特許拒絶査定不服審判
2023-006347
舶用ディーゼル内燃機関の潤滑油システム及びこの潤滑油システムを動作させるための方法
- 審判番号
- 2023-006347
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-177187
- 請求日
- 2023年04月18日
- 審決日
- 2025年01月22日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 審判長/審判官
- 審判長 河端 賢
- 審判官 山本 信平
- 審判官 倉橋 紀夫
- 分類
- P18 .121-WZ (F01M) / P18 .575-WZ (F01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-177187「舶用ディーゼル内燃機関の潤滑油システム及びこの潤滑油システムを動作させるための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年4月18日出願公開、特開2019-60341〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2018-177187号(以下「本願」という。)は、平成30年9月21日(パリ条約による優先権主張平成29年9月25日(DE)ドイツ連邦共和国)の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和4年 7月27日付け:拒絶理由通知(発送日:同年8月1日)
令和4年10月24日 :意見書及び手続補正書の提出
令和4年12月12日付け:拒絶査定(発送日:同年12月19日)
令和5年 4月18日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和5年11月28日付け:拒絶理由通知(発送日:同年12月4日)
令和6年 2月28日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 7月 3日付け:拒絶理由通知<最後>(発送日:同年7月8日)
令和6年 9月25日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 令和6年9月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年9月25日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
潤滑油を保持するための潤滑油貯留体(12)を有し、1200rpmまでの回転速度範囲で動作される舶用ディーゼル内燃機関(10)の潤滑油システムであって、
前記潤滑油貯留体(12)から潤滑油を送給するために前記舶用ディーゼル内燃機関(10)によって、該舶用ディーゼル内燃機関(10)と連動した速度で駆動される潤滑油ポンプ(13)と、
前記潤滑油ポンプ(13)によってもたらされる潤滑油圧を制限するための潤滑油弁(14)と、
前記潤滑油弁(14)を制御するための制御デバイス(15)と、
前記舶用ディーゼル内燃機関(10)に温度制御されかつ濾過された潤滑油を供給するために、前記潤滑油ポンプ(13)の下流側に導入された温度制御デバイス(20)及び濾過デバイス(21)と、
を備え、
前記潤滑油弁(14)は、バイパスライン(18)に一体化され、このバイパスライン(18)は、前記潤滑油ポンプ(13)の下流において給油ライン(16)から分岐しており、
前記制御デバイス(15)が、前記舶用ディーゼル内燃機関(10)の回転速度に基づいて、前記舶用ディーゼル内燃機関(10)の回転速度に応じた設定潤滑油圧を決定し、前記設定潤滑油圧に基づいて、前記設定潤滑油圧をもたらすために前記潤滑油弁(14)を作動させることを特徴とする潤滑油システム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前の、令和6年2月28日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
潤滑油を保持するための潤滑油貯留体(12)を有し、1200rpmまでの回転速度範囲で動作される舶用ディーゼル内燃機関(10)の潤滑油システムであって、
前記潤滑油貯留体(12)から潤滑油を送給するために前記舶用ディーゼル内燃機関(10)によって、該舶用ディーゼル内燃機関(10)と連動した速度で駆動される潤滑油ポンプ(13)と、
前記潤滑油ポンプ(13)によってもたらされる潤滑油圧を制限するための潤滑油弁(14)と、
前記潤滑油弁(14)を制御するための制御デバイス(15)と、
前記舶用ディーゼル内燃機関(10)に温度制御されかつ濾過された潤滑油を供給するために、前記潤滑油ポンプ(13)の下流側に導入された温度制御デバイス(20)及び濾過デバイス(21)と、
を備え、
前記制御デバイス(15)が、前記舶用ディーゼル内燃機関(10)の回転速度に基づいて、前記舶用ディーゼル内燃機関(10)の回転速度に応じた設定潤滑油圧を決定し、前記設定潤滑油圧に基づいて、前記設定潤滑油圧をもたらすために前記潤滑油弁(14)を作動させることを特徴とする潤滑油システム。」
2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
(1)請求項1に係る補正について
本件補正における請求項1に関する補正の目的について検討する。
本件補正後の請求項1において追加された「前記潤滑油弁(14)は、バイパスライン(18)に一体化され、このバイパスライン(18)は、前記潤滑油ポンプ(13)の下流において給油ライン(16)から分岐しており、」という事項は、本件補正前の請求項1に係る発明の「潤滑油弁(14)」について「バイパスライン(18)に一体化され、このバイパスライン(18)は、前記潤滑油ポンプ(13)の下流において給油ライン(16)から分岐して」いるという限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。
2-2 独立特許要件
本件補正は、上記2-1のとおり、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献1の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1の記載事項
