特許拒絶査定不服審判
2015-002488
誘導電力伝達パッドおよびそのシステム
- 審判番号
- 2015-002488
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2010-507347外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年02月09日
- 審決日
- 2016年12月05日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】オークランド ユニサービシズ リミテッド
- 【請求人代理人】杉村 憲司
- 【請求人代理人】片岡 憲一郎
- 分類
- P18 .121-WZ (H01F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2010-507347「誘導電力伝達パッドおよびそのシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月20日国際公開、WO2008/140333、平成22年 9月 9日国内公表、特表2010-530613〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)5月9日(パリ条約による優先権主張 2007年5月10日 ニュージーランド(NZ)、2007年7月20日 ニュージーランド(NZ))を国際出願日として出願したものであって、平成22年1月29日付けで手続補正がなされ、平成25年2月12日付け拒絶理由通知に対して同年7月5日付けで手続補正がなされたが、平成26年9月18日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成27年2月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正がなされ、同年12月10日付け当審の拒絶理由通知に対して平成28年4月11日付けで意見書が提出され、同年5月10日付け当審の拒絶理由通知に対して同年10月17日付けで手続補正がなされたものである。
2.本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成28年10月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
離れて配置される無線電力受け器に向けて無線で電力を伝達するための誘電電力伝達パッドであって、
第1の層に配置されている2枚以上の強磁性体厚板と、
導体の少なくとも一巻きを有しており、前記強磁性体厚板の前記第1の層に実質的に平行な第2の層に配置されているコイルと、
前記強磁性体厚板と実質的に平行な第3の層を画定する背板を備え、前記背板が前記コイルにより生じた電磁束を該背板に実質的に垂直な方向に案内するように配置されたシールド部材を含む誘導電力伝達パッド。」
3.引用例
(1)平成28年5月10日付け当審の拒絶理由通知で引用された特開2002-137659号公報(以下、「引用例1」という。)には、「非接触給電装置」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
ア.「【0016】
【課題を解決するための手段】 前記目的達成のために、本発明にかかる非接触給電装置は、高周波電源から一次側給電線に供給した高周波電力を、二次巻線に誘導させて受電設備に供給する非接触給電装置であって、前記一次側給電線と、この一次側給電線に近接する鉄類との間に磁気遮蔽材を介在するようにしたものである。この態様により、一次側給電線から発生する高周波の磁界を磁気遮蔽材によって鉄類に漏れ込むのを抑制でき、従って鉄類が高周波の磁界を受けて振動するのを未然に防止可能にしている。
【0017】 また、本発明にかかる非接触給電装置は、前記磁気遮蔽材を一次側給電線を被うようなコ字状断面形状としたものである。この態様により、一次側給電線から発生する高周波の磁界の殆どが、コ字状断面形状の磁気遮蔽材によって付近の鉄類に漏れ込むのを阻止可能にしている。」
イ.「【0032】
【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の一形態を図について説明する。図1は本発明の非接触給電装置の要部を示す概念図であり、同図において、11は高周波電源から高周波電力が供給される一対の一次側給電線であり、この一次側給電線11が例えば板状の鉄類12に沿って配線されている。また、これらの一次側給電線11と鉄類12との間には平板状の磁気遮蔽材13が介在される。
【0033】 この場合に、前記磁気遮蔽材13としては銅やアルミニウムなどの非磁性・導電体が用いられるとともに、その厚さは一次側給電線が発生する磁界が通り抜けることがない所定の表皮厚さδ(skin depth)以上(裕度としてその3倍程度)とされる。ここで、表皮厚さδは、ωを周波数(rad/s)、μを透磁率(H/m)、σを導電率(1/Ωm)として、δ=(2/ωμσ)1/2となる。従って、磁気遮蔽材13としてアルミ板を用い、ある電源周波数設定された場合には、表皮厚さは、0.83mmであるから、その約3倍の2.5mm程度とすることが望ましい。
【0034】 従って、このような非接触給電装置では、一次側給電線11からの高周波磁界は、この一次側給電線11に近い所定厚さを持つ磁気遮蔽材13に流れ込み、これを通り抜けることがないため、鉄類12へ磁界が漏れるのを抑制でき、鉄類12の振動およびこれに伴う音の発生を小さく抑えることができる。図2は、このときの磁束線の分布を示す説明図であり、ここでは対称モデルとなるため、一次側給電線11の側方から磁束線の一部が漏れてはいるものの、鉄類12に流れ込む磁束線数が、図19の場合に比べて大きく低下している状態が確認できる。
