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特許異議申立

2025-700418

液化水素バルブ用試験装置

審判番号
2025-700418
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-156633外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7566371
請求日
2025年04月14日
審決日
2025年06月11日
公報発行日
2025年07月25日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (G01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条第1項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7566371号発明「液化水素バルブ用試験装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7566371号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7566371号(以下「本件特許」という。)に係る出願(以下「本願」という。)は、令和5年9月22日(パリ条約による優先権主張 2023年4月21日(KR)韓国)の出願であって、令和6年10月4日にその請求項1~5に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年同月15日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1~5に係る特許に対して、令和7年4月14日に特許異議申立人 共栄バルブ工業株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許発明

本件特許の請求項1~5に係る発明(それぞれ以下「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(請求項1におけるA~Hは、分説するために当審にて付した分説番号である。また、以下、分説された各構成単位について、該分説番号を用いて「構成A」などということがある。引用発明についても同様である。)。

「【請求項1】
A 真空排気された内部にテストバルブのバルブボディが挿入され、前記テストバルブの操作部が外部に突出するように容器カバーで密封されたテスト容器と、
B 一旦が前記バルブボディの吸入口と連結されるインレットパイプと、
C 一旦が前記バルブボディの排出口と連結されるアウトレットパイプと、
続きを表示(全27行)
D 前記インレットパイプの他端と連結されて前記バルブボディの吸入口にヘリウムガスを供給するヘリウムタンクと、
E 20K以下の温度に冷却されるコールドヘッド部が前記テスト容器の内部に挿入され、冷媒ガスを吸入圧縮して吐出するガス圧縮部が前記容器カバーの外部に突出するように封止された極低温冷凍機と、
F 一端が前記極低温冷凍機のコールドヘッド部に結合され、他端が前記テストバルブのバルブボディに結合されて前記テストバルブのバルブボディを20K以下に冷却する熱伝導体と、
G 前記インレットパイプ及びアウトレットパイプ上にそれぞれ設けられて圧力及び流量をそれぞれ測定する圧力センサ及び流量センサを含んでなる、
H 液化水素バルブ用試験装置。
【請求項2】
前記テスト容器は、
内部容器と外部容器との間を真空排気してそれぞれの上端を密封した二重容器の形態であり、前記内部容器の外周面を包み込むように銀色アルミニウムがコーティングされた多層断熱(MLI、マルチレイヤ絶縁)シートが結合されたことを特徴とする、請求項1に記載の液化水素バルブ用試験装置。
【請求項3】
前記熱伝導体は、
前記コールドヘッド部に結合される第1銅ブロックと、
前記バルブボディに結合される第2銅ブロックと、
両端が前記第1銅ブロックと第2銅ブロックにそれぞれ連結されて熱伝導する銅コネクタを含むことを特徴とする、請求項1に記載の液化水素バルブ用試験装置。
【請求項4】
前記熱伝導体の銅コネクタは、
フレキシブルな複数の銅板が積層されたことを特徴とする、請求項3に記載の液化水素バルブ用試験装置。
【請求項5】
前記テストバルブは、
前記バルブボディの前面及び後面に前記吸入口及び排出口がそれぞれ形成され、
前記極低温冷凍機及び熱伝導体のそれぞれは、
一対を備え、
前記熱伝導体の第2銅ブロックのそれぞれは、
前記バルブボディの左側面および右側面にそれぞれ結合されていることを特徴とする、請求項3に記載の液化水素バルブ用試験装置。」

第3 異議申立理由の概要

申立人は、証拠として以下の甲第1号証ないし甲第28号証を提出し、以下の異議申立理由によって、本件発明1ないし5に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。

1 異議申立理由 特許法第29条第2項(進歩性違反)について

本件発明1ないし5は、甲第1、2、3及び5号証から特定される、本件特許の優先日より前に公然知られた発明、あるいは、公然実施された発明、及び、甲第4、6号証に例示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1ないし5に係る本件特許は特許法第113条第2号の規定により取消されるべきである。

