特許無効審判
2025-800006
ウィッグ型エクステンション
- 審判番号
- 2025-800006
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2023-095255
- 登録番号
- 7457269
- 請求日
- 2025年01月29日
- 審決日
- 2025年10月01日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マスターズプランナー 株式会社
- 【請求人代理人】内島 裕
- 【請求人】株式会社 ペスカインターナショナル
- 【請求人代理人】内島 裕
- 【被請求人】ちょいぷらす株式会社
- 【被請求人代理人】日高 賢治
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 川口 真一
- 審判官 永冨 宏之
- 分類
- P1113.121-Y (A41G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第7457269号発明「ウィッグ型エクステンション」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許の手続の経緯の概略
(1) 本件特許の出願から本件無効審判請求までの経緯
本件特許(請求項1~8に係る特許)についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年6月9日:出願(特願2023-095255号)
同年9月8日付け:拒絶理由通知
同年9月15日:意見書、手続補正書の提出
同年11月20日付け:拒絶理由通知
同年11月29日:意見書、手続補正書の提出
令和6年1月31日付け:特許査定
同年2月14日:出願人名義変更届(承継人ちょいぷらす株式会社)の提出
同年3月19日:設定登録
同年3月28日:特許公報の発行
同年6月18日:本件審判請求人らを特許異議申立人らとする、請求項1~8に係る特許についての特許異議申立書の提出(異議2024-700576号)
同年12月2日付け:異議の決定(請求項1~8に係る特許を維持する)
(2) 本件無効審判の手続の経緯
本件無効審判における手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和7年1月29日:請求項1~8に係る特許についての審判請求書の提出
同年4月21日:答弁書の提出
同年6月13日付け:審理事項通知
同年7月4日:口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年7月11日:口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年8月19日:口頭審理
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~8の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
表面から毛髪及び/又は人工毛髪が上向きに植毛された細長いテープ状の植毛ネットと、
前記植毛ネットの裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在な装着部材を含み、
前記植毛ネットの長さ方向を前後方向、前記長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側を先端側及び後頭部側を後端側、使用者の頭皮側を下向き、とそれぞれ定義した場合、
前記装着部材は、前記植毛ネットの前記長さ方向の中心から所定間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置され、かつ2分割された前記装着部材は、それぞれ前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されており、
前記植毛ネットの前記先端側及び/又は前記後端側であって、前記装着部材との間の前記隙間には、前記毛髪及び/又は前記人工毛髪が裏面から下向きに植毛されている、
ことを特徴とするウィッグ型エクステンション。
【請求項2】
前記植毛ネットの前記先端側及び/又は前記後端側であって、前記装着部材との間の前記隙間は3~5mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項3】
前記植毛ネットの長さは30~110mm、幅は10~30mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項4】
