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特許拒絶査定不服審判

2015-003450

プラスティック部品の加飾装置及び加飾方法

審判番号
2015-003450
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-500126外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年02月23日
審決日
2016年10月03日
公報発行日
2017年04月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B29C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012-500126「プラスティック部品の加飾装置及び加飾方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月23日国際公開、WO2010/105780、平成24年 9月 6日国内公表、特表2012-520192〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続きの経緯 本願は、2010年3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年3月16日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月17日付けで拒絶理由が通知され、同年5月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月11日付け(発送日:同年12月16日)で拒絶査定され、これに対し、平成27年2月23日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、同年5月22日付けで前置報告書が作成され、平成28年3月7日に上申書が提出されたものである。 第2 平成27年2月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成27年2月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 平成27年2月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された 「【請求項1】 射出ツール(1)を含むインモールド加飾方法を実施する装置であって、射出ツール(1)は、第一の金型凹部(13)を有する第一のツール部(11)及び第二のツール部(12)を有するとともに、第二のツール部(12)または第一のツール部(11)が少なくとも一つの射出経路(12e)を有し、加飾フィルム(16)が、第一のツール部(11)と第二のツール部(12)との間に配置可能であり、 第一のツール部(11)の金型凹部(13)が、閉じた形状で金型凹部(13)の周囲に広がるとともに、断面が平坦であり、または、丸みを帯び、または、尖った、端面(14s)を有する、隆起したエッジ部(14)を有し、 第二のツール部(12)が、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)に対応する端面(12s)を有し、 射出ツール(1)が閉じられた際に、第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間の少なくとも一部に亘り間隙を形成する間隔(s)があり、この間隙を形成する間隔(s)が、インモールド加飾方法を実施するために用いられる加飾フィルム(16)の場合、該加飾フィルム(16)が、間隙の領域での挟み込みにより圧縮され、間隙が間に挿入され圧縮された加飾フィルム(16)により密封され、射出ツール(1)が閉じられた際に、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間隔(s)が、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの50%未満であり、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの10%以上であること、を特徴とする装置。 【請求項2】 加飾フィルム(16)が、エンドレスな加飾フィルムの形態であること、 を特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項3】 間隔(s)が、20μmから50μmの範囲であること、 を特徴とする請求項1または2に記載の装置。 【請求項4】 装置が、射出ツール(1)に関連し、帯状のエンドレスなフィルムの形態の加飾フィルムが繰り出される供給ロールを有すること、 を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。 【請求項5】 射出ツール(1)の下流に、残りの加飾フィルムが巻き取られる巻き取りロールが配置されていること、 を特徴とする請求項4に記載の装置。 【請求項6】 射出ツールが、第一のツール部(11)及び第二のツール部(12)において、複数の金型インサートを有すること、 を特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。 【請求項7】 装置を用いるインモールド加飾方法であって、装置は、第一の金型凹部(13)を有する第一のツール部(11)及び第二のツール部(12)を含む射出ツール(1)を有するとともに、第一または第二のツール部(11、12)が射出経路(12e)を有し、 以下のステップが周期的に行われること、 を特徴とする方法。 