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特許異議申立

2025-700245

巻鉄心

審判番号
2025-700245
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-529052
登録番号
7545100
請求日
2025年02月27日
審決日
2025年05月21日
公報発行日
2025年06月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日本製鉄株式会社
  • 【権利者代理人】松沼 泰史
  • 【権利者代理人】大浪 一徳
  • 【権利者代理人】勝俣 智夫
  • 【権利者代理人】山口 洋
  • 【権利者代理人】堀田 耕一郎
  • 【権利者代理人】山口 健吾
  • 【権利者代理人】飯田 恭宏
  • 【権利者代理人】井口 翔太
  • 【異議申立人】前田 洋志
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 篠原 功一
  • 審判官 畑中 博幸
分類
P1651.16 -Y (H01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2、特許法第113条第2項
データ出所
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特許第7545100号発明「巻鉄心」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7545100号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7545100号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、2023年6月21日(優先権主張2022年6月22日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和6年8月27日にその特許権が設定登録され、令和6年9月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年2月27日に特許異議申立人前田洋志(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7545100号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 方向性電磁鋼板を成形した複数の曲げ加工体を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心であって、 前記巻鉄心は、複数の平坦部と、複数のコーナー部と、を有し、 前記曲げ加工体は、複数の平坦領域と、前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域と、を有し、 前記各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下であり、 前記曲げ加工体は、前記方向性電磁鋼板の長手方向の端面が対向した接合部を1以上有し、 最も内側に配置された前記曲げ加工体を第1曲げ加工体とし、前記第1曲げ加工体の前記接合部がある平坦領域を基準平坦領域としたとき、複数の前記曲げ加工体それぞれの前記接合部は、前記基準平坦領域がある前記平坦部にあり、 前記巻鉄心の側面視において、 前記基準平坦領域に隣接する前記屈曲領域の一方を第1屈曲領域とし、 前記基準平坦領域に隣接するもう一方の前記屈曲領域を第2屈曲領域とし、 前記第1屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第1仮想線とし、 前記第2屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第2仮想線とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線から前記第2仮想線の間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第1最短接合部とし、 前記第1最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第1端接合部とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第2最短接合部とし、 前記第2最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第2端接合部とし、 前記第1最短接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Aとし、 前記第1端接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Bとし、 前記第2最短接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Cとし、 前記第2端接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Dとし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Aと前記仮想線Bとの間にある前記接合部を第1群接合部とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Cと前記仮想線Dとの間にある前記接合部を第2群接合部とし、 前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記各第1群接合部の前記第1仮想線側の前記端面までの長さの平均を<Li>とし、 前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記各第2群接合部の前記第2仮想線側の前記端面までの長さの平均を<LO>としたとき、 下記(1)式および下記(2)式を満足する、巻鉄心。 