2分割されている前記装着部材の各長さは10~50mm、各幅は6~26mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項5】
前記装着部材は土台部と複数の足から構成され、前記足はキノコ型の突起であり、前記足の密度は62~68本/cm2である、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項6】
前記装着部材は、前記植毛ネットの前記長さ方向の中心位置において4~6mmの間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項7】
前記装着部材は土台部と複数の足から構成され、前記植毛ネットはナイロン製、前記装着部材の前記土台部はナイロン製、前記足はポリプロピレン製である、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項8】
前記ウィッグ型エクステンションの総重量は、4~15gである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。」
第3 請求人の主張及び証拠方法
1 請求の趣旨
特許第7457269号の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 請求人の主張の概要
(1) 無効理由1(甲第1号証に掲載された発明に基づく進歩性の欠如)
本件特許発明1~8は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証(以下、「甲1」のように番号に対応して記載する。)に掲載された発明に、頒布された刊行物である甲4~7に示される周知技術、及び甲9~30に示される公知の常套手段を適用し、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許発明1~8に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
3 証拠方法
甲1:「【PESCA】3秒で若返り!ピンがない!最小・最軽量の白髪隠し特化型ウィッグ「ヘアメイト チャチャ」3月16日(木)発売」
https://www.atpress.ne.jp/news/347354
甲2:「甲1製品」と同一製品(へアメイト チャチャ)の「植毛ネット」の先端側の拡大写真
甲3:「甲1製品」と同一製品(へアメイト チャチャ)につき、ショップチャンネルにおいて放送された動画
甲4:特開2013-47400号公報
甲5:特開2017-166083号公報
甲6:特開平8-199412号公報
甲7:実願平3-81817号(実開平5-66015号)のCD-ROM
甲8:「甲1製品」と同一製品(へアメイトチャチャ)の写真
甲9:特開平10-63393号公報
甲10:特開2005-76437号公報
甲11:特開2008-120226号公報
甲12:特開2008-163662号公報
甲13:特開2014-233319号公報
甲14:特開2016-131626号公報
甲15:特開2018-103695号公報
甲16:特開2021-137518号公報
甲17:登録実用新案第3128281号公報
甲18:登録実用新案第3186587号公報
甲19:登録実用新案第3234477号公報
甲20:登録実用新案第3237914号公報
甲21:意匠登録第1127096号公報
甲22:意匠登録第1163539号公報
甲23:意匠登録第1188069号公報
甲24:意匠登録第1224500号公報
甲25:意匠登録第1296072号公報
甲26:意匠登録第1323128号公報
甲27:意匠登録第1584411号公報
甲28:意匠登録第1630539号公報
甲29:意匠登録第1677650号公報
甲30:意匠登録第1693506号公報
なお、甲2、甲3、甲8は、甲1に掲載された発明を補足する証拠であって、主引用発明を構成するものではない。
第4 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
2 被請求人の主張の概要
本件特許発明1~8に無効理由は存在しない。
第5 当審の判断
1 甲号証の記載事項(以下、下線は当審が付与した。)
(1) 甲1の掲載事項及び甲1に掲載された発明
甲1には、次の事項が掲載されている。
ア 「【PESCA】3秒で若返り!ピンがない!最小・最軽量の白髪隠し特化型ウィッグ「ヘアメイトチャチャ」3月16日(木)発売 2023.03.17」(表題)
イ 「2. クリップピン不使用!