a)射出ツール(1)が閉じられた際に、加飾フィルム(16)が、第一の金型凹部(13)の境界を定め、金型凹部(13)の周囲に広がる隆起したエッジ部(14)の端面(14s)に載るように、加飾フィルム(16)の一部を第一のツール部(11)または第二のツール部(12)に提供するステップ、 b)第一のツール部(11)と第二のツール部(12)との間の、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)の領域において、第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間に、少なくとも部分的に間隙が存在し、間隙の領域において挟み込まれる、挿入された加飾フィルム(16)により、間隙が密閉される程度に、射出ツール(1)を閉じるステップであり、射出ツール(1)が閉じられた際に、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間隔(s)が、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの50%未満であり、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの10%以上であるステップ、 c)加飾プラスティック部品を製造するために、射出経路(12)を通じて溶融プラスティックを射出ツール(1)内に射出し、溶融プラスティックが、密閉された間隙を通り抜けることなく、溶融プラスティックが隆起したエッジ部(14)により囲まれる領域において、加飾フィルム(16)の裏側に射出されるステップ、 d)第一及び第二のツール部(11、12)を互いに相対的に離すように動かすことにより、射出ツール(1)を開け、射出ツール(1)から加飾プラスティック部品を取り外すステップ、 e)加飾フィルム(16)の残余部を除去して、加飾フィルム(16)のさらなる一部を準備するステップ。 【請求項8】 ステップb)において、加飾フィルム(16)が、第一のツール部(11)の第一の金型凹部(13)の隆起したエッジ部(14)と、第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との協働による、挟み込み及び/または切り取りにより、最初に部分的に切断されること、 を特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項9】 第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)が、少なくとも部分的にスタンピングエッジの形態であること、 を特徴とする請求項7または8に記載の方法。 【請求項10】 ステップa)において、ステップc)で射出される溶融プラスティックから加飾が離れるように、加飾フィルム(16)が配置されること、 を特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。 【請求項11】 加飾フィルム(16)として、積層フィルムが用いられること、 を特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。 【請求項12】 積層フィルムとして、天然繊維及び/または合成繊維の織物及び/または紙が用いられること、 を特徴とする請求項11に記載の方法。 【請求項13】 積層フィルムが、12%から20%の範囲の伸縮性を有すること、 を特徴とする請求項11または12に記載の方法。 【請求項14】 積層フィルムが、15%から20%の範囲の伸縮性を有すること、 を特徴とする請求項11または12に記載の方法。 【請求項15】 積層フィルムが、20μmから500μmの範囲の厚みであること、 を特徴とする請求項7から14のいずれか1項に記載の方法。」を、 補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された 「【請求項1】 射出ツール(1)及び該射出ツール(1)に配置される加飾フィルム(16)を含むインモールド加飾方法を実施する装置であって、前記加飾フィルム(16)として積層フィルムが用いられ、該積層フィルムが20 μmから500 μmの範囲の厚みであり、射出ツール(1)は、第一の金型凹部(13)を有する第一のツール部(11)及び第二のツール部(12)を有するとともに、第二のツール部(12)または第一のツール部(11)が少なくとも一つの射出経路(12e)を有し、加飾フィルム(16)が、第一のツール部(11)と第二のツール部(12)との間に配置可能であり、 第一のツール部(11)の金型凹部(13)が、閉じた形状で金型凹部(13)の周囲に広がるとともに、断面が平坦であり、または、丸みを帯び、または、尖った、端面(14s)を有する、隆起したエッジ部(14)を有し、 第二のツール部(12)が、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)に対応する端面(12s)を有し、 射出ツール(1)が閉じられた際に、第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間の少なくとも一部に亘り間隙を形成する間隔(s)があり、この間隙を形成する間隔(s)が、インモールド加飾方法を実施するために用いられる加飾フィルム(16)の場合、該加飾フィルム(16)が、間隙の領域での挟み込みにより圧縮され、間隙が間に挿入され圧縮された加飾フィルム(16)により密封され、射出ツール(1)が閉じられた際に、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間隔(s)が、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの50%未満であり、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの10%以上であること、 を特徴とする装置。 【請求項2】 加飾フィルム(16)が、エンドレスな加飾フィルムの形態であること、 を特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項3】 間隔(s)が、20μmから50μmの範囲であること、 を特徴とする請求項1または2に記載の装置。 