003.jpg]
」(図1)
引3d
「【0161】・・・
【図11】図11は開示されている方法を例示する図であり、ここでは、2つの異なるサンプル(サンプル1およびサンプル2)中の同一分析物の存在を同一アッセイにおいて検出可能である。これは、それぞれ異なる捕獲部分(ハプテン1およびハプテン2)を有する2つの異なる分析物捕獲物質を用いて行うことができ、異なるレポーター結合プライマー(レポーター結合プライマー1および2)が異なる分析物捕獲物質と結合する。異なるレポーター結合プライマーはそれぞれ、異なるローリングサークル複製プライマーを有し、したがって、各プライマーは異なる増幅標的サークル(増幅標的サークル1および2)のローリングサークル増幅を媒介する。」
「
[図:0001416956000004.jpg]
」(図11)
2.本願の優先日当時の周知技術を示す文献
本願の優先日(2016年12月9日)前に頒布された米国特許出願公開第2016/0289750号明細書(令和3年9月15日付け拒絶理由通知書で引用された引用文献1。以下、「周知文献1」という。)、国際公開第2014/076214号(以下、「周知文献2」という。)、及び、PNAS,2000 Aug,29;97(18):10113-10119(以下、「周知文献3」という。)には、以下の記載がある。なお、周知文献1~3は、いずれも英文であるため、以下の摘記は、当審による日本語訳である。下線は当審で付記した。
(1)周知文献1(米国特許出願公開第2016/0289750号明細書)
周1a
「[0009]免疫RCAは、核酸分子と特定の標的分析対象用の抗体を標識化することを含む。典型的には、標的分析物は第1の抗体と、捕捉抗体/核酸複合体と接触させる。円形(又は)オリゴヌクレオチドは、抗体(この抗体は、標的検体と相互作用した後にオリゴヌクレオチドがハイブリダイズされるかまたは添加されてもよい)に結合した核酸分子にハイブリダイズされる。試料を円形/環状化されたオリゴヌクレオチドで増幅するためRCAに供する前に過剰の抗体は洗浄して除去してもよい。抗体に結合体化された核酸分子は、RCA用のプライマーとして使用される。このように、RCA産物は、標的分析物と相互作用している抗体に係留され、それにより細胞または組織試料中の試料中の被分析物の検出を可能にする。」
(2)周知文献2(国際公開第2014/076214号)
周2a
「ローリングサークルレプリケーション(RCR)反応は、当該技術分野でよく記載されており、サンプル中の標的核酸分子の検出、すなわち標的核酸分子の複製または増幅のための様々なアッセイにおいて有用であることが実証されており、複製または増幅された核酸分子が検出される。」(1頁31~35行)
周2b
「免疫RCAは免疫PCRと同じ原理に依存している。違いは、環状(または環状化可能)オリゴヌクレオチド(RCAテンプレート)が、抗体に結合した核酸分子にハイブリダイズすることである(RCAテンプレートは、あらかじめハイブリダイズしておいてもよいし、抗体が標的分析物と相互作用した後に加えてもよい)。抗体に結合した核酸分子は、RCAのプライマーとして使用される。したがって、RCA産物は標的被分析物と相互作用している抗体に係留され、それによって、例えば細胞または組織サンプル中の被分析物の局所的な検出が可能になる。」(4頁3~10行)
(3)周知文献3(PNAS,2000 Aug,29;97(18):10113-10119)
周3a
「我々は、ローリングサークル増幅法(RCA)をタンパク質Agの検出に応用した、“immunoRCA”と呼ばれるレポーターシステムについて述べている。immunoRCAでは、オリゴヌクレオチドプライマーがAbに共有結合している。このため、環状DNA、DNAポリメラーゼ、ヌクレオチドが存在すると、増幅の結果、環状DNA配列の数百コピーを含む長いDNA分子が生じ、Abに結合したまま、様々な方法で検出することができる。immunoRCAを用いると、ELISAやマイクロパーティクル・フォーマットの従来の酵素免疫測定法を上回る感度で分析対象物が検出された。」(10113頁左欄1行~10行)
3.引用発明の認定
引用文献2の請求項1に
「(1)1つ以上の標的の存在について試験されるサンプルを1つ以上の標的特異的結合パートナーに接触させるステップであって、各標的特異的結合パートナーがドッキング鎖に連結され、異なる特異性の標的特異的結合パートナーが異なるドッキング鎖に連結される、ステップ、