令和6年7月3日付け最後の拒絶理由通知において引用文献1として引用した特開2013-194550号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は、内燃機関、特に大型ディーゼル機関、好適には船舶用ディーゼル機関のシリンダの内周面に潤滑油を強制注油するシリンダ注油装置に関するものである。」
(イ)「【0014】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係るシリンダ注油装置について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るシリンダ注油装置1は、潤滑油主管(潤滑油循環管)2と、潤滑油タンク3と、潤滑油ポンプ4と、フィルタ5と、リリーフ弁ユニット6と、枝管7と、電磁弁8と、注油器9と、注油管10と、(第1の潤滑油)給油管11と、を備えている。
【0015】
潤滑油主管2は、一端(上流端)が潤滑油タンク3の内部で、かつ、潤滑油タンク3の底面近傍に配置され、他端(下流端)が潤滑油タンク3の内部で、かつ、潤滑油タンク3の底面に開口するようにして配置された配管であり、潤滑油主管2の途中には、上流側から下流側に向かって、潤滑油ポンプ4、フィルタ5、リリーフ弁ユニット6が接続されている。
【0016】
潤滑油タンク3の内部には、リリーフ弁ユニット6に供給される潤滑油、電磁弁8を介して注油器9に供給される潤滑油、潤滑油供給管11、注油器9および注油管10を介してシリンダ21とピストン22との間に注入される潤滑油が溜められている。また、潤滑油タンク3には、適宜必要に応じた時点で潤滑油タンク3とは別の潤滑油タンク(図示せず)から潤滑油を補うことができるよう、潤滑油供給管12が接続されている。
【0017】
潤滑油ポンプ4は、モータ(例えば、電動モータ)4aによって回転駆動されることにより、潤滑油主管2を介して潤滑油タンク3から導かれた(吸引された)潤滑油を一定の圧力(例えば、6.0MPa)に昇圧して、下流側に接続された(吐出口に接続された)潤滑油主管2に、一定の圧力に昇圧された潤滑油を送出するポンプである。
【0018】
フィルタ5は、潤滑油主管2を介して潤滑油ポンプ4から導かれた潤滑油に含まれる不純物(例えば、粉塵)を、潤滑油中から取り除くものであり、不純物が取り除かれた潤滑油は、潤滑油主管2を介して下流側に導かれる。
枝管7は、一端(上流端)がフィルタ5とリリーフ弁ユニット6との間に位置する潤滑油主管2の途中に接続され、他端(下流端)が注油器9のシリンダ31に接続された配管であり、枝管7の途中には、電磁弁8が接続されている。
【0019】
なお、電磁弁8が開くと、リリーフ弁ユニット6にて調圧された(圧力の調整された)潤滑油が、枝管7を介して注油器9のシリンダ31に導かれ、ピストン32およびプランジャ33を押し上げ、プランジャ33を収容するシリンダ34内に満たされていた潤滑油が、注油管10、およびシリンダ21に設けられたシリンダ注油口35を介してシリンダ21とピストン22との間に注入される。
【0020】
一方、電磁弁8が閉じると、ピストン32およびプランジャ33は、復帰バネ36により押し戻され、シリンダ31内に満たされていた潤滑油、および電磁弁8とシリンダ31との間に位置する枝管7内に満たされていた潤滑油は、電磁弁8のブロー側(図示せず)から潤滑油戻り管45を介して潤滑油タンク3に戻される。と同時に、シリンダ34内には、注油器9の油溜まり37から、(第2の潤滑油)給油管38、逆止弁39、および注油管10の上流側に位置する注油管10の一部を介して、注油器9の油溜まり37内を満たしていた潤滑油が吸い込まれて(供給されて)、シリンダ34内が潤滑油で満たされる。また、油溜まり37内には、給油管11、および注油器9に設けられた注油器給油口40を介して、シリンダ34内に供給された潤滑油の分だけ、潤滑油が吸い込まれる(補充される)。
【0021】
ここで、枝管7、電磁弁8、および注油器9は、1個のシリンダ21に対して1個ずつ設けられている。また、注油管10、プランジャ33、シリンダ34、給油管38、および逆止弁39は、1個のシリンダ注油口35に対して1個ずつ、すなわち、1個のシリンダ21に対してシリンダ注油口35が10個設けられている場合は、1個の注油器9に対して10個ずつ設けられている。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係るリリーフ弁ユニット6は、複数個(本実施形態では3個)のストップ弁61と、複数個(本実施形態では3個)の電磁弁62と、複数個(本実施形態では4個)のリリーフ弁63と、1個のストップ弁64と、を備えている。
ストップ弁61は、通常時全開(対応する電磁弁62が正常の時に全開)とされ、対応する電磁弁62に異常が生じた時に全閉とされるバルブであり、対応する電磁弁62の上流側に一つずつ、互いに並列となるように配置されている。
一方、ストップ弁64は、通常時全閉(リリーフ圧力がP1に設定されたリリーフ弁63が正常の時に全閉)とされ、圧力を一時的にリークさせる時に全開とされるバイパスバルブであり、リリーフ圧力がP1に設定されたリリーフ弁63に並列となるように配置されている。
【0023】
リリーフ弁63は、リリーフ弁ユニット6よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力が、各バルブの設定値P4,P3,P2,P1(P4<P3<P2<P1)に達したら、リリーフ弁ユニット6よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の潤滑油の一部または全部を排出させ、リリーフ弁ユニット6よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力を各バルブの設定値P4,P3,P2,P1に保持する圧力制御弁(一時圧設定用弁)である。
【0024】
電磁弁62は、リリーフ圧力がP4に設定されたリリーフ弁63の上流側に配置されて、内燃機関(図示せず)の回転数が図3の横軸にAで示す範囲内にある時には開とされ、それ以外の範囲内にある時には閉とされる(第1の)電磁弁62aと、リリーフ圧力がP3に設定されたリリーフ弁63の上流側に配置されて、内燃機関の回転数が図3の横軸にBで示す範囲内にある時には開とされ、それ以外の範囲内にある時には閉とされる(第2の)電磁弁62bと、リリーフ圧力がP2に設定されたリリーフ弁63の上流側に配置されて、内燃機関の回転数が図3の横軸にCで示す範囲内にある時には開とされ、それ以外の範囲内にある時には閉とされる(第3の)電磁弁62cと、を備えている。
