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特許異議申立

2022-700352

1,3-ブチレングリコール製品

審判番号
2022-700352
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-095266
登録番号
6979544
請求日
2022年04月26日
審決日
2023年10月06日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ダイセル
  • 【権利者代理人】弁理士法人G-chemical
  • 【異議申立人】平居 博美
審判長/審判官
  • 審判長 木村 敏康
  • 審判官 関 美祝
  • 審判官 冨永 保
分類
P1651.851-YAA(C07C) / P1651.537-YAA(C07C) / P1651.536-YAA(C07C) / P1651.112-YAA(C07C) / P1651.113-YAA(C07C) / P1651.121-YAA(C07C) / P1651.161-YAA(C07C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第41条第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6979544号発明「1,3-ブチレングリコール製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6979544号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第6979544号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6979544号の請求項1~10に係る特許(以下「本件特許」ということがある。)についての出願は、令和2年1月7日を出願日とする特願2020-1084号の一部を、令和3年6月7日に新たな特許出願としたものであって、令和3年11月17日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月15日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の請求項1~10について、令和4年4月26日に特許異議申立人 平居 博美(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和4年 8月22日付け 取消理由通知 同年10月12日 面接(特許権者) 同年10月24日 意見書の提出(特許権者) 同年11月25日 上申書の提出(申立人) 同年11月30日 手続補正書の提出(特許権者) 令和5年 1月16日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年 同月31日 応対記録(特許権者:日付は初回応対日) 同年 3月22日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年 4月17日 手続補正書(特許権者:補正対象書類名 意 見書) 同年 5月 8日付け 訂正拒絶理由通知 同年 6月12日 意見書・手続補正書の提出(特許権者) 同年 同月19日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 7月21日 意見書の提出(申立人) 同年 9月11日 上申書の提出(特許権者) 同年10月 2日 面接(特許権者) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年6月12日付けの手続補正書により補正された同年3月22日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、「特許第6979544号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。 訂正事項1 請求項1の 「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、600ppm以下であり」 との記載を、 「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下であり」 に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2~10についても同様に訂正する。 2 一群の請求項について 本件訂正に係る訂正前の請求項1~10について、請求項2~10は直接又は間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~10に対応する訂正後の請求項1~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項についてされたものである。 3 本件訂正の適否 訂正事項1は、本件特許明細書の【0083】の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率は130ppmであった。」との記載に基づいて、請求項1に記載された「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率」の下限を、訂正前の「0ppmを超え」から、訂正後の「130ppm以上」に改めて減縮するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の範囲に記載した事項の範囲内において、特許請求の範囲の減縮を目的として訂正するものに該当する。そして、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮のみを目的とするものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、かつ、同条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 4 本件訂正についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正後の本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に「本件発明1」などといい、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、 1,3-ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、 1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、 相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下であり、 前記の相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む、1,3-ブチレングリコール製品。 (ガスクロマトグラフィー分析の条件) 分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm) 昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。 試料導入温度:250℃ キャリアガス:ヘリウム カラムのガス流量:1mL/分 検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃ 【請求項2】 さらに、相対保持時間が2.3~2.4の範囲に現れるピークの面積率が150ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の1,3-ブチレングリコール製品。 【請求項3】 さらに、相対保持時間が1.35~1.45の範囲に現れるピークの面積率が10ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の1,3-ブチレングリコール製品。 【請求項4】 さらに、相対保持時間が1.35~1.45の範囲に現れるピークの面積率が10ppm以下であることを特徴とする請求項2に記載の1,3-ブチレングリコール製品。 【請求項5】 空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが40以下である請求項1~4の何れか1項に記載の1,3-ブチレングリコール製品。 【請求項6】 90重量%水溶液を100℃で1週間保持した後の酸濃度(酢酸換算)が0.0015重量%以下である請求項1~5の何れか1項に記載の1,3-ブチレングリコール製品。 【請求項7】 1,3-ブチレングリコール製品における1,3-ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である請求項1~6の何れか1項に記載の1,3-ブチレングリコール製品。 【請求項8】 請求項1~7の何れか1項に記載の1,3-ブチレングリコール製品からなる保湿剤。 【請求項9】 請求項1~7の何れか1項に記載の1,3-ブチレングリコール製品を添加してなる保湿剤。 【請求項10】 請求項1~7の何れか1項に記載の1,3-ブチレングリコール製品を添加してなる化粧料。」 第4 取消理由通知の概要 1 当審合議体が通知した取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)の概要 当審合議体が令和4年8月22日付け取消理由通知書及び令和5年1月16日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 [理由1](明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。 よって、本件発明1~10に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。 [理由2](実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 よって、本件発明1~10に係る特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してされたものである。 第5 甲各号証及び乙各号証とそれらの記載事項 1 甲各号証 申立人が提出した証拠方法は、下記のとおりである。 記 甲第1号証:genomatica社、BRONTIDE、安全データシート、発行日:2018年2月2日、改訂日:2020年8月18日 甲第2号証:実験成績証明書、提出者 平居 博美、2022年4月22日 甲第3号証:高級アルコール工業株式会社、ハイシュガーケインBGの安全データシート、作成日:2007年4月23日、改訂日:2017年5月1日 甲第4号証:高級アルコール工業株式会社、ハイシュガーケインBGのカタログ、2007年6月1日(HAISUGARCANE BG_F1)、2011年12月1日(HAISUGARCANE BG_F6)、インターネット<URL:https://www.kak.co.jp/mirai_lab/assets/pdf/products_03_04.pdf> 甲第5号証:特表2012-525158号公報 甲第6号証:特開2016-63823号公報 甲第7号証:特開2018-148891号公報 甲第8号証:国際公開第00/07969号 甲第9号証:特開2001-213825号公報 甲第10号証:国際公開第2021/131752号 甲第11号証:特開2001-288131号公報 甲第12号証:特開2001-213824号公報 甲第13号証:化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典1 縮刷版」、共立出版株式会社、昭和46年2月5日縮刷版第11刷発行、p.904 甲第14号証:編集代表 吉村壽次、「化学辞典(第2版)[小型版]」、森北出版株式会社、2012年11月15日第2版小型版第1刷発行、p.561 甲第15号証:社団法人日本化学会編、「第2版 標準化学用語辞典」、丸善株式会社、平成17年3月31日発行、p.277 甲第16号証:特表2019-500341号公報 甲第17号証:特開2017-61665号公報 甲第18号証:特開2014-227464号公報 甲第19号証:特開2010-209002号公報 甲第20号証:厚生労働省、職場のあんぜんサイト、安全データシート、パラアルデヒド、作成日:2009年3月30日、出力日2023年7月12日、インターネット<URL:https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/123-63-7.html> 甲第1号証~甲第12号証は、特許異議申立書に添付して提出され、甲第13号証~甲第20号証は、令和5年7月21日付けの意見書に添付して提出されたものである。 以下、甲第1号証~甲第20号証を「甲1」~「甲20」ということがある。 2 甲各号証の記載事項 (1)甲1の記載事項(翻訳文で示す。) 甲1には以下の事項が記載されている。 甲1a)甲1は、genomatica社のBRONTIDEの安全データシートであり、甲1には、発行日が2018年2月2日であり、改訂日が2020年8月18日であること、BRONTIDEの化学名は1,3-ブチレングリコールであることが記載されている(1頁1~9行)。 (2)甲2の記載事項 甲2には以下の事項が記載されている。 甲2a)「 [図:0001405777000001.jpg] [図:0001405777000002.jpg] [図:0001405777000003.jpg] [図:0001405777000004.jpg] [図:0001405777000005.jpg] [図:0001405777000006.jpg] [図:0001405777000007.jpg] [図:0001405777000008.jpg] 」 (3)甲3の記載事項 甲3には以下の事項が記載されている。 甲3a)「 [図:0001405777000009.jpg] ・・・ [図:0001405777000010.jpg] 」(1~2頁) (4)甲4の記載事項 甲4には以下の事項が記載されている。 甲4a)「 [図:0001405777000011.jpg] 」(1頁) 甲4b)「●植物由来 1,3-ブチレングリコール(ハイシュガーケイン BG)」(2頁2~3行) (5)甲5の記載事項 甲5には以下の事項が記載されている。 甲5a)「【請求項1】 1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)を産生するのに十分な量で発現する1,3-BDO経路酵素をコードする少なくとも1つの外来性核酸を含む1,3-BDO経路を有する微生物を含み、該1,3-BDO経路が 2-アミノ-4-ケトペンタノアート(AKP)チオラーゼ、・・・3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素、・・・からなる群から選択される酵素を含む、非天然微生物。」 甲5b)「【0002】 本発明は一般に、有機化合物を産生することのできる生合成過程及び生物に関する。より具体的には、本発明は、有用化学物質1,3-ブタンジオールを産生することのできる非天然生物に関する。」 (6)甲6の記載事項 甲6には以下の事項が記載されている。 甲6a)「【請求項1】 1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)を産生するのに十分な量で発現する1,3-BDO経路酵素をコードする少なくとも1つの外来性核酸を含む1,3-BDO経路を有する微生物を含み、該1,3-BDO経路が 2-アミノ-4-ケトペンタノアート(AKP)チオラーゼ、・・・3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素、・・・からなる群から選択される酵素を含む、非天然微生物。」 