2024-700524
振動試験装置及びその故障予知方法
- 審判番号
- 2024-700524
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-164467外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7405393
- 請求日
- 2024年06月04日
- 審決日
- 2024年10月07日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エミック株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人エスエス国際特許事務所
- 【異議申立人】IMV 株式会社
- 【異議申立人代理人】松永 充弘
- 分類
- P1651.121-Y (G01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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特許第7405393号(以下「本件特許」という。)に係る出願(以下「本願」という。)は、令和元年9月10日の特許出願であって、令和5年12月18日にその請求項1~16に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年12月26日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1~16に係る特許に対して、令和6年6月4日に特許異議申立人 IMV株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~16に係る発明(それぞれ以下「本件発明1」ないし「本件発明16」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(請求項1及び10におけるA~Jは、分説するために当審にて付した分説番号である。また、以下、分説された各構成単位について、該分説番号を用いて「構成A」などということがある。引用発明等についても同様である。)。
「【請求項1】A 被試験体が搭載される可動部と、B 透磁性を有する磁路部材と、該磁路部材に流れる磁束を発生させる磁束発生手段とを有する固定部と、を備える振動試験装置であって、C 前記可動部の加速度、速度、変位の少なくともいずれかを測定する3軸センサと、続きを表示(全46行)D 前記3軸センサからの出力に基づき、前記振動試験装置の故障予知を行う演算装置と、をさらに備え、E 前記演算装置は、前記3軸センサからの出力に基づき、前記可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とするF 振動試験装置。【請求項2】前記演算装置は、前記3軸センサからの出力に基づき、前記可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかを測定し、該可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかに基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項1に記載の振動試験装置。【請求項3】前記演算装置は、前記3軸センサからの出力に基づき、加振力係数を算出し、該加振力係数に基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の振動試験装置。【請求項4】前記可動部が、駆動コイルを備え、前記駆動コイルは、前記被試験体に所定パターンの振動を与えるために必要な振動信号を振動制御装置から送られるように構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動試験装置。【請求項5】前記演算装置は、前記振動信号と、前記3軸センサからの出力と、に基づき、前記振動試験装置の周波数応答を測定し、該周波数応答の共振周波数を算出し、該共振周波数に基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項4に記載の振動試験装置。【請求項6】前記演算装置は、前記振動試験装置の故障が予知された場合に、警報を発するように構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の振動試験装置。【請求項7】前記可動部を可動状態で保持する可動部懸架用バネをさらに備え、前記3軸センサを、前記可動部懸架用バネの鉛直方向上方に配置することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の振動試験装置。【請求項8】前記3軸センサを、前記可動部において前記被試験体が載置される面以外の位置に配置することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の振動試験装置。【請求項9】前記3軸センサを、前記可動部の側面において前記被試験体が載置される面寄りに配置することを特徴とする請求項8に記載の振動試験装置。【請求項10】G 被試験体が搭載される可動部と、H 透磁性を有する磁路部材と、該磁路部材に流れる磁束を発生させる磁束発生手段とを有する固定部と、を備える振動試験装置の故障予知方法であって、I 前記可動部のクロストークを3軸センサを用いて測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、故障予知を行うことを特徴とするJ 故障予知方法。【請求項11】前記可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかを測定し、該可動部の変位量及び振動数の少なくともいずれかに基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項10に記載の故障予知方法。【請求項12】加振力係数を算出し、該加振力係数に基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項10または11に記載の故障予知方法。【請求項13】前記可動部が有する駆動コイルに入力する振動信号と、前記可動部の振幅とから、前記振動試験装置の周波数応答を測定し、該周波数応答の共振周波数を算出し、該共振周波数に基づいて、前記故障予知を行うことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の故障予知方法。【請求項14】前記3軸センサを、前記可動部を可動状態で保持する可動部懸架用バネの鉛直方向上方に配置することを特徴とする請求項10から13のいずれか1項に記載の故障予知方法。【請求項15】前記3軸センサを、前記可動部において前記被試験体が載置される面以外の位置に配置することを特徴とする請求項10から14のいずれか1項に記載の故障予知方法。【請求項16】前記3軸センサを、前記可動部の側面において前記被試験体が載置される面寄りに配置することを特徴とする請求項15に記載の故障予知方法。」
第3 異議申立理由の概要
