特許拒絶査定不服審判
2025-002931
遊戯用代用貨幣の枚数計測システム
- 審判番号
- 2025-002931
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-137662
- 請求日
- 2025年02月26日
- 審決日
- 2026年01月07日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エンゼルグループ株式会社
- 【請求人代理人】加藤 真司
- 審判長/審判官
- 審判長 秋田 将行
- 審判官 藤田 年彦
- 審判官 三橋 健二
- 分類
- P18 .121-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-137662「遊戯用代用貨幣の枚数計測システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年11月14日出願公開、特開2023-164880〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,平成29年2月21日に出願した特願2017-45443号の一部を令和4年6月6日に新たな特許出願とした特願2022-91862号の一部を令和5年8月28日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 7月18日付け:拒絶理由通知書
同年10月17日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和7年 2月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 6月 3日 :上申書の提出
第2 令和7年2月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年2月26日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和7年2月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年10月17日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。A等は分説のために付した。
(1)本件補正前
「【請求項1】
遊技テーブル上で二次元方向に配置された複数のベットエリアを斜め上方から撮影して、前記複数のベットエリアに賭けられた複数のチップを含む画像を生成する一又は複数のカメラと、
学習された人工知能又はディープラーニングを用いて1つの前記画像を分析することで、プレイヤによって手前側に賭けられたチップ及び奥側に賭けられたチップの位置、種類、及び枚数を認識する学習モデルと、
撮影により、前記学習モデルを生成又は学習するための教師データを取得する装置と、
前記教師データを用いて前記学習モデルの学習を行う学習装置と、
を備え、
前記教師データには、側面に互いに異なる特定色を有する複数のチップが積み重なったスタックが映る画像が含まれる、学習システム。」
(2)本件補正後
「【請求項1】
A 遊技テーブル上で二次元方向に配置された複数のベットエリアを斜め上方から撮影して、前記複数のベットエリアに賭けられた複数のチップを含む画像を生成する一又は複数のカメラと、
B 学習された人工知能又はディープラーニングを用いて1つの前記画像を分析することで、プレイヤによって手前側に賭けられたチップ及び奥側に賭けられたチップの位置、種類、及び枚数を認識する学習モデルと、
C 撮影により、前記学習モデルを生成又は学習するための教師データを取得する装置と、
D 前記教師データを用いて前記学習モデルの学習を行う学習装置と、
を備え、
E 前記教師データには、側面に、チップの価値を示す特定色であって互いに異なる特定色を有する複数のチップが積み重なったスタックと、特定色とは異なる基準色とが映る画像が含まれており、
F 前記学習モデルは、前記特定色と前記基準色との少なくとも2色に基づいてチップの種類を認識する、学習システム。」
2 補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「特定色」について「チップの価値を示す」ものであることを付加して限定し、本件補正前の請求項1に記載された「教師データに」「含まれ」る「画像」が「映」すものについて「特定色とは異なる基準色」を付加して限定し、さらに、本件補正前の請求項1に記載された「学習モデル」について「前記学習モデルは、前記特定色と前記基準色との少なくとも2色に基づいてチップの種類を認識する」ものであることを付加して限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2)各引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願遡及日前に発行された文献である国際公開第2017/022767号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
「[0098]