今までのウィッグはクリップピンで留めるものが主流でしたが、チャチャはクリップピンを一切使わずに、密着度の高い「chachaテープ」を使用しています。カバーしたい分け目部分に乗せると専用の面テープが一瞬で自毛を捉え自然な仕上がりに。クリップピンがついていないので、髪がつれて痛くなることもなく、アレンジヘアも自在に楽しめます。」
ウ 「4. お手入れ簡単で、衛生的!
衛生面、耐久性を考慮したオリジナル人工毛。自然でありながら丈夫で、速乾性に優れているので、自然乾燥でいつでも清潔にお使いいただけます。」
エ 「【商品概要】
商品名: ヘアメイト チャチャ
価格 : 68,200円(税込)
素材 : ネット部分/ナイロン、人工毛/ポリエステル
サイズ: 【ショートタイプ】
ネット部分/20×90mm
前/120~130mm、横/160~170mm、後/160~170mm
【ロングタイプ】
ネット部分/20×90mm
前/180~190mm、横/210~220mm、後/210~220mm
重さ : ショートタイプ/6.0~6.5g
ロングタイプ/9.0~9.5g
発売日: 2023年3月16日(木)
URL : https://www.pesca.jp/」
オ
「ヘアメイト チャチャ(3)」との表題が付された図
[図:0001429960000001.jpg]
カ
「ヘアメイト チャチャ(4)」との表題が付された図
[図:0001429960000002.jpg]
キ 上記オの右図の図示事項より、ネット部分が、人工毛が植毛され、細長いテープ状であること、ネット部分の長さ方向を前後方向と定義した場合、図面上に「後」と記載されているネット部分の後端とchachaテープの端部との間に所定幅の隙間があることが把握できる。また、上記オの右図及び上記カの図示事項を合わせてみると、人工毛が植毛されている面をネット部分の表面とすると、chachaテープは、ネット部分の裏面に配置されていることがわかる。そして、上記カの図示事項から、表面から人工毛が上向きに植毛されているといえる。
ク 上記イ及び上記オの左図の図示事項から、chachaテープは、使用者の頭髪に取付け/取り外し自在なものであるといえ、使用の態様から、chachaテープは、ネット部分の裏面に固定されるものであるといえる。また、上記オの右図下の記載から、chachaテープが交換可能なものであることを踏まえると、chachaテープとネット部分との固定は、接着によるものであることは明らかである。
上記ア~クを踏まえると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が掲載されている。
<甲1発明>
「表面から人工毛が上向きに植毛された細長いテープ状のネット部分と、
前記ネット部分の裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在なchachaテープを含み、
前記ネット部分の長さ方向を前後方向と定義した場合、前記chachaテープは、前記ネット部分の後端と前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されているウィッグ」
(2) 甲4~7の記載事項及び甲4~7に示される周知技術
ア 甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
(ア)
「【0001】
本発明は、使用者の頭部に装着されるベースに、人工または天然の毛髪を植え込んで構成されるカツラ(あるいは、ウィッグ)に関する。」
(イ)
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記いずれのタイプのカツラにおいても、ベースの前頭部端縁が波打ったウェーブ状に構成されているが、その部分が頭皮から捲れ上がったり、反りや丸まりが生じて、不自然な外観となってしまうことがある。
そこで、本発明の目的は、カツラのベースの前頭部端縁を波打ち形状とした場合であっても、そのような不都合が生じないカツラを提供することである。」
(ウ)
「【0020】
≪飾り植えを追加した例≫ 図4は、カツラの側方断面図を模式的に示している。かつらのベース10に対する植毛は、当然にベース10の上面に行うが、前頭部端縁11の近傍において、ベース10の裏面にも植毛してもよい。本明細書では、これを「飾り植え」と呼ぶ。このような「飾り植え」を施すことで、生え際におけるベース端縁を隠す迷彩効果がさらに高まるとともに、ボリューム感を増すことが可能となる。」
(エ)
図4
[図:0001429960000003.jpg]
イ 甲5の記載事項
甲5には、次の事項が掲載されている。
(ア)
「【0001】
本発明は、かつらベースに擬毛を植設したかつらに関する。」
(イ)
