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特許拒絶査定不服審判

2025-001024

チップ認識システム

審判番号
2025-001024
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2023-090738
請求日
2025年01月24日
審決日
2026年03月10日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エンゼルグループ株式会社
  • 【請求人代理人】加藤 真司
審判長/審判官
  • 審判長 秋田 将行
  • 審判官 山崎 仁之
  • 審判官 ▲吉▼川 康史
分類
P18 .121-WZ (A63F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2023- 90738「チップ認識システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 8月 1日出願公開、特開2023-106597〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成28年8月2日(以下「遡及日」という。)に出願した特願2016-151812(以下「原出願1」という。優先権主張:平成27年8月3日(以下「優先日」という。))、平成27年10月1日)の一部を平成30年4月12日に新たな特許出願(特願2018-76921(以下「原出願2」という。))とし、さらにその一部を令和元年11月25日に新たな特許出願(特願2019-212469(以下「原出願3」という。))とし、さらにその一部を令和4年8月3日に新たな特許出願(特願2022-124172(以下「原出願4」という。))とし、さらにその一部を令和5年6月1日に新たな特許出願(特願2023-90738)としたものである。 本願については、令和6年1月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月29日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月6日付け(送達日:同年12月17日)で、同年11月28日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされた。 本件は、この拒絶査定を不服として令和7年1月24日に請求された拒絶査定不服審判事件であって、同時に、上記補正の却下の決定について不服が申し立てられ、当審において、同年10月22日付けで上記補正の却下の決定を取り消すことを前提として、拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年12月18日に意見書及び手続補正書が提出された。 第2 令和6年12月6日付けの補正の却下の決定について 1 令和6年12月6日付けの補正の却下の決定 令和6年12月6日付けの補正の却下の決定(以下「本件却下決定」という。)は、同年11月28日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)について却下の決定を行ったものである。 2 本件却下決定の理由と当否の判断について (1) 本件却下決定の理由 原審における本件却下決定の理由は、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反し、同法第53条第1項の規定により却下するとしたものである。 (2) 合議体の判断 本件審判請求において請求人は、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであると主張している。 これに対して、合議体は本件却下決定に対する不服の申立てについて審理を行い、本件補正は当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合すると判断をした。 よって、本件却下決定を取り消す。 第3 本願発明について 1 本願の出願日について 本願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項は、原出願1~4の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内であるから、本願は、特許出願の分割の実体的要件を満たしている。 したがって、本願は、遡及日に出願したものとみなす。 2 本願発明1 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和7年12月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。なお、符号「A」等は当審で付した。符号「A」等が付された事項を以下「構成A」等という。 本願発明1 「【請求項1】 A ディーラのチップを保持するためのチップトレイと、チップがチップスタックの形態で置かれるテーブル上面とを有するゲームテーブルに用いられるチップ認識システムであって、 B 前記ゲームテーブル上に置かれた複数のチップスタックのうちのそれぞれのチップスタックを斜め上方から撮影して複数の画像を生成するカメラと、 B1 ここで、前記ゲームテーブルは、前記カメラからの距離が異なる複数の賭けエリアを備え、前記複数の賭けエリアの任意の賭けエリアにチップが置かれ得るものであり、 B2 それにより、ある1枚の画像に映っているチップスタックと別の1枚の画像に映っているチップスタックとでは前記カメラからの距離が異なり得るものであり、 B3 それにより、それらの画像内での前記チップスタックの大きさは異なり得るものであり、 C 人工知能技術又はディープラーニング技術を使用して前記複数の画像を画像分析することで前記複数の画像に現れたそれぞれのチップスタックを認識し、かつ、認識されたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定する少なくとも1つのプロセッサと、 D 前記チップトレイに保持されたチップのチップIDを読み取るチップIDリーダと、 を備え、 C1 前記少なくとも1つのプロセッサは、ディーラが置いたチップスタックを、プレーヤが置いたチップスタックと区別して、 C2 前記ディーラが置いたチップスタックと前記プレーヤが置いたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定する、 A チップ認識システム。」 2 当審拒絶理由 当審拒絶理由は、本件却下決定を取り消すことを前提として通知しているところ、概略、次のとおりである。 (進歩性)この出願の請求項1~12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された次の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2015/107902号(国際公開日:平成27年7月23日) 2.国際公開第2013/177286号(国際公開日:平成25年11月28日) 3 各引用文献に記載された事項等 (1) 引用文献1に記載された発明 ア 引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様。)。なお、引用文献1は外国語(英語)でされた国際特許出願の国際公開であるところ、以下の摘記では、日本語訳として、当該国際公開に対応する公表特許公報(特表2017-505661)の対応する記載事項を採用し、引用文献1の英文に続けて、括弧書きにて付した。 (ア) 記載事項 a 「[0001] The present invention relates to a table game monitoring system for a table game using playing cards from a shoe having multiple decks that have been shuffled together prior to the beginning of play in which bettors make wagers on betting areas of a game table in front of the bettors. This table game monitoring system monitors whether or not wagers of winning bettor(s) move to appropriate area of the winner(s). ・・・ [0005] The present invention provides a real-time monitoring of the table game and enables the casino to stop an ongoing game immediately when something unexpected happens by administrating the whole game from the start to the end of the game. [0006] The present invention has been made in view of the above problem, and aims to provide a table game monitoring system with which it is possible to allow a casino to stop an ongoing game immediately when something unexpected happens by administrating the whole game from the start to the end of the game and during payoffs. Solution to Problem [0007] To solve the above conventional problems, the present invention provides the card game monitoring system having: a game table on which bettors make wagers on betting areas, a card shooter apparatus that is put on the game table and has a card reading unit that reads the number (rank) of the card and having a control unit to determine a winning hand according to a table game rules based on information of numbers of the cards sequentially read by the card reading unit and a monitor video camera system to capture positions of the card delivered from the card shooter apparatus to bettors and identify wagers on each betting area at the game table, the control unit has a processing function using the information of the monitor video camera system to determine: 1) head-count of the bettors playing each game by identifying the wagers on each betting area or cards delivered to bettors, 2) whether or not each bettor gets more than two cards from the card shooter apparatus, 3) each hand of the bettors and the dealer according to the information read by the card shooter apparatus using the information of head-count of the bettors according to the game rule, and 4) the winner(s) having the winning hand(s) in the game according to the game rule based on the information of the each hand of the bettors and the dealer, wherein the monitor video camera system further reads movements of wagers on the game table, and the control unit having further processing function to check whether wagers with payoffs move to the winner of the bettor determined by the card shooter apparatus at the end of each game. (【0001】 本発明は、賭けている人が賭けている人の正面のゲームテーブルの賭け領域上で賭けをする、プレイの開始に先立って一緒にシャッフルされた複数のデッキを有するシューターのトランプを用いるテーブルゲーム用のテーブルゲーム監視システムに関する。