【請求項4】 装置が、射出ツール(1)に関連し、帯状のエンドレスなフィルムの形態の加飾フィルムが繰り出される供給ロールを有すること、 を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。 【請求項5】 射出ツール(1)の下流に、残りの加飾フィルムが巻き取られる巻き取りロールが配置されていること、 を特徴とする請求項4に記載の装置。 【請求項6】 射出ツールが、第一のツール部(11)及び第二のツール部(12)において、複数の金型インサートを有すること、 を特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。 【請求項7】 装置を用いるインモールド加飾方法であって、装置は、第一の金型凹部(13)を有する第一のツール部(11)及び第二のツール部(12)を含む射出ツール(1)を有するとともに、第一または第二のツール部(11、12)が射出経路(12e)を有し、 以下のステップが周期的に行われること、 を特徴とする方法。 a)射出ツール(1)が閉じられた際に、加飾フィルム(16)が、第一の金型凹部(13)の境界を定め、金型凹部(13)の周囲に広がる隆起したエッジ部(14)の端面(14s)に載るように、加飾フィルム(16)の一部を第一のツール部(11)または第二のツール部(12)に提供するステップであって、前記加飾フィルム(16)として積層フィルムが用いられ、該積層フィルムが20 μmから500 μmの範囲の厚みである、ステップ、 b)第一のツール部(11)と第二のツール部(12)との間の、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)の領域において、第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間に、少なくとも部分的に間隙が存在し、間隙の領域において挟み込まれる、挿入された加飾フィルム(16)により、間隙が密閉される程度に、射出ツール(1)を閉じるステップであり、射出ツール(1)が閉じられた際に、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間隔(s)が、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの50%未満であり、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの10%以上であるステップ、 c)加飾プラスティック部品を製造するために、射出経路(12)を通じて溶融プラスティックを射出ツール(1)内に射出し、溶融プラスティックが、密閉された間隙を通り抜けることなく、溶融プラスティックが隆起したエッジ部(14)により囲まれる領域において、加飾フィルム(16)の裏側に射出されるステップ、 d)第一及び第二のツール部(11、12)を互いに相対的に離すように動かすことにより、射出ツール(1)を開け、射出ツール(1)から加飾プラスティック部品を取り外すステップ、 e)加飾フィルム(16)の残余部を除去して、加飾フィルム(16)のさらなる一部を準備するステップ。 【請求項8】 ステップb)において、加飾フィルム(16)が、第一のツール部(11)の第一の金型凹部(13)の隆起したエッジ部(14)と、第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との協働による、挟み込み及び/または切り取りにより、最初に部分的に切断されること、 を特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項9】 第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)が、少なくとも部分的にスタンピングエッジの形態であること、 を特徴とする請求項7または8に記載の方法。 【請求項10】 ステップa)において、ステップc)で射出される溶融プラスティックから加飾が離れるように、加飾フィルム(16)が配置されること、 を特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。 【請求項11】 積層フィルムとして、天然繊維及び/または合成繊維の織物及び/または紙が用いられること、 を特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。 【請求項12】 積層フィルムが、12%から20%の範囲の伸縮性を有すること、 を特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。 【請求項13】 積層フィルムが、15%から20%の範囲の伸縮性を有すること、 を特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。」 と補正するものである。 なお、下線は補正箇所であり、請求人が付したとおりである。 本件補正は、請求項1および7についてみると、請求項1および7に記載された発明を特定するために必要な事項である「加飾フィルム」として「積層フィルムが用いられ」、「20 μmから500 μmの範囲の厚み」を有する特定の構造を有するものに限定し、かつ、補正前の請求項1および7に記載された発明と補正後の請求項1および7に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)および本件補正後の請求項7に記載された発明(以下、「本願補正発明7」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 2 引用刊行物とその記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された特開平5-31769号公報(以下、「刊行物」という。)