特許拒絶査定不服審判
2024-005763
積み重ね式人工睫毛エクステンション
- 審判番号
- 2024-005763
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-520667
- 請求日
- 2024年04月05日
- 審決日
- 2025年07月18日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ラシファイ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】山崎 一夫
- 【請求人代理人】山本 泰史
- 【請求人代理人】鈴木 博子
- 【請求人代理人】田巻 文孝
- 審判長/審判官
- 審判長 柿崎 拓
- 審判官 窪田 治彦
- 審判官 永冨 宏之
- 分類
- P18 .121-Z (A41G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-520667号「積み重ね式人工睫毛エクステンション」拒絶査定不服審判事件〔令和3年4月8日国際公開、WO2021/067758、令和4年12月2日国内公表、特表2022-550600号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 経緯の概略
本願は、2020年(令和2年)10月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年10月3日、米国、2020年10月1日、米国)を国際出願日とする出願であって、令和5年6月14日付けの拒絶理由の通知に対し、令和5年11月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和5年11月27日付けで拒絶査定がされ、これに対して、令和6年4月5日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~20に係る発明は、令和5年11月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
人工睫毛エクステンションシステムであって、
生まれつきの上睫毛の下側に付けられるよう構成された第1の複数の睫毛エクステンションを含み、前記第1の複数の睫毛エクステンションの各々は、
第1の複数の人工毛、および
前記第1の人工毛の突出起点としての第1のベースを含み、前記第1のベースは、前記生まれつきの上睫毛の前記下側に取り付けられるように構成された平坦な頂側を有し、前記第1のベースの前記頂側は、前記生まれつきの上睫毛の前記下側に接着できるように構成され、平坦な底側が、第2の複数の睫毛エクステンションのうちの1つ以上の睫毛エクステンションの頂側の少なくとも一部に取り付けられるよう構成され、
前記第1の複数の人工睫毛エクステンションの下に付けられるよう構成された前記第2の複数の睫毛エクステンションを含み、前記第2の複数の睫毛エクステンションの各々は、
第2の複数の人工毛、および
前記第2の人工毛の突出起点としての第2のベースを含み、前記第2のベースは、前記第1の複数の人工睫毛エクステンションのうちの1つ以上の人工睫毛エクステンションの底側の少なくとも一部に取り付けられるように構成された平坦な頂側を有する、人工睫毛エクステンションシステム。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(引用文献)
引用文献1 特開2018-76626号公報
引用文献2 特表2016-510841号公報
第4 引用文献の事項及び引用発明
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1) 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付与した。)。
・「【請求項1】
人工毛の複数本の一端側を束ねた束部を有するまつ毛エクステンション用人工まつ毛を、目を開いた状態の上まつ毛に装着する、まつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法であって、
前記まつ毛エクステンション用人工まつ毛の前記束部の上側に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を塗布した前記まつ毛エクステンション用人工まつ毛の1本の前記束部の上側を、目を開いた状態の前記上まつ毛の複数本の下側に下方から接着する工程と
を有することを特徴とするまつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法。」
・「【0001】
本発明の実施形態は、まつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法に関する。」
・「【0003】
まつ毛エクステンションとは、まつ毛エクステンション用人工まつ毛(以下、人工まつ毛ともいう)を人のまつ毛(以下、まつ毛ともいう)に装着する技術である。まつ毛エクステンションをまつ毛に施すと、被装着者の目元の印象が変わり、例えば目を大きく見せることができる。」
・「【0015】