申立人は、証拠として以下の甲第1号証ないし甲第11号証を提出し、以下の異議申立理由によって、本件発明1ないし16に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。
1 異議申立理由 特許法第29条第2項(進歩性違反)について
本件発明1ないし16は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第1~11号証に例示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は特許法第113条第2号の規定により取消されるべきである。
2 証拠方法
第4 異議申立理由についての判断
1 甲第1~11号証の記載事項
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(1)甲第1号証
本願の出願前である平成7年12月31日に公開された、「動電式振動試験装置-特性表示方法 JIS B 7758-1995(ISO 5344:1980), 財団法人 日本規格協会,平成7年12月31日」(甲第1号証)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同様。)
ア 「0. 序文この規格は,動電式振動発生機を使った試験装置の特性表示方法に関するもので,試験装置を選択するときの指針として使用できる。」(第1頁)
イ 「7.2.6 振動台横振動製造業者は,中央の取付点における軸方向振動に対する横方向振動の比を示す二つの曲線によって,振動台の横振動を,振動数の関数として示さなければならない。横方向振動は,トラニオン軸に平行な軸及び直交する軸の方向の振動とする。中央の点が不都合な場合は,基準点の位置を示す。無負荷及び試験負荷m2の状態で,できれば定格加振力で測定し,使用した測定方法を明示しなければならない。他の試験負荷mt又は中央から離れた点における測定のような,補足的な横振動の測定は,製造業者と使用者との合意によって,実施してもよい。」(第11頁)
ウ 「[図:0001416500000001.jpg]」(第12頁)
エ 「[図:0001416500000002.jpg]」(第12頁)
オ 「図7 振動台付きの動電式振動発生機の代表的な配置[図:0001416500000003.jpg]」(第31頁)
(2)甲第2号証
ア 本願の出願前である平成29年4月6日に公開された、特表2017-509893号公報(甲第2号証)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】【請求項1】振動試験システムであって、動電型加振器に作動的に結合された電力増幅器を含み、前記加振器がペイロード支持構造に機械的に結合された振動可能なアーマチュアを含んでいる、振動試験装置と、続きを表示(全30行)ペイロードの機械的励起中、経時的に前記動電型加振器の1つ以上の動作パラメータのそれぞれの値を測定し記録するように構成されたデータロガーと、前記1つ以上の動作パラメータのロギングされた値を読取り処理するように構成されているプロセッサまたはコントローラと、を備え、前記プロセッサが、前記1つ以上の動作パラメータの前記記録された値に基づいて、アーマチュア力サイクル累積数を決定し、前記アーマチュア力サイクル累積数および前記振動試験装置の既定の寿命に基づいて、動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算し、前記振動試験システムのディスプレー上で、前記振動試験装置の前記残存寿命または前記消費寿命を標示する、ように構成されている、振動試験システム。・・・【請求項9】前記動電型加振器の前記1つ以上の動作パラメータが、前記振動可能なアーマチュア上に組付けられた加速度計によって測定される前記動電型加振器の加速度、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれかに記載の振動試験システム。【請求項10】前記プロセッサがさらに、前記1つ以上の動作パラメータの前記記録された値に基づいて前記加振器の基準挙動を定期的に計算する、ように構成されており、前記基準挙動には、基本共振周波数などの前記加振器の周波数応答特性が含まれる、請求項1~9のいずれかに記載の振動試験システム。・・・【請求項13】振動試験装置の残存寿命または消費寿命を決定し表示する方法において、a)ペイロードの振動励起中に動電型加振器の経時的な1つ以上の動作パラメータのそれぞれの値を測定し記録するステップと、b)前記1つ以上の動作パラメータの前記記録された値に基づいて、前記動電型加振器の振動可能なアーマチュア上のアーマチュア力サイクル累積数を決定するステップと、c)前記アーマチュア力サイクル累積数および前記振動試験装置の既定の寿命に基づいて、前記動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算するステップと、d)オペレータ可読ディスプレー上で、前記振動試験装置の前記残存寿命および/または前記消費寿命を標示するステップと、を含む方法。」
(イ)「【0005】アーマチュアコイルならびにそのフレームおよび軸受などの振動試験装置の可動要素、ならびにローラー(誘導システム)は、動電型加振器が作動させられるにつれて、摩耗、引裂および疲労を受ける。しかしながら、摩耗および引裂の量は、動電型加振器上のペイロードにより生成される力に大きく左右され、そのため、ペイロードの僅かな増加さえ、加振器の摩耗および引裂の劇的な増加および振動試験装置の残存寿命の対応する短縮を導くことになる。振動試験装置の動電型加振器は、修理可能に/オーバーホールされるように設計されており、一定の保守間隔で予めプログラミングされた計画的保守システムを通して作動的状態に保たれている。この保守間隔の長さは、典型的に、振動試験装置のタイプ/型式および該当する顧客の予想される使用パターンから推定される。【0006】このような振動試験システム(VTS)の残存寿命および利用可能性の決定は、これまで、該当する振動試験システムの挙動を反応的に観察することに基づく保守体制により達成されてきた。この反応性観察体制は、計画的保守間隔の間に発生する振動試験システムの機能不良またはエラーが、動電型加振器の機能における可聴的、触覚的または可視的な異常などの明らかなエラーが顕著にならない限り、オペレータまたはユーザーにより検出も報告もされていなかったことを意味している。【0007】固定されたまたは予めプログラミングされた保守間隔は、既存の振動試験装置およびシステムの最適な使用および運用について複数の問題を導く。これらの問題の1つは、振動試験装置の使用パターンが変化して、保守間隔の長さを決定するために利用される使用パターンから逸脱することである。顧客は、例えば、新規のまたは改良された機器を振動試験する必要性から、予想されていたものよりも高いペイロードを振動試験装置の動電型加振器に対して適用する場合がある。顧客は同様に、機器生産の増大またはより綿密な振動試験プロトコルの導入に起因して予想されたものよりもはるかに長い時間的期間にわたり動電型加振器を作動させる場合もある。振動試験装置の可動構成部品、特に動電型加振器上の摩耗および引裂の量はアーマチュアの力に非常に大きく左右されることから、予想された使用パターンからのこれらのタイプの逸脱は、一方では、予想されたものよりはるかに短い寿命、ひいては使用中の保守間隔の間における振動試験装置の故障を導く可能性がある。他方では、加振器の荷重および随伴するアーマチュア力が予想されたものよりも小さい場合、計画的保守間隔間の時間は不必要に短い状態となり、振動試験システムおよび振動試験装置の動作に関連するユーザー資源およびコストを浪費することになる。」