には、「インサート成形用金型」に関して、図面(特に、【図1】、【図5】、【図13】~【図18】および【図21】参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、下線部は合議体が付した(以下同様。)。 ア 「一対の金型(1,2)を備え、かつ、インサートシート(5)をインサート成形前に金型内に配置するインサート成形金型において、 上記一対の金型(1,2)のうちの少なくとも一つの金型に、上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)に対向して、該切断予定部分(5a)を他の金型の所定面に対して押圧して上記インサートシート(5)の上記切断予定部分(5a)を部分的に圧縮させる押圧部材(1b,1g,2d,2g,2k,2n,2o,2p,2q,2r,8a,9,12a,12b,12c,15a,18,19a)を備えるようにしたことを特徴とするインサート成形金型。」(【請求項1】) イ 「上記押圧部材(1b,1g,2d,2g,2k,2n,2o,2p,2q,2r,8a,9,12a,12b,12c,15a,18,19a)は金型(1,2)の型締時に上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)を押圧して圧縮させるように備えられた請求項1または2のいずれかに記載のインサート成形金型。」(【請求項4】) ウ 「【0013】上記構成によれば、例えば金型型締時又は型締後に、一対の金型のうち少なくとも一つの金型に備えられた上記押圧部材により、上記インサートシートの切断予定部分を他の金型の所定面に対して押圧するようにしたので、上記インサートシートの上記切断予定部分を部分的に圧縮させることができ、この圧縮された切断予定部分において簡単にインサートシートを切断して余分なインサートシートを除去することができる。よって、従来のように成形品の輪郭に沿ってはさみなどにより余分なインサートシートを除去する煩雑な作業が不要となる。また、シートにより絵付け部分がほぼ平坦部に限られるといったことなく、成形品全体をカバーすることも可能となる。さらに、切断相当箇所の面を互いにインローの状態でくい切る摺動面にする必要がないので、型閉時の振動により或はシートの切断時の残渣の影響で摺動面が損傷するといったことを効果的に防止することができる。」(段落【0013】) エ 「【0015】本実施例にかかるインサート成形金型は、図1に示すように、一方の金型1のパーティング面に凹部1aを形成する一方、他方の金型2のパーティング面には上記凹部1aに対応して突出した突出部2cを形成して、上記凹部1aと突出部2cとによりキャビティを形成するとともに、この突出部2cに隣接して若干くぼんだ押圧部2d及びインサートシート収納用凹部2eとを夫々形成して構成する。 【0016】上記凹部1aの周囲には、一方の金型1のパーティング面の一部の押圧部1bを押圧部材として機能させ、上記一方の金型1のパーティング面の押圧部1bと他方の金型2の押圧部2dとの間にわずかな隙間を形成する。上記両押圧部1b,2dの接触する面積はできるだけ小さくして、該両押圧部1b,2d間に挟み込まれるインサートシート5の切断予定部分5aを小さくし、この切断予定部分5aの範囲内ならばいずれの箇所で切断されてもよいようにするのが好ましい。また、上記押圧部1bすなわち押圧部材は、インサートシート5の切断予定部分5a、例えばキャビティ外縁部に対応して配置されるものであるが、キャビティの外縁のみに限られることはない。・・・ 【0017】上記成形金型内に挿入配置されるインサートシート5は、射出成形時に成形品に上記インサートシート5が一体的に熔融接着されるものである。本実施例では、上記インサートシート5の基体フィルムの材質としては、塩化ビニル、ABS樹脂、ナイロン、PET、PBTなどの熱可塑性樹脂シート又は布など押圧圧縮によりその厚みが減少して簡単に切断できるようになるものが好ましい。 【0018】上記成形金型において、両金型1,2間にインサートシート5を配置した状態で一方の金型1に他方の金型2を型締めすると、一方の金型1のパーティング面と他方の金型2のパーティング面とがインサートシート5を介して対向し部分的に接触するとともに、上記凹部1aと突出部2cとによりキャビティを形成すると同時に、両パーティング面間に挟み込まれた上記インサートシート5のうち切断予定部分5aにおいて上記両押圧部1b,2dが該切断予定部分5aを油圧又は空気圧シリンダの押圧力で押圧してこの切断予定部分5aを圧縮してその厚みを減少させる。このとき、インサートシート5の切断予定部分5aの圧縮時に余分な部分は、インサートシート5の材質によっては図1に矢印で示すようにその隣接する部分に逃げて若干インサートシート5が伸びることになる。射出成形が行なわれたのち、熔融樹脂が冷却されて成形品4を形成する。この成形品4の表面の所定箇所には、上記インサートシート5が接着された状態となっている。上記一方の金型1と上記他方の金型2とを互いに分離させると、上記インサートシート5の切断予定部分5aから押圧部1b,2dが離れ、該切断予定部分5aにおいて、その厚みが他の部分より相当小さくなっているので、いずれかの押圧部1b,2dがインサートシート5から離れるときに上記切断予定部分5aが切断されるか、又はこの切断予定部分5aでインサートシート5を折り曲げることによりわずかな外力で簡単に切断できる。」(段落【0015】~【0018】) オ 「【0022】また、上記実施例とは逆に一方の金型側に押圧部材を形成するようにしてもよい。すなわち、図5に示すように、一方の金型1のキャビティ形成用凹部1aに隣接して該一方の金型1の成形形状外周面に、押圧部材としての凸部1bと、該凸部1bに隣接したインサートシート収納用凹部1dとを夫々形成する。この実施例では、一方の金型1の上記凸部1bと他方の金型2のパーティング面との間で上記インサートシート5の切断予定部分5aを挟み込んで、該切断予定部分5aを切断可能にしてもよい。」(段落【0022】) カ 「【0025】また、図10に示すように、上記インサートシート5の切断予定部分5aは連続して形成されるものに限らず、不連続なものであってもよい。」