審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2013-800029

フルオレン誘導体の結晶多形体およびその製造方法

審判番号
2013-800029
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2008-028246
登録番号
特許第4140975号(P4140975)
請求日
2013年02月21日
審決日
2017年11月28日
公報発行日
2020年04月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】大阪ガスケミカル 株式会社
  • 【請求人代理人】石川 正
  • 【請求人代理人】畑 郁夫
  • 【請求人代理人】重冨 貴光
  • 【請求人代理人】黒田 佑輝
  • 【被請求人】田岡化学工業 株式会社
  • 【被請求人代理人】松本 司
  • 【被請求人代理人】田上 洋平
審判長/審判官
  • 審判長 佐藤 健史
  • 審判官 瀬良 聡機
  • 審判官 加藤 幹
分類
P1113.537-ZDA(C07C) / P1113.536-ZDA(C07C) / P1113.121-ZDA(C07C) / P1113.112-ZDA(C07C) / P1113.111-ZDA(C07C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条、特許法第123条第1項第4号、特許法第123条第1項第2号、特許法第29条第1項第2号、特許法第134条の3第1項、特許法第134条の2第3項、特許法第127条、特許法第134条の2第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第4140975号「フルオレン誘導体の結晶多形体およびその製造方法」の特許無効審判事件についてされた平成26年 7月25日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成26年(行ケ)第10202号、平成28年 1月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第4140975号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~6]、10について訂正することを認める。 特許第4140975号の請求項7に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4140975号の請求項1ないし4、6、8、9に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 特許第4140975号の請求項5、10についての本件審判請求を却下する。 審判費用は、その10分の7を請求人の負担とし、10分の3を被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 1 特許第4140975号の請求項1~10に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、平成20年2月8日(優先権主張 平成19年2月15日)に出願され、平成20年6月20日に特許権の設定登録がなされたものである(以下、その特許を「本件特許」といい、その明細書を「本件特許明細書」といい、特許請求の範囲を「本件特許請求の範囲」という。)。 2 本件特許について、大阪ガスケミカル株式会社(以下「請求人」という。)から、本件特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明の特許を無効にすることを求める旨の無効審判の請求がなされた。 以下に、本件審判の請求以後の経緯を整理して示す。 平成25年 2月20日 審判請求書・甲第1~51号証(枝番を含む。以                  下同じ。)、及び 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 平成25年 5月20日 答弁書・乙第1~10号証提出(被請求人) 平成25年 7月 2日 審理事項通知書(1) 平成25年 8月 5日 上申書(1)・甲第52~78号証、 証人尋問申出書、尋問事項書、及び 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 同日 上申書(1)提出(被請求人) 平成25年 8月19日 審理事項通知書(2) 平成25年 8月29日 上申書(2)、及び 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 平成25年 9月 5日 口頭審理陳述要領書、及び証拠説明書・ 甲第79~86号証提出(請求人) 同日 口頭審理陳述要領書、及び証拠説明書・ 乙第11~12号証提出(被請求人) 平成25年 9月12日 上申書(3)、及び 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 平成25年 9月19日 上申書(4)提出(請求人) 同日 口頭審理・証拠調べ 平成25年11月 8日 上申書(5)、証拠説明書(1)、 証拠説明書(2)・甲第87~124号証、 及び営業秘密に関する申出書提出(請求人) 同日 上申書(2)・ 乙第13~17号証提出(被請求人) 平成25年11月22日 上申書(6)、証拠説明書・甲第125号証、 及び営業秘密に関する申出書提出(請求人) 同日 上申書(3)、及び証拠説明書(2)・ 乙第18~19号証提出(被請求人) 平成25年11月26日 営業秘密に関する申出書提出(被請求人) 平成25年12月 2日 上申書(4)、証拠説明書(3)・ 乙第20号証提出(被請求人) 平成25年12月17日 審尋(1) 平成26年 1月23日 回答書(1)、証拠説明書・ 甲第126~131号証、及び 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 同日 上申書(5)、及び証拠説明書(4)・ 乙第21~28号証提出(被請求人) 平成26年 2月12日 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 同日 審尋(2) 平成26年 3月17日 回答書(2)、証拠説明書・ 甲第132号証、及び 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 同日 上申書(6)提出(被請求人) 平成26年 3月31日 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 平成26年 4月11日 上申書(7)、及び証拠説明書(5)・ 乙第29~32号証提出(被請求人) 平成26年 4月24日 上申書(8)提出(被請求人) 3 特許庁は、平成26年7月25日、「本件審判の請求は,成り立たない。」旨の審決をし、その謄本は同年8月4日、請求人に送達された。 4 請求人は、平成26年9月1日、審決を不服として知的財産高等裁判所に訴えを提起した(平成26年(行ケ)第10202号)。同裁判所は、平成28年1月27日、「特許庁が無効2013-800029号事件について平成26年7月25日にした審決を取り消す」旨の判決を言渡した。 5 被請求人は、最高裁判所に上告受理の申立てを行った(平成28年(行ヒ)第185号)が平成29年1月20日に受理しないとの決定がなされ、上記取消判決は確定した。 6 審判の請求に理由がないものとした審決に対して取消判決が確定した後、被請求人からは、特許法134条の3第1項の定める期間内に、同法同条同項に基づく申立てがなされた。以降の手続は以下のとおりである。 平成29年 1月25日 訂正の申立て(被請求人) 平成29年 2月 1日 134条の3に基づく訂正請求のための期間指定                  通知(10日) 平成29年 2月 9日 訂正請求書及び訂正特許請求の範囲の提出 (被請求人) 平成29年 3月22日 弁駁書提出   (請求人) 平成29年 5月10日 上申書(9)提出(被請求人) 平成29年 6月23日 審決の予告 平成29年 7月31日 営業秘密に関する申出書提出(請求人) 平成29年 8月29日 上申書(10)提出(被請求人) なお、上申書等については提出日の順に「上申書(1)」のように括弧数字を付し、甲号証及び乙号証(枝番を含む)については「甲21の1」のように略記し、以下、同様に記す場合がある。 また、証拠説明書等にある企業名については、以下のように略記する場合がある。 請求人:大阪ガスケミカル株式会社 被請求人:田岡化学工業株式会社 Y社:●●●●株式会社 X社:●●株式会社 A社:請求人又はY社がBPEFの製造を委託したA社(名称不詳) B社:請求人又はY社がBPEFの製造を委託したB社(名称不詳) α社:●●●●●●株式会社 β社:株式会社●●●●●●●●●●●●● γ社:●●●●●株式会社 δ社:三菱ガス化学株式会社 ε社:●●●●●●●●●株式会社 第2 訂正の可否についての当審の判断 1 訂正の内容 第1の手続の経緯に示すとおり、被請求人は、願書に添付した特許請求の範囲について、平成29年2月9日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおりの訂正を求めた。 訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 本件特許請求の範囲の請求項1である 「【請求項1】ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後、得られた反応混合物から50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得、次いで、純度が85%以上の該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に溶解させた後に50℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体の製造方法。」 を 「【請求項1】ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後、得られた反応混合物から50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得、次いで、純度が85%以上の該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後に65℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体の製造方法。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 本件特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (3)訂正事項3 本件特許請求の範囲の請求項10を削除する。 2 判断 (1)訂正事項1について ア この訂正は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を溶解させる溶媒について,訂正前において「芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒」とあるのを「芳香族炭化水素溶媒」に選択肢を1つに限定して特許請求の範囲を減縮するものである。 イ また、この訂正は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を溶媒に溶解させた後の析出開始温度について、訂正前に「50℃以上」とあるのを「65℃以上」に温度範囲を限定して特許請求の範囲を減縮するものである。 ウ よって、訂正事項1の訂正は,特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであり、【0039】の【実施例5】には、65℃で、【0040】の【実施例6】には、70℃で、粗精製物を溶解させた溶液から結晶析出し始めることが記載されており、設定登録時の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 (2)訂正事項2について ア この訂正は、請求項5を削除するものであるから特許請求の範囲を減縮することを目的とし、設定登録時の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 (3)訂正事項3について ア この訂正は、請求項10を削除するものであるから特許請求の範囲を減縮することを目的とし、設定登録時の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないといえる。 (4)一群の請求項について 訂正前の請求項1~6、10は、請求項2~6、10が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、この訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。 なお、請求人は、弁駁書において、被請求人が第三者に対して本件特許権の全部または一部について通常実施権を許諾していると推知しているとして、特許法第127条の要件に関して主張しているが、登録原簿をみても通常実施権者は確認できないし、その他通常実施権者が存在することを示す具体的証拠もない。それ以上の職権審理を行わないこととする。 (5)小括 以上のとおり、訂正事項1~3に係る訂正は、いずれも特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,しかも同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に違反するものでもない。 よって,結論の第1項のとおり,本件訂正を認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~4、6~9に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明4」、「本件発明6」~「本件発明9」のように表記することがある。)は、本件特許明細書の記載からみて、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4、6~9に記載された事項によって特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後、得られた反応混合物から50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得、次いで、純度が85%以上の該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後に65℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体の製造方法。 【請求項2】ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとの反応が、脱水条件下で行われる請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】ヘテロポリ酸が、リン酸またはケイ酸と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸素酸イオンとから構成されるヘテロポリ酸である請求項1~2に記載の製造方法。 【請求項4】ヘテロポリ酸が、ヘテロポリ酸無水物または予め脱水処理されたヘテロポリ酸である請求項1~3に記載の製造方法。 【請求項6】溶媒が、トルエンまたはキシレンである請求項1~4に記載の製造方法。 【請求項7】示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体。 【請求項8】Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体。 【請求項9】回折角2θの最大ピークが18.4°である請求項8に記載の結晶多形体。」 なお、化合物の名称である「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン」という用語については「BPEF」と略記することがある。 また、BPEFの「示差走査熱分析による融解吸熱最大が100~130℃である結晶多形体」を「多形体A」と略記し(本件明細書の段落0009)、本件特許の請求項7の「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である結晶多形体」を「本件発明7の多形体B」と略記することがある。 第4 請求人の主張の概要 1 本件審判の請求の趣旨 請求人が主張する本件審判における請求の趣旨は、「特許第4140975号の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」である。 2 請求人が主張する無効理由及び証拠方法の概要 請求人は、以下の無効理由1~4を主張し、証拠方法として甲第1号証~甲第132号証を提出し、証人尋問(証人Aとして●●、及び証人Bとして山田光昭)を申請した。 3 審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書、上申書に記載した無効理由の概要 請求人が主張する無効理由1~4は、概略以下のとおりである(第1回口頭審理調書)。 (1)無効理由1 本件特許請求の範囲の記載は、BPEFの製造に関する必要十分な実験等の記載がなく、当業者が発明の詳細な説明の記載内容に基づいて、発明の課題が解決できることを認識することができないため、本件請求項1ないし10に記載された特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるといえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、よって、本件の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (2)無効理由2 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、BPEFの製造方法に係る技術上の意義を当業者が理解するために必要な実験等の記載が開示されておらず、当業者が本件請求項1ないし10に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条4項第1号に適合するものではなく、よって、本件の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (3)無効理由3 本件請求項1ないし10に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、若しくは甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証又は甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、よって、本件請求項1ないし10に係る発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 (4)無効理由4 本件請求項7に係る発明は、本件特許の優先日前の下記の13回にわたる取引において、製造販売して公然と実施され、これによって発明が公知となっていたから特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当し特許を受けることができないものであり、よって、本件請求項7に係る発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 記 本件の第1取引:平成14年3月に、ロット02018~02021のBPEFを請求人からα社に譲渡した取引 本件の第2取引:平成14年8月に、ロット420506のBPEFを請求人からα社に譲渡した取引 本件の第3取引:平成14年10月及び平成15年5月に、ロット520701~520713のBPEFを請求人からα社に譲渡した取引 本件の第4取引:平成15年3月及び8月に、ロット630201~630213のBPEFを請求人からα社に譲渡した取引 本件の第5取引:平成16年11月及び平成17年5月に、ロット0410010のBPEFを請求人からα社に譲渡した取引 本件の第6取引:平成19年1月に、ロット0610208,0612242~0612244,0701246のBPEFを請求人からβ社に譲渡した取引 本件の第7取引:平成15年1月に、ロット02023のBPEFを請求人からγ社に譲渡した取引 本件の第8取引:平成15年6月に、ロット02018のBPEFを請求人からγ社に譲渡した取引 本件の第9取引:平成15年12月に、ロット520709のBPEFを請求人からγ社に譲渡した取引 本件の第10取引:平成14年7月に、ロット420506のBPEFを請求人からδ社に譲渡した取引 本件の第11取引:平成14年5月に、ロット420510のBPEFを請求人からε社に譲渡した取引 本件の第12取引:平成14年10月に、ロット420513,520706のBPEFを請求人からε社に譲渡した取引 本件の第13取引:平成15年3月に、ロット630212のBPEFを請求人からε社に譲渡した取引 (5)証拠方法(甲第1~132号証及び証人A~B) 請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。 甲第1号証:特許第4140975号公報 甲第2号証:特許願(特願2007-34370号) 甲第3号証:意見書 平成20年5月15日 被請求人 甲第4号証:本件特許と基礎出願の実施例の関係 平成25年2月 請求人 甲第5号証:結晶多形の最新技術と応用展開(25~26及び154~155頁) 平成17年8月31日 シーエムシー出版 甲第6号証:特開2007-23016号公報 甲第7号証:本件特許と特開2007-23016号の実施例の関係 平成25年2月 請求人 甲第8号証:化学大辞典 平成元年8月15日 共立出版株式会社 甲第9号証:特開平10-45655号公報 甲第10号証:特開平10-45656号公報 甲第11号証:特開平9-255609号公報 甲第12号証:特開2000-191577号公報 甲第13号証:特開2005-104898号公報 甲第14号証:分かり易い晶析操作 平成15年12月1日 分離技術会 甲第15号証:平成24年1月26日付け大阪地裁判決(大阪地裁平成22年(ワ)第9102号) 甲第16号証:平成24年7月18日付け知財高裁判決(知財高裁平成24年(ネ)第10016号) 甲第17号証:判決確定証明書(知財高裁平成24年(ネ)第10016号) 甲第18号証:特許第2559332号公報 甲第19号証:BPEF合成法の基礎研究 平成9年4月28日 Y社 甲第20号証:BPEF(ビスフェノキシエタノールフルオレン)の製造に関する試験完了報告書 平成9年2月28日 A社 甲第21号証の1:BPEFのSP処方による製造報告書 平成11年4月27日 B社甲第21号証の2:試験報告書 平成11年4月2日 B社が試験の実施を委託したC社甲第22号証の1:納品書 平成11年4月13日 B社 甲第22号証の2:DSCチャート(S99009) 請求人 甲第22号証の3:分析結果報告書 平成23年1月27日 株式会社日東分析センター甲第23号証:平成12年2月度取締役会議案 平成12年3月29日 請求人 甲第24号証:陳述書 平成25年2月12日 山田光昭 甲第25号証:陳述書 平成25年2月12日 須田康裕 甲第26号証:陳述書 平成25年2月12日 ●● 甲第27号証:測定結果報告書 平成22年1月18日 被請求人 甲第28号証:確認書 平成23年7月8日 β社・●● 甲第29号証:確認書 平成25年1月28日 β社・●● 甲第30号証の1:サンプル送付のご案内 平成14年3月1日 Y社 甲第30号証の2:BPEF試験成績表 平成14年3月1日 Y社 甲第30号証の3:DSCチャート(BPEF02018~02021) 平成14年3月5日 α社 甲第30号証の4:BPEF出荷案内状 平成14年3月26日 B社 甲第30号証の5:書類送付案内書、試験成績表及び納品書 平成14年3月29日 請求人 甲第31号証の1:サンプル出荷依頼書 平成15年1月21日 本河 甲第31号証の2:サンプル送付のご案内 平成15年1月21日 請求人 甲第31号証の3:試験成績表 平成15年1月21日 請求人 甲第31号証の4:DSCチャート(BPEF02023) 平成14年4月16日 α社 甲第31号証の5:納品書No.03010382 平成15年1月21日 請求人 甲第31号証の6:請求書No.002015 平成24年12月14日 請求人 甲第32号証の1:サンプル出荷依頼書 平成15年6月5日 ●● 甲第32号証の2:サンプル送付のご案内及び試験成績表 平成15年6月5日 請求人 甲第32号証の3:納品書No.03060141 平成15年6月5日 請求人 甲第32号証の4:請求書No.003137 平成24年12月14日 請求人 甲第33号証:BPEF実機製造結果報告書 平成14年5月27日 A社 甲第34号証の1:「原料購入依頼の件」と題する書面 平成14年8月1日 α社 甲第34号証の2:納品書No.02080154 平成14年8月12日 請求人 甲第34号証の3:請求書No.000237 平成22年2月23日 請求人 甲第35号証の1:サンプル送付のご案内 平成14年10月21日 請求人 甲第35号証の2:試験成績表 平成14年10月22日 請求人 甲第35号証の3:DSCチャート(BPEF-520701~520713) 平成14年10月24日及び同年10月25日 α社 甲第35号証の4:請求人宛の送付状 平成14年10月30日 A社 甲第35号証の5:見積書 平成15年5月30日 請求人 甲第35号証の6:納品書No.03060014 平成15年6月5日 請求人 甲第35号証の7:試験成績表 平成15年5月6日 請求人 甲第35号証の8:DSCチャート(BPEF-5201~520713) 平成14年8月20日から同年9月18日 A社 甲第36号証の1:サンプル出荷依頼書 平成15年12月9日 請求人 甲第36号証の2:サンプル送付のご案内 平成15年12月9日 請求人甲第36号証の3:試験成績表 平成15年12月9日 請求人 甲第36号証の4:納品書No.03120233 平成15年12月9日 請求人 甲第36号証の5:請求書No.004838 平成24年12月14日 請求人 甲第37号証の1:「BPEF発注の件」と題する書面 平成14年7月24日 δ社 甲第37号証の2:試験成績表 平成14年7月25日 請求人 甲第37号証の3:簡易納品・請求書控 平成14年7月30日 δ社 甲第37号証の4:サンプル出荷依頼書 平成14年7月24日 請求人 甲第37号証の5:受領書 平成14年7月30日 δ社 甲第38号証:確認書 平成23年7月8日 ε社・●●●● 甲第39号証の1:サンプル送付のご案内 平成14年5月21日 Y社 甲第39号証の2:試験成績表 平成14年5月21日 Y社 甲第40号証の1:サンプル送付のご案内 平成14年10月16日 Y社 甲第40号証の2:試験成績表 平成14年10月16日 Y社 甲第41号証:サンプル送付のご案内 平成15年3月3日 Y社 甲第42号証:DSCチャート(BPEF-420510、420513、520706、630212、940515) 平成23年6月28日 請求人 甲第43号証:請求人宛の送付状 平成15年2月26日 A社 甲第44号証:BPEF製品結果一覧表 平成15年2月26日 A社 甲第45号証:試験成績書 平成15年2月27日 A社 甲第46号証:DSCチャート(BPEF-630201~630213) 平成15年2月4日から同年2月24日 A社 甲第47号証の1:サンプル送付のご案内及びBPEF実機製造結果 平成15年3月14日 請求人 甲第47号証の2:「原料正式発注依頼の件」と題する書面 平成15年8月19日 α社 甲第48号証:(株)フルファイン平成16年度実績推移表 平成17年4月20日 株式会社フルファイン 甲第49号証の1:サンプル出荷依頼書 平成16年11月12日 請求人 甲第49号証の2:サンプル送付のご案内 平成16年11月15日 請求人 甲第49号証の3:DSCチャート(BPEF-410010) 平成16年11月24日 α社 甲第49号証の4:書類送付のご案内及び試験成績表 平成17年5月17日及び同年5月18日 請求人 甲第50号証:DSCチャート(BPEF-0610208、0612242~0612244、0701246) 平成22年5月10日から同年5月12日 請求人 甲第51号証の1:注文書 平成19年1月26日 β社 甲第51号証の2:出荷依頼書 平成19年1月29日 請求人 甲第51号証の3:納品書No.07011029 平成19年1月31日 請求人 甲第51号証の4:試験成績表送付のご案内及び試験成績表 平成19年2月1日 請求人 甲第51号証の5:請求書No.017256 平成22年5月6日 請求人 甲第52号証:第5版実験化学講座1基礎編I実験・情報の基礎 平成15年9月25日 社団法人日本化学会 甲第53号証:実験成績証明書 平成25年8月5日 宮内信輔 甲第54号証:審判事件答弁書(無効2010-800194) 平成23年1月14日 被請求人 甲第55号証:判例時報(2176号) 平成25年4月11日 株式会社判例時報社 甲第56号証:特許性検討会報告書2008 平成21年3月 特許庁 甲第57号証:結晶多形の最新技術と応用展開(105頁) 平成17年8月31日 株式会社シーエムシー出版 甲第58号証:有機結晶作製ハンドブック 平成12年4月20日 丸善株式会社 甲第59号証:最近の化学工学53晶析工学・晶析プロセスの進展 平成13年10月30日 株式会社化学工業社 甲第60号証 結晶多形の構造制御における添加物ならびに溶媒効果 平成13年3月 北村光孝 甲第61号証:特開2004-2376号公報 甲第62号証:特公平6-57676号公報 甲第63号証:特表平9-500654号公報 甲第64号証:特開平6-287177号公報 甲第65号証:特開平11-171843号公報 甲第66号証:特開2003-40830号公報 甲第67号証:特開平5-132441号公報 甲第68号証:特開2001-81179号公報 甲第69号証:特開2000-128977号公報 甲第70号証:特開2005-120055号公報 甲第71号証:確認書 平成25年7月29日 ε社・●●● 甲第72号証:HP(http://www.iri-tokyo.jp/setsubi/a/zai_h23_tg_l.html) 平成25年7月30日(印刷日) 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 甲第73号証:HP(http://www.omtri.or.jp/kenkyubu/org/org.html) 平成25年7月30日(印刷日) 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 甲第74号証:HP(https://www.iri-tokyo.jp/seihin/bunseki/index.html) 平成25年7月30日(印刷日) 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 甲第75号証:HP(http://www.kansai.meti.go.jp/2giki/sangiren/guidebook/dl/kikan/118.pdf) 平成25年7月30日(印刷日) 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 甲第76号証:特開2008-163194号公報 甲第77号証:●●●●●●●●●●●●●●● 甲第78号証:●●●●●●●●●●●●●●●● 甲第79号証:陳述書 平成25年9月5日 宮内信輔 甲第80号証:特開平6-220131号公報 甲第81号証:パンフレット 平成8年2月以前 新日鐵化学株式会社 甲第82号証:閉鎖事項証明書 平成25年9月5日 法務局 甲第83号証:金属分析すり合わせの件について 平成5年11月30日 X社 甲第84号証:議事録 平成5年8月30日頃 Y社 甲第85号証:結晶多形の最新技術と応用展開(100~101頁) 平成17年8月31日 株式会社シーエムシー出版 甲第86号証:結晶多形の最新技術と応用展開(97頁) 平成17年8月31日 株式会社シーエムシー出版 甲第87号証の1:「BPEF分析表の件」と題する書面及び試験成績書 平成15年6月30日 A社 甲第87号証の2:DSCチャート(730701~730718) 平成15年6月18日から同年7月9日 A社 