甲6b)「【0002】 本発明は一般に、有機化合物を産生することのできる生合成過程及び生物に関する。より具体的には、本発明は、有用化学物質1,3-ブタンジオールを産生することのできる非天然生物に関する。」 (7)甲7の記載事項 甲7には以下の事項が記載されている。 甲7a)「【請求項1】 1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)経路を有する非天然大腸菌であって、1,3-BDOを産生するのに十分な量で発現する1,3-BDO経路酵素を各々コードする少なくとも4つの外来性核酸を含み、該1,3-BDO経路酵素が、4-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ、クロトナーゼ、3-ヒドロキシブチリル-CoA還元酵素(アルデヒド形成)、及び3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素である、前記非天然大腸菌。」 (8)甲8の記載事項 甲8には以下の事項が記載されている。 甲8a)「特に近年、化粧品業界では無毒、無刺激の1,3-ブチレングリコールが保湿剤として優れた性質を有するため、その需要を大きく伸ばしており、無臭のブチレングリコールは化粧品グレードとして有用である。」(1頁15~17行) 甲8b)「したがって、本発明は、臭気が無く、経時変化の少ない高純度1,3-ブチレングリコ一ル及びその製造方法を提供することを目的としている。」(2頁6~7行) 甲8c)「第2図は1,3-ブチレングリコールの特定条件(実施例の項に詳述する。)下のHPLC分析(測定波長210nm)によるチャートを示す。図2-1は実施例1の製品、図2-2は実施例2の製品、図2-3は比較例1の製品に関するチャートである。横軸は溶出時間(ピークがある場合にはその保持時間が数字で示されており、単位は分である。)、縦軸はミリ吸光度(mAbs)である。 1,3-ブチレングリコールは紫外部に吸収を殆ど持たないためにピークは極めて小さいが、その保持時間は図2-1では5.5分付近、図2-2では5.4分付近、図2-3では5.4分付近に現れる。 本発明で問題にする不純物は、その保持時間が20~30分のものであり、品の悪い製品の場合には図2-3に示すように、23.5分、25.4分、26.4分、27.7分付近に大きなピークが現れ、即ち吸光度が大きい。品質のかなり良い場合には図2-2に示すように、23.4分、26.3分付近に小さなピーク(吸光度0.01以下)しか現れない。品質が非常に良い場合には図2-1に示すように、20~30分の間にはピークが現れない(吸光度0.005以下)。」(8頁下から4行~9頁10行) 甲8d)「[実施例1] 第1図に示されるフローシートにしたがって本発明の方法を実施例に基づいて説明する。 原料としてアセトアルドール100部、水素6.5部を液相水素還元用反応器(図示せず)に仕込み、触媒としてラネーニッケルを3.5部加え、該反応器を温度125~135℃、圧力150kg/cm2に保持して液相水素還元を行ったた。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、アルコール類を除去して粗1,3-ブチレングリコール(A)を得た。 粗1,3-ブチレングリコール(A)を第1図に示す脱水塔1-1に仕込んだ。脱水塔では仕込み液量100部に対して塔頂より水を抜き出し、還流水として真水15部を加え、圧力50torrで蒸留塔底部より水分0.5重量%以下の粗1,3-ブチレングリコールを得た。 脱水された粗1,3-ブチレングリコールは次に、脱塩塔1-2に仕込まれた。ここでは仕込液量100部に対して蒸発残分として、塩、高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が底部より5部排出された。塔頂からは1,3-ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部が95部留出された。 脱塩塔1-2より留出された1,3-ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部は、脱高沸点物蒸留塔1-3に仕込まれ、高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が底部より20部排出された。塔頂からは低沸点物を含む粗1,3-ブチレングリコール(CR)が80部留出され、アルカリ反応器1-4に仕込まれた。この際仕込液に対して苛性ソーダ濃度が0.2重量%となるように10重量%苛性ソーダ水溶液を添加した。アルカリ反応器での反応温度を120℃に維持して、滞留時間20分で反応を行った。 反応器を出た反応粗液は脱アルカリ塔1-5へ仕込まれた。ここでは仕込液量100部に対して、苛性ソーダと高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が塔底より10部排出された。塔頂からは1,3-ブチレングリコール及び低沸点物が90部留出され、次の製品塔へ仕込まれた。製品蒸留塔1-6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部が10重量%留出され、塔底からは製品1,3-ブチレングリコールが取り出された。 製造直後の1,3-ブチレングリコールは、臭気評点は3であり、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.001であり、HPLC分析において、相対保持時間が4.0~5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.005以下であった。 この1,3-ブチレングリコールを用いて40℃での経時変化試験を行ったところ、1ヶ月後の臭気評点は3、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.001と変化が無かった。 3ヶ月後においても所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.002と微増して若干微量不純物含有量が増加したが、HPLC分析の相対保持時間が4.0~5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.005以下であり、臭気評価は3であり依然として無臭であった。結果を表1に示す。」(11頁2行~12頁16行) 甲8e)「[比較例1] 脱高沸点物蒸留塔1-3までは実施例1と同様な条件で運転を行い、脱高沸点物蒸留塔1-3の塔頂から1,3-ブチレングリコール及び低沸点物を留出させた。留出液はそのまま製品蒸留塔へ仕込まれた。製品蒸留塔1-6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部が10重量%留出された。塔底からは製品1,3-ブチレングリコールが取り出された。 製造直後の1,3-ブチレングリコールの臭気評点は3であり、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.131であり、HPLC分析で、相対保持時間が4.0~5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.05以上であった。 この1,3-ブチレングリコールを用いて40℃での経時変化試験を行ったところ、1ヶ月後の臭気評点は5、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.160であった。3ヶ月後には臭気評点は10、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.193となり、HPLC分析の相対保持時間が4.0~5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.05以上であり、微臭が発生していた。結果を表1に示す。」(12頁下から6行~13頁11行) 甲8f)「 [図:0001405777000012.jpg] 」(第2図) (9)甲9の記載事項 甲9には以下の事項が記載されている。 甲9a)「【0002】 【従来の技術】・・・特に近年、化粧品業界では無毒、無刺激の1,3-ブチレングリコールが保湿剤として優れた性質を有するため、その需要を大きく伸ばしている。特に無臭のブチレングリコールは化粧品グレードとして有用である。」 甲9b)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、製造3ヶ月後においても臭気の著しく低減された、経時変化の少ない高純度1,3-ブチレングリコールを提供することである。」 甲9c)「【0006】 【発明の実施の形態】・・・上記水添原料は、通常未反応アセトアルデヒドを縮合工程にリサイクルするため、アセトアルデヒドの少なくとも一部を留去したものであるが、残存アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、他の少量のアルデヒド成分、低沸点物、アルデヒドダイマーやトリマー等の高沸点物、水分等を含有している。水添原料は、10~20重量%の水分を含んでいるものが使用できる。」 甲9d)「【0023】[実施例1~2]図-1に示されるフローシートにしたがって本発明の方法を実施例に基づいて説明する。原料としてアセトアルドール100部、水素を6.5部反応器(図示せず)に仕込んだ。反応器を温度125~135℃、圧力150Kg/cm2に保持した。触媒としてラネーニッケルを3.5部加えた。反応器から取り出した反応粗液は触媒を分離したのち、苛性ソーダで中和された。その後、アルコール類を除去した粗1,3-ブチレングリコールを図-1に示す脱水塔1-1に仕込んだ。脱水塔では仕込み液量100部に対して塔頂より水15部を加え、圧力50torrで蒸留塔底部より水分0.5重量%以下の粗1,3-ブチレングリコールを得た。脱水された粗1,3-ブチレングリコールは次に、脱塩塔1-2に仕込まれた。ここでは仕込液量100部に対して蒸発残分として、塩、高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が底部より5部排出された。塔頂からは1,3-ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部が95部留出された。 【0024】脱塩塔1-2より留出された1,3-ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部は、脱高沸物蒸留塔1-3に仕込まれ、高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が底部より20部排出された。塔頂からは1,3-ブチレングリコール及び低沸点物が80部留出され、アルカリ反応器1-4に仕込まれた。この際仕込液に対して苛性ソーダ濃度が0.2重量%となるように10重量%苛性ソーダ水溶液を添加した。アルカリ反応器での反応温度を120℃に維持して、滞留時間20分反応を行った(実施例1)。実施例2ではアルカリ反応器での反応温度100℃、滞留時間30分とした以外は実施例1と同じに行った。アルカリ反応器を出た反応粗液は脱アルカリ塔1-5へ仕込まれた。ここでは仕込液量100部に対して、アルカリと高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が塔底より10部排出された。塔頂からは1,3-ブチレングリコール及び低沸点物が90部留出され、次の製品塔へ仕込まれた。製品蒸留塔1-6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部が10重量%留出された。塔底からは製品1,3-ブチレングリコールが取り出された。」 甲9e)「【0026】 【表1】 [図:0001405777000013.jpg] 」 (10)甲10の記載事項 甲10には以下の事項が記載されている。 甲10a)「[0002]・・・また、1,3-ブタンジオールは、生体毒性の低さ及び安定性から、化粧品原料にも用いられている。1,3-ブタンジオールは、化粧品原料としては、保湿効果、抗菌性、べたつきが少ない等の特徴を有しているため、例えば、シャンプー、乳液、保湿剤等の幅広い製品の化粧品原料として用いられている。中でも、保湿剤等の化粧料用途の場合には、臭気の少ない1,3-ブタンジオールが求められている。」 甲10b)「[0013]・・・粗1,3-ブタンジオールの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法(特公平3-80139号公報、特開平7-258129号公報等参照)により製造することができる。」 甲10c)「[0034] 化粧品原料用となりうる1,3-ブタンジオールとするための粗1,3-ブタンジオールの精製方法については、特には限定さるものではない。例えば、公知の方法(特公平3-80139号公報、特開平7-258129号公報等参照)により、アセトアルドールの水素還元によって得られる反応生成物から、副生成物であるエタノールを蒸留により除く方法や、エタノールを除去した後の留分に、更に1つ以上の公知の精製工程を実施する方法等が挙げられ、公知の精製工程は繰り返し実施してもよい。」 甲10d)「[0035] 本実施形態の1,3-ブタンジオールに含まれる、化学式(A)で示される臭気物質Aの含有量は、1wtppm以上、10wtppm以下であり、且つ、化学式(B)で示される臭気物質Bの含有量は4wtppm以上、25wtppm以下である。 ・・・ [0036][化6] [図:0001405777000014.jpg] [0037][化7] [図:0001405777000015.jpg] 」 甲10e)「実施例 [0039] 以下において本発明の実施の形態を具体的な形で記載するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。 ・・・ [0041] 2.GC-MS分析: サンプル調整方法:サンプルの1,3-ブタンジオール60gに、蒸留水240g加えた後、シクロヘキサン90gを加えて振盪し、有機物をシクロヘキサンへ抽出した。水相とシクロヘキサン相とを分離し、シクロヘキサン相、約90gを、100~150torrの減圧下、30~40℃の条件にて、エバポレータで0.2gまで濃縮し、GC-MS分析用サンプルとした。 GC分析装置:Agilent社 7890B 質量分析計:JEOL社 四重極型MS JMS-T100GCV イオン化法:EI+、FI+ 分析カラム:DB-1MS(60m、0.32mm、0.25μm)Agilent社 カラム昇温条件:50℃(2分)→5℃/分→250℃(10分) キャリアガス:He スプリット比:10:1 試料注入量:2μL 内標物質 :キシレン [0042] 臭気物質Aに由来するピークは、保持時間(r.t)が39.4~40.1分に現れるピーク群(光学異性体により、4ピーク)である。その積算面積と、臭気物質Aの標準物質と内標物質とから作成した検量線を用いて、臭気物質Aの含有量を定量した。 臭気物質Bに由来するピークは、保持時間(r.t)が33.5~34.0分に現れるピーク群(光学異性体により、2ピーク)である。臭気物質Aと臭気物質Bのファクターが等しいと仮定して、その積算面積と、臭気物質Aの標準物質と内標物質とから作成した検量線を用いて、臭気物質Bの含有量を定量した。 ・・・ [0043] <比較例1> 120mLのSUS316L製オートクレーブに、アセトアルドール類としてパラアルドール10g、エタノール40g、スポンジニッケル触媒(日興リカ株式会社製、R-201)1gを加えた。オートクレーブを水素ガスにて8MPaGに加圧し、撹拌を開始した。30℃から120℃まで1℃/分の速度で昇温し、120℃に達した瞬間にオートクレーブをただちに冷却して反応を停止させて、1,3-ブタンジオールを得た。反応中は、圧力が7MPaGまで低下するごとに、圧力8MPaGまで水素ガスを供給した。触媒を濾別した後、反応液を理論段数10段以上の蒸留塔を用いて、100torr以下の減圧下、150℃以下で蒸留することにより、エタノールを低沸成分として分離して、粗1,3-ブタンジオールを得た。水素化反応の成績は、パラアルドール転化率97.5%、1,3-ブタンジオール選択率96.5%であった。粗1,3-ブタンジオールの、臭気物質Aの濃度は16wtppm、臭気物質Bの濃度は58wtppmであった。臭気強度は2であった。 ・・・ [0048] <比較例4> 比較例1で得られた粗1,3-ブタンジオール20質量部、水80質量部、シクロヘキサノン30質量部を混合し、水相に1,3-ブタンジオールを溶解させた。シクロヘキサノン相に不純物を抽出した後、水相とシクロヘキサノン相とを分離した。水相を、理論段数5段以上の蒸留塔を用いて、100torr以下の減圧下、150℃以下で蒸留して低沸成分として水を留去させることにより、1,3-ブタンジオールを塔底より得た。当該1,3-ブタンジオールの、臭気物質Aの濃度は0wtppm、臭気物質Bの濃度は0wtppmであり、臭気強度は0であった。 [0049] 表1に、評価結果を示す。この結果から、臭気物質Aと臭気物質Bの両方が特定の含有量範囲内でなければ、臭気が消えないことがわかる。 また、精製度合いを高めれば、比較例4のように、臭気物質A及び臭気物質Bをほとんど除去することは可能であるが、製造コストがかさむため、工業的生産には不利である。 [0050][表1] [図:0001405777000016.jpg] 」 甲10f)「[図1] [図:0001405777000017.jpg] 」 (11)甲11の記載事項 甲11には以下の事項が記載されている。 甲11a)「【0024】(実施例1)アセトアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液の存在下に縮合して得られたパラアセトアルドール反応液を中和処理した後、未反応アセトアルデヒドの一部を回収した後の反応粗液を、下記性能のラネーニッケルの鹸濁した連続懸濁気泡塔に供給し、下記反応条件で水添反応を行い、ラネーニッケルを濾別して、水添反応粗液を得た。」 (12)甲12の記載事項 甲12には以下の事項が記載されている。 甲12a)「【0018】(実施例1)アセトアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液の存在下に縮合して得られたパラアセトアルドール反応液を中和処理した後、未反応アセトアルデヒドを分離除去して得られたパラアセトアルドール液を、水添触媒であるラネーニッケルの鹸濁した連続懸濁気泡塔に供給し、下記反応条件で水添反応を行い、ラネーニッケルを濾別して、水添反応粗液を得た。」 (13)甲13の記載事項 甲13には以下の事項が記載されている。 甲13a)「三量体[trimer] 【1】二重結合,三重結合のような不飽和結合をもつ分子が3分子結合して生ずる化合物で,分子量は単量体の3倍となる.たとえば,パラアルデヒドはアセトアルデヒドの三量体である(図).・・・ [図:0001405777000018.jpg] 」(904頁、「三量体」の項) (14)甲14の記載事項 甲14には以下の事項が記載されている。 甲14a)「三量体[trimer] 【I】不飽和結合をもつ分子が3分子結合したもので,分子量は単量体の3倍になるものをいう.たとえば,アセトアルデヒドの三量体はパラアルデヒドで,これらには平衡関係がある.・・・ [図:0001405777000019.jpg] 」(561頁、「三量体」の項) (15)甲15の記載事項 甲15には以下の事項が記載されている。 甲15a)「三量体○文(原文は○の中に文)[trimer] 低分子量の化合物3分子が結合した生成物で,もとの3倍の分子量をもつ化合物.」(277頁、「三量体」の項) (16)甲16の記載事項 甲16には以下の事項が記載されている。 甲16a)「【0077】 ・・・アセトアルデヒドの三量体パラアルデヒドへのオリゴマー化を初期に急速に触媒することが観察された。」 (17)甲17の記載事項 甲17には以下の事項が記載されている。 甲17a)「【0032】 ・・・化合物(3)の多量体としては、例えばパラアルデヒド(アセトアルデヒドの三量体)が挙げられる。」 (18)甲18の記載事項 甲18には以下の事項が記載されている。 甲18a)「【0043】 ・・・パラアルデヒド(アセトアルデヒドの三量体)・・・ 【0044】 ・・・パラアルデヒド(アセトアルデヒドの三量体)」 (19)甲19の記載事項 甲19には以下の事項が記載されている。 甲19a)「【0026】 ・・・パラアルデヒド(アセトアルデヒドの三量体)・・・」 (20)甲20の記載事項 甲20には以下の事項が記載されている。 甲20a)「3.組成及び成分情報 化学物質 化学名又は一般名 パラアルデヒド 別名 ・・・アセトアルデヒド トリマー(Acetaldehyde,trimer)」(「3.組成及び成分情報」の項) 3 乙各号証 特許権者が提出した証拠方法は、下記のとおりである。 記 乙第1号証:1,3-ブチレングリコール製品のGC/MS(実験成績証明書)、提出者 梶川 泰照、2022年10月18日 乙第2号証:1,3-ブチレングリコールの製造過程(実験成績証明書)、提出者 梶川 泰照、2022年10月18日 乙第3号証:米国出願公開第2009/0112026号明細書 乙第4号証:Journal of Molecular Catalysis A:Chemical,1998,Vol.132,p.189~201 乙第5号証:国際公開第00/07969号 乙第6号証:1,3-ブチレングリコール製品等の分析(実験成績証明書)、提出者 梶川 泰照、2023年3月22日 乙第7号証:1,3-ブチレングリコールとその副産物の形成スキーム(説明資料)、提出者 梶川 泰照、2023年3月22日 乙第8号証:第4版 ボルハルト・ショアー 現代有機化学、訳者代表 村橋 俊一、株式会社化学同人、2004年7月1日第4版第1刷発行、p.858~867 乙第8-1号証:乙第8号証の奥付 乙第9号証:特開2009-114135号公報 乙第10号証:J.Org.Chem.,2002,Vol.67,No.1,p.301~303 乙第10-1号証:乙第10号証の発行日が記載されたインターネットのページの印刷物 乙第11号証:A MECHANISTIC UNDERSTANDING OF LIGHT OLEFINS SELECTIVITY IN METHANOL-TO-HYDROCARBONS CONVERSION ON MFI,2016,Rachit Khare 乙第12号証:国際公開第2016/066873号 乙第13号証:GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS,2007,VOL.34,L21812 乙第14号証:(4-3)及び(4-6)で示される化合物の形成スキームの説明、提出者 梶川 泰照、2023年3月22日 乙第15号証:本件明細書の図2(実施例1)の説明、提出者 梶川 泰照、2023年3月22日 乙第16号証:異議申立人による上申書についての技術説明、提出者 梶川 泰照、2023年3月22日 乙第1号証~乙第5号証は、令和4年10月24日付けの意見書に添付して提出され、乙第6号証~乙第16号証は、令和5年3月22日付けの意見書に添付して(ただし、乙第8-1号証及び乙第10-1号証は、令和5年4月17日付けの手続補正書に添付して)提出されたものである。 以下、乙第1号証~乙第16号証を「乙1」~「乙16」ということがある。 4 乙各号証の記載事項 (1)乙1の記載事項 乙1には以下の事項が記載されている。 乙1a)「 [図:0001405777000020.jpg] [図:0001405777000021.jpg] [図:0001405777000022.jpg] 」 (2)乙2の記載事項 乙2には以下の事項が記載されている。 乙2a)「 [図:0001405777000023.jpg] [図:0001405777000024.jpg] 」 (3)乙3の記載事項(翻訳文で示す。) 乙3には以下の事項が記載されている。 乙3a)「[0002] アルデヒドおよびケトンは、ヒドロキシアルデヒド、ポリヒドロキシアルデヒド、ヒドロキシケトンおよび/またはポリヒドロキシケトンに化学的に変換されるが、中性イオン種および/または塩基を用いたアルドール縮合プロセスでは、これらが広範囲に生成する。」 乙3b)「[0009] 本発明の別の目的は、アセトアルデヒドの反応物が、0.0005g/mLの可溶性塩基を使用すると3-ヒドロキシブチルアルデヒド(C4)が、0.004g/mLの可溶性塩基を使用すると3-ヒドロキシブチルアルデヒドおよび3,5-ジヒドロキシヘキセルアルデヒド(C4およびC6)が、・・・生成し、」 乙3c)「[0011] アルデヒドからヒドロキシアルデヒドおよび/またはポリヒドロキシアルデヒドを含む生成物への化学変換、およびケトンからヒドロキシケトンおよび/または制御された炭素-炭素鎖長のポリヒドロキシケトンを含む生成物への化学変換は、大気圧下で、選択された濃度の可溶性無機塩基を使用して、10分以内に完了する。 アセトアルデヒドは、・・・0.0005g/mLの可溶性塩基を使用して3-ヒドロキシブチルアルデヒド(C4)を、0.004g/mLの可溶性無機塩基を使用して3-ヒドロキシブチルアルデヒドおよび3,5-ジヒドロキシヘキセルアルデヒド(C4およびC6)を、・・・製造する。」 乙3d)「実施例4 [0016] 5℃から10℃の温度に冷却された0.041グラムの水酸化ナトリウムを含有する急速に撹拌された10mLの水溶液に、約2mL/分の速度で6.2グラムのアセトアルデヒドを注入した。透明な溶液が形成され、添加が完了してから2分後に反応物のpHを中和し、C4~C6を含む無色の有機生成物が形成された。 ・・・ 実施例6 [0018] 5℃から10℃の温度に冷却された0.090グラムの水酸化ナトリウムを含有する急速に攪拌された10mLの水溶液に、約6mL/分の速度で3.4グラムのアセトアルデヒドを注入した。透明な溶液が形成され、添加が完了してから2分後に反応物のpHを中和し、C4~C8を含む無色の有機生成物が形成された。」 (4)乙4の記載事項(翻訳文で示す。) 乙4には以下の事項が記載されている。 乙4a)「オレフィンのハイドロホルミル化反応条件下での、アルデヒドのオリゴマー化反応に関する、Co2(CO)6L2錯体(L=一酸化炭素、ホスフィン)の触媒活性について検討した。基質の種類、ホスフィン配位子、および反応温度の影響が確認された。得られた生成物は、β-ヒドロキシアルデヒド、α,β-不飽和アルデヒド、およびβ-ヒドロキシエステルであった。一方ケトンのオリゴマー化に対しては、コバルト錯体の触媒活性は非常に低いことが分かった。このことよりアルデヒドのオリゴマー化は、アシルコバルト中間体が関与するメカニズムで進行すると考えられる。」(189頁、要約) 乙4b)「ジコバルトオクタカルボニルまたはそのホスフィン置換誘導体[Co2(CO)6L2(L=一酸化炭素、ホスフィン)]によって触媒されるオレフィンのハイドロホルミル化では、アルデヒドの二量化によるアルドール形成は、通常は少量であるが、その後に脱水と二重結合の水素化が続くことがある[1,2]。場合によっては、アルデヒドの三量体化も報告されている。」(189頁左欄2~10行) 乙4c)「ホスフィン置換コバルトカルボニルによって触媒されるオレフィンのアルデヒドへのハイドロホルミル化と同じ実験条件(150℃、Pco 5 atm、PH2 40 atm) [7]を採用して、アルデヒドの二量化および三量化、すなわちオリゴマー化プロセスについて研究した。[形成される生成物、使用される基質の二量体および三量体は、アルドール、それらの誘導体(α,β-不飽和アルデヒド)およびβ-ヒドロキシエステルであるため、アルドール化の代わりにオリゴマー化という総称を使用する。]」(190頁左欄2~13行) 乙4d)「アルデヒドは最初に二量体化してアルドールを生成し、その後脱水してα,β-不飽和アルデヒドを生成するか、基質の別の分子と反応してβ-ヒドロキシエステルを生成する(スキーム1)。三量体アルドールは、アルドールまたはα,β-不飽和アルデヒドと基質の別の分子との反応によっても形成される。これらの三量体生成物は通常、不飽和アルデヒドである。それらは主にアセトアルデヒドが基質である場合に形成される。」(190頁右欄下から3行~191頁左欄下から3行) 乙4e)「 [図:0001405777000025.jpg] 」(190頁表1) (5)乙5の記載事項 乙5には以下の事項が記載されている。 乙5a)「原料としてアセトアルドール100部、水素6.5部を液相水素還元用反応器(図示せず)に仕込み、触媒としてラネ一ニッケルを3.5部加え、該反応器を温度125~135℃、圧力150kg/cm2に保持して液相水素還元を行ったた。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、アルコール類を除去して粗1,3-ブチレングリコール(A)を得た。」(11頁5~9行) (6)乙6の記載事項 乙6には以下の事項が記載されている。 乙6a)「 [図:0001405777000026.jpg] [図:0001405777000027.jpg] [図:0001405777000028.jpg] [図:0001405777000029.jpg] [図:0001405777000030.jpg] [図:0001405777000031.jpg] [図:0001405777000032.jpg] [図:0001405777000033.jpg] [図:0001405777000034.jpg] [図:0001405777000035.jpg] [図:0001405777000036.jpg] [図:0001405777000037.jpg] 」 (7)乙7の記載事項 乙7には以下の事項が記載されている。 乙7a)「 [図:0001405777000038.jpg] [図:0001405777000039.jpg] 」 (8)乙8の記載事項 乙8には以下の事項が記載されている。 乙8a)「アセトアルデヒドに低温で少量の薄い水酸化ナトリウム水溶液を加えると,二量体である3-ヒドロキシブタナールへの変換が始まる.この化合物は一般にアルドール(・・・)とよばれている.加熱すると,このヒドロキシアルデヒドは脱水して,縮合の最終生成物であるα,β-不飽和アルデヒドのtrans-2-ブテナールに変化する.この反応はアルドール縮合(・・・)の例である. [図:0001405777000040.jpg] 」(859頁7~12行とそれに続く反応式) 乙8b)「18-6 交差アルドール縮合 アルドール縮合を,あるアルデヒドのエノラートと他のアルデヒドのカルボニル炭素の間で行おうとしたらどうなるだろうか.交差アルドール縮合(・・・)といわれるこのような状態では,両方のアルデヒドのエノラートが存在し,そのいずれもがどちらの出発化合物のカルボニル基とも反応することができるので,結果として混合物になる.たとえば,アセトアルデヒドとプロパナールの1:1混合物からは,可能な4種類のアルドール付加生成物がそれぞれ同程度の量ずつ得られる. [図:0001405777000041.jpg] 」(863頁下から8行~864頁) (9)乙9の記載事項 乙9には以下の事項が記載されている。 