「【0005】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、装着していることが露見されにくいかつらを提供することを目的とする。」
(ウ)
「【0023】
次に、本発明の具体的な実施形態に係るかつらについて、以下に図面を用いながら詳細に説明する。ここでは、前頭部に対応するかつらの前側に裏毛用部材が取り付けられた場合を例にとって、具体的な実施形態の説明を行う。
(1つの実施形態に係るかつらの説明)
(断面形状)
はじめに、図1を参照しながら、本発明の1つの実施形態に係るかつら2の主に断面形状及び構造を説明する。図1は、本発明の1つの実施形態に係るかつら2を模式的に示す側面断面図である。(a)は、かつら2を使用者が装着したところを示し、(b)は、かつら2の基布4の前端縁4a近傍及び裏毛用部材6の設置領域を拡大して示す。なお、図1(b)では、植設された擬毛の記載を省略して示してある。
【0024】
本実施形態に係るかつら2は、基布4と、基布4の裏面4cに取り付けられた裏毛用部材6を有するかつらベース20を備える。かつらベース20の基布4の表面4bに表の擬毛8が植設される。表の擬毛8は、少なくとも基布4の前端縁4aの近傍領域に植設されており、前頭側にだけ擬毛が植設された部分かつらの場合も、全領域に擬毛が植設された全頭かつらの場合もあり得る。
【0025】
かつらベース20の基布4の裏面4cに取り付けられた裏毛用部材6には、裏の擬毛10が植設される。表の擬毛8及び裏の擬毛10は、人毛や、合成繊維で作った人工毛から形成することができる。用途に応じて、表の擬毛8及び裏の擬毛10を同一の毛髪で形成することもできるし、異なる毛髪で形成することもできる。擬毛8、10を植設するのは、既知の任意の手段を用いることができる。」
(エ)
「【0034】
以上のように、本実施形態では、裏毛用部材6の前端面6aが基布4の前端縁4aから離間した位置に配置され、裏毛用部材6が厚みtを有するので、使用者がかつら2を装着したとき、基布4の前端縁4a及び裏毛用部材6の前端面6aの間の領域において、図1(a)、(b)の矢印Aで示すように、基布4の裏面4cと使用者の頭皮30との間に空間が形成される。これにより、裏毛用部材6に植設された裏の擬毛10は、基布4及び頭皮30に挟まれて位置を固定されることがないので、裏の擬毛10の動きの自由度が増し、自然な外観を得ることができる。また、裏の擬毛10どうしが重なり易くなり、裏の擬毛10及び表の擬毛8が重なり易くなるのでるので、基布4の前端縁4aが露見しにくくなる。
特に、髪の毛を後ろ側に流すヘアスタイルの場合には、裏の擬毛10どうしの重なり合いにより、基布4の前端縁4aの露見を効果的に防止できる。一方、髪の毛を前に垂らすヘアスタイルの場合には、裏の擬毛10及び表の擬毛8の重なり合いにより、基布4の前端縁4aの露見を効果的に防止できる。」
(オ)
図1
[図:0001429960000004.jpg]
ウ 甲6
甲6には、次の事項が掲載されている。
(ア)
「【0005】
【作用】本発明のかつらでは、かつらベ-スの裏面に先端部分がかつらベ-スの前端縁から外方に突出した前端縁被覆用毛髪を取付けているから、使用者の頭に装着して前髪を後方に上げてもかつらベ-スの前端縁が前端縁被覆用毛髪で被覆されて露出することがないので、オ-ルバックにしたり、あるいは七三に分けて前髪を後方に上げてセットしても、他人にかつらを被っていることが分からず、安心して使用することができる。また、前端縁被覆用毛髪をかつらベ-スの後端側に向けて取付けると共に先端部をかつらベ-スの前端側に向けて湾曲させたり、かつらベ-スの裏面先端に肉厚部を形成すると、前髪部分に厚みができて立体感を持たせることができる。また、かつらベ-スの裏面側部と裏面後部にも側端縁被覆用毛髪と後端縁被覆用毛髪を取付けると、強風が吹いて毛髪が乱れても、かつらベ-スの周端縁の露出を防止することができるので、かつらを使用していることを他人に知られることがなく、安心して使用することができる。」
(イ)
「【0006】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本実施例のかつらを裏面側から見た斜視図、図2はそのかつらの使用状態を示す説明図である。
【0007】本実施例のかつらAは、かつらベ-ス1と、表面毛髪2と、前端縁被覆用毛髪3とを主要な構成としている。
【0008】前記かつらベ-ス1は、使用者の頭aに装着するもので、使用者の頭の形に適応するようにキャップ状に形成している。かつらベ-ス1は、ナイロン,ポリエステルなどの合成繊維を素材とした網状の生地10で形成している。尚、図中11で示すものはかつら取付け用ヘア-ピン12や図示しない両面接着テ-プ、あるいは編み込みを装着するためのタブ層であり、ウレタンコ-ティング液を塗布して形成している。13はかつらベ-ス1の表面、14はかつらベ-ス1の裏面、15はかつらベ-ス1の前端縁、16はかつらベ-ス1の側端縁、17はかつらベ-ス1の後端縁である。
