特許異議申立
2024-700576
ウィッグ型エクステンション
- 審判番号
- 2024-700576
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-095255
- 登録番号
- 7457269
- 請求日
- 2024年06月18日
- 審決日
- 2024年12月02日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ちょいぷらす株式会社
- 【権利者代理人】日高 賢治
- 【異議申立人】マスターズプランナー 株式会社
- 【異議申立人代理人】内島 裕
- 【異議申立人】株式会社 ペスカインターナショナル
- 【異議申立人代理人】内島 裕
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 関口 哲生
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P1651.121-Y (A41G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7457269号発明「ウィッグ型エクステンション」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7457269号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7457269号の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和5年6月9日の出願であって、令和6年3月19日に特許権の設定登録がされ、令和6年3月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~8に係る特許に対し、令和6年6月18日に、特許異議申立人マスターズプランナー株式会社及び株式会社ペスカインターナショナル(以下、「申立人ら」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7457269号の請求項1~8の特許に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
表面から毛髪及び/又は人工毛髪が上向きに植毛された細長いテープ状の植毛ネットと、
前記植毛ネットの裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在な装着部材を含み、
前記植毛ネットの長さ方向を前後方向、前記長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側を先端側及び後頭部側を後端側、使用者の頭皮側を下向き、とそれぞれ定義した場合、
前記装着部材は、前記植毛ネットの前記長さ方向の中心から所定間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置され、かつ2分割された前記装着部材は、それぞれ前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されており、
前記植毛ネットの前記先端側及び/又は前記後端側であって、前記装着部材との間の前記隙間には、前記毛髪及び/又は前記人工毛髪が裏面から下向きに植毛されている、
ことを特徴とするウィッグ型エクステンション。
【請求項2】
前記植毛ネットの前記先端側及び/又は前記後端側であって、前記装着部材との間の前記隙間は3~5mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項3】
前記植毛ネットの長さは30~110mm、幅は10~30mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項4】
2分割されている前記装着部材の各長さは10~50mm、各幅は6~26mmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項5】
前記装着部材は土台部と複数の足から構成され、前記足はキノコ型の突起であり、前記足の密度は62~68本/cm2である、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項6】
前記装着部材は、前記植毛ネットの前記長さ方向の中心位置において4~6mmの間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項7】
前記装着部材は土台部と複数の足から構成され、前記植毛ネットはナイロン製、前記装着部材の前記土台部はナイロン製、前記足はポリプロピレン製である、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。
【請求項8】
前記ウィッグ型エクステンションの総重量は、4~15gである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウィッグ型エクステンション。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人らが主張する特許異議申立書の記載から認められる特許異議の申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 理由(進歩性違反)
本件発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるため、同法第113条第2号により取り消されるべきである。
(証拠方法)
甲第1号証:株式会社ペスカインターナショナル、「【PEACA】3秒で若返り!ピンがない!最小・最軽量の白髪隠し特化型ウィッグ「ヘアメイト チャチャ」3月16日〔木〕発売」、[online]、令和5年3月17日、ソーシャルワイヤー株式会社、@Press(プレスリリース配信)、インターネット、<URL:https://www.atpress.ne.jp/news/347354>
甲第2号証:特開2008-184714号公報
(以下、各甲号証を証拠番号に従って、「甲1」などという。)
第4 当審の判断
1 各甲号証の記載事項及び各甲号証に記載された発明
(1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1の記載事項(下線は理解のために当審で付したものである。以下、同様。)
(ア)「■「ヘアメイト チャチャ」の4つのこだわり
1.つけるだけで若返り!自然なボリュームアップ!
気になる白髪の部分を隠すだけではなく、頭頂部にボリュームが出て、一瞬で若返り!
分け目にポンと乗せて軽く押さえるだけで、素早く簡単に白髪を隠し、ふんわりと理想的なスタイルをつくります。
2.クリップピン不使用!
今までのウィッグはクリップピンで留めるものが主流でしたが、チャチャはクリップピンを一切使わずに、密着度の高い「chachaテープ」を使用しています。カバーしたい分け目部分に乗せると専用の面テープが一瞬で自毛を捉え自然な仕上がりに。クリップピンがついていないので、髪がつれて痛くなることもなく、アレンジヘアも自在に楽しめます。
3.オーダーメイド級の品質
チャチャは2年以上の開発期間を経て「最小」×「最軽量」×「高品質」で革命的な着け心地を実現しました。オーダーメイド級の品質を保ちながら、コンパクトでふんわり軽い使用感を叶えるために、2種類の太さの毛を混ぜ込み、自毛のような自然な動きを再現。さらにより自毛になじむよう3種類の毛の色をミックスしました。どんな髪色にも対応し、使うほどに自分の髪になじんでいきます。ショートでもロングでも髪型を選ばずにお使いいただけます。
4.お手入れ簡単で、衛生的!