乙9a)「【0004】 しかしながら、アセトアルデヒドは、求核的なアルデヒドとしても求電子的なアルデヒドとしても反応性が非常に高いため、その反応の制御は困難である。例えば、下記式(I)に示される反応を考えた場合、得られるアルドール体は求電子剤として優れているため、反応式(II)に示されるように、さらにアセトアルデヒドとアルドール反応を起こしてしまう。また、下記式(I)に示される反応で得られるアルドール体は、α位に置換基がないため、反応式(III)に示されるように、触媒と反応してエナミンを生成し、さらにアセトアルデヒドと反応してしまう。実際、非特許文献1においても、アセトアルデヒドに触媒を作用させると、アセトアルデヒドの三量体である5-ヒドロキシ-2-ヘキセナールが得られると報告されている。 【0005】 【化1】 [図:0001405777000042.jpg] 」 (10)乙10の記載事項(翻訳文で示す(反応式を除く。)。) 乙10には以下の事項が記載されている。 乙10a)「本研究では、L-プロリン触媒下におけるアセトアルデヒドの直接的な不斉自己アルドール化反応により、(+)-(5S)-ヒドロキシ-(2E)-ヘキセナール2が57%から90%のeeで得られることが初めて示された。・・・さらに、化合物2の形成メカニズムについて提案されている。」(301頁左欄Abstractの項) 乙10b)「 [図:0001405777000043.jpg] 」(301頁右欄Scheme2) (11)乙11の記載事項(翻訳文で示す(反応式を除く。)。) 乙11には以下の事項が記載されている(Scheme7.1は一部を摘記した。)。 乙11a)「アセトアルデヒドの存在下において、ブレンステッド酸部位でのアセトアルデヒドのアルドール縮合反応(スキーム7.1)により、触媒はより速く失活し、その結果より高級な同族体が形成され、その後閉環して芳香族化合物を形成する119。これらの芳香族化合物は、メチル置換ナフタレンやアントラセンなどの多環式種の前駆体であり、MFIの細孔開口部の直径(~0.55nm)よりも大きい動的直径(1,5-ジメチルナフタレンの場合は0.77nm) 122,123を有している42,43。これらの多環式種はゼオライトの細孔内に閉じ込められ、活性部位をブロックして触媒の失活を引き起こす。アルドール縮合経路を介した芳香族の形成とそれに続く多環式種の形成は、アセトアルデヒド濃度が高いほど促進されるため、図7.3に示されるように触媒の失活が速くなる。 Ramasamy et al.124は、HZSM-5上でエタノール中の7.5wt%アセトアルデヒドの混合物を633K且つ2MPaの供給圧力で反応させることでアセトアルデヒドの存在下で触媒の失活を調査し、アセトアルデヒドの存在下で触媒がより速く失活することを報告した。また、著者らは使用済み触媒の分析から、ナフタレンやアントラセンのような高分子量の多環式種が急速に形成されることも指摘した124。Gayubo et al.125は、HZSM-5上で673Kでの純粋なアセトアルデヒドの反応を調査し、同じく急速な触媒の失活を観察した。彼らは、673Kで4時間反応させた後の使用済み触媒のコークス含有量が4.2~4.7wt%であることを報告している125。 [図:0001405777000044.jpg] スキーム7.1: MFI上のアセトアルデヒド変換のアルドール縮合経路の概略図であり、アルドール縮合、閉環、および脱水反応を介して芳香族化合物が形成されている。これらの芳香族は、その後、芳香族ベースのメチル化/脱アルキル化サイクルを伝播し、軽質オレフィンを形成する。」(116頁1行~117頁Scheme7.1) (12)乙12の記載事項(翻訳文で示す(反応式を除く。)。) 乙12には以下の事項が記載されている。 乙12a)「エタノールから1,3-ブタジエンへの変換は、過去に科学的な出版物にて記載されており、反応スキームには次のステップが含まれることが広く知られている。 a)エタノールの脱水素、 b)アセトアルデヒドのアルドール縮合、 c)α-β-ヒドロキシアルデヒドの脱水、 d)クロトンアルデヒドの還元、および e)クロチルアルコールの脱水。」(2頁19~26行) 乙12b)「 [図:0001405777000045.jpg] スキーム2:エタノールとアセトアルデヒドの反応経路からクロトンアルデヒド、クロチルアルコールなどの副生成物が生成するまでの経路。」(8頁) 乙12c)「これらの混合酸化物は、クロトンアルデヒドとクロチルアルコールを高い変換率と選択率で生成するのに特に効果的である。 -アセトアルデヒドからクロトンアルデヒドへのアルドール二量化を最大化する(スキーム2の反応1aを参照) -エタノールからクロトンアルデヒドへの水素移動を促進してクロチルアルコールを形成する(スキーム2の反応1bを参照)、および -アルドール三量化、アルドール四量化、アセタール化、およびTishchenko縮合によって形成される副生成物を最小限に抑える(スキーム2の反応2、3、及び4をそれぞれ参照)。」(9頁18~26行) (13)乙13の記載事項(翻訳文で示す(図中を除く。)。) 乙13には以下の事項が記載されている。 乙13a)「[3] 最近、硫酸中のカルボニル化合物(アルデヒドおよびケトン)のアルドール縮合により、近紫外および可視光を吸収するオリゴマーが生成され、・・・が示された[・・・]。」(1頁右欄[3]1~6行) 乙13b)「[6] 全ての溶液中で、226nmに吸収を有する、アセトアルデヒドの二量体であるクロトンアルデヒドが形成された(図1a)。・・・これらの生成物は、UVスペクトル(図1)および高分解能質量分析法(HRMS)(図2)との比較により、アセトアルデヒドの三量体である2,4-ヘキサジエナール、およびその四量体である2,4,6-オクタトリエナールであると同定された。」(2頁左欄[6]1~12行) 乙13c)「 [図:0001405777000046.jpg] 図1.(a)硫酸アンモニウム40%wt.中のアセトアルデヒド生成物の吸収スペクトル(ピンク)、および水中のプロリン(緑)、グリシン(黒)、アラニン(赤)、セリン(青)、アルギニン(黄色)(スペクトルは明確にするためにスケーリングされている)。触媒はカラーボックスに表示されている。クロトンアルデヒド(濃い灰色)、2,4-ヘキサジエナール(薄い灰色)、2,4,6-オクタトリエン酸メチルエステル(黒色)のスペクトルとの比較。(b) Reemtsma and These[2005]によって提案された小さなフルボ酸の分子構造。」(2頁、図1) (14)乙14の記載事項 乙14には以下の事項が記載されている。 乙14a)「 [図:0001405777000047.jpg] 」 (15)乙15の記載事項 乙15には以下の事項が記載されている。 乙15a)「 [図:0001405777000048.jpg] [図:0001405777000049.jpg] 」 (16)乙16の記載事項 乙16には以下の事項が記載されている。 乙16a)「 [図:0001405777000050.jpg] [図:0001405777000051.jpg] 」 第6 当審合議体の判断 当審合議体は、本件特許の請求項1~10に係る特許は、当審合議体が通知した取消理由及び申立人が申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 当審合議体が通知した取消理由通知(決定の予告)について (1)理由1(明確性要件)について 令和5年1月16日付けの取消理由通知(決定の予告)で指摘した理由1の概要は、『本件明細書等においては、実施例1で130ppm、比較例1で1010ppmの量で現れている「1.6~1.8の範囲に現れるピーク」に該当する成分として、どのような分子量や化学構造の「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」が含まれているのか明らかにされておらず、・・・請求項1に記載の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」という発明特定事項の意味するところを、当業者が明確に把握できるとはいえない。』というものである。 これに対して、特許権者は、令和5年3月22日付けの意見書の20頁1~4行で『出願人は、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分としての「アセトアルデヒド三量体の水素化物」について、同水素化物が(4-3)で示される化合物を含むこと、及び、(4-6)で示される化合物が含まれ得ることを同定している。』と主張し、 同17頁24行~18頁6行で『乙第6号証にて説明する通り、(4-3)で示される化合物である「2-エチル-1,3-ブタンジオール」を標品Aとして・・・「相対保持時間が1.67」のピーク及び「相対保持時間が1.71」のピークが共に大きくなることが確認された(同号証の第4-1項)。・・・次に、(4-6)で示される化合物である「1,3-ヘキサンジオール」を標品Bとして・・・「相対保持時間が1.75」のピークが大きくなることが確認された(同号証の第5-2項)。』と主張し、 同15頁22行~16頁11行で『乙第4号証の・・・Table.1にはアセトアルデヒドの多量体化について記載されており、形成される化合物として・・・2-1-hydroxyethyl but-2-enal(乙第7号証の(3-3)に相当)」が記載され・・・乙第11号証の117頁、スキーム7.1には・・・アセトアルデヒドの三量体として、3-Hydroxy-4-Hexenal(乙第7号証の(3-6)に相当)が形成されることが記載されている。』と主張する。 そして、本件明細書の【0026】の「上記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたときの相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分については、全ては明らかになっていないが、その主成分は原料(アセトアルデヒド)の三量体の水素化物であると考えられる。」との記載、及び同【0040】には「1,3-ブチレングリコールを製造する場合、アセトアルデヒド、・・・クロトンアルデヒド、・・・の縮合物(例えば、アセトアルデヒドの三量体)、前記縮合物の水素化物、・・・等が副生する。」との記載にあるように、本件明細書には「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分」が「アセトアルデヒドやクロトンアルデヒドの縮合物(例えば、アセトアルデヒドの三量体)の水素化物」であることが記載されている。 してみると、請求項1に記載の「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」は、アセトアルデヒドとクロトンアルデヒドの縮合物である、2-(1-ヒドロキシエチル)ブタン-2-エナール(3-3)と、3-ヒドロキシ-4-ヘキセナール(3-6)という「アセトアルデヒドの三量体」を水素化した、2-エチル-1,3-ブタンジオール(4-3)と、1,3-ヘキサンジオール(4-6)という化学構造が明確なものを意味し、化学構造が不明なもの(化学構造が同定されていないもの)ではないと、当業者は理解する。 したがって、請求項1に記載の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」という発明特定事項の意味するところは、当該「ピークに該当する成分」として「2-エチル-1,3-ブタンジオール(4-3)」及び/又は「1,3-ヘキサンジオール(4-6)」という化学構造が明確な化学物質を含むものとして明確に把握でき、当該「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」の範囲に化学構造が不明なものが含まれないと解されるから、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないとはいえず、当該取消理由通知の理由1に理由があるとはいえない。 (2)理由2(実施可能要件)について 令和5年1月16日付けの取消理由通知(決定の予告)で指摘した理由2の概要は、『請求項1に記載の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」という発明特定事項の技術的な内容を把握できる程度に記載するものではない』、『請求項1の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、600ppm以下」のうち、「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下」以外のものについては、実施可能要件を満たすとは認められない。』というものである。 しかし、上記(1)で述べたとおり、「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」という発明特定事項の意味するところは明確に把握することができる。また、本件訂正により、請求項1に係る発明は「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下」のものに限定されている。したがって、取消理由通知の理由2に理由があるとはいえない。 2 令和5年1月16日付けの取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由1(明確性要件)について ア 申立理由1の概要 申立人が主張する申立理由1(明確性要件)は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許発明1~10は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない(特許法第36条第6項第2号、同法第113条第4号)というものであって(申立書の40頁)、具体的には、以下の(ア)~(エ)の点を主張している。 (ア)当業者であっても本件明細書に記載されたガスクロマトグラフィー分析等の記載に基づき、「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」か否か判断できない。 (イ)そもそも「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」がどのような化合物であるのか一般的に知られていない上に「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」がどのような構造の化合物であるのかについて本件明細書に開示されていない。すなわち、出願時の技術常識から「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」がどのような構造の化合物を指すのか当業者であっても理解できない。 (ウ)「1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、600ppm以下であり、」との発明特定事項について、ピークが検出限界以下であっても相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超えていると判断する(検出限界以下であっても相対保持時間が1.6~1.8の範囲にピークが存在しないとは判断しない)と、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が0ppmであるものと0ppmを超えているものとの区別ができないから、上記発明特定事項は明確ではない。 (エ)本件発明7では、「1,3-ブチレングリコール製品における1,3-ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である」と規定されており「物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当するが、本件発明7には不可能・非実際的事情が存在しておらず、明確性違反である。 