(2)任意選択的に、結合しなかった標的特異的結合パートナーを除去するステップ、
(3)前記サンプルを、ドッキング鎖に相補的なヌクレオチド配列を有する標識イメージャー鎖に接触させるステップ、
(4)任意選択的に、結合しなかった標識イメージャー鎖を除去するステップ、
(5)前記サンプルをイメージングして、結合した標識イメージャー鎖の位置及び数を検出するステップ、
(6)前記結合した標識イメージャー鎖からのシグナルを消光するステップ、及び
(7)他の全ての標識イメージャー鎖に対してユニークなヌクレオチド配列を有する標識イメージャー鎖を毎回用いてステップ(3)~(6)を繰り返すステップ
を含む、方法。」が記載され、同請求項3に「前記標的特異的結合パートナーが抗体又は抗体断片である」こと、同請求項6に「前記標識イメージャー鎖が、蛍光標識イメージャー鎖である」こと、同請求項8に「前記サンプルが、細胞、細胞溶解物、又は組織溶解物である」こと(いずれも引2a)が記載されていることに照らすと、引用文献2には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「(1)1つ以上の標的の存在について試験される組織溶解物を1つ以上の抗体である標的特異的結合パートナーに接触させるステップであって、各標的特異的結合パートナーがドッキング鎖に連結され、異なる特異性の標的特異的結合パートナーが異なるドッキング鎖に連結される、ステップ、
(2)任意選択的に、結合しなかった標的特異的結合パートナーを除去するステップ、
(3)前記組織溶解物を、ドッキング鎖に相補的なヌクレオチド配列を有する、蛍光標識イメージャー鎖に接触させるステップ、
(4)任意選択的に、結合しなかった蛍光標識イメージャー鎖を除去するステップ、
(5)前記組織溶解物をイメージングして、結合した蛍光標識イメージャー鎖の位置及び数を検出するステップ、
(6)前記結合した蛍光標識イメージャー鎖からのシグナルを消光するステップ、及び
(7)他の全ての蛍光標識イメージャー鎖に対してユニークなヌクレオチド配列を有する蛍光標識イメージャー鎖を毎回用いてステップ(3)~(6)を繰り返すステップ
を含む、方法。」(以下、「引用発明」という。)
4.本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明は、(1)のステップの後に(2)のステップを行う場合を含み、組織溶解物中に存在する、ある標的に結合する標的特異的結合パートナーと、それとは別の標的に結合する標的特異的結合パートナーの2つ以上の標的特異的結合パートナーとを使用する態様を明らかに含むので、引用発明の「(1)1つ以上の標的の存在について試験される組織溶解物を1つ以上の標的特異的結合パートナーである抗体に接触させるステップであって、各標的特異的結合パートナーがドッキング鎖に連結され、異なる特異性の標的特異的結合パートナーが異なるドッキング鎖に連結される、ステップ」、「(2)任意選択的に、結合しなかった標的特異的結合パートナーを除去するステップ」は、本願発明の「(1)2つ以上の標的の存在に関して試験される試料を2つ以上の標的特異的結合パートナーと接触させることであって、各標的特異的結合パートナーが核酸鎖に直接的に結び付けられ、前記核酸鎖がドッキング鎖であり、異なる特異性の標的特異的結合パートナーが異なるドッキング鎖に結び付けられ、前記試料が組織試料である、前記接触させること」、「(2)任意に、非結合標的特異的結合パートナーを除去すること」に、それぞれ相当する。
引用発明の「蛍光標識イメージャー鎖」、「鎖に相補的なヌクレオチド配列を有する蛍光標識イメージャー鎖」は、本願発明の「異なる蛍光標識が付着したイメージャー鎖」、「鎖に直接的に結合することが可能な標識化イメージャー鎖」にそれぞれ相当するので、引用発明の「(3)前記組織溶解物を、ドッキング鎖に相補的なヌクレオチド配列を有する蛍光標識イメージャー鎖に接触させるステップ」は、本願発明の「(6)前記試料を」「鎖に直接的に結合することが可能な標識化イメージャー鎖と接触させることであって、前記標識化イメージャー鎖の各々は、異なる蛍光標識が付着したイメージャー鎖を含む、前記接触させること」に相当する。