衛生面、耐久性を考慮したオリジナル人工毛。自然でありながら丈夫で、速乾性に優れているので、自然乾燥でいつでも清潔にお使いいただけます。」
(イ)「【商品概要】
商品名: ヘアメイト チャチャ
価格 : 68,200円(税込)
素材 : ネット部分/ナイロン、人工毛/ポリエステル
サイズ: 【ショートタイプ】
ネット部分/20×90mm
前/120~130mm、横/160~170mm、後/160~170mm
【ロングタイプ】
ネット部分/20×90mm
前/180~190mm、横/210~220mm、後/210~220mm
重さ : ショートタイプ/6.0~6.5g
ロングタイプ/9.0~9.5g
発売日: 2023年3月16日(木)
URL: https://www.pesca.jp/ (https://www.pesca.jp/)」
(ウ)甲1には、以下の図が示されている。
「(ヘアメイト チャチャ(1))
[図:0001418254000001.jpg]
(ヘアメイト チャチャ(3))
[図:0001418254000002.jpg]
(ヘアメイト チャチャ(4))
[図:0001418254000003.jpg]
」
(エ)上記(ウ)で示した「ヘアメイト チャチャ(3)」の図を一部拡大したものを、以下に示す。また、以下の図を参考図という。
「(参考図)
[図:0001418254000004.jpg]
」
(オ)上記(ア)~(エ)の記載から、特化型ウィッグであるヘアメイト チャチャには、表面から人工毛が上向きに植毛された細長いテープ状のネット部分があるといえる。
(カ)上記(ア)~(エ)の記載から、特化型ウィッグであるヘアメイト チャチャには、ネット部分の裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在なchachaテープがあるといえる。
(キ)上記(ア)~(エ)の記載から、ネット部分の長さ方向が前後方向であり、長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側が前側及び後頭部側が後側であり、更に、使用者の頭皮側は下向きであるといえる。そして、chachaテープは、ネット部分の長さ方向に配置され、また、chachaテープは、ネット部分に対して前記前後方向の後側に所定幅の隙間を有して接着されているといえる(特に上記(ウ)の「ヘアメイト チャチャ(3)」を参照)。
イ 甲1に記載された発明
上記ア(ア)~(キ)の記載を総合して、本件発明1の表現に倣って整理すると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「表面から人工毛が上向きに植毛された細長いテープ状のネット部分と、
前記ネット部分の裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在なchachaテープを含み、
前記ネット部分の長さ方向を前後方向、前記長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側を前側及び後頭部側を後側、使用者の頭皮側を下向き、とした場合、
前記chachaテープは、前記ネット部分の前記長さ方向に配置され、かつ前記chachaテープは、前記ネット部分に対して前記前後方向の後側に所定幅の隙間を有して接着されている、
ウィッグ。」
(2)甲2の記載事項
ア 「【0001】
本発明は、自毛を導出するための開口部を設けたかつらベース及びかつらに関する。」
イ 「【0006】
しかし、特許文献1に記載のかつらは、開口部から外部に導き出した使用者の自毛と、かつらベースに植毛させた人毛又は人工毛とを混毛させて自然に一体化させる点ではかつらに要求される事を満足しているが、かつら本体が装着時の位置からズレ易く、また、かつらが外れ易いという問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明の課題はかつらのズレ易さや外れ易さを解消するために、頭部に安定した装着感と密着感を高めることを可能としたかつらベース及びかつらを提供することである。」
ウ 「【0008】
人毛又は人工毛を植毛するためのネット部に少なくとも一つの開口部を有し、上記ネット部における上記開口部の周縁領域の少なくとも一部に毛髪係止部材が設けられている構成とした。
【0009】
好ましくは、上記毛髪係止部材が、上記開口部に突出して固着されている構成とした。
【0010】
好ましくは、上記毛髪係止部材が、面ファスナーの片方からなる構成とした。」
エ 「【0017】
(第一の実施の形態)
図1は第一の実施の形態のかつらベース10の全体を示す平面図である。図1において、かつらベース10は、主に人毛又は人工毛を植毛するためのネット部11と、このネット部11に形成された開口部12(本実施の形態では4つ)とで構成されている。また、ネット部11は、複数本の糸を交互させ、網状を成して形成されている。また、交互させた箇所は熱溶着等により固定させておくことが好ましい。
【0018】