2 証拠方法

甲第1号証:超低温弁実温漏洩試験装置構造図
甲第2号証:超低温弁実温漏洩試験装置系統図
甲第3号証:液化ガス用低温弁の使用承認
甲第4号証:写真(撮影対象 熱伝導体の銅コネクタ 撮影日2011年9月20日 撮影者 中西 努 撮影場所 ジェック東理社工場内)
甲第5号証:写真(撮影対象 内部容器 撮影日2018年10月29日 撮影者 山本高寛 撮影場所 共栄バルブ工業泉佐野工場内)
甲第6号証:冷凍機2台を備えた極低温試験装置の構造図
甲第7号証:共栄バルブ工業と川崎重工業との打合わせ資料のPC画面
甲第8号証:共栄バルブ工業とジェック東理社との打合せメモ
甲第9号証:ジェック東理社が共栄バルブ工業に提出した見積仕様書
甲第10号証:共栄バルブ工業及び川崎重工業と日本海事協会との打合記録
甲第11号証:共栄バルブ工業が大阪市立大学に相談した液体水素用玉型弁

の熱解析に関する回答(表紙)

甲第12号証:共栄バルブ工業と川崎重工業との打合記録
甲第13号証:共栄バルブ工業と日本海事協会との打合記録
甲第14号証:共栄バルブ工業とジェック東埋社との打合せメモ
甲第15号証:共栄バルブ工業からジェック東理社への見積仕様書の返却確認書
甲第16号証:ジェック東理社での極低温試験装置の立会検査(温度が20Kになるのを確認)した際の写真を記録したPC画面
甲第17号証:極低温試験装置が共栄バルブ工業に納入された際の写真を記録したPC画面
甲第18号証:極低温試験装置を共栄バルブ工業の工場にて試験運転をして

いる際の写真を記録したPC画面

甲第19号証:共栄バルブエ業と日本海事協会との打合記録
甲第20号証:手動弁・逆止弁・遮断弁の型式認証取得に向けた試験スケジ

ュール(2018年10月9日~11月13日)

甲第21号証:手動弁のタイプテスト実温試験成績書(合格)
甲第22号証:手動弁の実温弁座漏洩試験の状況の写真を記録したPC画面
甲第23号証:逆止弁のタイプテスト実温試験成績書(合格)
甲第24号証:タイプテスト成績書(手動弁・逆止弁・遮断弁)申請書
甲第25号証:型式認証取得を証明する書面
甲第26号証:長軸仕切弁の型式認証取得に向けた試験スケジュール(2019年7月10日~25日)
甲第27号証:長軸仕切弁のタイプテスト実温試験成績書(合格)
甲第28号証:型式認証取得を証明する書面

上記各甲号証の表記は、証拠説明書、「4 証拠の説明」の表における、「標目」欄に記載されたものである。また、甲第1~28号証を、以下、「甲1」~「甲28」という。

甲7~28は、甲1~3及び5に係る液化水素バルブ用試験装置を使用した型式認証の取得までの経緯を示すものであって、甲1~3及び5に係る液化水素バルブ用試験装置が、遅くとも手動弁の実温弁座漏洩試験が行われた2018年10月12日には、公然知られ、また公然実施されたことを示すためのものである。

第4 異議申立理由についての判断

1 甲1~6から特定される発明、技術事項について

令和7年4月14日提出の特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、申立人は、以下の主張をしている。

「甲1から甲5に記載された液化水素バルブ用試験装置は、上述の型式認証の取得に向けた試験に使用されたものであり、遅くとも手動弁の実温弁座漏洩試験が行われた2018年10月12日には、公然知られ(特許法第29条第1項第1号)、また公然実施された(特許法第29条第1項第2号)ものとなっている。」(第12頁)

「甲第1号証から甲第3号証の図面に示された液化水素バルブ用試験装置は、4.2で述べたとおり、本件特許の優先日(2023年4月21日)より前に、特許異議申立人が公開の状況下で自社製のテストバルブの試験に使用した公知公用のものである。
また、甲第4号証の写真に現われた銅コネクタは、本件特許の優先日よ
り前に製造されて使用された上記公知公用の液化水素バルブ用試験装置に
類似する装置のものであって、周知技術を示すものである。
また、甲第5号証に写真に現われた銀色アルミニウムがコーティングさ
れた内部容器は、特許異議申立人が使用した上記公知公用の液化水素バル
ブ用試験装置のものである。
また、甲第6号証の図面に示された極低温試験装置は、本件特許の優先
日より前に製造されて使用された上記公知公用の液化水素バルブ用試験装
置に類似する装置であって、周知技術を示すものである。」(第19頁)

そこで、申立人の主張するとおり、甲1~3及び5は同じ装置に関して記載したものであって、甲1~3及び5に記載された装置は、本願の優先日前である2018年10月12には公然知られ、あるいは、公然実施されたものであり、また、甲4及び甲6に記載された装置についても、本願の優先日前に公然知られ、あるいは、公然実施されたものと仮定し、以下検討する。