引用発明の「(5)前記組織溶解物をイメージングして、結合した蛍光標識イメージャー鎖の位置及び数を検出するステップ」、「(6)前記結合した蛍光標識イメージャー鎖からのシグナルを消光するステップ」、「(9)任意に、ステップ(1)~(8)またはこれらの任意のサブセットを反復すること」は、本願発明の「(7)前記試料をイメージングして、結合した標識化イメージャー鎖の存在と位置を検出すること」、「(8)前記結合した標識化イメージャー鎖からシグナルを消失させること」、「(9)任意に、ステップ(1)~(8)またはこれらの任意のサブセットを反復すること」にそれぞれ相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「2つ以上の標的の位置に関して組織試料を試験するための方法であって、
(1)2つ以上の標的の存在に関して試験される試料を2つ以上の標的特異的結合パートナーと接触させることであって、各標的特異的結合パートナーが核酸鎖に直接的に結び付けられ、前記核酸鎖がドッキング鎖であり、異なる特異性の標的特異的結合パートナーが異なるドッキング鎖に結び付けられ、前記試料が組織試料である、前記接触させることと、
(2)任意に、非結合標的特異的結合パートナーを除去することと、
(6)前記試料を、前記鎖に直接的に結合することが可能な標識化イメージャー鎖と接触させることであって、前記標識化イメージャー鎖の各々は、異なる蛍光標識が付着したイメージャー鎖を含む、前記接触させることと、
(7)前記試料をイメージングして、結合した標識化イメージャー鎖の存在と位置を検出することと、
(8)前記結合した標識化イメージャー鎖からシグナルを消失させることと、
(9)任意に、ステップ(1)~(2)、(6)~(8)またはこれらの任意のサブセットを反復することと、を含む、方法。」で一致し、以下の点で相違している。
(相違点)
本願発明では、
(2)の工程と(6)の工程の間に
「(3)前記試料を、前記異なるドッキング鎖に対して相補性を有する環状アンプリファイアー鎖と接触させることと、
(4)任意に、非結合環状アンプリファイアー鎖を除去することと、
(5)前記ドッキング鎖の鎖状反復を含む増幅鎖を作り出すために前記ドッキング鎖をローリングサークル増幅で増幅させること」のドッキング鎖の増幅工程を設け、増幅工程で得られた鎖(増幅鎖)に標識化イメージャー鎖を接触させているのに対し、
引用発明では、上記のドッキング鎖の増幅工程を含むことなく、ドッキング鎖に標識化イメージャー鎖を接触させている点
5.相違点の検討
引用文献3の【0027】には、発明の要旨として、「少量の分析物、例えばタンパク質およびペプチドを検出するための組成物および方法」(下線は当審で付与した。以下も同様である。)として、「核酸プライマーを分析物と結合させ、次いでこのプライマーを用いて、環状DNA分子のローリングサークル複製を媒介することが関与する」こと(引3b)、「ローリングサークル増幅を介して、任意の目的分析物から増幅されたシグナルを生じさせる」こと(引3b)、「この増幅は、等温性であり、各プライマーから大量の核酸の生産を導くことができる」こと(引3b)が記載されている。
また、上記記載をより具体化した説明として、同【0028】に、「プライマーおよび特異的結合分子、例えば検出されるタンパク質に特異的な抗体、のコンジュゲートを用いて、ローリングサークル複製プライマーを種々のタンパク質と結合させる」こと(引3b)、「種々のタンパク質はそれぞれ、後に異なるDNAサークルのローリングサークル複製をプライムする異なるローリングサークル複製プライマーと結合可能であ」り、「この結果、種々のタンパク質それぞれに対して別個の増幅されたDNAが生じる」こと(引3b。なお【図11】(引3d)にも同趣旨の記載がある。)、同【0030】に、「開示されている方法は、任意の所望の分析物に関する増幅されたシグナルを生じさせる単純で感度のよい方法を提供する」こと(引3b)、同【0036】に、図1を示して「免疫RCAと称される、開示されている方法の別の好ましい形態では、ローリングサークル複製プライマーの5’末端を抗体と結合させ」「環状DNA(増幅標的サークルと称される)、DNAポリメラーゼ、およびヌクレオチドの存在下、ローリングサークル反応により多重コピーの環状DNA配列からなるDNA分子(直列型配列DNAと称される)が生じ、これは抗体と結合したままである(図1)」こと(引3b、引3c)が記載されている。