【0009】前記表面毛髪2は、前記かつらベ-ス1の表面13に取付けるもので、人毛又は人工毛髪を使用している。本実施例では表面毛髪2を前記生地10に結縛して直接に植毛している。
【0010】前記前端縁被覆用毛髪3は、使用者がかつらAの前髪部分を後方に上げた際、かつらベ-ス1の前端縁15を覆いかつらAを使用していることが他人に分からないようにするためのもので、かつらベ-ス1の裏面14の前端縁15から後端側に向かって約2cm程度の幅で、かつ、かつらAを頭部に装着した際に前頭部に位置する前端縁15の全周に人毛又は人工毛髪からなる毛髪を結縛して直接に取付けている。そして、前端縁被覆用毛髪3は、かつらベ-ス1の前端側に向けて植毛すると共にその先端部分30がかつらベ-ス1の先端縁15より外方に突出するように形成している。」
(ウ)
「【0022】
【発明の効果】以上、説明してきたように、本発明のかつらでは、かつらベ-スの裏面に先端部分がかつらベースの前端縁から外方に突出した前端縁被覆用毛髪を取付けているから、使用者の頭に装着して前髪を後方に上げてもかつらベースの前端縁が前端縁被覆用毛髪で被覆されて露出することがないので、オ-ルバックにしたり、 あるいは七三に分けて前髪を後方に上げてセットして も、他人にかつらを被っていることが分からず、安心して使用することができる。また、前端縁被覆用毛髪をかつらベースの後端側に向けて取付けると共に先端部をかつらベースの前端側に向けて湾曲させたり、かつらベースの裏面先端に肉厚部を形成すると、前髪部分に厚みが できて立体感を持たせることができる。また、かつらベ-スの裏面側部と裏面後部にも側端縁被覆用毛髪と後端 縁被覆用毛髪を取付けると、強風が吹いて毛髪が乱れても、かつらベ-スの周端縁の露出を防止することができるので、かつらを使用していることを他人に知られることがなく、安心して使用することができる。」
(エ)
図1
[図:0001429960000005.jpg]
エ 甲7
甲7には、次の事項が掲載されている。
(ア)
「 【0003】
【考案が解決しょうとする課題】
そこで本考案は、頭に固定した状態でシート部材の縁が隠蔽されて髪の生え際が自然に見える増毛具の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案の増毛具は、付け毛4を外面側に植毛した柔軟なシート部材5の内面部に自毛を挟着して固定するための髪挟み止め具3を取付けると共に、シート部材5の内面端縁部に別の付け毛10を付設して当該付け毛10をシート部材5の縁15に巻き付くように外面側へカールさせて成るものである。
【0005】
【作用】
頭の自毛が残存する部位にシート部材5を密着させて髪挟み止め具3により自毛を挟着して固定し、シート部材5の外面側に植毛した付け毛4を自毛の中に混入させることにより増毛が完成する。また、シート部材5の内面端縁部に付設した付け毛10をシート部材5の縁15に巻き付くように外面側へカールさせることによってシート部材5の縁15が隠蔽されて髪の生え際が自然に見えるようになる。」
(イ)
図1
[図:0001429960000006.jpg]
上記ア(ア)~エ(イ)を踏まえると、甲4~7には、以下の周知技術が示されている。
「かつらのベースの上面に行う植毛に加えて、生え際におけるベース端縁を隠すために、端縁の近傍においてベースの裏面に植毛する飾り植えを施すこと」
2 無効理由1(甲1発明に基づく進歩性の欠如)について
(1)本件特許発明1について
ア 本件特許発明1と甲1発明との対比
甲1発明と本件特許発明1とを対比すると、甲1発明の「人工毛」、「ネット部分」は、それぞれ本件特許発明1の「人工毛髪」、「植毛ネット」に相当する。
甲1発明の「chachaテープ」は、甲1発明の「装着部材」に相当する。そして、甲1発明の「前記ネット部分の裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在なchachaテープを含」む構成は、本件特許発明1の「前記植毛ネットの裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在な装着部材を含」む構成に相当する。