甲第88号証の1:「BPEFの試験成績表の件」と題する書面及び試験成績書 平成15年8月25日 A社 甲第88号証の2:DSCチャート(830801~830814) 平成15年8月7日から同年8月29日 A社 甲第89号証の1:試験成績書 平成16年5月7日 A社 甲第89号証の2:DSCチャート(940501~940517、940717~940721) 平成16年5月7日から同年7月20日 A社 甲第90号証:DSCチャート(1041020、1041021) 平成16年10月28日及び同年10月29日 A社 甲第91号証:分析結果報告書 平成25年10月7日 株式会社日東分析センター 甲第92号証:DSCチャート(0411027~0411029、0411031、0508063~0508065、0511099、0411021、051032) 平成25年9月30日及び同年10月1日 請求人 甲第93号証の1:販売伝票No.221784 平成14年7月1日 請求人 甲第93号証の2:試験成績表No.1839 平成14年6月27 Y社 甲第93号証の3:納品書No.02061255 平成14年6月27日 請求人 甲第94号証の1:販売伝票No.2070664 平成14年7月24日 請求人 甲第94号証の2:納品書No.02070664 平成14年7月26日 請求人 甲第94号証の3:請求書(控)No.028155 平成25年10月21日 請求人 甲第95号証の1:販売伝票No.3070012 平成15年7月2日 請求人 甲第95号証の2:販売伝票No.3070353 平成15年7月14日 請求人 甲第95号証の3:納品書No.03070012 平成15年7月1日 請求人 甲第95号証の4:請求書(控)No.003490 平成25年10月21日 請求人 甲第96号証の1:販売伝票No.3070352 平成15年7月14日 請求人 甲第96号証の2:販売伝票No.3070560 平成15年7月28日 請求人 甲第96号証の3:納品書No.03070352 平成15年7月14日 請求人 甲第97号証の1:販売伝票No.3070754 平成15年7月28日 請求人 甲第97号証の2:納品書No.03070754 平成15年7月28日 請求人 甲第98号証の1:販売伝票No.3080193 平成15年8月7日 請求人 甲第98号証の2:納品書No.03080193 平成15年8月7日 請求人 甲第98号証の3:請求書(控)No.003771 平成15年10月21日 請求人 甲第99号証の1:販売伝票No.3080358 平成15年8月18日 請求人 甲第99号証の2:納品書No.03080358 平成15年8月18日 請求人 甲第100号証の1:販売伝票No.3100347 平成15年10月15日 請求人 甲第100号証の2:納品書No.03100347 平成15年10月15日 請求人 甲第100号証の3:請求書(控)No.004325 平成25年10月21日 請求人 甲第101号証の1:販売伝票No.3100772 平成15年10月28日 請求人 甲第101号証の2:納品書No.03100772 平成15年10月28日 請求人 甲第101号証の3:請求書(控)No.004355 平成25年10月21日 請求人 甲第102号証の1:販売伝票No.3100871 平成15年10月30日 請求人 甲第102号証の2:納品書No.03100871 平成15年10月29日 請求人 甲第103号証の1:販売伝票No.3110219 平成15年11月11日 請求人 甲第103号証の2:納品書No.03110219 平成15年11月11日 請求人 甲第103号証の3:請求書(控)No.004592 平成25年10月25日 請求人 甲第104号証の1:販売伝票No.3120017 平成15年12月1日 請求人 甲第104号証の2:出荷依頼書 平成15年12月1日 請求人 甲第104号証の3:納品書No.03120017 平成15年12月2日 請求人 甲第104号証の4:請求書(控)No.004890 平成25年10月25日 請求人 甲第105号証の1:販売伝票No.4060502 平成16年6月18日 請求人 甲第105号証の2:試験成績表No.2789 平成16年6月18日 請求人 甲第105号証の3:納品書No.04060502 平成16年6月18日 請求人 甲第105号証の4:請求書(控)No.006593 平成25年10月21日 請求人 甲第106号証の1:販売伝票No.4080396 平成16年8月17日 請求人 甲第106号証の2:納品書No.04080396 平成16年8月17日 請求人 甲第106号証の3:請求書(控)No.007186 平成25年10月21日 請求人 甲第107号証の1:販売伝票No.4090950 平成16年9月30日 請求人 甲第107号証の2:試験成績表No.3007 平成16年9月29日 請求人 甲第107号証の3:納品書No.04090950 平成16年9月29日 請求人 甲第107号証の4:請求書(控)No.007718 平成25年10月21日 請求人 甲第108号証の1:販売伝票No.4091018 平成16年10月4日 請求人 甲第108号証の2:納品書No.04091018 平成16年10月1日 請求人 甲第108号証の3:請求書(控)No.007948 平成25年10月21日 請求人 甲第109号証の1:販売伝票No.4100091 平成16年10月4日 請求人 甲第109号証の2:納品書No.04100091 平成16年10月4日 請求人 甲第110号証の1:販売伝票No.4100143 平成16年10月5日 請求人 甲第110号証の2:納品書No.04100143 平成16年10月5日 請求人 甲第111号証の1:販売伝票No.4120678 平成16年12月17日 請求人 甲第111号証の2:納品書No.04120678 平成16年12月17日 請求人 甲第111号証の3:請求書(控)No.008531 平成25年10月21日 請求人 甲第112号証の1:販売伝票No.5010162 平成17年1月12日 請求人 甲第112号証の2:納品書No.05010162 平成17年1月11日 請求人 甲第112号証の3:請求書(控)No.008975 平成25年10月21日 請求人 甲第113号証の1:販売伝票No.5010163 平成17年1月12日 請求人 甲第113号証の2:納品書No.05010163 平成17年1月11日 請求人 甲第114号証の1:販売伝票No.5010398 平成17年1月18日 請求人 甲第114号証の2:納品書No.05010398 平成17年1月18日 請求人 甲第115号証の1:販売伝票No.5020782 平成17年2月23日 請求人 甲第115号証の2:納品書No.05020782 平成17年2月22日 請求人 甲第115号証の3:請求書(控)No.009263 平成25年10月25日 請求人 甲第116号証の1:販売伝票No.5040540 平成17年4月19日 請求人 甲第116号証の2:サンプル出荷依頼書 平成17年4月4日 請求人 甲第116号証の3:納品書No.05040540 平成17年4月19日 請求人 甲第116号証の4:請求書(控)No.009746 平成25年10月25日 請求人 甲第117号証の1:販売伝票No.6030521 平成18年3月14日 請求人 甲第117号証の2:試験成績表 平成18年3月14日 請求人 甲第117号証の3:納品書No.06030521 平成18年3月14日 請求人 甲第117号証の4:請求書(控)No.013614 平成25年10月25日 請求人 甲第118号証の1:販売伝票No.6040055 平成18年4月5日 請求人 甲第118号証の2:納品書No.06040055 平成18年4月6日 請求人 甲第118号証の3:請求書(控)No.013966 平成25年10月25日 請求人 甲第119号証:HP(http://web.archive.org/web/20040413054310/http ://www.ogc.co.jp/seihin/fine.html) 平成16年4月13日(保存日) 請求人 甲第120号証:陳述書 平成25年11月8日 宮内信輔 甲第121号証:写真撮影報告書 平成25年11月8日 黒田佑輝 甲第122号証:DSCチャート(0609200~0609205、0610206~0610208、0610210、0610212、0610213、0611214~0611220) 平成25年10月1日及び同年10月3日 請求人 甲第123号証:特開平8-295646号公報 甲第124号証:結晶多形の最新技術と応用展開(106頁) 平成17年8月31日 株式会社シーエムシー出版 甲第125号証:ご連絡 平成22年2月24日 被請求人代理人・松本司・田上洋平 甲第126号証:陳述書 平成26年1月23日 ●●●● 甲第127号証:陳述書 平成26年1月23日 ●●● 甲第128号証:陳述書 平成26年1月23日 村瀬裕明 甲第129号証:陳述書 平成26年1月23日 須田康裕 甲第130号証:陳述書 平成26年1月23日 西康浩 甲第131号証:特許第4673936号公報 平成23年4月20日 甲第132号証:HP(https://www.jfe-chem.com/corp/group/group05.html) 平成26年3月13日(印刷日) JFEケミカル株式会社 証人A(●●):左記証人について、証人尋問の申立て 証人B(山田光昭):左記証人について、証人尋問の申立て なお、証拠の認否について、被請求人は、甲20~甲22の2、甲30の4、甲33、甲35の4、甲35の8、甲42~甲46、甲50、甲87の1~甲90、甲92、甲122について不知とし、その余の甲号証(平成26年3月17日に提出された甲132を除く。)については成立を認めるとしている。 第5 答弁の趣旨並びにその主張の概要及び被請求人が提出した証拠方法 1 答弁の趣旨 被請求人が主張する答弁の趣旨は、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。との審決を求める。」である(答弁書「6.答弁の趣旨」「(4)結論」)。 そして、被請求人は、請求人が主張する上記無効理由1~4は、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、上申書において、いずれも理由がない旨の主張をしていると認める。 2 証拠方法(乙第1号証~乙第32号証) 被請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。 乙第1号証の1:分かり易い晶析操作(6~8頁) 平成15年12月1日 分離技術会 乙第1号証の2:結晶多形の最新技術と応用展開(107及び156頁) 平成17年8月31日 株式会社シーエムシー出版 乙第2号証:「多形」公報の検索結果報告書 平成23年5月30日 被請求人・山田好美 乙第3号証:事務連絡書 平成5年7月14日 被請求人 乙第4号証の1の1:出張報告書 平成5年10月27日 被請求人・森野和貴 乙第4号証の1の2:打合せ議事録 平成5年10月26日 Y社 乙第4号証の1の3:「BPHEに関する3社会議」と題する書面 平成5年10月20日 Y社 乙第4号証の1の4:「BPHE合成実験結果報告」と題する書面 平成5年10月20日 被請求人 乙第4号証の2の1:事務連絡書 平成5年11月4日 被請求人 乙第4号証の2の2:打合せ議事録 平成5年11月2日 Y社 乙第4号証の3の1:事務連絡書兼打合せ議事録 平成5年12月10日 X社 乙第4号証の3の2:「サンプル製造結果報告」と題する書面 平成5年11月24日 被請求人 乙第4号証の3の3:「BPEFの開発に関する打ち合わせ資料」と題する書面 平成5年11月24日 X社 乙第4号証の4の1:事務連絡書兼打合せ議事録 平成5年12月17日 被請求人 乙第4号証の4の2:「BPEF製法検討結果」と題する書面 平成5年12月10日 被請求人 乙第4号証の4の3:「分析結果報告書」と題する書面 平成5年12月8日 被請求人 乙第4号証の4の4:「BPEFの開発に関する打ち合わせ資料」と題する書面 平成5年12月10日 X社 乙第4号証の5の1:事務連絡書兼3社会議議事録 平成6年1月26日 被請求人 乙第4号証の5の2:「BPEFに関する打ち合わせ資料」と題する書面 平成6年1月18日 X社 乙第4号証の5の3:「BPEF製法検討結果」と題する書面 平成6年1月18日 被請求人 乙第4号証の5の4:「BPEF打ち合わせ資料」と題する書面 平成6年1月18日 Y社 乙第4号証の6の1:事務連絡書兼3社会議議事録 平成6年2月28日 被請求人 乙第4号証の6の2:「BPEFに関する三社会議(第6回)」と題する書面 平成6年2月22日 Y社 乙第4号証の6の3:「BPEF製造結果報告(Lot.No.40201)」と題する書面 平成6年2月22日 被請求人 乙第4号証の6の4:「BPEFの分析検討結果」と題する書面 平成6年2月22日 被請求人 乙第4号証の6の5:「BPEF開発に関する3社打ち合わせ資料」と題する書面 平成6年2月22日 X社 乙第4号証の6の6:「BPEF中の不純物分析」と題する書面 平成6年2月22日 X社 乙第4号証の7の1:事務連絡書 平成6年4月8日 被請求人 乙第4号証の7の2:「BPEF製造結果報告(Lot.No.40401)」と題する書面 平成6年4月12日 被請求人 乙第4号証の7の3:「1.石油系原料について(進捗状況)」との記載のある書面 平成6年4月12日 Y社 乙第4号証の7の4:「打ち合わせ資料」と題する書面 平成6年4月12日 X社 乙第4号証の8:事務連絡書兼3社会議議事録 平成6年7月25日 被請求人 乙第4号証の9の1:事務連絡書兼3社会議議事録 平成6年9月14日 請求人 乙第4号証の9の2:「BPEFに関する3社会議(第9回)」と題する書面 平成6年9月6日 Y社 乙第4号証の9の3:「打ち合わせ資料」と題する書面 平成6年9月7日 Y社 乙第4号証の9の4:「打ち合わせ資料」と題する書面 平成6年9月7日 Y社 乙第4号証の9の5:「打ち合わせ資料」と題する書面 平成6年9月7日 Y社 乙第4号証の9の6:「打ち合わせ資料」と題する書面 平成6年9月7日 Y社 乙第4号証の9の7:「BPEFサンプル製造及び今後の検討計画」と題する書面 平成6年9月7日 被請求人 乙第4号証の9の8:「BPEFに関する3社会議資料」と題する書面 平成6年9月7日 X社 乙第4号証の9の9:FAX送信状 平成6年9月6日 X社 乙第4号証の9の10:「市場開拓の進捗状況の件」と題する書面 平成6年9月7日 X社 乙第4号証の10:事務連絡書兼3社会議議事録 平成6年11月 被請求人 乙第4号証の11の1:3社会議議事録 平成7年4月5日 請求人 乙第4号証の11の2:「BPEF合成合理化検討(I)」との記載のある書面 平成7年4月5日 被請求人 乙第4号証の11の3:「3社会議資料(第11回)」と題する書面 平成7年4月5日 Y社 乙第4号証の11の4:「BPEFに関する3社会議資料」と題する書面 平成7年4月5日 X社 乙第4号証の12の1:「打ち合わせ議事録(案)」と題する書面 平成7年8月24日 X社 乙第4号証の12の2:「BPEF使用計画変更の件」と題する書面 平成7年8月24日 X社 乙第4号証の13の1:事務連絡書 平成7年11月16日 被請求人 乙第4号証の13の2:「コストダウン検討実験」と題する書面 平成7年11月13日 被請求人 乙第4号証の13の3:「●●●●●第1回本機重合結果」と題する書面 平成7年11月13日 X社 乙第4号証の13の4:「BPEF入荷スペック項目(素案)について」と題する書面 平成7年11月13日 X社 乙第5号証の1:事務連絡書兼BPEF打合せ議事録 平成7年2月24日 被請求人 乙第5号証の2:「BPEF等に関する知的財産の実施許諾についてのお願い」と題する書面 平成7年3月17日 Y社 乙第5号証の3:BPEFの製造・販売に関する覚書 平成7年4月1日 請求人・被請求人 乙第5号証の4:BPEFの製造・販売に関する覚書 平成8年12月1日 請求人・被請求人 乙第6号証の1:覚書 平成5年11月22日 Y社・被請求人 乙第6号証の2:確認書 平成6年3月31日 Y社・被請求人 乙第6号証の3:覚書 平成5年9月21日 X社・Y社・被請求人 乙第6号証の4:覚書 平成5年9月21日 Y社・被請求人 乙第7号証の1の1:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第7号証の1の2:●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第7号証の2の1:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第7号証の2の2:●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第7号証の3:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第7号証の4:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第8号証の1:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第8号証の2:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第9号証の1:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第9号証の2:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第9号証の3:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第9号証の4:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第9号証の5:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第9号証の6:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第9号証の7:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第9号証の8:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第10号証の1:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第10号証の2:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 乙第11号証の1:HP(http://web.archive.org/web/20071219150323/http://www.ogc.co.jp/seihin/fine.html) 平成19年12月19日(保存日) 請求人 乙第11号証の2:HP(http://www.ogc.co.jp/products/fluorene/monomer.html) 平成22年6月22日(印刷日) 請求人 乙第12号証:陳述書 平成25年9月3日 被請求人・数村秀樹 乙第13号証:特開2012-207008号公報 乙第14号証:機能性化学の製品開発・顧客システム(1) 平成17年3月 桑嶋健一 乙第15号証:陳述書 平成25年11月6日 被請求人・山田好美 乙第16号証:測定結果報告書 平成22年1月18日 被請求人・山田好美 乙第17号証:陳述書 平成23年7月8日 請求人・山田光昭 乙第18号証:HP(http://web.archive.org/web/20040214235759/http://www.ogc.co.jp/j/main_1.htm) 平成16年2月14日(保存日) 請求人 乙第19号証:陳述書(2) 平成25年11月21日 被請求人・山田好美 乙第20号証:陳述書(2) 平成25年11月27日 被請求人・数村秀樹 乙第21号証:大阪地方裁判所平成22年(ワ)第9102号事件被告準備書面(8) 平成23年7月11日 被告代理人(請求人代理人) 乙第22号証の1:●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 平成17年6月15日 X社 乙第22号証の2:HP ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 平成26年1月23日(印刷日) β社 乙第23号証:取引基本契約書 乙第24号証:購買仕様書 乙第25号証:陳述書(3) 平成26年1月21日 被請求人・山田好美 乙第26号証の1:注文書(No.95-01) 平成7年4月1日 請求人 乙第26号証の2:注文書(No.95-03) 平成7年6月20日 請求人 乙第26号証の3:注文書(No.95-08) 平成7年8月29日 請求人 乙第26号証の4:注文書(No.95-10) 平成7年9月29日 請求人 乙第26号証の5:注文書(No.95-11) 平成7年9月29日 請求人 乙第27号証:大阪地方裁判所平成22年(ワ)第9102号事件原告第4準備書面 平成23年2月25日 原告代理人(被請求人代理人) 乙第28号証の1:同事件被告証拠説明書(1) 平成22年9月24日 被告代理人(請求人代理人) 乙第28号証の2:同事件被告証拠説明書(4) 平成23年3月8日 被告代理人(請求人代理人) 乙第28号証の3:同事件被告証拠説明書(5) 平成23年4月18日 被告代理人(請求人代理人) 乙第28号証の4:同事件被告証拠説明書(6) 平成23年7月11日 被告代理人(請求人代理人) 乙第28号証の5:知的財産高等裁判所平成24年(ネ)第10016号事件被控訴人証拠説明書(1) 平成24年5月8日 被控訴人代理人(請求人代理人) 乙第29号証:特願平5-8038号(特開平6-211729号)の登録記事 乙第30号証:特願平5-310089号(特開平7-165657号)の登録記事 乙第31号証:特許第2559332号公報 乙第32号証:大阪地方裁判所平成22年(ワ)第9102号事件被告準備書面(2) 平成22年10月25日 被告代理人(請求人代理人) なお、証拠の認否について、請求人は、乙19、乙23、及び乙24について不知とし、その余の乙号証(平成26年4月11日に提出された乙29~32を除く。)については成立を認めるとしている。 第6 証拠の記載 1 甲号証の記載事項 (1)甲第1号証:特許第4140975号公報 本件特許の特許公報である甲第1号証には、次の記載がある。 (1a)「【請求項1】 ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後、得られた反応混合物から50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得、次いで、純度が85%以上の該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に溶解させた後に50℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体の製造方法。 【請求項2】 ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとの反応が、脱水条件下で行われる請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 ヘテロポリ酸が、リン酸またはケイ酸と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸素酸イオンとから構成されるヘテロポリ酸である請求項1~2に記載の製造方法。 【請求項4】 ヘテロポリ酸が、ヘテロポリ酸無水物または予め脱水処理されたヘテロポリ酸である請求項1~3に記載の製造方法。 【請求項5】 溶媒が、芳香族炭化水素溶媒である請求項1~4に記載の製造方法。 【請求項6】 溶媒が、トルエンまたはキシレンである請求項1~4に記載の製造方法。 【請求項7】 示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体。 【請求項8】 Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体。 【請求項9】 回折角2θの最大ピークが18.4°である請求項8に記載の結晶多形体。 【請求項10】 ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後、得られた反応混合物から50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得、次いで、純度が85%以上の該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に溶解させた後に50℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させて得られる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体。」(【特許請求の範囲】) (1b)「【発明が解決しようとする課題】【0008】 本発明の目的は、一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶多形体を提供することであり、また、その結晶多形体の製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】【0009】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンには、従来から知られている融解吸熱最大が示差走査熱分析で100~130℃である結晶多形体(以下多形体Aと称する)の他に、融解吸熱最大が示差走査熱分析で150℃~180℃である新規な結晶多形体(以下多形体Bと称する)が存在する事を見出した、また、本発明者らは、かかる多形体Bを選択的に得る製造方法を見出すことにより本発明を完成するに至った。」 (1c) 「【発明の効果】【0011】本発明によれば、一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶多形体およびその製造方法を提供することができる。また、本発明により得られる多形体Bは、公知の多形体Aよりも嵩密度が高いため、容積効率等の点で工業的な取扱いに有利である。・・・ 【0013】本発明においてフルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させる場合、酸触媒として、例えば、硫酸、チオール類、モンモリロナイト、ヘテロポリ酸等が用いられ、これらの中でも特に酸触媒由来の不純物の生成が少なく、実質的に単一な多形体を得やすいことからヘテロポリ酸が好ましい。」 (1d)「【0031】 本発明における結晶多形体の製造は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に50℃より高い温度で溶解させた後に、得られた混合物を冷却して、50℃以上、溶媒の沸点未満(好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃)の温度範囲で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶の析出を開始させることにより実施される。溶解時の温度は特に限定されるものではないが、通常、55℃以上、使用する溶媒の沸点以下、好ましくは60~150℃、更に好ましくは70~110℃である。この温度が低いと実質的な単一の結晶形を得る事ができない場合がある。50℃以上で結晶の析出を開始させた後は、混合物をさらに冷却してもよい。冷却終点の温度は特に限定されるものではないが、通常-20~50℃、好ましくは0~40℃、更に好ましくは10~30℃である。この温度が低いと純度が低下する傾向にあり、この温度が高いと溶媒へのロス量が多くなり経済性、生産性が悪くなる。冷却速度は特に限定されるものではないが、通常、毎分0.01~2℃、好ましくは、毎分0.1~0.5℃である。冷却途中で、混合物中に9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として添加することが好ましい。結晶種を添加する場合は、多形体Bの結晶種を準安定域幅、例えば、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの飽和溶解点の温度より1~10℃、好ましくは1~3℃低い温度で加えることが好ましい。添加される結晶種の量は、用いた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物に対して0.01~10重量%、好ましくは0.1~1重量%、更に好ましくは0.3~0.7重量%である。・・・ 【0033】本発明における多形体Bは、下記(d)~(f)の少なくとも1つの特徴を有する。 (d)示差走査熱分析による融解吸熱最大が150~180℃、好ましくは160~166℃、より好ましくは163~165℃、特に164℃である。 (e)Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°に特徴的なピークを有する。 (f)嵩密度が0.5以上、好ましくは0.6~0.8g/cm3である。」 (1e)「【実施例1】【0035】粗精製物の製造 攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器に、トルエン400gおよびリンタングステン酸3.25gを仕込み、トルエン還流下、共沸脱水した。そこに、フルオレノン129.6g(0.712モル)、2-フェノキシエタノール994.9g(7.20モル)およびトルエン118.7gを加え、トルエン還流下、反応により生成する水を系外に除去しながら21時間攪拌した。得られた反応混合物にトルエン1560gを加え、得られた混合物を70℃に調整し、水520gで4回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮することにより、トルエンおよび過剰の2-フェノキシエタノールを除去した。得られた混合物にトルエン1800gを加え、80℃で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを溶解させた後、得られた溶液を活性炭で脱色処理した。得られた溶液を徐々に冷却したところ、42℃で結晶が析出し始め、そのまま30℃まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を乾燥させることにより、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶280g(収率88.8%、純度91.8%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は105℃、嵩密度は0.24g/cm3であった。 【実施例2】【0036】多形体Bの製造 実施例1で得られた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物80gとトルエン640gの懸濁液を90℃に加熱し、同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液を80℃まで冷却し、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(多形体B)0.4gを結晶種として添加し、同温度で2時間攪拌して結晶を析出させた。この液を毎分0.2℃の冷却速度で20℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌することにより、さらに結晶を析出させた。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を減圧乾燥させることにより、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶73.0g(収率91.3%、純度99.2%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は164.0℃、嵩密度は0.75g/cm3であった。 