特許拒絶査定不服審判
2015-000627
外科的な切開およびステープル縫合装置用の使い捨て装填ユニット
- 審判番号
- 2015-000627
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2009-032017外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2015年01月13日
- 審決日
- 2017年02月09日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エシコン・エンド-サージェリィ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】加藤 公延
- 【請求人代理人】大島 孝文
- 分類
- P18 .121-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2009-32017「外科的な切開およびステープル縫合装置用の使い捨て装填ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成21年8月27日出願公開、特開2009-189843〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成21年2月13日(パリ優先権主張受理、2008年2月15日、米国)の出願であって、
平成21年4月21日付けで手続補正がなされ、
平成24年2月7日付けで審査請求がなされ、
平成25年7月26日付けで拒絶理由通知(同年同月30日発送)がなされ、
これに対して同年10月23日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされ、
平成26年2月28日付けで、最後の拒絶理由通知がなされ、
これに対して同年5月29日付けで意見書が提出されると共に同日付けで手続補正がなされ、
同年9月30日付けで平成26年5月29日付けの手続補正を却下する補正の却下の決定がなされると共に、同日付けで拒絶査定がなされた(謄本送達同年10月7日)。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める」ことを請求の趣旨として平成27年1月13日付けで審判請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成27年2月19日、及び同年3月20日付けで請求人より上申書が提出され、
当審合議体より平成28年7月8日付けで拒絶理由通知がなされ、
これに対して同年10月7日付けで意見書が提出されると共に同日付で手続補正がなされたものである。
2.本願発明について
本願の請求項1に係る発明は、平成28年10月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるものである(以下、「本願発明」という。)。
「外科ステープル縫合装置用の使い捨て装填ユニットにおいて、
前記使い捨て装填ユニットは、
ステープルカートリッジを動作可能に支持するように構成されたステープルカートリッジキャリアと、
少なくとも一つのステープル変形用キャビティを含むアンビルであって、前記アンビルが前記ステープルカートリッジキャリアに対して回転可能に取り付けられており、前記アンビルが開位置と閉位置との間で回転するように構成されており、前記アンビルが近位端および遠位端を含む、アンビルと、
前記ステープルカートリッジキャリアおよび前記アンビルに対して移動可能である駆動部材であって、前記駆動部材が前記アンビルの前記近位端から前記アンビルの前記遠位端まで前進して、前記ステープルカートリッジからステープルを配置するように構成されている、駆動部材と、
前記アンビルの前記遠位端から離れる方向に後退するように構成され、前記アンビルに動作可能に係合しているアクチュエータと、
を含み、
前記アンビルおよび前記ステープルカートリッジキャリアは、前記アンビルが旋回でき、前記アンビルに対する位置が固定されている旋回軸を画定するように構成されており、
前記アンビルは、前記旋回軸よりも近位側に位置し、前記ステープルカートリッジキャリアに対向するカム面を有し、
前記アクチュエータは、カムを有し、