(段落【0025】) キ 「【0028】また、上記押圧部がインサートシート5に接触する面積をできるだけ小さくしてインサートシート5の厚さをより薄く圧縮して切断しやすくするため、上記押圧部を図13~18及び図21のような形状にしてもよい。」(段落【0028】) ク 「【0030】図17の押圧部2qのように断面大略矩形又は図18の押圧部2rのように先端断面が三角形状に鋭角部分がある場合には、インサートシート5に対する押圧部2q,2rの押圧面積が点又は線となる。 【0031】ところで、押圧部の先端断面が鋭角であると、押圧動作の繰り返しにより欠けることがある。これを防止するため、図13,14に示した押圧部2k,2nのように先端部分に湾曲部を形成するようにすれば、押圧面積は点又は線となり、かつ、先端部分が欠けるといったことがより効果的に防止することができる。」(段落【0030】~【0031】) ケ 【図1】から、押圧部2dが断面が平坦であることが看て取れる。 上記記載事項ア、イ、エおよび【図5】を総合すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「一対の金型(1,2)を備え、かつ、インサートシート(5)をインサート成形前に金型内に配置するインサート成形金型において、 上記一対の金型(1,2)の一方の金型1のパーティング面にキャビティ形成用凹部1aを形成し、該一方の金型1のキャビティ形成用凹部1aに隣接して該一方の金型1の成形形状外周面に、上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)に対向して、該切断予定部分(5a)を他方の金型2のパーティング面に対して押圧して上記インサートシート(5)の上記切断予定部分(5a)を部分的に圧縮させる押圧部材としての凸部1bを備え、上記押圧部材(1b)は金型(1,2)の型締時に上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)を押圧して圧縮させるように備えられるようにしたインサート成形金型。」 また、上記記載事項アないしエおよび【図5】を総合すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「一対の金型(1,2)を備え、かつ、インサートシート(5)をインサート成形前に金型内に配置するインサート成形金型を用いるインサート成形方法であって、 上記一対の金型(1,2)の一方の金型1のパーティング面にキャビティ形成用凹部1aを形成し、該一方の金型1のキャビティ形成用凹部1aに隣接して該一方の金型1の成形形状外周面に、上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)に対向して、該切断予定部分(5a)を他方の金型2のパーティング面に対して押圧して上記インサートシート(5)の上記切断予定部分(5a)を部分的に圧縮させる押圧部材としての凸部1bを備え、上記押圧部材(1b)は金型(1,2)の型締時に上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)を押圧して圧縮させるように備えられるようにしたインサート成形金型において、 両金型1,2間にインサートシート5を配置した状態で一方の金型1に他方の金型2を型締めし、一方の金型1のパーティング面と他方の金型2のパーティング面とがインサートシート5を介して対向し部分的に接触させるとともに、上記凹部1aと突出部2cとによりキャビティを形成すると同時に、両パーティング面間に挟み込まれた上記インサートシート5のうち切断予定部分5aにおいて上記凸部1bと対向する他方の金型2のパーティング面が該切断予定部分5aを油圧又は空気圧シリンダの押圧力で押圧してこの切断予定部分5aを圧縮してその厚みを減少させ、射出成形が行なわれたのち、熔融樹脂が冷却されて成形品4を形成し、この成形品4の表面の所定箇所には、上記インサートシート5が接着された状態となっており、上記一方の金型1と上記他方の金型2とを互いに分離させると、上記インサートシート5の切断予定部分5aから押圧部1bおよび対応するパーティング面が離れ、該切断予定部分5aにおいて、押圧部1bまたは対向するパーティング面がインサートシート5から離れるときに上記切断予定部分5aが切断されるか、又はこの切断予定部分5aでインサートシート5を折り曲げることによりわずかな外力で簡単に切断できる、方法。」 3 対比 (1)本願補正発明1 本願補正発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「インサートシート(5)」は成形品に絵付け部分を設けるものであるから、本願補正発明1の「加飾フィルム(16)」に相当し、同様に、「キャビティ形成用凹部1a」を形成した「一方の金型1」は「第1の金型凹部(13)を有する第1のツール部(11)」に、「他方の金型2」は「第2のツール部(12)」に、「押圧部材としての凸部1b」は「隆起したエッジ部(14)」に、「他方の金型2のパーティング面」は「隆起したエッジ部(14)の端面(14s)に対応する端面(12s)」に相当する。 そして、引用発明1の「一対の金型(1,2)」において射出成形が行われるから、一方の金型1または他方の金型2は少なくとも一つの射出経路を有するものであって、上記「一対の金型(1,2)」は、本願補正発明1の「射出ツール(1)」に相当し、同様に、「インサート成形金型」は「インモールド加飾方法を実施する装置」に相当する。 また、引用発明1の「該一方の金型1のキャビティ形成用凹部1aに隣接して該一方の金型1の成形形状外周面に、」「押圧部材としての凸部1bを備え」ることは、本願補正発明1の「第一のツール部(11)の金型凹部(13)が、閉じた形状で金型凹部(13)の周囲に広がる」「隆起したエッジ部(14)を有」することに相当する。 