【0025】
そして、このようにして構成されたリリーフ弁ユニット6では、内燃機関の回転数が図3の横軸にAで示す範囲内にある時には、リリーフ弁ユニット6よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力がP4に保持され、内燃機関の回転数が図3の横軸にBで示す範囲内にある時には、リリーフ弁ユニット6よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力がP3に保持されて、内燃機関の回転数が図3の横軸にCで示す範囲内にある時には、リリーフ弁ユニット6よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力がP2に保持されるとともに、内燃機関の回転数が図3の横軸にDで示す範囲内にある時には、リリーフ弁ユニット6よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力がP1に保持されることになる。
【0026】
なお、電磁弁62に異常が生じ、その上流側に位置するストップ弁61が全閉となった場合、リリーフ弁ユニット6よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力は、リリーフ圧力がP1に設定されたリリーフ弁63によりP1に保持されることになる。
【0027】
本実施形態に係るシリンダ注油装置1によれば、内燃機関の回転数に応じて、内燃機関の回転数が低い時には、潤滑油主管2内の潤滑油の圧力が低く、内燃機関の回転数が高い時には、潤滑油主管2内の潤滑油の圧力が高くなるように、潤滑油主管2内の潤滑油の圧力を直線状あるいは階段状に、かつ、自動的に変化させる油圧回路からなるリリーフ弁ユニット6を具備しているので、内燃機関の回転数に応じて注油速度(注油期間:注油時間)を自動で調整することができる。
【0028】
また、本実施形態に係るシリンダ注油装置1を具備した内燃機関によれば、内燃機関の回転数が低い時には、ゆっくりとした注油速度(長きにわたる注油期間:注油時間)で注油が行われ、内燃機関の回転数が高い時には、速い注油速度(短い注油期間:注油時間)で注油が行われることになり、内燃機関の回転数に応じた適切な注油が行われることになる。
【0029】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係るシリンダ注油装置について、図4および図5を参照しながら説明する。
本実施形態に係るシリンダ注油装置71は、リリーフ弁ユニット6の代わりにリリーフ弁ユニット72を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については前述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、前述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0030】
図4に示すように、本実施形態に係るリリーフ弁ユニット72は、1個のストップ弁81と、1個の比例電磁式リリーフ弁82と、1個のリリーフ弁83と、1個のストップ弁84と、を備えている。
ストップ弁81は、通常時全開(比例電磁式リリーフ弁82が正常の時に全開)とされ、比例電磁式リリーフ弁82に異常が生じた時に全閉とされるバルブであり、比例電磁式リリーフ弁82の上流側に配置されている。
一方、ストップ弁84は、通常時全閉(リリーフ圧力がP1に設定されたリリーフ弁83が正常の時に全閉)とされ、圧力を一時的にリークさせる時に全開とされるバイパスバルブであり、リリーフ圧力がP1に設定されたリリーフ弁83に並列となるように配置されている。
【0031】
リリーフ弁83は、リリーフ弁ユニット72よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力が、当該バルブの設定値P1に達したら、リリーフ弁ユニット72よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の潤滑油の一部または全部を排出させ、リリーフ弁ユニット72よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力を当該バルブの設定値P1に保持する圧力制御弁(一時圧設定用弁)である。
【0032】
比例電磁式リリーフ弁82は、図5に示すように、内燃機関の回転数に応じて、リリーフ弁ユニット72よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力Pを線形的に変化させ、かつ、保持する圧力制御弁(一時圧設定用弁)である。
【0033】
そして、このようにして構成されたリリーフ弁ユニット72は、内燃機関の回転数が増加すると、リリーフ弁ユニット72よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力も増加し、内燃機関の回転数が低下すると、リリーフ弁ユニット72よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力も低下することになる。
【0034】
なお、比例電磁式リリーフ弁82に異常が生じ、その上流側に位置するストップ弁81が全閉となった場合、リリーフ弁ユニット72よりも上流側に位置する潤滑油主管2内の圧力は、リリーフ圧力がP1に設定されたリリーフ弁83によりP1に保持されることになる。
【0035】
本実施形態に係るシリンダ注油装置71によれば、内燃機関の回転数に応じて、内燃機関の回転数が低い時には、潤滑油主管2内の潤滑油の圧力が低く、内燃機関の回転数が高い時には、潤滑油主管2内の潤滑油の圧力が高くなるように、潤滑油主管2内の潤滑油の圧力を直線状あるいは階段状に、かつ、自動的に変化させる油圧回路からなるリリーフ弁ユニット72を具備しているので、内燃機関の回転数に応じて注油速度(注油期間:注油時間)を自動で調整することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るシリンダ注油装置71を具備した内燃機関によれば、内燃機関の回転数が低い時には、ゆっくりとした注油速度(長きにわたる注油期間:注油時間)で注油が行われ、内燃機関の回転数が高い時には、速い注油速度(短い注油期間:注油時間)で注油が行われることになり、内燃機関の回転数に応じた適切な注油が行われることになる。」
