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特許異議申立

2026-700147

磁石アクチュエータを備えた振動絶縁システムおよび磁石アクチュエータ

審判番号
2026-700147
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-556677
登録番号
7728177
請求日
2026年02月19日
審決日
2026年08月19日
公報発行日
2026年09月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】インテグレイテッド ダイナミクス エンジニアリング ゲーエムベーハー
  • 【権利者代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
  • 【権利者代理人】森田 拓
  • 【権利者代理人】前川 純一
  • 【権利者代理人】永島 秀郎
  • 【権利者代理人】上島 類
  • 【異議申立人】弁理士法人 RYUKA国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 中屋 裕一郎
  • 審判官 尾形 元
分類
P1651.121-Y (F16F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7728177号発明「磁石アクチュエータを備えた振動絶縁システムおよび磁石アクチュエータ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7728177号の請求項1~21に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7728177号(以下「本件特許」という。)の請求項1~21に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)3月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年3月19日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和7年8月14日に特許権の設定登録がされ、同年8月22日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和8年2月19日に特許異議申立人弁理士法人RYUKA国際特許事務所(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~21に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~21に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明21」といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち本件発明1及び12は次のとおりである。 「【請求項1】 振動絶縁システムであって、振動絶縁されて支承された荷重部分を含んでおり、前記振動絶縁システムが、コントローラを介して制御される少なくとも1つの磁石アクチュエータを含んでおり、該磁石アクチュエータが、前記振動絶縁されて支承された荷重部分に作用し、振動を減じるために反力を発生させる、振動絶縁システムにおいて、 前記磁石アクチュエータが、磁気シールドと、対峙する磁石を備えた磁石キャリアと、前記磁石の間に配置された、少なくとも1つのコイルを備えたコイルキャリアと、を含んでおり、 前記磁気シールドが、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成されており、該開口から前記コイルキャリアが突出し、 前記磁石アクチュエータが、対峙する少なくとも2つの磁石対をさらに含んでおり、前記少なくとも2つの磁石対が、互いに対して離間しており、該磁石対の間に、前記コイルの巻線が延びており、 前記コイルの巻線が延びている方向において隣接する前記少なくとも2つの磁石対の極が、交互に逆向きであることを特徴とする、振動絶縁システム。」 「【請求項12】 請求項1から11までのいずれか1項記載の振動絶縁システム用の磁石アクチュエータであって、対峙する磁石を備えた磁石キャリアと、前記磁石の間に配置された、少なくとも1つのコイルを備えたコイルキャリアとを含んでおり、前記磁石アクチュエータが、磁気シールドを含んでおり、前記磁気シールドが、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成されており、該開口から前記コイルキャリアが突出し、前記磁石アクチュエータが、対峙する少なくとも2つの磁石対をさらに含んでおり、前記少なくとも2つの磁石対が、互いに対して離間しており、該磁石対の間に、前記コイルの巻線が延びており、前記コイルの巻線が延びている方向において隣接する前記少なくとも2つの磁石対の極が、交互に逆向きである、磁石アクチュエータ。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人が主張する申立理由は、概略、以下のとおりである。 ・申立理由(進歩性) 本件発明1~21は、甲第1号証記載の発明、甲第2~6号証記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許の請求項1~21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (証拠方法) 甲第1号証:特開平8―312715号公報 甲第2号証:特開2005―209709号公報 甲第3号証:平成19年2月24日時点の「円筒型ボイスコイルモータ(VCM)|サーボソリューションサイトServo.jp」と題する青山特殊鋼株式会社のウェブページのウェブアーカイブをプリントアウトした書面 (https://web.archive.org/web/20070224133906/https://www.servo.jp/products/Circular_VCM.html) 甲第4号証:特開2004―257424号公報 甲第5号証:特開2010―84814号公報 甲第6号証:特開平8―8467号公報 上記甲第1号証~甲第6号証は、申立人が特許異議申立書に添付して提出した証拠であり、以下、甲第1号証~甲第6号証をそれぞれ「甲1」~「甲6」という。 