甲1発明の「前記ネット部分の長さ方向を前後方向と定義した場合、前記chachaテープは、前記ネット部分の後端と前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されている」構成は、本件特許発明1の「前記植毛ネットの長さ方向を前後方向、前記長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側を先端側及び後頭部側を後端側、使用者の頭皮側を下向き、とそれぞれ定義した場合、前記装着部材は、前記植毛ネットの前記長さ方向の中心から所定間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置され、かつ2分割された前記装着部材は、それぞれ前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されて」いる構成と、「前記植毛ネットの長さ方向を前後方向と定義した場合、前記装着部材は、前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されている」点で共通する。
甲1発明の「ウィッグ」は、本件特許発明1の「ウィッグ型エクステンション」に相当する。
してみると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>~<相違点2>で相違している。
<一致点>
表面から人工毛髪が上向きに植毛された細長いテープ状の植毛ネットと、
前記植毛ネットの裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在な装着部材を含み、
前記植毛ネットの長さ方向を前後方向、と定義した場合、
前記装着部材は、前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されている、
ウィッグ型エクステンション。
<相違点1>
装着部材について、本件特許発明1は、「前記植毛ネットの前記長さ方向の中心から所定間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置され、かつ2分割された前記装着部材は、それぞれ」前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されているのに対し、甲1発明は、そのような構成でない点。
<相違点2>
本件特許発明1は、「前記植毛ネットの長さ方向を前後方向、前記長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側を先端側及び後頭部側を後端側、使用者の頭皮側を下向き、とそれぞれ定義した場合」、「前記植毛ネットの前記先端側及び/又は前記後端側であって、前記装着部材との間の前記隙間には、前記毛髪及び/又は前記人工毛髪が裏面から下向きに植毛されている」のに対し、甲1発明は、ネット部分の後端に隙間はあるものの当該隙間に下向きに植毛されているか不明な点。
イ 判断
(ア)<相違点1>について
<相違点1>について検討する。
a 本件特許発明の相違点1に係る構成と、その効果について
本件特許発明1は、「エクステを外して保管する際、植毛ネット2を2つの装着部材3の中心位置で折り畳むと、対称に配置された2つの装着部材3どうしが面で接触し、両者は固定される。」(【0025】)と記載されているとおり、植毛ネット2を2つの装着部材3の中心位置で折り畳んで用いるものである。そして、本件特許発明は、相違点1に係る構成を備えることにより、「エクステの収納保管時に毛髪1が装着部材3に絡みつくことを防止でき、かつコンパクトに収納することができる。」(【0025】)との効果を備えるほか、折り畳み収納に際して、装着部材が折り曲げられることがなく、装着部材のどこにも折り曲げ応力が発生せず、ユーザーによる繰り返しの折り畳み収納がなされたとしても、装着部材の劣化や、中央部分が浮き上がることによる頭髪(地毛)への自然な装着機能の低下が生じることがないとの効果を有している。
b 甲1発明を相違点1に係る構成とする動機について
(a)甲1について
甲1には、相違点1に係る構成が記載されておらず、また、ウィッグをネット部分の中心位置で折り畳んで収納することの示唆はない。このため、ネット部分を折り畳んで収納保管する際に毛髪1が装着部材3に絡みつくとの課題や、ネット部分の裏面に接着されるchachaテープに折り曲げ応力が発生する等の装着部材の劣化や、中央部分が浮き上がることによる頭髪(地毛)への自然な装着機能の低下が生じるとの課題がなく、chachaテープを2分割する動機がない。
(b)甲9~30について
次に、甲9~30をみると、種々の技術分野において、公知の製品の構成部材を長さ方向の中心で2分割することにより形態を変更する、公知の常套手段が示されている。