前記アクチュエータが前記アンビルの前記遠位端から離れる方向に後退するときに、前記アクチュエータの前記カムが、前記アンビルの前記遠位端から離れる方向に移動して、前記アンビルの前記カム面を押し上げ、前記アンビルの前記遠位端が下方に移動し、前記アンビルは、前記開位置から前記閉位置に回転する、アクチュエータと、
を含み、
前記アクチュエータの前記カムは、頂上部分および該頂上部分と下端部との間に位置する当初接触部を有するアーチ形状部を含み、
前記アクチュエータの前記カムは、前記当初接触部が最初に前記アンビルに接触するように前記アンビルに係合するように構成されており、前記アクチュエータが近位側に引かれるときに、前記アクチュエータの前記カムは、前記頂上部分が前記アンビルに接触するまで、前記カムにおける前記当初接触部と前記頂上部分との間の種々の部分が前記アンビルに接触するように、前記アンビルに対してスライドでき、
前記頂上部分は、前記アンビルが閉位置にあるときに前記アンビルに接触するように構成されており、
前記アクチュエータの前記カムにおける前記アンビルとの接触部全体が外側に向かって突出する円弧状である、使い捨て装填ユニット。」
3.引用文献及び引用発明
本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、平成28年7月8日付けの当審合議体が通知した拒絶理由において引用された、特開2007-203058号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に以下の技術的事項が記載されている(摘記中の下線は理解を助けるため、当審にて付与した。)。
A「【0012】
〔発明の概要〕
一つの態様では、概して、この発明は、内部に複数のステープルを操作可能に支持するカートリッジ本体を含む手術用切断/結合器具用の廃棄可能なステープルカートリッジを示している。この発明の廃棄可能な種々のステープルカートリッジは、上記のカートリッジ本体に対して支持された廃棄可能なアンビル部材をさらに含んでおり、このアンビル部材は、アンビル部材の底面がカートリッジ本体の上面に近接している閉位置と、両面間に体組織を挿入できるように、アンビル部材の底面がカートリッジ本体の上面から離れている開位置との間に移動可能である。少なくとも一つの体組織停止手段は、アンビル部材の底面とカートリッジ本体の上面との間に挿入された体組織に接触して、カートリッジ本体内に支持されたステープルに対して体組織を方向づけるために、アンビル部材上に存在している。」
B「【0017】
〔発明の詳細な説明〕
図1は、この発明のエンドエフェクタの配置および/またはステープルカートリッジの配置における種々の格別の利点を実行できる手術用切断/結合器具10を示している。図1に示された手術用切断/結合器具10は、ハンドル6と、シャフトアセンブリ8と、関節運動用の旋回軸14においてシャフトアセンブリ8に対して旋回可能に接続された関節運動型のエンドエフェクタ300とを有している。種々の実施の形態では、制御ハンドルは、駆動モータ600と、エンドエフェクタ300の開閉およびエンドエフェクタ300内にクランプされた体組織に対する切断および結合を制御するための符号610で示された制御システムを内部に収容している。関節運動制御部16は、エンドエフェクタ300を関節運動用の旋回軸14の周囲に回転させるようにハンドル6の近傍に設けられてもよい。手術用切断/結合器具10のハンドル6には、エンドエフェクタ300を関節運動させるための閉鎖トリガー18および発射トリガー20が含められてもよい。エンドエフェクタ300は、ハンドル6から、好ましくは細長いシャフト8の距離分だけ、離れているように図示されている。一つの実施の形態では、ゲオフリー・シー・ヒュール(Geoffrey C. Hueil)らにより、「関節運動型のエンドエフェクタを有する外科用器具(Surgical Instrument Having An Articulating End Effector)」という名称で、2006年1月10日に出願された米国特許出願第11/329,020号明細書に、より詳細に記述されているように、手術用切断/結合器具10を操作する臨床医あるいはオペレータは、関節運動制御部16を利用することによって、シャフト8に対してエンドエフェクタ300を関節運動させてもよい。なお、上述の文献の開示内容は、そのまま、参照によって、この明細書に組み込まれる。また、他の関節運動機構の配置も使用可能である。