第4 甲各号証の記載 1 甲1について (1)甲1の記載 甲1には、次の記載がある(下線は、当審が付したもの。以下同様。)。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、防振装置に関し、特に露光用XYステージを搭載してなる半導体製造装置の一構成ユニットとして好適に使用される防振装置、特に、空気バネをアクチュエータとした能動的除振装置とボイスコイルモータ(以下、VCMと略記する)をアクチュエータとした能動的除振装置とを複合的に使用した防振装置に関する。 【0002】 【従来の技術】除振台上には振動を嫌う機器群が搭載される。例えば、光学顕微鏡や露光用XYステージなどである。特に、露光用XYステージの場合には、適切かつ迅速な露光が行われるべく、外部から伝達する振動を極力排除した除振台上に同ステージは搭載されねばならない。なぜならば、露光は露光用XYステージが完全停止の状態で行われなければならないからである。さらに、露光用XYステージは、ステップ&リピートという間欠運転を動作モードとして持ち、繰り返しのステップ振動を自身が発生しこれが除振台の揺れを惹起せしめることにも注意せねばならない。この種の振動が整定しきれないで残留する場合にも、露光動作に入ることは不可能である。したがって、除振台には、外部振動に対する除振と、搭載された機器自身の運動に起因した強制振動の制振性能とをバランスよく実現することが求められている。」 「【0005】まず、図3を用い、空気バネをアクチュエータとする能動的除振装置の構成とその動作を説明する。同図において、1は空気バネ2へ動作流体の空気を給気・排気するサーボバルブ、3は除振台4の鉛直方向変位を計測する位置センサ、5は予圧用機械バネ、6は空気バネ2と予圧用機械バネ5および図示しない機構全体の粘性を表現する粘性要素である。これらの構成部品から組み合わされる機構は空気バネ式支持脚15と呼ばれる。次に、空気バネ式支持脚15に対するフィードバック装置7Aの構成とその動作を説明する。まず、加速度センサ8の出力は、適切な増幅度と時定数とを有するローパスフィルタないしバンドパスフィルタ9を介してサーボバルブ1の弁開閉用の電圧電流変換器10の前段に負帰還させている。この加速度フィードバックループにより機構の安定化が図られている。すなわち、ダンピングが付与されるのである。さらに、位置センサ3の出力は変位増幅器11を通って比較回路12の入力となっている。ここでは、空気バネ式支持脚15が接する地面に対する目標位置と等価な目標電圧13と比較されて偏差信号eとなる。この偏差信号eはPI補償器14を通って電圧電流変換器10を励磁する。すると、サーボバルブ1の弁開閉によって空気バネ2内の圧力が調整されて除振台4は目標電圧13で指定した所望の位置に定常偏差なく保持可能となる。ここで、Pは比例、Iは積分動作をそれぞれ意味する。空気バネ2をアクチュエータとした空気バネ式支持脚15は、除振台4の上に大重量物を搭載できる能力を持つ。しかし、空気バネ式支持脚15とフィードバック装置7Aとからなる能動的除振装置に対して高速応答を期待することはできなかった。 【0006】次に、永久磁石と巻線コイルとからなるボイスコイルモータ(以下、VCMと略記する)をアクチュエータとする能動的除振装置の構成とその動作を説明する。加速度センサの出力信号を積分器に通して速度信号に変換し、この信号でVCMを駆動する電力増幅器を励磁し、結果としてダンピングのみ支持する除振台に与えることがフィードバック装置7Vの基本構成になる。図4がVCMをアクチュエータとする能動的除振装置の構成である。同図において、16は加速度センサ8の出力信号を受けてオフセットと高周波の雑音を除去するための適切な前置フィルタ、17は前置フィルタ16の出力信号を速度の次元へと変換するための積分器、18はVCM19を駆動するための電力増幅器、20はVCM式支持脚である。なお、積分器17は必要に応じて疑似積分器としてもよい。VCMをアクチュエータとする能動的除振装置では、俊敏なる応答性を有することが特徴である。しかし、大重量物を位置決めする支持のためには定常的な電流を巻線コイルに通電しておかねばならないので発熱問題を引き起こし不利である。通常、発生した振動のみにVCMが応動するように制御ループが構成される。 【0007】最後に、平板型リニアモータの一例であるVCM19の構造を図5に示す。同図において、21は永久磁石、22は巻線コイル、23は巻線コイル22の支持枠、24は永久磁石21を固定する固定枠である。支持枠23を堅固に固定して巻線コイル22に電流を通電したときには永久磁石21を含めた固定枠24が、固定枠24を堅固に固定して巻線コイル22に電流を通電したときには巻線コイル22を含めた支持枠23がそれぞれ駆動力を得る。」 「【0014】本発明の目的は、このような従来技術の課題に鑑み、より低コストで調整の容易な防振装置を提供することにある。また、VCMに発生する逆起電力に基づいてダンピングを付与する際の上述の特性劣化を改善することにある。」 「【0017】また、別の側面からみれば、本発明の防振装置は、除振台の振動を抑圧するためのボイスコイルモータと、このボイスコイルモータに発生する逆起電力を検出する逆起電力検出手段とを備え、この逆起電力に基づいて前記除振台の振動を抑圧すべく前記ボイスコイルモータを駆動する防振装置において、前記除振台が設置された床の振動を計測する加速度センサを備え、この加速度センサの出力にも基づいて前記ボイスコイルモータを駆動するものであることを特徴とする。」 「【0020】 【実施例】本発明の一実施例に係る複合防振装置の構成を図1に示す。同図において、共通または対応する部分には同一符号を付けて、その部分の詳細な説明は省略する。さて、26は床の振動を検出するための第2の加速度センサ、27は第2の加速度センサ26の出力を電気信号に変換してオフセットや高周波雑音を除去するためのフィルタ、28は床振動フィードフォワード補償器でありこの出力はVCM19を駆動する電力増幅器18の前段に負帰還されている。これらのループはフィードフォワード装置7FFと呼ばれる。29は逆起電力検出回路である。従来のフィードバック装置7Vに対して29が新たに付加されたフィードバック装置7V′を構成している。逆起電力検出回路29の出力信号は電力増幅器18の前段に負帰還されているが、ここではVCM19のコイル両端電圧と、検出抵抗rの電圧降下によって感知したコイル電流とを入力信号としてコイルに発生する逆起電力が検出される。