このテーブルゲーム監視システムは、勝者となった賭けている人の賭け金が、勝者の適切な領域に移動するかどうかを監視する。 ・・・ 【0004】 本発明は、テーブルゲームのリアルタイムでの監視を提供し、ゲームの開始から終了までゲーム全体を管理することによって、予想外の何かが起こったとき、進行中のゲームをカジノが直ちに中止することを可能にする。 【0005】 本発明は、上記の問題を考慮してなされ、ゲームの開始から終了までおよび払い戻しの間ゲーム全体を管理することによって、予想外の何かが起こったとき、進行中のゲームをカジノが直ちに中止できるようにすることが可能なテーブルゲーム監視システムの提供を目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記の従来の問題を解決するために、本発明は、賭けている人が賭け領域で賭けをするゲームテーブルと、ゲームテーブル上に置かれ、カードの数(ランク)を読み取るカード読取部を有し、カード読取部が順次読み取ったカードの数の情報に基づいて、テーブルゲームのルールに従い、勝ち手を判定する制御部を有するカードシュータ装置と、カードシュータ装置から賭けている人に配られたカードの位置を撮り、ゲームテーブルの各賭け領域上の賭け金を識別する監視ビデオカメラシステムとを有するカードゲーム監視システムであって、制御部は、監視ビデオカメラシステムの情報を用いて、1)各賭け領域上の賭け金または賭けている人に配られたカードを識別することによって、各ゲームをプレイする賭けている人の頭数と、2)各賭けている人が、カードシュータ装置から2枚より多いカードをもらうかどうかと、3)ゲームのルールに従い、賭けている人の頭数の情報を用いて、カードシュータ装置が読み取った情報に従って賭けている人およびディーラの各手札と、4)賭けている人およびディーラの各手札の情報に基づいて、ゲームのルールに従い、ゲームの勝ち手を有する勝者とを判定する処理機能を有し、監視ビデオカメラシステムはさらに、ゲームテーブル上の賭け金の移動を読み取り、制御部は、各ゲームの終了時、ペイオフと共に賭け金が、カードシュータ装置が判定する賭けている人のうちの勝者のところに移動するかどうかを確認する処理機能をさらに有するカードゲーム監視システムを提供する。)」 b 「[0010] Embodiment 1 of the present invention will be described with reference to the attached drawings. Embodiment 1 of the present invention provides a card game monitoring system for playing Black Jack. In Fig. 1, the card game monitoring system has: a game table 1 on which bettors 2 make wagers by putting wagers 3 on betting areas 4; a card shooter apparatus that is put on the game table 1 and has a card reading unit that reads the number (rank) and suit of the cards 6 and having a control unit 7 to determine a winning hand according to a table game rule based on information of numbers (ranks) of the cards sequentially read by the card reading unit 5. (【0009】 本発明の実施形態1は、添付の図面を参照して記載する。本発明の実施形態1は、ブラックジャックをプレイするためのカードゲーム監視システムを提供する。図1で、カードゲーム監視システムは、賭けている人2が賭け領域4に賭け金3を置くことによって賭けをするゲームテーブル1と、ゲームテーブル1上に置かれ、カード6の数(ランク)およびマークを読み取るカード読取部を有し、カード読取部5が順次読み取ったカードの数(ランク)の情報に基づいて、テーブルゲームのルールに従い、勝ち手を判定する制御部7を有するカードシュータ装置とを有する。)」 c 「[0011] A monitor video camera system 8 which has several cameras 9 is set above each game table 1 to capture the positions of cards 6 delivered from the card shooter apparatus 5 to bettors 2. The monitor video camera system 8 identifies wagers 3 on each betting area 4 at the game table 1, the control unit 10 has a processing function using the information of the monitor video cameras 9 to determine the following: 1) head-count of the bettors playing on each game by identifying the positions of wagers on each betting area or cards delivered to each bettor 2 (three persons (heads) shown in fig.1) , 2) number of cards delivered for each bettor 2 by dealer 11 from the card shooter apparatus 5 (whether or not each bettor 2 gets more than two cards). (【0010】 いくつかのカメラ9を有する監視ビデオカメラシステム8は、各ゲームテーブル1の上部に取り付けられて、カードシュータ装置5から賭けている人2に配られたカード6の位置を撮る。監視ビデオカメラシステム8は、ゲームテーブル1の各賭け領域4上の賭け金3を識別し、制御部10は、監視ビデオカメラ9の情報を用いて、1)各賭け領域上の賭け金または各賭けている人2に配られたカードの位置を識別することによって、各ゲームをプレイする賭けている人の頭数(図1に示すのは3人(頭))と、2)ディーラ11が各賭けている人2にカードシュータ装置5から配ったカードの数(各賭けている人2が2枚以上のカードをもらうかどうか)とを判定する処理機能を有する。)」 