イ 判断 (ア)及び(イ)について 上記1(1)で述べたとおり、「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」は明確であり、当業者はその具体的な化合物の化学構造を理解できる。したがって、当業者は本件明細書に記載されたガスクロマトグラフィー分析の記載及び本件特許出願時に周知の分析手法に基づいて、「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」か否かを判断することができるといえるから、(ア)及び(イ)の点に理由はない。 (ウ)について 本件訂正により、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率の下限が130ppmに限定されたから、(ウ)の点に理由はない。 (エ)について 請求項7の「還元体である」との記載は、1,3-ブチレングリコールが、還元された状態にあることを特定するものであり、その物の製造方法を記載するものではないから、(エ)の点に理由はない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由1は理由がない。 (2)申立理由2(公然実施)について ア 申立理由2の概要 申立人が主張する申立理由2(公然実施)は、本件特許発明1、3、4、7~10は、甲1に記載された1,3-ブチレングリコール又は甲1及び技術常識(甲5~甲9)に基づく発明であり、 本件特許発明1、2、7~10は、甲3に記載された1,3-ブチレングリコール又は甲3、甲4及び技術常識(甲5~甲9)に基づく発明である(特許法第29条第1項第2号、同法第113条第2号)というものである(申立書の40~41頁)。 イ 甲1の公然実施について 甲1の安全データシートには、genomatica社の商品名「BRONTIDE」という市販品の化学的名称が「1,3-ブチレングリコール」であることが記載され、その発行日が2018年2月2日であり、その改定日が2020年8月18日であることが記載されているところ(摘記甲1a)、本件特許の出願日(2020年1月7日)は、甲1の発行日の後であり、甲1の改訂日の前である。 そして、甲2には、「Genomatica社製Brontide」の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率(ppm)」が「5.12」である旨の記載がなされている(摘記甲2a)。 してみると、本件発明1と甲1の市販品は、後者が「1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき」の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率」が「130ppm以上、600ppm以下」の範囲外の「5.12ppm」にあるという点において実質的に相違する。 したがって、本件発明1は、甲1の市販品の発明と実質的に相違するから、特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえない。 なお、甲2の試験で用いられた「Genomatica社製Brontide」については、その入手時期や製造番号などの情報が明らかにされておらず、甲1の安全データシートに記載された商品名「BRONTIDE」という市販品の「1,3-ブチレングリコール」の純度などの仕様スペックも、甲1の改定日(2020年8月18日)に少なくとも変更されている蓋然性が高いことからも、本件発明1が特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえない。 ウ 甲3の公然実施について 甲3の安全データシートには、「作成日:2007年04月23日 改訂日:2017年05月01日・・・製品名:ハイシュガーケイン BG・・・化学名:1,3-ブチレングリコール」と記載されているところ(摘記甲3a)、本件特許の出願日(2020年1月7日)は、甲3の作成日の後であり、甲3の改訂日の後である。 そして、甲2には、「高級アルコール工業社製ハイシュガーケイン BG」の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率(ppm)」が「375.96」である旨の記載がある(摘記甲2a)。 しかしながら、令和4年11月25日付けの上申書の1頁の「後述の参考資料1(実験成績証明書)に記載のように、市販品の・・・高級アルコール工業社製ハイシュガーケイン BG・・・において、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに資料の(4)に記載の8つの化合物が該当する証拠は得られておらず」との申立人の主張にあるように、甲3の「ハイシュガーケイン BG」というの市販品は、本件発明1の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分」として「2-エチル-1,3-ブタンジオール(4-3)」及び/又は「1,3-ヘキサンジオール(4-6)」という「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」を含むものではない。 してみると、本件発明1と甲3の市販品は、後者が「1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき」の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分」として「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」を含むものではないという点において実質的に相違する。 したがって、本件発明1は、甲3の市販品の発明と実質的に相違するから、特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえない。 なお、甲2の試験で用いられた「高級アルコール工業社製ハイシュガーケイン BG」については、その入手時期や製造番号などの情報が明らかにされておらず、甲3の安全データシートに記載された製品名「ハイシュガーケイン BG」という市販品の「1,3-ブチレングリコール」の純度などの製品仕様が、甲3の改定日(2017年05月01日)以降に、仕様変更の改定がなされていないといえる明確な根拠が示されていないことからも、本件発明1が特許法第29条第1項第2号に該当するとはいえない。 エ 本件発明2~4、7~10について 本件発明2~4、7~10は、いずれも本件発明1を引用し、さらに技術的事項を特定するものであるから、本件発明1と同様に、公然実施発明であるとはいえない。 なお、本件発明7について、甲4には、甲3の市販品が植物由来の1,3-ブチレングリコールであることが(摘記甲4a及び甲4b)、甲5~甲7には、3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素を用いて1,3-ブチレングリコールを製造することが(摘記甲5a~甲7a)、甲8及び甲9には、アセトアルドールの水素還元法によって1,3-ブチレングリコールを製造することが記載されているに過ぎず(摘記甲8d及び甲9d)、また、本件発明8~10について、甲8及び甲9には、1,3-ブチレングリコールを化粧品、保湿剤に用いることが記載されているに過ぎない(摘記甲8a及び甲9a)から、上記判断を左右しない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。 (3)申立理由3(刊行物公知)及び申立理由4(進歩性欠如)について ア 申立理由3及び4の概要 申立人が主張する申立理由3(刊行物公知)は、本件特許発明1~10は、甲8発明に開示された発明又は甲8発明及び技術常識(甲11~甲12)に基づく発明であり、 本件特許発明1~10は、甲9発明に開示された発明又は甲9発明及び技術常識(甲11~甲12)に基づく発明である(特許法第29条第1項第3号、同法第113条第2号)というものであり、 申立人が主張する申立理由4(進歩性欠如)は、本件特許発明1~10は、甲8発明に開示された発明又は甲8発明に技術常識(甲11~甲12)を組み合わせることにより当業者には容易に想到する発明であり、 本件特許発明1~10は、甲9発明に開示された発明又は甲9発明に技術常識(甲11~甲12)を組み合わせることにより当業者には容易に想到する発明である(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)というものである(申立書の41頁)。 イ 引用発明 (ア)甲8発明 甲8には、臭気が無く、経時変化の少ない高純度1,3-ブチレングリコール及びその製造方法についての記載があるところ、実施例1として、1,3-ブチレングリコールの具体的な製造方法が記載されている。したがって、甲8には、以下の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されていると認める。 「以下の製造方法において、製品1,3-ブチレングリコールとされる1,3-ブチレングリコール。 製造方法:原料としてアセトアルドール100部、水素6.5部を液相水素還元用反応器(図示せず)に仕込み、触媒としてラネーニッケルを3.5部加え、該反応器を温度125~135℃、圧力150kg/cm2に保持して液相水素還元を行う。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、アルコール類を除去して粗1,3-ブチレングリコール(A)を得る。 粗1,3-ブチレングリコール(A)を第1図に示す脱水塔1-1に仕込む。脱水塔では仕込み液量100部に対して塔頂より水を抜き出し、還流水として真水15部を加え、圧力50torrで蒸留塔底部より水分0.5重量%以下の粗1,3-ブチレングリコールを得る。 脱水された粗1,3-ブチレングリコールは次に、脱塩塔1-2に仕込まれる。ここでは仕込液量100部に対して蒸発残分として、塩、高沸点物および1,3-グリコールの一部が底部より5部排出される。塔頂からは1,3-ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部が95部留出される。 脱塩塔1-2より留出された1,3-ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部は、脱高沸点物蒸留塔1-3に仕込まれ、高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が底部より20部排出される。塔頂からは低沸点物を含む粗1,3-ブチレングリコール(CR)が80部留出され、アルカリ反応器1-4に仕込まれる。この際仕込液に対して苛性ソーダ濃度が0.2重量%となるように10重量%苛性ソーダ水溶液を添加する。アルカリ反応器での反応温度を120℃に維持して、滞留時間20分で反応を行う。 反応器を出た反応粗液は脱アルカリ塔1-5へ仕込まれる。ここでは仕込液量100部に対して、苛性ソーダと高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が塔底より10部排出される。塔頂からは1,3-ブチレングリコール及び低沸点物が90部留出され、次の製品塔へ仕込まれる。製品蒸留塔1-6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部が10重量%留出され、塔底からは製品1,3-ブチレングリコールが取り出される。 [図:0001405777000052.jpg] 」 (イ)甲9発明 甲9には、製造3ヶ月後においても臭気の著しく低減された、経時変化の少ない高純度1,3-ブチレングリコールについての記載があるところ、実施例1、2として、1,3-ブチレングリコールの具体的な製造方法が記載されている。したがって、甲9には、以下の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認める。 「以下の製造方法において、製品1,3-ブチレングリコールとされる1,3-ブチレングリコール。 製造方法:原料としてアセトアルドール100部、水素を6.5部反応器(図示せず)に仕込む。反応器を温度125~135℃、圧力150Kg/cm2に保持する。触媒としてラネーニッケルを3.5部加える。反応器から取り出した反応粗液は触媒を分離したのち、苛性ソーダで中和される。その後、アルコール類を除去した粗1,3-ブチレングリコールを図-1に示す脱水塔1-1に仕込む。脱水塔では仕込み液量100部に対して塔頂より水15部を加え、圧力50torrで蒸留塔底部より水分0.5重量%以下の粗1,3-ブチレングリコールを得る。脱水された粗1,3-ブチレングリコールは次に、脱塩塔1-2に仕込まれる。ここでは仕込液量100部に対して蒸発残分として、塩、高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が底部より5部排出される。塔頂からは1,3-ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部が95部留出される。 脱塩塔1-2より留出された1,3-ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部は、脱高沸物蒸留塔1-3に仕込まれ、高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が底部より20部排出される。塔頂からは1,3-ブチレングリコール及び低沸点物が80部留出され、アルカリ反応器1-4に仕込まれる。この際仕込液に対して苛性ソーダ濃度が0.2重量%となるように10重量%苛性ソーダ水溶液を添加する。アルカリ反応器での反応温度を120℃に維持して、滞留時間20分反応を行う(実施例1)。 実施例2ではアルカリ反応器での反応温度100℃、滞留時間30分とした以外は実施例1と同じに行う。アルカリ反応器を出た反応粗液は脱アルカリ塔1-5へ仕込まれる。ここでは仕込液量100部に対して、アルカリと高沸点物および1,3-ブチレングリコールの一部が塔底より10部排出される。塔頂からは1,3-ブチレングリコール及び低沸点物が90部留出され、次の製品塔へ仕込まれる。製品蒸留塔1-6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3-ブチレングリコールの一部が10重量%留出される。塔底からは製品1,3-ブチレングリコールが取り出される。 【図1】 [図:0001405777000053.jpg] 」 ウ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 甲8発明について 本件発明1と甲8発明とを対比すると、両者は、 「1,3-ブチレングリコール製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-8> 1,3-ブチレングリコール製品について、本件発明1は「下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、 1,3-ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、 1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、 相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下であり、 前記の相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」こと、 「(ガスクロマトグラフィー分析の条件) 分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm) 昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。 