【0018】
以下に、さらに詳細に記述されるように、種々のエンドエフェクタは、旋回移動可能なアンビルアセンブリを有しており、このアンビルアセンブリでは、エンドエフェクタ300内にクランプされた体組織に対する有効な切断およびステープルによる結合を保証する間隔に保持されている。種々の実施の形態では、ハンドル6は、ピストル型グリップ26を有しており、このピストル型グリップ26に向けて、閉鎖トリガー18が臨床医によって旋回可能に引かれることで、エンドエフェクタ300の細長い溝型部材302内に着座されたステープルカートリッジ500に向けてアンビル天板340をクランプする、すなわち閉じ、これによりアンビル天板340とステープルカートリッジ500との間に位置決めされた体組織をクランプすることができる。発射トリガー20は、閉鎖トリガー18の外部より、さらに遠くに配置されてもよい。種々の実施の形態では、一旦、閉鎖トリガー18が以下にさらに詳述されるように、閉位置にロックされると、発射トリガー20は、オペレータが片手で操作できるようにするため、ピストル型グリップ26に向けて僅かに回転可能となる。その後、オペレータは、エンドエフェクタ300内にクランプされた体組織に対してステープルによる結合および切断を行うために、ピストル型グリップ26に向けて発射トリガー20を旋回可能に引いてもよい。」
C「【0022】
ステープル収容ポケット512内には、ステープル支持ドライバ532が位置決めされており、このステープル支持ドライバ532は、その上に、ステープル534を支持している。ステープル収容ポケット512の位置(列)によっては、ステープル支持ドライバ532は、その上に、一つまたは二つのステープル530を支持してもよい。カートリッジ本体502は、近位端504から外側に先が細くなる先端部506へ延在する四つの長手方向スロット503、505、507および509をさらに有しており、当該スロットは、これらのスロットに対応して、エンドエフェクタ300内のV字形状の摺動部326上に形成された摺動カム328を収容するものであり、上述のスロットの構造およびその操作方法は以下に詳述されるはずである。図3を参照されたい。摺動カム328がカートリッジ本体502内の各スロット503、505、507および509を通じて、近位端504から遠位端506へ前進すると、当該摺動カム328は上述のスロットに関連したステープル支持ドライバ532に接触し、かつ、ステープル支持ドライバ532と、当該ドライバ532によってカートリッジ本体502から上方に向けて支持されたステープル534とを押圧する。図6を参照されたい。ステープル534の脚部536の両端部がアンビル底板350内に形成されたポケット358に接触すると、当該両端部は、ステープル534を閉じるように折り畳まれる。
・・・(中略)・・・
【0024】
この発明の種々のエンドエフェクタは、細長い溝型部材302を有しており、この溝型部材302は、その内部に、廃棄可能なカートリッジ500のカートリッジ本体502を取外し可能に収容し、かつ、支持するように、寸法設定されている。読者は、種々の実施の形態において、細長い溝型部材302が、カートリッジ本体内に支持されたステープル列の長さに関係なく、ステープルカートリッジ本体と同様な寸法に設定されたいずれか一つを支持するように構成されているものと理解するはずである。この細長い溝型部材302内には、ナイフ型のネジ304が回転可能に支持されている。ナイフ型のネジ304は、遠位端306を有しており、この遠位端306は、当該遠位端306に取り付けられ、かつ、細長い溝型部材302の遠位端303内に形成された遠位側の軸受ハウジング310によって回転可能に支持された遠位側のスラスト軸受308を有している。図2を参照されたい。ナイフ型のネジ304は、中央のネジ駆動部312を有しており、このネジ駆動部312上には螺旋状のネジが形成されている。ナイフ型のネジ304は、表面が滑らかな延長部314と、当該ナイフ304上に形成されるか、あるいは他の方法で取り付けられたナイフ型のネジ歯車316とをさらに有している。近位側のスラスト軸受318は、ナイフ型のネジ304の近位端317上に形成されるか、あるいは当該近位端317に取り付けられている。近位側のスラスト軸受318は、遠位側のスパインチューブセグメント58内に支持された近位側の軸受ハウジング319内に回転可能に収容されている。図9を参照されたい。遠位側のスパインチューブセグメント58は、その遠位端上に形成され、かつ、細長い溝型部材302の近位端305内に垂直方向に沿って形成されたスロット307内に収容されるように構成された一対の支柱59を有している。支柱59は、摩擦力、粘着力あるいはシャフトチューブ9の遠位端によって、細長い溝型部材302内のスロット307内に保持されてもよい。図1を参照されたい。