しかしながら、甲9~30に示された種々の技術分野は、甲1発明のウィッグに係る技術分野と、大きく異なるものである。また、甲1発明において、本件特許発明1の<相違点1>に係る構成とするには、少なくとも甲1発明のchachaテープを2分割する必要があるが、甲9~30のいずれにも、折り畳まれる部材自体を2分割することの示唆はあるとしても、折り畳まれる部材を取付け/取り外しするための装着部材を2分割することの示唆はない。したがって、甲9~30の記載を考慮しても、甲1発明のchachaテープに公知の常套手段を適用する動機が見出せない。
さらに、甲9~30を子細に検討しても、以下の(b-1)~(b-3)に示すとおり、甲1発明のchachaテープに公知の常套手段を適用する動機があったとはいえない。
(b-1)甲9(【0009】)、甲11(【0010】)、甲13(【0009】)、甲15(【0004】、【0011】)、甲18(【0008】)、甲19(【0011】)、甲20(【0003】)、甲21(【折り畳んだ状態を示す参考斜視図】)、甲26(【意匠に係る物品の説明】)、甲27(【意匠に係る物品の説明】)、甲28(【180度折り曲げ時の正面図】)は、公知の製品のコンパクトな収納や持ち運びを考慮して、公知製品の構成部材を長さ方向の中心で2分割することにより形態を変更するものであると解される。
しかしながら、甲1には、chachaテープについて、折り畳んで収納することの示唆はない。また、chachaテープは、甲1の図面(第5 1(1)オ、カ参照。)を参酌すると、ウィッグ全体からみても小さな構成部材であり、コンパクトな収納や持ち運びが必要であるとの課題があったとはいえない。
したがって、甲1発明において、コンパクトな収納や持ち運びを動機として、ネット部分の裏面に接着されるchachaテープを2分割するとはいえない。
(b-2) 甲17(【0007】)、甲25(【意匠に係る物品の説明】)は、2分割されたそれぞれが公知製品の機能を奏するように公知製品の構成部材を長さ方向の中心で2分割することにより形態を変更するものであると解される。
しかしながら、甲1発明において、ウィッグ自体を2分割する動機がなく、また、甲1発明のウィッグのうちchachaテープに着目し、chachaテープのみを2分割する動機も見出せない。
(b-3) 甲10(【0010】、水門を二分割することで、弾性体を配置して水門扉に若干の与圧を掛けて組み立てる事で漏水を防止できる構成)、甲12(【要約】、【0018】、ホゾパイプを第一シャフトと第二シャフトとの二分割構造として、双方のシャフトは結合手段によって周方向に対して自在に回転できるように一体化することで、ドリフトピンを差し込むための横孔の位相をシャフト毎に調整できるようにし、作業性を向上させたもの)、甲14(【0005】、【0013】、眼鏡を収納並びに縦置きすることができるように眼鏡ケース本体を2つに分離可能としたもの)、甲16(【0017】、上部の体幹筋と下部の骨盤の相互関係を相関的に矯正するために、コルセット背当て部分を二分割にし、さらにはスリットで上部と下部にわけて引き締めるようにしたもの)、甲22(【意匠に係る物品の説明】 ソファの形態変更が行えるように背もたれを2分割できるようにしたもの)、甲23(【意匠の特徴】通常のアームレスト付きキーボードとは異なる美的特徴を有するようにキーボードの左辺と右辺を分割したもの)、甲24(【意匠に係る物品の説明】 別々の角度で前方へ傾斜させることが可能なように前面パネルを左右に分割したエアーコンディショナー)、甲29(分割スクリーン)、甲30(ついたてとデスクを着脱可能に組み合わせることができる組み合わせデスクにおいて、ついたてを左右分割可能とし、左右各々がデスクの背面または側面に止着子で連結可能としたもの)は、それぞれの技術分野の特有の課題を2分割することで解決したものと解される。
よって、技術分野が異なる甲1発明のウィッグのchachaテープを2分割する動機がない。
(c)動機についての検討のまとめ
してみると、甲1発明に、上記公知の常套手段を適用し、甲1発明のchachaテープを2分割する動機がない。
c 甲1発明に公知の常套手段を適用した場合の検討
仮に甲1発明のchachaテープに公知の常套手段を適用し、2分割したとしても、甲9~30には、2分割された部品をどのように配置するかは示されておらず、2分割されたchachaテープを、甲1発明のネット部分の中心から所定間隔を有して前後方向に対称に配置することが容易であったとはいえない。