(ウ)「【図1】
[図:0001423892000001.jpg]
」
(エ)「【図2】
[図:0001423892000002.jpg]
」
(オ)「【図3】
[図:0001423892000003.jpg]
」
(カ)「【図4】
[図:0001423892000004.jpg]
」
(キ)「【図5】
[図:0001423892000005.jpg]
」
イ 引用発明
(ア)引用文献1に記載されたシリンダ注油装置1が、リリーフ弁ユニット72を制御するための制御デバイスを備えており、リリーフ弁ユニット72はその制御デバイスの制御により作動していることは明らかである。また、段落【0035】から、その制御デバイスが、船舶用ディーゼル内燃機関の回転数に応じて、船舶用ディーゼル内燃機関の回転数が低い時には潤滑油の圧力が低く、船舶用ディーゼル内燃機関の回転数が高い時には潤滑油の圧力が高くなるように、リリーフ弁ユニット72を作動させることも明らかである。
(イ)段落【0001】、【0018】-【0020】及び【図1】から、フィルタ5は、船舶用ディーゼル内燃機関に不純物が取り除かれた潤滑油を供給するためのものであることは明らかである。
(ウ)図1からフィルタ5が潤滑油ポンプ4の下流側に導入されていることが看取できる。
(エ)図1から潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分にリリーフ弁ユニット72が設けられ、潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分は潤滑油ポンプ4の下流のフィルタ5の下流で枝管7から分岐していることが看取できる。
上記ア及び(ア)-(エ)を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 潤滑油が溜められている潤滑油タンク3を備えている船舶用ディーゼル内燃機関のシリンダ注油装置1であって、
前記潤滑油タンク3から潤滑油を送出するために、モータ4aによって、潤滑油を一定の圧力に昇圧するように回転駆動される潤滑油ポンプ4と、
前記潤滑油主管2内の圧力Pを保持するためのリリーフ弁ユニット72と、
前記リリーフ弁ユニット72を制御するための制御デバイスと、
前記船舶用ディーゼル内燃機関に不純物が取り除かれた潤滑油を供給するために、前記潤滑油ポンプ4の下流側に導入されたフィルタ5と、
を備え、
前記リリーフ弁ユニット72は、潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分に設けられ、この潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分は潤滑油ポンプ4の下流のフィルタ5の下流で枝管7から分岐しており、
前記制御デバイスが、船舶用ディーゼル内燃機関の回転数に応じて、船舶用ディーゼル内燃機関の回転数が低い時には潤滑油の圧力が低く、船舶用ディーゼル内燃機関の回転数が高い時には潤滑油の圧力が高くなるように、リリーフ弁ユニット72を作動させるシリンダ注油装置1。」
(3)引用文献2の記載事項
ア 令和6年7月3日付け拒絶理由通知において引用文献2として引用した特表2007-515506号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、一般に、エンジン潤滑油処方を、エンジン運転条件に応答して、変更することに関する。より詳しくは、本発明は、舶用ディーゼルエンジン潤滑油の組成をエンジン運転条件に応答して変更するための潤滑油成分に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、一般に、低速、中速、または高速エンジンとして分類され、低速種は、最大規模の深喫水船舶および工業用途に用いられる。
低速ディーゼルエンジンは、典型的には、直結かつ直接反転2ストロークサイクルエンジンである。これは、約57~250rpmの範囲で作動し、一般に残渣燃料で作動する。これらのエンジンは、ダイヤフラムおよびスタッフィングボックスを有するクロスヘッド構造からなる。これは、出力シリンダーをクランクケースから分離して、燃焼生成物が、クランクケースに入り、クランクケース油と混合するのを防止する。
中速エンジンは、典型的には、250~約1100rpmの範囲で作動し、4ストロークまたは2ストロークサイクルで作動するであろう。これらのエンジンは、筒形ピストン設計であり、多くは、同様に残渣燃料で作動する。それらはまた、残渣を殆ど含まないか、または全く含まない留出燃料で作動するであろう。深海船舶に対しては、これらのエンジンは、推進または補助用途、もしくはその両者に用いられるであろう。
低速および中速舶用ディーゼルエンジンはまた、広範囲に、発電装置の運転で用いられる。本発明は、同様にそれらに適用可能である。」
(4)引用文献3の記載事項
ア 令和6年7月3日付け拒絶理由通知において引用文献3として引用した実願昭61―51585号(実開昭62-162318号)のマイクロフィルム(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「第5図は、従来から用いられている大形低速エンジンのシリンダ注油系を示し、図において01はシリンダライナ(以下ライナという)、02は注油孔、03はビストン、04はピストンリング(以下リングという)、05はピストン棒、06はコネクチイングロッド、07はクランク軸、08は軸受、09は注油器駆動ギヤ、010は注油器、011は注油導管、012は注油棒である。
上記注油器010は、エンジンのクランク軸07(もしくはカム軸)に取り付けた歯車又はチェーンを介して回転され、該注油器010内にある潤滑油はこれのプランジャ(図示せず)の作動により注油導管011と注油棒012を経てライナ01に設けてある複数個の注油孔02から吐出される。吐出された油はライナ01とリング04の潤滑に使用される。」(明細書1頁下から4行-2ページ12行)
(イ)「第5図
[図:0001423892000006.jpg]
」
(5)引用文献4の記載事項