(ウ)「【0009】振動試験システムおよび振動試験装置の残存寿命および/または消費寿命についての情報の利用可能性は、予想外の摩耗および引裂誘発型の故障を防止することによって生産計画を改善し、不必要でかつ無駄の多い保守またはメンテナンス活動を取り除くと考えられる。」
(エ)「【0012】本発明の第一の態様は、振動試験装置を含む振動試験システムに関する。振動試験装置は、動電型加振器に作動的に結合された電力増幅器を含み、ここで加振器がペイロード支持構造に機械的に結合された振動可能なアーマチュアを含んでいる。データロガーが、ペイロードの機械的励起中、経時的に動電型加振器の1つ以上の動作パラメータのそれぞれの値を測定し記録するように構成されている。振動試験システムのプロセッサまたはコントローラが、1つ以上の動作パラメータのロギングされた値を読取り処理し、かつ1つ以上の動作パラメータの記録された値に基づいて、アーマチュア力サイクルの累積数を決定するように構成されている。プロセッサはさらに、アーマチュア力サイクル累積数および振動試験装置の既定の寿命に基づいて、動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算するように構成されている。プロセッサは、振動試験システムのディスプレー上で、振動試験装置の残存寿命または消費寿命を標示するように構成されている。」
(オ)「【0018】代替的には、振動可能なアーマチュア上の時間的に変動する力の直接的測定は、振動可能なアーマチュア構造の好適な場所(単複)上に1つ以上の加速度計を設置することによって実施され得る。したがって、この実施形態においては、動電型加振器の動作パラメータの少なくとも1つに、加振器上に組付けられた加速度計(単複)により測定されるアーマチュアの加速度が含まれる。」
(カ)「【0022】振動試験システムのプロセッサはさらに、1つ以上の動作パラメータの記録値に基づいて加振器の基準挙動を定期的に計算するように構成され得、この基準挙動には、基本共振周波数などの加振器の周波数応答特性が含まれる。プロセッサは、規則的な時間的間隔でディスプレー上に計算された基準挙動を標示するように適応され得る。この実施形態は、保守間隔の間の加振器の性能を監視し、場合によって基準挙動内の振動を検出することによって加振器の来たるべき摩耗および引裂故障について早期警告を発するための追加のツールとして使用され得る。」
(キ)「【0029】図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動試験システム100の一部を形成する振動試験装置の簡略化された概略図を示す。振動試験装置は、信号および電力ケーブル121を介して動電型加振器104に対し作動的に結合された、別個のハウジングまたはケーシング内に組付けられた電力増幅器108を含む。動電型加振器104は、ペイロード支持構造107に対して機械的に結合された振動可能なアーマチュア105を含む。ペイロード支持構造は、振動試験下にある機器または構成部品であるペイロード106を保持する。振動試験装置は、本発明のこの実施形態において、電力増幅器108の据置型ハウジングまたはフレームに組付けられているディスプレー113を含む。ディスプレー113は、システム100の他の実施形態における別個のまたは遠隔配設のディスプレー、または電力増幅器108の据置型ハウジングまたはフレーム上に組付けられたディスプレーと遠隔ディスプレーの組合せを含み得る。データロガー(図示せず)が電力増幅器108のハウジングの内部に組付けられ、加振器の作動中、すなわちペイロード106の機械的励起の間、経時的に動電型加振器104の複数ある動作パラメータのそれぞれの値を測定し記録するように構成されている。動作パラメータには、好ましくは、最後の保守/オーバーホール以降の累積作動時間の計算を可能にするため、動電型加振器104の作動時間および日付が含まれる。さらに、振動可能なアーマチュア105の可動コイル(図示せず)内を流れる電流のRMS電流値およびピーク電流値も同様に、作動期間中記録/ロギングされる。さらに、動電型加振器104が界磁コイルを含んでいることを条件として、動電型加振器104の界磁コイル(図示せず)の直流電流値および/または直流電圧値も同様に、測定され記録される。これらのRMSおよびピーク電流値は、電力増幅器108の内部に組付けられた好適な電流センサーかまたは動電型加振器104内に組付けられた電流センサーにより直接的または間接的に測定され得る。この目的で、ホール効果素子および誘導交流電流センサーなどのさまざまな周知のタイプの電流センサーを利用することができる。【0030】当業者であれば、アーマチュアコイルおよび界磁コイル内の電流の経時的なそれぞれの測定およびロギングにより、振動可能なアーマチュア105上のアーマチュア力を計算することが可能になるということを認識するだろう。界磁コイル内の電流は、内部でアーマチュアが可動な形で懸架されている磁場の磁場強度を決定する。したがって、動電型加振器104のアーマチュア105により生成される力は、アーマチュアコイル内部を流れる電流、アーマチュアコイル導体の長さおよびアーマチュアコイルが中で運動している磁場の強度に正比例している。」
イ 甲第2号証に記載された発明
上記アの記載事項を総合すると、甲第2号証には、次の2つの発明(以下、「甲2発明1」及び「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。(a~jは、本件特許の請求項1、10のA~Jに対応させて当審にて付した。)
(ア)甲2発明1
「a 振動試験下にある機器または構成部品であるペイロード106を保持するペイロード支持構造107と、(段落【0029】)b ペイロード支持構造107に対して機械的に結合された振動可能なアーマチュア105を含み、界磁コイルを含む動電型加振器104と、を備える振動試験装置であって、(段落【0029】)c 振動可能なアーマチュア構造の好適な場所上に1つ以上の加速度計を設置し、動電型加振器の動作パラメータの少なくとも1つに、加振器上に組付けられた加速度計により測定されるアーマチュアの加速度が含まれ、(段落【0018】)d プロセッサまたはコントローラが、1つ以上の動作パラメータの記録された値に基づいて、アーマチュア力サイクルの累積数を決定し、アーマチュア力サイクル累積数および振動試験装置の既定の寿命に基づいて、動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算する、(段落【0012】)f 振動試験装置。(段落【0029】)」
(イ)甲2発明2