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の管理システムは、遊技場におけるテーブルゲームの管理システムに関する。」
「[0112」
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の遊技テーブルを有する遊技場におけるテーブルゲームの管理システムを説明する。図6は同システムの全体の概要を示す図であって、複数の遊技テーブル4を有する遊技場におけるテーブルゲームの管理システムは、遊技テーブル4で行われるゲームの進行状態をゲーム参加人6およびディーラ5を含め複数のカメラ装置2を介して映像として記録するとともに記録されたゲームの進行状態の映像を画像分析する画像分析装置18を備えた測定装置19、さらに遊技テーブル4において各ゲームの勝敗結果を判定し表示するカード配布装置3を備える。」
[図:0001432900000001.jpg]
当審注:図6の番号「24」は、各参加人6が賭ける遊技用代用貨幣120の位置8(プレーヤか、バンカーか、ペアーに賭けた位置)([0124]参照)に相当することから、「8」の誤記と認められる。
「[0115]
次に、本検知システムに使用する遊技用代用貨幣の詳細を説明する。図8は、本検知システムに使用する遊技用代用貨幣120の正面断面図であり、複数の色の異なるプラスチックの層が積層され、少なくとも中間に着色層121を備え、この中間の着色層121の両側に白色層122もしくは薄色層(図示しないが着色層121より色の薄い層であればよい)を積層した多層構造となっている。このように着色層121を備え、この中間の着色層121の両側に白色層122もしくは薄色層(図示しないが着色層121より色の薄い層であればよい)を積層した多層構造とすることで図9Aに示すように側面に積層方向の縞模様を形成し、遊技用代用貨幣120の種類(10ポイント、20ポイント、100ポイント、1000ポイントなど)ごとに着色層121の色を変える(赤色、緑色、黄色や青色等)ことにより遊技用代用貨幣120の種類を特定できるようにしている。」
「[0123]
図12は、遊技用代用貨幣の種類の異なるものを積上げた状態を説明する斜視説明写真図である。管理制御装置14は、遊技テーブル1(当審注:「1」は「4」の誤記と認められる。)上にゲームの参加人6が置いた遊技用代用貨幣120をカメラ装置2で撮像し、置かれたエリア8別に(バンカーに賭けたか、プレーヤに賭けたか、あるいはペアー(PAIR)に賭けたか、タイ(TIE)に賭けたか)を画像分析装置18を備えた測定装置19により測定すると共に、各エリアにおいて積層された遊技用代用貨幣120の着色層121(もしくは薄色層)又は白色層122の数と色を測定装置19が(画像分析装置18により得られた情報を使い)分析計測して遊技用代用貨幣120の種類と枚数を判定する。」
[図:0001432900000002.jpg]
「[0124]
管理制御装置14は、人工知能活用型もしくはディープラーニング構造を有する制御装置であってもよい。管理制御装置14は、カメラ装置2、画像分析装置18を介して各参加人6が賭ける遊技用代用貨幣120の位置8(プレーヤか、バンカーか、ペアーに賭けた位置)、種類(遊技用代用貨幣120は色毎に異なる額の値が割り付けられている)および枚数を把握することが可能である。人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術においては、自己学習機能等を用いて、遊技用代用貨幣120の位置8(プレーヤか、バンカーか、ペアーに賭けた位置)、種類(遊技用代用貨幣は色毎に異なる額の値が割り付けられている)および枚数を把握することが可能であるため、各ゲームにおいてカード配布装置3が判定するゲームの勝敗結果に従って、各ゲームの負けた参加人6Lの賭けた遊技用代用貨幣120の回収(矢印Lに示す)および勝ったゲーム参加人6Wへの勝ち遊技用代用貨幣120への償還(支払(120W))がゲームの勝敗結果に従って適正に行われたか否かを、管理制御装置14は、画像分析装置18を介してゲームの進行状態の映像を分析することにより判定する。
[0125]
このような場合、図11に示すように(図7に示す従来遊技用代用貨幣に比べて)積層した多層構造になっており、側面に積層方向の縞模様がくっきりと形成されているので、画像分析装置18を含む測定装置19は容易に遊技用代用貨幣の種類および枚数の測定を正確に行うことが可能となる。さらに、人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術を用いれば、画像の分析、判定がより正確に可能となる。人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術は当業者ですでに既知で利用可能であるため、詳細な説明を略する。」
(イ)図面から読み取れる事項の認定
引用文献1の[0124]の記載を踏まえつつ【図6】を参照すると、次のこと(以下「認定事項1」という。)が読み取れる。
<認定事項1>
各参加人6が賭ける遊技用代用貨幣120の位置8(プレーヤか、バンカーか、ペアーに賭けた位置)が、「プレーヤからみて手前側から奥側に順に」設けられていること。