・・・(中略)・・・
【0026】
この発明の種々の実施の形態では、アンビル天板340は、溝型部材302の側壁309を貫通して設けられた楕円状の旋回軸孔311内に収容されるように寸法設定された一対のトラニオンピン342によって、溝型部材302の近位端305に旋回可能に連結されている。」
D「【0035】
種々の実施の形態では、遠位側の駆動シャフト部402上には、閉鎖ナット440も搭載されている。図27および図28から分かるように、閉鎖ナット440は、ネジ孔部442を有しており、このネジ孔部442は、当該ナット440を部分的に延在し、当該ネジ孔部442の内部には、遠位側の駆動シャフト部402上の閉鎖ネジ406に向けて、ネジ部が形成されている。上述の図面からさらに分かるように、閉鎖ナット440は、その外面から突出する直立型の閉鎖傾斜部444を有している。閉鎖傾斜部444の上部は、直立型の閉鎖タブ448に向けて延在する放射状部446で終端となっており、当該閉鎖タブ448は、アンビル天板340の近位端345上に形成され、かつ、下方に突出する閉鎖フック346に係合するように構成されている。
【0036】
図17および図19を参照しつつ、より詳細に説明すると、アンビル天板340の近位端345は、この近位端345から近位側へ突出するアンビル閉鎖アーム部347を有しており、このアーム部347は、下方に延在する閉鎖フック346で終端となっている。これらの図面からも分かるように、アンビル閉鎖アーム部347の底面は、閉鎖ナット440が最も遠位側の位置へ前進したときに閉鎖タブ448を収容するためのタブ収容溝348を有している(図17および図28に図示されている)。また、種々の実施の形態では、閉鎖ロックバネ460は、機械的な結合機構または接着剤によって、溝型部材302の底部に取り付けられている。閉鎖ロックバネ460は、直立型の保持リップ464で終端となる上部462を有している。さらに、閉鎖ロックバネ460の上部462には、長手方向に延在する保持アームが固定して取り付けられている。
【0037】
この発明の種々の実施の形態の操作は、図9、図11、図17~図19、図27および図28を参照して記述される。図9、図11および図17は、開位置の状態になっているエンドエフェクタ300を示している。これらの図面からも分かるように、開位置では、アンビル天板340の閉鎖フック346は、閉鎖ナット440の閉鎖傾斜部444上に載っている。この開位置では、アンビル天板340は、開位置に向けて旋回されている。また、開位置では、閉鎖ロックバネ460に取り付けられた保持アーム466の端部は、ナイフアセンブリ320の近位端上に形成された傾斜面321に接触している。ナイフアセンブリ320が近位側へ移動すると、保持アーム466の端部は、ナイフアセンブリ320の近位端上の傾斜面321に接触し、これにより、保持アーム466に対して、閉鎖ロックバネ460の上部462を細長い溝型部材302の底部に向けて下方に付勢させる。ナイフアセンブリ320が保持アーム466から遠位側へ離れて移動すると、以下に記述されるように、閉鎖ロックバネ460の上部462が上方に跳ねて、保持リップ464を閉鎖ナット440に係合させることができる。図面からも分かるように、開位置では、閉鎖タブ448がアンビル天板340の底面内に形成されたタブ収容溝348内に位置決めされる。
【0038】