試料導入温度:250℃ キャリアガス:ヘリウム カラムのガス流量:1mL/分 検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃」と特定しているのに対し、甲8発明はそのような1,3-ブチレングリコール製品であるか不明である点。 上記相違点1-8について検討する。 甲8には、上記相違点1-8に係る技術的事項については記載も示唆もない。 (a)製造方法について ここで、たとえ甲8に上記相違点1-8に係る技術的事項についての記載がなくとも、甲8発明の製造方法が、本件発明1の製品の製造方法と一致すれば、甲8発明が上記相違点1-8に係る技術的事項を備えるといえると考えられる。 そこで、本件発明1の製品の製造方法と甲8発明の製造方法について検討する。 本件明細書等には、【0055】~【0070】、【0090】及び図1に1,3-ブチレングリコール製品の一般的な製造方法が記載され、【0077】~【0089】に実施例が記載されている。 本件明細書に実施例として記載された製造方法と甲8発明の製造方法とを対比すると、両者は、液相水素還元用反応器における液相水素還元、脱水塔における脱水、脱塩塔における脱塩、脱高沸点物蒸留塔における脱高沸点物、アルカリ反応器におけるアルカリ反応、脱アルカリ塔における脱アルカリ、製品蒸留塔における蒸留を行う点で共通する。 しかし、液相水素還元用反応器における液相水素還元について、本件明細書に記載の実施例では、「原料として30重量%の水を含むアセトアルドール溶液100部(アセトアルドール70部と水30部の混合溶液)に対し、水素10部を液相水素還元用反応器に仕込み、触媒としてラネーニッケルを15部加え、該反応器を135℃、300atmに保持して」行うのに対し、甲8発明は、「原料としてアセトアルドール100部、水素6.5部を液相水素還元用反応器(図示せず)に仕込み、触媒としてラネーニッケルを3.5部加え、該反応器を温度125~135℃、圧力150kg/cm2に保持して液相水素還元を行う。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、アルコール類を除去して」行うものであり、本件明細書に記載の実施例の製造方法と、甲8発明とは、原料が相違し(本件明細書に記載の実施例で原料が所定の割合の水を含む。)、水素、触媒であるラネーニッケルの使用量が相違し、反応圧力が異なる。 したがって、製造方法が一致するとはいえない。 そして、本件明細書には「【0053】 水添原料は水を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、1,3-ブチレングリコール製品の純度の観点からは含んでいることが好ましい。水添原料における水の含有量は特に限定されないが、例えば、2重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。なお、その上限値は、例えば、50重量%、40重量%、又は35重量%であってもよい。 【0054】 水の含有量が上記範囲内である場合、得られる粗1,3-ブチレングリコールに含まれる1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体、及び酢酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル体を含む種々の副産物が低減されるため、最終的に得られる1,3-ブチレングリコール製品の純度が高くなる傾向がある。これは、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記アセタール体が加水分解されて1,3-ブチレングリコールになるとともに、共生したアセトアルドールが還元されて1,3-ブチレングリコールとなることに起因する。また、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記エステル体が加水分解されて1,3-ブチレングリコールとなることに起因する。」及び「【0057】 還元反応に使用する水添触媒の量、水素量、還元反応における水素圧、反応温度、反応時間(滞留時間)が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3-ブチレングリコールへの反応速度(水添速度)が向上する。このため、例えば、1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールのアセタール化反応が低減され、高い純度である本発明の1,3-ブチレングリコール製品が得られる傾向がある。この傾向は、特に還元反応における水素圧に強く影響される。すなわち、還元反応における水素圧が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3-ブチレングリコールへの反応速度(還元速度)が著しく向上し、その結果、1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減され、高純度の1,3-ブチレングリコール製品が得られることになる。また、上記範囲内にあることにより、エステル体のカルボン酸部分の水素化が急速に進行してアルコールとなる。その結果、酢酸と1,3-ブチレングリコールのエステル体が低減され、高純度の1,3-ブチレングリコール製品が得られることになる。」との記載があること、一般的に化学反応において製造条件が異なれば、製造物が異なることに鑑みれば、甲8発明が本件明細書の実施例に記載の1,3-ブチレングリコール製品と同様の製造物であるとはいえない。 さらに、甲11及び甲12に、アセトアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液の存在下に縮合して得られたパラアセトアルドール反応液を中和処理した後、未反応アセトアルデヒドの一部を回収又は分離除去した後、ラネーニッケルを用いて水添反応を行う旨が記載されているが(摘記甲11a、甲12a)、かかる記載は、アセトアルデヒドからパラアセトアルドールの水添反応物(1,3-ブチレングリコール)を製造する方法が記載されているに過ぎず、そのことによって、甲8発明の製造方法が、本件明細書の実施例に記載の製造方法と異ならないとすることはできない。 また、仮に、甲8発明の製造方法が本件明細書に記載の一般的な製造方法に包含されるものであったとしても、そのことにより、相違点1-8に係る本件発明1の技術的事項を備える1,3-ブチレングリコール製品が得られているということはできない。 したがって、甲8発明は本件発明1と上記相違点1-8において実質的に相違するものであり、本件発明1は甲8に記載された発明であるとはいえない。 (b)甲8に記載の物性等について 本件明細書には、「【0046】 なお、1,3-ブチレングリコールを製造する場合、その製造過程における副産物には、上記アセタール体やエステル体以外にも、着色原因物質、臭気原因物質、又は酸性原因物質に相当する、多種多様な副産物が含まれると考えられる。例えば、上述のアセトアルデヒドの三量体の水素化物は、着色原因物質、臭気原因物質、及び酸性原因物質のいずれにも相当する可能性があると考えられる。 【0047】 したがって、1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたときの相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分と考えられている前記アセトアルデヒドの三量体の水素化物が、ある程度(例えば、ピークの面積率が2000ppm以下)まで低減された1,3-ブチレングリコール製品は、無色・無臭であって、経時による着色が生じにくく、さらに水を含む状態においても経時による酸濃度の上昇が生じにくいとする特徴を有する。」との記載があるから、相違点1-8に係るアセトアルデヒドの三量体の水素化物が臭気、着色等に関連する物質であることが理解できる。 一方、甲8には、実施例1として「製造直後の1,3-ブチレングリコールは、臭気評点は3であり、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.001であり、HPLC分析において、相対保持時間が4.0~5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.005以下であった。この1,3-ブチレングリコールを用いて40℃での経時変化試験を行ったところ、1ヶ月後の臭気評点は3、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.001と変化が無かった。3ヶ月後においても所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.002と微増して若干微量不純物含有量が増加したが、HPLC分析の相対保持時間が4.0~5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.005以下であり、臭気評価は3であり依然として無臭であった。」(摘記甲8d)と記載される一方で、比較例1として「製造直後の1,3-ブチレングリコールの臭気評点は3であり、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.131であり、HPLC分析で、相対保持時間が4.0~5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.05以上であった。この1,3-ブチレングリコールを用いて40℃での経時変化試験を行ったところ、1ヶ月後の臭気評点は5、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.160であった。3ヶ月後には臭気評点は10、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.193となり、HPLC分析の相対保持時間が4.0~5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.05以上であり、微臭が発生していた。」(摘記甲8e)と記載されており、また、第2図として、実施例、比較例についてのHPLC分析結果が記載されており(摘記甲8f)、問題となる不純物の保持時間(20~30分)のピークについて、微臭が発生している比較例1の物はピークが現れるのに対し、実施例1の物についてはピークが現れない旨(摘記甲8c)が記載されている。 しかし、本件明細書にアセトアルデヒドの三量体の水素化物が臭気、着色等に関連する物質である旨が記載され、甲8に、甲8発明の1,3-ブチレングリコールが臭気を有しない等の特性を有する旨が記載されているとしても、本件明細書に記載のとおり、臭気、着色等に関連する物質はアセトアルデヒドの三量体の水素化物に限られるものではなく、また、臭気を有しない甲8発明の1,3-ブチレングリコールが、臭気、着色等に関連する物質であるアセトアルデヒドの三量体の水素化物を含むとする理由はなく、さらに、相違点1-8に係る技術的事項は、特定条件でのガスクロマトグラフィー分析に係るものであって、甲8発明が、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下であるということもできないから、甲8発明が相違点1-8に係る本件発明1の技術的事項を備えるということはできない。 以上のとおりであるから、本件発明1は甲8発明と上記相違点1-8において実質的に相違するものであり、本件発明1は、甲11及び甲12の記載を参酌しても、甲8に記載された発明であるとはいえない。 (c)相違点1-8の容易想到性について 相違点1-8の容易想到性について検討するに、甲8には、臭気が無く、経時変化の少ない高純度1,3-ブチレングリコール及びその製造方法を提供することを目的としていることが記載されている(摘記甲8b)ものの、甲8には、相違点1-8に係る、ガスクロマトグラフィー分析における、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率を所定の範囲のものとし、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含むことについて、記載も示唆もされていない。 また、甲11及び12には、アセトアルデヒドからパラアセトアルドールの水添反応物(1,3-ブチレングリコール)を製造する方法が記載されているに過ぎない。 したがって、甲8発明において、相違点1-8に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 そして、本件明細書【0020】に記載されるとおり、本件発明1は、無色・無臭であって、経時による着色が生じにくく、さらに水を含む状態においても経時による酸濃度の上昇が生じにくいため、化粧品や保湿剤等の用途に好適に使用される、という効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲8、甲11及び甲12に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることがきたものであるとはいえない。 b 甲9発明について 本件発明1と甲9発明とを対比すると、両者は、 「1,3-ブチレングリコール製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-9> 1,3-ブチレングリコール製品について、本件発明1は「下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、 1,3-ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、 1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、 相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下であり、 前記の相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」こと、 「(ガスクロマトグラフィー分析の条件) 分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm) 昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。 試料導入温度:250℃ キャリアガス:ヘリウム カラムのガス流量:1mL/分 検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃」と特定しているのに対し、甲9発明はそのような1,3-ブチレングリコール製品であるか不明である点。 上記相違点1-9について検討する。 甲9には、上記相違点1-9に係る技術的事項については記載も示唆もない。 (a)製造方法について ここで、たとえ甲9に上記相違点1-9に係る技術的事項についての記載がなくとも、甲9発明の製造方法が、本件発明1の製品の製造方法と一致すれば、甲9発明が上記相違点1-9に係る技術的事項を備えるといえると考えられる。 そこで、本件発明1の製品の製造方法と甲9発明の製造方法について検討する。 本件明細書等には、【0055】~【0070】、【0090】及び図1に1,3-ブチレングリコール製品の一般的な製造方法が記載され、【0077】~【0089】に実施例が記載されている。 