特許拒絶査定不服審判
2015-011665
竪型射出成形機
- 審判番号
- 2015-011665
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-155169外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年06月22日
- 審決日
- 2017年04月04日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友重機械工業株式会社
- 【請求人代理人】小島 誠
- 分類
- P18 .121-WZ (B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-155169「竪型射出成形機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 18244〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月13日を出願日とする出願であって、平成26年11月12日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月15日に手続補正書と意見書が提出されたが、同年3月20日付け(発送日:同年3月24日)で拒絶査定された。これに対し、同年6月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたが、同年7月21日付けで前置報告書が作成され、同年8月25日に上申書が提出され、平成28年12月2日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月8日に手続補正書と意見書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年2月8日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであって、そのうち、本願の請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「鉛直方向下側の面に上側金型を取り付け可能な上側プラテンと鉛直方向上側の面に下側金型を取り付け可能な下側プラテンとを有する竪型射出成形機であって、
前記上側プラテンは、該上側プラテンを鉛直方向に貫通する射出ノズル挿入孔と、該上側プラテンの側面から該射出ノズル挿入孔に通じるパージ材受け皿挿入孔とを有し、
前記パージ受け皿挿入孔は、前記上側プラテンの側面から水平方向に貫通し、
前記パージ受け皿挿入孔の長さよりも長いパージ材受け皿を移動させる駆動装置により前記パージ受け皿挿入孔の長さよりも長い前記パージ材受け皿を前記パージ材受け皿挿入孔内で移動させながらパージを実行する、
ことを特徴とする竪型射出成形機。」
第3 平成28年12月2日付けの拒絶理由の概要
当審における平成28年12月2日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、要するに、「本願発明は、その出願前日本国内において頒布された下記引用文献1及び2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献1:特開昭58-101023号公報
引用文献2:特開2000-167874号公報」
というものを含むものである。
第4 当審拒絶理由についての判断
1 刊行物の記載事項
(1)引用文献1には、「円盤状記録媒体成形装置」に関して、図面とともに次の記載がある。(下線は合議体が付与。以下同じ。)
ア「固定板の下面に設けられた上金型と、移動板の上面に設けられ、その移動板の上下動に伴って前記上金型に離接可能に設けられた下金型と、前記固定板上に上下動可能に配され、下降時に前記固定板に設けられた第1の孔を貫通して前記上下金型間に樹脂を注入する射出シリンダと、前記固定板の側面から前記第1の孔に連通するよう設けられた第2の孔と、その第2の孔に挿入可能で、挿入時に前記第1の孔を閉成する受皿とを有する円盤状記録媒体成形装置。」(特許請求の範囲)
イ「本発明の、円盤状記録媒体成形装置は水平対向型締め機とその上部に縦型射出機を配設するとともに、水平対向型締め機における問題点である不動作時に、ノズル孔より金型間に異物が落下することを軽減せんとするものである。」(第2頁右上欄第13行~第18行)
ウ「前記射出シリンダ11は保持部材13の中央の後端部を貫挿して垂直に取りつけられ先端のノズル26は上部固定板2の中央に突設した孔27を通して上金型8の中心部に設けられたノズル受け28に所定の圧力で押圧されている。」(第3頁右上欄第15行~第19行)
エ「円盤状記録媒体成形装置を運転起動及び終了時や、スタンパ交換原料交換などにおいては、成形動作を止めて射出シリンダ11を上昇させて、射出シリンダ内不要加熱溶融樹脂32を射出シリンダ外部に出さないとノズル26の先端部内の残留溶融樹脂が、劣化と硬化しやすく、高品質、高精度成形に不適に付き出来るだけ早く射出シリンダより外部に出す必要がある。射出シリンダ11を上昇させた状態では、上記固定板の孔27に、不要加熱溶融樹脂の劣化及び硬化したくず、空気中の浮遊物、摺動部からの油漏れ等予期出来ない異物がノズル受28を通してスタンパ29,29’間に落ちこむ。この様な欠点を取り除くために本発明では射出シリンダ内不要加熱溶融樹脂取出し用の孔30を上部固定板2に設けたものである。
