特許拒絶査定不服審判
2015-003865
低粘性を特徴とする耐酸素プラズマ組成物およびそれに関連する方法
- 審判番号
- 2015-003865
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-504154外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年02月27日
- 審決日
- 2016年10月11日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】グリーン, ツイード オブ デラウェア, インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 分類
- P18 .537-Z (C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-504154「低粘性を特徴とする耐酸素プラズマ組成物およびそれに関連する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日国際公開、WO2009/126708、平成23年 5月26日国内公表、特表2011-516693〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成21年4月8日(パリ条約による優先権主張 2008年4月8日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成24年11月13日付けで拒絶理由が通知され、平成25年8月5日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され、同年10月21日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成26年4月28日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正されたが、同年10月24日付けで拒絶査定がされたところ、平成27年2月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 請求項1~4に記載された特許を受けようとする発明
平成26年4月28日に提出された手続補正書による補正は、特許請求の範囲について明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって適法なものであるので、本願の請求項1~36のうち、請求項1~4に記載された特許を受けようとする発明(以下、それぞれ、「請求項1に係る発明」のようにいう。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
(i)少なくとも1個のシアノ基を有する少なくとも1種の硬化部位含有モノマーからなるフルオロポリマー;
(ii)官能性ビフェニル系化合物と
式(I):
HON=R1=NOH
(R1は、炭素数1~10のアルキル基および炭素数1~10のアリール基から選ばれる)で示されるジオキシム化合物および式(IV):
【化1】
(Yは、置換または非置換のアルキル基、アリール基またはアラルキル基もしくは非置換または置換の、全部または一部がハロゲン化された炭素数~22のアルキル基、アリール基またはアラルキル基から選ばれ;R4は、水素原子または炭素数1~6の置換または非置換の低級アルキル基またはアミノ基から選ばれ;R5は、独立して水素原子、炭素数1~6の置換または非置換の低級アルキル基、アミノ基またはヒドロキシル基から選ばれる)で示されるモノアミジン系化合物の少なくとも1種とを含む硬化系;およびパーフルオロポリエーテルを含む硬化性フルオロエラストマー組成物。
【請求項2】
フルオロポリマーが、さらにテトラフルオロエチレンおよびパーフルオロアルキルビニルエーテルを含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
官能性ビフェニル系化合物が、式(II):
【化2】
(R2およびR3は、おのおの独立して炭素原子、アルキル、ハロゲン化アルキル、パーフルオロアルキル、アルキルエーテル、ハロゲン化アルキルエーテルおよびパーフルオロアルキルエーテルから選ばれ;Zは、独立してアミノ基、メルカプト基、スルフヒドリル基およびヒドロキシル基から選ばれ;Aは、独立してフッ素原子、R2および式(III):
【化3】
で示される化合物から選ばれ;Jは独立してAおよび式(III)で示される化合物から選ばれる;ただし、rが0およびR2が炭素原子であるとき、JまたはAの少なくとも一方は式(III)
【化4】
で示される化合物ではない)
で示される化合物から選ばれる請求項1記載の組成物。
【請求項4】
官能性ビフェニル系化合物が、2,2-ビス[3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパンである請求項1記載の組成物。」
第3 原査定の概要
原審審査官は、平成25年10月21日付けで下記のとおりの拒絶理由を通知し、原査定では、当該拒絶理由が解消していないとした。
<拒絶理由通知>
「 理 由
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
記
・請求項1~36
(1)・・・(中略)・・・
・・・」
<拒絶査定>
「この出願については、平成25年10月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
・・・」
第4 当審の判断
平成26年4月28日付けの手続補正書により補正された本願の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するか否かにつき検討する。
1 化学分野における各技術用語の意義
(1)「ビフェニル」
ア 第2版標準化学用語辞典(平成17年3月31日発行、編者:社団法人日本化学会、発行所:丸善株式会社)には、「ビフェニル」について「二つのベンゼン環が単結合によって直接結合した化合物.