なお、空気バネをアクチュエータとする能動的除振装置とVCMをアクチュエータとする能動的除振装置とを単純に併合してなる複合防振装置(図6)の場合は、前者の装置におけるローパスフィルタないしバンドパスフィルタ9を通る信号のループと、後者の装置そのものであるメインループは、共に閉ループに対するダンピング付与の機能を持つ。よって、複合防振装置(図6)のダンピングを調整するループは二重となり、コストアップを招くのみならず調整作業も煩雑となる。ゆえに、図1では空気バネをアクチュエータとして有する能動的除振装置において、本来備えていた加速度のフィードバックループを除去したフィードバック装置7A′を構成する。」 「【0045】さらに、除振台へのダンピング付与をVCMの逆起電力によるフィードバックのみに頼る場合は、除振台の振動を検出する加速度センサが不要となるばかりか、その加速度センサの出力に適切な補償を掛けてVCMを駆動する制御ループをも除去することができる。したがってコスト低減に寄与するところ大の効果がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の一実施例に係る複合防振装置の構成を示す図である。 【図2】 本発明の第二の実施例に係る複合防振装置の構成を示す図である。 【図3】 空気バネをアクチュエータとする能動的除振装置の構成を示す図である。 【図4】 VCMをアクチュエータとする能動的除振装置の構成を示す図である。 【図5】 VCMの一構造を示す図である。 【図6】 能動的除振装置を単純に併合した複合防振装置を示す図である。 【図7】 逆起電力検出の原理説明図である。 【図8】 複合防振装置の制御ブロック図である。」 「【図1】 [図:0001439234000001.jpg] 」 「【図5】 [図:0001439234000002.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 「本発明の一実施例に係る複合防振装置の構成を図1に示す。同図において、共通または対応する部分には同一符号を付けて、その部分の詳細な説明は省略する。」(【0020】)の記載を踏まえれば、上記(1)から甲1の図1の「複合防振装置」について、次のことがいえる。 ア 複合防振装置は、半導体製造装置の一構成ユニットとして好適に使用される(【0001】)。 イ 除振台4は、空気バネで能動的除振を行いつつ位置を保持される(【0005】)。除振台4には、光学顕微鏡や露光用XYステージなどの機器群が搭載される(【0002】)。 ウ ボイスコイルモータ19は、フィードフォワード装置7FFにより制御される(【0020】)。ボイスコイルモータ19は除振台4の振動を抑圧する(【0017】)ものであるが、その振動抑圧のために、ボイスコイルモータ19が除振台4に力を作用させていることは、自明である。 エ ボイスコイルモータ19は、永久磁石21、永久磁石が固定された固定枠24、巻線コイル22を備えた支持枠23を有している(【0007】)。図5は「VCMの一構造を示す図」(【0045】)であるが、断面図なのか、側面図なのか不明である。しかしながら、ボイスコイルモータ19が「平板型リニアモータ」(【0007】)であるところ、平板型のリニアモータに関する技術常識(下記4参照)を踏まえれば、図5から次のことがいえる。 ・ボイスコイルモータ19は、互いに対向して対をなす永久磁石21の組が固定された一対の固定枠24と、互いに対向して対をなす永久磁石21の間に配置された巻線コイル22を備えた支持枠23を有している。 ・互いに対向して対をなす永久磁石21の組が2組あり、これらの互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれは、他の組に対して間隔をあけて隣接するように固定されている。 ・巻線コイル22は、互いに対向して対をなす永久磁石21の2組が間隔をあけて隣接する方向に沿って所定の幅を有する。 ・互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれ磁力線の向きが、他の組の磁力線の向きに対して反対向きである。 以上のことから、甲1には、次の「複合防振装置」に係る発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。 [甲1発明1] 「 半導体製造装置の一構成ユニットとして好適に使用される複合防振装置であって、空気バネで能動的除震を行いつつ位置を保持された、光学顕微鏡や露光用XYステージなどの機器群が搭載される除振台4と、フィードフォワード装置7FFにより制御されるボイスコイルモータ19とを有し、前記ボイスコイルモータ19が除振台4の振動を抑圧するための力を作用させるよう構成された複合防振装置において、 前記ボイスコイルモータ19は、平板型リニアモータであり、互いに対向して対をなす永久磁石21の組が固定された一対の固定枠24と、互いに対向して対をなす永久磁石21の間に配置された巻線コイル22を備えた支持枠23を有しており、 前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組が2組あり、前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれは、他の組に対して間隔をあけて隣接するように固定されており、 前記巻線コイル22は、前記互いに対向して対をなす永久磁石21の2組が間隔をあけて隣接する方向に所定の幅を有し、 前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれは、磁力線の向きが他の組の磁力線の向きに対して反対向きである、複合防振装置。」 また、甲1には、次の甲1発明1の「複合防振装置」に用いられる「ボイスコイルモータ19」に係る発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。 [甲1発明2] 「 甲1発明1の複合防振装置に用いるボイスコイルモータ19であって、 平板型リニアモータであり、 互いに対向して対をなす永久磁石21の組が固定された一対の固定枠24と、互いに対向して対をなす永久磁石21の間に配置された巻線コイル22を備えた支持枠23を有しており、 前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組が2組あり、前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれは、他の組に対して間隔をあけて隣接するように固定されており、 前記巻線コイル22は、前記互いに対向して対をなす永久磁石21の2組が間隔をあけて隣接する方向に沿って所定の幅を有し、 前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれは、磁力線の向きは他の組の磁力線の向きに対して反対向きである、ボイスコイルモータ19。」 2 甲2について (1)甲2の記載 甲2には、次の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 半導体装置の製造においては、マスク上に形成された各種パターンを光でウエハ上に縮小転写するリソグラフィ技術が利用されている。このリソグラフィ技術で用いるマスクのパターンには極めて高い精度が要求され、これを作製するのに電子ビーム露光装置が使用されている。又、マスクを用いることなしにウエハ上に直接パターンを描画する場合も電子ビーム露光装置が使用されている。」 「【0003】 電子ビーム露光装置には、ビームをスポット状にして使用するポイントビーム型、サイズ可変の矩形断面にして使用する可変矩形ビーム型等の装置があるが、どの構成も一般的には電子ビームを発生させる電子銃部と、そこより発せられたビームを試料上に導くための電子光学系と、電子ビームに対して全面に亘って試料を走査するためのステージ系及び電子ビームを試料面上に高精度に位置決めしていくための対物偏向器を有している。」 「【0006】 更に、ステージは、真空チャンバに設置され、且つ、電子ビームの位置決めに影響を与える磁場変動を引き起こしてはならないという拘束があったため、従来はステージは平面方向に動きさえすれば良く、例えば、転がりガイドやボールネジアクチュエータといった接触型の限られた機構要素で構成されていた。 【0007】 又、接触型では潤滑の問題や発塵等の問題も生じる。その対応技術として、特許文献1で開示されているような非接触アクチュエータを用いた非接触ステージ装置がある。従来例1を図10に示す。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0014】 しかしながら、今後、ウエハ大口径化が求められるリソグラフィにおいて、装置のストロークが増大する。従来例1においては、XY方向に大きく動くことができない。更に、全ての自重を非接触アクチュエータで浮上支持することに関して、電磁石で実施すると定常電流が増え、発熱が大きくなることによる精度向上が困難で且つ漏れ磁束が大きい。又、永久磁石吸引で実施すると、発熱は生じないが、漏れ磁束は解決できない。 【0015】 本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、大ストローク化にも対応でき、且つ、漏れ磁場含む磁場変動の少なくて発熱の少ないために特に電子ビーム露光装置に搭載する上で最適なステージ装置を提供することにある。」 「【0026】 4はトップステージ310を載置し、光軸(Z軸)と直交するXY方向に長ストローク移動可能なXYスライダであり、基準となるステージベース1上を滑らかに動くことができる。401はステージベース1を搭載し支持するベースホルダである。ベースホルダは床400に設置したエアマウント440で3箇所若しくは4箇所で支持されており、エアマウントは、ベースホルダやステージベース等の全搭載荷重を支えると共に、XYスライダ4が移動することによる偏荷重も支えている。」 「【0028】 更に、ベースホルダには床400に設置した電磁石ユニット434mにより、エアマウントによる支持力と並列に電磁力が作用する。本実施の形態においては、z方向に電磁力が発生する電磁石ユニット434mが3箇所配置され、ベースホルダにz及びθx,θy方向に駆動することができる。電磁石ユニット434mにおいて、固定子であるEコア434EMは固定フレーム430に、可動子であるIコア434Iはベースホルダに固定されている。Eコア434EMとIコア434Iの機械的な隙間は相当量開いており、ベースホルダのz方向ストロークは1mm程度とることは可能である。 【0029】 更に、Eコア及びIコアを覆うように磁性体のシールドが固定フレームに固定されており、真空試料室内に漏れる磁束は非常に少ない。又、縮小電子光学系100からは一定量の磁場が磁気シールドルーム300’内に漏れてきており(レンズ漏れ磁場)、Eコア及びIコアを覆う磁性体のシールドが光学系100近傍にあると、このレンズ漏れ磁場を更に引っ張ってきてしまい、例えば、XYステージに僅かな磁性体(本実施の形態では、可動子24m)があると、移動を伴うことにより磁場分布が変化し、結果的に磁場変動を起こしてしまうが、本実施の形態においては、磁性体はXYステージの下方にあるので、このレンズ漏れ磁場を引っ張ってくることがなく、実質問題とはならない。」 「【0034】 434’は電磁石434m及びアンプを含む特性である。Zrは指令値であり、Zはz干渉計の出力値である。指令値に対して、エアマウントコントローラ(Mコントローラ)によりサーボアンプへの入力信号が決定され、指令値に近づくようベースホルダが駆動される。又、一般には、エアマウントの特性440’は遅い応答であり、指令値のフィードフォワード信号を電磁石コントローラ(Eコントローラ)に与え、駆動する瞬間だけ電磁石コイルに通電し、電磁力をベースホルダに作用させることにより素早い駆動を実現している。」 「【0048】 図4に本発明で使用しているリニアモータをxスライダ3のリニアモータ34を例に説明する。 【0049】 34は前述したように可動子34m、固定子34sより構成されており、可動子34mは可動磁石134mag、磁気シールド134shより構成されていて、固定子34はコイル列134a,134b,134c,…がストローク方向に配置され、且つ、それぞれのコイルは2層になっている。真空試料室内にて、コイル列をむき出しにしないようにジャケット134jがコイル列を覆っている。可動磁石134magはy方向着磁磁石間にx方向着磁磁石を交互に挟んでコイル空間の磁束分布を正弦波に近い状態を作っている。」 「【図面の簡単な説明】 【0083】 【図1】本発明の実施の形態1を示す図である。 ・・・(略)・・・」(摘記にあたり、当審合議体により、【図2】~【図16】の説明を削除し、「・・・(略)・・・」と表示した。) 「【図1】 [図:0001439234000003.jpg] 」 (2)甲2記載の技術的事項 上記(1)から甲2記載の「電磁石ユニット434」について次のことがいえる。 ア 電磁石ユニット434mは、半導体装置の製造に使用される電子ビーム露光装置に搭載する上で最適なステージ装置に用いられる(【0002】、【0014】)。 イ 電磁石ユニット434mは、固定フレーム430に固定された固定子であるEコア434EMと、ベースホルダに固定された可動子であるIコア434Iとを有する(【0028】)。 ウ 電磁石ユニット434mは、固定フレームに固定され、Eコア434EM及びIコア434Iを覆う磁性体のシールドを有する(【0029】)。「xスライダ3のリニアモータ34」が有する磁気シールドを「磁気シールド134sh」(【0048】、【0049】)と「sh」を付して称していることに鑑みれば、図1において符号「434sh」として示されたものが、電磁石ユニット434mの磁性体のシールドであるといえる。 以上のことから、甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる。 [甲2記載の技術的事項] 「 半導体装置の製造に使用される電子ビーム露光装置に搭載する上で最適なステージ装置に用いる電磁石ユニット434mであって、 固定フレーム430に固定された固定子であるEコア434EMと、 ベースホルダに固定された可動子であるIコア434Iと、 固定フレームに固定され、Eコア434EM及びIコア434Iを覆う磁性体のシールド434shとを有する、 電磁石ユニット434m。」 3 甲3について (1)甲3の記載 甲3には、次の記載がある。 ア 「 [図:0001439234000004.jpg] 」 (1頁目上段) イ 「 [図:0001439234000005.jpg] 」 (1頁目中段) (2)甲3記載の技術的事項 上記(1)から甲3記載の「円筒型ボイスコイルモータ」について次のことがいえる。 ア 上記(1)イの「主な用途」の記載から、円筒型ボイスコイルモータは、アクティブ制振、加振器に用いられるものといえる。また、上記(1)アの「メリット」の記載から、円筒型ボイスコイルモータは、磁気漏洩が少ないといえる。 イ 上記(1)イの「構成例」おいて示された図から、円筒型ボイスコイルモータが、円筒状のアウターヨーク(鉄)と、当該アウターヨークに固定された磁石(NEOMAX)と、円筒状のコイルボビン(非磁性)と、当該コイルボビンに取り付けられたコイルと、前記アウターヨークの開放端に設けられた板状部とを有する点が看て取れる。 また、同図より、板状部の開口部に磁石(NEOMAX)の端部が露出し、当該板状部の開口部からコイルボビンが、当該コイルボビンに取り付けられたコイルとともに突出する点が看て取れる。 以上から、甲3には次の技術的事項が記載されていると認められる。 [甲3記載の技術的事項] 「 アクティブ制振、加振器に用いられる、磁気漏洩が少ない、円筒型ボイスコイルモータであって、 円筒状のアウターヨーク(鉄)と、当該アウターヨークに固定された磁石(NEOMAX)と、 円筒状のコイルボビン(非磁性)と、当該コイルボビンの取り付けられたコイルと、 前記アウターヨークの開放端に設けられた板状部とを有し、 当該板状部の開口部に前記磁石(NEOMAX)の端部が露出し、当該板状部の開口部から前記コイルボビンが、前記コイルボビンに取り付けられたコイルとともに突出する、円筒型ボイスコイルモータ。」 4 甲4について 甲4には、次の記載がある。 「【0018】(微動リニアモータの構成) 図3にY微動リニアモータ500及びZ微動リニアモータ600の構造の詳細を示す。Z微動リニアモータ600はZヨーク固定板601と、Zヨーク固定板601を挟むように設けられた2枚のZヨーク602が設けられている。各々のZヨーク602には、y方向(Zヨークの厚さ方向)に着磁される2極の永久磁石(Z磁石)603が設けられており、この永久磁石603と、Zコイル604とは所定の間隔をもって非接触で対面した状態に構成されている。扁平トラック形状のZコイル604はZコイル枠605によって支持されている。 【0019】 Zヨーク固定板601は載置台200側に固定され、Zコイル枠605はベース板100側に固定される。Zコイル604に電流を流すことでコイルとZ磁石603との間にZ方向のZローレンツ力610が発生するようになっている。 【0020】 一方、Yリニアモータ500は2個のYヨーク固定板501を有し、このYヨーク固定板501にYヨーク502が設けられている。Yヨーク502には、x方向(Yヨークの厚さ方向)に着磁される2極の永久磁石(Y磁石)503が設けられており、この永久磁石503(Y磁石)と、Yコイル504とは非接触で対面した状態に構成されている。扁平トラック形状のYコイル504は、Yコイル枠505によって支持されている。Yヨーク固定板501は載置台200側に固定され、Yコイル枠505はベース板100側に固定される。Yコイル504に電流を流すことでコイルとY磁石503との間にY方向のYローレンツ力510が発生するようになっている。」 「【図3】 [図:0001439234000006.jpg] 」 5 甲5について 甲5には、シールドケース18が、軟鉄、パーマロイ等の電磁シールド材料で構成されている点(【0030】)が記載されている。 6 甲6について 甲6には、磁気遮蔽が、パーマロイ、ミューメタル等の高透磁率料を使用して行われる点(【0002】)が記載されている。 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明1とを対比する。 ア 後者の「複合防振装置」は前者の「振動絶縁システム」に相当する。 イ 後者の「光学顕微鏡や露光用XYステージなどの機器群が搭載される除振台4」又は「除振台4」が前者の「荷重部分」に相当し、後者の「除振台4」が「空気バネで能動的除振を行いつつ位置を保持され」ることが、前者の「荷重部分」が「振動絶縁されて支承され」ることに相当する。 また、後者の「フィードフォワード装置7FF」及び「ボイスコイルモータ19」はそれぞれ、前者の「コントローラ」及び「少なくとも1つの磁石アクチュエータ」に相当し、後者の「ボイスコイルモータ19」が「フィードフォワード装置7FFにより制御される」ことは、前者の「少なくとも1つの磁石アクチュエータ」が「コントローラを介して制御される」ことに相当する。 