この取出し孔30は上部固定板2の側面より、射出シリンダ11の先端部が挿入される前記孔27と直角に交わるように水平に貫通して設けられている。第3図の状態から射出シリンダ内不要加熱溶融樹脂32を外部に出す為に、ノズル受28と圧接している射出シリンダ11を上昇する様移動シリンダ12 、12’に上昇用油圧路16、16’を加圧して、上部固定板2の孔27と直角に交わる不要樹脂取出し用孔30の上限近くまで上昇して止める。この取出し孔30は、第7図の様に側面から見ると、下面が水平で、上面は半円型状になっているので、上部固定板2の側面より、受皿31を入れて、上部固定板の孔27の下方を、平板状の受皿31で、ノズル受28とスタンパ29,29’からなる固定板内空間を遮断することができ、異物の落下を阻止するとともに、射出シリンダ内の不要加熱溶融樹脂32を受皿31に出すことが出来る。」(第3頁右下欄第5行~第4頁左上欄第17行)
オ「
」(図1)
カ「
」(図6及び図7)
(2)引用文献2の記載等
引用文献2には、「射出成形機の樹脂回収装置」に関して、図面とともに次の記載がある。
ア「【0002】
【従来の技術】射出成形機において例えば樹脂を交換する場合、ホッパの原料樹脂は交換するとしても射出シリンダの元の原料樹脂を出し切って新たな原料樹脂と置換しなければならない。したがって、その際1ショット(射出シリンダの1往復)ごとに例えば直径が30cm、高さ8cm程度の樹脂の塊ができる。この塊は最初の全て元の原料樹脂のものから新たな原料樹脂と混合した塊まで5個前後排出する必要があるのが通常である。このような樹脂の塊は、特別な粉砕設備でないと粉砕が困難であるために、現状ではリサイクルすることなく廃棄処分されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような点に鑑みて、原料樹脂を射出シリンダの射出口から射出させて容易に粉砕可能な厚みで回収するための射出成形機の樹脂回収装置を提供することを目的とする。」(段落【0002】~【0003】)
イ「【0010】図4乃至図6を基に別の実施の形態によるスライド式の樹脂回収装置を説明する。基台22のガイドレール21に沿ってスライド溝23がスライド可能に係合することにより、基台22内の例えばピニオン・ラックを利用した駆動装置により射出方向に所定距離だけ間欠的に駆動される縦動基台20と、そのガイドレール24に沿ってスライド溝26が係合して縦動基台20に収納された同様な駆動装置により射出方向に対して直交方向に繰返し往復駆動される横動基台25と、この横動基台に取出し可能に載置される樹脂回収盤28とを備えている。
【0011】横動基台25の往復駆動の速度の下限は、原料樹脂が厚くならない程度に設定される。縦動基台20は横動基台25の折返し時に往復の原料樹脂が重ならないように左右の折返し位置に達するごとに所定距離だけ先方へスライドさせられる。樹脂回収盤28の縦幅は、その形状が前記射出口の下方位置近辺から射出開始時点の射出位置に至る距離に縦方向の全スライド距離を加算した距離よりも広めに設定されている。樹脂回収盤28の横幅を狭くする程折返しの回数及び縦幅は長くなる。
【0012】これにより、樹脂回収盤28には、図5及び図6に示すように、先方へ間欠的にスライドしつつ横方向へ往復駆動を繰返すことにより、射出圧が徐々に弱まるのに伴って横方向の複数ライン状の原料樹脂の塊9が形成される。
【0013】尚、前述の実施の形態において、横動基台に付属する縦動基台は上下に入替えても良く、この縦動基台は折返し位置近辺での厚みが多少厚くなるのを甘受するならば廃止することもできる。前者の実施の形態の回転基台の回転速度或は後者の左右の往復速度及び縦方向の単位スライド距離は、場合により省スペースのためには互いに隣接する面状の塊になるように設定することもできる。
【0014】
【発明の効果】・・・原料樹脂が複数ライン状の塊で回収されることにより、団子状になるのが回避される。」(段落【0010】~【0014】)
2 引用文献1に記載された発明
引用文献1の記載及び図面を整理すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「上部固定板2の下面に設けられた上金型8と、移動板4の上面に設けられ、その移動板の上下動に伴って前記上金型8に離接可能に設けられた下金型7と、前記上部固定板上に上下動可能に配され、下降時に前記上部固定板に設けられた第1の孔27を貫通して前記上下金型間に樹脂を注入する射出シリンダ11と、前記上部固定板2の側面から前記第1の孔27に連通するよう設けられた第2の孔である射出シリンダ内不要加熱溶融樹脂取出し用の孔30と、その第2の孔に挿入可能で、挿入時に前記第1の孔を閉成する受皿31とを有し、射出シリンダ内の不要加熱溶融樹脂32を受皿31に出すことができ、取出し孔30は上部固定板2の側面より、射出シリンダ11の先端部が挿入される前記孔27と直角に交わるように水平に貫通して設けられている、円盤状記録媒体成形装置。」
3 本願発明と引用発明との対比
引用発明の「上金型」は、本願発明1の「上側金型」に相当し、同様に「上部固定板」は「上側プラテン」に、「下金型」は「下側金型」に、「移動板」は「下側プラテン」に、「第1の孔27」は「射出ノズル挿入孔」に、「第2の孔である射出シリンダ内不要加熱溶融樹脂取出し用の孔30」は「パージ材受け皿挿入孔」に、「受皿31」は「パージ材受け皿」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明の「取出し孔30は上部固定板2の側面より、射出シリンダ11の先端部が挿入される前記孔27と直角に交わるように水平に貫通して設けられている」ことは、本願発明の「パージ受け皿挿入孔は、前記上側プラテンの側面から水平方向に貫通」することに相当する。