「g 振動試験下にある機器または構成部品であるペイロード106を保持するペイロード支持構造107と、(段落【0029】)h ペイロード支持構造107に対して機械的に結合された振動可能なアーマチュア105を含み、界磁コイルを含む動電型加振器104と、を備える振動試験装置の残存寿命または消費寿命を決定する方法であって、(【請求項13】、段落【0029】)i 振動可能なアーマチュア構造の好適な場所上に1つ以上の加速度計を設置し、動電型加振器の動作パラメータの少なくとも1つに、加振器上に組付けられた加速度計により測定されるアーマチュアの加速度が含まれ、1つ以上の動作パラメータの記録された値に基づいて、アーマチュア力サイクルの累積数を決定し、アーマチュア力サイクル累積数および振動試験装置の既定の寿命に基づいて、動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算する、(段落【0012】、【0018】)j 振動試験装置の残存寿命または消費寿命を決定する方法。(【請求項13】)」
(3)甲第3号証
本願の出願前である昭和55年3月5日に公開された、特開昭55-31466号公報(甲第3号証)には、次の事項が記載されている。
ア 「従来この種の振動発生機においては、往復振動可能なように振動体を支持する支持装置としてベアリングが使用されてきたが、横振れ防止拘束荷重を大とすることが困難であり、ベアリング寿命も短いという欠点があり、さらに致命的欠点として電気的入力信号波形に対して振動体が忠実に往復振動せず、微小びびり振動が該波形に付加した如き振動を行なう性質を有していた。・・・本発明はこのような欠点を悉く解決し、寿命が長く耐久性に富み、構造が簡素であり、電気的入力信号波形に忠実に振動体が往復振動し、かつ振動体の往復振動時の機械的抵抗が小さい振動発生機の提供を目的とする。」(第1頁下右欄第16行~第2頁左上欄第18行)
イ 「第1図において振動発生機の全体を例示し、空気バネ( 1 )… …等の防振部材を介して床面(2)に載置される基台(3)は2個の支持アーム(4)(4)を有し、この支持アーム(4)(4)に両端が揺動自在に枢支されたトラニオン軸(5)によって、励磁コイル(6)が巻設された外容器体(7)が、第2図に示すように例えば水平方向に傾動可能に枢支され、この外容器体(7)の内部に一軸心(8)方向に往復動可能なように振動体(9)の大半乃至全体が内有され、具体的には、上方の支持装置(10)、下方の支持装置(11)及び下端の空気バネ(12)によって、該振動体(9)は第1図では上下方向に、第2図では左右水平方向に、夫々往復振動するように支持されている。(13)は被試験物であって、固定具(14)又はジョイント(16)と水平テ─ ブル(16)等を介して、振動体(9)の取付面(17)に着脱自在に取付けられる。」(第2頁左上欄第20行~右上欄第15行)
ウ 「しかして、励磁コイル(6)により形成される磁場に、振動体(9)に取付けられたコイル(43)が配設され、このコイル(43)内に交番電流が流れることによって、振動体(9)が矢印(A)(B)方向に振動する力が発生する。」(第3頁左下欄第20行~右上欄第3行)
エ 「そしてローラ(18)により振動体(9)が軸心(8)と直交方向に横振れするのを強大な力で防止出来ると共に、このローラ(18)の外径はベアリング等に比較して著しく大きく出来るために転動部分の面圧が低く、寿命が著しく延長されたのである。そして、揺動腕(19)の中間部にてこのローラ(18)は確実に保持されて、不意に脱落するような虞は全くなくなった。さらに弾性ゴム体(30)(31)(29)の弾性変形により振動体(9)が振動保持されるから、がたつきや焼付の原因となる摺動枢支部が全く存在せず、この点からも寿命が延長された。さらに、この支持装置(10)は摩擦抵抗が小であるから、入力電気信号に対して極めて忠実に振動体(9)が往復振動して、所望の振動が再現される。さらに、弾性ゴム体(30)(31)(29)の絶縁性を好適に利用して揺動腕(19)を強度部材兼電導部材として、構造の簡素化と振動体(9)の軽量化を図り、かつ電線等の切損事故を防止して、振動発生機としての寿命の延長を図ることが出来た。」(第4頁右上欄第13行~左下欄第11行)
(4)甲第4号証
本願の出願前である平成28年2月4日に公開された、国際公開第2016/017744号(甲第4号証)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「[0080] 計測部30は、振動テーブル400に取り付けられた3軸振動センサ(3軸振動ピックアップ)32を備えており、3軸振動センサ32が出力する信号(例えば、速度信号や加速度信号)を増幅及びデジタル変換して制御部20へ送信する。なお、3軸振動センサ32は、X軸、Y軸及びZ軸方向の振動を独立に検出する。また、計測部30は、3軸振動センサ32の信号に基づいて、振動テーブル400の振動状態を示す各種パラメータ(例えば、速度、加速度、振幅、パワースペクトル密度等)を計算して、制御部20へ送信する。制御部20は、インターフェース部50を介して入力された加振波形や計測部30からの信号に基づいて、各加振ユニット100、200及び300の駆動コイル(後述)に入力する交流電流の大きさや周波数を制御することにより、所望の振幅及び周波数で振動テーブル400を加振することができる」
イ 「図27[図:0001416500000004.jpg]」
(5)甲第5号証
本願の出願前である平成28年8月22日に公開された、「動電式振動試験装置-性能特性 JIS B 7758:2016,一般財団法人 日本規格協会,平成28年8月22日」(甲第5号証)には、次の事項が記載されている。
ア 「3.9振動数範囲,fmin~fmax(frequency range)振動試験装置及び各機器の能力を表す変数( 変位,速度,加速度など)の定格性能が達成できる振動数の範囲。注記1 ある変数に対応する振動数範囲は,他の変数に対応する振動数範囲とは異なるので, 変数ごと及び負荷ごとに振動数範囲を指定する必要がある。続きを表示(全21行)注記2 加振力の点で注意する内容は,次のとおりである。- fmin 及びfmax の値は,振動発生機及び振動試験装置の正弦波,ランダム波及び衝撃波の定格出力別に,質量mt のそれぞれについて,かつ,電力増幅器の正弦波, ランダム波及び衝撃波の定格出力ごとに,指定する。- 加振力発生能力以外の要因が振動数範囲を制限するのであれば, それらの要因も規定する。例 a) 低振動数範囲において問題となる例を,次に示す。- 可動部質量と本体質量との比率- 本体サスペンションのストローク限界- ひずみ- 横ぶれ- 変位制限- 許容モーメント- 可動部サスペンションの発熱b) 高振動数範囲において問題となる例を,次に示す。- 可動部の機械共振- 可動部テーブルの面共振- ひずみ- 横ぶれ- 可動部の剛性」(第4頁第9行~第33行)