ア 令和6年7月3日付け拒絶理由通知において引用文献4として引用した特表2008-531903号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、大型ディーゼル機関、特に舶用機関のシリンダ表面の潤滑方法と装置とを含んだ潤滑システムに関し、シリンダライナーの1または複数の個別の潤滑ポイントのそれぞれに接続され潤滑油を供給する複数のレシプロポンプを有する少なくとも1つの潤滑装置を含む潤滑システムに関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑装置は従来から、各シリンダの近傍に取付けられたポンプユニットとして設計されており、該ポンプユニットは、潤滑油のリザーバ、および、シリンダ壁の異なる位置に配置された潤滑ポイントとしての噴射ノズルに接続されいる。各ポンプユニットは、種々の潤滑ポイントに潤滑油を供給する複数のレシプロポンプを備えており、各レシプロポンプは、カム付きの共通回転制御軸により駆動される。軸が回転すると、押圧ヘッドを有するカムはそれぞれバネにより制御軸に向けて付勢されているピストンを押動し、制御軸の回転によりピストンが往復動してレシプロポンプのピストン動作が行われる。
【0003】
長年、潤滑装置はレシプロポンプの吐出圧をそれほど高くする必要のない条件下で運転されていた。すなわち、霧化を行わないノズルでは10bar程度の大きさの圧力の吐出圧または噴射圧力での運転が必要とされていた。
【0004】
近年、潤滑油を加圧霧化ノズルを通じて噴射し、ピストンの上昇動作中にオイルミスト潤滑を行うことにより潤滑効率を増大させることが提案されている。しかし、この場合、霧化ノズルを通すことによる潤滑油の微細な霧化を確実にするため、潤滑油には遙かに高い圧力、例えば100barまたはそれ以上の圧力が加えられる。
【0005】
潤滑油を機関ピストンの上昇行程中、すなわち、圧縮行程中であってそれに続く着火燃焼による動力発生工程前にシリンダ内に潤滑油を噴射することは確立された標準となっている。
こうして、潤滑ポイントは、本出願で説明するように、潤滑油噴射ノズルおよび/又は加圧霧化ノズルとを備えている。
【0006】
いずれの装置においても、制御軸は機関のクランク軸との直接または間接的な機械的連結により駆動されており、それによりポンプの駆動に必要な動力とともに機関クランク軸と潤滑装置の制御軸との同期を得ることを可能としている。
【0007】
ポンプユニットは、例えば箱形のハウジングを備えており、このハウジングから、関連する機関シリンダの、例えば6~24の数の潤滑ポイントに接続パイプが延びている。
【0008】
ピストンは、従来、機関のクランク軸と同期して回転する制御軸上の駆動カムやロッカーアームにより駆動されている。ピストンはバネにより駆動カムに向けて付勢されている。駆動カムの限界位置を規定する調整スクリューが設けられている。調整スクリューは個々のピストンの作動ストロークを決定するために手動操作することができ、それにより個々のレシプロポンプの吐出量を設定することができる。」
(イ)「【0039】
図1は、大型ディーゼル機関のシリンダ2の表面1を潤滑する装置の構成を示す図である。図示した構成は、符号4で示す複数のピストンポンプを備えた潤滑装置3を備えている。接続配管5(各潤滑装置について1つのみを示す)を介して、各ピストンポンプは、シリンダ壁7に配置された潤滑ポイント6に接続されシリンダ壁の表面1を潤滑している。本構成は更に、流量調節器8の形態による流量制御手段を備えている。流量調節器8については、図2、3を参照して詳細に説明する。
【0040】
更に、本構成は流量調節器8と潤滑装置3とに接続された電子制御ユニット9を備えている。図に符号10で示したように、電子制御ユニットは潤滑装置3からインデックス信号を受信するようになっている。
【0041】
図2と図3に示した潤滑装置3は箱形の装置ハウジング11を備えており、ハウジング11の前面12には、複数のレシプロポンプ13が担持されているが、図2には1つのレシプロポンプ13のみを示している。潤滑油装置は、潤滑油の下部入口と、ハウジング11内に突出したピストン15を受承する中間部分と、レシプロポンプへの出口4とを有するバルブハウジング14を備えている。上記出口は、流量表示器16を介して上部接続端部17に接続されており、この接続端部17の列全体から接続配管が関連するシリンダ、例えば6~24の数のシリンダの潤滑ポイントに伸びている。
【0042】
ピストン15は、ハウジングを貫通する制御軸19のカム18により押圧駆動される。制御軸19は、軸受ケース20に受承され機関クランク軸と同期して回転する。ピストンは制御軸から直接ではなく、各ロッカーアーム22のスラストパッド21を介して駆動されている。ロッカーアーム22は、軸端の偏心ジャーナル24を有する固定ジャーナル23周りを回動し、上部延長部25は、その上端で前部壁から内方に突出する調整スクリュー26に係合する上部延長部25を有している。ピストン15は、ハウジング内側に向けてバネ付勢されてスラストパッド21に押しつけられており、こうして、上部延長部端が調整スクリュー26に当接するまでスラストパッドを押圧している。これにより、各潤滑油装置について、関連するカム18が通過したときに各スラストパッド21がピストンの押動を開始する初期位置が定まる。」
(ウ)「
[図:0001423892000007.jpg]
」
(エ)「
[図:0001423892000008.jpg]
」
(オ)「
[図:0001423892000009.jpg]
」
(6)引用文献5の記載事項
ア 令和6年7月3日付け拒絶理由通知において引用文献5として引用した特開2010-209885号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0048】
また、エンジンシステム10において、ECU100には、図示する以外にも、エンジン200の、或いはエンジン200が搭載される車両の運転条件を規定する各種の指標値が、各指標値について設置された各種のセンサを介して電気的に入力される構成となっている。例えば、ECU100は、エンジン200の機関回転速度NEをNEセンサ(不図示)から、またアクセル開度ACCをアクセルポジションセンサ(不図示)から、更には潤滑油の温度を潤滑油温センサ(不図示)から、夫々取得可能に構成されている。
【0049】
尚、本発明に係る「内燃機関」は、燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、動弁態様及び気筒配列等を問わない各種の態様を採り得る。例えば、本実施形態に例示するディーゼルエンジンに限らず、ガソリンを燃料とするガソリンエンジン又はアルコールとガソリンとの混合燃料を使用可能なバイフューエルエンジン等の形態を有していてもよい。