2 甲号証の記載事項

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(1)甲1~3及び5の記載事項

ア 甲1

甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。また、「・・(黒塗)・・」は、提出された証拠における文字又は文章が黒塗りされていることを示している。以下同様。)

(ア)「T5 弁体温時計2
T4 弁体温度計1
・・(黒塗)・・
T2 20K伝熱金具温度計1
続きを表示(全12行)
T1 冷凍機温度計
・・・
・・(黒塗)・・
V7 真空排気弁
V6 加圧ライン 出口弁
V5 加圧ライン 供給弁
・・(黒塗)・・
RE 冷凍機」
(イ)「
[図:0001424631000001.jpg]
」

イ 甲2

甲2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「T5 弁体温時計2
T4 弁体温度計1
・・(黒塗)・・
T2 20K伝熱金具温度計1
続きを表示(全12行)
T1 冷凍機温度計
・・・
・・(黒塗)・・
V7 真空排気弁
V6 加圧ライン 出口弁
V5 加圧ライン 供給弁
・・(黒塗)・・
RE 冷凍機」
(イ)「
[図:0001424631000002.jpg]
」

ウ 甲3

甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「Class NK
型式試験要領
低温弁
記事:液化水素向け」(表紙)
(イ)「9.3 検査方法
(1)図-4に示す様に供試弁を実温試験装置に設置し、熱電対及び検査設備機器をセットする。
尚、供試弁は1次側が止弁(V1)側になるように入れること。
(2)対象品内部をHeガス・・(黒塗)・・で加圧し、止弁(V1、V2))を閉弁して冷却中に大気を吸引しない状態とし、供試弁を冷却する。
続きを表示(全15行)
・・(黒塗)・・
(3)供試弁を冷却中は自動温度記録計にて温度と時間を記録し、供試弁が検査温度(-253℃)に達した後、この温度(-253℃)で・・(黒塗)・・間以上保持する。
保持されたことを確認後、検査を開始する。
・・・
(4)実温弁座漏れ検査
(a)供試弁を全閉にした後、止弁(V2)を開弁し出口側を大気圧まで落とす。
その後、止弁(V1)を開弁し、Heガス圧により設計圧力の・・(黒塗)・・倍まで加圧する。
(b)この試験圧力を・・(黒塗)・・以上保持した後、A部(ビニールホース)を接続する。
状態が安定したことを確認後、水上置換により・・(黒塗)・・漏れ量を測定する。
(c)検査は、流れ方向及び逆流れ方向(逆止弁は逆流れ方向のみ)からそれぞれ加圧して実施する。
(d)検査における昇圧幅は、表6によるものとする。」(第9頁)
(ウ)「
[図:0001424631000003.jpg]
」(第9頁)

エ 甲5

甲5には、次の写真が記載されている。

(ア)「
[図:0001424631000004.jpg]
」

(2)甲1~3及び5から認定される発明

ア 上記(1)より、以下の事項が認定できる。また、各甲号証における図面、及び文字又は文章における黒塗り部分については、何が記載されているのか不明であるが、一応、下記の認定事項に影響を及ぼさないものと仮定した。

(ア)甲2には、「T4 弁本体温度計1」及び「T5 弁本体温度計2」との記載があるから、甲2の図面において、「T4」、「T5」が付された部分が、「温度計」が設けられる対象である「弁本体」であることは、明らかである。さらに、当該「弁本体」は、甲3に記載の「供試弁」の本体と同じものを指すことは、明らかである。

甲2の図面には、「T4」、「T5」が付された供試弁本体が内部に設けられた容器が図示されており、また、当該容器は上面部分と、側方及び下方部分とからなるものである点が図示されている。

さらに、甲2の図面には、供試弁本体に接続する円形のハンドルが容器の上面部分から外部に突出するように設けられている点、及び、容器が「V7」の符号が付された弁を有するラインを介して、容器の右側の装置に接続されている点が図示されている。

ここで、甲2には、「V7 真空排気弁」との記載があるから、真空排気弁V7を有するラインを介して容器に接続された、容器の右側の装置が、排気装置であることは明らかである。

以上より、甲2、3には、真空排気弁V7を有するラインを介して排気装置が接続され、内部に供試弁本体が設けられ、供試弁本体に接続するハンドルが上部から外部に突出するように設けられた上面部分と側方及び下方部分とからなる容器が記載されているといえる。