そして、後者の「複合防振装置」が除振台4とボイスコイルモータ19を「有」することは、前者の「振動絶縁システム」が荷重部分と少なくとも1つの磁石アクチュエータを「含」むことに相当する。 ウ 後者において、「除振台4」が「空気バネで能動的除振を行いつつ位置を保持され」るとともに、「前記ボイスコイルモータ19が除振台4の振動を抑圧するための力を作用させるよう構成され」ることが、前者の「該磁石アクチュエータが、前記振動絶縁されて支承された荷重部分に作用し、振動を減じるために反力を発生させる」ことに相当する。 エ 後者の「永久磁石21」は前者の「磁石」に相当し、後者の「永久磁石21」が「互いに対向して対をなす」ことは前者の「磁石」が「対峙する」ことに相当する。加えて、後者の「永久磁石21の組が固定された」という事項は前者の「磁石を備えた」という事項に相当し、後者の「固定枠24」が前者の「磁石キャリア」に相当する。 また、後者の「互いに対向して対をなす永久磁石21の間に配置された」という事項は前者の「前記磁石の間に配置された」という事項に相当し、後者の「巻線コイル22」及び「支持枠23」はそれぞれ、前者の「少なくとも1つのコイル」及び「コイルキャリア」に相当する。 そして、後者の「前記ボイスコイルモータ19」が固定枠24と支持枠23を「有」することは、前者の「前記磁石アクチュエータ」が磁石キャリアとコイルキャリアを「含」むことに相当する。 オ 後者の「前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組」は前者の「対峙する」「磁石対」に相当するし、後者の「前記ボイスコイルモータ19」が「有」する「互いに対向して対をなす永久磁石21の組」が「2組」あることは、前者の「前記磁石アクチュエータが、対峙する少なくとも2つの磁石対をさらに含んで」いることに相当する。加えて、後者の「前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれは、他の組に対して間隔をあけて隣接するように固定されて」いることが、前者の「前記少なくとも2つの磁石対が、互いに対して離間して」いることに相当する。 次に、後者の「巻線コイル22」が「互いに対向して対をなす永久磁石21の間に配置され」ることが、前者の「該磁石対の間に、前記コイルの巻線が延び」ることに相当する。 加えて、後者においては、「前記巻線コイル22は、前記互いに対向して対をなす永久磁石21の2組が間隔をあけて隣接する方向に沿って所定の幅を有」するが、巻線コイル22が当該方向に沿って「所定の幅を有する」ということは、その「所定の幅を有する」部分に着目すれば、前記巻線コイル22の一部分が当該幅を有する方向に沿って「延びている」ということもできる。すなわち、後者は、「前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組それぞれは、他の組に対して間隔をあけて隣接するように固定されており」、その「前記互いに対向して対をなす永久磁石21の2組が間隔をあけて隣接する方向」に「前記巻線コイル22」の一部分が幅を有する方向に「延びている」といえ、これを「前記巻線コイル22」から見て表現すれば、「前記巻線コイル22」の一部分が、幅を有する方向に「延びて」おり、この方向に沿って「前記互いに対向して対をなす永久磁石21の2組が間隔をあけて隣接する」しているということができる。そうすると、後者の「前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれは、他の組に対して間隔をあけて隣接するように固定されており」、「前記巻線コイル22は、前記互いに対向して対をなす永久磁石21の2組が間隔をあけて隣接する方向に沿って所定の幅を有」するという事項は、前者の「前記コイルの巻線が延びている方向において」「2つの磁石対」が「隣接する」という事項に相当する。 そして、後者の「前記互いに対向して対をなす永久磁石21の組のそれぞれは、磁力線の向きが他の組の磁力線の向きに対して反対向きである」ことは、前者の「前記少なくとも2つの磁石対の極が、交互に逆向きであること」に相当する。 以上より、本件発明1と甲1発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点1で相違する。 [一致点] 振動絶縁システムであって、振動絶縁されて支承された荷重部分を含んでおり、前記振動絶縁システムが、コントローラを介して制御される少なくとも1つの磁石アクチュエータを含んでおり、 該磁石アクチュエータが、前記振動絶縁されて支承された荷重部分に作用し、振動を減じるために反力を発生させる、振動絶縁システムにおいて、 前記磁石アクチュエータが、対峙する磁石を備えた磁石キャリアと、前記磁石の間に配置された、少なくとも1つのコイルを備えたコイルキャリアと、を含んでおり、 前記磁石アクチュエータが、対峙する少なくとも2つの磁石対をさらに含んでおり、前記少なくとも2つの磁石対が、互いに対して離間しており、該磁石対の間に、前記コイルの巻線が延びており、 前記コイルの巻線が延びている方向において隣接する前記少なくとも2つの磁石対の極が、交互に逆向きである、振動絶縁システム。 [相違点1] 本件発明1は、磁石アクチュエータが「磁気シールド」を含んでおり、「前記磁気シールドが、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成されており、該開口から前記コイルキャリアが突出し」ているのに対し、甲1発明1は、そのような構成を有しているか明らかでない点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 甲2記載の技術的事項の「磁性体のシールド434sh」について、甲2においては、図1中で符号「434sh」として磁性体のシールドが示されているにすぎず、その図1も模式図であり、Iコア434I及び磁性体のシールド434shの形状及び構造を十分に示したものとはいえない。よって、甲2に、本件発明1の「前記磁気シールドが、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成」されるという事項に相当する技術的事項が記載されていると認定することはできない。 