【実施例3】【0037】粗精製物の製造 攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器に、フルオレノン86.4g(0.48モル)、フェノキシエタノール397.9g(2.88モル)、トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたリンタングステン酸[(H3PW12O40)]4.3gを加え、トルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら12時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ-で分析した結果、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが197.3g(0.45モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え、水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。得られた有機層を徐々に冷却したところ、12℃で結晶が析出し始め、そのまま10℃まで冷却し12時間攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を乾燥させることにより、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶158.0g(収率75.1%、LC純度99.0%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は109℃、嵩密度は0.24g/cm3であった。 【実施例4】【0038】粗精製物の製造 攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器に、フルオレノン86.4g(0.48モル)、フェノキシエタノール663.2g(4.80モル)、トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(H4SiW12O40)]4.3gを加え、トルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら8時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ-で分析した結果、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが201.5g(0.46モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え、水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。得られた有機層を減圧濃縮してトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを除去した。得られた混合物にトルエン600gを加え、80℃で約1時間加熱攪拌して均一溶液とした後、徐々に冷却したところ、38℃で結晶が析出し始め、そのまま室温まで冷却した。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を乾燥させることにより、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶162.1g(収率92.0%、LC純度96.2%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は104℃、嵩密度は0.23g/cm3であった。 【実施例5】【0039】多形体Bの製造 実施例4で得た9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物80gとトルエン640gの懸濁液を90℃に加熱し、同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液を徐々に冷却したところ、65℃で結晶が析出し始め、そのまま30℃まで冷却し、同温度で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を減圧乾燥させることにより、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶70.4g(収率88.0%、純度98.2%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は163.5℃、嵩密度は0.70g/cm3であった。 【実施例6】【0040】多形体Bの製造 実施例3で得た9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物60gとキシレン300gの懸濁液を100℃に加熱し、同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この液を徐々に冷却したところ、70℃で結晶が析出し始め、そのまま10℃まで冷却し、同温で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を減圧乾燥させることにより、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶53.9g(収率89.9%、純度99.5%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は163.3℃、嵩密度は0.75g/cm3であった。 【実施例7】【0042】多形体Bの製造 比較例1で調製された9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(多形体A)80gとトルエン400gの懸濁液を95℃に加熱して均一な溶液とし、この溶液を80℃まで冷却し、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(多形体B)0.4gを結晶種として添加し、同温度で1時間攪拌して結晶を析出させた。この液を10℃まで徐冷し、同温度で1時間保温攪拌することにより、さらに結晶を析出させた。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を減圧乾燥させることにより、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶73.0g(収率91.2%、純度99.7%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は164.0℃、嵩密度は0.78g/cm3であった。また、Na含有量25ppb、Fe含有量32ppb、加熱溶解色(220℃/3hr)がAPHA10であった。 【実施例8】【0043】多形体Bの製造 実施例5で調製された9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶(多形体B)50gとトルエン250gの懸濁液を90℃に加熱し、同温度で1時間攪拌して均一な溶液とした。この溶液を徐々に冷却したところ、72℃で結晶が析出し始め、そのまま10℃まで冷却し、同温度で1時間保温攪拌した。析出した結晶を濾過により取り出し、該結晶を減圧乾燥させることにより、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶45.5g(収率90.8%、純度98.9%)を得た。得られた結晶の融点(示差走査熱分析による融解吸熱最大)は163.7℃、嵩密度は0.77g/cm3であった。また、Na含有量107ppb、Fe含有量79ppb、加熱溶解色(220℃/3hr)がAPHA30であった。」 (1f)「【0044】(試験例1)結晶多形体の示差走査熱量測定(DSC)9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体10mgおよび別に酸化アルミニウム10mgをそれぞれアルミパンに精密に秤取し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製:DSC220C)を用い、酸化アルミニウムを対象として下記条件で測定した。比較例1で得られた多形体Aおよび実施例2で得られた多形体Bに対する結果を、それぞれ図1よび図2に示す。 操作条件 試薬  :酸化アルミニウム 昇温速度:10℃/min 測定範囲:40-260℃ 雰囲気 :開放、窒素40ml/min 【0045】(試験例2)結晶多形体の粉末X線回折  150mgをガラス試験板の試料充填部に充填し、粉末X線回折装置(スペクトリス製:X’PertPRO)を用いて下記の条件で測定した。比較例1で得られた多形体Aおよび実施例2で得られた多形体Bに対する結果を、それぞれ図3および図4ならびに表1および表2に示す。 X線源   :CuKα 出力    :1.8kW(45kV-40mA) 測定範囲  :2θ=5°~60° スキャン速度:2θ=1.2°/min スリット  :DS=1°、マスク=15mm、RS=可変(0.1mm~) ・・・ 【0048】【表2】 」 (1g)「 」(【図1】~【図4】) (2)甲第6号証:特開2007-23016号公報 本件特許出願の優先日(平成19年2月15日)前の平成19年2月1日に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の記載がある。 (6a)「【0003】9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの製造方法としては、硫酸とチオールを触媒としてフルオレノンとフェノキシエタノールを脱水縮合させる方法が開示されている(特許文献1)。しかし、この方法では大量の硫酸を用いるため、反応後の精製に煩雑な操作が必要であり、多量の中和排水が出る。また製品中に触媒由来のイオウ分が混入することにより、製品の着色や安定性低下、純度低下などの問題が生じる。更に光学樹脂原料など、高純度の製品を得るためにはイオウ分を除くために精製を繰り返す必要があり、工業的に有利な方法とは言えない。・・・ 【0007】本発明は、フルオレノン類とフェノキシアルコール類の反応によるフルオレン誘導体の製造において、煩雑な触媒除去操作や精製操作を行なうことなく、イオウ分を含まない高品質な製品を工業的有利に製造する方法を提供することを目的とする。」 (6b)「【0025】反応後、反応液に溶媒を加え、冷却晶析することにより結晶としてフルオレン誘導体を得ることができ、析出した結晶は濾過等により回収される。また必要に応じて洗浄、吸着、水蒸気蒸留、再晶析などの精製操作を行うことができる。晶析および精製に用いられる溶媒は、反応溶媒をそのまま使用してもよいし、別の溶媒を使用することもできる。晶析溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族低級ケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、水などが特に好ましい。」 (6c)「【実施例10】【0038】攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.48モル)、フェノキシエタノール663.2g(4.80モル)、トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(H4SiW12O40)]4.3gを加え、トルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら8時間攪拌した。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィ-で分析した結果、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが201.5g(0.46モル)生成していた。この反応液にトルエン300gを加え、水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。次いで加熱下、減圧濃縮によりトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを除去した。この濃縮液にトルエン600gを加え、80℃で約1時間加熱攪拌した後、室温まで徐々に冷却し、析出した結晶をろ過、乾燥することにより白色結晶[9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン]、162.1g(収率92.0%、LC純度96.2%)を得た。得られた結晶中のイオウ分は0.2ppm以下であった。」 (3)甲第9号証:特開平10-45655号公報 本件特許出願の優先日前の平成10年2月17日に頒布された刊行物である甲第9号証には、次の記載がある。 (9a)「【0020】なお、回収した反応生成物〔9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン〕を更に精製する場合の精製方法としては、溶媒として低級脂肪族アルコール、芳香族化合物、ケトン化合物、エステル化合物及びこれらの2種以上の混合物を用いて再結晶する方法が挙げられる。これらの溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級脂肪族アルコール、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート等のエステル化合物等が挙げられる。この再結晶溶媒の使用量については、回収した反応生成物に含まれるフルオレン骨格1モルに対して、1000~8000ml、好ましくは2000~6000mlとなる量を用いるとよい。・・・ 【0026】得られた上記粗結晶50gをトルエン400mlからなる混合溶媒に攪拌、加熱下に溶解させた後、室温まで徐々に冷却して結晶を析出させる。該結晶を濾過し、70℃で1日間減圧乾燥した。得られた結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は99.5%、収量は43.8g、収率65.9%であった。また、結晶中の残存硫酸は150ppmであった。」 (4)甲第10号証:特開平10-45656号公報 本件特許出願の優先日前の平成10年2月17日に頒布された刊行物である甲第10号証には、次の記載がある。 (10a)「【0022】なお、回収した反応生成物〔9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン〕を更に精製する場合の精製方法としては、溶媒として低級脂肪族アルコール、芳香族化合物、ケトン化合物、エステル化合物及びこれらの2種以上の混合物を用いて再結晶する方法が挙げられる。これらの溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級脂肪族アルコール、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート等のエステル化合物等が挙げられる。この再結晶溶媒の使用量については、回収した反応生成物に含まれるフルオレン骨格1モルに対して、1000~8000ml、好ましくは2000~6000mlとなる量を用いるとよい。・・・ 【0028】次いで、上記粗結晶をトルエン650mlに攪拌下に80~85℃に加熱溶解し、更に太閤活性炭(二村化学工業株式会社製)2gを添加して30分間よく混合した後、熱濾過した。得られた濾液を室温まで徐々に冷却して結晶を析出させ、濾過し、70℃で1日間減圧乾燥した。得られた結晶(9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの純度は99.3%、収量は74.0g、収率67.5%であった。また、結晶中の残存硫酸は130ppmであった。」 (5)甲第11号証:特開平9-255609号公報 本件特許出願の優先日前の平成9年9月30日に頒布された刊行物である甲第11号証には、次の記載がある。 (11a)「【0018】ここで、反応系より目的物を晶析させて回収する溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート等のエステル化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることも可能である。溶媒の使用量としては、フルオレノン骨格1モルに対して1000~8000ml、好ましくは2000~6000mlである。・・・ 【0024】次いで、トルエン450mlを徐々に加えて加熱攪拌下に溶解、熱濾過後、室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、70℃で1日間減圧乾燥した。得られた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フエニル)フルオレンのLC純度は99.5%、収量は33.6g(収率89%)であった。」 (6)甲第12号証:特開2000-191577号公報 本件特許出願の優先日前の平成12年7月11日に頒布された刊行物である甲第12号証には、次の記載がある。 (12a)「【0023】フルオレノンとフェノキシエタノールの反応液は、触媒を濾過により分離することができる。触媒を濾過した後の反応液は溶剤を加えた後、晶析することにより結晶としてBPEFを取り出すことができる。この際に使う溶剤としては、低級脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等)、低級脂肪族ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類が挙げられるが、BPFEの色相から低級脂肪族アルコールを使用するのがよい。例えば、反応液に低級脂肪族アルコールを加え、均一溶液とした後、冷却することにより結晶を析出させる。この際、必要に応じて水を加えても結晶を析出させることができる。加える溶剤の量は、たとえばメタノールの場合、反応液にフルオレン骨格を有する化合物1モルに対し100~2000ml、好ましくは200~1000mlを用いることができる。」 (7)甲第13号証:特開2005-104898号公報 本件特許出願の優先日前の平成17年4月21日に頒布された刊行物である甲第13号証には、次の記載がある。 (13a)「【0058】 晶析操作は、慣用の方法、例えば、晶析溶媒に溶解し、混合液を冷却することにより行うことができる。通常、有機相の残渣と晶析溶媒とを、溶媒の沸点以下の温度で加温して溶解し、生成した溶液を、適当な温度(例えば、-10℃~30℃、特に0~30℃程度)に冷却することにより結晶を析出させることができる。晶析溶媒は、トルエン、キシレンなどのフルオレン誘導体が溶解する溶媒であれば、幅広く使用できる。析出した結晶は濾過などにより回収され、必要により洗浄し、乾燥することにより高純度で透明性の高い目的化合物フルオレン誘導体を得ることができる。なお、晶析操作は必要により繰り返してもよいが、本発明では、1回の晶析操作によりフルオレン誘導体を高純度の結晶として得ることができる。」 (8)甲第14号証:分かり易い晶析操作 本件特許出願の優先日前の平成15年12月1日に頒布された刊行物である甲第14号証には、次の記載がある。 (14a)「晶析により得られる結晶粒子は,あるときは医薬品の原料であり,機能性化学薬品あるいは通常の化学製品,食品でもある.晶析の目的が分離・精製であれ,結晶粒子の製造であれ,常に注意しなくてはならないのは,ろ過特性,粉体流動性,嵩密度などの粉体特定,結晶純度などである.これらの特性を適切に維持するためには,結晶の粒度分布の制御および結晶形状の制御が必要不可欠である.」(第1頁第11~16行) (14b)「晶析の目的は第一に,物質の分離・精製である.…晶析のもう一つの目的は,結晶性粒子の製造である.この場合,得られる結晶そのものが製品である.製品特定として,結晶純度はもちろん,結晶粒度分布,結晶形状が重要となる.粉体粒子製造法としてはブレークダウン(break-down)法としての粉砕法が,その場合は粉砕の対象となる固体原料の存在が前提となるのに対して,晶析法はそのような前提は不要で,分子原子レベルから固体粒子を製造する方法である.ビルドアップ(build-up)法といわれる.化学製品から医薬品まで広い範囲にわたり,晶析により結晶性粉体粒子が製造されている.製造法を工夫することにより,製品にさまざまな機能・特性を付与することも可能である.そのため,医薬品,ファインケミカルズの製法として,重要な位置を占めている.」 (第1頁第22行~第2頁21行) (14c)「結晶多形の制御も簡単ではない.結晶析出以前の過飽和溶液における溶液の構造,すなわち,溶液中で結晶構成成分の分子がどのような並び方をしているかが多形析出のカギを握っていると思われるが,溶液の構造を制御する手段を持たないため,多形析出の制御は依然として難しいといわざるを得ない.実際には,経験的な手法で多形を作り分けている.たとえば,溶液を急冷したり,または,結晶析出温度を高くあるいは低く設定したりして実験的に望みの多形の析出条件を見つけだしている.」(第45頁第16~22行) (9)甲第5号証、甲124号証:結晶多形の最新技術と応用展開 本件特許出願の優先日前の平成17年8月31日に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の記載がある。 (5a)「固体の融点は物質に固有な性質であるとして固体物質の確認法として定着している。・・・特に医薬品の分野では多形が異なると、異なる物質の扱いを受けるために、特定の多形を安定して生産する技術の開発は必要不可欠である。」 (「はじめに」の項) (5b)「3 結晶多形の溶媒媒介転移に及ぼす溶媒組成,晶析温度,不純物,攪拌速度の影響 多形の析出は,溶媒とその組成,晶析温度,過飽和度,不純物の存在と濃度,攪拌速度,pHなど晶析パラメーター全般に支配されている。中でも,溶媒の種類と混合溶媒組成は,多形に大きく影響し,慎重な選択が必要である。溶媒の種類や混合組成を変えると新しく結晶多形体が「発見される」ということも珍しくない」(154頁12~17行) 甲5と同じ刊行物の甲124号証には、次の記載がある。 (124a)「化合物の分子構造から結晶構造を含めた結晶多形を予測する試みはいくつかなされているものの・・・予測が困難であることから,存在し得る結晶多形を見出すためには,できるだけ多くの条件で網羅的に結晶化を試みるというスクリーニング法に頼らざるを得ないというのが現状である。」(106頁1~6行) (10)甲第61号証:特開2004-2376号公報 本件特許出願の優先日前の平成16年1月8日に頒布された刊行物である甲第61号証には、次の記載がある。 (61a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 赤外吸収スペクトル測定法の臭化カリウム錠剤法で測定するとき、3406cm-1付近、3138cm-1付近、795cm-1付近および727cm-1付近に特徴的なピークを示す赤外吸収スペクトルを有する5-ヒドロキシ-1-メチルイミダゾリジン-2,4-ジオンのII型結晶形。」 (61b)「【0036】 実施例4. 嵩密度の測定 参考例1で製造したI型結晶形及び実施例1で製造したII型結晶形のそれぞれ40gをメスシリンダーに注入し、体積を測定し、嵩密度を算出した。次いで、乾燥粉末の体積が変化しなくなるまで、各メスシリンダーを同一条件で軽く叩いて圧密させ、圧密後の体積を測定し、嵩密度を算出した。結果の一例を表1に示す。 【表1】 」 (11)甲第62号証:特公平6-57676号公報 本件特許出願の優先日前の平成6年8月3日に頒布された刊行物である甲第62号証には、次の記載がある。 (62a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】β晶の結晶構造を持ち、かつ実質的に立方体または直方体の独立粒子状であるテトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル〕メタン(以下化合物(I)という)。」 (62b)「比較のため表1に、実施例1および2、比較例1および2によって得られた製品、ならびに市販されている化合物(I)(ムサシノガイギー株式会社製品)の性状を示す。 」(5頁表1) (12)甲第63号証:特表平9-500654号公報 本件特許出願の優先日前の平成9年1月21日に頒布された刊行物である甲第63号証には、次の記載がある。 (63a)「β形は、低い嵩比重(フラフ比重(fluff density)はα形の0.36g/mlに比較して0.09g/mlである)と乏しい流動性しか有さないので、それを含有する配合物を錠剤にすると、錠剤重量が大きく変動しかつ高い突出力が必要となる。これら全ての点において、α形は医薬製剤に特に適する優れた特性を示した。」(40頁下から11行~下から7行) (13)甲第64号証:特開平6-287177号公報 本件特許出願の優先日前の平成6年10月11日に頒布された刊行物である甲第64号証には、次の記載がある。 (64a)「【0001】本発明は、緻密で、結晶性で、かさ密度が高い3-シアン-2-モルホリノ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジンおよびその製造方法に関する。3-シアン-2-モルホリノ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジンは血管拡張作用を合せ持つ強心剤として使用することができる。3-シアン-2-モルホリノ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジンを、3-シアン-2-クロロ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジンを過剰のモルホリンで置き換えることにより調製し、得られた粗製物をエタノールから再結晶化する方法は公知である(DD-PS 236729、実施例7、EP0200024A2)。その際再結晶化した生成物は細い、綿毛状の針状結晶として沈殿するが、この結晶はかさ密度が150g/l しかなく、製薬調合が非常に困難である。」 (64b)「【0012】しかし、これは決定的なことではない。重要なのは、本発明により得られる結晶形態ないし結晶形態混合物に関係なく、緻密で、結晶性の、先行技術の製品と比較して、約220~360g/l の高いかさ密度を有する3-シアン-2-モルホリノ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジンが常に得られ、医薬用担体および助剤と組み合わせることにより、高品質の医薬製剤に加工できることである。」 (64c)「【0016】 ・・・ 実施例1 a)3-シアン-2-モルホリノ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジン塩酸塩一水和物 5.0kgの3-シアン-2-モルホリノ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジンを25 lの水および2.0 lの工業用塩酸と混合し、約50℃に加熱する。この黄色の溶液に3.0 lの塩酸を加え、冷却する。結晶化させた後、20℃未満の温度でさらに2時間攪拌する。遠心分離し、5.4 lの水および0.6 lの塩酸の混合物で洗浄する。収量:5.3kg(理論値の88%) b)3-シアン-2-モルホリノ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジン(γ-形態) 5.3kgの3-シアン-2-モルホリノ-5-(ピリド-4-イル)-ピリジン-塩酸塩一水和物を40 lの水に分散させ、この懸濁液を50℃に加熱し、0.5kgの活性炭を加え、15分間撹拌した後、吸引分離し、水洗する。この濾液を30℃に冷却し、攪拌しながら、この温度で、1時間の間に、約2.7 lの濃苛性ソーダを加え、pH値を8~9にする。遠心分離し、合計30 lの水で洗浄する。収量:4.1kg(理論値の93.2%) 融点:126~128℃ 乳ばちですりつぶした試料のかさ密度:約360g/l」 (14)甲第65号証:特開平11-171843号公報 本件特許出願の優先日前の平成11年6月29日に頒布された刊行物である甲第65号証には、次の記載がある。 (65a)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らの実験によれば、例えば、前記(2) の酵素的合成法により得られた[S,S]-EDDSの反応液に常温ないし冷却下で鉱酸を添加する通常の酸析方法では、析出する[S,S]-EDDSは極めて嵩高い針状結晶であり、この結晶は水等による洗浄効率が悪く混入する不純物の除去が困難なこと、乾燥に長時間を要すること、単位重量当たりの容積が大きいため輸送効率が悪いこと等の問題が提起された。さらに、この問題を解決するため、酸析の際のpHおよび温度条件等について種々検討を行った結果、嵩密度の大きい円柱状結晶が得られる条件を見出す反面、全く意外にも、酸析後の結晶を除去した母液中にかなりの量の下記構造式〔1〕、〔2〕等で示されるエチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸の環化物が含まれており、ある酸析条件が分子内環化反応を促進し、[S,S]-EDDSの回収率低下を引起していることが確認された。」 (65b)「【0009】すなわち、本発明は、嵩密度が0.45~1.2g/cm3 であることを特徴とする[S,S]-エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸の結晶、ならびにpH1.9~4.5および温度40~80℃に調整した[S,S]-エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸またはその塩の水溶液を冷却し[S,S]-エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸を析出させることを特徴とする上記[S,S]-エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸の結晶の取得方法、である。」 (65c)「【0018】比較例1 100mlの[S,S]-EDDS溶液に室温(20℃)下で濃硫酸を添加しpH1.95に調整した。1時間静置した後、析出した結晶をブフナーで濾過し脱塩水100mlで洗浄して湿結晶を得た。80℃で一夜乾燥した結晶は針状結晶(0.05~0.2mm径×0.5~3mm長)であり、嵩密度は0.2g/cm3、残存する硫酸根は264ppmであった。また、母液中の環化物含量は[S,S]-EDDSに対し0.5重量%であった。 【0019】実施例1 上記[S,S]-EDDS溶液100mlを80℃とした後、濃硫酸を添加しpH3.75に調整した。その後、30℃に達するまで2時間かけて徐々に冷却した。この間、濃硫酸を少しずつ添加しながらpH3.75を保持するようにコントロールした。析出した結晶をブフナーで濾過し脱塩水100mlで洗浄して湿結晶を得た。80℃で一夜乾燥した結晶は円柱状結晶(0.3~0.6mm径×1~3mm長)であり、嵩密度は0.58g/cm3 、残存する硫酸根は97ppmであった。また、母液中の環化物含量は[S,S]-EDDSに対し8.5重量%であった。」 (15)甲第66号証:特開2003-40830号公報 本件特許出願の優先日前の平成15年2月13日に頒布された刊行物である甲第66号証には、次の記載がある。 (66a)「【0036】かくして、1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸の製造方法により、嵩密度が0.3~0.5g/mlである1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸の結晶を得ることができる。従来の結晶は、通常、嵩密度が0.1~0.2g/mlであるのに対し、本発明の結晶は嵩密度が0.3~0.5g/mlであり、濾過、乾燥し易く簡便に単離精製することができる。」 (16)甲第67号証:特開平5-132441号公報 本件特許出願の優先日前の平成5年5月28日に頒布された刊行物である甲第67号証には、次の記載がある。 (67a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】流下フィルム動的晶出装置で分別溶融結晶化により不純物を含むビスフェノール-Aを精製することからなる方法。 【請求項2】少なくとも本質的に溶媒または水分を含まないオルト斜方晶系結晶体ビスフェノール-Aからなる組成物。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は流下フィルム動的晶出装置で分別溶融結晶化により不純物を含むビスフェノールAを精製することからなる方法に関する。」 (67b)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】これまでに述べたように、高純度のビスフェノール-Aを調製することはポリカーボネートの調製にとっても極めて重要である。取扱いや貯蔵のためにもまた一般的な純度の点からも、これまでビスフェノール-Aはオルト斜方晶系結晶体または針状で単離されてきたが、斜方晶系が好ましい。