特許拒絶査定不服審判
2025-005571
エンジン
- 審判番号
- 2025-005571
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-020093
- 請求日
- 2025年04月11日
- 審決日
- 2025年10月23日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤンマーホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】種村 一幸
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 西山 智宏
- 審判官 平野 貴也
- 分類
- P18 .121-Z (F01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024- 20093「エンジン」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 4月 2日出願公開、特開2024- 45530〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年3月18日に出願した特願2021-44759号の一部を令和6年2月14日に新たに特許出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年10月15日付け:拒絶理由通知書(発送日:同年10月22日)
令和6年12月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和7年 1月 7日付け:拒絶査定(発送日:同年1月14日)
令和7年 4月11日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
燃焼室を含むエンジン本体と、
前記燃焼室から漏れたガスであるブローバイガスを大気中に排出する排出管と、
排気マニホールドと、
前記エンジン本体に供給する空気を吸気する吸気管と
を備え、
前記排出管は、前記排気マニホールドと前記吸気管との間を通過するように配置される、エンジン。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2020-23939号公報
第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由で引用文献1として引用された、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2020-23939号公報(令和2年2月13日出願公開)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(1)「【0008】
しかし、ブローバイガス大気解放装置は、低気温の環境下では、ブローバイガスを大気解放する大気解放管の内面に霜が付着し、その霜が徐々に成長しながら凍結して大気解放管を塞ぐことがあるという課題がある。凍結は、一般に大気解放管の出口内周側から発生し、徐々に上流側に成長する傾向がある。
【0009】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、ブローバイガスを大気解放する大気解放管が凍結することを防止または抑制できるブローバイガス大気解放装置を提供することにある。」
(2)「【0016】
上記の態様によれば、ブローバイガスを大気解放する大気解放管が凍結することを防止または抑制できる。」
(3)「【0019】
図1は、本開示のブローバイガス大気解放装置20を前方から視た正面図である。エンジン(内燃機関)1は、車両に搭載された多気筒の圧縮着火式内燃機関、すなわちディーゼルエンジンである。エンジンのシリンダ配置形式、気筒数等は任意である。
【0020】
エンジン1は、エンジン本体2と、エンジン本体2に接続された吸気通路3と、エンジン本体2に接続された排気通路4と、燃料噴射装置5とを備える。エンジン本体2は、シリンダヘッド2a、シリンダブロック2b、クランクケース2c等の構造部品と、その内部に収容されたピストン6、クランクシャフト7、吸気バルブ8a、排気バルブ8b等の可動部品とを含む。また、シリンダヘッド2a内の空間C1と、クランクケース2c内の空間C2は、シリンダブロック2bに形成されたガス通路2dで接続されている。
【0021】
吸気通路3は、エンジン本体2の一側(車両における左側)に配置される。吸気通路3は、エンジン本体2(特にシリンダヘッド2a)に接続された吸気マニホールド9と、吸気マニホールド9の上流端に接続された吸気管10とにより主に画成される。吸気マニホールド9は、吸気管10から送られてきた吸気を各気筒の吸気ポートに分配供給する。吸気管10には、エアクリーナ11が設けられる。
【0022】
排気通路4は、エンジン本体2の他側(車両における右側)に配置される。排気通路4は、エンジン本体2(特にシリンダヘッド2a)に接続された排気マニホールド12と、排気マニホールド12の下流側に配置された排気管13とにより主に画成される。