25mm≦<Li>・・・(1) 25mm≦<Lo>・・・(2) 【請求項2】 前記第1群接合部の数は、前記第2群接合部の数と等しく、 前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域のある前記平坦部の中の前記接合部の数を前記第1群接合部の数で割って得た商と剰余のうち、前記商であるkが下記(3)式を満足する、請求項1に記載の巻鉄心。 2≦k≦8・・・(3) 【請求項3】 前記各曲げ加工体が対向する2つの平坦領域のそれぞれに前記接合部を有し、 前記第1曲げ加工体が、前記基準平坦領域と、前記基準平坦領域と対向する第2基準平坦領域を有し、 複数の前記曲げ加工体それぞれの前記接合部は、前記基準平坦領域がある前記平坦部および前記第2基準平坦領域がある前記平坦部にあり、 前記巻鉄心の側面視において、 前記第2基準平坦領域に隣接する前記屈曲領域の一方を第3屈曲領域とし、 前記第2基準平坦領域に隣接するもう一方の前記屈曲領域を第4屈曲領域とし、 前記第3屈曲領域の前記第2基準平坦領域側の端点を通り、前記第2基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第3仮想線とし、 前記第4屈曲領域の前記第2基準平坦領域側の端点を通り、前記第2基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第4仮想線とし、 前記第2基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第3仮想線から前記第4仮想線の間にあり、かつ、前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第3仮想線から前記第3仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第3最短接合部とし、 前記第3最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第3仮想線と前記第4仮想線との間にあり、前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第3仮想線から前記第3仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第3端接合部とし、 前記第2基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第3仮想線と前記第4仮想線との間にあり、かつ、前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第4仮想線から前記第4仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第4最短接合部とし、 前記第4最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第3仮想線と前記第4仮想線との間にあり、かつ、前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第4仮想線から前記第4仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第4端接合部とし、 前記第3最短接合部の前記第3仮想線側の前記端面を通り、前記第2基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Eとし、 前記第3端接合部の前記第3仮想線側の前記端面を通り、前記第2基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Fとし、 前記第4最短接合部の前記第4仮想線側の前記端面を通り、前記第2基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Gとし、 前記第4端接合部の前記第4仮想線側の前記端面を通り、前記第2基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Hとし、 前記第2基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Eと前記仮想線Fとの間にある前記接合部を第3群接合部とし、 前記第2基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Gと前記仮想線Hとの間にある前記接合部を第4群接合部とし、 前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第3仮想線から前記各第3群接合部の前記第3仮想線側の前記端面までの長さの平均を<L2i>とし、 前記第2基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第4仮想線から前記各第4群接合部の前記第4仮想線側の前記端面までの長さの平均を<L2O>としたとき、 下記(4)式および下記(5)式を満足する、請求項1または2に記載の巻鉄心。 25mm≦<L2i>・・・(4) 25mm≦<L2O>・・・(5) 【請求項4】 前記第3群接合部の数は、前記第4群接合部の数と等しく、 前記第3仮想線と前記第4仮想線との間にあり、かつ、前記第2基準平坦領域のある前記平坦部の中の前記接合部の数を前記第3群接合部の数で割って得た第2の商と第2の剰余のうち、前記第2の商であるk2が下記(6)式を満足する、請求項3に記載の巻鉄心。 2≦k2≦8・・・(6) 【請求項5】 前記屈曲領域の曲げ角度が、30°~60°である、請求項1または2に記載の巻鉄心。