本件明細書に実施例として記載された製造方法と甲9発明の製造方法とを対比すると、両者は、反応器における水素還元、脱水塔における脱水、脱塩塔における脱塩、脱高沸点物蒸留塔における脱高沸点物、アルカリ反応器におけるアルカリ反応、脱アルカリ塔における脱アルカリ、製品蒸留塔における蒸留を行う点で共通する。 しかし、反応器における水素還元について、本件明細書に記載の実施例では、「原料として30重量%の水を含むアセトアルドール溶液100部(アセトアルドール70部と水30部の混合溶液)に対し、水素10部を液相水素還元用反応器に仕込み、触媒としてラネーニッケルを15部加え、該反応器を135℃、300atmに保持して」行うのに対し、甲9発明は、「原料としてアセトアルドール100部、水素を6.5部反応器(図示せず)に仕込む。反応器を温度125~135℃、圧力150Kg/cm2に保持する。触媒としてラネーニッケルを3.5部加える。反応器から取り出した反応粗液は触媒を分離したのち、苛性ソーダで中和される。その後、アルコール類を除去」することにより行うものであり、本件明細書に記載の実施例の製造方法と、甲9発明とは、原料が相違し(本件明細書に記載の実施例で原料が所定の割合の水を含む。)、水素、触媒であるラネーニッケルの使用量が相違し、反応圧力が異なる。 したがって、製造方法が一致するとはいえない。 そして、本件明細書には「【0053】 水添原料は水を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、1,3-ブチレングリコール製品の純度の観点からは含んでいることが好ましい。水添原料における水の含有量は特に限定されないが、例えば、2重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。なお、その上限値は、例えば、50重量%、40重量%、又は35重量%であってもよい。 【0054】 水の含有量が上記範囲内である場合、得られる粗1,3-ブチレングリコールに含まれる1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体、及び酢酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル体を含む種々の副産物が低減されるため、最終的に得られる1,3-ブチレングリコール製品の純度が高くなる傾向がある。これは、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記アセタール体が加水分解されて1,3-ブチレングリコールになるとともに、共生したアセトアルドールが還元されて1,3-ブチレングリコールとなることに起因する。また、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記エステル体が加水分解されて1,3-ブチレングリコールとなることに起因する。」及び「【0057】 還元反応に使用する水添触媒の量、水素量、還元反応における水素圧、反応温度、反応時間(滞留時間)が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3-ブチレングリコールへの反応速度(水添速度)が向上する。このため、例えば、1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールのアセタール化反応が低減され、高い純度である本発明の1,3-ブチレングリコール製品が得られる傾向がある。この傾向は、特に還元反応における水素圧に強く影響される。すなわち、還元反応における水素圧が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3-ブチレングリコールへの反応速度(還元速度)が著しく向上し、その結果、1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減され、高純度の1,3-ブチレングリコール製品が得られることになる。また、上記範囲内にあることにより、エステル体のカルボン酸部分の水素化が急速に進行してアルコールとなる。その結果、酢酸と1,3-ブチレングリコールのエステル体が低減され、高純度の1,3-ブチレングリコール製品が得られることになる。」との記載があること、一般的に化学反応において製造条件が異なれば、製造物が異なることに鑑みれば、甲9発明が本件明細書の実施例に記載の1,3-ブチレングリコール製品と同様の製造物であるとはいえない。 さらに、甲9に、水添原料は、10~20重量%の水分を含んでいるものが使用できることが記載され(摘記甲9c)、甲11及び甲12に、アセトアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液の存在下に縮合して得られたパラアセトアルドール反応液を中和処理した後、未反応アセトアルデヒドの一部を回収又は分離除去した後、ラネーニッケルを用いて水添反応を行う旨が記載されているが(摘記甲11a、甲12a)、これらの記載は、水添原料が水分を含んでいてもよいことが記載され、また、アセトアルデヒドからパラアセトアルドールの水添反応物(1,3-ブチレングリコール)を製造する方法が記載されているに過ぎず、そのことによって、甲9発明の製造方法が、本件明細書の実施例に記載の製造方法と異ならないとすることはできない。 また、仮に、甲9発明の製造方法が本件明細書に記載の一般的な製造方法に包含されるものであったとしても、そのことにより、相違点1-9に係る本件発明1の技術的事項を備える1,3-ブチレングリコール製品が得られているということはできない。 したがって、甲9発明は本件発明1と上記相違点1-9において実質的に相違するものであり、本件発明1は甲9に記載された発明であるとはいえない。 (b)甲9に記載の物性等について 上記a(b)で述べたとおりであるから、相違点1-9に係るアセトアルデヒドの三量体の水素化物が臭気、着色等に関連する物質であることが理解できる。 一方、甲9には、実施例1、2として、製造直後と3ヶ月後の1,3-ブチレングリコールについての臭気評点の測定結果が記載されており(摘記甲9d及びe)、製造直後、3ヶ月後において臭気評点がいずれも3であったことが記載されている。 しかし、本件明細書にアセトアルデヒドの三量体の水素化物が臭気、着色等に関連する物質である旨が記載され、甲9に、甲9発明の1,3-ブチレングリコールが臭気を有しない等の特性を有する旨が記載されているとしても、本件明細書に記載のとおり、臭気、着色等に関連する物質はアセトアルデヒドの三量体の水素化物に限られるものではなく、また、臭気を有しない甲9発明の1,3-ブチレングリコールが、臭気、着色等に関連する物質であるアセトアルデヒドの三量体の水素化物を含むとする理由はなく、さらに、相違点1-9に係る技術的事項は、特定条件でのガスクロマトグラフィー分析に係るものであって、甲9発明が、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下であるということもできないから、甲9発明が相違点1-9に係る本件発明1の技術的事項を備えるということはできない。 以上のとおりであるから、本件発明1は甲9発明と上記相違点1-9において実質的に相違するものであり、本件発明1は、甲11及び甲12の記載を参酌しても、甲9に記載された発明であるとはいえない。 (c)相違点1-9の容易想到性について 相違点1-9の容易想到性について検討するに、甲9には、製造3ヶ月後においても臭気の著しく低減された、経時変化の少ない高純度1,3-ブチレングリコールを提供することを目的としていることが記載されている(摘記甲9b)ものの、甲9には、相違点1-9に係る、ガスクロマトグラフィー分析における、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率を所定の範囲のものとし、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含むことについて、記載も示唆もされていない。 また、甲11及び甲12には、アセトアルデヒドからパラアセトアルドールの水添反応物(1,3-ブチレングリコール)を製造する方法が記載されているに過ぎない。 したがって、甲9発明において、相違点1-9に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 そして、本件明細書【0020】に記載されるとおり、本件発明1は、無色・無臭であって、経時による着色が生じにくく、さらに水を含む状態においても経時による酸濃度の上昇が生じにくいため、化粧品や保湿剤等の用途に好適に使用される、という効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲9、甲11及び甲12に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることがきたものであるとはいえない。 (イ)本件発明2~10について 本件発明2~10は、いずれも本件発明1を引用し、さらに技術的事項を特定するものであるから、本件発明1と同様に、甲8及び甲9に記載された発明であるとはいえず、甲8及び甲9、甲11及び甲12に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることがきたものであるとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由3及び4は理由がない。 (4)申立理由5(拡大先願)について ア 申立理由5の概要 申立人が主張する申立理由5(拡大先願)は、本件特許発明1~10は、甲10に開示された発明又は甲10に開示された発明に技術常識(甲5~甲9)を組み合わせたに過ぎない発明であるというものである(特許法第29条の2、同法第113条第2号)(申立書の42頁)。 以下では、甲10に係る日本語特許出願の優先権主張の基礎とされた特願2019-232310号を先願として検討する(特許法第41条第3項。先願の出願当初の明細書、請求の範囲又は図面(以下「甲10明細書等」という。)には、摘記甲10a~fと同様の記載がある。)。 イ 引用発明 甲10明細書等には1,3-ブタンジオールの製造方法についての記載があるところ(摘記甲10a~f)、比較例4には、1,3-ブタンジオールの具体的な製造方法が記載されている(摘記甲10e)。したがって、甲10明細書等には、以下の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されていると認める。 「以下の製造方法において、最後に塔底より得られた1,3-ブチレングリコール。 製造方法:120mLのSUS316L製オートクレーブに、アセトアルドール類としてパラアルドール10g、エタノール40g、スポンジニッケル触媒(日興リカ株式会社製、R-201)1gを加える。オートクレーブを水素ガスにて8MPaGに加圧し、撹拌を開始する。30℃から120℃まで1℃/分の速度で昇温し、120℃に達した瞬間にオートクレーブをただちに冷却して反応を停止させて、1,3-ブタンジオールを得る。反応中は、圧力が7MPaGまで低下するごとに、圧力8MPaGまで水素ガスを供給する。触媒を濾別した後、反応液を理論段数10段以上の蒸留塔を用いて、100torr以下の減圧下、150℃以下で蒸留することにより、エタノールを低沸成分として分離して、粗1,3-ブタンジオールを得る。得られた粗1,3-ブタンジオール20質量部、水80質量部、シクロヘキサノン30質量部を混合し、水相に1,3-ブタンジオールを溶解させる。シクロヘキサノン相に不純物を抽出した後、水相とシクロヘキサノン相とを分離する。水相を、理論段数5段以上の蒸留塔を用いて、100torr以下の減圧下、150℃以下で蒸留して低沸成分として水を留去させることにより、1,3-ブタンジオールを塔底より得る。」 ウ 対比・判断 (ア)本件発明1について 本件発明1と甲10発明とを対比すると、両者は、 「1,3-ブチレングリコール製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-10> 1,3-ブチレングリコール製品について、本件発明1は「下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、 1,3-ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、 1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、 相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下であり、 前記の相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」こと、 「(ガスクロマトグラフィー分析の条件) 分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm) 昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。 試料導入温度:250℃ キャリアガス:ヘリウム カラムのガス流量:1mL/分 検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃」と特定しているのに対し、甲10発明はそのような1,3-ブチレングリコール製品であるか不明である点。 上記相違点1-10について検討する。 甲10明細書等には、上記相違点1-10に係る技術的事項については記載されていない。 (a)製造方法について ここで、たとえ甲10明細書等に上記相違点1-10に係る技術的事項についての記載がなくとも、甲10発明の製造方法が、本件発明1の製品の製造方法と一致すれば、甲10発明が上記相違点1-10に係る技術的事項を備えるといえると考えられる。 そこで、本件発明1の製品の製造方法と甲10発明の製造方法について検討する。 本件明細書等には、【0055】~【0070】、【0090】及び図1に1,3-ブチレングリコール製品の一般的な製造方法が記載され、【0077】~【0089】に実施例が記載されている。 本件明細書に実施例として記載された製造方法と甲10発明の製造方法とを対比すると、両者は、アセトアルドールを原料とし、ラネーニッケル(スポンジニッケル)触媒の存在下に、水素還元して、粗1,3-ブチレングリコールを製造し、その後、蒸留等して1,3-ブチレングリコールを得る点で共通する。 しかし、水素還元時の溶媒、水素圧、温度、苛性ソーダによる中和の有無、脱塩塔、脱高沸点物蒸留塔、アルカリ反応器、脱アルカリ塔の使用の有無について、本件明細書に記載の実施例の製造方法と甲10発明の製造方法とは大きく異なる。 したがって、製造方法が一致するとはいえない。 そして、本件明細書には「【0053】 水添原料は水を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、1,3-ブチレングリコール製品の純度の観点からは含んでいることが好ましい。水添原料における水の含有量は特に限定されないが、例えば、2重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。なお、その上限値は、例えば、50重量%、40重量%、又は35重量%であってもよい。 【0054】 水の含有量が上記範囲内である場合、得られる粗1,3-ブチレングリコールに含まれる1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体、及び酢酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル体を含む種々の副産物が低減されるため、最終的に得られる1,3-ブチレングリコール製品の純度が高くなる傾向がある。