ネット部11における開口部12の周縁端部である開口周縁端部13には、上述したようにネット部11を形成する際に複数本の糸を交互させた箇所を熱溶着等により固定させておくことで、特別な処理を行わなくても良い。しかしながら、開口周縁端部13を折り返すことで、この開口周縁端部13はより強固になる。尚、強固になる別の方法としては、糸を用いてネット部の各端部を結合させるような構成でも良い。
【0019】
また、ネット部11における開口部12の周縁領域の少なくとも一部には、毛髪係止部材14が設けられている。第1の実施の形態において毛髪係止部材14は面ファスナーの片方が用いられている。尚、ここでの周縁領域とは、開口部12の周縁近傍を示している。
【0020】
ここで面ファスナーとは、多数のループ状の係止部を一面に配置した第1のテープと、ループ状の係止部に係止可能な多数のフック状の係止部を一面に配置した第2のテープとで構成されているものである。そこで本実施の形態において用いられる面ファスナーの片方とは、多数のフック状の係止部を一面に配置した第2のテープのことである。
【0021】
また、毛髪係止部材14の固着方法は、ネット部11の裏側(頭皮に接する側)のネット部11における開口部12の周縁領域に縫着、接着及び熱溶着等による固着方法を用いると良い。
【0022】
尚、図1は人毛又は人工毛を植毛させていない状態を示している。よって、かつらとして使用する場合は、このかつらベース10に多数本の人毛又は人工毛が植毛されている。
【0023】
次に、図2はネット部11に形成されている開口部12の一つを拡大した図である。上述したようにネット部11における開口部12の周縁領域の少なくとも一部には、毛髪係止部材14が設けられている。この毛髪係止部材14は、開口部12へ突出するようにして、ネット部11の裏側(頭皮に接する側)に固着されている。また、毛髪係止部材14はフック状の係止部の配された面が上(頭皮と接しない側)に向くように固着される。
【0024】
つまり、毛髪係止部材14は、ネット部11の裏側の開口周縁端部13近傍に取り付け固定手段により固着されている。尚、図2において開口部12及び毛髪係止部材14は、楕円形状で形成されているが、この形状に限定されず、例えば、円形又は矩形等で形成してもよい。また、開口部12の大きさは使用者の毛髪の状態に応じて形成すると良い。
【0025】
このようにして、毛髪係止部材14である面ファスナーに多数存在するフック部に開口部12から導出した自毛を絡みつかせて密着させる。これにより、人毛又は人工毛と、開口部12から導出した自毛とを混毛して一体化させることができ、装着時の密着度が高まり、ズレにくく、外れにくいかつらとすることができる。」
オ 「【0026】
(変形例)
次に、図3は図1におけるかつらベース10の変形例の全体を示した平面図である。このかつらベース10´は、図1におけるかつらベース10と同様の構成であるため説明は省略する。
【0027】
ここで変形例として示すかつらベース10´は、一つの開口部12に対して二つの毛髪係止部材14を設けて形成している。このかつらベース10´は、自毛を導出するための開口部12をふさがない程度に、毛髪係止部材14である面ファスナーを開口部12方向へ突出させている。尚、図3において一つの開口部12に対して二つの毛髪係止部材14を設けて形成している箇所は1箇所であるが、この1箇所に限定されず他の開口部12に対しても同様に形成しても良い。ここでは、他の開口部に形成させた図は省略する。
【0028】
このように一つの開口部12に対して二つの毛髪係止部材14を設けることで、例えば、使用者がかつら10を装着した際に毛髪係止部材14aを前頭部側とし、開口部12から導出させた自毛を毛髪係止部材14aに密着させて前側に垂らすことができる。
【0029】
また、更には毛髪係止部材14bを後頭部側とし、開口部12から導出させた自毛を毛髪係止部材14bに密着させて後側に流すことができる。
【0030】
尚、ここでも毛髪係止部材14は楕円形状で形成しているが、この形状に限定されず、例えば、円形状等で形成してもよい。また、ここでは毛髪係止部材14の設置数を2箇所としたが、これも限定することなく、例えば、開口部12のR部、L部にも備え、開口部12を周回するように形成させても良い。つまり、使用者の要求に応じて毛髪係止部材14を形成することが可能である。」
カ 「【図1】
[図:0001418254000005.jpg]
【図2】
[図:0001418254000006.jpg]
【図3】
[図:0001418254000007.jpg]
」
キ 上記図1、3の記載等によれば、甲2に示されるネット部11が円形状に形成されていることは、明らかである。
2 本件発明について
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明とを、その有する機能に照らして対比すると、甲1発明の「人工毛」は本件発明1の「毛髪及び/又は人工毛髪」に相当し、同様に、「ネット部分」は「植毛ネット」に、「chachaテープ」は「装着部材」に、「前側」は「先端側」に、「後側」は「後端側」に、「ウィッグ」は「ウィッグ型エクステンション」に、それぞれ相当する。