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人の特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 本件請求項1ないし5に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の甲第1号証の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。このため、本件請求項1ないし5に係る特許は特許法第113条第2項の規定により取り消されるべきである。 [証拠] 甲第1号証:国際出願番号PCT/JP2022/023039号(国際公開第2023/007953号) 甲第2号証:特開2018-148036号公報 甲第3号証:特開2018-157142号公報 甲第4号証:Innovation in Transformer Cores and Manufacturing, AEM UNICORE, April 2010, AEM CORES PTY LID, p.6 第4 甲第1号証の記載 1 記載事項 甲第1号証の明細書には、「巻鉄心」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「[0019] (1)平面部と該平面部に隣接するコーナー部を有し、前記平面部にラップ部を有し、前記コーナー部に屈曲部を有する巻鉄心とすること 巻鉄心は、方向性電磁鋼板などの磁性体を巻き回してコアとする。一般的には、鋼板を筒状に巻き取った後、コーナー部をある曲率となるようにプレスし、矩形状に成形する方法がとられる。一方、別の製造方法として、巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とする方法がある。この方法により形成された鉄心は、コーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を有する。前者の方法により形成された鉄心はトランココア、後者の方法により形成された鉄心は、設けられる鋼板接合部の数により、ユニコアあるいはデュオコアと一般的に称する。磁束の集中を緩和し、磁束波形が歪むことを防ぐためには、後者の方法により形成されたコーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を設ける構造が適する。 [0020] 以下実験的に、トランココアとユニコアの鉄心内の磁束の集中、及び磁束密度波形について調査した結果を示す。図3に示す形状の、単相のトランココア1個とユニコア2個の鉄心を0.23mm厚の方向性電磁鋼板(磁束密度B8:1.94T、W17/50:0.78W/kg)を巻き回して成型し、トランココアとユニコアの1個について、同条件で歪み取り焼鈍を行った。巻きコアの作製は50巻きの巻き線を施し、磁束密度1.5T、周波数60Hzの無負荷励磁を行った。図4に示す位置に、1巻きの探りコイルを配置し、鉄心内の磁束密度分布を調査した。図5に内巻き(内側)から外巻き(外側)にかけて各1/4厚さの鉄心の磁束密度の最大値を示す。トランココア(歪み取り焼鈍有)とユニコア(歪み取り焼鈍有、歪み取り焼鈍無)共に、内巻きの方が磁束密度が大きく、磁束の集中が生じていることがわかる。図6には、各磁束波形を時間微分した(dB/dt)の波形率を評価した結果を示す。トランココアとユニコアを比較すると、ユニコアの方が磁束集中が小さく、波形率が小さい、つまり磁束波形歪みが抑制されていることが判明した。 [0021] ユニコア、つまりコーナー部に屈曲部を設けることにより、磁束波形歪みが抑制されている原因については以下のように推定している。ユニコアの屈曲部は、歪み取り焼鈍を行ったとしても変形双晶などが残存し、他の部分と比較すると、局所的に透磁率が小さくなっている。このような透磁率が著しく小さい部分が存在すると、ある一定以上の磁束が通ることはできない。そのため、磁路長差があっても内側のみへの磁束の集中は起きにくい。図7に示すように、磁束の集中が起こると、その磁束が最大となる部分においては、磁束が飽和し、波形が台形状に歪む。つまり、その時間微分した(dB/dt)の波形率は大きくなる。ユニコアの内巻き部においては、透磁率が小さい屈曲部を有さないトランココアと比べて、磁束の集中が起きにくく、磁束波形の歪みも抑制されたと推定される。」 「 [図:0001423548000001.jpg] 」 2 記載された技術事項 上記記載事項より、甲第1号証には次の技術事項が記載されているといえる。 (1)段落[0019]の記載によれば、甲第1号証には、「コーナー部となる部分を予め曲げ加工」「した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心」とした、「コーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を有する」「ユニコア」と「称する」「巻鉄心」が記載されている。 (2)段落[0020]の記載及び図3より、鋼帯幅120mm、厚さ0.23mmの方向性電磁鋼板をラップ代8mm、7段ステップラップ接合で巻き回して面取りされた矩形状としたものであり、外周の幅128mm、外周の高さ198mm、外周のコーナー部の幅21mm、内周の幅70mm、内周の高さ140mm、内周のコーナー部の幅3mmで、各電磁鋼板の接続部が一辺に形成された、ユニコアが見てとれる。 3 記載された発明 上記「2(1)」及び「2(2)」の技術事項を総合勘案すると、甲第1号証には、図3に示されたユニコアと称する巻鉄心として次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とした、コーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を有するユニコアと称する巻鉄心であり、 鋼帯幅120mm、厚さ0.23mmの方向性電磁鋼板をラップ代8mm、7段ステップラップ接合で巻き回して面取りされた矩形状としたものであり、 外周の幅128mm、外周の高さ198mm、外周のコーナー部の幅21mm、内周の幅70mm、内周の高さ140mm、内周のコーナー部の幅3mmで、各電磁鋼板の接続部が一辺に形成された、 ユニコアと称する巻鉄心。」