(ウ)引用発明の認定
前記(イ)において認定した事項及び前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第2の実施の形態(【図6】、【図11】及び【図12】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。a等は説明のために付した。
<引用発明>
「a 遊技テーブル4を有する遊技場におけるテーブルゲームの管理システムであって([0112])、
b 遊技テーブル4で行われるゲームの進行状態をゲーム参加人6およびディーラ5を含め複数のカメラ装置2を介して映像として記録するとともに記録されたゲームの進行状態の映像を画像分析する画像分析装置18を備え([0112])、
c 使用する遊技用代用貨幣120は、着色層121を備え、この中間の着色層121の両側に白色層122もしくは薄色層を積層した多層構造とすることで側面に積層方向の縞模様を形成し、遊技用代用貨幣120の種類(10ポイント、20ポイント、100ポイント、1000ポイントなど)ごとに着色層121の色を変える(赤色、緑色、黄色や青色等)ことにより遊技用代用貨幣120の種類を特定できるようにしてあり([0115])、
d 遊技用代用貨幣の種類の異なるものを積上げた状態の場合、管理制御装置14は、遊技テーブル1上にゲームの参加人6が置いた遊技用代用貨幣120をカメラ装置2で撮像し、置かれたエリア8別に(バンカーに賭けたか、プレーヤに賭けたか、あるいはペアー(PAIR)に賭けたか、タイ(TIE)に賭けたか)を画像分析装置18を備えた測定装置19により測定すると共に、各エリアにおいて積層された遊技用代用貨幣120の着色層121(もしくは薄色層)又は白色層122の数と色を測定装置19が(画像分析装置18により得られた情報を使い)分析計測して遊技用代用貨幣120の種類と枚数を判定するものであり([0123])、
e 管理制御装置14は、人工知能活用型もしくはディープラーニング構造を有する制御装置であり([0124])、
f 人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術においては、自己学習機能等を用いて、遊技用代用貨幣120の位置8(プレーヤからみて手前側から奥側に順に、プレーヤか、バンカーか、ペアーに賭けた位置)、種類(遊技用代用貨幣は色毎に異なる額の値が割り付けられている)および枚数を把握することが可能である([0124]、認定事項1)、管理システム。」
イ 引用文献2に記載された事項及び周知技術1の認定
(ア)引用文献2に記載された事項
原査定の理由に引用され、本願の出願遡及日前に発行された文献である国際公開2014/207991号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「[0009]
また、例えば、画像中の群衆状態を認識する場合、学習された辞書による識別器を用いた方法が考えられる。辞書は群衆状態を示す画像等の教師データで学習される。しかし、辞書の学習のために用いる教師データ(学習用データ)を大量に集める必要がある。例えば、人物の配置(人物同士の重なり方や、人物の位置の偏り方)、人物の方向、密度(単位領域当たりの人数)を、様々な状態に定め、さらに、各状態で、撮影角度、背景、照明、人物の服装や姿勢等を種々に変化させた画像を大量に集める必要がある。これらの画像を用いて機械学習を行うことで、識別器の辞書が得られる。しかし、このような教師データを大量に集める場合、教師データ収集の作業負担が大きくなる。」
(イ)周知技術1の認定
前記(ア)に示した引用文献2の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術1」という。)
<周知技術1>
「画像中のオブジェクトを認識する場合、辞書の学習のために用いる教師データ(学習用データ)を大量に集める必要があり、照明を種々に変化させた画像を大量に集める必要があること。」
ウ 引用文献3及び4に記載された事項及び周知技術2の認定
(ア)引用文献3に記載された事項
新たに引用する、本願の出願遡及日前に発行された文献である特開昭61-226621号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「[発明が解決しようとする問題点]
以上の条件から、カラーセンサを開発する場合の条件としては、非接触式で、且つ照度条件として500~1500lx程度が望ましい。非接触式ということは、物体の表面からの距離が常に変るということであり、照度は距離の二乗に反比例するので、それに対応しなければならない。
本発明は、このような問題に対処できる色受光装置を提供しようとするものである。
[問題点を解決するための手段]
上記目的を達成するため、本発明の色受光装置は、赤色波長、緑色波長及び青色波長にピークを有する受光素子と、照度校正用の受光素子を備え、上記照度校正用の受光素子に、その出力電圧を多段階の照度に分割するための信号を出力するコンパレータを接続すると共に、このコンパレータの出力信号により上記赤色、緑色及び青色の各受光素子に接続した電流-電圧変換回路の増幅率を決定するフィードバック抵抗を切換え、照度の大小に応じて上記受光素子の出力を変える増幅度選択リレー回路を設けることにより構成される。