イ 「6.3.2 正弦波駆動要求事項(C,s)試験質量m10による正弦波状態調整運転(6.2.2,8.2.1 及び8.2.4)の直後に,規定した振動数範囲において,定格変位,速度及び加振力Fv,s の1 オクターブ/分の掃引を行う。6.3.3のm10曲線計算用に,試験負荷の最上部中央での加速度,駆動コイル電流(実効値)及び駆動コイル電圧(実効値)を規定する。試験質量をm40に変更して,同一の温度が得られるまで調整運転を繰り返す。さらに,規定した振動数範囲において,定格変位,速度及び加振力Fv,sの1オクターブ/分の掃引をもう1回行う。6.3.3のm40曲線計算用に,試験負荷の最上部中央での加速度,駆動コイル電流(実効値)及び駆動コイル電圧(実効値)を規定する。上記の掃引に必要な最大電流は,加振力Fv,sの場合,振動発生機の正弦波電流要求事項Iv,sである。上記の掃引に必要な最大電圧は,加振力Fv,sの場合,振動発生機の正弦波電圧要求事項Vv,sである。試験負荷を取り外し,同一温度に達するまで調整運転を繰り返し,更に規定した振動数範囲において,定格変位,速度及び加振力Fv,sの1 オクターブ/分の掃引を行う。6.3.3のm0曲線計算用の,可動部加速度,駆動コイル電流(実効値)及び駆動コイル電圧(実効値)を規定する。無負荷運転中に信号純度試験(ファズ試験)を実施する。このときに,振動発生機の音響出力を注意深く聴くとともに,オシロスコープで動きを観察して,雑音,ひずみ及び加速度波形上の高周波信号(ファズ)を計測する。ファズが加速度基本波の2%を超える場合は,記録する。ファズの一般的な原因は,可動部又は可動部サスペンションの接続不良である。」(第12頁第7~24行)
ウ 「6.4 振動発生機のメンテナンス(A,a)振動発生機の性能を維持するためには,メンテナンスが必要である。推奨する定期的メンテナンスには,エアーフィルタ,水フィルタ及びオイルフィルタ,水用の電極,蒸留水,給水塔の水・グリコール,励磁コイル用及び可動部用のフレキシブルケーブル及びホースの点検・交換,並びに堆積したほこりの除去(特に冷却空気通路内)が含まれる。推奨する定期的メンテナンスには,本体,可動部懸架機構,ガイド並びに負荷取付用ねじ部の点検及び修理も含まれる。加速度波形が電流波形と大きく異なるようになった場合には,振動発生機のメンテナンスが絶対に必要となる。このような相違が起きてくる原因は,通常,冷却液内のキャビテーション,可動部関連部品の緩み又は不具合である。常時使用されている振動発生機は,無負荷,最大加速度における低速掃引の正弦波波形を毎月定期的に記録することが望ましい。6.3.2の信号純度試験参照。適切にメンテナンスされている振動発生機は,加速度波形にひずみ又はファズの増加がない。性能が次第に低下する(特に,無負荷時のファズが増加する。)場合は,メンテナンスが必要である。」(第14頁第3~16行)
エ 「A.10 振動台の横方向運動振動台の横方向運動は,無負荷時の振動台の荷重固定位置で,振動数の関数として測定される。」(第24頁第3~4行)
(6)甲第6号証
本願の出願前である平成29年3月31日に公開された、「フォースリミット振動試験ハンドブック,[online],平成29年3月31日,宇宙航空研究開発機構,インターネット<URL:https://sma.jaxa.jp/TechDoc/Docs/JAXA-JERG-2-130-HB004C.pdf>」(甲第6号証)には、次の事項が記載されている。
ア 「1.3 用語・略語の定義1.3.1 用語(1) クロストーク加振方向と直行する方向の振動入力のこと。通常%の単位で表す」(第2頁第1~4行)
(7)甲第7号証
本願の出願前である平成29年4月27日に公開された、特開2017-78591号公報(甲第7号証)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0014】例え、確率統計的には稀な現象であったとしても、振動試験装置の許容範囲を超えた信号が発生すると、振動試験装置に損傷を与える恐れがあるため、通常は変位センサーが振動試験装置の許容範囲の変位を超えた場合に異常を検出して、振動試験を自動停止させる機能が働くため、試験目的は完遂されない。このため、許容範囲外の加速度信号を除去するためにクリッピングと呼ばれる手法が用いられている。」
(8)甲第8号証
本願の出願前である平成17年3月10日に公開された、特開2005-62097号公報(甲第8号証)には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】供試体を加振する加振部と、前記加振部の駆動を制御する駆動制御手段と、を備え、前記供試体の振動試験を行う振動試験装置において、前記供試体の振動試験の試験パターンデータと、当該試験パターンデータに応じた前記振動試験における前記加振部の基準伝達特性データとが対応付けられた基準データを記憶する記憶手段と、前記試験パターンデータに基づいて前記駆動制御手段により前記加振部を駆動させて振動試験を行った際の前記加振部の伝達特性データを取得する伝達特性取得手段と、前記伝達特性取得手段により取得された伝達特性データと、前記記憶手段に記憶された基準伝達特性データとに基づいて異常状態を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする振動試験装置。」
(9)甲第9号証
本願の出願前である平成26年4月24日に公開された、特開2014-74612号公報(甲第9号証)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0041】可動部30は、被試験体(図示せず)を載置する試験台33と、可動部30と固定部11とを連結し可動部30を可動状態で保持する可動部懸架用バネ34と、ヨーク16の空隙部24に挿入される駆動コイル36とから構成されている。」
イ 「【図1】[図:0001416500000005.jpg]」
(10)甲第10号証
本願の出願前である平成31年1月10日に公開された、特開2019-2731号公報(甲第10号証)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0005】ところで、前記従来例のような振動試験装置では、加振機によって振動台をその真横から加振するようにしており、この加振軸に対して、振動台および供試体を合わせた被加振部全体の重心が高くなることから、重心周りの回転力が発生してしまう。このため、振動台の組み付け時のガタや軸受の僅かな隙間等に起因して、加振方向ではない方向の振動(クロストーク振動)が発生することがあり、これによって振動試験の精度が悪化するおそれがあった。」
(11)甲第11号証
本願の出願前である平成30年8月9日に公開された、特開2018-124120号号公報(甲第11号証)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0005】ところで、上述したような振動試験装置では、動電型の加振機によって振動台を所定の周波数で水平方向に沿って加振(水平加振)する際、次のような問題点がある。すなわち、振動台の組み付け時のガタや、振動台を支持する軸受け(例えば流体軸受け)と振動台との間の隙間等に起因して、振動台及び供試体の重心を中心とする回転力が振動台に発生し、加振方向ではない垂直方向の共振(クロストーク共振)が発生する可能性があり、振動試験の精度が悪化することが懸念される。つまり、垂直方向の加振(垂直加振)を行っていないにもかかわらず、振動台に垂直方向の加速度(クロストーク加速度)が発生し、振動台が共振する可能性がある。例えば、側面視で、振動台が長尺の形状(例えば長方形等)である場合、振動台及び供試体の重心が、加振機の加振軸から大きくオフセットする可能性があり、上述のような問題点が特に懸念される。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
ア 構成Aについて