(イ)甲2の図面には、「T4」、「T5」が付された供試弁の両端部にそれぞれ接続された2つのラインが図示されており、2つのラインの端部(図面の右上部)には、それぞれ、流入方向の矢印及び「GHe」の記載と、流出方向の矢印及び「GHe」の記載がある。ここで、甲2には、図面の下方に「流体名称:ヘリウムガス」との記載があり、甲3には、「供試弁を実温試験装置に設置し、・・・対象品内部をHeガス・・・で加圧し」との記載があることを踏まえると、上記2つのラインの端部に設けられた矢印及び「GHe」の記載は、「Heガス」の流入方向及び流出方向を意味していることは、明らかである。

よって、甲2、3には、供試弁本体の一端側に連結され、Heガスが流入するラインと、供試弁本体の他端側に連結され、Heガスが流出するラインが記載されているといえる。

また、甲2の図面において図示された、上記Heガスが流入するライン及びHeガスが流出するラインが、それぞれ、甲3の図-4における、「Heガスボンベ」と供試弁とを接続する左側のライン、及び、供試弁の右側のラインと同じラインを意味することは、明らかである。

そして、甲3の図-4には、Heガスが流入するラインの端部に、「Heガスボンベ」を接続する点が図示されている。また、甲3には、「供試弁を実温試験装置に設置し、・・・対象品内部をHeガス・・・で加圧し」との記載があり、当該記載における「加圧」を、「Heガスボンベ」が行うものであることは、明らかである。

以上より、甲3には、Heガスが流入するラインの端部に接続され、供試弁の内部をヘリウムガスで加圧するためのHeガスボンベが記載されているといえる。

(ウ)甲2には、「RE 冷凍機」、「T1 冷凍機温度計」及び「T2 20K伝熱金具温度計」との記載があり、甲2の図面には、「RE」の符号が付された冷凍機が図示されている。また、甲2の図面においては、容器の内部にある冷凍機の下端部に「T1」が、その右側、供試弁の近傍に「T2」の符号が付されており、また、「20K伝熱金具温度計」を示す「T2」が付される伝熱金具が、冷凍機により供試弁を冷却するためのものであることは明らかであるから、冷凍機REは、容器の内部で伝熱金具に接続する部分を有しており、伝熱金具は、一端が冷凍機REに接続し、他端が供試弁に接続するものであることは、明らかである。

また、甲2の図面には、冷凍機REの上部における、容器の上面部分の上方に設けられたコンプレッサーが図示されている。

また、甲3には、「供試弁を冷却する。」及び「供試弁を冷却中は自動温度記録計にて温度と時間を記録し、供試弁が検査温度(-253℃)に達した後、この温度(-253℃)で・・・間以上保持する。」と記載されているから、甲2の「冷凍機RE」が、供試弁を冷却し、-253℃に保持するためのものであることは、明らかである。

以上より、甲2、3には、一端が冷凍機REに接続し、他端が供試弁に接続する伝熱金具、及び、容器の内部で伝熱金具に接続する部分と、容器の上面部分の上方に設けられたコンプレッサーとを有し、供試弁を冷却し、-253℃に保持するための冷凍機REとが記載されているといえる。

(エ)甲3の図-4には、Heガスが流入するライン及びHeガスが流出するラインにそれぞれ設けられた圧力計が図示されている。

また、甲3には、

「(2)対象品内部をHeガス・・・で加圧し、止弁(V1、V2))を閉弁して冷却中に大気を吸引しない状態とし、供試弁を冷却する。
(3)供試弁を冷却中は自動温度記録計にて温度と時間を記録し、供試弁が検査温度(-253℃)に達した後、この温度(-253℃)で・・・間以上保持する。
保持されたことを確認後、検査を開始する。
・・・
(4)実温弁座漏れ検査
(a)供試弁を全閉にした後、止弁(V2)を開弁し出口側を大気圧まで落とす。
その後、止弁(V1)を開弁し、Heガス圧により設計圧力の・・・倍まで加圧する。
(b)この試験圧力を・・・以上保持した後、A部(ビニールホース)を接続する。
状態が安定したことを確認後、水上置換により・・・漏れ量を測定する。」(第9頁)

と記載されているから、甲3には、Heガスが流入するラインに設けられた圧力計と、Heガスが流出するラインに設けられた圧力計とを有し、供試弁内部をHeガスで加圧し、Heガスが流入するラインとHeガスが流出するラインにそれぞれ設けられた止弁V1及び止弁V2を閉弁して冷却中に大気を吸引しない状態として供試弁を冷却し、供試弁が検査温度である-253℃ に達し、この温度で保持した後、供試弁を全閉にし、止弁V2を開弁し出回側を大気圧まで落とし、その後、止弁V1を開弁し、Heガス圧により加圧し、この試験圧力を保持した後、Heガスが流出するライン側の端部にビニールホースを接続し、水上置換により漏れ量を測定する点が記載されているといえる。