[作 用]
照度校正用の受光素子において検出した照度に応じて、コンパレータから増幅度選択リレー回路を介して、赤色、緑色及び青色の受光素子に接続した電流-電圧変換回路のフィードバッグ抵抗を切換えるための信号が出力され、それによって上記受光素子の出力が調整される。」(2頁右上欄7行~同頁左下欄16行)
「前述の光源が一定の場合、xy色度座標の値は、各受光素子RD,GD,BDの出力をそれぞれR,G,Bとすると、
[図:0001432900000003.jpg]
となり、白色紙を色受光装置に見せた場合には、x=y=z=0.3となる。
また、(R+B+G)は、はぼ光の量Qに比例的な数であり、上記のx,y,zは光の量に対する各色成分の比率を表わすものである。そのため、光の量すなわち照度が多少変化しても、x,y,zの値はそれ程には変化しない。
しかしながら、照度が10倍程度変化すると、一般に青色波長にピークを持つ受光素子BDの感度が、他の赤や緑の受光素子に比較して悪いため、それによる誤差が発生する。すなわち、色受光装置と物体間の距離が大きくなると照度が下り、それによって長波長(赤色波長)側が強調されるようになり、全体として黒っぽくなる。逆に、それらの距離が小さくなると照度が大きくなり、短波長(青色波長)側でも十分応答可能となる。
」(2頁右下欄16行~3頁右上欄1行)
「次に、各照度における色の識別法について述べる。
色の識別を行うためには、まず、校正を行う必要がある。この校正は、各照度毎に標準光に照らされた基準色としての白色の物体をみせ、その場合の出力信号から得られる前述の(1)~(3)式(当審注:「(1)~(3)式」は3頁左上欄1~3行の3つの式と認められる。)の値が0.3になるように、各フィードバック抵抗の微調を行う。これによって、x,y色度座標におけるx,yの値を求めることができる。」(4頁左上欄13行~同頁右上欄3行)
(イ)引用文献4に記載された事項
新たに引用する、本願の出願遡及日前に発行された文献である特開平10-221036号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0095】色情報テーブル61にある色サンプル同士の色度、輝度値の差が大きく、それぞれが分離できていれば上記方法で色を識別できるが、色サンプルの中に色度、輝度値が近いものがある場合は、照明の経時変化や周囲の明るさの変化によりそれらのサンプル間での誤認識が生じる。これは、照明の変化により物体色は変化するため、被識別部の画像撮像時の照明状態がキャリブレーション時(すなわち色サンプル撮像時)の照明状態と違っていれば、このときの測定色度は、色情報テーブルの同サンプルの色度とずれが生じ、同系色の色サンプルの色度に近い値をとることがあるからである。」
「【0099】(V)色度補正処理の例
以下で説明する色度補正の一つ、または複数の組合せにより本発明では、照明の経時変化や周囲の明るさの変化が大きい環境の中でも、同系色を高精度に識別することができるのである。」
「【0106】(3)基準色の色度データを基にした色度補正処理
この色度補正処理は、一つ、または複数の基準色を、実際の部品の自動識別のときの撮像時にも撮像して、その基準色に関する色度データを得て、その基準色の色度データを用いて色度変換パラメータを補正するものである。すなわち、基準となる照明下(ここでは、色サンプル登録時の照明状態)での値が既知な基準色を、常に被識別部と同時に撮像し、その値の変化量から、被識別部撮像時の照明下での補正パラメータを算出する。そして、この補正パラメータで被識別部の色度データを、基準となる照明下での色度データに補正する。このときには、被識別部と同じ条件下で基準色を有する対象を撮像する必要があるので、その基準色を有する対象を被識別部の撮像視野に入るように配置する必要がある。」
(ウ)周知技術2の認定
前記(ア)及び(イ)に示した引用文献3及び4の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術2」という。)
<周知技術2>
「照度の変化による色識別の誤認識に対応するために、基準色を用いて色識別を行うこと。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)「A 遊技テーブル上で二次元方向に配置された複数のベットエリアを斜め上方から撮影して、前記複数のベットエリアに賭けられた複数のチップを含む画像を生成する一又は複数のカメラ」について
引用発明の「複数のカメラ装置2」(b参照)は、本件補正発明の「一又は複数のカメラ」に相当し、引用発明は「遊技テーブル4で行われるゲームの進行状態を」「映像として記録する」(b参照)ものであり、「管理制御装置14」が「遊技テーブル4上にゲームの参加人6が置いた遊技用代用貨幣120をカメラ装置2で撮像し、置かれたエリア8別に(バンカーに賭けたか、プレーヤに賭けたか、あるいはペアー(PAIR)に賭けたか、タイ(TIE)に賭けたか)を画像分析装置18を備えた測定装置19により測定する」(d参照)ことから、遊技テーブル4上で二次元方向に配置された、バンカー、プレーヤ、ペアー(PAIR)、タイ(TIE)に賭けるための位置8である複数のベットエリアを撮影して、複数のベットエリアに賭けられた複数の遊技用代用貨幣120というチップを含む画像を生成するものであることは明らかであり、引用発明は本件補正発明でいう「遊技テーブル上で二次元方向に配置された複数のベットエリアを」「撮影して、前記複数のベットエリアに賭けられた複数のチップを含む画像を生成する」構成を備えるといえる。