図1は、実施の形態のまつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法で装着するまつ毛エクステンション用人工まつ毛1を模式的に示す上面図である。図2は、実施の形態のまつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法で装着するまつ毛エクステンション用人工まつ毛1を模式的に示す側面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、人工まつ毛1は、人工毛2の複数本の一端側を束ねた束部3と、束部3から延びる人工毛2の複数本の部分から構成される本体部4とを有する。
【0017】
束部3は、人工毛2の複数本の基部を束ねている。人工毛2の複数本の基部は、接着剤5を介して、互いに接着している。また、束部3は、被装着者の上まつ毛の長手方向に延設される。」
・「【図1】
[図:0001429531000001.jpg]
」
・「【図2】
[図:0001429531000002.jpg]
」
・「【0024】
後述するように、人工まつ毛1は、被装着者の上瞼から生えている上まつ毛(以下、上まつ毛ともいう)に装着する。一般的に、上まつ毛は、人工まつ毛1と同様に、上まつ毛の上側が凹となるように湾曲している。そのため、上側1cへ弓状に反っている人工まつ毛1の曲率半径は、被装着者の上まつ毛の曲率半径以下であることが好ましい。人工まつ毛1の曲率半径が上まつ毛の曲率半径以下であると、まつ毛エクステンションの効果がさらに向上する。」
・「【0027】
図3は、人工まつ毛1を構成する束部3を模式的に示す断面図の一例である。なお、図3は、図1のA-A線に沿った断面図である。図3に示すように、束部3で保持されている人工毛2の複数本は、接着剤5を介して互いに接触するように、結束されている。束部3において、結束されている人工毛2の複数本は、例えば束部3の幅方向に一列で配置されている。接着剤5は、人工毛2の各々の間の隙間を充填している。
【0028】
また、図3に示すように、束部3の上側3cは平滑であることが好ましい。束部3の上側3cが平滑であると、後述する接着工程において、人工まつ毛1を被装着者の上まつ毛に容易に接着することができると共に、人工まつ毛1を上まつ毛の複数本に安定して装着することができる。また、人工まつ毛1を装着した上まつ毛の美観性の観点から、束部3の下側3dは平滑であることが好ましい。」
・「【図3】
[図:0001429531000003.jpg]
」
・「【0032】
実施の形態の人工まつ毛1の装着方法は、塗布工程と接着工程とを有し、被装着者の目を開いた状態の上まつ毛に人工まつ毛1を装着する。塗布工程では、人工まつ毛1の束部3の上側3cの表面に接着剤を塗布する。接着工程では、接着剤を塗布した人工まつ毛1の1本の束部3の上側3cの表面を、目を開いた状態の上まつ毛の複数本の下側の表面に下方から接着する。」
・「【0034】
図5は、実施の形態のまつ毛エクステンション用人工まつ毛1の装着方法における塗布工程を示す概略図である。塗布工程では、ピンセット10などの把持部材で人工まつ毛1を把持しながら、人工まつ毛1の束部3における上側3cの表面に接着剤6を塗布する。人工まつ毛1に塗布する接着剤6は、グルーと呼ばれるまつ毛エクステンション用接着剤である。
【0035】
ここでは、グループレート11の上に接着剤6を出した後に、ピンセット10で人工まつ毛1を把持して、人工まつ毛1に接着剤6を塗布する方法について説明するが、ピンセット10で人工まつ毛1を把持した後に、グループレート11の上に接着剤6を出して、人工まつ毛1に接着剤6を塗布してもよい。」
・「【0044】
図6および図7に示すように、接着工程では、接着剤6を束部3の上側3cの表面に塗布した人工まつ毛1をピンセット10などの把持部材で把持しながら、人工まつ毛1の1本の束部3の上側3cの表面を、被装着者20の目22を開いた状態の上まつ毛21の複数本の下側21dの表面に下方から接着する。人工まつ毛1を被装着者20の上まつ毛21に接着した後、接着剤6を乾燥させることによって、人工まつ毛1が接着剤6を介して被装着者20の上まつ毛21に装着される。
【0045】
また、接着工程において、束部3の上側3cを上まつ毛21の下側21dに接着する位置は、特に限定されるものではない。例えば、束部3は、目22を開いた状態の上瞼23から上まつ毛21の先端側の方向に0.5mm以上1.0mm以下離れた位置から上まつ毛21の先端側に向かって接着される。束部3の基部と上瞼23との距離が0.5mm以上であると、接着工程において人工まつ毛1の束部3を上まつ毛21に容易に接着することができ、上まつ毛21への人工まつ毛1の装着を安定して維持することができ、人工まつ毛1を装着した上まつ毛21の根本近傍からの上側への湾曲状態を維持することができる。また、束部3の基部と上瞼23との距離が1.0mm以下であると、人工まつ毛1の重さによる上まつ毛21の先端側の下方へのたるみは抑制される。」
・「【図6】
[図:0001429531000004.jpg]
」
・「【図7】
[図:0001429531000005.jpg]
」
・「【0051】
人工まつ毛1を装着した上まつ毛21は、目22を大きく見せる、まつ毛を美しく見せる、まつ毛をボリュームアップさせるなどのまつ毛エクステンションの効果を容易に得ることができる。」
(2) 引用発明
引用文献1の記載から、次のことがわかる。