以上の引用文献3の記載からすると、引用文献3には、少量且つ任意の目的分析物(タンパク質等)を感度よく検出するために、プライマーおよび検出されるタンパク質に特異的な抗体(特異的結合分子)のコンジュゲートを目的分析物と結合したままで、環状DNA(増幅標的サークルと称される)、DNAポリメラーゼ、およびヌクレオチドの存在下、ローリングサークル反応により、多重コピーの環状DNA配列からなるDNA分子(直列型配列DNAと称される)を生じさせ、このローリングサークル反応による増幅を介して、目的分析物から増幅されたシグナル(DNA)を生じさせることが記載されていると認められる。
一方、引用発明の「ドッキング鎖に連結され」た「標的特異的結合パートナーである抗体」と、引用文献3に記載された「プライマーおよび検出されるタンパク質に特異的な抗体(特異的結合分子)のコンジュゲート」とは、共に、核酸鎖に連結された抗体であり、目的分析物(タンパク質等)と結合したままで、この核酸鎖を介して目的分析物(タンパク質等)の検出が行われるものである。
そして、引用文献3に記載された、少量且つ任意の目的分析物(タンパク質等)を感度よく検出することは、引用発明においても求められる技術課題であるといえる。
そうすると、引用発明において、上記の技術課題を解決するために、引用文献3に記載された、目的分析物(タンパク質等)から増幅されたDNA(シグナル)を生じさせるローリングサークル反応による増幅を介する技術手段を、引用発明に適用して、上記4.の(相違点)として挙げた本願発明の発明特定事項、すなわち、「「(3)前記試料を、前記異なるドッキング鎖に対して相補性を有する環状アンプリファイアー鎖と接触させることと、(4)任意に、非結合環状アンプリファイアー鎖を除去することと、(5)前記ドッキング鎖の鎖状反復を含む増幅鎖を作り出すために前記ドッキング鎖をローリングサークル増幅で増幅させること」のドッキング鎖の増幅工程を設け、増幅工程で得られた鎖(増幅鎖)に標識化イメージャー鎖を接触させ」るとの発明特定事項を引用発明で採用することは当業者が容易に想到し得るものである。
また、上記の相違点に基づき、本願発明が、当業者の期待、予測を超える格別顕著な効果を奏するとは認められない。
6.審判請求人の主張
審判請求人は、以下の理由(1)、(2)を提示して、本願発明が進歩性を有する旨を主張する。
(1)引用文献3の段落0041、段落0068等、段落0057、実施例2-9によると、引用文献3は、抗体-DNAコンジュゲートを、単離され、固体上に固定された抗原とともに用いる方法を記載するものであり、引用文献3には、組織試料において、同一組織に共在しうる別々の標的を検出するために、抗体-DNAコンジュゲートを多重的に使用することが、教示も示唆もされていないから、当業者は、組織試料中の標的の多重検出を実行するため、引用文献2に記載の方法を改変し、マイクロアレイ用の固体支持体上に分離、固定化されたサンプルに適用される引用文献3に記載の方法を利用することを、容易に想到し得たとはいえない。
(2)当業者は、請求項に係る発明が十分に強力なシグナルを生成し得るか否か、あるいは、請求項に係る発明がイメージングされている標的間の特定の切り替え手段を必要とするか否かを、実際に実験的に検証することなく、容易に予測することはなかったし、まして当業者は、引用文献2に記載の方法に、「ドッキング鎖を環状アンプリファイアー鎖により増幅してから検出を行うこと」等(これらは、シグナルの強度及び/又は標的間の特定の切り替え手段に影響し得る)を含めることによる影響を、実際に実験的に検証することなく、容易に予測することはなかった。
まず、上記の理由(1)について検討する。