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明は「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とし」、「鋼帯幅120mm、厚さ0.23mmの方向性電磁鋼板をラップ代8mm、7段ステップラップ接合で巻き回し」たものであるから、甲1発明の「鋼板」は「方向性電磁鋼板」である。 してみると、甲1発明における「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板」は、本件発明1の「方向性電磁鋼板を成形した複数の曲げ加工体」に相当する。 そして、甲1発明の「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とした、」「ユニコアと称する巻鉄心」は、本件発明1の「方向性電磁鋼板を成形した複数の曲げ加工体を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心」に相当する。 b 甲1発明の「ユニコアと称する巻鉄心」は「コーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を有する」「面取りされた矩形状」であるから、複数の平坦部と複数のコーナー部とを有するのは明らかであり、甲1発明の「巻鉄心」は本件発明1の「前記巻鉄心は、複数の平坦部と、複数のコーナー部と、を有」することに相当する構成を有する。 c 甲1発明は「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とした、コーナー部に折り曲げ部(屈曲部)を有するユニコアと称する巻鉄心であり」「面取りされた矩形状」とした「ユニコアと称する巻鉄心」であり、「各電磁鋼板の接続部が一辺に形成された」ものであるから、「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板」も矩形状であるといえ、平坦な部分と平坦な部分の両端に隣接する屈曲した部分とを有することは明らかである。 してみると、甲1発明の「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板」は、本件発明1の「前記曲げ加工体は、複数の平坦領域と、前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域と、を有」することに相当する構成を有する。 d 本件発明1は「前記各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下」であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。 e 上記cで述べたように、甲1発明の「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板」は面取りされた矩形状であり、「鋼帯幅120mm、厚さ0.23mmの方向性電磁鋼板をラップ代8mm、7段ステップラップ接合で巻き回し」「各電磁鋼板の接続部が一辺に形成された」ものであるから、各方向性電磁鋼板は、その長手方向の端面が対向した接続部を1つ有することは明らかである。 してみると、甲1発明の「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板」は、本件発明1の「前記曲げ加工体は、前記方向性電磁鋼板の長手方向の端面が対向した接合部を1以上有」することに相当する構成を有する。 f 甲1発明は「面取りされた矩形状」とした「各電磁鋼板の接続部が一辺に形成された」、「ユニコアと称する巻鉄心」であるから、各電磁鋼板の接続部は矩形状の巻鉄心の同一の一辺上に形成されており、甲1発明の「コーナー部となる部分を予め曲げ加工した鋼板」は本件発明1の「最も内側に配置された前記曲げ加工体を第1曲げ加工体とし、前記第1曲げ加工体の前記接合部がある平坦領域を基準平坦領域としたとき、複数の前記曲げ加工体それぞれの前記接合部は、前記基準平坦領域がある前記平坦部にあ」ることに相当する構成を有する。 g 本件発明1は 「前記巻鉄心の側面視において、 前記基準平坦領域に隣接する前記屈曲領域の一方を第1屈曲領域とし、 前記基準平坦領域に隣接するもう一方の前記屈曲領域を第2屈曲領域とし、 前記第1屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第1仮想線とし、 前記第2屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第2仮想線とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線から前記第2仮想線の間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第1最短接合部とし、 前記第1最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第1端接合部とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第2最短接合部とし、 前記第2最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第2端接合部とし、 前記第1最短接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Aとし、 前記第1端接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Bとし、 前記第2最短接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Cとし、 