被装着者20の上瞼23から上まつ毛21が生える様相に照らすと(図6、7)、人工まつ毛1を上まつ毛21に装着するにあたり、複数の人工まつ毛1を利用することは、技術的に明らかである。
そして、まつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着方法において、人工まつ毛1、接着剤6、ピンセット10、グループレート11等が、所定の目的のために全体として機能を発揮しており、そのための技術的なまとまりを観念することができるから、まつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着に係るシステムを構成しているといえる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「まつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着に係るシステムであって、
被装着者20の上瞼23から生える上まつ毛21の下側21dに装着されるよう構成された複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛1を含み、前記複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛1の各々は、
複数本の人工毛2、および
前記複数本の人工毛2の一端側を束ねた束部3を含み、前記束部3は、前記上まつ毛21の前記下側21dに装着されるように平滑にされた上側3cを有し、前記束部3の前記上側3cは、前記上まつ毛21の前記下側21dに容易に接着できるように平滑にされ、下側3dが、人工まつ毛1を装着した上まつ毛の美観性の観点から平滑にされる、まつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着に係るシステム。」
2 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の事項が記載されている。
・「【0002】
アイラッシュは、自然に現在生えているまつ毛に長さ、厚み及びふくよかさを加えるために、まぶたの自然のラッシュラインに付けられるようになっていることは、先行技術で知られている。アイラッシュは、自然に見えるものから表情豊かに見えるものまで、様々な長さ、色、厚み及びデザインで利用可能になっている。アイラッシュは、さらに、装飾、例えば、羽、ラインストーンその他を含んでいてもよい。
【0003】
それらの外観を向上させるか、新たに全体的な外観を創造するために、2つ以上のアイラッシュユニットを組み合わせることが望まれ得る。典型的には、アイラッシュユニットは、互いの上に、それらのアイラッシュバンドを積み重ねるか、2倍にすることにより結合される(「積み重ねられたアイラッシュ」)。」
・「【0042】
実際には、最終的に2つのアイラッシュユニットが、カスケード状に接続されている場合、後続のアイラッシュユニットは、最初のアイラッシュユニットの上に、つまり、後続のアイラッシュユニットの取り付け部が最初のアイラッシュユニットの取り付け部と直接接触しないように、上昇するように置かれていてもよい。具体的には、後続のアイラッシュユニットの取り付け部が最初のアイラッシュユニットの取り付け部と直接接触しないように、後続のアイラッシュユニットを最初のアイラッシュユニットのラッシュフィラメントの上に置く。この接続の結果、後続のアイラッシュユニットの取り付け部は、最初の取り付け部の右側(図2Aあるいは図2Bを参照)にあることができるか、あるいは、左側(図3Bを参照)にすることができ、右側が好ましい。その後、後続のアイラッシュユニットと最初のアイラッシュユニットとを本明細書に記載のように互いに接続し、それによって前記アイラッシュユニットは、スタッガード(又はカスケード)方式で接続される。前述したような一般的な手順は、図4に説明されている。さらなるアイラッシュユニットを、最初のアイラッシュユニット及び後続のアイラッシュユニットに接続しようとするならば、前述のプロセスを所望の回数繰り返すことになる。例えば、前記後続のアイラッシュユニットを最初のアイラッシュユニットの上に置くのと同じ方法で、第3のアイラッシュユニットを前記後続のアイラッシュユニットの上に置く。その後、後続のアイラッシュユニットと最初のアイラッシュユニットとは、本明細書に記載のように互いに接続される。図3Cは、少なくとも2つのアイラッシュユニットをカスケード状に接続する、前記の方法によって得られる本発明の好ましいアイラッシュ構造を表す。」
・「【図2】
[図:0001429531000006.jpg]
」
・「【図3】
[図:0001429531000007.jpg]
」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを、その有する機能に照らして対比する。
(1) 引用発明の「まつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着に係るシステム」は、本願発明の「人工睫毛エクステンションシステム」に相当する。