【0035】 図3はコ字状の磁気遮蔽材13Aを用いた場合を示す。この場合には、この磁気遮蔽材13Aによって一次側給電線11が包囲されるため、鉄類12に流れ込む磁束線の数が大幅に減ることとなる。図4は、所定の電流値と周波数の電流を一次側給電線11に流したときの磁束線の分布を示す。これによれば、磁気遮蔽材13Aの側方からは僅かの磁束線が鉄類12に流れるだけであり、従って、鉄類12の振動や音の発生を略確実に抑止できることとなる。」
上記アないしイ、図3および図4から、引用例1の「非接触給電装置」には以下の事項が記載されている。
・上記アによれば、一次側給電線に供給した電力を、二次巻線に誘導させて受電設備に電力を供給するものである。
・上記イによれば、一次側給電線11と磁気遮蔽材13Aから構成されるものである。
・上記アおよびイによれば、磁気遮蔽材13Aは、一次側給電線11を包囲するコ字状に形成されているものである。
そうすると、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「一次側給電線11に供給した電力を、二次巻線に誘導させて受電設備に電力を供給する非接触給電装置であって、
一次側給電線11と、
一次側給電線を包囲するコ字状に形成された磁気遮蔽材13Aを備えた
非接触給電装置。」
(2)平成28年5月10日付け当審の拒絶理由通知で引用された実願平5-5156号(実開平6-64393号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
ウ.「【0011】
【実施例】
図1及び図2において、高周波用磁性体棒1としては、例えばラジオ受信機などで使われるバーアンテナ用のフェライト棒が用いられ、これらの磁性体棒1をその一端側を収束させて放射状に配置し、これらの放射状に配置された高周波磁性体棒1の一面側に、例えば板厚2mmのアルミ板からなる非磁性体金属板2をシリコン接着剤4により固定する。また高周波用磁性体棒1の他面側にリッツ線を用いた渦巻状コイル3をシリコン接着剤5にて固定して、ワークコイルを形成し、電磁誘導加熱式調理器の匡体上部に配置して使用する。」
上記ウの記載、図1および図2の記載によれば、引用例2には、「複数のフェライト棒を放射状に配置し、該フェライト棒の一面側に非磁性体金属板を、該フェライト棒の他面側にコイルを配置した」技術事項が記載されている。
(3)平成28年5月10日付け当審の拒絶理由通知で引用された特開平6-277358号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
エ.「【0020】 また、走行板8のストレートのパネル8a及びセクター状のパネル8bの下面には、図1,図2,図7,図8に示した様に多数の突部30及びこの多数の突部30間に形成された碁盤の目或は編目状の溝31が設けられている。この多数の突部30には図1,図2に示した様に走行面8cに沿うように溝31に配設した一次コイル33,34が固定給電源として交互に嵌着されている。
【0021】 この一次コイル33は辺33a,33b,33c,33dから略方形に形成され、一次コイル34も辺34a,34b,34c,34dから略一次コイル33と同形状に形成されている。しかも、パネル8a,8bには、各辺33a,34a,33b,34b,33c,34c,33d,34dと交差するフェライト等の導磁性材料製の導磁体35がインサート成形により埋設されている。尚、実際には、図2(b)の如く、一次コイル33,34の対角線方向にも導磁体35を配設して、対角線方向の磁気抵抗を他の方向の磁気抵抗より小さくして、得られる磁場が大きくなるようにする」
上記エの記載、図1および図2の記載によれば、コイルの各辺と交差するように複数のフェライト導磁体が埋設されているから、引用例3には「コイルの一方面に複数のフェライト導磁体を配置した」技術事項が記載されている。
4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「非接触給電装置」は、一次側給電線側と受電設備側とは非接触であるから、互いに「離れて配置される」ものと認められる。そして、引用発明の「二次巻線に誘導させて受電設備に電力を供給する」ことは、本願発明の「無線電力受け器に向けて無線で電力を伝達する」ことに相当する。
よって、引用発明の「非接触給電装置」は、本願発明の「誘導電力伝達パッド」に相当するといえ、引用発明の「一次側給電線11に供給した電力を、二次巻線に誘導させて受電設備に電力を供給する非接触給電装置」は、本願発明の「離れて配置される無線電力受け器に向けて無線で電力を伝達するための誘電電力伝達パッド」に相当する。
b.無線で電力を伝える側の構成について、引用発明には「一次側給電線11」の記載が認められるだけである。よって、本願発明は、「第1の層に配置されている2枚以上の強磁性体厚板」と「導体の少なくとも一巻きを有しており、前記強磁性体厚板の前記第1の層に実質的に平行な第2の層に配置されているコイル」を用いているのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点で相違する。
c.引用発明の「磁気遮蔽材13A」は、コ字状に形成し、磁束を一次側給電線11をコ字状に囲んだ部分から出さないようにしたものであり、且つ、磁束はコ字状の磁気遮蔽材13Aが形成されていない上方のみから出るようにしたものであるから、本願発明の「背板を備え、前記背板が前記コイルにより生じた電磁束を該背板に実質的に垂直な方向に案内するように配置されたシールド部材」に相当する。