(オ)甲3には、「記事:液化水素向け」(表紙)、「図-4に示す様に供試弁を実温試験装置に設置し」(第9頁)との記載があるから、甲3には、液化水素向けの供試弁の実温試験装置が記載されているといえる。

イ 以上より、甲1~3及び5から、次の発明(以下、「引用発明」という。)が特定できると認められる。

「a 真空排気弁V7を有するラインを介して排気装置が接続され、内部に供試弁本体が設けられ、ハンドルが上部から外部に突出するように設けられた上面部分と側方及び下方部分とからなる容器と、(認定事項(ア))
b 供試弁本体の一端側に連結され、Heガスが流入するラインと、(認定事項(イ))
c 供試弁本体の他端側に連結され、Heガスが流出するラインと、(認定事項(イ))
d Heガスが流入するラインの端部に接続され、供試弁の内部をヘリウムガスで加圧するためのHeガスボンベと、(認定事項(イ))
e 容器の内部で伝熱金具に接続する部分と、容器の上面部分の上方に設けられたコンプレッサーとを有し、供試弁を冷却し、-253℃に保持するための冷凍機REと、(認定事項ウ)
f 一端が冷凍機REに接続し、他端が供試弁に接続する伝熱金具と、(認定事項ウ)
g Heガスが流入するラインに設けられた圧力計と、Heガスが流出するラインに設けられた圧力計とを有し、供試弁内部をHeガスで加圧し、Heガスが流入するラインとHeガスが流出するラインにそれぞれ設けられた止弁V1及び止弁V2を閉弁して冷却中に大気を吸引しない状態として供試弁を冷却し、供試弁が検査温度である-253℃ に達し、この温度で保持した後、供試弁を全閉にし、止弁V2を開弁し出回側を大気圧まで落とし、その後、止弁V1を開弁し、Heガス圧により加圧し、この試験圧力を保持した後、Heガスが流出するライン側の端部にビニールホースを接続し、水上置換により漏れ量を測定する、(認定事項エ)
h 液化水素向けの供試弁の実温試験装置。(認定事項オ)」

(3)甲4の記載事項

甲4には、次の写真が記載されている。

ア 「
[図:0001424631000005.jpg]
」

(4)甲6の記載事項

甲6には、以下の図面が記載されている。

ア 「
[図:0001424631000006.jpg]
」

3 本件発明1について

(1)対比

本件発明1と引用発明とを対比する。

ア 構成Aについて

引用発明の「供試弁」、「供試弁本体」及び「容器」は、本件発明1の「テストバルブ」、「テストバルブのバルブボディ」及び「テスト容器」に相当する。

引用発明において、「容器」の「内部に供試弁本体が設けられ」ていることは、「テスト容器」の「内部にテストバルブのバルブボディが挿入され」ていることに相当する。

引用発明において、「容器」の「上面部分」は、本件発明1の「容器カバー」に相当する。

引用発明において、「供試弁本体に接続するハンドル」は、「供試弁」の操作のためのハンドルであることは明らかであるから、本件発明1の「前記テストバルブの操作部」に相当する。よって、引用発明において、「供試弁本体に接続するハンドルが上部から外部に突出するように設けられた」ことは、本件発明1において、「前記テストバルブの操作部が外部に突出するように」なっていることに相当する。

引用発明において、「真空排気弁V7を有するラインを介して排気装置が接続され」た「容器」が、「排気装置」により、その内部が真空排気可能であることは明らかである。そして、真空排気されるものである「上面部分と側方及び下方部分とからなる容器」が密封されていること、すなわち、「容器」の「側方及び下方部分」は「容器」の「上面部分」により密閉されていることも、明らかである。

また、引用発明の「液化水素向けの供試弁の実温試験装置」が、「内部に供試弁本体」を「設け」てから、「容器」の内部を真空排気して試験を行うことが可能な装置であることは自明であるから、本件発明1における「真空排気された内部にテストバルブのバルブボディが挿入され」るとの発明特定事項に関して、引用発明と本件発明1との間に差異があるとはいえない。よって、引用発明は、「真空排気された内部にテストバルブのバルブボディが挿入され」るとの事項を充足するといえる。