【0050】
次に、図2を参照し、潤滑油供給部300の詳細について説明する。ここに、図2は、潤滑油供給部300の構成を概念的に表してなるブロック図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0051】
図2において、潤滑油供給部300は、オイルパン310、オイルポンプ320、主供給路330、オイルフィルタ340、オイルクーラ350、油圧調整弁370、第1分岐通路380及び第2分岐通路390を含んで構成される。
【0052】
オイルパン310は、循環供給される潤滑油のうち余分な潤滑油を一時的に貯留する貯留手段である。このオイルパン310は、不図示のオイルストレーナ及び吸込み通路を介して、オイルポンプ320に接続されている。
【0053】
オイルポンプ320は、エンジン200のクランクシャフトの回転動力を利用して潤滑油をオイルパン310から吸引し、主供給路へ吐出することによって潤滑油を循環させることが可能な、公知のギア式ポンプである。尚、オイルポンプの実践的態様は、公知の各種態様を採ることができ、必ずしもギア式に限定されない。例えば潤滑油供給装置300は、オイルポンプとして、トロコイド式のポンプを備えていてもよい。
【0054】
オイルフィルタ340は、主供給路330上に設置された潤滑油の濾過装置であり、オイルポンプ320から吐出された潤滑油から不純物や各種金属粉塵等を除去可能に構成されている。このオイルフィルタ340の下流側には、オイルクーラ350が設置されており、潤滑油の過昇温が防止される構成となっている。」
(イ)「【図2】
[図:0001423892000010.jpg]
」
(6)引用文献6の記載事項
ア 令和6年7月3日付け拒絶理由通知において引用文献6として引用した特開2012-2216号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0020】
図1に示すように、給油装置1は、エンジン潤滑用のオイルをエンジン本体部の各部(例えば要潤滑部)へ圧送するオイルポンプ10と、オイルの異物を取り除くオイルフィルタ11と、オイルを冷却するオイルクーラ12と、オイルをエンジン本体部の各部に供給するための第1~第5オイル通路13~17と、オイルポンプ10によってエンジンの各部に供給されるオイルの油圧を切換制御する調圧装置3(油調整装置)とを備えている。
【0021】
第1オイル通路13の上流端部は、オイルポンプ10へ侵入する異物を取り除くオイルストレーナー18に連通している一方、その下流端部は、オイルポンプ10の吸入側に連通している。オイルポンプ10は、例えばエンジン本体部のクランク軸の回転によってオイルパン19内のオイルを吸い上げてエンジン本体部に送り出す従来周知のものである。
【0022】
第2オイル通路14の上流端部は、オイルポンプ10の吐出側に連通している一方、その下流端部は、オイルフィルタ11のオイル入口に連通している。オイルフィルタ11は、循環するオイルの汚れや異物を取り除く従来周知のものである。そして、第2オイル通路14内を流通したオイルは、オイルフィルタ11において異物が取り除かれた後に、オイルフィルタ11のオイル出口に接続されている第3オイル通路15に流出する。
【0023】
第3オイル通路15の下流端部は、オイルクーラ12のオイル入口に連通している。オイルクーラ12は、高温になったオイルを冷やして温度を下げる従来周知のものである。そして、第3オイル通路15内を流通したオイルは、オイルクーラ12において冷却された後に、オイルクーラ12のオイル出口に接続されている第4オイル通路16に流出する。」
(イ)「【0026】
調圧装置3は、開閉弁30と、この開閉弁30が介設された油圧通路31と、開閉弁30を開閉制御する制御装置32と、第2オイル通路14内を流通するオイル(即ち、オイルポンプ10の吐出側のオイル)を第1オイル通路13(即ち、オイルポンプ10の吸入側)に戻すリリーフ弁33と、このリリーフ弁33が介設されたリリーフ通路34とを有している。」
(ウ)「【図1】
[図:0001423892000011.jpg]
」
(7)引用文献7の記載事項
ア 令和6年7月3日付け拒絶理由通知において引用文献7として引用した実願昭58―45849号(実開昭59-152109号)のマイクロフィルム(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「第1図は、内燃機関の潤滑油供給系の系統図を示すものである。図において、1は潤滑油(以下オイルともいう)を貯留するオイルパンであり、オイルパン1とピストン2、クランクシャフトベアリング3、コンロッドベアリング4、ロッカーアームシャフ卜5、ロッカーアーム6、カムベアリング7等の摺動部8との間を連通し摺動部8に潤滑油を供給する潤滑油供給通路9が形成されてる。通路9は、オイルバン1側のメインギャラリ10とメインギャラリ10からのオイルを各摺動部8に配送すべくシリンダ本体に形成された本休オイルギャラリ11とを有している。メインギャラリ10には、オイルパン1側から、オイル中のゴミ等を濾過除去するストレーナ12と、オイルを圧送供給するポンプ13と、オイルを冷却するクーラー14と、オイル中の不純物や変質物を除去浄化するフィルタ15とが設けられている。クーラー14、フィルタ15には、それぞれ安全弁16、17が設けられている。また、ポンプ13とクーラー14との間のメインギャラリ10とオイルパン1との間には、オイル戻し通路18が形成されており、オイル戻し18には、ポンプ13から吐出されたオイル圧がその開弁圧以上のときにオイルパン1にオイルを戻してメインギャラリ10の圧力を調整するオイルリリーフバルブ19が設けられている。」(明細書5頁13行-6頁18行)
(イ)「第1図
[図:0001423892000012.jpg]
」