d 「[0013] Wherein the card shooter apparatus 5 knows directions of each card (who gets each card read by the card shooter apparatus 5 through the monitor video camera system 8) and then the card shooter apparatus 5 (the control unit 7) will figure out by its programs the hands held by the bettors 2 and the dealer 11. The control unit 10 has further a processing function to check whether wagers 3 with payoffs 3W move to a pool 12 of the winner 2W of the bettors 2 determined by the card shooter apparatus 5 at the end of each game (the movement M for the winners and L for loser in fig.1). (【0012】 カードシュータ装置5は、各カードの方向性(監視ビデオカメラシステム8を通じて、カードシュータ装置5が読み取った各カードを誰がもらうか)を知っており、カードシュータ装置5(制御部7)は、自らのプログラムにより、賭けている人2およびディーラ11が持つ手札を把握することになる。制御部10は、各ゲームの終了時、ペイオフ3Wと共に賭け金3が、カードシュータ装置5が判定した賭けている人2のうち勝者2Wのプール12に移動するかどうかを確認する処理機能をさらに有する(図1で、勝者の場合はM、敗者の場合はLの移動)。)」 e 「[0015] The monitor video camera system 8 (the control unit 10 ) has further processing function that identifies total amounts of wagers3 by counting chips on each betting area 4 of the bettors 2. Each total amount of wagers 3 are calculated by analyzing pictures from the monitor video cameras 9 of its colors and its height of chips on each betting areas 4. Special video cameras 9s for this purpose may be put around the game table 1 to take side views of the chips of wagers 3. (【0014】 監視ビデオカメラシステム8(制御部10)は、さらに、賭けている人2の各賭け領域4上のチップを数えることにより、賭け金3の総額を識別する処理機能を有する。賭け金3の各総額は、各賭け領域4上のチップの色および高さについて監視ビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算される。この目的のための特別なビデオカメラ9sは、ゲームテーブル1の周りに置かれて、賭け金3のチップの側面からの図をとりうる。)」 f 「[0021] In both examples of Embodiment 1 and 2 the monitor video camera system 8 and 28 can identify positions of wagers 3, the total amount of wagers 3 of its colors and its height of chips on each betting areas 4 and 24 by analyzing pictures taken by the video cameras 9, 9s, 29 and 29s using CCD and through known technology of vision analysis. The monitor video camera system 8 and 28 can also identify positions of cards 3 and analyze the faces of cards showing in betting. (【0020】 実施形態1および実施形態2の両方の例で、監視ビデオカメラシステム8および監視ビデオカメラシステム28は、CCDを用い、視覚解析の既知の技術を通じて、ビデオカメラ9、ビデオカメラ9s、ビデオカメラ29、およびビデオカメラ29sがとったピクチャを解析することによって、賭け金3の位置、および、各賭け領域4および賭け領域24上のチップの色および高さについて賭け金3の総額を識別することができる。監視ビデオカメラシステム8および監視ビデオカメラシステム28はまた、カード3の位置を識別し、賭けの際に示すカードの表側を解析することもできる。)」 g 「[Fig.1] [図:0001434933000001.jpg] 」 (イ) 認定事項 a 上記(ア)gに摘記したFig.1の図中、符号11は「dealer 11」(ディーラ11)を表し、符号1は「game table 1」(ゲームテーブル1)を表し、Fig.1から、「dealer 11」(ディーラ11)の前方の「game table 1」(ゲームテーブル1)上に、複数の矩形の領域が設けられていることが看取される。 b また、Fig.1の図中、符号2は「bettors 2」(賭けている人2)を表し、符号3は「wagers 3」(賭け金3)を表し、符号4は「betting areas 4」(賭け領域4)を表し、また、上記(ア)eに摘記した「processing function that identifies total amounts of wagers 3 by counting chips on each betting area 4 of the bettors 2」(賭けている人2の各賭け領域4上のチップを数えることにより、賭け金3の総額を識別する処理機能)という記載、「Each total amount of wagers 3 are calculated by analyzing pictures from the monitor video cameras 9 of its colors and its height of chips on each betting areas 4.」