現在まで、オルト斜方晶系結晶体を得る方法は更に水分またはグリコールを使用する必要があった。このようなグリコールの例としては、エチレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、および米国特許第4,113,974号に記載の水共溶媒系などが挙げられる。結晶性ビスフェノール-Aを得るためにトルエンまたは塩化メチレンなどの他の溶媒を使用すると針状(樹枝状)のものが得られた。これらの方法はいずれも有機溶媒などの薬品を更に加えたりおよび/または水などを使用し、抽出、スラリー操作、遠心分離、ろ過、真空系、蒸留などの方法、乾燥器、および排水処理設備など使用する必要がある。」 (17)甲第68号証:特開2001-81179号公報 本件特許出願の優先日前の平成13年3月27日に頒布された刊行物である甲第68号証には、次の記載がある。 (68a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを主たる成分とするジヒドロキシ化合物と、炭酸ジフェニルを主たる成分とする芳香族炭酸エステルとを塩基性エステル交換触媒の存在下溶融重縮合性せしめ芳香族ポリカーボネートを製造するに際し、該2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが、オルト斜方晶系結晶構造を有することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造法。 (68b)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は色調の良好な芳香族ポリカーボネートに関するものであり、更に詳しくは、特定結晶構造の2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールA)を使用することにより、色調の良好な芳香族ポリカーボネートを製造する方法に関するものである。」 (18)甲第69号証:特開2000-128977号公報 本件特許出願の優先日前の平成12年5月9日に頒布された刊行物である甲第69号証には、次の記載がある。 (69a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを主たる成分とするジヒドロキシ化合物と、炭酸ジフェニルを主たる成分とする芳香族炭酸エステルとを塩基性エステル交換触媒の存在下溶融重縮合性せしめ芳香族ポリカーボネートを製造するに際し、該2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが、オルト斜方晶系結晶構造を有することを特徴とする芳香族ポリカーボネートの製造法。」 (69b)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は色調の良好な芳香族ポリカーボネートに関するものであり、更に詳しくは、特定結晶構造の2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを使用することにより、色調の良好な芳香族ポリカーボネートを製造する方法に関するものである。」 (19)甲第70号証:特開2005-120055号公報 本件特許出願の優先日前の平成17年5月12日に頒布された刊行物である甲第70号証には、次の記載がある。 (70a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 融点もしくは示差走査熱量測定(DSC)でのピーク温度(Tp)が125~129℃である化学式1 【化1】 で示される2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン。 【請求項2】 Cu-Kα線による粉末X線回折法において、少なくとも、回折角2θ(degree)=13.1、13.4、15.1、19.0、23.2にピークをもつX線回折図により特徴付けられる結晶形を有する2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン。 【請求項3】 融点が135℃以上である2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンの結晶を加熱溶融後、冷却、そして、更に再加熱して100~125℃の温度で結晶化させることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンの製造方法。 【請求項4】 請求項1~3のいずれかに記載の2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンの結晶を含有する2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンの新規な結晶形(以下、「β晶」という。)およびその製造方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 一般的に、ビスフェノール化合物は、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の原料として使用されるほか、酸化防止剤、塩化ビニル用の樹脂安定剤等にも使用されている。このようなビスフェノール化合物の中で、一般にビスフェノールCと呼ばれている2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンは、特にポリカーボネート、エポキシ樹脂等の原料として使用されている。通常、これらに使用されている2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンは、融点が135℃以上を示す結晶(以下、「α晶」という。)であった。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 しかしながら、現在のところこのα晶しか知られておらず、α晶の2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンは、高融点でかつ結晶性の高い化合物であるために、樹脂やバインダー樹脂に対する相溶性(溶解性)が悪く、酸化防止剤や樹脂安定剤として用いた場合には経時的にブルームと呼ばれる現象を生じて、樹脂の表面に2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンが粉のように噴き出る場合があった。このため、得られた樹脂製品の美観を損なわせたり、目に見える程度のブルームを生じなくても、製品に触れたりした際に手に付着して感触を悪くするため、製品表面を布などで拭う作業を要する場合もあった。その一方で、ビスフェノールCは安価でしかも樹脂安定性や酸化防止性に優れているため、これとほぼ同等な効力を有しかつブルームの生じない新規な樹脂安定剤、酸化防止剤が求められているところでもある。 ・・・ 【課題を解決するための手段】 【0004】 本発明者らは、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンの製法やその結晶構造について鋭意検討を行っていたところ、これまで知られているα晶とは、融点および結晶構造が異なる2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンが存在することを発見した。そして、この2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを樹脂組成物に混合したところ、驚くべきことにブルームの発生がα晶を用いた場合に比べて大幅に抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。」 (70b)「【0012】 本発明の2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(β晶)はそれ単独で従来のα晶と同様な使用方法で用いることもできるし、α晶との混合物として樹脂組成物として、あるいは酸化防止剤、樹脂安定剤として用いることができるのは言うまでもない。」 (20)甲18,甲19,甲20,甲21の1及び甲21の2,甲22の1~3 ア 甲18は、●●●●株式会社を特許権者とし、発明者の一人を山田光昭氏とする特許公報であって、特許請求の範囲には、「【請求項1】 硫酸とチオールを触媒として用いて、フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得ることを特徴とするフルオレン誘導品の製造方法。 【請求項2】 請求項1に記載のフルオレン誘導品の製造方法において、フルオレノンとフェノキシエタノールとを反応させて得られる反応液に、低級脂肪族アルコールを添加して溶解させた後、水を添加して9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させて回収することを特徴とするフルオレン誘導品の製造方法。」と記載され、出願日が、平成5年12月10日であることが確認できる。 イ 甲19は、「BPEF合成法の基礎研究」と題する報告書であって、報告書作成日としては1997年4月28日であることが確認でき、加水分解工程を含むBPEFの合成法が確認できる(43頁)。 ウ 甲20は、●●●●に宛てた「BPEF(ビスフェノキシエタノールフルオレン)の製造に関する試験完了報告書」と題する1997.2.28付けの報告書であるが、「1.試験内容 ●●●●株式会社-BPEF製造技術処方に基づき、BPEF製造の工業化のための基礎データとサンプルの評価を目的として、当社の実機設備を用いたBPEF製造試験を実施した。」との記載(1頁)、処理工程図のBPEF製造として、加水分解工程を含む処理工程図が確認できる(2頁)。 エ 甲21の1は、「BPEFのSP処方による製造報告書」と題する平成11年4月27日付けの文書であって、Lot009(Gグレード)とLot010(SPグレード)が製造されたことが読み取れ、精製BPEF湿体(Lot.010-2)の示差熱重量分析データが別添資料として添付されたことが読み取れる。 オ 甲21の2は、「試験報告書」と題する平成11年4月2日付けの文書であって、BPEF(湿体)の示差熱重量分析を行うことを目的としたものであって、測定日時が99/03/30のBPEFサンプルは、最大吸熱ピークが162.5℃であることが読み取れ、99/03/29のBPEFサンプルは、最大吸熱ピークが162.9℃であることが読み取れる。 カ 甲22の1は、請求人である大阪ガスケミカル株式会社 緒方和幸氏 宛ての平成11年4月13日付けの納品伝票であって、品名・ロット番号の欄に、BPEFとLot.BPEF-S-99008、BPEF-S-99008-2、及びBPEF-S-99009との記載が、対応した備考欄に、SP(Lot.010)、SP(Lot.010-2)、及びG(Lot.009)との記載がある。 キ 甲22の2は、BPEF S99009の測定日付が2009/10/20の示差熱重量分析チャートで最大吸熱ピークが163.8℃であることが読み取れる。 ク 甲22の3は、「分析結果報告書 BPEFの融点測定」と題する大阪ガスケミカル株式会社 宛ての2011年1月27日付けの株式会社 日東分析センター作成の報告書であって、BPEF(Lot.No.S99009)を試料とする示差走査熱分析による融解吸熱最大が163.8℃、164.0℃、164.0℃であることが読み取れる。 (21)甲30の1~5、甲126(本件の第1取引) ア 甲30の1は、「サンプル送付のご案内」と題する●●●●株式会社 村瀬裕明氏から●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成14年3月1日付けの書面であって、サンプル名として、BPEF(Lot.No.BPEF-02018)~BPEF(Lot.No.BPEF-02021)が記載されている。 イ 甲30の2は、「BPEF試験成績表」と題する●●●●株式会社 村瀬裕明氏から●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成14年3月1日付けの書面であって、Lot.No.02018~02021の各数量が400gであることが記載されている。 ウ 甲30の3は、4つのDSCチャートであって、試料名がBPEF02018~BPEF02021であって、日付がいずれも02/03/05であること、最大吸収が、それぞれ163.0C、163.0C、162.8C、163.2Cであることが確認できる。 エ 甲30の4は、「BPEF出荷案内状」と題する●●●●株式会社 山田光昭氏に宛てた平成14年3月26日付けの書面であって、大阪ガスケミカル株式会社須田康裕氏宛てに3月26日に出荷されたことが記載され、出荷明細表及び納品書には、Lot Noとして、02018~02021が記載されている。 オ 甲30の5は、「書類送付御案内書」と題する大阪ガスケミカル株式会社から●●●●●●株式会社に宛てた平成14年3月29日付けの書面であって、BPEF Lot No.02018~21の計2700kgの納品書と試験成績書が同封されて送付されたことが記載され、Lot No.と数量が整合した平成14年3月29日付けの試験成績書と出荷日平成14年3月29日が記載された納品書が確認できる。 (22)甲31の1~6(本件の第7取引) ア 甲31の1は、「有償サンプル出荷依頼書」と題する 本河氏発行の平成15年1月21日発行の書面であって、サンプル名として、BPEF-K、数量として60kg、指定純度・Lot等として02023、出荷先として●●●●●株式会社、特記事項として試験成績表の添付依頼が記載されている。 イ 甲31の2は、「サンプル送付のご案内」と題する大阪ガスケミカル株式会社 須田康裕氏から●●●●●株式会社●●●●に宛てた平成15年1月21日付けの書面であって、サンプル名として、BPEF-K(Lot.No.BPEF-02023)が、数量60kgが記載されている。 ウ 甲31の3は、「試験成績表」と題する大阪ガスケミカル株式会社 須田康裕氏から●●●●●株式会社●●●●に宛てた平成15年1月21日付けの書面であって、品名として、BPEF-K(ビスフェノキシエタノールフルオレン)、Lot.No.として、BPEF-02023が、数量として、60kgが記載されている。 エ 甲31の4は、DSCチャートであって、試料名がBPEF02023であって、日付が02/04/16であること、最大吸熱ピークが162.7℃であることが確認できる。 オ 甲31の5、甲31の6は、大阪ガスケミカル株式会社から●●●●●株式会社に宛てた2003年1月21日付けのBPEF-K60kgに対する納品書、請求書である。 (23)甲32の1~4(本件の第8取引) ア 甲32の1は、「有償サンプル出荷依頼書」と題する ●●氏発行の平成15年6月5日発行の書面であって、サンプル名として、BPEF-K、数量として60kg、特記事項として、Lot.No.02030 40kg、Lot.No.02018 20kg、試験成績表の添付の依頼が記載され、出荷先として●●●●●株式会社が記載されている。 イ 甲32の2は、「サンプル送付のご案内」と題する大阪ガスケミカル株式会社 須田康裕氏から●●●●●株式会社●●●●に宛てた平成15年6月5日付けの書面及び「試験成績表」と題する大阪ガスケミカル株式会社 須田康裕氏から●●●●●株式会社●●●●に宛てた平成15年6月5日付けの書面であって、前者には、サンプル名として、BPEF-K(Lot.No.BPEF-02018)が,数量20kg、BPEF-K(Lot.No.BPEF-02030)が、数量40kgとの記載が確認でき、後者の一方には、品名として、BPEF-K(ビスフェノキシエタノールフルオレン)が、Lot.No.として、BPEF-02030が、数量として、40kgが記載され、後者のもう一方には、品名として、BPEF-K(ビスフェノキシエタノールアミン)が、Lot.No.として、BPEF-02018が、数量として、20kgが記載されている。 ウ 甲32の3、甲32の4は、大阪ガスケミカル株式会社から●●●●●株式会社に宛てた2003年6月5日付けのBPEF60kgに対する納品書、請求書である。 (24)甲33、甲39の1、2、甲42(本件の第11取引) ア 甲33は、「BPEF実機製造結果報告書」と題する平成14年5月27日付けの●●●●株式会社に宛てた報告書であるが、添付資料として別紙-1(Lot明細書×1枚)、別紙-2(試験成績表×5枚)、別紙-3(工程管理表×8枚)、別紙-4(製造工程図CP5×1枚)、別紙-5(コスト計算表CP5×1枚)があることが記載され、平成14年4月25日付け「BPEF Lot一覧表」(Lot No.420501、420503、420504等の記載)、5枚の「試験成績書 品名:BPEF」(DSCの値として、ロットNo.420501、420503、420504に対して、それぞれ、163.7、163.1、163.8が記載されている。)(DSCの値として、ロットNo.420505、420506、420507に対して、それぞれ、163.6、163.0、162.3が記載されている。)(DSCの値として、ロットNo.420508、420509、420510に対して、それぞれ、162.7、162.80、163.5が記載されている。)(DSCの値として、ロットNo.420511、420512、420513に対して、それぞれ、163.3、162.6、163が記載されている。)(DSCの値として、ロットNo.420514に対して、163.4が記載されている。) イ 甲39の1は、「サンプル送付のご案内」と題する●●●●株式会社 村瀬裕明氏から●●●●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成14年5月21日付けの書面であって、サンプル名として、BPEF(Lot.No.BPEF-420510)が記載されている。甲39の2は、「試験成績表」と題する●●●●株式会社 村瀬裕明氏から●●●●●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成14年5月21日付けの書面であって、Lot.No.BPEF-420510の数量が1kgであることが記載されている。 ウ 甲42は、DSCチャートであって、試料名がBPEF-420510であって、日付がいずれも2011/06/28であること、最大吸収が163.7Celであることが確認できる。 (25)甲34の1~3(本件の第2取引) ア 甲34の1は、「原料購入依頼の件」と題する●●●●●●株式会社 ●●●氏から大阪ガスケミカル 須田氏に宛てた平成14年8月1日付けの書面であって、品番として、BPEF、数量として4500kg、ロットNOとして、02026~02030、0420506が記載されている。 イ 甲34の2、甲34の3は、大阪ガスケミカル株式会社から●●●●●●株式会社に宛てたH14.8.12付けのBPEF4500kgに対する納品書、請求書である。 (26)甲35の1~8(本件の第3取引) ア 甲35の1は、「サンプル送付のご案内」と題する●●●●株式会社 西康浩氏から●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成14年10月21日付けの書面であって、サンプル名として、BPEF(Lot.No.BPEF-520701~520713)が、各200gであることが記載されている。 イ 甲35の2は、「試験成績表」と題する大阪ガスケミカル株式会社 西康浩氏から●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成14年10月22日付けの書面であって、「BPEF」の「Lot.No.」として、520701~520713が合計8290kgであったことが記載されている。 ウ 甲35の3は、13個のDSCチャートであって、試料名がBPEF-520701~520713であって、日付が02/10/24,または02/10/25であること、最大吸収が、161.9C(℃)~162.8C(℃)であることが確認できる。 エ 甲35の4は、大阪ガスケミカル株式会社 西康浩氏、須田氏、本河氏への平成14年10月30日付けのFaxであって、Lot 520701~520713が出荷されたことが記載されている。 オ 甲35の5は、大阪ガスケミカル株式会社の●●●●株式会社への見積書であって、BPEFが4140kg、注文番号KG-03-001と記載されている。 カ 甲35の6は、大阪ガスケミカル株式会社から●●●●株式会社 ●●氏に宛てた出荷日2003年6月5日のBPEF4140kgに対する納品書である。 キ 甲35の7は、「試験成績表」と題する大阪ガスケミカル株式会社から●●●●●●株式会社に宛てた平成15年5月6日付けの書面であって、品名「BPEF」の「Lot.No.」として、520703~520713が総量4140kgであったことが記載されている。 ク 甲35の8は、13個のDSCチャートであって、試料名がBPEFで、ロット番号が手書きで、520701~520713であって、日付が02/08/20、02/08/21、02/08/26、02/08/31、02/09/03、02/09/06、02/09/07、02/09/10、02/09/12、02/09/13、02/09/18であること、最大吸収が、162.48℃~164.63℃であることが確認できる。 (27)甲36の1~5(本件の第9取引) ア 甲36の1は、「有償サンプル出荷依頼書」と題する ●●氏発行の平成15年12月9日発行の書面であって、サンプル名として、BPEF-K、数量として60kg、出荷先として●●●●●株式会社が記載されている。 イ 甲36の2は、「サンプル送付のご案内」と題する大阪ガスケミカル株式会社 須田康裕氏から●●●●●株式会社●●●●に宛てた平成15年12月9日付けの書面であって、サンプル名として、BPEF-K(Lot.No.BPEF-K-520709)が、数量60kgとの記載が確認できる。 ウ 甲36の3は、「試験成績表」と題する大阪ガスケミカル株式会社から●●●●●株式会社に宛てた平成15年12月9日付けの書面であって、品名として、BPEF-K、Lot.No.として、520709が、数量として、60kgが記載されている。 エ 甲36の4、甲36の5は、大阪ガスケミカル株式会社から●●●●●株式会社に宛てた2003年12月9日を日付とするBPEF-K60kgに対する納品書、請求書である。 (28)甲37の1~5(本件の第10取引) ア 甲37の1は、三菱ガス化学株式会社 水上政道氏から大阪ガスケミカル株式会社 須田康裕氏への2002年7月24日付けの「BPEF発注の件」との件名の書類で、品名としてBPEF(ビスフェノキシエタノールフルオレン)、数量として、100kgが記載されている。 イ 甲37の2は、「試験成績表」と題する大阪ガスケミカル株式会社から三菱ガス化学株式会社に宛てた平成14年7月25日付けの書面は、品名として、BPEF(ビスフェノキシエタノールフルオレン)、Lot.No.として、420506が、数量として、100kgが記載されている。 ウ 甲37の3は、大阪ガスケミカル株式会社に宛てた02年07月24日を発注年月日とするBPEF100KGに対する簡易納品・請求書(控)であり、甲37の4は、「有償サンプル出荷依頼書」と題する 須田氏発行の平成14年7月24日発行の書面であって、サンプル名として、BPEF、数量として100kg、出荷先として三菱ガス化学株式会社が記載され、甲37の5には、三菱ガス化学株式会社から大阪ガスケミカル株式会社に宛てた発注年月日02年07月24日、受領年月日の、BPEF100KGと記載された受領書である。 (29)甲40の1~2(本件の第12取引) ア 甲40の1は、「サンプル送付のご案内」と題する大阪ガスケミカル株式会社 村瀬裕明氏から●●●●●●●●●株式会社 ●●●●氏に宛てた平成14年10月16日付けの書面であって、サンプル名として、BPEF(Lot.No.BPEF-S99009)、BPEF(Lot.No.BPEF-420513)、BPEF(Lot.No.BPEF-520706)が,数量各100gとの記載が確認できる。 イ 甲40の2は、「試験成績表」と題する●●●●株式会社 村瀬裕明氏から●●●●●●●●●株式会社 ●●●●氏に宛てた平成14年5月21日付けの書面であって、品名として、BPEF(ビスフェノキシエタノールフルオレン)、Lot.No.として、BPEF-S99009、BPEF-420513、BPEF-520706が、数量として、各100gであることが記載されている。 (30)甲41~甲46(本件の第13取引) ア 甲41は、「サンプル送付のご案内」と題する●●●●株式会社 村瀬裕明氏から●●●●●●●●●株式会社 ●●●●に宛てた平成15年3月3日付けの書面であって、サンプルとして、BPEF(Lot.No.BPEF-630212)が、数量1kgとの記載が確認できる。 イ 甲42は、DSCチャートであって、試料名がBPEF-630212であって、日付が2011/06/28であること、最大吸収が163.1Celであることが確認できる。 ウ 甲43は、大阪ガスケミカル株式会社 西康浩氏、須田氏、本河氏への平成15年2月26日付けのFaxであって、甲44は、「BPEF 製品結果一覧表」と題する書面であって、Lot630212を含めて、Lot630201~630213が総量8019kgであることが確認できる。 エ 甲45は、「試験成績表」と題する大阪ガスケミカル株式会社に宛てた平成15年2月27日付けの書面であって、品名がBPEFであって、ロットNo.が630212のDSCの値が、162.6であることが記載されている。 オ 甲46は、DSCチャートであって、試料名がBPEFで、ロット番号が630212であって、日付が03/02/21であること、最大吸収が、162.59℃であることが確認できる。 (31)甲43,甲44,甲45,甲46,甲47の1及び2(本件の第4取引) ア 甲43は、大阪ガスケミカル株式会社 西康浩氏、須田氏、本河氏への平成15年2月26日付けのFaxであって、甲44には、「BPEF 製品結果一覧表」と題する書面であって、Lot630201~630213が総量8019kgであることが確認できる。 イ 甲45は、「試験成績表」と題する大阪ガスケミカル株式会社に宛てた平成15年2月27日付けの書面であって、品名がBPEFであって、ロットNo.が630201~630213のDSCの値が、162.1~164.6であることが記載されている。 ウ 甲46は、13個のDSCチャートであって、試料名がBPEFで、ロット番号が630201~630213であって、日付が03/02/04、03/02/05、03/02/07、03/02/07、03/02/13、03/02/14、03/02/19、03/02/21、03/02/24であること、最大吸収が、162.13℃~164.57℃であることが確認できる。 エ 甲47の1は、「サンプル送付のご案内」と題する大阪ガスケミカル株式会社 西康浩氏から●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成15年3月14日付けの書面であって、送付サンプルとして、BPEF(Lot.BPEF-630201~630213)が、各300gとの記載が確認できる。 そして、「BPEF実機製造結果」と題する大阪ガスケミカル株式会社から●●●●●●株式会社に宛てた書面は、Lot.No.として、630201~630213が合計7930kgであったことが記載されている。 オ 甲47の2は、「原料正式発注依頼の件」と題する●●●●●●株式会社から大阪ガスケミカル株式会社 須田氏に宛てた平成15年8月19日付けの書面であって、品番がBPEF、数量が合計9910kg、ロットが630202、630205、630206、630208、630209、630212、630213を含む16種のものが記載されている。 (32)甲48、甲49の1~4(本件の第5取引) ア 甲48は、「(株)フルファイン平成16年度実績推移表」と題するフルファイン役員会の2005/4/20付け資料で各月の生産量(t)が記載されている。 イ 甲49の1は、「無償サンプル出荷依頼書」と題する ●●氏発行の平成16年11月12日発行の書面であって、サンプル名として、BPEF、Lot.No.として、1041010~1041014が各300g、Lot.No.として、410008~410010が各100g、出荷先として●●●●●●株式会社が記載されている。 ウ 甲49の2は、「サンプル送付のご案内」と題する大阪ガスケミカル株式会社 西康浩氏から●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成16年11月15日付けの書面であって、送付サンプルとして、BPEF(Lot.No.1041010~1041014)が各300g、BPEF(Lot.No.410008~410010)が各100gとの記載が確認できる。 エ 甲49の3は、DSCチャートであって、試料名がBPEF-410010で、日付が04/11/24であること、最大吸収が、162.9Cであることが確認できる。 オ 甲49の4は、「書類送付のご案内」と題する大阪ガスケミカル株式会社 須田康裕氏から●●●●●●株式会社 ●●●氏に宛てた平成17年5月17日付けの書面であって、5/18納入のBPEF(6750kg)の試験生成表を送付したことの記載が確認でき、大阪ガスケミカル株式会社●●●●●●株式会社宛ての平成17年5月18日付けの試験成績表には、Lot.No.0410010~0411026が数量合計で6750kgであることが記載されている。 (33)甲50、甲51の1~5(本件の第6取引) ア 甲50は、5個のDSCチャートであって、サンプル名がBPEF 0610208、0612242~0612244、0612246で、測定日付がそれぞれ2010/05/12、2010/05/10、010/05/11、010/05/11、010/05/11、010/05/11であること、最大吸収が、160.9Cel~163.3Celであることが確認できる。 イ 甲51の1は、平成19年1月26日付けで●●氏が作成した株式会社●●●●●●●●●●●●●からの大阪ガスケミカル株式会社宛の注文書であって、BPEFが数量5100.00との記載が確認できる。 ウ 甲51の2は、「出荷依頼書」と題する大阪ガスケミカル株式会社 西康浩氏から株式会社フルファイン 甲村氏、丹羽氏に宛てた2007年1月19日付けの書面であって、仕向先が株式会社●●●●●●●●●●●●●であり、品名がBPEFで、数量が5100kg,LotNo.0610208,0612242~0612246であることが確認できる。 エ 甲51の3は、出荷日2007年1月31日の大阪ガスケミカル株式会社から株式会社●●●●●●●●●●●●●への納品書であって、商品名BPEF、数量5100kgとの記載が確認できる。 オ 甲51の4は、「試験成績表送付のご案内」と題する大阪ガスケミカル株式会社 西康浩氏から株式会社●●●●●●●●●●●●● ●●氏に宛てた平成19年2月1日付けの書面であり、BPEF試験成績表6通が送付されたこと、Lot.0610208、061242~0612245、0701246との記載が確認できる。また、大阪ガスケミカル株式会社から株式会社●●●●●●●●●●●●● ●●氏に宛てた平成19年2月1日付けのLot.0610208、061242~0612245、0701246の各試験成績表が確認できる。 カ 甲51の5は、大阪ガスケミカル株式会社から株式会社●●●●●●●●●●●●●に宛てた2007年2月分の請求書で、商品名BPEF、数量5100kgとの記載が確認できる。 (34)甲126 甲126は、平成13年から平成17年まで●●●●●●株式会社でY社または請求人から提供を受けたBPEFのサンプルの融点をDSCで測定することを担当していた者の平成26年1月23日付けの陳述書であって、甲30の3、甲31の4、甲35の3、甲49の3のDSCチャートは、全て自分が作成したものであることを陳述していること、Y社、請求人、α社からBPEFに関する融点を含む物性について守秘義務を負うことの説明や守秘義務を負うとの認識がなかったことを陳述していることが確認できる。 (35)甲127 甲127は、平成14年から平成16年にかけて、●●●●●●株式会社でBPEFの受入検査の担当をし、かつY社または請求人から提供を受けたBPEFのサンプルの融点をDSCで測定することの担当者の上司である者の平成26年1月23日付けの陳述書であって、部下の●●氏が実際に提供を受けたBPEFサンプルの融点を測定していたこと、甲30の3、甲31の4、甲35の3、甲49の3のDSCチャートは、請求人から提供を受けたBPEFサンプルの測定チャートであると陳述していること、Y社、請求人、α社からBPEFに関する融点を含む物性について守秘義務を負うことの説明や守秘義務を負うとの認識がなかったことを陳述していることが確認できる。 (36)甲128 甲128は、平成3年にY社に入社後、BPEFを中心としたファイン材料に関する事業に関与した者の平成26年1月23日付けの陳述書であって、Y社は、α社(●●●●●●株式会社)にロット02018から02021の4つのロットの先行サンプル(甲30の1)と試験成績表(甲30の2)を送付し、請求人は、α社の品質確認に合格したことを受け、B社から納入後、α社に先行サンプルの4つのロットに相当するBPEFを出荷し(甲30の5)、同時に納品書と試験成績書を送付したことを陳述していることが確認できる。 (37)甲129 甲129は、平成11年に請求人である大阪ガスケミカル株式会社出向後、BPEFを含むフルオレン誘導体事業に従事した者の陳述書であって、本件の第1取引について、甲128の陳述のとおり、ロット02018から02021のBPEFの融点は、各チャートの記載のとおりであることを陳述していることが確認できる。 2 乙号証の記載 (1)乙3~4(枝番を含む) 乙3は、請求人である大阪ガスケミカル株式会社、Y社と、被請求人である田岡化学株式会社との間についての平成5年7月14日付けの被請求人社内の事務連絡票であると確認でき、乙4の1の1、乙4の1の2、乙4の1の3、乙4の9の2には、請求人、Y社、X社との間で、BPEFに関する3社会議が行われていたことが確認でき、乙4の2の1、乙4の3の1、乙4の4の1、乙4の5の1、乙4の6の1、乙4の8、乙4の10、乙4の11の1、乙4の12の1、乙4の13の1には、請求人、被請求人、X社及びY社の間の平成5年11月2日、平成5年11月24日、平成5年12月10日、平成6年1月18日、平成6年2月22日、平成6年7月7日、平成6年11月14日、平成7年4月5日、平成7年8月24日、平成7年11月13日の会議の議事録が確認できる。 (2)乙6の3 乙6の3は、X社、Y社(請求人を含む)、被請求人の各々が開示する技術情報の秘密保持に関しての平成5年9月21日付けの覚書であって、第2条の(秘密保持)、第3条の(有効期間)の条項が確認できる。 (3)乙6の1 乙6の1は、Y社と被請求人の間のビスフェノールフルオレン(BPF)およびビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)の合成技術確立のための共同開発に関する、平成5年11月22日付けの覚書であって、第2条の(業務分担)、第5条の(秘密の保持)、第8条(有効期限)の条項が確認できる。 (4)乙4の11の1 乙4の11の1は、平成7年4月5日のBPEFに関する3社会議議事録であるが、「今後について(●●●●からのご了解のお願い) ・●●●●は3月末をもって、技術開発から撤収することとなり、今後は大阪ガスケミカルが田岡化学工業とともに事業化をすすめていくこことなった。・・・」との記載が確認できる。 (5)乙5の3 乙5の3は、請求人と被請求人の間のBPEFの製造、販売等についての平成7年4月1日付けの覚書であって、第7条の相互に開示する情報の秘密保持、第8条の本覚書の有効期間の条項が確認できる。 (6)乙4の13の1 乙4の13の1は、平成7年11月16日付け被請求人社内の事務連絡書であって、平成7年11月13日の付けBPEF3社会議議事録が示され、「2.コストダウン検討実験結果・・・ ○ ●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。・・・ 出席者 ●●・・・ 大阪ガスケミカル・・・ 田岡化学・・・」 との記載が確認できる。 (7)乙5の4 乙5の4は、請求人と被請求人との間の平成8年12月1日付けの覚書であって、第1条の(原覚書の合意解約)、第8条の(秘密保持)、第10条の(契約期間)の条項が確認できる。 (8)乙17 乙17は、平成23年7月8日付けの請求人側従業員 山田光昭氏の陳述書であるが、陳述書には、 「第2 BPEF一段合成法の開発 1 BPEFとは BPEF(ビスフェノキシエタノールフルオレン)は,光学用ポリエステルの材料として使用される素材です。●●●●がBPEFの研究を始めた平成5年ころ,光学用ポリエステルはレンズ用の樹脂などに使用することが想定されていました。 ●●●●がBPEFの研究を始めたきっかけは,石炭ガスを製造した際に副産物として生じるコールタールの有効利用を試みるためでした。・・・ コールタールには多種の化学物質が含まれていますが,その一つがフルオレンです。このフルオレンがBPEFの原料の一つとなることから,●●●●はBPEFの開発を始めたのです。 ・・・ 3 BPEF一段合成法の発明 ・・・ 平成5年10月ころ,私はBPEFの合成過程を大幅に効率化する画期的な発明をしました。それがBPEF一段合成法(・・・)です。・・・ 私が発明したBPEF一段合成法は,フルオレノンに直接フェノキシエタノールを反応させることで,原料であるフルオレノンからBPEFを一段階で製造するものでした。このように合成過程を省略することでコストが抑えられる他,収率も改善するのです。 ・・・ 第3 トルエン加水分解法の発明 ・・・ 2 トルエン加水分解法の開発 ・・・私が平成5年に開発した一段合成法は,合成過程に関する技術革新でしたが,平成8年当時,精製過程についてはまだ満足のいく方法がありませんでした。 ・・・ 水とトルエンを同時に使用することを着想しました。・・・BPEFの粗結晶を水とトルエンに溶かした後に,不純物が溶けた水を取り除けば,BPEFのみが溶けたトルエンが得られ,これを精製することで純度の高いBPEFが得られるのです。このような各物質の性質を利用してトルエン加水分解法を開発し,かかる発明を平成8年に現実化・完成させました。 3 大規模製造試験の実施 ・・・平成8年11月から翌年にかけて,A社において大規模な製造試験を実施しました・・・ 第5 B社におけるBPEFの製造 ・・・ 4 BPEFの●●への販売 このようにしてB社で製造されたBPEFは,順次●●に販売されました。この際には,製造したロットの先行サンプルを●●●●が●●に送付し,●●において品質を確認してもらったうえで,●●から被告が発注をうけ,被告が●●の検査に合格したロットを●●●●より買い取って●●に販売していました。 ・・・ 5 ●●●●●●へのBPEF納入 被告は、●●の他にも,●●●●●●株式会社・・・に対して,BPEFを納入していました・・・。 ・・・ これらの●●●●●●との取引も,●●との取引と同様,まず先行サンプルを送付して,●●●●●●が品質を確認し,合格したロットについて,事後に正式発注がなされるという流れで実施されました。 ・・・ 第6 A社における大規模製造 1 BPEFの製造に関する経緯 その後,平成14年以降は,A社において大規模な製造を行うこととなりました。・・・ 2 ●●●●●●●●への販売 被告はA社で製造したBPEFを●●●●●●●●に対しても販売していました。・・・ ・・・ 第7 フルファインにおける製造 A社での大規模製造を開始して2年がたった平成16年ごろ,被告がJFEケミカル株式会社と合弁で設立した株式会社フルファイン・・・で,BPEFを製造することになりました。 ・・・」との陳述内容が確認できる。 第7 無効理由についての当審の判断 当審は、以下に示すとおり、無効理由4には理由があるものの、無効理由1~3には、理由がないものと判断する。 理由は以下のとおりである。 1 判決の拘束力 (1)本件無効審判事件に関する判決の拘束力について 判断に先立ち、取消判決の拘束力を確認し、判断の前提とする(行政事件訴訟法第33条第1項)。 (2)取消判決の拘束力について ア 無効理由1に関して 取消判決中で、無効理由1(本件発明のサポート要件の適合性)に関して述べた部分として、以下の説示がなされている。 「ウ・・・結晶性粒子の製造を目的とした晶析が化学製品から医薬品まで広い範囲にわたり行われており、製品に様々な機能・特性を付与することが可能であるため、医薬品、ファインケミカルズの製法として重要な位置を占めているものの、化合物の分子構造から結晶構造を含めた結晶多形体を予測することは困難であり、また、結晶多形体析出の制御は依然として難しいため、できるだけ多くの条件で網羅的に結晶化を試みるというスクリーニング法により、実験的に目的とする結晶多形体の析出条件を見い出すことが本件出願時の技術常識であったと認められる。また、結晶多形体の析出は、結晶化溶媒の種類と組成、溶質濃度、過飽和度、溶解温度、冷却速度、結晶化温度(晶析温度)、結晶化期間、不純物の存在と濃度、攪拌速度、pHなど晶析パラメーター全般に支配され、中でも、溶媒の種類と混合溶媒組成は、多形に大きく影響し、溶媒の種類や混合組成を変えると新しく結晶多形体が発見されるということも珍しくなかったといえることが、本件出願時の、当該技術分野における当業者の技術常識であったと認められる・・・ オ よって,本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識からみて,多形体Bを選択的に得る製造方法について,本件発明の課題を解決できると当業者が認識できるのは,BPEFの粗精製物からBPEFの多形体Bを選択的に析出させる際に用いる溶媒として,トルエン,キシレンなどの「芳香族炭化水素溶媒」を用い,析出開始温度として65℃以上とした場合である。 (6)本件発明のサポート要件の適合性について ア 本件発明1~本件発明6及び本件発明10には,BPEFの粗精製物からBPEFの多形体Bを選択的に析出させる際の析出開始温度として,「50℃以上65℃未満」が包含され,また,それに加えて,本件発明1~本件発明4及び本件発明10には,BPEFの粗精製物からBPEFの多形体Bを選択的に析出させる際に用いる溶媒として,「ケトン溶媒」及び「エステル溶媒」が包含されている。 しかし,上記(5)オのとおり,本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識に照らして,当業者が本件発明の課題を解決できると認識できるのは,BPEFの粗精製物からBPEFの多形体Bを選択的に析出させる際に用いる溶媒として,トルエン,キシレンなどの「芳香族炭化水素溶媒」を用い,析出開始温度として65℃以上とした場合である。 したがって,本件発明1~本件発明6及び本件発明10は,本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識に照らして,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しない。 ・・・ そして,上記(5)ウのとおり,本件明細書には特定の溶媒を用いて特定の析出開始温度より多形体Bを選択的に得る製造方法が記載されているから,多形体Bを提供するという本件発明の課題は解決できると当業者は認識することができるといえる。 したがって,本件発明7~本件発明9は,本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識に照らして,当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり,サポート要件に適合するものである。」(下線は当審にて追加。以下同様)(判決書67頁21行~71頁23行) 「(9)小括 以上のとおり,本件発明1~本件発明6及び本件発明10は,本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識に照らして,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないというべきであるから,審決の判断には誤りがあり,その余の取消事由について判断するまでもなく,審決の判断は取り消されるべきである。 また,本件発明7~本件発明9は,本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識に照らして,当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり,サポート要件に適合するものであるから,審決の判断は結論において誤りはない。」(判決書75頁22行~76頁5行) イ 無効理由2に関して 取消判決中で、無効理由2(本件発明の実施可能要件の適合性)に関して述べた部分として、以下の説示がなされている。 「したがって、本件明細書の実施例4及び実施例5並びに実施例3及び実施例6の記載に接した当業者であれば,本件発明7~本件発明9の多形体Bを過度の負担なく製造することができるというべきである。 そして,そのようなBPEFの多形体Bは,上記1(3)に記載のとおり,耐熱性,透明性に優れ,高屈折率を備えたポリマーを製造するための原料として使用できるといえる。 よって,本件発明7~本件発明9について,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。」(判決書77頁11~19行) 「(4)小括 以上のとおりであるから,本件発明7~本件発明9について,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえ,実施可能要件に適合するものであるから,審決の判断に誤りはない。」(判決書80頁3~7行) ウ 無効理由3に関して 取消判決中で、無効理由3(本件発明の進歩性の判断)に関して述べた部分として、以下の説示がなされている。 「本件発明1はそもそもサポート要件に適合しないものであるから,その容易想到性に関する判断は適切に行われていない。 したがって、本件発明1は容易想到でないことのみを理由とする,本件発明7~本件発明9の容易想到性に関する判断も,適切に行われたものとはいえないから,この点に係る審決の判断を取り消すものとする。」(判決書80頁18~22行) エ 無効理由4に関して 取消判決中で、無効理由4(公然実施及び公知)に関して述べた部分として、以下の説示がなされている。 「エ Y社と原告は、トルエン加水分解法を利用したBPEFの製造については,複数の会社に製造を委託することが望ましいと考え,次のとおり,B社に対しても,BPEFの製造を委託した(乙17)。 (ア)Y社は,平成11年3月頃,B社に委託して合計1662.76kgのBPEFを製造した(甲22の1)。このうち少なくとも1177.44kg分(・・・)のBPEFは,示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.5~163.6℃であり,本件発明7の実施に該当するものであった(甲21の1及び2,甲22の1~3)。 被告は,同年11月,本件発明7の実施品に該当する上記BPEFのうち50kgをY社から購入した上,X社にサンプルとして譲渡した(乙17)。 (イ)Y社は,平成14年3月頃,B社に委託して合計3951kgのBPEFを製造した(甲30の4)。 その際(平成14年3月5日)に行われた測定の結果(甲30の3)によると,これらのBPEFのうち,ロット番号2018,2019,2020,2021のものは,示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.8~163.2℃であり,本件発明7の実施品に該当するものであった。 原告は,平成14年3月頃,上記BPEFのうち各ロット番号を合計2700kgY社から購入した上,α社に譲渡した(甲30の5,第1取引) 原告は,平成15年1月21日,γ社に対し,ロット番号02023のBPEF60kgを譲渡した(甲31の3及び5,第7取引)。平成14年4月16日に行われた測定の結果(甲31の4)によると,このBPEFは,示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.7℃であった。 原告は,平成15年6月5日,γ社に対し,ロット番号02018のものを含むBPEF60kgを譲渡した(甲32の1~4,第8取引)。 オ 原告は,次のとおり,A社にBPEFの製造を委託することとした。 (ア)原告は,平成14年3月6日から同年4月13日までの間,A社に委託して合計8330kgのBPEFを製造した(甲33,ロット番号420501~420514)。 その際に行われた測定の結果(甲33)によると,これらのBPEFは,示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.3~163.8℃(うちロット番号420510のものは163.5℃,・・・)であり,本件発明7の実施品に該当するものであった。 原告は,平成14年5月頃,ε社に対し,上記BPEFのうち1kg(ロット番号420510)を譲渡した(甲39の1及び2。第11取引)。このとき譲渡したBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大を平成23年6月28日に測定したところ,163.7℃であった(甲42)。 原告は,平成14年7月頃,δ社に対し,上記BPEFのうち100kg(ロット番号420506)を譲渡した(甲37の1~5。第10取引)。 原告は,同年8月頃,α社に対し,上記BPEFのうち450kg(ロット番号420506)を譲渡した(甲34の2及び3,第2取引)。 原告は,平成14年10月16日,ε社に対し,上記BPEFのうち200g(ロット番号420513及び520706)を譲渡した(甲40の1及び2。第12取引)。このとき譲渡したBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大を平成23年6月28日に測定したところ,ロット番号420513は163.6℃,ロット番号520706は164.1℃であった。 (イ)原告は,平成14年10月頃,A社に委託して合計8413kgのBPEFを製造した(乙17,甲35の4。ロット番号520701~520713)。 その際に行われた測定の結果(甲35の3及び8)によると,上記BPEFは,示差走査熱分析による融解吸熱最大が161.9~162.8℃(うちロッド番号520706のものは162.8℃)であり,本件発明7の実施品に該当するものであった(甲35の1~4)。 原告は,平成15年5月頃,α社に対し,上記BPEFのうち合計4140kg(ロット番号520703~520706,520709~520713)を譲渡した(甲35の5~7。第3取引)。 原告は,平成15年12月頃,γ社に対し,上記BPEFのうち合計60kg(ロット番号520709)を譲渡した(甲36の1~5。第9取引)。 (ウ)原告は,平成15年2月頃,A社に委託して合計8019kgのBPEF(ロット番号630201~630213)を製造した(甲43,甲44)。 その際行われた測定の結果(甲45,46)によると,上記BPEFは,示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.1~164.6℃であり,本件発明7の実施品に該当するものであった。 原告は,同年8月19日,α社に対し,上記BPEFのうち合計1510kg(ロット番号630202,630205,630206,630208,630209,630212,630213)を含む合計9910kgのBPEFを譲渡した(甲47の1及び2。第4取引)。 原告,平成15年3月頃,ε社に対し,ロット番号630212のBPEF1kgを譲渡した(甲41。第13取引)。この譲渡したBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大を平成23年6月28日に測定したところ,163.1℃であった。 カ 原告は,平成16年頃,JFEケミカル株式会社との合弁で株式会社フルファイン(「フルファイン」)を設立し,同社によりBPEFの量産をすることとした(乙17)。 原告は,フルファインに委託してBPEFを製造し(甲48),このうち合計6750kgのBPEFを,平成17年5月17日頃,α社に対し,譲渡した(甲49の4。第5取引)。 これに先だって行われた,α社に送付したサンプルの測定の結果(甲49の3)によると,上記BPEFのうち,少なくともロット番号0410010のBPEFは,示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.9℃であり,本件発明7の実施品に該当するものであった。 原告は,平成19年2月1日,β社に対し,5100kgのBPEF(フルファインが製造したものである,ロット番号0610208,0612242~0612245,071246を含む。)を譲渡した(甲51の1~3,第6取引)。原告は,このとき取引されたBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大を平成22年5月12日及び平成23年1月に測定したと主張し,甲22の3及び甲50はこれに沿う。しかし,この測定は,製造に近接した時点でなされたものではなく,本件に関する紛争が起きてから実施されたものであるから,第6取引の対象物が本件発明7の実施品に該当するものと認めるに足りない。 キ 原告とα社とβ社との間には,取引基本契約書が締結され,守秘義務条項も設けられていたが,取引対象物の物性について秘密を保持しなければならないと特定されていたわけではなかった(甲143)。 ク δ社は,被告に対し,原告から販売されたBPEFの一部を譲渡したものであるが,原告からの購入の際,原告に対してBPEF譲渡の可否を尋ねることはなかった(甲142)。 ケ なお,α社は,平成8年10月1日設立のX社の100%子会社であるが,・・・,その光学用ポリエステル事業の営業譲渡(現行の事業譲渡)を受けたのがβ社である。 (2)第1取引~第13取引の対象物 ア 上記認定より,第1取引~第5取引,第7取引~第13取引の対象物は,本件発明7の実施品に該当するBPEFである。」(判決書82頁26行~86頁22行) 「ウ 審決の認定について (ア)まず,審決は,第4取引~第6取引と,第10取引~第13取引の存在を否定した。その理由は,当該取引関係書類(甲37の2及び4,甲39の1及び2,甲40の1及び2,甲41,甲47の1及び2,甲49の1,2及び4,甲51の2及び4,) ・・・,認定の資料として採用しなかったところにある。 ・・・ 各書証の証明力を一切否定すべき合理的理由はない。 審決は証拠の採否を誤ったものである。 ・・・ 審決は,甲30の3の証拠評価を誤った結果,認定を誤ったものである。 ・・・ 審決は,甲33の採否を誤ったものである。 ・・・ 審決は,甲35の3及び甲35の8の採否を誤ったものである。 ・・・ (オ)審決は,第4取引及び第13取引の対象物に関するDSCチャート(甲46)について,・・・認定の資料として採用しなかった。 ・・・ 審決は,証拠の採否を誤ったものである。 (カ)審決は,第5取引の対象物に関するDSCチャート(甲49の3)は, ・・・認めることができないとした。 ・・・ ・・・審決は証拠の採否を誤ったものである。 (キ)審決は,第7取引の対象物に関するDSCチャート(甲31の4)は,・・・認めることができないとする。 ・・・ ・・・審決は証拠評価を誤った結果,認定を誤ったものである。 (3)秘密保持義務の有無について ア 以上のとおり,上記各取引において、本件発明7の実施品が対象物とされていたと認められるものの,原告が当該対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大について被告に対する秘密保持義務を負担しており,かつ,原告が取引相手方に対してかかる秘密保持義務を課している場合には,各取引により本件発明7が公然実施されたとはいえないので,この点につき判断する。 イ 本件覚書に基づく秘密保持義務について (ア)原告は,本件覚書に基づき,共同開発に当たって被告から開示される技術的情報について,被告に対して秘密保持義務を負担していた。 ・・・ 一方,上記各取引の対象となったBPEFは,上記(1)ウ及びエ認定のとおり,共同開発とは別に,Y社が開発した製造方法によって製造されたのであるから,その物性情報は,本件3社会議において開示された情報と同じであるといえない限り,本件覚書に基づく秘密保持義務の対象とはならない。 ・・・よって,上記各取引の対象物たるBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大は,本件覚書における秘密保持義務の対象となる技術的情報に該当しない。 ・・・ (ウ)したがって,α社,β社,γ社,δ社が,原告が被告に対して守秘義務を負担していることを理由として,原告を経由して被告に対して取引対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大の情報の守秘義務を負担していたということもできない。 (エ)また,仮に,α社及びβ社が,原告を経由することなく,本件覚書に基づく秘密保持義務を負担していたとしても,上記(ア)と同様,本件各取引の対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大の情報について,本件覚書によって被告に対する秘密保持義務を負担していたとは認めるに足りない。 (オ)さらに,γ社,δ社及びε社が,被告に対し,直接,本件各取引の対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大の情報について秘密保持義務を負担するとは認めるに足りない。 (4)以上より,本件発明7は,第1取引~第6取引(第5取引の誤記),第8取引(第7取引の誤記)~第13取引によって公然実施されたものである。取消理由4のうち公然実施については,理由がある。」(判決書87頁12行~93頁17行) オ 結論 上記ア~エの無効理由に関する説示をした上で、以下のとおり結論づけている。 「第6 結論 よって,本件発明1~本件発明6及び本件発明10については,特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合しないから,取消事由1に理由があり,本件発明7については,本件審決の容易想到性の判断が適切でなく,かつ,本件優先日前に公然実施されたものであるから,取消事由3及び4(の一部)に理由があり,本件発明8及び本件発明9については,本件審決の容易想到性の判断が適切でないから,取消事由3に理由がある。したがって,本件審決は取り消されるべきであり,主文のとおり判決する。」 したがって、上記の取消判決における無効理由1~4に関する説示のうち、審決を取り消すに至った下線の認定判断部分が、取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断に当たり、下線以外の部分も事実上判決において判断が示されたものであるので、無効理由の判断については、これらの説示を前提として以下に判断する。 2 無効理由1について (1)サポート要件の判断の前提 ア 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 前記1アのとおり、取消判決では、結晶多形体に関する本件出願時の技術常識、及び訂正前の本件発明1~本件発明6及び本件発明10は、本件明細書の記載及び上記結晶多形体に関する本件出願時の技術常識に照らして、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えておりサポート要件に適合しないこと(当業者が本件発明の課題を解決できると認識できるのは,BPEFの粗精製物からBPEFの多形体Bを選択的に析出させる際に用いる溶媒として,トルエン,キシレンなどの「芳香族炭化水素溶媒」を用い,析出開始温度として65℃以上とした場合であること)、本件発明7~本件発明9は,本件明細書の記載及び上記結晶多形体に関する本件出願時の技術常識に照らして,当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり,サポート要件に適合するものであることが示されている。 (2)本件発明の課題 本件特許請求の範囲に記載された発明は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(BPEF)の新規結晶多形体、及びその製造方法に関するものである(【0001】)。 本件発明は、一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れたBPEFの新規な結晶多形体を提供し、その結晶多形体の製造方法を提供することを目的として(【0008】)、BPEFに、従来から知られている融解吸熱最大が示差走査熱分析で100~130℃である結晶多形体(多形体A)のほかに、融解吸熱最大が示差走査熱分析で150~180℃である新規な結晶多形体(多形体B)が存在することを見い出し、また、多形体Bを選択的に得る製造方法を見い出したものである(【0009】)。 そうすると、本件発明の課題は、多形体Bを提供すること、及び多形体Bを選択的に得る製造方法を提供することであるといえる。 (3)結晶多形体に関する本件出願時の技術常識について 結晶性粒子の製造を目的とした晶析が化学製品から医薬品まで広い範囲にわたり行われており、製品に様々な機能・特性を付与することが可能であるため、医薬品、ファインケミカルズの製法として重要な位置を占めているものの、化合物の分子構造から結晶構造を含めた結晶多形体を予測することは困難であり、また、結晶多形体析出の制御は依然として難しいため、できるだけ多くの条件で網羅的に結晶化を試みるというスクリーニング法により、実験的に目的とする結晶多形体の析出条件を見い出すことが本件出願時の技術常識であったと認められる。また、結晶多形体の析出は、結晶化溶媒の種類と組成、溶質濃度、過飽和度、溶解温度、冷却速度、結晶化温度(晶析温度)、結晶化期間、不純物の存在と濃度、攪拌速度、pHなど晶析パラメーター全般に支配され、中でも、溶媒の種類と混合溶媒組成は、多形に大きく影響し、溶媒の種類や混合組成を変えると新しく結晶多形体が発見されるということも珍しくなかったといえることが、本件出願時の、当該技術分野における当業者の技術常識であったと認められる(甲5,甲14,甲124、判決書67頁21行~68頁4行)。 (4)訂正された特許請求の範囲の記載について 請求項1には、「ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後、得られた反応混合物から50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得」ること、「次いで、純度が85%以上の該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後に65℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させる」ことを特定した「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体の製造方法」の発明が記載されている。 次に請求項2には、請求項1に係る発明において、「ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとの反応が、脱水条件下で行われる」ことをさらに特定した製造方法の発明が記載されている。 また、請求項3には、請求項1~2に係る発明において、ヘテロポリ酸の種類を「リン酸またはケイ酸と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸素酸イオンとから構成される」ことをさらに特定した製造方法の発明が記載されている。 さらに、請求項4には、請求項1~3に係る発明において、ヘテロポリ酸を「ヘテロポリ酸無水物または予め脱水処理されたヘテロポリ酸である」ことをさらに特定した製造方法の発明が記載されている。 そして、請求項6には、請求項1~4に係る発明において、「溶媒が、トルエンまたはキシレンである」ことを特定した製造方法の発明が記載されている。 次に、請求項7には、「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」において、「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である」ことを特定した物の発明が記載されている。 そして、請求項8には、「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」において、「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する」ことを特定した物の発明が記載されている。 さらに、請求項9には、請求項8に係る発明において、「回折角2θの最大ピークが18.4°である」ことをさらに特定した物の発明が記載されている。 (5)発明の詳細な説明の記載について 特許請求の範囲に記載された、「ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後、得られた反応混合物から50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物」得た後に、「純度が85%以上の該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後に65℃以上で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの析出を開始させる9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体の製造方法」に関して、発明の詳細な説明には、【0008】には、本件発明の解決しようとする課題が、【0009】には、課題を解決するための手段が、【0011】には、発明の効果が、【0012】~【0028】には、ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させることにより9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得る方法に関して、ヘテロポリ酸の種類、使用量、原料のモル比、反応雰囲気、反応混合物の後処理、冷却終点の温度、析出結晶の回収法、粗精製物の多形体Aの特徴が記載され、【0029】~【0033】には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を溶媒に溶解した後に特定温度以上で析出を開始させて多形体Bを製造する方法に関して、溶媒の例示、溶媒の種類、使用量、結晶析出開始温度、種晶の添加、析出結晶の回収法、多形体Bの特徴が記載されている。 そして、実施例の記載としては、実施例1にリンタングステン酸を用い、42℃で結晶が析出を始め、示差走査熱分析による融解吸熱最大が105℃、嵩密度0.24g/cm3の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶を得たこと、実施例2には、実施例1の粗精製物をトルエンに溶解し、80℃で結晶種を添加し結晶析出を開始させ、示差走査熱分析による融解吸熱最大が164.0℃、嵩密度0.75g/cm3の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶を得たことが記載されている(実験No.1)。 また、実施例3には、リンタングステン酸を用い、12℃で結晶が析出を始め、示差走査熱分析による融解吸熱最大が109℃、嵩密度0.24g/cm3の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶を得たこと、実施例6には、実施例3の粗精製物をキシレンに溶解し、70℃で結晶析出を開始させ、示差走査熱分析による融解吸熱最大が163.3℃、嵩密度0.75g/cm3の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶を得たことが記載されている(実験No.2)。 さらに、実施例4には、ケイタングステン酸を用い、38℃で結晶が析出を始め、示差走査熱分析による融解吸熱最大が104℃、嵩密度0.23g/cm3の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶を得たこと、実施例5には、実施例4の粗精製物をトルエンに溶解し、65℃で結晶析出を開始させ、示差走査熱分析による融解吸熱最大が163.5℃、嵩密度0.70g/cm3の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶を得たことが記載されている(実験No.3)。 そして、比較例1には、実施例4で得られた粗精製物とメタノールの懸濁液を60℃で1時間攪拌し、懸濁液のまま10℃まで冷却し、示差走査熱分析による融解吸熱最大が118.8℃、嵩密度0.26g/cm3の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物の白色結晶を得たこと、実施例7には、比較例1の粗精製物をトルエンに溶解し、80℃で結晶種を添加し結晶析出を開始させ、示差走査熱分析による融解吸熱最大が164.0℃、嵩密度0.78g/cm3の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶を得たことが記載されている(実験No.4)。 そして、図1には、比較例1で得られた結晶(比較例A)の示差走査熱量測定(DSC)曲線が、図2には、実施例2で得られた結晶(多形体B)の示差走査熱量測定(DSC)曲線が、図3には、比較例1で得られた結晶(比較例A)の粉末X線回折パターンが、図4には、実施例2で得られた結晶(多形体B)の粉末X線回折パターンが示されている。 (6)本件発明の課題を解決できると認識できる範囲について ア 請求項1に係る発明について 多形体Bを選択的に得る製造方法について、発明の詳細な説明において記載された、実施例4、5による実験No.3、実施例3、6による実験No.2は、実施例1、2による実験No.1のような結晶種の添加を前提するものではないから、多形体Bの実験に先立ち予め取得する必要がなく、当業者であれば、多形体Bを選択的に得る製造方法を提供するという本件発明の課題を解決できるものと認識できる。 また、上記実施例3~6の裏付けにより、BPEFの粗精製物からBPEFの多形体Bを選択的に析出させる際に用いる溶媒として、トルエン、キシレンなどの「芳香族炭化水素溶媒」を用い、析出開始温度として「65℃以上」とした場合には、当業者は、多形体Bを製造でき、課題が解決できると認識できるといえる。 よって、本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識からみて、多形体Bを選択的に得る製造方法について、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できるのは、BPEFの粗精製物からBPEFの多形体Bを選択的に析出させる際に用いる溶媒として、トルエン、キシレンなどの「芳香族炭化水素溶媒」を用い、析出開始温度として65℃以上とした場合であり、訂正された請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。 イ 請求項2~4、6に係る発明について また、請求項2~4、6に係る発明は、請求項1に係る発明をさらに反応が脱水条件で行われること、ヘテロポリ酸の種類、溶媒成分を「芳香族炭化水素溶媒」にあたるトルエンまたはキシレンに各々限定したものである。 そして、摘記(1e)の実施例3~6には、請求項2の「脱水条件下」に相当する「生成水を反応系外に除去しながら」反応を行うこと、及び請求項3及び4のヘテロポリ酸の種類や「ヘテロポリ酸無水物または予め脱水処理されたヘテロポリ酸」との特定に相当する「減圧乾燥し結晶水を除いたリンタングステン酸[(H3PW12O40)]」や「減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(H4SiW12O40)]」との具体的記載が示されていることから、請求項2~4、6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。 ウ 請求項7に係る発明について 請求項7に係る発明について、発明の詳細な説明には、「【0009】本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンには、従来から知られている融解吸熱最大が示差走査熱分析で100~130℃である結晶多形体(以下多形体Aと称する)の他に、融解吸熱最大が示差走査熱分析で150℃~180℃である新規な結晶多形体(以下多形体Bと称する)が存在する事を見出した、また、本発明者らは、かかる多形体Bを選択的に得る製造方法を見出すことにより本発明を完成するに至った。」「【0031】本発明における結晶多形体の製造は、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒およびエステル溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒に50℃より高い温度で溶解させた後に、得られた混合物を冷却して、50℃以上、溶媒の沸点未満(好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃)の温度範囲で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶の析出を開始させることにより実施される。溶解時の温度は特に限定されるものではないが、通常、55℃以上、使用する溶媒の沸点以下、好ましくは60~150℃、更に好ましくは70~110℃である。この温度が低いと実質的な単一の結晶形を得る事ができない場合がある。50℃以上で結晶の析出を開始させた後は、混合物をさらに冷却してもよい。冷却終点の温度は特に限定されるものではないが、通常-20~50℃、好ましくは0~40℃、更に好ましくは10~30℃である。この温度が低いと純度が低下する傾向にあり、この温度が高いと溶媒へのロス量が多くなり経済性、生産性が悪くなる。冷却速度は特に限定されるものではないが、通常、毎分0.01~2℃、好ましくは、毎分0.1~0.5℃である。冷却途中で、混合物中に9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として添加することが好ましい。結晶種を添加する場合は、多形体Bの結晶種を準安定域幅、例えば、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの飽和溶解点の温度より1~10℃、好ましくは1~3℃低い温度で加えることが好ましい。添加される結晶種の量は、用いた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物に対して0.01~10重量%、好ましくは0.1~1重量%、更に好ましくは0.3~0.7重量%である。・・・ 【0033】本発明における多形体Bは、下記(d)~(f)の少なくとも1つの特徴を有する。 (d)示差走査熱分析による融解吸熱最大が150~180℃、好ましくは160~166℃、より好ましくは163~165℃、特に164℃である。」と記載されるように、製造方法をともなって、多形体Bが記載され、「示差走査熱分析による融解吸熱最大が・・・好ましくは160~166℃、・・・特に融点164℃」を有する多形体Bの特徴とともに(【0033】)、実施例2、5、6、7、8で実際に多形体Bを得て、示差走査熱分析による融解吸熱最大の温度と嵩密度を確認しているのであるから、「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」の発明は、裏付けをもって記載されており、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 エ 請求項8に係る発明について 次に、請求項8に係る発明について、発明の詳細な説明には、【0033】に記載されるようにCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する多形体Bの特徴とともに、実施例2で実際に多形体Bを得て、図4に粉末X線回折パターンを示しており、【表2】のCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが、請求項の数値と対応しているのであるから、「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」の発明は、裏付けをもって記載されており、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 オ 請求項9に係る発明について 請求項9に係る発明について、発明の詳細な説明には、請求項8に係る発明と同様に、【0033】に記載されるようにCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する多形体Bの特徴とともに、実施例2で実際に多形体Bを得て、図4に粉末X線回折パターンを示しており、【表2】のCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが請求項の数値と対応しているとともに、18.4に対応するピークが最大であることが示されているのであるから、「回折角2θの最大ピークが18.4°である請求項8に記載の結晶多形体」の発明は、裏付けをもって記載されており、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 カ したがって、請求項7~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されているといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。 (7)審判請求人の主張の検討 請求人の無効理由1の主張の概要は、以下のとおりのものである。 (下記のとおり、主張ウは、本件訂正により、「再結晶時の析出開始温度の下限値を「65℃以上」に設定することにつき、・・・不備がある」と理解することとする。) ア 多形体の制御には、請求項1の特徴構成で規定された因子以外にも、攪拌速度や過飽和等の他の因子も影響を与えることが技術常識となっているところ、請求項1の5つの特徴構成の影響を明らかにする比較実験がない状況では、当業者が請求項1に規定された製造方法で多形体Bが製造できると理解できない旨主張している(審判請求書31頁1~6行)。 イ 実施例1を利用する実施例2の具体例(実験No.1)が多形体Bの種晶を用いて実施されており、多形体Bの製造方法が不明であるので、請求項1の実施例としての意味がない(審理事項通知書)。 ウ 粗精製物の析出開始温度の上限値を「50℃未満」とし、粗精製物の純度の下限値を「85%以上」とし、再結晶時の析出開始温度の下限値を「65℃以上」に設定することにつき、比較すべき実験が開示されていない点に不備がある(審理事項通知書)。 エ 請求項1に関する実施例が2つしか開示されておらず、比較実験もない以上、当業者が、請求項1で規定された数値範囲全体で多形体Bが製造できると認識することはできず、請求項1は発明の詳細な説明の記載の範囲を超えている(審理事項通知書)。 オ 請求人の主張アについて BPEFの多形体を製造する方法が記載された実施例4には、BPEF合成のための原料、溶媒、触媒、反応操作、洗浄及び精製、多形体の晶析操作、結晶単離操作が記載されており、それにより、BPEFの粗精製物の白色結晶(LC純度96.2%)を得たこと、及び得られた結晶の示差走査熱分析による融解吸熱最大が104℃、つまり、多形体Aであったことが記載されている。 また、実施例4で製造した純度96.2%の多形体Aから多形体Bを選択的に得る製造方法が記載された実施例5には、原料、溶媒、溶質温度、溶解温度及び攪拌時間、冷却条件、析出開始温度、並びに、結晶単離操作が記載されており、それにより、BPEFの白色結晶(純度98.2%)を得たこと、及び得られた結晶の示差走査熱分析による融解吸熱最大が163.5℃、つまり、多形体Bであったことが記載されている。 これらの実施例4及び5の記載では、具体的種類や使用量、具体的条件をともなって記載されているのであるから、結晶多形の主な制御因子が記載されているといえ、その他の結晶化期間、攪拌速度等は通常の条件を設定すれば良いと考えられ、当業者であれば多形体Bを製造できることを認識できるといえる。 また、実施例3及び6の記載からも同様のことがいえる。 そして、出願時の技術常識から結晶多形体の析出が、多数の晶析パラメーターに支配され、請求項1の5つの特徴構成以外の因子が何らかの影響を与えるとしても、本件発明1は、5つの特徴構成を特定することによって新規な多形体Bの製造方法を提供することを技術思想とするものであって、実際に作成されているのであるから、訂正によって溶媒の種類が「芳香族炭化水素溶媒」に限定され、結晶析出開始温度も「65℃以上」となったことから、訂正後の請求項1に係る発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載から当業者が課題を解決できると認識できる範囲となったといえる。 カ 請求人の主張イについて 請求人は、種晶を用いる実施例2は、多形体Bの製造方法として意味がない旨主張しているが、実施例4及び5または実施例3及び6によって、多形体Bが得られることが記載されているのであるから、実施例2の種晶として用いれば良く、請求項1の実施例として意味がないとはいえない。 キ 請求人の主張ウについて 請求人は、比較例がないことを問題にしているが、上述のとおり、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる以上(実施例4及び5、実施例3及び6)、比較例は、必要に応じて記載すればよく、請求項の範囲外で製造できないことを示すための比較例が必ずしも必要であるわけではない。 ク 請求人の主張エについて、 請求人は、請求項1に関する実施例が2つしか開示されておらず、比較実験もない以上、当業者が、請求項1で規定された数値範囲全体で多形体Bが製造できると認識することはできない旨主張しているが、上述のとおり、実施例4及び5の記載及び実施例3及び6では、具体的種類や使用量、具体的条件をともなって記載されているのであるから、結晶多形の主な制御因子が記載されているといえ、当業者であれば多形体Bを製造できることを認識できるといえる。 そして、訂正によって溶媒の種類が「芳香族炭化水素溶媒」に限定され、結晶析出開始温度も「65℃以上」となったことから、訂正後の請求項1に係る発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載から当業者が課題を解決できると認識できる範囲となったといえる。 (8)無効理由1のまとめ 以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に適合し、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしているから、特許法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由1には理由がない。 3 無効理由2について (1)実施可能要件の判断の前提 ア 特許法第36条第4項第1号には、発明の詳細な説明の記載が適合しなければならない要件として、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と規定し、特許法施行規則第24条の2(委任省令)には、「特許法第三十六条第四項第一号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されている。 イ そして、物を生産する方法の発明の実施とは、その方法を使用する行為及びその方法により生産した物を使用等をする行為をいうから、物を生産する方法の発明についての特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、物を生産する方法の発明が明確に説明され、その方法により物を作ることができることである。 ウ さらに、物の発明の実施とは、その物を生産し、使用等をする行為をいうから、物の発明についての特許法第36条第4項第1号の「その実施をすることができる」(実施可能要件)とは、その物を作ることができ、その物を使用することができることである。 エ 前記1イのとおり、取消判決では、物の発明である本件発明7~本件発明9について、本件明細書の実施例4及び実施例5並びに実施例3及び実施例6の記載に接した当業者であれば、多形体Bを過度の負担なく製造することができ、BPEFの多形体Bは、耐熱性、透明性に優れ、高屈折率を備えたポリマーを製造するための原料として使用できることから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることが示されている。 (2)当審の判断 ア 本件発明1~4,6に対応した発明の詳細な説明の実施可能要件について (ア)本件発明1は、多形体Bの製造方法の発明であるが、無効理由1で検討したとおり、多形体Bの製造方法の発明は、実施例3~6に基づいて、裏付けをもって記載されているため、当業者は、実施例の記載や一般的記載の例示を参考にして、多形体Bの製造方法を実施することができるように明確に記載されているといえ、その方法により多形体Bが製造できたことを多形体Bの特性によって確認しているといえる。 したがって、物を生産する方法の発明が明確に説明され、その方法により物を作ることができるといえる。 (イ)本件発明2は、「ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとの反応が、脱水条件下で行われる」ことをさらに特定した製造方法の発明であるが、実施例3、4では、生成水を反応系外に除去しながら攪拌して反応させたことが記載されているから、脱水条件下で行われることが具体的に記載されており、上記(ア)で検討したのと同様に、物を生産する方法の発明が明確に説明され、その方法により物を作ることができるといえる。 (ウ)本件発明3は、ヘテロポリ酸の種類を「リン酸またはケイ酸と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸素酸イオンとから構成される」ことをさらに特定した製造方法の発明であるが、実施例3、4では、ヘテロポリ酸として、リンタングステン酸、ケイタングステン酸を用いたことが記載され、バナジン酸やモリブデン酸もヘテロポリ酸触媒として周知慣用のものであるから、上記(ア)で検討したのと同様に、物を生産する方法の発明が明確に説明され、その方法により物を作ることができるといえる。 (エ)本件発明4は、ヘテロポリ酸を「ヘテロポリ酸無水物または予め脱水処理されたヘテロポリ酸である」ことをさらに特定した製造方法の発明であるが、実施例3、4では、ヘテロポリ酸として用いたリンタングステン酸、ケイタングステン酸を100℃減圧乾燥して結晶水を除いたうえで用いたことが記載されており、ヘテロポリ酸無水物または予め脱水処理されたヘテロポリ酸であることが具体的に記載されており、上記(ア)で検討したのと同様に、物を生産する方法の発明が明確に説明され、その方法により物を作ることができるといえる。 (オ)本件発明6は、「溶媒が、トルエンまたはキシレンである」ことを特定した製造方法の発明であるが、実施例5,6では、多形体Bを選択的に析出させる溶媒としてトルエン、キシレンを用いることが具体的に記載されており、上記(ア)で検討したのと同様に、物を生産する方法の発明が明確に説明され、その方法により物を作ることができるといえる。 イ 本件発明7~9に対応した発明の詳細な説明の実施可能要件について (ア)本件発明7は、「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」において、「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である」ことを特定した物の発明である。 無効理由1で検討し、判決でも示されているように、実施例4、5の記載は、原料、溶媒、触媒等の具体的な種類と使用量が明らかにされており、また、反応時や晶析時の条件も具体的に記載されており、さらに、得られた多形体A及びBの純度や示差走査熱分析による融解吸熱最大も記載されている。そして、前記結晶多形体に関する本件出願時の技術常識からみて、多形体Bの結晶化温度(65℃)、溶解温度(90℃)、冷却速度(徐々に冷却、30℃まで冷却)については明らかであり、不純物の存在と純度は原料である多形体Aの純度(96.2%)の記載から、過飽和度は実施例5の原料の量(実施例4で得たBPEFの粗精製物80g)、溶媒の量(トルエン640g)、溶解温度(90℃)、冷却速度(徐々に冷却)及び析出開始温度(65℃)の記載から当業者であれば認識可能であるといえる。pHについても特段の操作を行っていない。 実施例4及び5の記載からでは、結晶化期間、攪拌速度が不明であるといえるが、特段の条件設定が必要とはいえず、過度の負担を強いるものとはいえない。 実施例3及び6の記載からも上記と同様のことがいえる。 そして、そのようなBPEFの多形体Bは、耐熱性、透明性に優れ、高屈折率を備えたポリマーを製造するための原料として使用できるといえる。 したがって、当業者は、実施例の記載や一般的記載の例示を参考にして、「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である多形体B」を製造でき、使用することができるように記載されているといえる。 よって、その物を作ることができ、その物を使用することができる。 (イ)本件発明8、9は、「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」において、「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する」、請求項8に係る発明において、「回折角2θの最大ピークが18.4°である」ことを特定した物の発明である。 本件発明7で検討し、判決でも示されているように、実施例4,5の記載、実施例3及び6の記載から多形体Bを過度の負担なく製造することができ、BPEFの多形体Bは、耐熱性、透明性に優れ、高屈折率を備えたポリマーを製造するための原料として使用できるといえる。 そして、実施例2において製造した多形体Bについて、図4に粉末X線回折パターンを示しており、【表2】のCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが請求項の数値と対応しているとともに、18.4に対応するピークが最大であることが示されているのであるから、当業者は、実施例の記載や一般的記載の例示を参考にして、「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する」多形体B、及び請求項8に係る発明において、「回折角2θの最大ピークが18.4°である」多形体Bを製造でき、使用することができるように記載されているといえる。 したがって、その物を作ることができ、その物を使用することができる。 (3)審判請求人の主張の検討 請求人の無効理由2の主張の概要は、以下のとおりのものである(審判請求書37頁8行~40頁15行)(下記のとおり、主張イは、本件訂正により、「該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後に65℃以上でBPEFの析出を開始させることを特定した・・・製造方法の技術上の意義が明確でない。」と理解することとする。)。 ア 請求項1に係る製造方法の実験例として実施例2,3があるが、対比すべき比較実験の記載がない。 イ ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させること得られた反応混合物から50℃未満でBPEFの粗精製物を得ること、粗精製物の純度85%以上であること、該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後に65℃以上でBPEFの析出を開始させることを特定したBPEFの結晶多形体の製造方法の技術上の意義が明確でない。 ウ 請求項1に係る製造方法で規定した因子以外にも攪拌速度や過飽和度等の様々な因子が多形体の制御に影響を与えることが知られていたので、他の制御因子も考慮しながら多形体Bの製造を試みることは当業者に過度な負担を強いるものである。 エ 実施例3の記載が、他の公報(甲6)の記載と非常に類似している点や、冷却温度が該他の公報において、「室温まで徐々に冷却し」だったのが、「10℃まで冷却し12時間攪拌した」との記載に変更されている点で、実験されていない可能性があり、実質的に実施例が1つになることから技術上の意義が理解できない。 オ 請求人の主張アについて 請求人は、実施例に対する対比すべき比較実験がないことを問題にしているが、上述のとおり、本件の請求項1の発明は、多形体Bを製造する方法が明確に説明され、実施例において製造できているのであるから、当業者が容易に実施できるものといえ、比較例がなくとも、明確かつ十分に記載したものであるということができる。 カ 請求人の主張イについて 請求人の主張イは、委任省令要件を問題としたものであるが、発明が解決しようとする課題は多形体Bを製造する方法の提供であり、その解決手段が請求項1で特定されたヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させること得られた反応混合物から50℃未満でBPEFの粗精製物を得ること、粗精製物の純度85%以上であること、該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒に溶解させた後に65℃以上でBPEFの析出を開始させることであるのだから、発明が解決しようとする課題及びその解決手段は明確であり、当業者は、BPEFの結晶多形体の製造方法の技術上の意義を理解できるというべきである。 キ 請求人の主張ウについて 請求人の主張ウは、請求項1に係る製造方法で規定した因子以外にも攪拌速度や過飽和度等の因子が多形体の制御に影響を与えるので、他の制御因子も考慮しながら多形体Bの製造を試みることは当業者に過度な負担を強いるものであるというものであるが、実施例4及び実施例5の記載からみて、多形体Bの析出開始温度(65℃)のみならず、原告が主張する結晶多形体の主な制御因子のうち、結晶化期間及び攪拌速度以外はすべて明らかであるといえ、結晶化期間及び攪拌速度の設定に関しても、請求人は、条件設定が困難であることを明らかにする証拠を何ら提出しておらず、具体的条件が示されていなくとも、当業者に過度の負担を生じさせるとはいえない。 ク 請求人の主張エについて 請求人の主張エは、特定の実施例の記載が他の公報の実施例の記載と類似していることや、一部冷却条件が変更されている点を問題にしているが、同じ化合物の製造条件を類似した条件で行うことは自然なことであり、一般に溶解度は低温ほど小さくなる場合が多いことから、目的物の収量を高めるために冷却温度を低めに設定することは当業者にとって普通のことであり、冷却条件として「10℃まで冷却」と設定することも不自然なものとはいえない。 そもそも、発明の詳細な説明には、「【0025】 反応後、得られた反応混合物は、そのまま9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させてもよいが、通常、洗浄、濃縮、希釈、活性炭処理等の後処理を施した後に、50℃未満で9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる。必要により上記の後処理を施された反応混合物から9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させる操作は、必要により溶媒と混合された反応混合物を50℃以上、溶媒の沸点以下(好ましくは70~110℃)とし、これを50℃未満に冷却することにより実施される。50℃以上では反応混合物から9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶が析出する場合は、50℃以上では結晶が析出しなくなる量の希釈溶媒と反応混合物とを混合した後に、得られた混合物を50℃以上、溶媒の沸点以下(好ましくは70~110℃)とし、これを50℃未満に冷却することにより実施すればよい。希釈溶媒としては、上記の反応に用いる溶媒として例示したものや、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプルパノール、ブタノール、t-ブタノール、イソブタノールおよびペンタノール等のアルコール溶媒等が挙げられる。 【0026】 冷却終点の温度は、50℃未満であれば特に限定されず、通常-20~49℃、好ましくは0~40℃、より好ましくは10~30℃である。冷却速度も特に限定されず、通常、毎分0.01~2℃、好ましくは、毎分0.1~0.5℃である。冷却途中で、反応混合物に9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶を種晶として添加してもよい。かかる結晶は、通常、多形体Aである。」との一般的記載があり、その記載に該当する具体例の記載として実施例3の記載があり、当業者が実施可能に記載されているのであるから実施例として理解する他なく、一方請求人は、その実施例の記載では実施が不可能であることを裏付けるような証拠を提出してはいない。 また、実施例4及び実施例5の記載からみて、各種結晶化条件が示されていることから、上記「請求人の主張イについて」で述べたとおり、当業者は、BPEFの結晶多形体の製造方法の技術上の意義を理解できるというべきである。 (4)以上のとおり、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、特許法第123条第1項第4号に該当せず、無効理由2は理由がない。 3 無効理由3(特許法第29条第2項)について 無効理由3については、取消判決中、本件発明1を引用していない形式で記載された本件発明7~9に関して、本件発明1が容易想到でないことのみを理由とした点の審決の判断を取り消すことが示されている。 (1)甲第6号証に記載された発明 ア 摘記6cの「【実施例10】・・・水分離器を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g・・・、フェノキシエタノール663.2g・・・、トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(H4SiW12O40)]4.3gを加え、トルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら8時間攪拌した。得られた反応液を・・・分析した結果、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが201.5g・・・生成していた。この反応液にトルエン300gを加え、水100gを用いて80℃で水洗をおこなった。次いで加熱下、減圧濃縮によりトルエンおよび過剰のフェノキシエタノールを除去した。この濃縮液にトルエン600gを加え、80℃で約1時間加熱攪拌した後、室温まで徐々に冷却し、析出した結晶をろ過、乾燥することにより白色結晶[9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン]、162.1g(収率92.0%、LC純度96.2%)を得た。」との記載からみて、甲6の刊行物には、 「フルオレノン、フェノキシエタノール、トルエンおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸を加え、トルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら攪拌し、得られた反応液からの析出により、純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶を得る方法。」についての発明(以下、「引用方法発明」という。)が記載されている。 イ また、摘記6cには、実施例10の記載により、製造方法をともなって、「フルオレノン、フェノキシエタノール、トルエンおよびケイタングステン酸を加え、得られた反応液からの析出により純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶」を得たことが記載されており、甲6の刊行物には、 「フルオレノン、フェノキシエタノール、トルエンおよびケイタングステン酸を加え、得られた反応液からの析出により得た純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶」についての発明(以下、「引用結晶発明」が記載されている。 (2-1)本件発明1と引用方法発明との対比 本件発明1と引用方法発明とを対比すると、両者は「ヘテロポリ酸の存在下、フルオレノンと2-フェノキシエタノールとを反応させた後、得られた反応混合物から9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを析出させることにより純度が85%以上の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの粗精製物を得る方法。」に関するものである点において一致し、次の3つの点において相違する。 相違点1-1 本件発明1においては、粗精製物の段階で「50℃未満でBPEFの析出を開始』させるのに対して、引用方法発明においては粗精製物の段階における析出開始温度が特定されていない点。 相違点1-2 本件発明1においては、「次いで、該粗精製物を芳香族炭化水素溶媒、に溶解させた後にBPEFの析出を開始」させるという特定の溶媒を用いた再結晶化の操作を更に行っているのに対して、引用方法発明においては特定の溶媒を用いた再結晶化の操作が更に行われていない点。 相違点1-3 本件発明1においては再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させているのに対して、引用方法発明においては再結晶化の段階がなく、その段階における析出開始温度が特定されていない点。 (2-2)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点1-1について 摘記6cの甲6の実施例10についての具体的な記載と、摘記1eの本件の実施例4についての具体的な記載を対比すると(必要ならば甲7の対比表を参照)、甲6の実施例10と本件の実施例4は実験条件及び結果が実質的に同じであることから、同じ製造方法から同じ結晶が得られるはずであるので、引用方法発明においては、融点104℃の多形体Aが38℃で析出しており、50℃未満の析出開始温度で得られているものと推認される。 したがって、相違点1-1について実質的な差異があるとは認められない。 イ 相違点1-2について (ア)動機付けの有無 甲6の刊行物に記載された発明(引用方法発明を含む)は「煩雑な触媒除去操作や精製操作を行なうことなく、イオウ分を含まない高品質な製品を工業的有利に製造する方法を提供すること」を目的として、触媒の種類に工夫を加えた発明である(摘記6a)。 そして、引用方法発明においてBPEFの新規な結晶多形体を得ようとする動機付けについては、甲6の刊行物に示唆を含めて記載がない。 また、甲14の刊行物に「製品特性として結晶形状が重要」であること、及び「製造法を工夫することにより製品にさまざまな機能・特性を付与することが可能」になることが記載されているとしても、これは一般論としての可能性が述べられているにすぎないものである。 請求人が多形体に関する証拠として提出した、甲61~甲70には、本件発明の「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン」に関する記載は、まったくなく、甲67~70は、ビスフェノールという特定のモノマーの多形体に関するものである。 本件発明の化合物と異なる化合物について多形体に関する記述があるからといって、BPEFの新規な結晶多形体を得ようとする動機付けがあることにはならない。 また、医薬化合物の多形探索の動機付けに関して、甲5において、「医薬品の分野では多形が異なると,異なる物質の扱いを受けるために,特定の多形を安定して生産する技術の開発は必要不可欠である」ことが記載され、一般論として結晶に多形が存在することが知られていたとしても、化合物全般に多形体の探索のための動機付けがあるわけではない。BPEFはモノマーとしてその後溶媒に溶解して重合される原料であって、結晶形によってその後の重合物質に影響を与えるものではないから、結晶形によってそのバイオアベイラビリティーが異なる医薬化合物の場合とは異なり、甲6に記載された引用方法発明において、多形探索の動機付けがあったとはいえない。 以上のとおり、甲号証の全ての公知刊行物を精査しても、BPEFという特定の化学物質について新規な結晶多形体を得ようとする動機付けについて示唆を含めて記載がなく、本件発明の「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン」については、甲号証の公知刊行物によっては、当該動機付けが本願優先日(平成19年2月15日)前の技術水準において存在していたと認めるに至らない。 (イ)審判請求人の主張について a 審判請求人は、甲6には、反応溶媒として、トルエンが使用され、そのまま晶析溶媒として用いることが示唆されているし、再結晶することも示唆されていると主張しているが、甲6の刊行物には「必要に応じて再結晶などの精製操作を行うこと」及び「晶析溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族低級ケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、水などが特に好ましいこと」が記載されている(摘記6b)。 しかしながら、摘記6bに示される「再結晶」は、高純度化を目的とした精製操作としてのものである。すなわち、本件発明1のように結晶多形体の作り分けを目的とした操作ではない。 他の結晶多形体を製造するための得るための操作を行う動機付けとなるものではない。 さらに、そもそも引用方法発明(甲6の実施例10)で得られたBPEFは十分に高純度であり、煩雑な精製操作を行わないことを目的とする引用方法発明において、再結晶の精製操作をわざわざ追加して行うべき積極的な動機付けがあるとも認められない。 b 審判請求人は、甲9及び甲10には、芳香族炭化水素溶媒であるトルエン等を晶析溶媒に用いてBPEFの粗精製物を再結晶化することが記載されているし、甲11~甲13には、トルエンを含む幅広い溶媒をBPEFの晶析溶媒に使用できることが記載されている旨主張している。 しかしながら、BPEFの新規な結晶多形体を提供するという課題の解決手段として、本件発明1の特定の晶析溶媒である芳香族炭化水素溶媒を選択的に使用することについては、甲6及び甲9~甲14並びに他の甲号証の公知刊行物にも記載がなく、これが本願優先日前の技術水準において当業者の技術常識になっていたと認めるべき事情も見当たらない。 (ウ)相違点1-2のまとめ 以上総括するに、相違点1-2については当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ウ 相違点1-3について (ア)甲6及び甲9~甲14を含む甲号証の全ての公知刊行物を精査しても、再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させることについての記載が示唆を含めて認められない。 上記検討のとおり、引用方法発明において、新規な多形体結晶を得るための再結晶化工程を設けることが動機付けられない以上、その再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させるという本件発明1の特定事項を設定することは当業者といえども困難であるといえる。 (イ)審判請求人の主張について a 審判請求人は、甲14の刊行物(甲3の意見書に添付された刊行物)には「結晶多形の制御も簡単ではない.・・・結晶析出温度を高くあるいは低く設定したりして実験的に望みの多形の析出条件を見つけだしている.」との記載があるところ(摘記14c)、この記載を根拠に請求人は「多形を得るための再結晶化に際して結晶析出温度を高く又は低く設定する技術」が当業者において周知技術であると主張している。 しかしながら、仮に「結晶析出温度を設定する技術」が当業者にとって周知技術であるとしても、前述のとおりBPEFという特定の化学物質について新規な結晶多形体を得ようとする動機付けが本願優先日前の技術水準において存在していたと認めるに至らないこと、及び摘記14cに「結晶多形の制御も簡単ではない.・・・多形析出の制御は依然として難しいといわざるを得ない.」と記載されていることからみて、引用方法発明において結晶の析出開始温度を「65℃以上」に設定することはさらに困難であり、当業者が容易に着想し得たとは認められない。 また、晶析は溶解度曲線の関係からみて、通常、室温(甲6,甲9~11)又は-10℃~30℃(甲13)まで冷却して結晶を析出させていると考えられるところ、あえて65℃以上という高い温度で結晶の析出を開始させるには、高い濃度で溶解させて析出を生じさせる必要があり、そのような晶析操作についてまで、甲6に示唆があるとは認められない。 したがって、BPEFの新規な結晶多形体を提供するという課題の解決手段として、本件発明1の特定の晶析溶媒である芳香族炭化水素溶媒を比較的高温からの晶析溶媒として選択的に使用し、高い温度で加熱した状態では、化合物の分解も留意しなければならないところ、室温又は-10℃~30℃まで冷却して結晶を析出させているような通常の析出温度よりも高い温度65℃以上(実施例5で65℃、実施例6で70℃、実施例8で72℃、実施例2で80℃)で析出を開始させることは当業者が容易に想到するものとはいえない。 さらに、本件発明1は、酸触媒として「特に酸触媒由来の不純物の生成が少なく、実質的に単一な多形体を得やすいヘテロポリ酸」を選択使用し、メタノールなどの溶媒では多形体Bが得られないことからトルエンなどの特定の溶媒を選択使用し、その上で、粗精製物の析出開始温度の上限値を「50℃未満」とし、粗精製物の純度の下限値を「85%以上」とし、再結晶時の析出開始温度の下限値を「65℃以上」とすることで、BPEFの新規な結晶多形体の製造を可能にするに至ったものである。すなわち、BPEFの新規な結晶多形体は、単に「多形を得るための再結晶化に際して結晶析出温度を高く又は低く設定すること」のみによって得られるものではなく、多数の設定条件を様々に調整することによって初めて製造可能になったものといえるものである。してみると、これら多数の設定条件の取捨選択と数値範囲の最適化の試行錯誤については、当業者といえども相当の困難があったこととと認められる。 (ウ)相違点1-3のまとめ 以上総括するに、相違点1-3については当業者が容易に想到し得たとは認められない。 (エ)本件発明1の効果について a 本件発明1は、その製造方法により、多形体Bを得ることにより、一定の品質を維持し、ポリマー原料として優れた9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの新規な結晶多形体およびその製造方法を提供することができ、本発明により得られる多形体Bは、公知の多形体Aよりも嵩密度が高いため、容積効率等の点で工業的な取扱いに有利であること、嵩密度が0.5以上、好ましくは0.6~0.8g/cm3である多形体Bが得られるとの効果を奏するものである。 引用方法発明では、多形体Aが得られるだけで、その嵩密度は、甲6には記載はないものの、本件明細書の記載から、0.2g/cm3程度といえる。 引用方法発明で得られる多形体Aとの比較において、多形体Bがそのような高い嵩密度が得られることは、特に9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの多形体の存在が知られていなかった技術水準のもとでは、予測可能なものとはいえない。 b 審判請求人の主張について 審判請求人は、甲61~甲66を挙げることで、嵩密度の向上が求められていること、嵩密度の数倍程度の向上は珍しいことではない旨主張している(上申書(1)38頁)。 しかしながら、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンに関して、引用方法発明において、嵩密度の向上の動機付けがあるわけではないし、実際にその化合物の多形体を得ているわけでもないので、化合物に関する発明は、実際に合成して分析をしなければその特性の予測性はないと考えるべきである。確かに同じ化合物であっても結晶形体を変えることで嵩密度が3倍を超えて変化する例もあるが、大部分の化合物の結晶による密度の違いは1~2倍程度であることを考慮すると、本件発明1とは別の化合物において、嵩密度の数倍異なる多形体が存在している例があるからといって、本件発明1の効果が予測可能なものとはいえない。 (2-3)本件発明1の進歩性要件についての総括 以上のとおり、本件発明1は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証若しくは甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 したがって、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件発明1に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (3)本件発明2と引用方法発明との対比 本件発明2は、本件発明1において、本件発明1の反応をさらに脱水条件で行われることを限定したものである。 甲6には、「【実施例10】【0038】攪拌機、窒素吹込管、温度計および冷却管を付けた水分離器を備えたガラス製反応器にフルオレノン86.4g(0.48モル)、フェノキシエタノール663.2g(4.80モル)、トルエン350gおよび100℃で減圧乾燥し結晶水を除いたケイタングステン酸[(H4SiW12O40)]4.3gを加え、トルエン還流下、生成水を反応系外に除去しながら8時間攪拌した。」(摘記事項(6c)と記載されており、引用方法発明は、「生成水反応系外に除去しながら攪拌」することが特定されるものである。 本件発明2は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明1が甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証若しくは甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 よって、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件発明2に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (4)本件発明3と引用方法発明との対比 本件発明3は、本件発明1において、ヘテロポリ酸の成分を「リン酸またはケイ酸と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸素酸イオンとから構成されるヘテロポリ酸である」とさらに限定したものである。 そして、引用方法発明においても、本件発明3の「リン酸またはケイ酸と、バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1つの元素の酸素酸イオンとから構成されるヘテロポリ酸」に該当するケイタングステン酸をヘテロポリ酸として用いて反応をおこなっている。 本件発明3は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明1が甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証若しくは甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 よって、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件発明3に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (5)本件発明4と引用方法発明との対比 本件発明4は、本件発明1において、本件発明1をさらに、ヘテロポリ酸が無水物又は脱水されていることを限定したものである。 そして、引用方法発明においても、本件発明4と同様に、脱水したヘテロポリ酸を用いている。 本件発明4は、本件発明1をさらに特定したものであるから、本件発明1が甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証若しくは甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない以上、甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 よって、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件発明4に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (6)本件発明6と引用方法発明との対比 本件発明6は、本件発明1において、本件発明1をさらに、多形体Bの析出のための溶媒をトルエンまたはキシレンに限定したものであるから、引用方法発明との対比において、以下の相違点を有する。 相違点6-1 本件発明6においては、粗精製物の段階で「50℃未満でBPEFの析出を開始』させるのに対して、引用方法発明においては粗精製物の段階における析出開始温度が特定されていない点。 相違点6-2’ 本件発明6においては、「次いで、該粗精製物をキシレンまたはトルエンに溶解させた後にBPEFの析出を開始」させるという特定の溶媒を用いた再結晶化の操作を更に行っているのに対して、引用方法発明においては該粗精製物をキシレンまたはトルエンに溶解させた後、再結晶化の操作が更に行われていない点。 相違点6-3 本件発明6においては再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させているのに対して、引用方法発明においては再結晶化の段階がなく、その段階における析出開始温度が特定されていない点。 (6-2)判断 上記相違点について検討する。 ア 相違点6-1について 相違点1-1について、検討したように、引用方法発明においては、融点104℃の多形体Aが38℃で析出しており、50℃未満の析出開始温度で得られているものと推認される。 したがって、相違点6-1については、実質的な差異があるとは認められない。 イ 相違点6-2’について 相違点1-2について検討したように、甲6の刊行物に記載された発明(引用方法発明を含む)は「煩雑な触媒除去操作や精製操作を行なうことなく、イオウ分を含まない高品質な製品を工業的有利に製造する方法を提供すること」を目的として、触媒の種類に工夫を加えた発明である(摘記6a)。 摘記6bに示される「再結晶」は、高純度化を目的とした精製操作としてのものであり、本件発明6のように結晶多形体の作り分けを目的とした操作ではないので、引用方法発明において、新たな結晶多形体を作成する操作を追加する動機付けはない。 さらに、引用方法発明(甲6の実施例10)で得られたBPEFは十分に高純度であり、煩雑な精製操作を行わないことを目的とする引用方法発明において、再結晶の精製操作をわざわざ追加して行うべき積極的な動機付けがあるとも認められない。 そして、引用方法発明においてBPEFの新規な結晶多形体を得ようとする動機付けについては、甲6の刊行物の示唆を含めて記載がない。 本件発明の「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン」については、甲号証の公知刊行物によっては、当該動機付けが本願優先日前の技術水準において存在していたと認めるに至らない。 したがって、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン粗精製物をキシレンまたはトルエンに溶解させた後にBPEFの析出を開始させるという特定の溶媒を用いた再結晶化の操作を更に行うという相違点6-2’の構成については当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ウ 相違点6-3について 相違点1-3で検討したように、甲6及び甲9~甲14を含む甲号証の全ての公知刊行物を精査しても、再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させることについての記載が示唆を含めて認められない。 そして、引用方法発明において、新規な多形体結晶を得るための再結晶化工程を設けることが動機付けられない以上、その再結晶化の段階で「65℃以上でBPEFの析出を開始」させるという本件発明6の特定事項を設定することは当業者といえどもさらに困難であるといえる。 したがって、本件発明6は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証若しくは甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 したがって、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件発明6に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (7)本件発明7と引用結晶発明との対比 ア 対比 本件発明7と引用結晶発明とを対比すると、両者は「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶」に関するものである点において一致し、次の点において相違する。 相違点7-1 本件発明7においては、示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体であるのに対して、引用結晶発明においては純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶であって、示差走査熱分析による融解吸熱最大が特定されていない点。 イ 判断 (ア)相違点1-1で述べたように、摘記6cの甲6の実施例10についての具体的な記載と、摘記1eの本件の実施例4についての具体的な記載を対比すると(必要ならば甲7の対比表を参照)、甲6の実施例10と本件の実施例4は実験条件及び結果が実質的に同じであることから、甲6の実施例10で得られた純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶である引用結晶発明は、融点104℃の多形体Aの結晶であると推認される。 そして、本件発明7の「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」とは、本件明細書の記載から多形体Bを指すものであり、引用結晶発明の多形体Aを本件発明7の多形体Bとすることが容易であるかどうかを以下検討する。 (イ)動機付けについて 引用結晶発明は、煩雑な精製操作を行うことなく高純度の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得ることを目的としたものであるので、すでに、純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶が得られているのであるから、さらに精製を行う動機付けはないし、別の多形体結晶を得る動機付けもないといえる。 甲5、14の結晶多形に関する文献の記載から、多形体間の溶解性の差等のため検討が行われる医薬をはじめとして一定程度多形体に関する注目があったといえるにしても、工業製品全般に関して、一つの結晶から、自動的に他の多形体への動機付けがあるものとはいえない。 (ウ)結晶を得るための手法に関して 実際に本件発明7を得るための手法に関して検討すると、本件発明7は、酸触媒として「特に酸触媒由来の不純物の生成が少なく、実質的に単一な多形体を得やすいヘテロポリ酸」を選択使用し、メタノールなどの溶媒では多形体Bが得られないことからトルエン、キシレンなどの特定の溶媒を選択使用し、その上で、粗精製物の析出開始温度の上限値を「50℃未満」とし、粗精製物の純度の下限値を「85%以上」とし、晶析は飽和溶解度曲線の関係や化合物の分解の回避等からみて、通常低温に冷却して結晶析出させると考えられるところ(甲6等では前記のとおり室温以下で行っている)、高い温度で結晶の析出を開始させるために、高い濃度で溶解させ、析出を生じさせる必要があり、あえて再結晶時の析出開始温度の下限値を「65℃以上」とすることで、BPEFの新規な結晶多形体を得たものである。 そのような結晶を得るための手法が当業者にとって容易なものであったとすることがいえない以上、多形体Bが容易に想到するとはいえない。 つまり、多形体Bは、本件出願の優先日時点で公知のものではなく、その製造方法が知られているわけでもないし、甲9,10にたまたま、本件発明の多形体Bの製造工程の一工程の溶媒が好ましい例として記載されているからといって、多形体Aであることが推認される引用結晶発明から当業者といえども、多形体Bを得ることが容易に想到することにはならない。 (エ)その他の製造方法による多形体Bの容易想到性について そして、念のため、その他の本願優先日前頒布された甲号証を検討しても、多形体Aを経由しない製造方法(本件発明1~4、6とは異なる製造方法)によって、示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である多形体Bを確実に、取得したことが理解できる記載も示唆もない。 また、甲6に記載された多形体Aであると推認できる結晶の製造方法の記載と、大阪ガスが独自に開発したとするトルエン加水分解法(甲19,乙17)から当業者が容易に想到するかを検討しても、甲6には、トルエン加水分解法に関する開示があるわけではないので、多形体Bを甲6から当業者が容易に取得できるとはいえない。 以上のように、甲6の再結晶や晶析に関する記載に基づく示唆を勘案しても、多形体Bに関して、その製造ルートは示されておらず、示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である多形体Bを製造できるとはいえない。 さらに、多形体Bが得られない以上、その結晶の融点を測定して、「示差走査熱分析による融解吸熱最大が160~166℃である」との特定をすることができないのはいうまでもない。 (オ)上記(ア)~(エ)で検討したように、本件発明7の構成の容易想到性はないが、効果の顕著性の点からみても、多形体Bは、引用結晶発明に対して、嵩高さが3倍存在するという当業者の予測を超える効果を奏しているのであるから、当業者が甲6に記載された発明から周知技術を適用しても容易に発明することができるものとはいえない。 ウ したがって、本件発明7は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証若しくは甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 よって、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件発明7に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (8)本件発明8と引用結晶発明との対比 ア 対比 本件発明8と引用結晶発明とを対比すると、両者は「9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶」に関するものである点において一致し、次の点において相違する。 相違点8-1 本件発明8においては、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体であるのに対して、引用結晶発明においては純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶であって、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θのピークが特定されていない点。 イ 判断 (ア)相違点1-1で述べたように、摘記6cの甲6の実施例10についての具体的な記載と、摘記1eの本件の実施例4についての具体的な記載を対比すると(必要ならば甲7の対比表を参照)、甲6の実施例10と本件の実施例4は実験条件及び結果が実質的に同じであることから、甲6の実施例10で得られた純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶である引用結晶発明は、融点104℃の多形体Aの結晶であると推認される。 そして、引用結晶発明の多形体Aを、本件発明8の「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」とすることが容易であるかどうかを以下検討する。 引用結晶発明は、煩雑な精製操作を行うことなく高純度の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンを得ることを目的としたものであるので、すでに、純度96.2%の9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの白色結晶が得られているのであるから、さらに精製を行う動機付けはないし、別の多形体結晶を得る動機付けもないといえる。 また、「Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体」は、本件出願の優先日時点で公知のものではなく、製造方法が知られているわけでもないし、甲9,10にたまたま本件発明の製造工程の一工程の溶媒が好ましい例として記載されているからといって、当業者といえども、上記9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンの結晶多形体を得ることが容易に想到することにはならない。 (イ)そして、念のため、すべての本願優先日前頒布された甲号証を検討しても、多形体Aを経由しない製造方法(本件発明1~4、6とは異なる製造方法)によって、そのCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有する多形体を確実に、取得したことが理解できる記載も示唆もない。 上記特定の粉末X線回折パターンを有する多形体を得ることが容易でない以上、そのCu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける回折角2θが12.3°、13.5°、16.1°、17.9°、18.4°、20.4°、21.0°、23.4°および24.1°にピークを有することを特定することもできないことになる。 (ウ)(ア)で検討したように、本件発明8の構成の容易想到性はないが、効果の顕著性の点からみても、多形体Bは、引用結晶発明に対して、嵩高さが3倍存在するという当業者の予測を超える効果を奏しているのであるから、当業者が甲6に記載された発明から周知技術を適用しても容易に発明することができるものとはいえない。 本件発明8は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証若しくは甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 したがって、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件発明8に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (9)本件発明9と引用結晶発明との対比 ア 本件発明9は、本件発明8において、さらに、「回折角2θの最大ピークが18.4°である」ことをさらに特定したものであり、本件発明8で検討したとおり、本件発明9は、甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、又は甲第6号証に記載された発明及び甲第9号証若しくは甲第10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 したがって、請求人の主張及び提出した証拠方法によっては、本件発明9に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。 (10)審判請求人の主張について 請求人は、本件発明7~9について、本件発明1が甲第6号証と周知技術によって当業者が容易に想到し得た製造方法であるから、このような製造方法によって製造できる多形体Bを単に物性値で規定したに過ぎない特許発明(請求項7ないし請求項9に係る特許発明)は何らの技術的な創作性もなく、本件発明1と同様、甲第6号証及び甲第9号証等に記載の周知技術によって当業者が容易に想到できるものである旨の主張(審判請求書の第57頁第12~17行)をしている。 そして、請求人が提出した口頭審理陳述要領書の第43~44頁の『4 審理事項通知書7頁「1.(3)イ.(え)」について』の項において、請求項1に係る特許発明の対象である多形体Bが容易想到である(容易に多形体Bを製造できる)と判断された場合、当該多形体Bを上記の常用の方法を使用して測定値で特定することが当業者にとって容易に想到できることはいうまでもありません。・・・知財高判平成24年12月5日(平成23年(行ケ)第10445号)や知財高判平成19年7月4日(平成18年(行ケ)第10271号)においても、裁判所は、X線回折パターンが記載されていない引用文献の物質に対して、この物質を基に当業者が多形体を容易に製造できたか否かの観点で進歩性を検討し、いずれも進歩性なしとの判断を下している旨の主張している。 しかしながら、本件発明7~9を物の発明として、甲6に記載された引用結晶発明からの容易想到性を判断した結果として、本件発明7~9も、甲第6号証及び甲第9号証等に記載の周知技術によって当業者が容易に想到できないことは、上述のとおりであり、医薬の結晶が得られた場合に他の結晶の形態を探索することに関して、一定の動機付けがあることやその場合のX線回折パターンの特定自体の容易性に関して判示した参考判決があるからといって、それとは別の用途に専ら用いることを想定した化合物の発明である本件発明において、甲6に記載された発明から他の多形体を得る動機付けの存在、当該多形体取得の方法の容易性、当該多形体の効果について、甲6に記載された事項を含めて総合して判断した結果としての前記進歩性の判断を左右するものとはいえない。 (10)無効理由3のまとめ 以上のとおり、本件特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではないから、特許法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由3は理由がない。 4 無効理由4について (1)判断の前提 ア 東京高裁昭和49年6月18日判決(昭和43年(行ケ)第67号)には、 「発明の共同研究者,研究補助者,発明完成後の効果の試験に関与した者等(以下「共同研究者等」という。)が発明の内容を知っていても,その発明が原則として公然知られ、または公然実施されたといえないことは,原告張のとおりである。しかし,これは,原告主張のように共同研究者等がその発明と特定の関係にあることから直ちに生じる効果ではなく,共同研究者等が多くの場合発明者または発明者から特許をうける権利を譲り受けた者との法律関係に基づき,契約上または信義則上発明者に対する関係で発明の内容を第三者に対し秘密にすべき義務を負うからである。 そして,この秘密を守る義務は永久に継続するわけでなく,共同研究者等と発明者との間の法律関係に変動があれば,それに伴って消滅することもあり得るといわなければならない。」と判示されている。 上記参考判決には、共同研究者等がその共同研究内での発明の内容に関して、契約上または信義則上発明者に対する関係で発明の内容を第三者に対し秘密にすべき義務を負う場合のあることを示しているもので、共同研究以外の独自でなした発明に関しては、契約上または信義則上秘密にすべき義務を負担するものでないことは当然である。 イ 前記1エ及びオのとおり、取消判決では、本件の第1取引~第5取引,第7取引~第13取引の対象物は、本件発明7の実施品に該当するBPEFであること、各取引の関係書類、DSCチャートを認定に採用しなかったことが証拠の採否を誤ったものであること、上記各取引の対象となったBPEFは、共同開発とは別に,Y社が開発した製造方法によって製造されたのであるから、その物性情報は本件覚書に基づく秘密保持義務の対象とはならないこと、本件発明7については、本件優先日前に公然実施されたものであることが示されており、この点については、行政事件訴訟法第33条第1項の拘束力が及ぶが、公知の判断については示されていない。 (2)認定事実 ア 前記第6 1(20)~(37)の証拠の記載によれば、取消判決で示されたとおり、以下の事実が認定できる。 (ア)本件の第1取引 請求人は、平成14年3月頃、Y社が委託して製造した(甲30の4)BPEFを合計2700kgα社に譲渡した(甲30の5)。 譲渡したBPEFは、平成14年3月5日に行われた測定の結果(甲30の3)、LotNo.BPEF-02018~02021が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.8~163.2℃で本件発明7に該当するものである。 Y社の村瀬裕明氏からα社の●●●氏に宛てた「BPEF試験成績表」(甲30の2)の4つのサンプルのLotNo.が02018~02021であり、α社で、Y社又は請求人から受けたBPEFのサンプルのDSC測定を担当していた●●●●氏の陳述内容(甲126)、α社の前記●●氏の上司の●●●氏の陳述内容(甲127)、Y社の村瀬裕明氏の陳述内容(甲128)、請求人の大阪ガスケミカルに所属した須田康裕氏の陳述内容(甲129)は相互に矛盾はなく、本件の第1取引の前にLotNo.が02018~02021のBPEFの4つのサンプルのDSC測定がα社で行われ、α社の●●氏及び●氏が測定結果から、LotNo.BPEF-02018~02021が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.8~163.2℃であったことを知ったことが認定できる。 また、上記測定担当者及びその上司には、それについて守秘義務を負うことの説明も認識もなかったことが認定できる(甲126、甲127)。 (イ)本件の第2取引 請求人は、平成14年8月頃、請求人が委託して製造した(甲33)BPEFを450kgα社に譲渡した(甲34の2)。 譲渡したBPEFは、LotNo.420506が、平成14年5月27日付け報告書において、DSCの値として163.0℃(甲33)であり、本件発明7に該当するものである。 (ウ)本件の第3取引 請求人は、平成15年5月頃、請求人が委託して製造した(甲35の4)BPEF4140kgをα社に譲渡した(甲35の5~7)。 譲渡したBPEFは、2002年8月から9月にかけて行われた測定の結果(甲35の8)、LotNo.520703~520713が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.48~164.63℃で本件発明7に該当するものである。 (エ)本件の第4取引 請求人は、平成15年8月19日に、請求人が委託して製造した(甲43,甲44)BPEF1510kg(LotNo.630202、630205、630206、630208、630209、630212、630213)をα社に譲渡した(甲47の1及び2)。 譲渡したBPEFは、2003年2月に行われた測定の結果(甲46)、LotNo.630202、630205、630206、630208、630209、630212、630213が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.13~163.82℃で本件発明7に該当するものである。 (オ)本件の第5取引 請求人は、平成17年5月17日頃、フルファインに委託して製造した(甲48)BPEF6750kg(LotNo.0410010、0411019、0411022、0411024、0411025、0411026)をα社に譲渡した(甲49の4)。 譲渡したBPEFのうち、2004年11月24日に行われた測定の結果(甲49の3)、LotNo.BPEF-410010が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.9℃で本件発明7に該当するものである(甲49の3)。 (カ)本件の第6取引 請求人は、平成19年2月1日に、BPEF5100kg(LotNo.0610208、0612242、0612243、0612244、0612245、0612246)をβ社に譲渡した(甲51の1~4)。 甲50には、サンプル名がBPEF 0610208、0612242~0612244、0612246で、測定日付がそれぞれ2010/05/12、2010/05/10、010/05/11、010/05/11、010/05/11、010/05/11であり、最大吸収が、160.9Cel~163.3Celであることが読み取れるDSCチャートが示され、甲22の3の2011年1月27日付け分析結果報告書には、LotNo.0612242で、測定日付がそれぞれ2011/01/21で、最大吸収が、162.8Cel~163.1Celであることが読み取れるDSCチャートが示されている。 本件の第6取引のBPEFに関しては、その製品をフルファインが製造し、原告がβ社に譲渡した時点に近接して測定したDSCの結果がまったくなく、本件に関する紛争が生じた後に作成された証拠(甲50及び甲22の3)のみであり、本件の第6取引の対象物が本件発明7に該当するものであると認めるに足るものではない。 (キ)本件の第7取引 請求人は、平成15年1月21日に、BPEF60kg(LotNo.02023)をγ社に譲渡した(甲31の3及び5)。 譲渡したBPEFのうち、平成14年4月16日に行われた測定の結果(甲31の4)、ロットNOとして、02023が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.7℃で本件発明7に該当するものである。 (ク)本件の第8取引 請求人は、平成15年6月5日に、BPEF60kg(LotNo.02018)をγ社に譲渡した(甲32の1~4)。 譲渡したBPEFのうち、平成14年3月5日に行われた測定の結果(甲30の3)、Lot.No.として、02018が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が163.0℃で本件発明7に該当するものである。 (ケ)本件の第9取引 請求人は、平成15年12月頃、請求人が委託して製造した(甲35の4)BPEF60kg(LotNo.520709)をγ社に譲渡した(甲36の1~5)。 譲渡したBPEFのうち、平成14年10月25日に行われた測定の結果(甲35の3)、Lot.No.として、520709が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.8℃で本件発明7に該当するものである。 (コ)本件の第10取引 請求人は、平成14年7月頃、請求人が委託して製造した(甲33)BPEF100kg(LotNo.420506)をδ社に譲渡した(甲37の1~5)。 譲渡したBPEFは、LotNo.420506が、平成14年5月27日付け報告書において、DSCの値として163.0℃(甲33)であり、本件発明7に該当するものである。 (サ)本件の第11取引 請求人は、平成14年5月頃、請求人が委託して製造した(甲33)BPEF1kg(LotNo.420510)をε社に譲渡した(甲39の1及び2)。 譲渡したBPEFは、LotNo.420510が、平成14年5月27日付け報告書において、DSCの値として163.5℃(甲33)であり、本件発明7に該当するものである。 そして、このとき譲渡したBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大を平成23年6月28日に測定した163.7℃とも一致している(甲42)。 (シ)本件の第12取引 請求人は、平成14年10月16日に、請求人が委託して製造した(甲33)BPEF200g(LotNo.420513,520706)をε社に譲渡した(甲40の1及び2)。 譲渡したBPEFは、LotNo.420513が、平成14年5月27日付け報告書において、DSCの値として163℃(甲33)であり、平成14年10月25日に行われた測定の結果(甲35の3)、Lot.No.として、520709が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.8℃で本件発明7に該当するものである。 そして、このとき譲渡したBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大を平成23年6月28日に測定したLotNo.420513が163.6℃、LotNo.520709が164.1℃とも一致している(甲42)。 (ス)本件の第13取引 請求人は、平成15年3月頃、BPEF1kg(LotNo.630212)をε社に譲渡した(甲41)。 譲渡したBPEFは、2003年2月に行われた測定の結果(甲46)、630212が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.59℃で本件発明7に該当するものである。 そして、このとき譲渡したBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大を平成23年6月28日に測定したLotNo.630212が163.1℃とも一致している(甲42)。 イ 前記第6 2(1)~(8)の証拠の記載によれば、上記判決で示されるとおり、以下の事実が認定できる。 (ア) 乙3~4(枝番を含む) 平成5年7月頃から平成7年11月頃まで、請求人、被請求人、X社及びY社の間で、BPEFの製造について、共同開発が行われていたことが認定できる。 (イ) 乙6の3 請求人、被請求人、X社及びY社は、平成5年9月21日、上記共同開発に当たり、各々が開示する技術的情報及びこれに関わる業務上の秘密事項を秘密に保持する旨の覚書(以下「本件覚書」という。)を締結したことが認定できる。 (ウ) 乙6の1 Y社と被請求人は、平成5年11月22日、共同開発に関する覚書を締結し、業務分担等を定めたことが認定できる。 (エ) 乙4の11の1 Y社は、平成7年3月、上記共同開発から撤退し、替わりに請求人が、被請求人が生産したものをX社に販売する役割を担い上記共同開発に加わったことが認定できる。 (オ) 乙5の3 請求人と被請求人は、平成7年4月1日、BPEFの製造・販売に関する覚書を締結したことが認定できる。 (カ) 乙4の13の1 請求人、被請求人、X社及びY社は、共同開発の期間中、継続して会議を開催していたが(3社会議)、平成7年11月13日の3社会議(本件3社会議)においては、被請求人より、「コストダウン検討実験結果」が報告され、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●であったことが報告されたことが認定できる。 (キ) 乙5の4 請求人及び被請求人は、平成8年12月1日、平成7年4月1日付け覚書を合意解約し、平成5年11月22日付けで締結した共同開発に関する覚書により得られた被請求人が有する共同開発技術を用いて製造した製品を、請求人が買い受け、X社に販売することを合意したことを認定できる。 (ク) 乙17 乙17は、平成23年7月8日付けの請求人側従業員 山田光昭氏の陳述書であるが、陳述書によると、トルエン加水分解法の発明に関する経緯、BPEFのA社、B社、フルファインによる委託製造の状況、各社への販売の状況、が甲18、甲19、甲21、甲126等に沿う形で陳述され、請求人側従業員山田光昭氏が関与してトルエン加水分解法の発明がなされたこと、 請求人は●●●●●●との取引において、先行サンプルを送付して、●●●●●●が品質を確認したロッドに対して正式発注する流れであったことが認定できる。 ウ 秘密保持義務に関する認定事実 秘密保持義務に関して、取消判決のとおり、以下の事実を認定できる。 (ア)本件覚書に基づく秘密保持義務について、請求人は、本件覚書に基づき、共同開発に当たって(乙3、乙4)、被請求人から開示される技術的情報について、被請求人に対して秘密保持義務を負担していたことが認定できる(乙6の3)。 (イ)前記の認定事実(カ)によると、本件3社会議においては、被請求人より、Y社、X社、請求人に対して「コストダウン検討実験結果」が報告され、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●旨を報告した(乙4の13の1)。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 その後良質のものが得られたといった事情もない以上、本件3社会議における報告によって、請求人が負担した示差走査熱分析による融解吸熱最大に関する守秘義務の内容は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (ウ)Y社のBPEFの製造に関して、Y社は平成8年6月頃には、BPEFの精製過程において、溶媒としてトルエン及び水を利用するトルエン加水分解法を開発したことが認定できる(甲18、甲19、乙17)。 そして、トルエン加水分解法は、BPEFの粗結晶を水とトルエンに溶かした後、不純物が溶けた水を除くと、BPEFのみが溶けたトルエンが得られ、これを精製して純度の高いBPEFを得るという方法であり、本件発明1とは異なるBPEFの製造方法であると認定できる(甲19、乙17、甲21の1及び2)。 (3)公然実施(特許法第29条第1項第2号)についての判断 ア 本件優先日前本件発明7に該当する多形体Bを実施(譲渡)したことについて 前記(2)ア(ア)~(オ)、(キ)~(ス)の認定事実によると、上記判決で示したとおり、本件の第1~5、7~13取引の対象となったBPEFは、示差走査熱分析による融解吸熱最大が取引前後の段階で測定された結果から本件発明7に該当するものであり、各取引の事実によって、本願優先日前、本件発明7に該当する多形体Bを請求人が実施(譲渡)したものといえる。 イ 本件の第1~5、7~13取引に基づく請求人による実施は、秘密保持義務を負わない者に対してなされたものであるかについて アで述べたとおり、本件の第1~5、7~13取引の事実によって、本願優先日前、本件発明7に該当する多形体Bを請求人が譲渡したものといえるが、請求人が譲渡した取引相手方に対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大について、秘密保持義務が課されている場合には、公然実施されたものとはいえないためこの点について検討するが、以下に示すように、上記判決で示されたとおり、秘密保持義務を負わない者に対して譲渡されたものである。 (ア)秘密保持義務に関する前記(2)ウ(ア)~(ウ)の認定事実によると、請求人は、本件覚書に基づき、共同開発に当たって、被請求人から開示される技術的情報については、被請求人に対して秘密保持義務を負担していたといえるが、本件3社会議における報告によって、請求人が負担した示差走査熱分析による融解吸熱最大に関する守秘義務の内容は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●、その他良質のものが得られたといった技術的情報が被請求人から開示されたことは証拠によって裏付けられていない。 一方、Y社のBPEFの製造に関しては、BPEFの粗結晶を水とトルエンに溶かした後、不純物が溶けた水を除くと、BPEFのみが溶けたトルエンが得られ、これを精製して純度の高いBPEFを得るという本件発明1とは異なるBPEFの製造方法であるから、上記共同開発とは別に、Y社が開発した製造方法によって製造されたものである。 したがって、その物性情報は、本件3社会議において開示された情報と同じではなく、本件覚書に基づく秘密保持義務の対象とはならない。 よって、上記各取引の対象たるBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大は、本件覚書における秘密保持義務の対象となる技術的情報に該当しない。 (イ)また、請求人から譲渡を受けたα社、β社、γ社、δ社及びε社が、請求人が被請求人に対して守秘義務を負担していることを理由として、請求人を経由して被請求人に対して取引対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大の情報の守秘義務を負担していたということもできない。 (ウ)また、仮に、α社及びβ社が、請求人を経由することなく、本件覚書に基づく秘密保持義務を負担していたとしても、上記(ア)と同様、本件各取引の対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大の情報について、本件覚書によって被請求人に対する秘密保持義務を負担していたとは認めるに足る証拠は被請求人から提出されていない。 (エ)さらに、γ社、δ社及びε社が、被請求人に対し、直接、本件各取引の対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大の情報について秘密保持義務を負担すると認めるに足る証拠は被請求人から提出されていない。 加えて、被請求人からは、α社、β社、γ社、δ社及びε社が請求人又はY社に対して、何らかの信義則上の秘密保持義務を負担すると認めるに足る証拠も提出されていない。 (オ)以上のとおり、本件の第1~5、7~13取引において請求人から本件発明7に該当する実施品の譲渡を受けた、α社、β社、γ社、δ社及びε社が、被請求人に対し、直接、または請求人を介して、あるいは請求人またはY社に対して本件各取引の対象物の示差走査熱分析による融解吸熱最大の情報について秘密保持義務を負担していたとは認めるに足りない。 ウ 公然実施のまとめ 上記第1~第5、第7~第13取引によって、本件発明7は、本件優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明となったといえる。 (4)公知(特許法第29条第1項第1号)についての判断 ア 判断の前提 公知の判断は、公然知られうる状態となったことでは足りず、公然知られた具体的事実を必要とすると考え、それを前提として判断する。 イ 上述のとおり、本件の第1~第5、第7~第13取引によって、守秘義務を負わない者に譲渡され、本件発明7は、本願優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるとはいえる。 そして、譲渡されたBPEFのモノマーの代表的な性質である融点の測定を行うことは、その後のポリマーの原料となることからみて当然想定できるものである。 また、商品として譲渡を受けた以上、その商品の性質分析は譲渡を受けた者が自由に行えることであり、測定上何ら困難な要素もない。 ウ そして、本件の第1取引について検討すると、本件の第1取引に関する、前記1(21)の甲30の1~甲30の5の記載、及び納品されたBPEFをDSCにより融点測定して特性を確認していたとする担当者、担当者の上司、譲渡した請求人側の担当者の前記1(34)(35)(36)の陳述内容は、相互に補完し合い矛盾無く、一つの取引に関する一体の証拠であったことも確認できるものである。 したがって、(2)ア(ア)の認定事実のとおり、本件の第1取引の前にLotNo.が02018~02021のBPEFの4つのサンプルのDSC測定がα社で行われ、α社の●●氏及び●氏が測定結果から、LotNo.BPEF-02018~02021が、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.8~163.2℃であったことを知ったことが認定でき、その測定担当者及びその上司には、それについて守秘義務を負うことの説明も認識もなかったことが認定できる。 エ さらに、甲126、乙17の陳述書によると、守秘義務のない受け入れ検査担当者が、α社に納品されたものに相当するBPEFをDSCにより融点測定をしていたとの内容の陳述があり、本件の第1取引を含めて、測定の事実に沿うBPEFをDSCで測定した証拠もある(甲30の3、甲31の4、甲35の3、甲49の3)。 オ 以上のとおり、本件の第1取引の対象である、LotNo.BPEF-02018~02021のBPEFは、示差走査熱分析による融解吸熱最大が162.8~163.2℃であったことを、守秘義務のない担当者及びその上司が、納品されたものに相当するBPEFをDSCにより融点測定をすることによって知ったといえる。 カ したがって、少なくとも本件の第1取引によって、本件発明7に該当するBPEFの示差走査熱分析による融解吸熱最大に関して、公然知られていたということができる。 キ してみると、本件発明7は、本件優先日前に日本国内又は外国において公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当するということができる。 (5)無効理由4(公然実施及び公知)についてのまとめ 以上のとおり、前記本件の第1~第5,第7~第13取引によって、本件発明7は、本件優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するということができる。 さらに、本件発明7は、少なくとも前記本件の第1取引及びその取引に伴うサンプルのDSCの融点測定によって、本件優先日前に日本国内又は外国において公然知られた発明であって、特許法第29条第1項第1号に該当するということができる。 したがって、請求人の主張及び提出した証拠方法によって、本件発明7に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものである。 (6)被請求人の主張について 被請求人は、上申書(9)において、本件発明7の公然実施の判断について主張しているが、拘束力が及ぶので、そもそもその点に関する被請求人の主張は採用できない。 念のため検討すると、被請求人は、請求人及びX社、Y社、α社、β社、γ社、ε社、δ社が、共同開発をしており、その共同開発に基づく信義則上の秘密保持義務を負っていた旨主張しているが、取引量が少ないことや本件3社会議における●●●●●●の状況の推測の主張があるだけで、被請求人の主張する共同開発の存在を示す証拠、当該共同開発において、そのような義務が生じることを認めるに足る証拠は、被請求人から提出されていない。 また、被請求人は、請求人及びX社、Y社、α社、β社、γ社、ε社、δ社が信義則上の秘密保持義務を有していたとして、請求人のグループが別の多形体Bの製造方法を開発していてグループ内で秘匿している状況では、契約上の秘密保持義務が生じている請求人以外にも秘密保持義務が生じる旨主張しているが、請求人の多形体Bの製造方法は上述のとおり、被請求人とは別の製造方法によるものであって、請求人が独自に開発した製造方法によって製造したものであるから、請求人以外にも秘密保持義務が生じる根拠はなく、そのことを裏付ける証拠も被請求人から提出されていない。 したがって、被請求人の主張を採用することはできない。 (7)無効理由4のまとめ 以上のとおり、本件発明7に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり特許法第123条第1項第2号に該当し、無効理由4は理由がある。 なお、請求人は弁駁書において、本件発明8及び9についての審判請求書で主張していない理由に関して、職権審理するべきことを主張しているが、職権審理の発動は合議体の裁量であり、審理を補完する程度にとどめるべきものであり、請求人の主張は、具体的証拠を挙げてなされたものともいえないため行わないこととする。 第8 むすび 以上検討したように、本件発明7は、無効理由4により無効とすべきであり、本件発明1~4,6,8,9は、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、無効とすることはできない。 本件発明5,10は、訂正により削除されているので、審判請求の対象が存在せず、本件発明5,10に係る審判請求は却下すべきである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その10分の7を請求人の負担とし、10分の3を被請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2013-800029

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決33件(大阪ガスケミカル 株式会社、田岡化学工業 株式会社)
  • 2026-700279異議申立 / 2026-07-17 / 維持PFAS除去材、吸着フィルター、浄水器カートリッジ、浄水器および水浄化設備
    同じ当事者: 大阪ガスケミカル 株式会社
  • 2023-008676拒絶査定不服審判 / 2025-12-18 / 原査定取消(特許/登録すべき)繊維強化加硫ゴム組成物およびその製造方法
    同じ当事者: 大阪ガスケミカル 株式会社
  • 2024-700738異議申立 / 2025-03-21 / 維持活性炭
    同じ当事者: 大阪ガスケミカル 株式会社
  • 2023-001819拒絶査定不服審判 / 2024-09-03 / 原査定取消(特許/登録すべき)ゴム組成物およびその製造方法
    同じ当事者: 大阪ガスケミカル 株式会社
  • 2022-017486拒絶査定不服審判 / 2024-07-22 / 原査定取消(特許/登録すべき)フルオレン化合物およびその製造方法
    同じ当事者: 大阪ガスケミカル 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)593件(111・C07C、112・C07C、121・C07C ほか)
  • 2017-800096無効審判 / 2021-06-21 / 請求不成立ビマトプロストの結晶およびその製造方法と用途
    共通の審決分類: 112・C07C、121・C07C、536・C07C、537・C07C
  • 2022-700352異議申立 / 2023-10-06 / 訂正認容1,3-ブチレングリコール製品
    共通の審決分類: 112・C07C、121・C07C、536・C07C、537・C07C
  • 2021-701213異議申立 / 2022-03-28 / 維持1,3-ブチレングリコール製品
    共通の審決分類: 112・C07C、121・C07C、536・C07C、537・C07C
  • 2017-010920拒絶査定不服審判 / 2019-10-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)ヒストンアセチル基転移酵素モジュレーターおよびその使用
    共通の審決分類: 112・C07C、121・C07C、536・C07C、537・C07C
  • 2016-014831拒絶査定不服審判 / 2017-10-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)シワ改善剤
    共通の審決分類: 112・C07C、121・C07C、536・C07C、537・C07C

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存