前記第2端接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Dとし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Aと前記仮想線Bとの間にある前記接合部を第1群接合部とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Cと前記仮想線Dとの間にある前記接合部を第2群接合部とし、 前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記各第1群接合部の前記第1仮想線側の前記端面までの長さの平均を<Li>とし、 前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記各第2群接合部の前記第2仮想線側の前記端面までの長さの平均を<LO>としたとき、 下記(1)式および下記(2)式を満足する」もの、 「25mm≦<Li>・・・(1) 25mm≦<Lo>・・・(2)」 であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。 h 上記aないしgより、本件発明1と甲1発明とは、 「方向性電磁鋼板を成形した複数の曲げ加工体を板厚方向に積層することで構成された巻鉄心であって、 前記巻鉄心は、複数の平坦部と、複数のコーナー部と、を有し、 前記曲げ加工体は、複数の平坦領域と、前記平坦領域に隣接する複数の屈曲領域と、を有し、 前記曲げ加工体は、前記方向性電磁鋼板の長手方向の端面が対向した接合部を1以上有し、 最も内側に配置された前記曲げ加工体を第1曲げ加工体とし、前記第1曲げ加工体の前記接合部がある平坦領域を基準平坦領域としたとき、複数の前記曲げ加工体それぞれの前記接合部は、前記基準平坦領域がある前記平坦部にある、巻鉄心。」 である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点1〉 本件発明1は「前記各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下」であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。 〈相違点2〉 本件発明1は 「前記巻鉄心の側面視において、 前記基準平坦領域に隣接する前記屈曲領域の一方を第1屈曲領域とし、 前記基準平坦領域に隣接するもう一方の前記屈曲領域を第2屈曲領域とし、 前記第1屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第1仮想線とし、 前記第2屈曲領域の前記基準平坦領域側の端点を通り、前記基準平坦領域の前記板厚方向と平行な仮想線を第2仮想線とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線から前記第2仮想線の間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第1最短接合部とし、 前記第1最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記第1仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第1端接合部とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが最も短い前記接合部を第2最短接合部とし、 前記第2最短接合部を有する前記曲げ加工体に対して前記板厚方向に隣接する前記曲げ加工体にある前記各接合部のうち、前記第1仮想線と前記第2仮想線との間にあり、かつ、前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記第2仮想線側の前記接合部の前記端面までの長さが短いほうの前記接合部を第2端接合部とし、 前記第1最短接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Aとし、 前記第1端接合部の前記第1仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Bとし、 前記第2最短接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Cとし、 前記第2端接合部の前記第2仮想線側の前記端面を通り、前記基準平坦領域の板厚方向に平行な仮想線を仮想線Dとし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Aと前記仮想線Bとの間にある前記接合部を第1群接合部とし、 前記基準平坦領域がある前記平坦部の前記各接合部の内、前記仮想線Cと前記仮想線Dとの間にある前記接合部を第2群接合部とし、 前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第1仮想線から前記各第1群接合部の前記第1仮想線側の前記端面までの長さの平均を<Li>とし、 前記基準平坦領域の長手方向に沿った、前記第2仮想線から前記各第2群接合部の前記第2仮想線側の前記端面までの長さの平均を<LO>としたとき、 下記(1)式および下記(2)式を満足する」もの、 「25mm≦<Li>・・・(1) 25mm≦<Lo>・・・(2)」 であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。 (2)判断 上記「(1)h」のとおり、本件発明1と甲1発明とは相違点1、2を有するものである。 したがって、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に係る国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一ではなく、本件の請求項1に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 (3)特許異議申立書における主張について 以下、各相違点に関する申立人の主張について検討する。 