(2) 引用発明は「被装着者20の上瞼23から生える上まつ毛21の下側21dに装着されるよう構成された複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛1」を含むところ、引用発明の「被装着者20の上瞼23から生える上まつ毛21」、「下側21d」は、それぞれ、本願発明の「生まれつきの上睫毛」、「下側」に相当し、引用発明の「装着される」ことは、本願発明の「付けられる」ことに相当するから、引用発明の「被装着者20の上瞼23から生える上まつ毛21の下側21dに装着されるよう構成された複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛1」は、本願発明の「生まれつきの上睫毛の下側に付けられるよう構成された第1の複数の睫毛エクステンション」に相当する。
(3) 引用発明の「複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛1」の各々は、「複数本の人工毛2」、「前記複数本の人工毛2の一端側を束ねた束部3」を含むところ、引用発明の「複数本の人工毛2」は、本願発明の「第1の複数の人工毛」に相当する。
また、引用発明の「複数本の人工毛2の一端側を束ねた束部3」は、「複数本の人工毛2の一端側を束ね」ることにより、「人工毛2」が他端側に突出する起点となるから、本願発明の「第1の人工毛の突出起点としての第1のベース」に相当する。
(4) 引用発明の「束部3」の「上側3c」は、「束部3」を「上まつ毛21」の「下側21dに装着されるように平滑にされ」ているが、引用文献1の図3に示されている様子からしても、平坦にされているといえるから、本願発明の「第1のベース」の「平坦な頂側」に相当する。
また、引用発明の「束部3」の「上側3c」は、「上まつ毛21」の「下側21dに容易に接着できるように平滑にされ」ているが、これは、本願発明の「頂側」と同様に、「前記生まれつきの上睫毛の前記下側に接着できるように構成され」ているといえる。
そして、引用発明の「束部3」の「下側3d」は「平滑にされ」ており、引用文献1の図3に示されている様子からしても、平坦にされているといえるから、引用発明の「束部3」は、本願発明の「第1のベース」と、「平坦な底側」を有する点で共通する。
2 そうすると、本願発明と引用発明は以下の点で、一致し、相違する。
(一致点)
「人工睫毛エクステンションシステムであって、
生まれつきの上睫毛の下側に付けられるよう構成された第1の複数の睫毛エクステンションを含み、前記第1の複数の睫毛エクステンションの各々は、
第1の複数の人工毛、および
前記第1の人工毛の突出起点としての第1のベースを含み、前記第1のベースは、前記生まれつきの上睫毛の前記下側に取り付けられるように構成された平坦な頂側を有し、前記第1のベースの前記頂側は、前記生まれつきの上睫毛の前記下側に接着できるように構成され、平坦な底側を有する、人工睫毛エクステンションシステム。」
(相違点)
本願発明は、第1のベースの平坦な底側が、「第2の複数の睫毛エクステンションのうちの1つ以上の睫毛エクステンションの頂側の少なくとも一部に取り付けられるよう構成され」、人工睫毛エクステンションシステムが、「前記第1の複数の人工睫毛エクステンションの下に付けられるよう構成された前記第2の複数の睫毛エクステンションを含み、前記第2の複数の睫毛エクステンションの各々は」、「第2の複数の人工毛、および」、「前記第2の人工毛の突出起点としての第2のベースを含み、前記第2のベースは、前記第1の複数の人工睫毛エクステンションのうちの1つ以上の人工睫毛エクステンションの底側の少なくとも一部に取り付けられるように構成された平坦な頂側を有する」のに対し、引用発明の束部3は、下側3dが平滑にされているものの、別のまつ毛エクステンション用人工まつ毛の上側に取り付けられるように構成されているか明らかでなく、引用発明のまつ毛エクステンション用人工まつ毛の装着に係るシステムは、複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛1の下に付けられるよう構成された、別の複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛を含んでいない点。
第6 判断
そこで、前記相違点について検討する。
1 引用文献1によれば、まつ毛エクステンションとは、まつ毛エクステンション用人工まつ毛を人のまつ毛に装着する技術で、まつ毛エクステンションをまつ毛に施すと、被装着者の目元の印象が変わり、例えば目を大きく見せることができるもので(【0003】)、引用発明により、人工まつ毛1を装着した上まつ毛21は、目22を大きく見せる、まつ毛を美しく見せる、まつ毛をボリュームアップさせるなどのまつ毛エクステンションの効果を容易に得ることができるものである(【0051】)。このような効果をより高めることは、引用発明において当然想定される課題であって、そのためには、装着する人工まつ毛1を多くすることが合理的であることは技術的に明らかである。
引用発明は、そもそも、被装着者20の上瞼23から生える上まつ毛21の下側3dに人工まつ毛1を装着する、すなわち、上まつ毛21と人工まつ毛1を積み重ねることにより、当該効果を奏しているものである。このことを踏まえれば、引用文献1には、装着する人工まつ毛1を多くするために、さらにその下側に、別の人工まつ毛を積み重ねることの示唆があり、引用発明において、そうすることの動機付けが十分に認められる。