」と記載されている(562頁左欄)。
イ IUPAC命名法では、「ビフェニル」を親構造(parent structure)を指す名称として、ビフェニル構造の置換体が体系的に命名されている(URL,http://www.acdlabs.com/iupac/nomenclature/93/r93_125.htm)。
(2)「官能性」
化学大辞典2(縮刷版第36刷、1997年9月20日発行、編集者:化学大辞典編集委員会、発行所:共立出版株式会社)には、「官能性」について「高分子化学において使用されている用語.一つの化合物が高分子化合物を生成する際に示す潜在的な結合手の数をいう.」と記載されている(669頁右欄~670頁左欄)。
2 本願の請求項1に記載された「官能性ビフェニル系化合物」の意義
(1)本願の請求項1に記載された「官能性ビフェニル系化合物」について、本願の明細書の段落【0019】~【0022】には「官能性ビフェニル系硬化剤は、この分野の技術において公知のまたは開発されるいかなるものであってもよく;官能性ビフェニル系硬化剤は、1種またはいかなる種類の組合せであってもよい。官能性ビフェニル系硬化剤は、たとえば、2,2-ビス[3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(「BOAP」)またはその誘導体化合物であってもよい。これらの例としては、1個以上の酸素原子を有していてもよく、置換されていてもよく、少なくとも2個のアミノフェニル基、好ましくは2個のアミノフェノル基を有する、分岐状もしくは直鎖状のアルキル、ハロゲン化アルキル、パーハロゲン化アルキルおよびパーフルオロアルキルを有する化合物があげられる。さらに、選択された官能性ビフェニル系硬化剤は、約240℃以下、約230℃以下、さらには約225℃以下の融点を有することが望ましい。
官能性ビフェニル系硬化剤は、式(II):
【化1】
で表わされるものであってもよい。
式(II)において、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素原子または、たとえば、アルキル、ハロゲン化アルキル、パーフルオロ化アルキル、アルキルエーテル、ハロゲン化アルキルエーテル、パーフルオロ化アルキルエーテルなどの炭化水素基から選ばれる。フッ素結合またはハロゲン結合していない1個または1個以上の炭素原子は、置換または非置換されていてもよい。式I中のZ基は、アミノ基、メルカプト基、スルフヒドリル基およびヒドロキシル基を表わし、繰り返しのそれぞれのZに対して独立して選択されてもよい。Aは、独立してフッ素原子、前記のR2として好適な基としてあげられたもの、および式(III):
【化2】
で表わされる化合物から選ばれる。
Jは、独立して前記のAとして好適な基としてあげられたものおよび式(III)で表わされる化合物から選ばれる。「r」は、0または1の整数から選ばれる。しかしながら、rが0でありR2が炭素原子である形態においては、JまたはAの少なくとも1個は、式(III)で表わされる化合物ではない。」と記載されている。
しかしながら、明細書中の当該記載では、請求項1に記載された「官能性ビフェニル系化合物」に包含される化合物を単に例示しているにすぎず、請求項1に記載された「官能性」や「ビフェニル系化合物」や「官能性ビフェニル系化合物」の意義を何ら定義づけるものではない。
そうしてみると、本願の明細書の記載を参酌しても、請求項1に記載された「官能性」や「ビフェニル系化合物」や「官能性ビフェニル系化合物」の意義が当業者にとって不明である。
(2)次に、化学分野における各技術用語の意義に基づいて、請求項1に記載された「官能性ビフェニル系化合物」の意義について検討する。
上記1にあるように、「ビフェニル」とは「二つのベンゼン環が単結合によって直接結合した化合物」を意味し、「官能性」とは「一つの化合物が高分子化合物を生成する際に示す潜在的な結合手の数」を意味する。
また、「系」とは「ある関係をもって、一つのつながりやまとまりをなすもの。系統。」あるいは「名詞に付いて、一つのまとまりのある関係にあることを表す語。」を意味する(URL,https://kotobank.jp/)。
してみると、請求項1の「官能性ビフェニル系化合物」とは、「一つの化合物が高分子化合物を生成する際に示す潜在的な結合手を有し、二つのベンゼン環が単結合によって直接結合したという関係でまとめられる化合物」を意味するものと理解される。
しかしながら、本願の明細書の段落【0019】~【0022】や請求項3、4において、上記「官能性ビフェニル系化合物」として例示されている化合物は、いずれも二つのベンゼン環が単結合によって直接結合したという関係でまとめられる化合物ではない。例えば、本願の請求項3及び明細書の段落【0020】~【0022】には「官能性ビフェニル系化合物」が式(II)で示される化合物から選ばれることが記載されているものの、当該式(II)で示される化合物は、その構造式からみて、二つのベンゼン環が単結合によって直接結合した化合物ではない。また、本願の請求項4及び明細書の段落【0019】には「官能性ビフェニル系化合物」が、2,2-ビス[3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパンであることが記載されているものの、当該2,2-ビス[3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパンの構造式は、
であるから、二つのベンゼン環が単結合によって直接結合した化合物ではない。
なお、審判請求人は、平成27年2月27日に提出した審判請求書において、「本願明細書の段落0019では、官能性ビフェニル系硬化剤又は化合物として、「2,2-ビス[3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(「BOAP」)またはその誘導体化合物」(下線部は出願人による)というように、本来の「ビフェニル」が含まれるように記載しています。」と主張しているが、技術常識からみて、2,2-ビス[3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパンから、二つのベンゼン環が単結合によって直接結合した化合物であるビフェニルが誘導されるとは認められず、いわゆる「ビフェニル」が「官能性ビフェニル系化合物」として本願の明細書に記載されているとは認められない。
そうしてみると、請求項1の「官能性ビフェニル系化合物」として記載されている請求項3、請求項4及び明細書の段落【0019】~【0022】の化合物は、化学分野における技術用語の意義に基づいて理解される化合物と整合していないと言わざるを得ない。
(3)以上を総合すると、本願の明細書の記載及び化学分野における技術用語の意義を参酌しても、請求項1に記載された「官能性ビフェニル系化合物」とは如何なる化合物を意味するのか、その意義が当業者にとって不明である。
3 小括
したがって、上記「官能性ビフェニル系化合物」が記載されている請求項1の記載では、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものではない。
第5 まとめ
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものではないから、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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