a 相違点1について 相違点1に関して、申立人は特許異議申立書において、 「例えば、甲第2号証には、『前記屈曲部の側面視における内面側曲率半径rは1mmを超え、3mm未満』であることが記載され(【請求項1】)、屈曲部の曲率半径が0.5~5mmである多数の具体例(実施例および比較例)が記載されている(【表3-1】~【表5-4】)。特筆すべきは、甲第2号証においては、比較例であっても、曲率半径は最大で5mmであり、5mmを超えた具体例は記載されていない。 また、甲第3号証には、『電磁鋼板の巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、当該曲げ加工された電磁鋼板を重ね合わせることにより、電磁鋼板を積層して巻鉄心とする手法』に関して、『この製法の場合、電磁鋼板を曲げ加工するため、当該加工部分には曲率半径が1mm~3mm程度の比較的小さな屈曲部が形成される』ことが記載されている(【0004】)。 ここで、甲第1号証の図3の『ユニコア』も、『巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とする』ものであるから([0019])、甲第3号証の記載(【0004】)を踏まえると、必然的に、『加工部分には曲率半径が1mm~3mm程度の比較的小さな屈曲部が形成される』ことが把握される。 なお、甲第3号証には、『電磁鋼板を筒状に巻き取った後、コーナー部をプレスし、略矩形に形成』する場合(いわゆる『トランココア』である場合)、『曲率半径は概ね4mm以上の比較的大きい緩やかな曲面』となることが記載されている(【0003】)。このため、曲率半径が5mmを超えるのは、『トランココア』の範疇であると認められる。 したがって、甲第2号証および甲第3号証の記載を参酌すると、甲第1号証の図3の『ユニコア』は、『各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下』」 である旨主張している(第28頁第5~27行)。 しかしながら、甲第2、3号証の記載より、巻鉄心のコーナー部となる部分を予め曲げ加工し、曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とする場合に、曲げ加工した部分の曲率半径を5mm以下とすること自体は周知技術であるとしても、当該曲率半径は、巻鉄心の寸法や巻鉄心に使用される電磁鋼板の厚さ等を考慮して決定されるものであると認められるから、曲げ加工した鋼板を重ね合わせることにより巻鉄心とする場合に、曲げ加工した部分の曲率半径を5mm以下とすることが周知技術であることのみで、甲第1号証の図3に示された「ユニコア」である巻鉄心の曲率半径が5mm以下であるとまではいえない。 そして、本件の明細書段落【0040】に記載されるように、本件請求項1に係る発明は、曲げ加工体の曲率半径を5.0mm以下とすることで、鉄損が改善されるものである。 なお、甲第4号証の記載を参酌しても、甲第1号証の図3に記載された「ユニコア」である巻鉄心の各屈曲領域の曲率半径が5.0mm以下であるとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できず、相違点1は実質的な相違であるものと認められる。 b 相違点2について 相違点2に関して、申立人は特許異議申立書において、本件発明1の第1仮想線、第2仮想線、仮想線A、仮想線B、仮想線C、仮想線Dと同様の仮想線を甲第1号証の図3に示されたユニコアに規定した場合、 「参考図A~Bから明らかなように、甲第1号証の図3の『ユニコア』において、第1最短接合部(第1仮想線に最も近い接合部)から第2最短接合部(第2仮想線に最も近い接合部)までの長さは、ラップ代6つ分の長さであり、すなわち、48mm(=8mm×6)である。 一方、第1仮想線から第2仮想線までの長さは、甲第1号証の図3に記載された数値を踏まえると、134mm(=140mm-3mm×2)と算出される。 そうすると、甲第1号証の図3の『ユニコア』において、<Li>および<Lo>の和は、86mm(=134mm-48mm)である。 ここで、甲第1号証の図3において、<Li>:<Lo>の長さ比は、およそ7:8であるから、 <Li>=86mm×(7/15)=40.1mm <Lo>=86mm×(8/15)=45.9mm と算出され、いずれも 25mm≦<Li>・・・(1) 25mm≦<Lo>・・・(2) を優に満足する。 なお、甲第1号証の<Li>および<Lo>は、(1)式および(2)式の下限である25mmから大きく離れた値であるから、仮に、甲第1号証において、各接合部に多少の長さ(ギャップ長)があったとしても、(1)式および(2)式を充分に満足する」 旨主張している(第31頁第1行~第32頁第2行)。 しかしながら、甲第1号証の図3における接合部の位置は概略が示されるのみであり、当該図3の『ユニコア』において、<Li>および<Lo>の和は86mm(=134mm-48mm)であるといえるとしても、<Li>、<Lo>それぞれの値は不明であり、当然、その長さの比についても不明であるといえ、25mm≦<Li>、25mm≦<Lo>を満足するとまではいえない。 また、甲第2ないし4号証の記載を参酌しても、甲第1号証の図3に記載された巻鉄心が本件発明1の相違点2に係る構成を有するとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できず、相違点2は実質的な相違であるものと認められる。 2 本件発明2ないし5について 本件の請求項2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件の請求項2ないし5に係る発明は、甲第1号証に係る国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一ではない。 したがって、本件の請求項2ないし5に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700245

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