以上より、引用発明の「真空排気弁V7を有するラインを介して排気装置が接続され、内部に供試弁本体が設けられ、供試弁本体に接続するハンドルが上部から外部に突出するように設けられた上面部分と側方及び下方部分とからなる容器」は、本件発明1の「真空排気された内部にテストバルブのバルブボディが挿入され、前記テストバルブの操作部が外部に突出するように容器カバーで密封されたテスト容器」に相当する。

イ 構成Bについて

引用発明の「供試弁本体の一端側に連結され、Heガスが流入するライン」は、本件発明1の「一旦が前記バルブボディの吸入口と連結されるインレットパイプ」に相当する。

ウ 構成Cについて

引用発明の「供試弁本体の他端側に連結され、Heガスが流出するライン」は、本件発明1の「一旦が前記バルブボディの排出口と連結されるアウトレットパイプ」に相当する。

エ 構成Dについて

引用発明において、「Heガス」、「Heガスが流入するラインの端部」、「供試弁の内部をヘリウムガスで加圧する」こと、及び「Heガスボンベ」は、本件発明1における、「ヘリウムガス」、「前記インレットパイプの他端」、「前記バルブボディの吸入口にヘリウムガスを供給する」こと、及び「ヘリウムタンク」に相当する。

よって、構成dは、構成Dに相当する。

オ 構成Eについて

引用発明の「容器の内部で伝熱金具に接続する部分」、「コンプレッサー」及び「供試弁を冷却し、-253℃に保持するための冷凍機RE」は、本件発明1の「前記テスト容器の内部に挿入され」た「コールドヘッド部」、「冷媒ガスを吸入圧縮して吐出するガス圧縮部」及び「極低温冷凍機」に相当する。

引用発明において、「冷凍機RE」の「コンプレッサー」が「容器の上面部分の上方に設けられ」ていることは、本件発明1において、「冷媒ガスを吸入圧縮して吐出するガス圧縮部が前記容器カバーの外部に突出するように」設けられたことに相当する。また、引用発明において、「容器の内部で伝熱金具に接続する部分と、容器の上面部分の上方に設けられたコンプレッサーとを有」する「冷凍機RE」における、「容器の上面部分」を貫通する部分が、封止されていることは明らかである。

引用発明の「冷凍機RE」は、「供試弁を冷却し、-253℃に保持する」ものであり、「供試弁」の温度を「-253℃」とするためには、「冷凍機RE」における「容器の内部で伝熱金具に接続する部分」は、「-253℃」よりさらに低い温度に冷却する必要があることは、明らかである。よって、引用発明において、「供試弁を冷却し、-253℃に保持する」「冷凍機RE」が、「容器の内部で伝熱金具に接続する部分」を20K、すなわち、-253.15℃以下の温度に冷却するものであることは、明らかである。

以上より、引用発明の「容器の内部で伝熱金具に接続する部分と、容器の上面部分の上方に設けられたコンプレッサーとを有し、供試弁を冷却し、-253℃に保持するための冷凍機RE」は、本件発明1の「20K以下の温度に冷却されるコールドヘッド部が前記テスト容器の内部に挿入され、冷媒ガスを吸入圧縮して吐出するガス圧縮部が前記容器カバーの外部に突出するように封止された極低温冷凍機」に相当する。

カ 構成Fについて

上記オの対比を踏まえると、引用発明の「一端が冷凍機REに接続し、他端が供試弁に接続する伝熱金具」は、本件発明1の「一端が前記極低温冷凍機のコールドヘッド部に結合され、他端が前記テストバルブのバルブボディに結合されて前記テストバルブのバルブボディを20K以下に冷却する熱伝導体」に相当する。

キ 構成Gについて

引用発明の「Heガスが流入するラインに設けられた圧力計」は、本件発明1の「前記インレットパイプ」「上に」「設けられて圧力」を「測定する圧力センサ」に相当する。

また、引用発明の「Heガスが流出するラインに設けられた圧力計」は、本件発明1の「前記」「アウトレットパイプ上に」「設けられて圧力」を「測定する圧力センサ」に相当する。

よって、構成gは、構成Gと、「前記インレットパイプ及びアウトレットパイプ上にそれぞれ設けられて圧力」「をそれぞれ測定する圧力センサ」「を含んでなる」点で共通する。

ク 構成Hについて

引用発明の「液化水素向けの供試弁の実温試験装置」は、本件発明1の「液化水素バルブ用試験装置」に相当する。

(2)一致点、相違点

上記(1)のとおりであるから、本件発明1と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの点で相違する。