さらに、引用発明1の「インサートシート(5)の切断予定部分(5a)に対向して、該切断予定部分(5a)を他方の金型2のパーティング面に対して押圧して上記インサートシート(5)の上記切断予定部分(5a)を部分的に圧縮させる押圧部材としての凸部1bを備え、上記押圧部材(1b)は金型(1,2)の型締時に上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)を押圧して圧縮させるように備えられる」ことは、その形態、作用より、本願補正発明1の「射出ツール(1)が閉じられた際に、第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間の少なくとも一部に亘り間隙を形成する間隔(s)があり、インモールド加飾方法を実施するために用いられる加飾フィルム(16)の場合、該加飾フィルム(16)が、間隙の領域での挟み込みにより圧縮され、間隙が間に挿入され圧縮された加飾フィルム(16)により密封され」ることに相当する。 以上の点からみて、本願補正発明1と引用発明1とは、 [一致点] 「射出ツール(1)及び該射出ツール(1)に配置される加飾フィルム(16)を含むインモールド加飾方法を実施する装置であって、射出ツール(1)は、第一の金型凹部(13)を有する第一のツール部(11)及び第二のツール部(12)を有するとともに、第二のツール部(12)または第一のツール部(11)が少なくとも一つの射出経路(12e)を有し、加飾フィルム(16)が、第一のツール部(11)と第二のツール部(12)との間に配置可能であり、 第一のツール部(11)の金型凹部(13)が、閉じた形状で金型凹部(13)の周囲に広がる、隆起したエッジ部(14)を有し、 第二のツール部(12)が、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)に対応する端面(12s)を有し、 射出ツール(1)が閉じられた際に、第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間の少なくとも一部に亘り間隙を形成する間隔(s)があり、この間隙を形成する間隔(s)が、インモールド加飾方法を実施するために用いられる加飾フィルム(16)の場合、該加飾フィルム(16)が、間隙の領域での挟み込みにより圧縮される装置。」 である点で一致し、 次の点で相違する。 [相違点1] 加飾フィルムに関して、本願補正発明1では、「積層フィルムが用いられ、該積層フィルムが20 μmから500 μmの範囲の厚み」であると特定するのに対して、引用発明1では、特定されていない点。 [相違点2] 隆起したエッジ部に関して、本願補正発明1では「断面が平坦であり、または、丸みを帯び、または、尖った、端面(14s)を有する」と特定するのに対して、引用発明1では、押圧部材としての凸部1bの断面の形状が特定されていない点。 [相違点3] 間隙を形成する間隔(s)に関して、本願補正発明1では「射出ツール(1)が閉じられた際に、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間隔(s)が、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの50%未満であり、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの10%以上である」と特定するのに対して、引用発明1では、特定されていない点。 (2)本願補正発明7 本願補正発明7と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「インサートシート(5)」は成形品に絵付け部分を設けるものであるから、本願補正発明7の「加飾フィルム(16)」に相当し、同様に、「キャビティ形成用凹部1a」を形成した「一方の金型1」は「第1の金型凹部(13)を有する第1のツール部(11)」に、「他方の金型2」は「第2のツール部(12)」に、「他方の金型2のパーティング面」は「第二のツール部(12)の対応する端面(12s)」に相当する。 そして、引用発明2の「一対の金型(1,2)」において射出成形が行われるから、一方の金型1または他方の金型2が射出経路を有するものであって、上記「一対の金型(1,2)」は、本願補正発明7の「射出ツール(1)」に相当し、同様に、「インサート成形金型を用いるインサート成形方法。」は「装置を用いるインモールド加飾方法」に相当する。 また、引用発明2の「該一方の金型1のキャビティ形成用凹部1aに隣接して該一方の金型1の成形形状外周面に、上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)に対向して、該切断予定部分(5a)を他方の金型2のパーティング面に対して押圧して上記インサートシート(5)の上記切断予定部分(5a)を部分的に圧縮させる押圧部材としての凸部1bを備え、上記押圧部材(1b)は金型(1,2)の型締時に上記インサートシート(5)の切断予定部分(5a)を押圧して圧縮させるように備えられるようにしたインサート成形金型において、両金型1,2間にインサートシート5を配置」することは、本願補正発明7の「a)射出ツール(1)が閉じられた際に、加飾フィルム(16)が、第一の金型凹部(13)の境界を定める隆起したエッジ部(14)の端面(14s)に載るように、加飾フィルム(16)の一部を第一のツール部(11)または第二のツール部(12)に提供するステップ」に相当する。 そして、引用発明2の「両金型1,2間にインサートシート5を配置した状態で一方の金型1に他方の金型2を型締めし、一方の金型1のパーティング面と他方の金型2のパーティング面とがインサートシート5を介して対向し部分的に接触させるとともに、上記凹部1aと突出部2cとによりキャビティを形成すると同時に、両パーティング面間に挟み込まれた上記インサートシート5のうち切断予定部分5aにおいて上記凸部1bと対向する他方の金型2のパーティング面が該切断予定部分5aを油圧又は空気圧シリンダの押圧力で押圧してこの切断予定部分5aを圧縮してその厚みを減少させ」ることは、本願補正発明7の「b)第一のツール部(11)と第二のツール部(12)との間の、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)の領域において、第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間に、少なくとも部分的に間隙が存在し、間隙の領域において挟み込まれる、挿入された加飾フィルム(16)により、間隙が密閉される程度に、射出ツール(1)を閉じるステップ」に相当する。 