また、引用発明において「d 遊技用代用貨幣の種類の異なるものを積上げた状態の場合、管理制御装置14は、遊技テーブル1上にゲームの参加人6が置いた遊技用代用貨幣120をカメラ装置2で撮像し、」「各エリアにおいて積層された遊技用代用貨幣120の着色層121(もしくは薄色層)又は白色層122の数と色を測定装置19が(画像分析装置18により得られた情報を使い)分析計測して遊技用代用貨幣120の種類と枚数を判定するものであり」、「c 使用する遊技用代用貨幣120は、着色層121を備え、この中間の着色層121の両側に白色層122もしくは薄色層を積層した多層構造とすることで側面に積層方向の縞模様を形成し」ていることから、遊技用代用貨幣の種類の異なるものを積上げた状態の場合、カメラ装置2は、遊技用代用貨幣120の側面の、着色層121とその両側の白色層122もしくは薄色層からなる縞模様を撮影(撮像)するために、斜め上方から撮影するものであることは明らかであり、引用発明は本件補正発明でいう「斜め上方から撮影して」との構成を備えるといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Aに相当する構成を備える。
(イ)「B 学習された人工知能又はディープラーニングを用いて1つの前記画像を分析することで、プレイヤによって手前側に賭けられたチップ及び奥側に賭けられたチップの位置、種類、及び枚数を認識する学習モデル」について
引用発明において、「管理制御装置14は、遊技テーブル1上にゲームの参加人6が置いた遊技用代用貨幣120をカメラ装置2で撮像し」(d参照)、「e 管理制御装置14は、人工知能活用型もしくはディープラーニング構造を有する制御装置であり」、「f 人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術においては、自己学習機能等を用いて、遊技用代用貨幣120の位置8(プレーヤからみて手前側から奥側に順に、プレーヤか、バンカーか、ペアーに賭けた位置)、種類(遊技用代用貨幣は色毎に異なる額の値が割り付けられている)および枚数を把握することが可能である」ことから、学習された人工知能又はディープラーニングを用いて、カメラ装置2で撮影(撮像)した1つの画像を分析することで、各参加人6というプレイヤによって手前側及び奥側に賭けられた遊技用代用貨幣120というチップの位置、種類、及び枚数を認識する学習モデルを備えるものであることは明らかである。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Bに相当する構成を備える。
(ウ)「C 撮影により、前記学習モデルを生成又は学習するための教師データを取得する装置」について
引用発明において、「管理制御装置14は、遊技テーブル1上にゲームの参加人6が置いた遊技用代用貨幣120をカメラ装置2で撮像し」(d参照)、「e 管理制御装置14は、人工知能活用型もしくはディープラーニング構造を有する制御装置であり」、「f 人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術においては、自己学習機能等を用いて、遊技用代用貨幣120の位置8(プレーヤからみて手前側から奥側に順に、プレーヤか、バンカーか、ペアーに賭けた位置)、種類(遊技用代用貨幣は色毎に異なる額の値が割り付けられている)および枚数を把握することが可能である」ところ、人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術において、学習モデルを生成又は学習するための教師データを取得する装置を備えることは技術常識であることに鑑みれば(引用文献2の[0009]参照。)、引用発明は、カメラ装置2の撮影(撮像)により、人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術によって、学習モデルを生成又は学習するための教師データを取得する装置を備えるものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Cに相当する構成を備える。
(エ)「D 前記教師データを用いて前記学習モデルの学習を行う学習装置」について
前記(ウ)で検討したとおり、引用発明は、人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術によって、学習モデルを生成又は学習するための教師データを取得する装置を備えるものといえるところ、人工知能活用型のコンピュータもしくは制御システム、ディープラーニング(構造)技術において、教師データを用いて学習モデルの学習を行うことは技術常識であることに鑑みれば、引用発明は、教師データを用いて学習モデルの学習を行う学習装置を備えるものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Dに相当する構成を備える。