この点について審判請求人は、平成28年10月17日付け意見書において、「引用文献2の技術は、一次側給電線11からの磁束を、箱状や板状等の磁気遮蔽材13によって遮蔽して、鉄類12の側へ漏れるのを防止するようにしたものです。すなわち、引用文献2の技術は、図2、図4に示されますように、一次側給電線11からの磁束を、磁気遮蔽板13/13Aによって当該磁気遮蔽板13/13Aに平行な方向に案内するようにして、当該磁束が磁気遮蔽板13/13Aの裏側に配置された鉄類12の側へ漏れることを防止するようにしたものであります。・・・(中略)・・・引用文献2は、磁束の方向を磁気遮蔽材13Aによって当該磁気遮蔽材13Aに実質的に垂直な方向に案内することについて何ら開示も示唆も致しません。したがいまして、当業者は、引用文献2から、磁気遮蔽板13Aによって磁束の漏れを防止することができることを理解することができても、磁束の方向を磁気遮蔽材13Aによって当該磁気遮蔽材13Aに実質的に垂直な方向に案内することを理解することはできません。」と主張している(なお、ここでいう引用文献2は、当審決における引用例1である。)。しかしながら、引用発明の「コ字状に形成された磁気遮蔽材13A」は、本願発明の「シールド部材を含む背板」(本願明細書に記載された「小片25を含む背板21」。)と同様の構成をしているところ、磁束は一次側給電線11の底面および側面を囲んだ範囲から出ず、囲われていない範囲である該底面から垂直な方向にしか出ないのであるから、結局のところ「垂直方向に案内するように配置された」ものといえる。よって、審判請求人の主張は採用できない。
したがって、引用発明の「一次側給電線を包囲するコ字状に形成された磁気遮蔽材13A」は、本願発明の「背板を備え、前記背板が前記コイルにより生じた電磁束を該背板に実質的に垂直な方向に案内するように配置されたシールド部材を含む」ものに相当する。
但し、引用発明には「強磁性体厚板」が特定されていないので、本願発明の「前記強磁性体厚板と実質的に平行な第3の層を画定する」背板である点は一応相違する。
上記aないしcから、本願発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。
<一致点>
離れて配置される無線電力受け器に向けて無線で電力を伝達するための誘電電力伝達パッドであって、
背板を備え、前記背板が前記コイルにより生じた電磁束を該背板に実質的に垂直な方向に案内するように配置されたシールド部材を含む誘導電力伝達パッド。
<相違点1>
本願発明は、「第1の層に配置されている2枚以上の強磁性体厚板」と「導体の少なくとも一巻きを有しており、前記強磁性体厚板の前記第1の層に実質的に平行な第2の層に配置されているコイル」を用いているのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない。
<相違点2>
本願発明は、背板が「前記強磁性体厚板と実質的に平行な第3の層を画定する」のに対して、引用発明はそもそも「強磁性体厚板」が特定されていない。
そこで、<相違点1>および<相違点2>について検討する。
無線で電力を伝達する側の構成として、「2枚以上の強磁性体厚板」と「コイル」を用いることは、例えば引用例2(上記3.(2)を参照。「フェライト棒」が本願発明の強磁性体厚板に相当。)や引用例3(上記3.(3)を参照。「フェライト導磁体」が本願発明の強磁性体厚板に相当。)に記載されているように周知の技術事項である。またその場合、強磁性体厚板とコイルとが別々の層に平行に配置されているものである。
また、引用例2(「非磁性体金属板」が本願発明の背板に相当。)には、強磁性体厚板と背板とが別々の層に平行に配置されていることが記載されている。
よって、引用発明の一次側給電線に代えて、引用例2および3に記載された周知の技術事項を適用して相違点1および2の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。
なお、審判請求人は、平成28年10月17日付け意見書において、「当業者であれば、引用文献2に記載された発明に、引用文献1、4に記載された技術を組み合わせて本願発明に容易に想到できると指摘されております。しかしながら、コイル、電磁束及びシールド部材が互いに及ぼし合う相互作用は複雑であるので、たとえ当業者であっても、それらの相互作用によって改善された性能が提供されるとの強い示唆がない限り、これら複数の引用文献に記載の異種の技術を単に組み合わせることを考慮することはありません。」と主張している(なお、ここでいう引用文献2、引用文献1、引用文献4は、それぞれ当審決における引用例1、引用例2、引用例3である。)。しかしながら、本願発明にはそもそも「コイル、電磁束及びシールド部材が互いに及ぼし合う相互作用は複雑である」点を示唆する構成は何ら認められないし、どのような磁束発生手段を用いても「磁束の方向」は底面と側面を覆うシールド(背板)により決定されるのであるから、磁束を発生させる手段として、引用発明の一次側給電線に代えて、引用例2および3に記載された周知の技術事項(複数の強磁性体厚板とコイルを用いること。)を採用することに格別な困難性は認められない。よって、審判請求人の主張を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明および周知技術により当業者が容易になし得たものである。
5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2015-002488