(賭け金3の各総額は、各賭け領域4上のチップの色および高さについて監視ビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算される。)という記載、及び、「the chips of wagers 3」(賭け金3のチップ)という記載から、引用文献1に記載された、賭け金3とは、賭け金3のチップを表し、賭け金3の総額は、賭け金3のチップの色及び数に基づき計算されるものであるといえる(認定事項ア)。 c 上記(ア)dに摘記した、「The control unit 10 has further a processing function to check whether wagers 3 with payoffs 3W move to a pool 12 of the winner 2W of the bettors 2 determined by the card shooter apparatus 5 at the end of each game (the movement M for the winners and L for loser in fig.1).」(「制御部10は、各ゲームの終了時、ペイオフ3Wと共に賭け金3が、カードシュータ装置5が判定した賭けている人2のうち勝者2Wのプール12に移動するかどうかを確認する処理機能をさらに有する(図1で、勝者の場合はM、敗者の場合はLの移動)。」(【0012】)という記載に照らせば、Fig.1における矢印は、「賭け金3」すなわち「賭け金3のチップ」が移動する向き表しているといえる。 そうすると、Fig.1で看取された、上記aの「dealer 11」(ディーラ11)の前方の「game table 1」(ゲームテーブル1)上に設けられている「複数の矩形の領域」は、ディーラ11が、賭けている人2のうち敗者から移動してきた「賭け金3のチップ」を回収して、賭けている人2のうち勝者2Wの賭け領域4上を経由して、賭けている人2のうち勝者2Wに移動させるために保管する領域であるといえるから、引用文献1には、ディーラ11の前方のゲームテーブル1上に、ディーラ11が、賭け金3のチップを保管する領域を設けることが記載されていると認められる(認定事項イ)。 d 上記(ア)dに摘記した「The control unit 10 has further a processing function to check whether wagers 3 with payoffs 3W move to a pool 12 of the winner 2W of the bettors 2 determined by the card shooter apparatus 5 at the end of each game (the movement M for the winners and L for loser in fig.1).(制御部10は、各ゲームの終了時、ペイオフ3Wと共に賭け金3が、カードシュータ装置5が判定した賭けている人2のうち勝者2Wのプール12に移動するかどうかを確認する処理機能をさらに有する(図1で、勝者の場合はM、敗者の場合はLの移動)。)」(【0012】)という記載によれば、引用文献1に記載された「監視ビデオカメラシステム8」は、各ゲームの終了時、ペイオフ3Wと共に賭け金3のチップが、カードシュータ装置5が判定した賭けている人2のうち勝者2Wのプール12に移動するかどうかを確認する処理機能を有しているといえる。 そして、上記cで検討したとおり、ディーラ11が、賭けている人2のうち敗者から移動してきた「賭け金3のチップ」を回収して、賭けている人2のうち勝者2Wの賭け領域4上を経由して、賭けている人2のうち勝者2Wに移動させる動作を行うから、引用文献1には、チップについて、ゲームテーブル1上で、賭けている人2が、賭けをするために賭け領域4に置いた賭け金3のチップと、ディーラ11が、賭けている人2のうち勝者2Wの賭け領域4上を経由して、賭けている人2のうち勝者2Wに移動させたペイオフ3Wのチップ及び賭け金3のチップとは、移動の有無とともに別個に確認していることが記載されているといえる(認定事項ウ)。 イ 引用発明 上記ア(ア)の記載事項、及び、上記ア(イ)a~cの認定事項ア、イによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる(括弧書きで付した段落番号は、便宜上、公表特許公報のものを付した。以下同様。)。 引用発明 「カードゲーム監視システムは、賭けている人2が賭け領域4に賭け金3を置くことによって賭けをするゲームテーブル1を有し(【0009】)、各ゲームテーブル1の上部に取り付けられた、いくつかのカメラ9を有する監視ビデオカメラシステム8は、ゲームテーブル1の各賭け領域4上の賭け金3を識別し、制御部10は、監視ビデオカメラ9の情報を用いて、各賭け領域上の賭け金の位置を識別し(【0010】)、 監視ビデオカメラシステム8の制御部10は、さらに、賭けている人2の各賭け領域4上のチップを数えることにより、賭け金3の総額を識別する処理機能を有し、賭け金3の各総額は、各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算され、この目的のための特別なビデオカメラ9sは、ゲームテーブル1の周りに置かれて、賭け金3のチップの側面からの図をとりうるものであり(【0014】)、 監視ビデオカメラシステム8は、CCDを用い、視覚解析の既知の技術を通じて、ビデオカメラ9、ビデオカメラ9sがとったピクチャを解析することによって、賭け金3の位置、および、各賭け領域4上のチップの色および高さについて賭け金3の総額を識別することができ(【0020】)、 賭け金3とは、賭け金3のチップを表し、賭け金3の総額は、賭け金3のチップの色及び数に基づき計算されるものであり(認定事項ア)、 ディーラ11の前方のゲームテーブル1上に、ディーラ11が、賭け金3のチップを保管する領域を設けた(認定事項イ) カードゲーム監視システム(【0009】)。」 ウ 引用文献1の記載事項2 上記ア(ア)の記載事項、及び、上記ア(イ)dの認定事項ウによれば、引用文献1には、次の事項(以下「引用文献1の記載事項2」という。)が記載されているといえる。 引用文献1の記載事項2 「カードゲーム監視システム(【0009】)において、チップについて、ゲームテーブル1上で、賭けている人2が、賭けをするために賭け領域4に置いた賭け金3のチップと、ディーラ11が、賭けている人2のうち勝者2Wの賭け領域4上を経由して、賭けている人2のうち勝者2Wに移動させたペイオフ3Wのチップ及び賭け金3のチップとは、移動の有無とともに別個に確認している(認定事項ウ)こと。」 (2) 引用文献2に記載の技術 ア 引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、引用文献2も、引用文献1と同様、以下の摘記では、日本語訳として、国際公開に対応する公表特許公報(特表2015-525391)の対応する記載事項を採用し、括弧書きにて付した。 a 「[0011] As used herein, the expression "gaming currency" refers to any chip, plaque, or jeton that may be used in a casino or gaming room, and that represents a value that is predetermined or not. Gaming currency is typically made of a rigid plastic material or clay to obtain a structure that is solid enough to resist conditions of use in casinos, which are often very tough. Gaming currency, also referenced herein as "chips" may be used throughout a casino. ・・・ (【0010】 本明細書において使用される場合、「ゲーム用通貨」という表現は、カジノ又はゲーム用ルームにおいて使用され、所定の価値又特定されない価値を表現する、任意のチップ、プラーク(plaque)、又はジェトン(jeton)を指す。ゲーム用通貨は、典型的に、カジノでの往々して乱暴な使用状況に耐える得るような堅固な構造を得るために、硬質プラスチック材料又は粘土で作られる。本明細書では「チップ」とも呼ばれるゲーム用通貨は、カジノ全体を通して使用される。・・・)」 b 「[0013] RFID enabled gaming tables generally include one or more areas of the table in which antennas for communicating with RFID gaming currency are applied, embedded or otherwise installed and include one or more readers (either as part of the table or part of the control system 25) for reading identification and value information from gaming currency placed within the areas covered by the antennas. As shown in FIG. 1, in order to simplify the drawings, gaming table 10 only depicts a single RFID antenna and reader 30 covering an area of the layout of the gaming table 10, but multiple antennas could be installed throughout the gaming table 10. (【0012】 RFIDを使用可能なゲーム用テーブルは一般的に、RFIDゲーム用通貨と通信するためのアンテナが、適用され、埋め込まれ、又はそうでなければ設置された、テーブルの1若しくはそれ以上のエリアを含み、アンテナによってカバーされたエリア内に載置されたゲーム用通貨から識別情報及び価値情報を読み込むための(テーブルの一部又は制御システム25の一部のいずれかとしての)1若しくはそれ以上の読込部を含む。図1に示すごとく、図面を単純化するために、ゲーム用テーブル10は、ゲーム用テーブル10のレイアウトのエリアをカバーする単一のRFIDアンテナ及び読込部30のみを示しているが、複数のアンテナがゲーム用テーブル10全体に設置され得る。)」 c 「[0018] Gaming table 10 is provided with a chip tray 20 and RFID antenna and reader 30. Using an RFID chip tray or float reader, a casino property may automate and perfect chip counting procedures, enabling staff and pit supervisors to focus on other tasks. The present disclosure offers the following options for both low and high frequency chips: Single Level Chip Tray, Dual Level Chip Tray and Roulette Float Reader. Each RFID-enabled casino chip, plaque or jeton has a unique tag that is encoded with its monetary value, it can be instantly identified and validated when it comes in contact with an RFID reader. This makes RFID currency an ideal way to improve the accuracy of chip counting and cage inventory procedures while also providing a casino property with a level of currency security that is practically impossible to breach. Chip recycler 45 can also identify and validate chips, which combined with the RFID enabled gaming table 10, adds a further layer of security and checks and balances within the casino. (【0018】 ゲーム用テーブル10には、チップトレイ20とRFIDアンテナ及び読込部30とが提供される。RFIDチップトレイ又はフロート読込部を使用すると、カジノ施設は、スタッフ及びピットのスーパーバイザーが他のタスクに集中することを可能にしながら、チップ計数手順をオートメーション化及び改良することができる。本開示は、低周波チップと高周波チップの両方のために以下の選択肢、すなわち、シングルレベルチップトレイ、デュアルレベルチップトレイ、及びルーレットフロート読込部、を提供する。