仮に、甲2に本件発明1の「前記磁気シールドが、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成」されるという事項に相当する技術的事項が記載されているとしても、甲2記載の技術的事項の電磁石ユニット434mが「磁性体のシールド434sh」を有している理由は、電磁石ユニット434mが「電子ビーム露光装置に搭載する上で最適なステージ装置」に用いられるものであり、かかる電子ビーム露光装置においては、「電子ビームの位置決めに影響を与える磁場変動を引き起こしてはならない」(甲2【0006】)という課題があるからである。これに対し、甲1発明1は「光学顕微鏡や露光用XYステージなどの機器群」を備えているが、この機器は電子ビームを使用するものとはいえない。したがって、甲1発明1のボイスコイルモータ19と甲2記載の技術的事項の電磁石ユニット434mは、半導体製造装置に用いられる磁力で作動するアクチュエータである点で共通するとはいえ、甲1発明1の除振台4に搭載される光学顕微鏡や露光用XYステージなどの機器が電子ビームを使用するものとはいえないから、甲1発明1は電子ビームの位置決めに影響を与える磁場変動を引き起こしてはならないという課題を有しておらず、甲1発明1のボイスコイルモータ19に甲2記載の技術的事項のような磁気シールドを適用する動機付けがあるとはいえない。 加えて、甲2記載の技術的事項の電磁石ユニット434mは甲1発明1のボイスコイルモータ19と同様の「平板型」のリニアモータであるのか否かも明らかでない。また、「電磁石ユニット434m」は、その名が示すとおり、「電磁石」を備えるのであって、永久磁石を備えたもの、さらに言えば、甲2記載の技術的事項の「電磁石ユニット434m」が、互いに対向して対をなす永久磁石の組と、その間に配置されたコイル支持部材とを有するもの、とは認められない。このような甲1発明の「ボイスコイルモータ19」と甲2記載の技術的事項の「電磁石ユニット434m」のアクチュエータとしての基本的な構成の違いに照らせば、甲1発明1のボイスコイルモータ19に甲2記載の技術的事項のような磁気シールドを適用する動機付けがあるとはいえない。 よって、甲1発明1において、甲2記載の技術的事項から、上記相違点1に係る本件発明1の構成に想到することは、当業者が容易になし得たことではない。 また、甲3記載の技術的事項の「円筒型ボイスコイルモータ」は「磁気漏洩が少ない」ものであるが、この作用効果がいかなる構成によりもたらされているのか明らかではない。甲3記載の技術的事項は、「円筒状のアウターヨーク(鉄)」と「前記アウターヨークの開放端に設けられた板状部」とを有し、この板状部に「開口」を設け、「当該板状部の開口部から当該コイルボビンの取り付けられたコイルが突出する」という構成(以下、この一連の構成を「アウターヨークと板状部に係る構成」という。)を有するが、「当該板状部分の開口部に前記磁石(NEOMAX)の端部が露出」していること、「板状部の開口部からコイルボビンが、当該コイルボビンに取り付けたられたコイルとともに突出する」ことに鑑みれば、甲3記載の技術的事項の上記アウターヨークと板状部に係る構成が、「磁気漏洩が少ない」という作用効果をもたらしているとも認められない。 仮に、甲3記載の技術的事項の上記アウターヨークと板状部に係る構成が、磁気漏洩を少なくするという作用効果を奏するものだとしても、甲1発明1に磁気漏洩を少なくしたいという課題は認められないから、甲1発明1のボイスコイルモータ19に甲3記載の技術的事項の上記アウターヨークと板状部に係る構成を適用する動機付けはない。 また、甲3記載の技術的事項の上記アウターヨークと板状部に係る構成が、磁気漏洩を少なくするという作用効果を奏するものであるか否かは措くとしても、甲1発明1のボイスコイルモータ19は「平板型」であるのに対し、甲3記載の技術的事項の「円筒型ボイスコイルモータ」は円筒型であって、そもそも両者の間で構造が大きく異なることに照らせば、甲1発明1に甲3記載の技術的事項の上記アウターヨークと板状部に係る構成を適用する動機付けがあるとはいえない。 よって、甲1発明1において、甲3記載の技術的事項から、上記相違点1に係る本件発明1の構成に想到することは、当業者が容易になし得たことではない。 その他、甲4~甲6は、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成された磁気シールドを開示するものではない。 さらに、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成された磁気シールドが周知技術であるという証拠は示されていないし、甲1発明1のボイスコイルモータ19の平板型のリニアモータにかかる磁気シールドを設けることが設計的事項の範疇であるといえるような証拠も示されていない。 以上のことから、甲1発明1において、甲2~6記載の技術的事項から、上記相違点1に係る本件発明1の構成に想到することは、当業者が容易になし得たことではない。 (3)申立人の主張について 申立人は、甲2記載の技術的事項に関し、「漏れ磁場を含む磁場変動を低減するために、磁気アクチュエータが1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成されている磁気シールドを含む点、および該開口から可動子が突出している点は甲第2号証(特に図1)に記載されている(以下、「甲2記載事項」という。)。この点については、特許出願人も、令和7年6月4日提出の意見書において「図1等には、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成されている磁気シールドを有する電磁石ユニット434mが示されている」と認めている。そして、甲第2号証に記載されたものは電子ビーム露光装置などを搭載するステージ装置に用いられるものであり、甲1発明と技術分野を一にするものであることから、甲2記載事項を甲1発明に適用することは、容易に想到し得るものである。」(申立書(4)ウ「(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比」)と主張する。 しかしながら、上記(2)で述べたとおり、甲1発明1に甲2記載の技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえず、この申立人の主張は採用できない。 