これは、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記アセタール体が加水分解されて1,3-ブチレングリコールになるとともに、共生したアセトアルドールが還元されて1,3-ブチレングリコールとなることに起因する。また、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記エステル体が加水分解されて1,3-ブチレングリコールとなることに起因する。」及び「【0057】 還元反応に使用する水添触媒の量、水素量、還元反応における水素圧、反応温度、反応時間(滞留時間)が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3-ブチレングリコールへの反応速度(水添速度)が向上する。このため、例えば、1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールのアセタール化反応が低減され、高い純度である本発明の1,3-ブチレングリコール製品が得られる傾向がある。この傾向は、特に還元反応における水素圧に強く影響される。すなわち、還元反応における水素圧が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3-ブチレングリコールへの反応速度(還元速度)が著しく向上し、その結果、1,3-ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減され、高純度の1,3-ブチレングリコール製品が得られることになる。また、上記範囲内にあることにより、エステル体のカルボン酸部分の水素化が急速に進行してアルコールとなる。その結果、酢酸と1,3-ブチレングリコールのエステル体が低減され、高純度の1,3-ブチレングリコール製品が得られることになる。」との記載があること、一般的に化学反応において製造条件が異なれば、製造物が異なることに鑑みれば、甲10発明が本件明細書の実施例に記載の1,3-ブチレングリコール製品と同様の製造物であるとはいえない。 したがって、本件発明1は甲10発明と上記相違点1-10において実質的に相違するものであり、本件発明1は甲10明細書等に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 (b)甲10明細書等に記載の物性等について 本件明細書には、「【0046】 なお、1,3-ブチレングリコールを製造する場合、その製造過程における副産物には、上記アセタール体やエステル体以外にも、着色原因物質、臭気原因物質、又は酸性原因物質に相当する、多種多様な副産物が含まれると考えられる。例えば、上述のアセトアルデヒドの三量体の水素化物は、着色原因物質、臭気原因物質、及び酸性原因物質のいずれにも相当する可能性があると考えられる。 【0047】 したがって、1,3-ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたときの相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分と考えられている前記アセトアルデヒドの三量体の水素化物が、ある程度(例えば、ピークの面積率が2000ppm以下)まで低減された1,3-ブチレングリコール製品は、無色・無臭であって、経時による着色が生じにくく、さらに水を含む状態においても経時による酸濃度の上昇が生じにくいとする特徴を有する。」との記載があるから、相違点1-13に係るアセトアルデヒドの三量体の水素化物が臭気、着色等に関連する物質であることが理解できる。 一方、甲10明細書等には、比較例4として「1,3-ブタンジオールの、臭気物質Aの濃度は0wtppm、臭気物質Bの濃度は0wtppmであり、臭気強度は0であった。」(摘記甲10e)と記載され、図1として、実施例、比較例についてのHPLC分析結果が記載されている(摘記甲10f)。 しかし、本件明細書にアセトアルデヒドの三量体の水素化物が臭気、着色等に関連する物質である旨が記載され、甲10明細書等に、甲10発明の1,3-ブチレングリコールの臭気強度が0である旨が記載されているとしても、本件明細書に記載のとおり、臭気、着色等に関連する物質はアセトアルデヒドの三量体の水素化物に限られるものではなく、また、臭気を有しない甲10発明の1,3-ブチレングリコールが、臭気、着色等に関連する物質であるアセトアルデヒドの三量体の水素化物を含むとする理由はなく、さらに、相違点1-10に係る技術的事項は、特定条件でのガスクロマトグラフィー分析に係るものであって、甲10発明が、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が130ppm以上、600ppm以下であるということもできないから、甲10発明が相違点1-10に係る本件発明1の技術的事項を備えるということはできない。 甲5~甲9の記載事項は上記各判断を左右しない。 以上のとおりであるから、本件発明1は甲10発明と上記相違点1-10において実質的に相違するものであり、本件発明1は、甲10明細書等に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 (イ)本件発明2~10について 本件発明2~10は、いずれも本件発明1を引用し、さらに技術的事項を特定するものであるから、本件発明1と同様に、甲10明細書等に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。 エ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由5は理由がない。 (5)申立理由6(実施可能要件)について ア 申立理由6の概要 申立人が主張する申立理由6(実施可能要件)は、本件明細書の発明の詳細な記載及び特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許発明1~10は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号)というものであって(申立書の42頁)、具体的には、以下を主張している。 本件特許発明1では、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率を「0ppmを超え、600ppm以下」とすることが求められているが、本件明細書では上記面積率を所定範囲内に調整する(特に上記面積率が0ppmを超えるように調整する)ために製造条件をどのように変更すればよいかについて、本件明細書において全く触れられておらず、第三者が実施する際に過度な試行錯誤が必要となり、実施可能ではない。 また、「前記の相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」との構成要件について、仮に本件明細書に記載の実施例1において、相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークが存在していたとしても、本件実施例1以外の製造条件でどのような製造条件にすればアセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む1,3-ブチレングリコールが製造できるのかについて本件明細書には何ら記載されておらず、アセトアルデヒドの三量体の水素化物の構造が不明であることから、仮に製造された1,3-ブチレングリコールにおいて相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、600ppm以下であったとしても、当該ピークにアセトアルデヒドの三量体の水素化物が含まれるかを第三者が実施する際に過度な試行錯誤が必要となり、実施可能ではない。 イ 判断 本件明細書には実施例1として、本件発明1で特定される1,3-ブチレングリコールのピークの面積率及び相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率に該当する1,3-ブチレングリコール製品が記載されているのであるから、当業者は、実施例に具体的に示されている反応温度、反応時間等の各条件を、本件明細書の【0049】~【0070】に記載された適切な範囲内において変更することによって、実施例1と同様に、本件発明1で特定される1,3-ブチレングリコールのピークの面積率及び相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率を有する1,3-ブチレングリコール製品を製造できるといえ、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。 また、本件発明1の「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」との発明特定事項の意味が明確であるといえるといえることは、上記1(1)で述べたとおりであり、本件明細書に記載の実施例1の1,3-ブチレングリコール製品が、「相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークに該当する成分として、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を含む」ものであるといえることは乙6で示されたとおりであり、当該水素化物が含まれることはガスクロマトグラフィー分析によって確認できることは技術常識であるから、第三者が実施する際に過度な試行錯誤が必要となるとはいえない。 本件発明2~10についても同様である。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、申立理由6は理由がない。 3 申立人の主張について 申立人は、令和5年7月21日付けの意見書において、概要、以下の主張をしている。 (1)訂正後の本件発明1~10は、明確性要件を有さないこと i)特許権者が提出した乙3、4、8~13を参照したとしても「アセトアルデヒドの三量体」が乙7の(3-1)~(3-7)を指すことや「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」が乙7の(4-1)~(4-7)を指すことを示しておらず、依然として「アセトアルデヒドの三量体」及び「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」がどのような化合物を指すのか不明確である。 ii)本件明細書の【0050】に「反応粗液は、アセトアルドール類以外にも、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、他のアルデヒド成分、低沸点物、アルデヒドダイマーやトリマー等の高沸点物、水、塩等が含まれ得る。」と記載されており、アセトアルドールの脱水物であるクロトンアルデヒドとアルデヒドダイマー(二量体)とを区別している。よって、乙7のようにアセトアルドールとアセトアルドールの脱水物であるクロトンアルデヒドをまとめてアセトアルデヒドの二量体と定義すると本件明細書の記載との間に矛盾が生じる。 そして、「アセトアルデヒドの三量体」についても【0049】に「アセトアルデヒドの一種の環状3量体であるアルドキサン」と説明されている以外に三量体の定義が記載されている箇所はなく、アルドキサンは脱水物ではないことから、当業者であれば「アセトアルデヒドの三量体」も「アセトアルデヒドの二量体」と同様に脱水物は含まれないと考える。 甲13~甲15である各種辞典において、「三量体」は単量体の分子量の3倍の化合物(以下「狭義の三量体」という。)であることは当業者であれば技術常識であるから、狭義の三量体の脱水物は「三量体」には該当しないと考える。 なお、乙4では狭義のButanalの二量体もその脱水物もこれらの水素化物もまとめてDimerと定義しており、これを乙7に当てはめると、乙7に記載の(1)も(2)も全て二量体に該当し、乙7に記載の(3)も(4)も三量体に該当するので、水素化物に該当する化合物が存在しないこととなる。 iii)パラアルデヒドがアセトアルデヒドの三量体であると記載されている証拠が多数あり(甲13、甲14及び甲16~甲20)、当業者であればアセトアルデヒドの三量体は一般的にパラアルデヒドを指すことは明白である。 iv)特許権者は、乙6において本件明細書の実施例1に含まれるアセトアルデヒドの三量体の水素化物は乙7に記載の(4-3)あるいは(4-6)であると述べているが、これらは加水分解しないため、本件明細書の【0012】の「従来の製造方法で得られる1,3-ブチレングリコール製品の酸濃度が上昇する原因の一つが、1,3-ブチレングリコール製品に含まれる副産物が水の存在下において加水分解され、有機酸(例えば酢酸)が生じることにあることを突き止めた」との記載と矛盾している。 v)乙6及び乙7について、乙7に記載の(3-3)や(3-6)はアセトアルデヒドの三量体ではないので、(4-3)や(4-6)はアセトアルデヒドの三量体の水素化物ではなく、乙6で(4-3)や(4-6)が示されていても、アセトアルデヒドの三量体の水素化物を同定したことにならない。 (2)本件発明1~10は、実施可能要件を有さないこと 本件明細書では、水素量、水添触媒量、反応温度、反応系内の圧力について、甲12の実施例1とほぼ同じ製造条件である実施例1と、どのような製造方法で製造されたのか明らかにされていない比較例1とが挙げられているに過ぎず、本件明細書には上記各構成因子をどのように制御すれば相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率を低減させることができるのか当業者がわかる程度に記載されておらず、当業者であっても過度な試行錯誤が必要であるため、実施可能要件違反である。 そこで検討する。 (1)について i)~iii)及びv)について これらの点はいずれも「アセトアルデヒドの三量体」及び「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」に関するものであるところ、上記1(1)で述べたとおり、「アセトアルデヒドの三量体」はアセトアルデヒドとクロトンアルデヒドの縮合物である、2-(1-ヒドロキシエチル)ブタン-2-エナール(3-3)と、3-ヒドロキシ-4-ヘキセナール(3-6)であり、「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」は2-エチル-1,3-ブタンジオール(4-3)と、1,3-ヘキサンジオール(4-6)であるという点で明確である。 iv)について 本件明細書には、「副産物」について、「アセトアルデヒドの三量体の水素化物」以外にも酢酸と1,3-ブチレングリコールとのエステル体等の各種化合物が記載されているから(【0030】等)、本件明細書の【0012】の記載が、4-3、4-6が加水分解しないことと矛盾するとはいえない。 (2)について 本件発明が実施可能要件を満たすことは、上記1(2)及び2(5)で述べたとおりであり、本件明細書の実施例1の記載及び反応温度、反応時間等の各条件に関する【0049】~【0070】の記載に基づいて、本件発明で特定される相対保持時間が1.6~1.8の範囲に現れるピークの面積率を有する1,3-ブチレングリコール製品を製造できるといえる。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 本件特許の請求項1~10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。 また、ほかに本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700352

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