また、仮に甲1発明のウィッグについて、コンパクトな収納を目的として上記b(b-1)で示される公知の常套手段を適用できたとしても、ウィッグ自体を2分割するにとどまり、ウィッグを装着する装着部材のみを2分割することの示唆はないから、適用する場合には、ウィッグのネット部分及びchachaテープの両方を2分割することとなり、本件特許発明の「前記装着部材は、前記植毛ネットの前記長さ方向の中心から所定間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置され、かつ2分割された前記装着部材は、それぞれ前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されており、」との構成を充足しない。
d 相違点1に係る構成を備えることの効果
そして、本件特許発明は、相違点1に係る構成を備えることにより、上記aに記載したとおりの効果を有している。
e <相違点1>についての検討のまとめ
以上によると、甲1発明において、公知の常套手段を考慮しても、本件特許発明1の<相違点1>に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
(イ)<相違点2>について
<相違点2>について検討する。
上述のとおり、かつらのベースの上面に行う植毛に加えて、生え際におけるベース端縁を隠すために、端縁の近傍においてベースの裏面に植毛する飾り植えを施すことは、周知技術である。
そして、甲1発明も生え際におけるベース端縁を隠す動機を内在するといえる。
よって、甲1発明に甲4~7に示される周知技術を適用し、上記<相違点2>に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 請求人の主張について
請求人は、<相違点1>について、令和7年7月4日付け口頭審理陳述要領書において、甲1発明のchachaテープに、公知の常套手段を適用する動機として「「chachaテープ」が「ネット部分」から通常の取り扱いにおいては物理的に分離できない場合と比較して、「chachaテープ」が「ネット部分」から分離されて単独で存在する場合は「chacha テープ」(一体型)という「物」全体を単に長さ方向の中心で2分割するだけとなるから、より容易に公知の常套手段を適用することができ、公知の常套手段を適用する動機がある」、「「ネット部分」から取り外された「chacha テープ」を「ネット部分」の裏面に再び接着することが可能であることは、「ネット部分」の裏面から「chachaテープ」を取り外す動機を促進することを通じて、間接的に公知の常套手段を適用する動機となる」、「また、「chacha テープ」の形状が薄い略平板状であり一般的なハサミ等で容易に切断可能なことは、「ネット部分」から分離された「chacha テープ」に公知の常套手段を適用するさらなる動機となる」、「その2分割された「chacha テープ」を「ネット部分」の裏面にそれぞれ接着する位置は、複数回の取り外しと接着とを繰り返す試行錯誤により任意に選択することができ、このことは、「ネット部分」から分離された「chacha テープ」に公知の常套手段を適用するさらなる動機となる」と主張している(下線は、当審が付与した。)。
しかしながら、請求人の主張は、「chachaテープ」を長さ方向の中心で2分割しようとすれば、容易に2分割でき、分離された「chachaテープ」を「ネット部分」の裏面の任意の位置に接着することができることを主張するにとどまり、甲1に、「chachaテープ」を長さ方向の中心で2分割することの動機付けが示されていることを説明するものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。
エ 小括
以上によると、本件特許発明1は、甲1発明、周知技術及び公知の常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2~8について
本件特許発明2~8は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を特定し、限定したものである。
よって、少なくとも甲1発明と、本件特許発明2~8とは、上記(1)アに示した<相違点1>で相違する。そして、上記(1)イ(ア)で上述したとおり、上記<相違点1>に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
以上によると、本件特許発明2~8は、甲1発明、周知技術及び公知の常套手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)まとめ
以上によれば、本件特許発明1~8は、無効理由1によって無効とすることはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によって、本件特許発明1~8についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-800006