(オ)「E 前記教師データには、側面に、チップの価値を示す特定色であって互いに異なる特定色を有する複数のチップが積み重なったスタックと、特定色とは異なる基準色とが映る画像が含まれており」について
引用発明において「c 使用する遊技用代用貨幣120は、着色層121を備え、この中間の着色層121の両側に白色層122もしくは薄色層を積層した多層構造とすることで側面に積層方向の縞模様を形成し、遊技用代用貨幣120の種類(10ポイント、20ポイント、100ポイント、1000ポイントなど)ごとに着色層121の色を変える(赤色、緑色、黄色や青色等)ことにより遊技用代用貨幣120の種類を特定できるようにしてあり」「d 遊技用代用貨幣の種類の異なるものを積上げた状態の場合、管理制御装置14は、遊技テーブル1上にゲームの参加人6が置いた遊技用代用貨幣120をカメラ装置2で撮像し、」「各エリアにおいて積層された遊技用代用貨幣120の着色層121(もしくは薄色層)又は白色層122の数と色を測定装置19が(画像分析装置18により得られた情報を使い)分析計測して遊技用代用貨幣120の種類と枚数を判定するものであ」るところ、(エ)で検討したとおり、引用発明は、教師データを用いて学習モデルの学習を行うものであるから、遊技用代用貨幣の種類の異なるものを積み上げた状態の場合、教師データに、側面に、チップの価値を示す特定色(遊技用代用貨幣120の種類(10ポイント、20ポイント、100ポイント、1000ポイントなど)ごとに着色層121の色を変える(赤色、緑色、黄色や青色等))であって互いに異なる特定色を有する複数のチップが積み重なったスタックと、特定色とは異なる色(着色層121と側面に縞模様を形成する白色層122もしくは薄色層)とが映る画像が含まれることとなることは明らかである。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「E’前記教師データには、側面に、チップの価値を示す特定色であって互いに異なる特定色を有する複数のチップが積み重なったスタックと、特定色とは異なる色とが映る画像が含まれており」の点で共通するが、特定色とは異なる色について、本件補正発明は「基準色」であるのに対し、引用発明は白色層122もしくは薄色層が基準色かどうか不明な点で相違する。
(カ)「F 前記学習モデルは、前記特定色と前記基準色との少なくとも2色に基づいてチップの種類を認識する」について
引用発明において「c 使用する遊技用代用貨幣120は、着色層121を備え、この中間の着色層121の両側に白色層122もしくは薄色層を積層した多層構造とすることで側面に積層方向の縞模様を形成し、遊技用代用貨幣120の種類(10ポイント、20ポイント、100ポイント、1000ポイントなど)ごとに着色層121の色を変える(赤色、緑色、黄色や青色等)ことにより遊技用代用貨幣120の種類を特定できるようにしてあり」、引用発明は前記(イ)で検討したとおり、学習された人工知能又はディープラーニングを用いて、カメラ装置2で撮影(撮像)した1つの画像を分析することで、各参加人6というプレイヤによって手前側及び奥側に賭けられた遊技用代用貨幣120というチップの種類を認識する学習モデルを備えるものであるから、引用発明は、学習モデルが、特定色(着色層121の色)に基づいてチップ(遊技用代用貨幣120)9の種類を認識するものといえる。
したがって、本件補正発明と引用発明とは、「F’前記学習モデルは、前記特定色に基づいてチップの種類を認識する」点で共通するが、チップの種類を認識する際、本件補正発明は「基準色」にも基づくのに対し、引用発明は白色層122もしくは薄色層という特定色と異なる色にも基づくものであるかどうか不明な点で相違する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。
(ア) 一致点
「A 遊技テーブル上で二次元方向に配置された複数のベットエリアを斜め上方から撮影して、前記複数のベットエリアに賭けられた複数のチップを含む画像を生成する一又は複数のカメラと、
B 学習された人工知能又はディープラーニングを用いて1つの前記画像を分析することで、プレイヤによって手前側に賭けられたチップ及び奥側に賭けられたチップの位置、種類、及び枚数を認識する学習モデルと、
C 撮影により、前記学習モデルを生成又は学習するための教師データを取得する装置と、
D 前記教師データを用いて前記学習モデルの学習を行う学習装置と、
を備え、
E’前記教師データには、側面に、チップの価値を示す特定色であって互いに異なる特定色を有する複数のチップが積み重なったスタックと、特定色とは異なる色とが映る画像が含まれており、
F’前記学習モデルは、前記特定色に基づいてチップの種類を認識する、学習システム。」である点。
(イ) 相違点
<相違点1>(構成E)
特定色とは異なる色について、本件補正発明は「基準色」であるのに対し、引用発明は白色層122もしくは薄色層が基準色かどうか不明な点。