ア 一致点

「A 真空排気された内部にテストバルブのバルブボディが挿入され、前記テストバルブの操作部が外部に突出するように容器カバーで密封されたテスト容器と、
B 一旦が前記バルブボディの吸入口と連結されるインレットパイプと、
C 一旦が前記バルブボディの排出口と連結されるアウトレットパイプと、
D 前記インレットパイプの他端と連結されて前記バルブボディの吸入口にヘリウムガスを供給するヘリウムタンクと、
E 20K以下の温度に冷却されるコールドヘッド部が前記テスト容器の内部に挿入され、冷媒ガスを吸入圧縮して吐出するガス圧縮部が前記容器カバーの外部に突出するように封止された極低温冷凍機と、
F 一端が前記極低温冷凍機のコールドヘッド部に結合され、他端が前記テストバルブのバルブボディに結合されて前記テストバルブのバルブボディを20K以下に冷却する熱伝導体と、
G’前記インレットパイプ及びアウトレットパイプ上にそれぞれ設けられて圧力をそれぞれ測定する圧力センサを含んでなる、
H 液化水素バルブ用試験装置。」

イ 相違点1(構成G)

インレットパイプ及びアウトレットパイプ上に、本件発明1では、圧力をそれぞれ測定する圧力センサがそれぞれ設けられている他に、「流量をそれぞれ測定する流量センサ」が「それぞれ設けられて」「含んでなる」と特定されているのに対し、引用発明は、「供試弁本体の一端側に連結され、Heガスが流入するライン」(インレットパイプ)及び「供試弁本体の他端側に連結され、Heガスが流出するライン」(アウトレットパイプ)が流量をそれぞれ測定する流量センサを含むとは特定されていない点。

(3)相違点に対する判断

上記相違点1について検討する。

ア まず、甲4、6には、液化水素バルブ用試験装置において、インレットパイプ及びアウトレットパイプ上の両方に流量を測定する流量センサを設ける点は記載されていない。

イ 引用発明は、「Heガスが流入するラインに設けられた圧力計と、Heガスが流出するラインに設けられた圧力計とを有し、供試弁内部をHeガスで加圧し、Heガスが流入するラインとHeガスが流出するラインにそれぞれ設けられた止弁V1及び止弁V2を閉弁して冷却中に大気を吸引しない状態として供試弁を冷却し、供試弁が検査温度である-253℃ に達し、この温度で保持した後、供試弁を全閉にし、止弁V2を開弁し出回側を大気圧まで落とし、その後、止弁V1を開弁し、Heガス圧により加圧し、この試験圧力を保持した後、Heガスが流出するライン側の端部にビニールホースを接続し、水上置換により漏れ量を測定する」(構成g)ものである。

そうすると、Heガスが流出するライン側でHeガスの漏れ量を測定するのであるから、「供試弁」の試験の際に、「Heガスが流入するライン」における「Heガス」の流量の値を求める必要はなく、引用発明において「Heガスが流入するライン」(インレットパイプ)に流量を測定する流量センサを設ける動機があるとはいえない。

この点、ガスが流出するライン側でガスの漏れ量を測定する技術において、ガスが流入するライン側でさらにガスの流量を測定する必要があることは、上記甲4及び6を含め、その他の甲号証においても示されていないし、本件優先日前において、技術常識であったともいえない。加えて、引用発明のように、液化水素向けの供試弁の実温試験装置という極低温(供試弁の検査温度が-253℃にも達する)という特殊な環境のもとにおいて、ガスが流出するライン側でガスの漏れ量を測定する際に、ガスが流入するライン側でさらにガスの流量を測定するという技術が本件優先日前に周知であったともいえない。

よって、引用発明において、「Heガスが流入するライン」(インレットパイプ)に流量を測定する流量センサを設けることが、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

以上より、相違点1に係る構成を含む本件発明1は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

ウ 申立人の主張について

異議申立書において、申立人は、上記相違点1に関して、「一方、甲2及び甲3を参照すると、公知公用の液化水素バルブ用試験装置は、構成gのとおり、発明特定事項Gにおける流量センサを備えていないが、公知公用の液化水素バルブ用試験装置は、甲3に示されたとおり、アウトレットパイプ400に設けられている漏れ量測定計Faにより、テストバルブ100からの漏れ量を測定している。本件請求項1のようにインレットパイプ300及びアウトレットパイプ400に流量センサFを備えて漏れ量を測定する構成とすることは、当業者にとって想到容易な変更であり、同一の目的達成のためには迂遠な改変である。」(第20頁)との主張をしているので検討する。