読者は、エンドエフェクタ300が図9、図11および図17に示された開位置の状態になっているときに、ユーザーが細長い溝型部材302内に廃棄可能なカートリッジアセンブリ500を搭載することができると正当に評価するはずである。遠位側の駆動シャフト部402が第1の方向に回転すると、当該駆動シャフト部402上の閉鎖ネジ406が閉鎖ナット440内のネジ孔部442から係合解除されるまで、閉鎖ネジ406が近位方向(図27の直線矢印方向)に螺合状態を維持しながら駆動する。図28を参照されたい。閉鎖ナット440が近位側へ駆動すると、アンビル閉鎖アーム部347上の閉鎖フック346が放射状部446内に入り込み、かつ、閉鎖タブ448に接触するまで、閉鎖フック346は閉鎖ナット440の閉鎖傾斜部444をずり上がる。このような閉鎖ナット440の動作は、図18および図19に示されているように、閉位置に向けて、アンビルアセンブリ372(アンビル天板340およびアンビル底板350)を引くのに役立つ。」
以上のことから、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(引用発明)
「手術用結合器の廃棄可能なステープルカートリッジであって、
前記ステープルカートリッジは、
廃棄可能なカートリッジ500のカートリッジ本体502を支持する細長い溝型部材302と、
旋回移動可能なアンビルアセンブリと、
近位端504から遠位端506へ前進しステープル支持ドライバ532と接触してステープル収容ポケット512内にあるステープル534を上方に押圧する摺動カム328と、
駆動シャフト部402及び閉鎖傾斜部444を有している閉鎖ナット440と、
を含み、
前記アンビルアセンブリおよび前記薄型部材302は、前記アンビルアセンブリとされるアンビル天板340が薄型部材302の側壁309を貫通する旋回軸孔311内に収容されたトラニオンピン342によって薄型部材302に対して旋回可能に連結されており、
前記アンビルアセンブリであるアンビル天板340の近位端部345にある閉鎖フック346であって閉鎖ナット440の閉鎖傾斜部444上に載っている状態での接触面を有し、
前記閉鎖ナット440は、アンビルに向かって突出する直立型の形状とされ、傾斜した閉鎖傾斜部444を有し、当該傾斜部444の上にアンビル天板340の閉鎖フック346を載せ、閉鎖ナット440の近位方向への移動に伴い当該閉鎖フック346をずり上げて、アンビル部材の底面がカートリッジ本体の上面に近接する閉位置へ旋回させる、
アンビルを有する使い捨てカートリッジ。」
4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「廃棄可能なカートリッジ500のカートリッジ本体502」を支持するとした「細長い溝型部材302」は、本願発明の「ステープルカートリッジを動作可能に支持するように構成されたステープルカートリッジキャリア」に相当する。
また、引用発明の「旋回移動可能なアンビルアセンブリ」は、本願発明の「少なくとも一つのステープル変形用キャビティを含むアンビルであって、前記アンビルが前記ステープルカートリッジキャリアに対して回転可能に取り付けられており、前記アンビルが開位置と閉位置との間で回転するように構成されており、前記アンビルが近位端および遠位端を含む、アンビル」に相当する。
また、引用発明の「近位端504から遠位端506へ前進しステープル支持ドライバ532と接触してステープル収容ポケット512内にあるステープル534を上方に押圧する摺動カム328」は、上方へのステープルを押圧する動作がステープル収容ポケット512内に収容されたステープルを組織の結合を果たす位置へと配置させることになるので、本願発明の「前記ステープルカートリッジキャリアおよび前記アンビルに対して移動可能である駆動部材であって、前記駆動部材が前記アンビルの前記近位端から前記アンビルの前記遠位端まで前進して、前記ステープルカートリッジからステープルを配置するように構成されている、駆動部材」に相当する。
また、引用発明の「駆動シャフト部402」及び「閉鎖傾斜部444を有し」ている「閉鎖ナット440」は、本願発明の「前記アンビルの前記遠位端から離れる方向に後退するように構成され、前記アンビルに動作可能に係合しているアクチュエータ」に、
「前記アンビルアセンブリおよび前記薄型部材302は、前記アンビルアセンブリとされるアンビル天板340が薄型部材302の側壁309を貫通する旋回軸孔311内に収容されたトラニオンピン342によって薄型部材302に対して旋回可能に連結されており」は、「前記アンビルおよび前記ステープルカートリッジキャリアは、前記アンビルが旋回でき、前記アンビルに対する位置が固定されている旋回軸を画定するように構成されており」に、