(8)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における「潤滑油が溜められている」は本件補正発明における「潤滑油を保持するための」に相当し、以下同様に、「潤滑油タンク3」は「潤滑油貯留体」に、「備えている」は「有」するに、「船舶用ディーゼル内燃機関」は「舶用ディーゼル内燃機関」に、「シリンダ注油装置1」は「潤滑油システム」に、「送出」は「送給」に、「回転駆動される」は「駆動される」に、「潤滑油ポンプ4」は「潤滑油ポンプ」に、「潤滑油主管2内の圧力P」は「潤滑油ポンプによってもたらされる潤滑油圧」に、「保持する」は「制限する」に、「リリーフ弁ユニット72」は「潤滑油弁」に、「不純物が取り除かれた」は「濾過された」に、「フィルタ5」は「濾過デバイス」に、「潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分」は「バイパスライン」に、「枝管7」は「給油ラインに」、「回転数」は「回転速度」に、「応じて」は「基づいて」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明の「船舶用ディーゼル内燃機関の回転数が低い時には潤滑油の圧力が低く、船舶用ディーゼル内燃機関の回転数が高い時には潤滑油の圧力が高くなるように」は本件補正発明の「前記舶用ディーゼル内燃機関の回転速度に応じた設定潤滑油圧を決定し、前記設定潤滑油圧に基づいて、前記設定潤滑油圧をもたらすために」に相当する。
(ウ)引用発明の「前記リリーフ弁ユニット72は、潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分に設けられ」ることと本件補正発明の「前記潤滑油弁は、バイパスラインに一体化され」ることとは、「前記潤滑油弁は、バイパスラインに設けられ」るという限りにおいて一致する。
(エ)引用発明の「この潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分は、潤滑油ポンプ4の下流のフィルタ5の下流で枝管7から分岐して」いることと本件補正発明の「このバイパスラインは、前記潤滑油ポンプの下流において給油ラインから分岐して」いるとは、「このバイパスラインは、前記潤滑油ポンプより下流の点において給油ラインから分岐して」いるという限りにおいて一致する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「 潤滑油を保持するための潤滑油貯留体を有する舶用ディーゼル内燃機関の潤滑油システムであって、
前記潤滑油貯留体から潤滑油を送給するために駆動される潤滑油ポンプと、
前記潤滑油ポンプによってもたらされる潤滑油圧を制限するための潤滑油弁と、
前記潤滑油弁を制御するための制御デバイスと、
前記舶用ディーゼル内燃機関に濾過された潤滑油を供給するために、前記潤滑油ポンプの下流側に導入された濾過デバイスと、
を備え、
前記潤滑油弁は、バイパスラインに設けられ、このバイパスラインは、前記潤滑油ポンプより下流の点において給油ラインから分岐しており、
前記制御デバイスが、前記舶用ディーゼル内燃機関の回転速度に基づいて、前記舶用ディーゼル内燃機関の回転速度に応じた設定潤滑油圧を決定し、前記設定潤滑油圧に基づいて、前記設定潤滑油圧をもたらすために前記潤滑油弁を作動させる潤滑油システム。」
<相違点1>
舶用ディーゼル内燃機関に関し、本件補正発明は、1200rpmまでの回転速度範囲で動作されるのに対し、引用発明は回転速度範囲が不明な点。
<相違点2>
潤滑油ポンプに関し、本件補正発明は、舶用ディーゼル内燃機関によって、該舶用ディーゼル内燃機関と連動した速度で駆動されるのに対し、引用発明は、モータ4aによって、潤滑油を一定の圧力に昇圧するよう駆動される点。
<相違点3>
潤滑油の供給に関し、本件補正発明は、舶用ディーゼル内燃機関に温度制御されかつ濾過された潤滑油を供給するために、潤滑油ポンプの下流側に導入された温度制御デバイス及び濾過デバイス、を備えるのに対し、引用発明は、船舶用ディーゼル機関に濾過された潤滑油を供給するために、潤滑油ポンプ4の下流側に導入されたフィルタ5を備えるものの、温度制御された潤滑油を供給するために、温度制御デバイスを導入されてはいない点。
<相違点4>
潤滑油弁をバイパスラインに設けることについて、本件補正発明は、潤滑油弁は、バイパスラインに一体化されているのに対し、引用発明は、リリーフ弁ユニット72は、潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分に一体化されているかどうか不明である点。
<相違点5>
バイパスラインが給油ラインから分岐する点について、本件補正発明は、潤滑油ポンプの下流であるのに対して、引用発明は、潤滑油ポンプ4の下流のフィルタ5の下流である点。
(9)判断
ア 相違点1について
引用発明は、船舶用ディーゼル内燃機関を対象とするものであるが、上記(3)引用文献2の記載事項のとおり、船舶用ディーゼル内燃機関の回転速度範囲を1200rpmまでとすることは一般的であるといえる。そして引用発明が特別な回転速度範囲での運転を対象としたものと考えるべき事情はなく、引用発明に船舶用ディーゼル内燃機関の一般的な回転速度範囲を適用する動機づけはあるといえる。よって、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることに困難性はない。
イ 相違点2について
舶用ディーゼル内燃機関の潤滑油ポンプを、舶用ディーゼル内燃機関によって、該舶用ディーゼル内燃機関と連動した速度で駆動する技術(以下「周知技術1」という。)は、上記(4)引用文献3の記載事項及び上記(5)引用文献4の記載事項に例示されるように本願優先日前から周知の技術である。
そして、引用発明も周知技術1も、船舶用の潤滑油ポンプであることから、壊れにくくメンテナンスがし易い方がよいという共通の課題を内在するとともに、舶用ディーゼル内燃機関の潤滑油ポンプという技術分野が関連していることから、引用発明において、周知技術1を適用し、潤滑油ポンプを舶用ディーゼル内燃機関によって、舶用ディーゼル内燃機関と連動した速度で駆動することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって容易に想到し得たことである。
なお、引用発明は、潤滑油ポンプ4が潤滑油を一定の圧力に昇圧して送出するものであるが、最終的にはリリーフ弁ユニット72によって船舶用ディーゼル機関の回転数に応じた所定の圧力に減圧されるものであるから、当該船舶用ディーゼル機関の回転数に応じた圧力よりも大きい圧力で送出すればよいのであって、必ずしも一定の圧力にして送出する必要はないものであり、当業者であれば周知技術1の適用に当たり当然に所定の圧力よりも大きい圧力で送出するように構成するものといえる。そして、周知技術1においても、舶用ディーゼル内燃機関と潤滑油ポンプとを接続するギア比を調整する等して潤滑油ポンプの圧力を高めることは、当業者が通常なし得ることである。
ウ 相違点3について