上記イで示したとおり、引用発明は、その試験方法において、「Heガスが流入するライン」(インレットパイプ)にて流量を測定する必要があるものではないから、「Heガスが流入するライン」に流量センサを備えて漏れ量を測定する構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことであるとはいえない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

(4)小括

以上より、本件発明1は、引用発明、及び、甲4、6に開示された事項又は周知技術から、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

4 本件発明2~5について

本件発明2~5はそれぞれ、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する形式で記載された請求項2~5に係る発明であり、本件発明1の構成を全て含み、それをさらに減縮した発明であるから、引用発明とは、上記相違点1で少なくとも相違する。

そして、相違点1については、上記3(3)で検討したとおりであるから、本件発明2~5についても、本件発明1と同じ理由により、引用発明、及び、甲4、6に開示された技術事項又は周知技術から、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

5 甲1~6に記載の装置が、公然知られ、あるいは、公然実施されたといえるかについて

上記1のとおり、甲1~3及び5は同じ装置に関して記載したものであって、甲1~3及び5に記載された装置は、本願の優先日前である2018年10月12には公然知られ、あるいは、公然実施されたものであり、また、甲4及び甲6に記載された装置についても、本願の優先日前に公然知られ、あるいは、公然実施されたものと仮定し、さらに、上記2、アのとおり、甲号証における黒塗り部分は、何が記載されているのか不明であるが、引用発明の認定に影響を及ぼさないものと仮定した上で、上記2~5のとおり進歩性についての検討をしたが、当該仮定についても以下のとおり検討する。

(1)甲1~3及び5が同じ装置に関するものといえるかについて

ア 甲1、2には、工事番号等の記載が黒塗りとなっており、また、他にも型番等を特定できる記載はないから、甲1と甲2が同じ装置に関するものといえるか不明である。

イ 甲3には、甲3に記載の「実温試験装置」が、甲1または甲2に記載の装置と同じものであることが把握できる記載はなく、両者が同じ装置に関するものといえるか不明である。

また、甲3の図-4において、供試弁の下方に設けれた装置が供試弁を冷却する装置であると認められるが、この点において甲1、2と装置の構成が異なっていること、及び、甲3において、容器の排気について、何らの記載もないことからも、両者が同じ装置に関するものといえるのか疑義がある。

ウ 甲5は、何の写真であるのか明らかではなく、甲1~3に記載された装置と同じ装置の写真であることが明らかとはいえない。

(2)甲1~3及び5に記載された装置が、公然知られ、あるいは、公然実施されたものといえるかについて

ア 甲1~3及び5と甲7~28との間に、両者の関連が明らかとなる記載はなく、甲1~3及び5が、申立人が異議申立書において主張する経緯により公然知られ、あるいは、公然実施されたものといえるか不明である。

イ 甲3には、日本海事協会神戸支部担当検査員の立会の下、試験を行う旨の記載があるが、試験に立ち会った日本海事協会神戸支部担当検査員等が守秘義務を有するか否か等が明らかではないため、甲1~3及び5に記載された装置が、「公然」知られ、あるいは実施されたといえるか、不明である。

(3)甲1~3及び5に記載された発明について

上記のとおり、甲号証における黒塗り部分は、何が記載されているのか不明であるが、引用発明の認定に影響を及ぼさないものと仮定した上で、上記2、イのとおり甲1~3及び5に記載された発明(引用発明)を特定したが、特に、装置において図面中に黒塗りされた部分があると、図面に記載されている装置を「装置」として正確に把握できないことから、甲1~3及び5に記載された発明を上記引用発明のとおり特定できるか不明である。

(4)上記(1)~(3)より、甲1~3及び5は同じ装置に関して記載したものであって、甲1~3及び5に記載された発明は、本願の優先日前に公然知られ、あるいは、公然実施されたものであると判断できるほど、証拠の提示が適切であるとはいえない。

(5)甲4、6について

ア 甲4の写真は、何の写真でありいつ撮影されたものであるのか、明らかとはいえない。

イ 甲6について、甲1、2と同様に、本願の優先日前に公然知られ、あるいは公然実施されたといえるか不明である。

ウ 以上より、甲4、6に記載された発明が本願の優先日前に公然知られ、あるいは、公然実施されたものであるとはいえない。また、甲4、6が、本願の優先日前における周知技術を示すものともいえない。

第5 むすび

以上のとおり、申立人が特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2025-700418

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