【0023】
図2に示すように、排気マニホールド12は、各気筒の排気ポートに接続される複数の短管部12aと、これら短管部12aに接続され各短管部12aからの排ガスを集合させる集合管部12bとを備える。短管部12a間には、間隙Gが形成される。また図1及び図2に示すように、排気マニホールド12と排気管13との間には、ターボチャージャ14のタービン14Tが設けられる。タービン14Tより下流側の排気管13には、酸化触媒、パティキュレートフィルタ、NOx触媒及びアンモニア酸化触媒等の排気浄化装置(図示せず)が設けられる。
【0023】
図2に示すように、排気マニホールド12は、各気筒の排気ポートに接続される複数の短管部12aと、これら短管部12aに接続され各短管部12aからの排ガスを集合させる集合管部12bとを備える。短管部12a間には、間隙Gが形成される。また図1及び図2に示すように、排気マニホールド12と排気管13との間には、ターボチャージャ14のタービン14Tが設けられる。タービン14Tより下流側の排気管13には、酸化触媒、パティキュレートフィルタ、NOx触媒及びアンモニア酸化触媒等の排気浄化装置(図示せず)が設けられる。
【0024】
エンジン1は、ブローバイガスを大気解放させるブローバイガス大気解放装置20を備える。
【0025】
ブローバイガス大気解放装置20は、シリンダヘッド2a内の空間C1に接続管21を介して接続されるオイルセパレータ22と、オイルセパレータ22に接続されブローバイガスを大気解放するための大気解放管23とを備える。」
(4)「【0030】
また、大気解放管23は、エンジン本体2又は排気通路4等の熱源から受熱するための受熱管部27と、受熱管部27よりも熱伝導率が低い保温管部28とを備える。受熱管部27は、鋼、銅、アルミニウム等の金属管で構成される。保温管部28は弾性を有する樹脂管で構成される。
【0031】
受熱管部27は、特に熱源に近接して配置される。本実施の形態における主たる熱源は、排気マニホールド12、排気管13、及び排気マニホールド12に近接するエンジン本体2である。図2に示すように、受熱管部27は、エンジン本体2の他側(排気側)の側面26に沿って配置されると共に、短管部12a間の間隙Gに上下に挿通される。これにより、受熱管部27は、熱源から積極的に熱を受ける。」
(5)「【0038】
エンジン1が作動されると、燃焼室内の未燃混合気や燃焼後のガスがピストン6及びシリンダブロック2b間の隙間等からクランクケース2cの空間C2や、シリンダヘッド2aの空間C1に漏れ出てブローバイガスが発生する。このとき、大気解放管23は、大気解放されており、接続管21はオイルセパレータ22を介して大気解放管23に連通されている。このため、クランクケース2c及びシリンダヘッド2aの空間C1、C2内のブローバイガスは、接続管21、オイルセパレータ22及び大気解放管23の順に流れ、大気解放管23から大気解放される。このとき、ブローバイガスは、オイルセパレータ22内でフィルタを通過する。これにより、ブローバイガスに含まれるオイルがフィルタに捕集され、ブローバイガスから分離される。ブローバイガスから分離されたオイルは、オイル戻し管24を経てクランクケース2c内に戻される。」
(6)「【0049】
例えば、受熱管部27は、排気マニホールド12の短管部12a間に配置されるものとしたが、排気マニホールド12とタービン14Tとの間に配置されてもよい。」
(7)「【図1】
[図:0001431017000001.jpg]
」
(8)「【図2】
[図:0001431017000002.jpg]
」
2 引用文献1の認定事項
(1)段落【0020】~【0022】、【0024】、【0025】の記載によれば、エンジン1は、エンジン本体2と、大気解放管23と、排気マニホールド12と、吸気管10とを備えるものと認められる。
(2)段落【0021】の記載によれば、吸気管10は、エンジン本体2に供給する空気を吸気するものと認められる。
(3)段落【0038】の記載によれば、大気解放管23は、燃焼室から漏れ出たガスであるブローバイガスを大気解放するものと認められる。
(4)段落【0030】、【0031】の記載によれば、大気解放管23の受熱管部27は、熱源に近接して配置されるものと認められる。
3 引用発明
上記1及び2を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「燃焼室を含むエンジン本体2と、
前記燃焼室から漏れ出たガスであるブローバイガスを大気解放する大気解放管23と、
排気マニホールド12と、
前記エンジン本体2に供給する空気を吸気する吸気管10と
を備え、
前記大気解放管23の受熱管部27は、熱源に近接して配置される、エンジン1。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「燃焼室」は、その機能や構造等からみて、前者の「燃焼室」に相当し、以下同様に、「エンジン本体2」は「エンジン本体」に、「ガス」は「ガス」に、「ブローバイガス」は「ブローバイガス」に、「大気解放する」ことは「大気中に排出する」ことに、「大気解放管23」は「排出管」に、「排気マニホールド12」は「排気マニホールド」に、「吸気管10」は「吸気管」に、「備え」ることは「備え」ることに、「エンジン1」は「エンジン」に、それぞれ相当する。