「アンビル天板340の近位端部345」にある「閉鎖フック346」であって「閉鎖ナット440の閉鎖傾斜部444上に載っている」状態での接触面は、「前記旋回軸よりも近位側に位置し、前記ステープルカートリッジキャリアに対向するカム面」に、
「閉鎖ナット440」が「閉鎖傾斜部444を有し」ていることは、「アクチュエータ」が少なくとも「カムを有」することに、各々相当する。
以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
(一致点)
「外科ステープル縫合装置用の使い捨て装填ユニットにおいて、
前記使い捨て装填ユニットは、
ステープルカートリッジを動作可能に支持するように構成されたステープルカートリッジキャリアと、
少なくとも一つのステープル変形用キャビティを含むアンビルであって、前記アンビルが前記ステープルカートリッジキャリアに対して回転可能に取り付けられており、前記アンビルが開位置と閉位置との間で回転するように構成されており、前記アンビルが近位端および遠位端を含む、アンビルと、
前記ステープルカートリッジキャリアおよび前記アンビルに対して移動可能である駆動部材であって、前記駆動部材が前記アンビルの前記近位端から前記アンビルの前記遠位端まで前進して、前記ステープルカートリッジからステープルを配置するように構成されている、駆動部材と、
前記アンビルの前記遠位端から離れる方向に後退するように構成され、前記アンビルに動作可能に係合しているアクチュエータと、
を含み、
前記アンビルおよび前記ステープルカートリッジキャリアは、前記アンビルが旋回でき、前記アンビルに対する位置が固定されている旋回軸を画定するように構成されており、
前記アンビルは、前記旋回軸よりも近位側に位置し、前記ステープルカートリッジキャリアに対向するカム面を有し、
前記アクチュエータは、カムを有し、
前記アクチュエータが前記アンビルの前記遠位端から離れる方向に後退するときに、前記アクチュエータの前記カムが、前記アンビルの前記遠位端から離れる方向に移動して、前記アンビルの前記カム面を押し上げ、前記アンビルの前記遠位端が下方に移動し、前記アンビルは、前記開位置から前記閉位置に回転する、アクチュエータと、
を含み、
前記アクチュエータの前記カムは、前記当初接触部が最初に前記アンビルに接触するように前記アンビルに係合するように構成されており、前記アクチュエータが近位側に引かれるときに、前記アクチュエータの前記カムは、前記頂上部分が前記アンビルに接触するまで、前記カムにおける前記当初接触部と前記頂上部分との間の種々の部分が前記アンビルに接触するように、前記アンビルに対してスライドでき、
前記頂上部分は、前記アンビルが閉位置にあるときに前記アンビルに接触するように構成されている、使い捨て装填ユニット。」
(相違点1)本願発明では、当該「カム」の形状・構造に対して、「前記カムは、頂上部分および該頂上部分と下端部との間に位置する当初接触部を有するアーチ形状部を含み」及び「前記アクチュエータの前記カムにおける前記アンビルとの接触部全体が外側に向かって突出する円弧状である」と特定しているのに対して、引用発明の「閉鎖ナット440」の「閉鎖傾斜部444」は、アンビルに向かって「突出する直立型」の形状とされ、「傾斜」した面との特定に留まる点。
(相違点2)本願発明では、「カム」の接触に関し、「前記カムは、前記当初接触部が最初に前記アンビルに接触するように前記アンビルに係合するように構成されており、前記アクチュエータが近位側に引かれるときに、前記アクチュエータの前記カムは、前記頂上部分が前記アンビルに接触するまで、前記カムにおける前記当初接触部と前記頂上部分との間の種々の部分が前記アンビルに接触するように、前記アンビルに対してスライドでき」及び「前記頂上部分は、前記アンビルが閉位置にあるときに前記アンビルに接触するように構成されており」と特定しているのに対して、引用発明の「閉鎖傾斜部444」とアンビル近位端部345の「閉鎖フック346」との接触態様は、「当該傾斜部444の上にアンビル天板340の閉鎖フック346を載せ、閉鎖ナット440の近位方向への移動に伴い当該閉鎖フック346をずり上げて、アンビル部材の底面がカートリッジ本体の上面に近接する閉位置へ旋回させる」とされている点。