そして、甲1発明の「前記ネット部分の長さ方向を前後方向、前記長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側を前側及び後頭部側を後側、使用者の頭皮側を下向き、とした場合」は、本件発明1の「前記植毛ネットの長さ方向を前後方向、前記長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側を先端側及び後頭部側を後端側、使用者の頭皮側を下向き、とそれぞれ定義した場合」に相当する。
また、本件発明1の「2分割された前記装着部材は、それぞれ前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されており」という事項と甲1発明の「前記chachaテープは、植毛ネットに対して前記前後方向の後側に所定幅の隙間を有して接着されている」という事項とは、「前記装着部材は、前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向の後端側に所定幅の隙間を有して接着されて」いる限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「表面から毛髪及び/又は人工毛髪が上向きに植毛された細長いテープ状の植毛ネットと、
前記植毛ネットの裏面に接着され、使用者の頭髪に取り付け/取り外し自在な装着部材を含み、
前記植毛ネットの長さ方向を前後方向、前記長さ方向において使用者が頭部に装着した際の顔面側を先端側及び後頭部側を後端側、使用者の頭皮側を下向き、とそれぞれ定義した場合、
前記装着部材は、前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向の後端側に所定幅の隙間を有して接着されている、
ウィッグ型エクステンション。」
(相違点1)
本件発明1は「前記装着部材は、前記植毛ネットの前記長さ方向の中心から所定間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置され」ているのに対し、
甲1発明は、chachaテープは前記ネット部分の前記長さ方向に配置されたものであって、ネット部分の中心から所定間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置されたものではない点。
(相違点2)
本件発明1は、「2分割された前記装着部材は、それぞれ前記植毛ネットに対して少なくとも前記前後方向に所定幅の隙間を有して接着されており、前記植毛ネットの前記先端側及び/又は前記後端側であって、前記装着部材との間の前記隙間には、前記毛髪及び/又は前記人工毛髪が裏面から下向きに植毛されている」のに対し、
甲1発明は、前記chachaテープは、前記ネット部分に対して前記前後方向の後側に所定幅の隙間を有して接着されているものの、前記ネット部分に対して前記前後方向の前側に所定幅の隙間を有しているか明らかでなく、また、前記隙間には、前記人工毛が裏面から下向きに植毛されているか明らかでない点。
イ 判断
(ア)まず、相違点1について検討する。
a 甲2には、かつらのズレ易さや外れ易さを解消するために、頭部に安定した装着感と密着感を高めることを可能としたかつらベース及びかつらを提供するといった課題を解決するために、円形状のネット部に少なくとも一つの開口部を有し、上記ネット部における上記開口部の周縁領域の少なくとも一部に毛髪係止部材が設けられている構成としたものが示されているところ、具体的には、毛髪係止部材14は、開口部12へ突出するようにして、ネット部11の裏側(頭皮に接する側)に固着され、また、毛髪係止部材14はフック状の係止部の配された面が上(頭皮と接しない側)に向くように固着され、毛髪係止部材14である面ファスナーに多数存在するフック部に開口部12から導出した自毛を絡みつかせて密着させ、そして、一つの開口部12に対して二つの毛髪係止部材14を設けて形成したもの、また、毛髪係止部材14を、開口部12のR部、L部にも備え、開口部12を周回するように形成したものが示されている。
つまり、甲2には、開口部を設けることを前提とし、開口部を周回するように毛髪係止部材を設け、開口部から導出した自毛と毛髪係止部材とを絡みつかせて密着させたものが開示されているのみである。
したがって、甲2には、開口部を設けることを前提としたものが開示されるのみであり、また、甲2に、毛髪係止部材を2分割にするといった技術思想はない。
b 一方、甲1発明は、細長いテープ状のネット部分を有したものであるところ、甲1発明において開口部を設ける理由はなく、甲1発明において甲2に開示される技術を適用する動機はない。
そして、甲1発明の細長いテープ状のネット部分に、甲2に開示された、開口部を設け、開口部を周回するように毛髪係止部材を設けるといった技術を適用しようとは想到し得ない。
c さらに、申立人らは、装着部材を2個としたものが「技術常識・周知技術」であると主張し、その例として、特許第6114801号公報、特許第4917691号公報、特開2006-291436号公報を示している(特許異議申立書の8頁30~31行)が、これら例として示されたものは、いずれも、円形状のかつらの外周部分に複数の面ファスナーを設けたことが示されるのみで、細長いテープ状の植毛ネットを有したものでもない。また、上記で示されたいずれの文献にも、装着部材が、長さ方向の中心から所定間隔を有して前記前後方向に2分割されて対称に配置されたものはなく、装着部材を2分割にするといった技術思想はない。