(2)上記(1)を踏まえると、後者の「燃焼室を含むエンジン本体2」は、前者の「燃焼室を含むエンジン本体」に相当し、以下同様に、「前記燃焼室から漏れ出たガスであるブローバイガスを大気解放する大気解放管23」は「前記燃焼室から漏れたガスであるブローバイガスを大気中に排出する排出管」に、「前記エンジン本体2に供給する空気を吸気する吸気管10」は「前記エンジン本体に供給する空気を吸気する吸気管」に、それぞれ相当する。
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「燃焼室を含むエンジン本体と、
前記燃焼室から漏れたガスであるブローバイガスを大気中に排出する排出管と、
排気マニホールドと、
前記エンジン本体に供給する空気を吸気する吸気管と
を備える、エンジン。」
<相違点>
本願発明では、排気管は、「前記排気マニホールドと前記吸気管との間を通過するように」配置されるのに対し、引用発明では、大気解放管23の受熱管部27は、「熱源に近接して」配置される点。
2 判断
以下、相違点について検討する。
引用文献1全体を参照すると、引用発明の「熱源」として、段落【0031】には、排気マニホールド12、排気管13、及び、(排気マニホールド12に近接する)エンジン本体2が開示されている。また、引用発明の「大気解放管23の受熱管部27」の配置として、段落【0031】及び図2には、排気マニホールド12の短管部12a間(すなわち、エンジン本体2の排気側の側面26と排気マニホールド12との間)が開示されているほか、段落【0049】には、排気マニホールド12とタービン14Tとの間にしてもよいことが開示されている。
そうすると、引用文献1には、大気解放管23の受熱管部27が、熱源としては排気マニホールド12のみに近接して配置されてもよいことや、熱源に近接する配置は適宜選択し得ることが示唆されているものと認められる。
そして、引用文献1に接した当業者であれば、熱源としては排気マニホールド12のみに近接する配置として、図2を参照し、上記「排気マニホールド12とタービン14Tとの間」の近傍に位置する「排気マニホールド12と吸気管10との間」を選択することは、適宜なし得る程度のことである。
したがって、引用発明において、大気解放管23の受熱管部27を排気マニホールド12と吸気管10との間を通すようにすることで、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明の「低温環境下であっても排出管40の内部の水分が凍結することが抑制できる」(本願明細書の段落【0030】参照。)との効果についても、引用文献1の段落【0016】には、「大気解放管が凍結することを防止または抑制できる」との効果が記載されていることを勘案すれば、当該効果は格別顕著なものとは認められない。
3 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「本願発明では、排気マニホールドと吸気管との間に排出管を通過させることにより、排出管が過剰に高温になるのを抑制することができるため、例えば比較的低い耐熱性を有する弾性材料で排出管を構成することも可能となり、排出管の構成の自由度が向上する」という顕著な効果を奏するものであるから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない旨主張する。
しかしながら、本願明細書の段落【0036】~【0041】の記載や図3、5の図示内容等を参照すると、排出管として弾性材料で構成される弾性管を用いる例が開示されているものの、当該例においても排出管は弾性管のみで構成されているわけではなく、金属管を含んでいる。そして、金属管を(熱源と解される)エンジン本体に近づけることができ、その結果、排出管のレイアウトの自由度を向上できることが開示されている。また、排気マニホールドと吸気管との間だけでなく、その他の熱源の近傍に弾性管を配置することについては、特許請求の範囲のみならず、本願明細書や図面において記載も示唆もないことから、請求人の上記主張はその前提において根拠を欠くものである。
仮に、請求人の上記主張が、排出管の一部を弾性材料で構成することで、排出管の構成の自由度が向上するという効果を奏するものであるということであったとしても、引用文献1の段落【0030】には、大気解放管23は、金属管で構成される受熱管部27と、弾性を有する樹脂管で構成される保温管部28とを備えることが記載されていることを勘案すると、当該効果は当業者が引用発明から十分に推認し得る程度のものである。
以上によれば、請求人の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。
4 小括
以上によれば、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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