本願の優先日前に頒布された周知文献1に、「抗体に結合体化された核酸分子は、RCA用のプライマーとして使用される。このように、RCA産物は、標的分析物と相互作用している抗体に係留され、それにより細胞または組織試料中の試料中の被分析物の検出を可能にする。」(周1a)こと、同周知文献2に、「ローリングサークルレプリケーション(RCR)反応は、当該技術分野でよく記載されており、サンプル中の標的核酸分子の検出、すなわち標的核酸分子の複製または増幅のための様々なアッセイにおいて有用であることが実証されて」いること(周2a)、「抗体に結合した核酸分子は、RCAのプライマーとして使用される。したがって、RCA産物は標的被分析物と相互作用している抗体に係留され、それによって、例えば細胞または組織サンプル中の被分析物の局所的な検出が可能になる。」こと(周2b)、同周知文献3に、「immunoRCAでは・・・増幅の結果、環状DNA配列の数百コピーを含む長いDNA分子が生じ、Abに結合したまま、様々な方法で検出することができ」「immunoRCAを用いると、ELISAやマイクロパーティクル・フォーマットの従来の酵素免疫測定法を上回る感度で分析対象物が検出された」こと(周3a)がそれぞれ記載されていることに照らすと、引用文献3に記載された、抗体-DNAコンジュゲートが、様々なアッセイや方法において、検出感度のよい方法として利用でき、組織試料中の被分析物の検出にも利用可能との認識を、本願の優先日当時の当業者が有していたものと認められる。
一方、引用文献3の【0028】に「好ましい態様では、複数の種々のタンパク質または分析物が直接または間接的に結合されているマイクロアレイを用いて、(それらが試験されるサンプル中に存在する場合、)複数のタンパク質が検出可能である」、「例えば、種々のタンパク質がアレイ中のあらかじめ決められた位置に固定されている場合、増幅DNAの位置は関与するタンパク質を指し示すことが可能である」(引3b。なお【0032】(引3b)にも同趣旨の記載がある。)、同【0034】に「例えば、図11では、分析物捕獲物質(ハプテン1およびハプテン2とカップリングされた抗体)はそれぞれサンプル1およびサンプル2と混合することができる」、「異なるサンプル由来の分析物が基質上の同一部位に捕獲される場合(本方法の好ましい様式)」(引3b)との記載があり、他方、引用文献3の請求項1に、「単離され、固体上に固定された抗原」に対応した記載が存在せず、分析物は、ローリングサークル反応による増幅工程である、工程(a)、(b)、または(c)の前だけでなく、工程(a)、(b)、または(c)と同時に、あるいは工程(a)、(b)、または(c)の後に、分析物サンプルから分離されることが記載されていることからすると(引3a)、審判請求人が主張する「単離され、固体上に固定された抗原とともに用いる方法」は、抗体-DNAコンジュゲートを利用する際の一態様に過ぎないものと認められる。
そうすると、本願発明のような「組織試料において、同一組織に共在しうる別々の標的を検出するために、抗体-DNAコンジュゲートを多重的に使用する」との記載が、引用文献3に存しなかったとしても、少量且つ任意の目的分析物(タンパク質等)を感度よく検出するという技術課題を解決するために、引用文献3に記載された、目的分析物から増幅されたDNA(シグナル)を生じさせるローリングサークル反応による増幅を介する技術手段を、引用発明に適用することが当業者に格別の創意工夫を要するとは認められない。
次に、上記の理由(2)について検討する。
引用文献3に記載された、ローリングサークル増幅を介する技術手段を適用することにより、目的分析物に基づく増幅されたシグナル(DNA)が生じることは、引用文献3の【0028】、【0036】、図1(引3b、引3c)に記載されており、イメージングされている標的間を切り替える具体的な手段も、引用文献2の【0092】~【0095】及び図4(引2e)に記載されているので、これらに基づく本願発明の効果は、引用文献2、3の記載に基づき、当業者が期待し、予測し得るものと認められる。
また、引用文献3に記載された「ドッキング鎖を環状アンプリファイアー鎖により増幅してから検出を行う」手法は、様々なアッセイや方法において、検出感度のよい方法として利用でき、組織試料中の被分析物の検出にも利用可能なことは、上記の周知文献1~3が示すように、当業者に一般的に知られていたものと認められるので、本願発明の効果の予測において、実験的な検証が不可欠であったとは認められない。
したがって、上記の理由(1)(2)は、いずれも理由がなく、審判請求人の主張は採用できない。
7.小括
上記1~6の次第であるから、本願発明は、引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明と引用文献3の記載事項、及び、本願の優先日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-017198