また、装着部材を2分割することの例として挙げられた、登録実用新案第3179833号公報の図2(特許異議申立書の8頁33行)を参照するも、円形状の面ファスナーに切り込みが入れられたものが開示されるのみで面ファスナーを2分割にすることについて何ら開示されていない。
したがって、甲1発明に上記に示された文献に開示される技術を採用する動機はない。
d そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を有することすることにより、「保管する際は折り畳んだ状態で固定され、保管の際に毛髪及び/又は人工毛髪が装着部材に絡みつくことを防止でき、かつコンパクトに収納できる。」(本件明細書の発明の詳細な説明の段落0019)といった、格別の効果を奏するものである。
e 以上によれば、甲1発明において、上記相違点1に係る本発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
(イ)次に、相違点2について検討する。
a 甲1の「ヘアメイト チャチャ(3)」に示される図面(上記1(1)ア(ウ))及びその図面の一部を拡大したもの(上記1(1)ア(エ)に示す参考図)を参照するも、ネット部分に対して前記前後方向の前側に所定幅の隙間を有していることは、看取できない。
したがって、甲1に開示されるヘアメイト チャチャは、ネット部分に対して前後方向の前側に所定幅の隙間を有したものであるとはいえない。
b 申立人らは、特許異議申立書において、甲1に「装着部材は、植毛ネットに配置され、かつ装着部材は、植毛ネットに対して少なくとも前後方向に所定幅の隙間を有して接着されて」いること、また、「植毛ネットの先端側であって、装着部材との間の隙間には、人工毛髪が裏面から下向きに植毛されている」ことが開示されている旨主張する(特許異議申立書の7頁1~5行)。
しかし、上記aで検討したように、「装着部材は、植毛ネットに対して少なくとも前後方向の先端側に所定幅の隙間を有して」いるとはいえず、前側に隙間のないヘアメイト チャチャに、「植毛ネットの前記先端側」であって、「前記装着部材との間の前記隙間には、前記毛髪及び/又は前記人工毛髪が裏面から下向きに植毛されている」とはいえないから、申立人らの上記主張は採用できない。なお、上記1(1)ア(ウ)に示すヘアメイト チャチャ(3)の図面及びこれの一部を拡大した参考図(上記1(1)ア(エ))をみても、ネット部分の前側の人工毛がネット部分の裏面から下向きに植毛されていることは、看取できない。
c また、甲1の「ヘアメイト チャチャ(3)」に示される図面(上記1(1)ア(ウ))を参照するも、ネット部分に対して前記前後方向の後側に有する所定幅の隙間について、人工毛が「裏面から下向きに植毛されている」ことは看取できない。
d そして、一般に、ウィッグは、植毛ネットの表面(使用者の頭皮とは反対側である上側)に人工毛等を設けるものであるから、甲1発明において、ネット部分の裏面から下向きに人工毛を設けることの動機はない。そうすると、chachaテープにより自毛との密着度を高めたものである甲1発明において、後側の隙間に、あえて毛髪及び/又は人工毛髪が裏面から下向きに植毛するような構成を採用しようとはせず、また、そのように構成することが、単なる設計事項であるともいえない。
e そして、本件発明1は、上記相違点2に係る構成を有することすることにより、「何らかの原因で先端側又は後端側がめくれ上がったとしても、植毛ネットのめくれ上がりが外見上分からず、第三者は使用者がエクステを着用しているか否かの見分けがつかない。」(本件明細書の発明の詳細な説明の段落0020)といった、格別の効果を奏するものである。
f 以上によれば、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たことではない。
(ウ)以上によれば、本件発明1は、甲1発明、甲2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(2)本件発明2~8について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~8は、本件発明1を特定するための事項を全て含み、本件発明1をさらに減縮したものである。したがって、その余の事項を検討するまでもなく、前記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2~8は、甲1発明、甲2に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上によれば、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできず、同法第113条第2号により取り消すことができない。
第5 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~8に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700576