<相違点2>(構成F)
特定色(着色層121の色)に基づいてチップ(遊技用代用貨幣120)の種類を認識する際、本件補正発明は「基準色」にも基づくのに対し、引用発明は基準色にも基づくものであるかどうか不明な点で相違する。
(4)判断
ア 相違点1及び2について
相違点1及び2は関連するので、まとめて検討する。
画像中のオブジェクトを認識する場合、辞書の学習のために用いる教師データ(学習用データ)を大量に集める必要があり、照明を種々に変化させた画像を大量に集める必要があることは周知技術であり(周知技術1)、また、照度の変化による色識別の誤認識に対応するために、基準色を用いて色識別を行うことも周知技術(周知技術2)であることに鑑みれば、引用発明の着色層121の色に基づいて遊技用代用貨幣120の種類を認識する際に、周知技術1及び2を適用して、照度の変化による色識別の誤認識に対応するために、基準色を用いて色識別を行うことは容易に想起することができ、遊技用代用貨幣120の赤色、緑色、黄色や青色等の着色層121と側面に縞模様を形成する白色層122もしくは薄色層の色を基準色とすることは当業者が容易になし得たことである。
そして、相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において
(ア)本件補正発明における、チップの側面画像から特定色と基準色とを認識するという構成は、引用発明と異なり、例えば、種類の異なるチップが撮像された場合に、引用発明では着色層又は白色層(もしくは薄色層)のいずれか1色を認識するに過ぎず、複数の色層を認識する技術については、具体的な記載も示唆もなく、
(イ)オブジェクトの配置や照明等を種々に変化させた画像をより多くの教師データとして容易に生成することができるという効果を有する引用文献2で開示された発明(以下、「引用発明2」とします。)を引用発明に適用したとしても、積層された遊技用代用貨幣から着色層又は白色層(もしくは薄色層)のいずれか1色を認識する精度の向上に用いられるに過ぎないため、学習された人工知能又はディープラーニングを用いて撮像画像を分析することで、撮像画像中の少なくとも2色を認識する本願発明には想到せず、
(ウ)したがって、チップの着色層又は白色層(もしくは薄色層)を認識する引用発明に、教師データとして照明環境が異なる撮像画像の収集に係る作業負担を軽減するという課題を解決するための引用発明2を適用させたとしても、本件補正発明のように、撮像画像から特定色及び基準色の少なくとも2色を認識する精度を向上させる効果は得られないため、引用発明と引用発明2とを組み合わせる動機付けがない
旨主張する。
しかしながら、前記アで検討したとおり、周知技術1及び2に鑑みれば、引用発明の着色層121の色に基づいて遊技用代用貨幣120の種類を認識する際に、照度の変化による色識別の誤認識に対応するために、周知技術1及び2を適用して、基準色を用いて色識別を行うことは容易に想起することができ、遊技用代用貨幣120の赤色、緑色、黄色や青色等の着色層121と側面に縞模様を形成する白色層122もしくは薄色層の色を基準色とすることは当業者が容易になし得たことである。また、請求人が主張する本件補正発明の効果も、引用発明及び周知技術1及び2から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著な効果を認めることはできない。
また、審判請求人は、上申書において、特許請求の範囲を補正する用意がある旨言及しているが、新たな拒絶理由を通知する必要性が見当たらず、補正の機会を付与することができない。
ウ まとめ
以上検討のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 小括
前記3(4)のとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、出願遡及日前に発行された下記の引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、出願遡及日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2017/022767号
引用文献2.国際公開2014/207991号(周知技術を示す文献)
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1及び2に記載された事項並びに引用発明及び周知技術は、前記第2の3(2)ア~ウにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明から、「特定色」について「チップの価値を示す」ものであることと、「教師データに」「含まれ」る「画像」が「映」すものについて「特定色とは異なる基準色」と、「学習モデル」について「前記学習モデルは、前記特定色と前記基準色との少なくとも2色に基づいてチップの種類を認識する」ものであることの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、その構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-002931