構成aの「振動試験下にある機器または構成部品であるペイロード106」は、構成Aの「被試験体」に相当する。
また、構成aの「ペイロード支持構造107」は、「ペイロード106を保持する」、すなわち、「ペイロード106」が搭載されるものであり、また、構成bによれば、「アーマチュア105」は、「ペイロード支持構造107に対して機械的に結合された振動可能な」ものであるから、「ペイロード支持構造107」と一体となり「振動可能」なものといえる。よって、構成aの「ペイロード支持構造107」及び構成bの「アーマチュア105」は、本件発明1の「被試験体が搭載される可動部」に相当する。
よって、構成a、bより、甲2発明1は、構成Aに相当する構成を有するといえる。
イ 構成Bについて
構成bの「界磁コイル」及び「振動試験装置」は、それぞれ、構成Bの「磁束を発生させる磁束発生手段」及び「振動試験装置」に相当する。
よって、構成bは、構成Bと、「磁束を発生させる磁束発生手段」「を備える振動試験装置であ」る点で共通する。
ウ 構成Cについて
構成cの「振動可能なアーマチュア構造の好適な場所上に」「設置し」た「加速度計」は、「振動可能なアーマチュア構造」の「加速度」を測定するセンサであるといえる。そして、構成cの「振動可能なアーマチュア構造」は、上記アで説示したとおり、構成Cの「可動部」の一部に相当するものである。
よって、構成cと構成Cは、「前記可動部の加速度」を「測定する」「センサ」を備える点で共通する。
エ 構成Dについて
(ア)構成dの「プロセッサまたはコントローラ」は、構成Dの「演算装置」に相当する。
(イ)a 構成dにおいて、「1つ以上の動作パラメータの記録された値に基づいて、アーマチュア力サイクルの累積数を決定し、アーマチュア力サイクル累積数および振動試験装置の既定の寿命に基づいて、動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算する」ことは、記録された「動作パラメータ」に基づき、「動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算する」ことといえる。また、構成dの「動作パラメータ」は、構成cより、「加振器上に組付けられた加速度計により測定されるアーマチュアの加速度が含まれ」ているものであるから、「加速度計」の出力に基づくものといえる。
b 本願の段落【0023】~【0024】には、
「可動部に設けられた可動部センサからの出力に基づき、演算装置によって自動的に故障予知を行うことができるため、振動試験装置の異常を早期に検知し、故障の拡大を防止することができる。・・・振動試験装置の異常箇所を早期に発見し、振動試験装置が故障する前に、ユーザーに部品交換などの修理を促すことができる。」
と記載されているから、構成Dにおいて、「前記振動試験装置の故障予知を行う」ことは、振動試験装置が故障する前の時点で、振動試験装置の故障が発生すること予知することを意味すると解釈される。
そして、構成dの「動電型加振器の残存寿命または消費寿命」は、「動電型加振器」の「寿命」が無くなって「動電型加振器」が故障する前の時点において、残り、あるいは、消費済みの「寿命」を表すものといえる。また、「動電型加振器」の「寿命」がすべて消費された時は、「動電型加振器」が故障する(と予想される)時であるといえるから、構成dにおいて、「残存寿命または消費寿命を計算する」ことは、故障する時を予想することであり、よって、構成Dにおける、「故障予知を行う」ことに相当する。
c 上記a、bのとおりであるから、甲2発明1において、「1つ以上の動作パラメータの記録された値に基づいて、アーマチュア力サイクルの累積数を決定し、アーマチュア力サイクル累積数および振動試験装置の既定の寿命に基づいて、動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算する」ことは、本件発明1の「前記」「センサからの出力に基づき、前記振動試験装置の故障予知を行う」ことに相当する。
(ウ)以上より、構成dと構成Dは、「前記」「センサからの出力に基づき、前記振動試験装置の故障予知を行う演算装置と、をさらに備え」る点で共通する。
オ 構成Fについて
構成fの「振動試験装置」は、構成Fの「振動試験装置」に相当する。
(2)一致点、相違点
上記(1)のとおりであるから、本件発明1と甲2発明1とは、下記アの点で一致し、下記イ~エの点で相違する。
ア 一致点
「A 被試験体が搭載される可動部と、B’磁束を発生させる磁束発生手段を備える振動試験装置であって、C’前記可動部の加速度を測定するセンサと、D’前記センサからの出力に基づき、前記振動試験装置の故障予知を行う演算装置と、をさらに備える、F 振動試験装置。」
イ 相違点1(構成B)
本件発明1は「透磁性を有する磁路部材と、該磁路部材に流れる磁束を発生させる磁束発生手段とを有する固定部と」を備えるのに対し、甲2発明1は、透磁性を有する磁路部材を有する固定部を備えるとは特定されておらず、そのため、磁束発生手段についても、甲2発明1では、固定部が有するとは特定されていない点。
ウ 相違点2(構成C)
本件発明1は、「前記可動部の加速度、速度、変位の少なくともいずれかを測定する3軸センサ」を備えるのに対し、甲2発明1の「加速度計」(センサ)は、3軸センサであるとは特定されていない点。
エ 相違点3(構成D、E)
演算装置による振動試験装置の故障予知について、本件発明1では「3軸センサからの出力に基づき」「可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づ」くと特定されるのに対し、甲2発明1ではそのような特定が成されていない点
(3)相違点に対する判断
ア 事案に鑑み、相違点3について検討する。
(ア)a 上記1(1)イより、甲第1号証には、
「製造業者は,中央の取付点における軸方向振動に対する横方向振動の比を示す二つの曲線によって,振動台の横振動を,振動数の関数として示さなければならない。横方向振動は,トラニオン軸に平行な軸及び直交する軸の方向の振動とする。中央の点が不都合な場合は,基準点の位置を示す。無負荷及び試験負荷m2の状態で,できれば定格加振力で測定し,使用した測定方法を明示しなければならない。」
と記載されている。
また、本件発明1の「クロストーク」について、本願の発明の詳細な説明、段落【0038】には「3軸センサ31の出力に基づき、振動試験装置10の加振軸、すなわち、本実施形態ではX軸以外に生じる振動であるクロストークを検出する。」と記載されているから、本件発明1の「クロストーク」は、振動試験装置10の加振軸以外に生じる振動を意味すると認められる。そうすると、甲第1号証の記載において、「トラニオン軸に平行な軸及び直交する軸の方向の振動」である「振動台の横振動」は、本件発明1の「可動部のクロストーク」に相当する。
b 上記1(1)アより 、甲第1号証には、「この規格は,動電式振動発生機を使った試験装置の特性表示方法に関するもので,試験装置を選択するときの指針として使用できる。」と記載されているから、甲1号証に記載の「振動台の横振動」は、動電式振動発生機を使った試験装置を選択する際の指針として使用できる特性表示のために測定されるものといえる。
c 以上より、甲第1号証には、動電式振動発生機を使った試験装置を選択する際の指針として使用できる特性表示のために、可動部のクロストークを測定する点が開示されているといえる。