また、引用文献2に、自然に現在生えているまつ毛に長さ、厚み及びふくよかさを加えるためのアイラッシュに関し、外観を向上させる、新たに全体的な外観を創造するために、2つ以上のアイラッシュユニットを上下に組み合わせることが記載されている(【0002】、【0003】、【0042】)。機能や構造の類似性に鑑みれば、引用文献2に記載されたこのような事項を参考に、引用発明において、装着する人工まつ毛1を多くするために、さらにその下側に、別のまつ毛エクステンション用人工まつ毛を積み重ねることは、当業者にとって格別困難なことではない。
そして、引用発明は、束部3の下側3dが平滑にされているところ、束部3の上側3cが上まつ毛21の下側21dに容易に接着できるように平滑にされていることからすると、下側3dも、同様に、下側の別のまつ毛エクステンション用人工まつ毛の上側に容易に接着できるよう構成されているといえる構造である。その上、引用発明において、さらにその下側に、別の人工まつ毛を積み重ねる場合、別の人工まつ毛の上側に容易に接着できるように平滑に構成することも、当業者が適宜になし得たことである。
別の人工まつ毛に関しても、上側となる人工まつ毛1と同様の構造とすることが合理的で、人工まつ毛1の束部3の上側3cと同様、人工まつ毛1の下側に容易に接着できるように束部の上側を平滑にすることも、当業者が適宜になし得たことである。
そうすると、引用発明において、引用文献2に記載された事項を参考に、束部3の下側3dを、別のまつ毛エクステンション用人工まつ毛の上側に、容易に接着できるよう構成するとともに、複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛1の下に付けられるよう構成された、別の複数のまつ毛エクステンション用人工まつ毛を含むようにし、前記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものと認められる。
本願発明の奏する効果をみても、引用発明及び引用文献2に記載された事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものとは認められない。
2 審判請求人は、引用発明に引用文献2に記載された事項を組み合わせることに阻害要因ある、組み合わせることができない、組み合わせたとしても本願発明を得ることはできない、などと主張している(審判請求書3.(4)本発明1と引用例との対比)。
既に述べたとおり、引用発明において、目22を大きく見せる、まつ毛を美しく見せる、まつ毛をボリュームアップさせるなどのまつ毛エクステンションの効果をより高めるために、さらにその下側に、別のまつ毛エクステンション用人工まつ毛を積み重ねることの動機付けは十分に認められるところ、積み重ねる場合、別のまつ毛エクステンション用人工まつ毛の束部の上側、下側も、同様に、平滑にされることは明らかである。
引用発明の「束部3」の「下側3d」は、「人工まつ毛1を装着した上まつ毛の美観性の観点から平滑にされる」ものであるが、この「下側3d」が、下側に積み重ねられる人工まつ毛の背後になる場合は、特段美観上の問題は生じず、「下側3d」が露出する場合も、下側に積み重ねられる人工まつ毛に係る束部の上側に接着剤を塗布するなどにより接着と美観の両立が可能であることは、当業者が容易に理解することができる。このように、引用発明の「束部3」の「下側3d」が「人工まつ毛1を装着した上まつ毛の美観性の観点から平滑にされる」ものであることに関連して、引用発明に引用文献2に記載された事項を組み合わせることに、格別阻害要因があるとは解されない。
また、引用文献2に記載されたものは、最初のアイラッシュユニットの上側に後続のアイラッシュユニットが置かれるものであるが、これは、アイラッシュユニットが、自然に現在生えているまつ毛の上側に置かれるものであるからである。他方、引用発明は、「上まつ毛21の下側21d」に「人工まつ毛1」を装着するものであるが、両者の機能や構造の類似性に鑑みれば、まつ毛の上側か下側かの違いは、組み合わせを困難にするほどの事情ではない。
審判請求人は、引用文献2に記載されたものがそれぞれの取り付け部を互いに左右にずらすものであるから、引用発明に適用しても、本願発明の構成を得ることはできない旨主張しているが、本願発明は、「前記第1のベースは、…平坦な底側が、第2の複数の睫毛エクステンションのうちの1つ以上の睫毛エクステンションの頂側の少なくとも一部に取り付けられるよう構成され」、「前記第2のベースは、前記第1の複数の人工睫毛エクステンションのうちの1つ以上の人工睫毛エクステンションの底側の少なくとも一部に取り付けられるように構成された平坦な頂側を有する」とされているのみである。本願発明は「人工睫毛エクステンションシステム」として、「第1のベース」、「第2のベース」が左右にずらされるような位置となることを排除しているとは認められず、本願明細書の発明の詳細な説明も考慮すれば(【0053】、【0054】、【0058】、【0059】、図7B、7C、8B、8C)、「第1のベース」、「第2のベース」が左右にずらされるような位置となることも想定されているものと認められる。引用発明において、引用文献2に記載された事項を参考に、さらに別のまつ毛エクステンション用人工まつ毛を積み重ねる場合、仮に、下側の束部が、上側の束部3の位置からずれた位置に取り付けられることになるとしても、本願発明の構成を得ることができないということにはならない。
よって、請求人の主張は採用することができない。
3 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005763