RFIDを使用可能な各々のカジノチップ、プラーク、又はジェトンは、その金銭価値によってコード化された一意のタグを有し、同タグがRFID読込部と接触すると、同タグが即座に識別及び検証され得る。これはRFID通貨を、チップ計数及びケージ在庫手順の精度を改善すると同時に、現実的に突破が不可能な通貨セキュリティのレベルをカジノ施設に提供する、理想的な態様にする。チップ再利用部45はまた、チップを識別及び検証し得、それは、RFIDを使用可能なゲーム用テーブル10と組み合わせられて、カジノ内のセキュリティ及び抑制と均衡のさらなるレイヤを追加する。)」 d 「[0026] The bill validator 40 authenticates and counts the accepted notes, and rejects any questionable items, as shown in step 110. The amount of the bank notes is displayed by the bill validator 40 or a separate display 35, and the player accepts or rejects the displayed amount in step 115. At step 120, the bill validator 40 provides the total amount/cash breakdown to the IS 50. Continuing with step 125, the proper chip amount is then placed on the RFID reader 30 by the dealer or automatically dispensed by the chip recycler 45. If chips are recycled manually, the dealer would remove the proper amount of corresponding RFID enabled chips from the chip tray 20, which also may include an RFID reader/antenna and place them on the table authentication/validation antenna and reader 30. As the second step in the buy-in process, the components responsible for tracking all chip-based transactions during the table open period, such as the RFID chip trays20, antenna and reader 30 and chip recycler 45, may automate and track chip tray inventory. In one embodiment, the total money management system's primary responsibilities include: balancing cash buy-in and chip-out transactions, tracking all other chip purchase transactions, and communicating with IS 50 to provide ongoing transaction data and balances which would provide operations with real time floor figures. (【0027】 紙幣検証部40は、ステップ110に示されているように、承諾された紙幣を認証及び計数し、任意の疑わしいアイテムを拒絶する。ステップ115において、銀行紙幣の額が、紙幣検証部40又は別個のディスプレイ35によって表示され、プレイヤーが、表示された額を承諾又は拒絶する。ステップ120で、紙幣検証部40は、IS50に合計額/現金内訳を提供する。ステップ125へと続き、正確なチップ額が続いてディーラーによってRFID読込部30上に載置されるか又はチップ再利用部45によって自動で供給される。チップが手動で再利用される場合、ディーラーは、RFID読込部/アンテナをも含み得るチップトレイ20から、対応するRFID使用可能チップの正確な額を取り出し、それらをテーブル認証/検証アンテナ及び読込部30の上に載置するだろう。バイイン処理の第2のステップとして、テーブルが開いている期間中にチップベースのすべての取引を追跡する責任を負う構成要素、例えば、RFIDチップトレイ20、アンテナ及び読込部30、及びチップ再利用部45が、チップトレイ在庫をオートメーション化し、追跡し得る。一実施形態において、総合金銭管理システムの主な責任は、キャッシュバイイン及びチップアウト取引を差引勘定することと、すべての他のチップ購入取引を追跡することと、リアルタイムのフロアの数字を伴う動作を提供するであろう進行中取引のデータ及び残高を提供するためにIS50と通信することと、を含む。)」 イ 引用文献2に記載の技術 上記アによれば、引用文献2には、次の技術(以下「引用文献2に記載の技術」という。)が記載されているといえる(括弧書きで付した段落番号は、便宜上、公表特許公報のものを付した。)。また、認定に際し、「ゲーム用通貨」、「RFIDゲーム用通貨」、「チップ」、「RFID使用可能チップ」は同義であるといえるので、「ゲーム用通貨であるRFID使用可能チップ」という用語を用いた。 引用文献2に記載の技術 「ゲーム用通貨であるRFID使用可能チップはカジノで使用され(【0010】)、ゲーム用通貨であるRFID使用可能チップが手動で再利用される場合、ディーラーは、RFID読込部/アンテナをも含み得るチップトレイ20から、対応するゲーム用通貨であるRFID使用可能チップの正確な額を取り出す(【0027】)技術。」 3 対比 分説にしたがい、本願発明1と引用発明を対比する。 (1) 構成Aについて 引用発明の「ディーラ11」、「賭け金3のチップ」はそれぞれ、本願発明1の「ディーラ」、「チップ」に相当し、引用発明の「ゲームテーブル1上」に設けられた「ディーラ11が、賭け金3のチップを保管する領域」と「ディーラのチップを保持するためのチップトレイ」とは、「ディーラのチップを保持するための領域」であるという点で共通する。 また、引用発明の「賭けている人2が賭け領域4に」置いた「賭け金3」である「賭け金3のチップ」は、本願発明1の「チップスタック」に相当し、引用発明の「ゲームテーブル1」は、本願発明1の「テーブル上面」「を有するゲームテーブル」に相当し、引用発明の「賭け金3の位置、および、各賭け領域4上のチップの色および高さについて賭け金3の総額を識別することができ」る「監視ビデオカメラシステム8」を備える「カードゲーム監視システム」は、本願発明1の「チップ認識システム」に相当する。 