(イ)上記1(3)エより、甲第3号証には、「そしてローラ(18)により振動体(9)が軸心(8)と直交方向に横振れするのを強大な力で防止出来ると共に、このローラ(18)の外径はベアリング等に比較して著しく大きく出来るために転動部分の面圧が低く、寿命が著しく延長されたのである。」との記載があり、上記記載における「振動体(9)」の「軸心(8)と直交方向」の「横振れ」は、本件発明1の「クロストーク」に相当するから、甲第3号証には、クロストークが振動試験装置の寿命に影響することが示唆されているといえる。
(ウ)上記1(5)アより、甲第5号証には、
「振動数範囲,fmin~fmax(frequency range)振動試験装置及び各機器の能力を表す変数( 変位,速度,加速度など)の定格性能が達成できる振動数の範囲。・・・- 加振力発生能力以外の要因が振動数範囲を制限するのであれば, それらの要因も規定する。続きを表示(全11行)例 a) 低振動数範囲において問題となる例を,次に示す。・・・- 横ぶれ・・・b) 高振動数範囲において問題となる例を,次に示す。・・・- 横ぶれ」
との記載があり、上記記載の「横ぶれ」は、振動試験装置の加振力発生軸に対し横方向(直交方向)の運動を意味すると推認されるから、本件発明1の「クロストーク」に相当するといえる。
また、上記1(5)エより、甲第5号証には、
「A.10 振動台の横方向運動振動台の横方向運動は,無負荷時の振動台の荷重固定位置で,振動数の関数として測定される。」
との記載があり、上記記載の「横方向運動」も、本件発明1の「クロストーク」に相当するといえる。
以上より、甲第5号証には、クロストークを測定する点、及び、クロストークが定格性能達成可能な振動数範囲を制限する場合があることが記載されているといえる。
(エ)上記1(10)より、甲第10号証には、「このため、振動台の組み付け時のガタや軸受の僅かな隙間等に起因して、加振方向ではない方向の振動(クロストーク振動)が発生することがあり、これによって振動試験の精度が悪化するおそれがあった。」との記載がある。
(オ)上記1(11)より、甲第11号証には、「すなわち、振動台の組み付け時のガタや、振動台を支持する軸受け(例えば流体軸受け)と振動台との間の隙間等に起因して、振動台及び供試体の重心を中心とする回転力が振動台に発生し、加振方向ではない垂直方向の共振(クロストーク共振)が発生する可能性があり、振動試験の精度が悪化することが懸念される。」との記載がある。
(カ)しかしながら、下記a~dのとおり、可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、故障予知を行う点については、甲第1、3、5、10、11号証のいずれにも記載されていないから、可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、故障予知を行うことは、甲第1、3、5、10、11号証の記載を組み合わせたとしても当業者が容易に導き出せる技術事項であるとはいえない。
a 甲第1、5号証には、上記(ア)(ウ)のとおり、振動試験装置の性能評価においてクロストークに相当する横方向の振動を測定することが記載されている。該各記載はJIS規格書におけるものであるから、振動試験装置の性能評価としてクロストークについての測定を行うこと自体は周知であるといえる。しかし、該各文献に記載されたクロストーク測定の目的は装置使用者の装置選択に係る性能評価にあると認められ、前記横方向の振動と装置寿命との関係については、定性的・定量的いずれの観点についても、該各文献に何らの記載も示唆もない。
b 甲第3号証には上記(イ)のとおり、クロストークに相当する「軸心(8)と直交方向に横振れ」を防止することが振動試験装置の寿命延長に関係することが記載されているといえる。
しかし、該記載は定性的なものにとどまるし、横振れを防止、つまりなくすことと、横振れがあること、すなわち横振れの有無と装置寿命との関係についての言及でしかなく、横振れの大きさと寿命との関係については、該記載箇所を含め、甲第3号証中に定性的・定量的いずれの観点についての記載も示唆もない。
c 他のいずれの甲号証にも、可動部のクロストークと故障予知や装置寿命との関係や、前記クロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、故障予知を行う点は記載されていない。
d 一般に、軸方向への振動や往復動、軸周りの回転等の動作を行う機械製品において、動作時の設計外の方向へのガタつきが大きければ大きいほど摩耗や疲労が発生し寿命を損ねる、という程度のことは当業者において経験則として共有されていると言い得る。該経験則を踏まえ、仮に、上記甲第3号証の記載から、振動試験装置において、横振れ(クロストーク)の大きさが装置寿命を短くする(故障時期を早める)という機序について当業者が推認できるとしても、前記クロストークの大きさから故障時期を予知するためには、前記クロストークの大きさと故障までの期間(装置寿命)との間に有意かつ定量的な関係が存在することが前提となるところ、甲第3号証にも、他のいずれの甲号証にも、振動試験装置における該定量的な関係の存在についての記載がなされていないし、振動試験装置やそれに類する装置の分野において周知技術であるとか技術常識であるといった証拠もない。また、甲第3号証には、故障予知を行うという技術思想も記載されていない。
そうすると、甲第3号証に触れた当業者は、相違点3に係る技術事項に想到するためには、甲号証の記載に基づかずに、まず前提となる前記定量的な関係の存在を予測し、該予測に基づいて(動機付けられて)故障予知を行うことに想到し、そのための前記定量的な関係の存在についてさらに調査・確認し、そのために3軸センサの使用を選択する、という、直列的な3以上の複数の段階を経る必要があり、格別な努力を要するから、当業者にとって容易になし得たことであるとはいえない。
また、甲2発明1に基づく容易想到性であれば、振動軸方向の振動回数の測定による故障予知に加えて、前記甲第3号証に基づくクロストークの測定による故障予知を付加的に行う必要が生じ、加速度計による加速度の測定軸も相違する(甲2発明.1では振動軸方向、クロストークに係る故障予知では振動軸方向と直交する方向)から、前記相違点3に係る技術事項を想到するに至る段階はさらに増えることになって、さらに格別な努力を要し、当業者にとって想到容易であるとはいえない。
(キ)そうすると、いずれの甲号証にも上記相違点3に相当する構成が開示されていないし、各甲号証の記載の組み合わせを検討しても、上記(カ)のとおり、相違点3に係る構成を想到するだけでも格別の努力を要し当業者にとって非容易想到であるから、そもそも相違点3に係る技術事項を想到すること自体、当業者にとって容易になし得たことでもない。よって、甲2発明1にいずれの甲号証に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に相違点3に係る構成を想到し得たとはいえない。
また、甲第1、3~11のいずれに記載された発明を主引用発明としても、上記のとおり相違点3に係る構成がいずれの甲号証にも記載されておらず、それ自体も容易想到でなく、周知の技術事項にもあたらないから、該相違点3に係る構成を含む本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