潤滑油供給装置において、濾過された潤滑油を供給するためのフィルタ(濾過デバイス)と共に、温度が下げられた潤滑油を供給するためのクーラー(温度を下げていることから温度制御デバイスといえる。)を、潤滑油ポンプの下流側に導入したもの(以下「周知技術2」という。)は、上記(6)引用文献5の記載事項、上記(7)引用文献6の記載事項及び上記(8)引用文献7の記載事項に例示されるように本願優先日前から周知の技術である。
そして、引用発明において、上記周知技術2を適用し、潤滑油ポンプの下流側に濾過デバイスと共に温度制御デバイスを導入することは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
エ 相違点4について
本願の発明の詳細な説明において「一体化」という用語が用いられているのは段落【0014】の「舶用ディーゼル内燃機関10の潤滑油システムは、潤滑油弁14をさらに備え、この潤滑油弁は、バイパスライン18に一体化され、このバイパスラインは、潤滑油ポンプ13の下流において給油ライン16から分岐している。潤滑油弁14を用いて、潤滑油ポンプ13によって供給された給油ライン16内の潤滑油圧を制限し得る。」という記載のみであり、「一体化」がどのような態様を意味するのかについて本願の発明の詳細な説明では具体的に何ら説明されていない。また、本願の図面も潤滑油弁14がバイパスラインに設けられていることが看取できる程度のものでしかない。
よって、本願補正発明の「一体化」とは文字どおりの「別々のものが一つになること。」(デジタル大辞泉)という意味であると認められる。そうするとリリーフ弁ユニット72が潤滑油主管2の枝管7が接続されている点より下流の部分に設けられている引用発明も「潤滑油弁は、バイパスラインに一体化されて」いるといえるものであり、相違点4は実質的な相違点ではない。
仮に「一体化」が「別々のものが一つになること。」以外のことを意味しているとしても、本願の発明の詳細な説明や図面からは「一体化」が当業者が引用発明に適用しないような特殊な事項を意味しているとは認められず、相違点4に係る本願補正発明の構成は当業者にとって容易に想到し得たことである。
オ 相違点5について
「下流」とは「川の流れていく方。かわしも。」(デジタル大辞泉)であるから、「潤滑油ポンプの下流」とは潤滑油ポンプから潤滑油が流れていく方にある部分すべてを意味すると認められる。そうするとバイパスラインが潤滑油ポンプ4の下流のフィルタ5の下流において給油ラインから分岐する引用発明も「バイパスラインは、前記潤滑油ポンプの下流において給油ラインから分岐して」いるといえるものであり、相違点5は実質的な相違点ではない。
仮に「潤滑油ポンプの下流」が、「潤滑油ポンプの下流であって温度制御デバイス及び濾過デバイスより上流」を意味するとしても、バイパスラインが潤滑油ポンプの下流であって温度制御デバイス及び濾過デバイスより上流において分岐しているもの(以下「周知技術3」という。)は、上記上記(7)引用文献6の記載事項及び上記(8)引用文献7の記載事項に例示されるように本願優先日前から周知の技術である。
そして、引用発明において、上記周知技術3を適用し、バイパスラインを潤滑油ポンプの下流であって温度制御デバイス及び濾過デバイスより上流において分岐させることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
カ 本件補正発明の効果について
全体としてみても、本願補正発明が奏する作用効果は、引用発明、引用文献2の記載事項、周知技術1及び周知技術2、又は、引用発明、引用文献2の記載事項、周知技術1、周知技術2及び周知技術3から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものではない。
(10)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2の記載事項、周知技術1及び周知技術2、又は、引用発明、引用文献2の記載事項、周知技術1、周知技術2及び周知技術3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-8に係る発明は、令和6年2月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 当審より通知した拒絶の理由
令和6年7月3日付けで当審より請求項1について通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものを含むものである。
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2の記載事項、引用文献3及び4にて例示される周知技術1並びに引用文献5-7にて例示される周知技術2に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2013-194550号公報
2.特表2007-515506号公報
3.実願昭61―51585号(実開昭62-162318号)のマイクロフィルム(周知技術1を示す文献)
4.特表2008-531903号公報(周知技術1を示す文献)
5.特開2010-209885号公報(周知技術2を示す文献)
6.特開2012-2216号公報(周知技術2を示す文献)
7.実願昭58―45849号(実開昭59-152109号)のマイクロフィルム(周知技術2を示す文献)
3 判断
本件補正発明は、上記「第2〔理由〕1」で述べたように、本願発明における「潤滑油弁(14)」について「バイパスライン(18)に一体化され、このバイパスライン(18)は、前記潤滑油ポンプ(13)の下流において給油ライン(16)から分岐して」いるという限定を付加するものであるから、本願発明の発明特定事項はすべて本件補正発明に含まれており、本願発明は本件補正発明から、上記相違点4及び5に係る本件補正発明の発明特定事項を削除したものである。
よって、本願発明は、上記「第2〔理由〕3」から相違点4及び5に係る判断を除いたものと実質的に同様の理由により、引用発明、引用文献2の記載事項、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 小括
本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明、引用文献2の記載事項、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-006347