さらに、引用発明2の「射出成形が行なわれ」ることは、本願補正発明7の「c)加飾プラスティック部品を製造するために、射出経路(12)を通じて溶融プラスティックを射出ツール(1)内に射出し、溶融プラスティックが隆起したエッジ部(14)により囲まれる領域において、加飾フィルム(16)の裏側に射出されるステップ」に相当する。 同様に、引用発明2の、「熔融樹脂が冷却されて成形品4を形成し、この成形品4の表面の所定箇所には、上記インサートシート5が接着された状態となっており、上記一方の金型1と上記他方の金型2とを互いに分離させると、上記インサートシート5の切断予定部分5aから押圧部1bおよび対応するパーティング面が離れ、該切断予定部分5aにおいて、押圧部1bまたは対向するパーティング面がインサートシート5から離れるときに上記切断予定部分5aが切断される」ことは、本願補正発明7の「d)第一及び第二のツール部(11、12)を互いに相対的に離すように動かすことにより、射出ツール(1)を開ける、ステップ」に相当する。 以上の点からみて、本願補正発明7と引用発明2とは、 [一致点] 「装置を用いるインモールド加飾方法であって、装置は、第一の金型凹部(13)を有する第一のツール部(11)及び第二のツール部(12)を含む射出ツール(1)を有するとともに、第一または第二のツール部(11、12)が射出経路(12e)を有し、 以下のステップが行われる、方法。 a)射出ツール(1)が閉じられた際に、加飾フィルム(16)が、第一の金型凹部(13)の境界を定め、金型凹部(13)の周囲に広がる隆起したエッジ部(14)の端面(14s)に載るように、加飾フィルム(16)の一部を第一のツール部(11)または第二のツール部(12)に提供するステップ、 b)第一のツール部(11)と第二のツール部(12)との間の、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)の領域において、第一のツール部(11)の隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間に、少なくとも部分的に間隙が存在し、間隙の領域において挟み込まれる、挿入された加飾フィルム(16)により、間隙が密閉される程度に、射出ツール(1)を閉じるステップ、 c)加飾プラスティック部品を製造するために、射出経路(12)を通じて溶融プラスティックを射出ツール(1)内に射出し、溶融プラスティックが隆起したエッジ部(14)により囲まれる領域において、加飾フィルム(16)の裏側に射出されるステップ、 d)第一及び第二のツール部(11、12)を互いに相対的に離すように動かすことにより、射出ツール(1)を開ける、ステップ」 である点で一致し、 次の点で相違する。 [相違点1] 加飾フィルムに関して、本願補正発明7では、「積層フィルムが用いられ、該積層フィルムが20 μmから500 μmの範囲の厚み」であると特定するのに対して、引用発明2では、特定されていない点。 [相違点2] 間隙を形成する間隔(s)に関して、本願補正発明7では「射出ツール(1)が閉じられた際に、隆起したエッジ部(14)の端面(14s)と第二のツール部(12)の対応する端面(12s)との間隔(s)が、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの50%未満であり、備えられる加飾フィルム(16)の厚みの10%以上である」と特定するのに対して、引用発明2では、特定されていない点。 [相違点3] c)のステップに関して、本願補正発明7では「溶融プラスティックが、密閉された間隙を通り抜けることなく」と特定するのに対して、引用発明2では、特定されていない点。 [相違点4] d)のステップに関して、本願補正発明7では「射出ツール(1)から加飾プラスティック部品を取り外す」と特定するのに対して、引用発明2では、特定されていない点。 [相違点5] d)のステップの後に関して、本願補正発明7が「e)加飾フィルム(16)の残余部を除去して、加飾フィルム(16)のさらなる一部を準備するステップ」を行うと特定するのに対し、引用発明2では、特定されていない点。 [相違点6] 各ステップの実行に関して、本願補正発明7が「周期的に行われる」と特定するのに対して、引用発明2では、特定されていない点。 4 判断 (1)本願補正発明1 ア 相違点1について インモールド加飾方法に用いる加飾フィルムとして、基材シートに絵柄層等を設けた、厚さが数十~数百μ程度の積層フィルムは周知のものであるから(例えば、特開昭63-15717号公報の特許請求の範囲、第2頁右下欄第11行~第3頁左上欄第3行、特開平2-176781号公報の特許請求の範囲、第2頁右下欄第6行~第10行、特開平4-173140号公報の特許請求の範囲、実施例参照)、引用発明1において加飾フィルムとして周知のものを用い、成形品の具体的な態様に応じてその厚さを相違点1の範囲のものとすることは当業者が適宜なし得ることである。 イ 相違点2について 凸部の断面形状について、上記2(1)キないしケより、刊行物1には平坦、先端断面を鋭角形状あるいは湾曲部とすることが示されているから、引用発明1において、凸部の断面形状をそれらのいずれかの形状とすることは当業者が適宜なし得ることである。 ウ 相違点3について 引用発明1において、インサートシートの切断予定部分を部分的に圧縮させることができ、この圧縮された切断予定部分において簡単にインサートシートを切断して余分なインサートシートを除去するという作用(上記2(1)ウ)を得るためには、インサートシートを十分圧縮する必要があり、一方で、型締時の圧縮では切断予定部分は完全には切断されないものであるから、完全に切断するような過度の圧縮とはしないといえる。