また、引用発明は金型と射出シリンダが上下方向に配置される成形装置であるから、引用発明の「円盤状記録媒体成形装置」は本願発明1の「竪型射出成形機」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「鉛直方向下側の面に上側金型を取り付け可能な上側プラテンと鉛直方向上側の面に下側金型を取り付け可能な下側プラテンとを有する竪型射出成形機であって、
前記上側プラテンは、該上側プラテンを鉛直方向に貫通する射出ノズル挿入孔と、該上側プラテンの側面から該射出ノズル挿入孔に通じるパージ材受け皿挿入孔とを有し、
前記パージ受け皿挿入孔は、前記上側プラテンの側面から水平方向に貫通する、竪型射出成形機。」
である点で一致し、
次の点で相違する。
[相違点1]
パージの実行に関し、本願発明は「パージ材受け皿を移動させる駆動装置により」「前記パージ材受け皿を前記パージ材受け皿挿入孔内で移動させながらパージを実行する」と特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。
[相違点2]
パージ材受け皿に関し、本願発明は「パージ受け皿挿入孔の長さよりも長い」と特定するのに対して、引用発明ではそのような特定がない点。
4 相違点についての判断
(1)相違点1について
引用文献2には、上記摘示第4 1(2)ア及びイより、樹脂交換において射出シリンダから排出される樹脂が塊になって処理が困難になるのを解消するために、駆動装置により樹脂回収盤を往復駆動させながら、排出される樹脂をライン状で回収することが記載されている。
このように、排出する樹脂をライン状で回収すれば、排出する樹脂を厚くならないように、また重ならないように回収できるので(段落【0011】)、排出する樹脂の高さを増大させることなく、排出する樹脂を樹脂回収盤で受け取れると解することが相当である。
してみれば、引用文献2に接した当業者は、樹脂回収盤を往復移動させながら、すなわち樹脂回収盤を移動させながら不要加熱樹脂を排出することを容易に推考できるというべきである。
ところで、引用発明の「第2の孔27に挿入可能で、挿入時に前記第1の孔を閉成する受皿31」について、上記摘示第4 1(1)エに「射出シリンダ内不要加熱溶融樹脂32を外部に出す為に、ノズル受28と圧接している射出シリンダ11を・・・不要樹脂取出し用孔30の上限近くまで上昇して止める。この取出し孔30は、・・・上部固定板2の側面より、受皿31を入れて、上部固定板の孔27の下方を、平板状の受皿31で、ノズル受28とスタンパ29,29’からなる固定板内空間を遮断することができ、異物の落下を阻止するとともに、射出シリンダ内の不要加熱溶融樹脂32を受皿31に出すことが出来る」との記載から、受皿は不要加熱溶融樹脂の排出時に挿入操作されるものであることがみてとれ、また、次の成形操作を行うためには、排出された不要加熱溶融樹脂を成形装置外に取り出し、第1の孔の閉成を解除するように第2の孔から受皿が取り出されることは当業者に明らかであるから、受皿は取り出し孔30内で移動させながら取り出されるものと解される。そして、定常運転状態で射出シリンダ内には少なくとも数ショット分の樹脂が投入されていることは当業者に周知であるから、運転終了時や、スタンパ交換原料交換などにおいて引用発明の成形装置の射出シリンダの中には、数ショット分の樹脂が投入されていて、少なくともこれらの大部分が排出されなければならず、その排出量は少量とはいえないものである。
そうすると、引用発明において、受皿を取り出し孔30内で移動させながら取り出す際、引用文献2から当業者が推考できるように、駆動装置により受皿を移動させながら不要加熱溶融樹脂をパージすることで、当該樹脂をライン状にして回収することは当業者にとり想到容易である。
また、引用文献2の記載事項に照らせば、相違点1に関する発明特定事項により奏される効果は、当業者が予測し得ない格別顕著なものでもない。
(2)相違点2について
引用文献2には、上記摘示第4 1(2)イに「樹脂回収盤28の横幅を狭くする程折返しの回数及び縦幅は長くなる。」とあり、回収する樹脂の量に対応して、排出される樹脂を回収する樹脂回収盤の縦幅を長く調整することが記載されているから、引用発明において、受皿の長さを排出される不要加熱樹脂の量に応じ、十分な容量となるように第2の孔より長くすることは、当業者が適宜なし得ることである。
また、相違点2に関する発明特定事項により奏される効果は、当業者が予測し得ない格別顕著なものでもない。
(3)平成29年2月8日提出の意見書における主張について
請求人は、上記意見書において、引用文献2は、射出ノズルから排出される射出位置が射出圧の低下により変化することを利用するものであるから、これを、射出圧が変化しても、射出位置は変わらない竪型の射出装置から射出される不要溶融樹脂の処理に関するものである引用文献1に適用しようとすることに、阻害要因が存在する旨主張する。
しかしながら、竪型、横型といった射出の向きに関わらず、排出される樹脂の射出位置において樹脂が塊となれば処理困難となることは共通する課題であるから、射出の向きの違いは、適用における阻害要因といえるものではない。
よって、上記主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち、平成29年2月8日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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