また、申立人は、甲3記載の技術的事項に関し、「磁気漏洩を低減するために、磁気アクチュエータが1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成されている磁気シールドを含む点、および該開口から可動子が突出している点は甲第3号証(特に構成例の図)にも記載されている(以下、「甲3記載事項」という。)。そして、甲第3号証に記載されたものはアクティブ制振に用いられるものであり、甲1発明と技術分野を一にするものであることから、甲3記載事項を甲1発明に適用することは、容易に想到し得るものである。」と主張する。 しかしながら、上記(2)で述べたとおり、甲1記載の発明に甲3記載の技術的事項を適用する動機付けがあるとはいえないから、この申立人の主張も採用できない。 (4)本件発明1のまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明1、甲2~6記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 2 本件発明2~11について 本件発明2~11は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用した「振動絶縁システム」に係る発明であるところ、本件発明2~11と甲1発明1とは、少なくとも上記相違点1で相違する。 そうすると、上記1(2)~(4)と同様に、本件発明2~11は、甲1発明1、甲2~6記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 3 本件発明12について (1)対比 本件発明12と甲1発明2とを対比する。 甲1発明2の「ボイスコイルモータ19」は、本件発明12の「磁石アクチュエータ」に相当し、甲1発明2の「甲1発明1の複合防振装置」と「請求項1から11までのいずれか1項記載の振動絶縁システム」とは、「振動絶縁システム」である限りで一致する。そうすると、甲1発明2における「甲1発明1の複合防振装置に用いるボイスコイルモータ19」という事項と、本件発明1の「請求項1から11までのいずれか1項記載の振動絶縁システム用の磁石アクチュエータ」という事項とは、「振動絶縁システム用の磁石アクチュエータ」である限りで一致する。 そして、甲1発明2の「甲1発明1の複合防振装置に用いるボイスコイルモータ19であって」という発明事項以外の発明特定事項と、本件発明12の「請求項1から11までのいずれか1項記載の振動絶縁システム用の磁石アクチュエータであって」という発明事項以外の発明特定事項とを対比すると、両者の発明特定事項の間には、上記1(1)エ、オと同様の相当関係がいえる。 そうすると、本件発明12と甲1発明2とは次の点の一致点で一致し、次の相違点2及び3で相違する。 [一致点] 「振動絶縁システム用の磁石アクチュエータであって、対峙する磁石を備えた磁石キャリアと、前記磁石の間に配置された、少なくとも1つのコイルを備えたコイルキャリアとを含んでおり、 前記磁石アクチュエータが、対峙する少なくとも2つの磁石対をさらに含んでおり、前記少なくとも2つの磁石対が、互いに対して離間しており、該磁石対の間に、前記コイルの巻線が延びており、 前記コイルの巻線が延びている方向において隣接する前記少なくとも2つの磁石対の極が、交互に逆向きである、磁石アクチュエータ。」 [相違点2] 「振動絶縁システム」について、本件発明12は、これが「請求項1から11までのいずれか1項記載の振動絶縁システム」であるのに対して、甲1発明2は、「甲1発明1の複合防振装置」である点。 [相違点3] 本件発明12は、「磁気シールド」を含んでおり、「前記磁気シールドが、1つの壁のみに開口を備えたケーシングとして形成されており、該開口から前記コイルキャリアが突出し」ているのに対し、甲1発明2は、そのような構成を有するか明らかでない点。 (2)判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 甲1発明2のボイスコイルモータ19の用途は「甲1発明1の複合防振装置」であり、この「複合防振装置」は、「半導体製造装置の一構成ユニットとして好適に使用される複合防振装置」であり、ボイスコイルモータ19は、「空気バネで能動的除振を行いつつ位置を保持された、光学顕微鏡や露光用XYステージなどの機器群が搭載される除振台4」に対して「振動を抑圧するための力を作用させるよう」に用いられるものである。甲1発明2のかかる用途を前提とすれば、甲1発明2に磁場変動を引き起こしてはならないという課題や、磁気漏洩を少なくしたいという課題があるとは認められない。 そうすると、上記1(2)と同様に、甲1発明2において、甲2~6記載の技術的事項から、上記相違点3に係る本件発明12の構成に想到することは、当業者が容易になし得たことではない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲1発明2、甲2~6記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 4 本件発明13~18について 本件発明13~18は、請求項12の記載を直接的又は間接的に引用した「磁気アクチュエータ」に係る発明であるところ、本件発明13~18と甲1発明2とは、少なくとも上記相違点3で相違する。 そうすると、上記3(2)と同様に、本件発明13~18は、甲1発明2、甲2~6記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 5 本件発明19~21について 本件発明19~21は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用した「振動絶縁システム」と、請求項12の記載を直接的又は間接的に引用した「磁気アクチュエータ」とを含む、「光学装置」に係る発明であるところ、本件発明19~21と甲1記載の発明とは、少なくとも上記相違点1~3で相違する。 そうすると、上記1(2)~(4)、及び3(2)と同様に、本件発明19~21は、甲1発明2、甲2~6記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~21に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700147

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