また、インサートシートの材質、物性、構造に応じて、圧縮部分の厚みが型開き、離型時に適切に切断するように凸部とパーティング面の間隔を調整することは、当業者が適宜なし得る事項といえる。 さらに、型閉・型締時に生じるインサートシートの圧縮、部分的な切断の程度は、インサートシートの材質等が影響するところ、本願補正発明1においてもインサートシートの材質等は特定されておらず、また、発明の詳細な説明において、具体的な実施例、比較例によりその効果が実証されてもいないから、間隔(s)の数値範囲についての臨界的意義は認められない。 以上から、引用発明1において、間隙を形成する間隔(s)として、相違点3の範囲のものとすることは当業者にとり想到容易である。 エ 相違点に係る効果について 本願補正発明1で上記各相違点に係る発明特定事項としたことにより、予想外の格別顕著な効果を奏すると認めることができない。 (2)本願補正発明7 ア 相違点1について 上記4(1)アにおいて述べたとおりである。 イ 相違点2について 上記4(1)ウにおいて述べたとおりである。 ウ 相違点3について 射出成形において、射出される樹脂がキャビティから型のパーティング面間のキャビティ以外の部分に漏れてバリとならないようにされることは当業者に明らかな事項であるから、引用発明2においても、圧縮されたインサートシートにより密閉された、凸部と対向するパーティング面間の隙間から射出された樹脂が通り抜けているとはいえない。 そうすると、上記相違点3は、実質的な相違点ではない。 エ 相違点4について 射出成形において、型開し、成形品を型から離型する離型工程を行うことは当業者に明らかな事項であるから、引用発明2においても、当然に離型工程を行うものである。 そうすると、上記相違点4は、実質的な相違点ではない。 オ 相違点5について 引用発明2において、インサートシートの成形品と接着した以外の部分は、型開きの際に切断により分離され不要となっているから、次の成形品の成形前に除去されるといえる。 そうすると、上記相違点5は、実質的な相違点ではない。 カ 相違点6について 射出成形において、成形品の成形を繰り返し行うことは当業者に明らかな事項であるから、引用発明2においても、各ステップを周期的に繰り返して行われるといえる。 そうすると、上記相違点6は、実質的な相違点ではない。 キ 相違点に係る効果について 本願補正発明7で上記各相違点に係る発明特定事項としたことにより、予想外の格別顕著な効果を奏すると認めることができない。 (3)まとめ よって、本願補正発明1および7は、それぞれ引用発明1および2に基いて当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願補正発明1および7は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成26年5月20日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1および7に係る発明(以下、「本願発明1」および「本願発明7」という。)は、それぞれ上記「第2」の「1」に補正前の特許請求の範囲の請求項1および7として記載したとおりのものである。 2 引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物の記載事項及び引用発明は、上記「第2」の「2」に記載したとおりのものである。 3 対比・判断 本願発明1および本願発明7は、それぞれ本願補正発明1および本願補正発明7に係る「加飾フィルム」につき、「積層フィルムが用いられ」、「20 μmから500 μmの範囲の厚み」を有するとの発明特定事項を省いたものである。 そうすると、本願発明1および7の発明特定事項をすべて含む本願補正発明1および7が、上記「第2」の「3」及び「4」に記載したとおり、それぞれ引用発明1および2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1および7も、実質的に同様の理由により、引用発明1および2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 まとめ したがって、本願発明1および7は、それぞれ引用発明1および2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5 上申書の補正案について 請求人は、平成28年3月7日付けで提出した上申書により、却下された本願補正発明1および7において、加飾フィルムが帯状のエンドレス形態で供給ロールから供給され、射出ツールの下流に残りの加飾フィルムを巻き取る巻き取りロールを有するものとする旨のさらなる発明特定事項を追加する補正案を提示している。 しかしながら、加飾フィルム等のインサートシートを一体成形するインサート成形において、インサートシートを帯状の長尺シートを供給ロールから供給し、不要となったシートを下流の巻き取りロールで巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロールで行うことは周知な手法であって(例えば、特開昭62-170310号公報の図1、特開昭63-99913号公報の図1、特開平8-1719号公報の図1等参照)、引用発明1および2において該周知な手法を適用することは、当業者が容易になし得ることであり、それによる効果も、当業者が予測し得る程度のものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明1および7は、それぞれ引用発明1および7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2015-003450

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