5.当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
まずカムの形状の相違について考察する。
本願ではカムの形状を「アーチ形状」を含み、「接触部全体が円弧状」とされ、図面の図示では略1/4円弧に図示されており、引用文献1記載の発明では「閉鎖傾斜部」とされ、図面の図示では一定の角度をなす傾斜面のように図示されている。
つまり、アクチュエータによる近位方向への水平直線運動が、単純増加とされるカム形状により上方向への運動に変換されるという、カム機構の運動方向変換傾向の点では両者は共通しており、本願がアーチないし円弧であるため、接触部位により傾きが異なることになり、水平方向への変位と上下方向への変位との割合が一定でなく変化する動きを呈するのに対して、引用文献1の閉鎖傾斜部は傾きが略一定となるため、水平方向への変位と上下方向への変位との割合が一定の動きを呈する点でのみ両者は相違することになる。
元々カム機構のカム形状は、純粋に設計で如何様にも選択可能なものであり、傾斜面形状も円弧形状もどちらもよく知られ、広く採用されているもの同士の関係にあることが明らかであるが、本願発明で円弧形状を選択した点に、単にアンビル近位端を上昇させる以外に何らかの技術的意義を含ませていたかについて、発明の詳細な説明の開示内容を参照してみたところ、アンビル近位端を上昇させてその遠位端を閉位置に導く以上の他の意義を見出すことができる開示はなされていなかった。
とすれば、当該相違点1の相違は、ありふれた既知のカム形状の中から水平運動を上下運動に変換可能とする形状のうち、異なる形状のカムをたまたま選択したために生じた相違に過ぎず、何らかの技術的意義の相違を生じさせるものではないことが明らかであるといえるので、当業者が引用文献1に記載の発明に基づいて周知の他のカム形状への置換を試みる程度で本願発明に至ると認められる。
(相違点2について)
本願発明のカムの接触に関する特定事項を整理すると、結局のところ、「当初接触部」とは「開位置」における接触点を意味し、「頂上部分」とは「閉位置」における接触点を意味し、アンビルのカム面とアクチュエータのカムとは、これら「当初接触部」と「頂上部分」との間を接触しつつその接触点はスライド移動することを内容とすると理解される。
そうすると、引用発明の、アンビルの閉鎖フックと閉鎖ナットの閉鎖傾斜部との接触しつつスライド移動する様となんら異なるところはなく、当該相違点2に係る相違は、同一状態を単に異なる言い回しで描写した関係から単純な字句上の相違が生じたにすぎず、実質的にはなんら相違するものではない。
以上のとおりであるから、相違点1、2はいずれも格別のものではなく、当業者が引用発明、及び、カムに関する技術常識とその慣用態様に基づいて、本願請求項1に係る発明を容易に想到できた程度のものと認められる。
また、引用発明の作用効果は、アンビルの閉動作用に設けられた、移動する閉鎖傾斜部を有する構成を採用した点で、本件明細書の【0011】に示された「ステープルカートリッジから排出されたステープルの配置前に、軟組織を締付け固定する外科ステープル縫合装置を利用することによって改善」するとされた本願発明の目的及び作用効果となんら違いはない。
上記で検討したごとく、相違点は格別のものではなく、そして、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及びカムに関する技術常識とその慣用態様の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
なお、請求人は平成28年10月7日付け意見書にて、同日付で請求項1に対して「前記アンビルが旋回でき、前記アンビルに対する位置が固定されている旋回軸を画定するように構成されており」とする事項の追加補正をしつつ、引用文献に記載された発明との対比上、位置が固定の旋回軸を有する点で相違する旨主張しているが、当該追加事項は、上記3.の摘記事項Cに挙げたとおり引用文献にも同様の記載事実が確認されるため、当該事項の補正がなされてもなお両者の対比においては新たな相違を形成するものではない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2015-000627