イ 申立人の主張について
申立人は、令和6年6月4日提出の特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、上記相違点3(異議申立書における「相違点1」)に関して、以下の旨主張をしている。
「そして、「可動部のクロストーク振動量を測定して、クロストーク振動量の大きさに基づいて振動試験装置の健康診断(保守サ-ビスの要否の判断や故障予知)を行う」ことも、本件特許発明の出願前からの周知技術である(甲1.3、甲2.5、(4.2.3)甲第3号証の(d))。・・・そうすると、3軸センサからの出力に基づいて、振動試験装置の健康診断(保守サ-ビスの要否の判断や故障予知)を行うという、甲2発明および周知技術における「技術分野の関連性」「課題の共通性」「作用、機能の共通性」のもと、甲2発明において、動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算(故障予知)するために、周知技術を適用して、・・・「測定された「可動部のクロストーク」の振幅の大きさから、支持装置の摩耗等の「進行度合い」を検知して、動電型加振器の残存寿命または消費寿命を計算(故障予知)する」ようにすることには、動機付けがあり、当業者が容易に想到し得る事項である。」
しかしながら、上記アの通り、いずれの甲号証にも可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、故障予知を行う点は記載されていないから、「可動部のクロストーク振動量を測定して、クロストーク振動量の大きさに基づいて振動試験装置の健康診断(保守サ-ビスの要否の判断や故障予知)を行う」ことが、本件特許の出願時における周知技術であるとはいえない。
よって、上記申立人の主張は採用することができない。
(4)小括
以上より、相違点1、2について論ずるまでもなく、本件発明1は、甲2発明1、及び、甲第1、3~11号証に開示された事項又は周知技術から、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
3 本件発明2~9について
本件発明2~9はそれぞれ、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する形式で記載された請求項2~9に係る発明であり、本件発明1の構成を全て含み、それをさらに減縮した発明であるから、甲2発明1とは、上記相違点1~3で少なくとも相違する。
そして、相違点3については、上記2(3)で検討したとおりであるから、本件発明2~9についても、本件発明1と同じ理由により、甲2発明1、及び、甲第1、3~11号証に開示された技術事項又は周知技術から、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
4 本件発明10について
(1)対比
上記2(1)で説示した本件発明1と甲2発明1との対比をふまえ、本件発明10と甲2発明2とを対比する。
ア 構成Gについて
上記2(1)アの説示をふまえると、構成g、hより、甲2発明2は、構成Gに相当する構成を有するといえる。
イ 構成Hについて
上記2(1)イの説示をふまえると、構成hは、構成Hと、「磁束を発生させる磁束発生手段」「を備える振動試験装置の故障予知方法であ」る点で共通する。
ウ 構成Iについて
上記2(1)ウ、エの説示をふまえると、構成iは、構成Iと、「前記可動部の」移動を「センサを用いて測定し」、測定結果「に基づいて、故障予知を行う」点で共通する。
エ 構成Jについて
構成jの「残存寿命または消費寿命を決定する方法」は、構成Jの「故障予知方法」に相当する。
(2)一致点、相違点
上記(1)のとおりであるから、本件発明10と甲2発明2とは、下記アの点で一致し、下記イ~ウの点で相違する。
ア 一致点
「G 被試験体が搭載される可動部と、H’磁束を発生させる磁束発生手段を備える振動試験装置の故障予知方法であって、I’前記可動部の移動をセンサを用いて測定し、測定結果に基づいて、故障予知を行うJ 故障予知方法。」
イ 相違点4(構成H)
本件発明10は「透磁性を有する磁路部材と、該磁路部材に流れる磁束を発生させる磁束発生手段とを有する固定部と」を備えるのに対し、甲2発明2は「透磁性を有する磁路部材」「を有する固定部」を備えるとは特定されておらず、そのため、磁束発生手段についても、甲2発明2では、固定部が有するとは特定されていない点。
ウ 相違点5(構成I)
故障予知を行うことについて、本件発明10は、「前記可動部のクロストークを3軸センサを用いて測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づ」くと特定されているのに対し、甲2発明2では、そのような特定が成されていない点。
(3)相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
上記2(3)にて示した通り、可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、故障予知を行う点は、いずれの甲号証にも記載されていないし、本件特許出願時における周知技術であるともいえない。
そうすると、いずれの甲号証にも上記相違点5に係る構成が記載されていないのであるから、甲2発明2に、甲第1、3~11号証に開示された事項、あるいは、甲第1、3~11号証に例示される周知技術を組み合わせても、上記相違点5に係る本件発明10の発明特定事項を有するものとはならない。
また、甲第1、3~11号証のいずれかに記載された発明を主引用発明としても、いずれの甲号証にも可動部のクロストークを測定し、該クロストークの振幅の大きさに基づいて、故障予知を行う点は記載されていないから、他の相違点について検討するまでもなく、当業者が本件発明10に係る発明を容易に想到できるとはいえない。
(4)小括
以上より、相違点4について論ずるまでもなく、本件発明10は、甲2発明2、及び、甲第1、3~11号証に開示された技術又は周知技術から、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
5 本件発明11~16について
本件発明11~16は、本件の請求項10を直接又は間接的に引用する形式で記載された請求項11~16に係る発明であり、本件発明10の構成を全て含み、さらにそれを減縮した発明であるから、甲2発明2とは、上記相違点4、5で少なくとも相違する。
そして、相違点5については、上記4(3)で検討したとおりであるから、本件発明11~16についても、本件発明10と同じ理由により、甲2発明2、及び、甲第1、3~11号証に開示された技術又は周知技術から、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
6 まとめ
以上のとおりであるので、上記第3に示した異議申立理由は、理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、申立人が特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700524