そうすると、引用発明と本願発明1の構成Aとは、「ディーラのチップを保持するための領域と、チップがチップスタックの形態で置かれるテーブル上面とを有するゲームテーブルに用いられるチップ認識システムであ」るという点で共通する。 (2) 構成Bについて 引用発明の「ゲームテーブル1の各賭け領域4上の賭け金3」は、「賭け領域4」が複数存在することが明らかであるから、本願発明1の「前記ゲームテーブル上に置かれた複数のチップスタック」に相当する。 そして、引用発明における「チップ」の画像について、「各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャ」及び「ビデオカメラ9s」が「とりうる」「賭け金3のチップの側面からの図」は、本願発明1の「複数の画像」に相当し、引用発明の「監視ビデオカメラシステム8」の「ビデオカメラ9」及び「ビデオカメラ9s」のいずれも、本願発明1の「カメラ」に相当する。 また、引用発明の「監視ビデオカメラシステム8」が有する「いくつかのカメラ9」が、「各ゲームテーブル1の上部に取り付けられて」いること、及び「ビデオカメラ9、ビデオカメラ9sがとったピクチャを解析することによって、」「ゲームテーブル1の各賭け領域4上」に置かれた「賭け金3の位置」と「チップの色および高さについて賭け金3の総額を識別する」ことを併せみると、「ビデオカメラ9、ビデオカメラ9s」のいずれも、「ゲームテーブル1」の上方に位置していることは明らかであるので、引用発明は、「賭け金3のチップ」(本願発明1の「チップスタック」に相当。)について、「斜め上方から撮影して」いる構成に相当する構成を備えていることは明らかである。 してみれば、引用発明は、本願発明1の構成Bに相当する構成を備えるといえる。 (3) 構成B1~B3について 上記(2)の検討を踏まえ、引用発明の「監視ビデオカメラシステム8」が有する「ビデオカメラ9、ビデオカメラ9s」のいずれも、「ゲームテーブル1」の上方に位置していて、それら「ビデオカメラ9、ビデオカメラ9s」と、「ゲームテーブル1の各賭け領域4」との距離、及び、「各賭け領域4」に置かれた「賭け金3のチップ」との距離が、それぞれの「賭け領域4」毎に異なっている場合が生じ得ることは当然であって、このことは、引用文献1のFig.1に照らしても明らかである。 そして、「ビデオカメラ9、ビデオカメラ9s」と、「ゲームテーブル1の各賭け領域4」に置かれた「賭け金3のチップ」との距離が、それぞれの「賭け領域4」毎に異なっていれば、「ビデオカメラ9、ビデオカメラ9sがとったピクチャ」における、それぞれの「賭け領域4」毎の「賭け金3のチップ」の大きさが異なっている場合があることも自明である。 そうすると、引用発明は、本願発明1の構成B1~B3に相当する構成を備えるといえる。 (4) 構成Cについて 上記(2)より、引用発明における「チップ」の画像について、「各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャ」及び「ビデオカメラ9s」が「とりうる」「賭け金3のチップの側面からの図」が、本願発明1の「複数の画像」に相当することを踏まえると、引用発明の「賭けている人2の各賭け領域4上のチップを数えることにより、賭け金3の総額を識別する処理機能を有し」、「賭け金3の各総額は、各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算され」ることは、本願発明1の「前記複数の画像を画像分析することで前記複数の画像に現れたそれぞれのチップスタックを認識し、かつ、認識されたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定する」ことに相当する。 また、引用発明の「賭け金3の総額を識別する処理機能を有」する「監視ビデオカメラシステム8の制御部10」は、コンピュータを備えることが明らかであるから、プロセッサを備えているといえる。 そうすると、引用発明と本願発明1の構成Cとは、「前記複数の画像を画像分析することで前記複数の画像に現れたそれぞれのチップスタックを認識し、かつ、認識されたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定する少なくとも1つのプロセッサ」を備える点で共通する。 (5) 構成C2について 上記(4)の検討より、引用発明が、「賭けている人2の各賭け領域4上のチップを数えることにより、賭け金3の総額を識別する処理機能を有し」、「賭け金3の各総額は、各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算され」ることは、本願発明1の構成C2の「前記プレーヤが置いたチップスタックの」「チップの数を決定する」ことに相当する。 そうすると、引用発明と本願発明1の構成C2とは、「前記プレーヤが置いたチップスタックの」「チップの数を決定する」という点で共通する。 (6) 一致点及び相違点 上記(1)~(5)によれば、引用発明と本願発明1とは、 [一致点] 「A’ ディーラのチップを保持するための領域と、チップがチップスタックの形態で置かれるテーブル上面とを有するゲームテーブルに用いられるチップ認識システムであって、 B 前記ゲームテーブル上に置かれた複数のチップスタックのうちのそれぞれのチップスタックを斜め上方から撮影して複数の画像を生成するカメラと、 B1 ここで、前記ゲームテーブルは、前記カメラからの距離が異なる複数の賭けエリアを備え、前記複数の賭けエリアの任意の賭けエリアにチップが置かれ得るものであり、 B2 それにより、ある1枚の画像に映っているチップスタックと別の1枚の画像に映っているチップスタックとでは前記カメラからの距離が異なり得るものであり、 B3 それにより、それらの画像内での前記チップスタックの大きさは異なり得るものであり、 C’ 前記複数の画像を画像分析することで前記複数の画像に現れたそれぞれのチップスタックを認識し、かつ、認識されたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定する少なくとも1つのプロセッサと、 を備え、 C2’ 前記プレーヤが置いたチップスタックのチップの数を決定する、 A チップ認識システム。 である点で一致し、以下の相違点で相違する。 [相違点] ・相違点1(構成A) ディーラのチップを保持するための領域について、本願発明1では、「チップトレイ」を有するのに対し、引用発明は、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 ・相違点2(構成C) プロセッサが、複数の画像を画像分析することで複数の画像に現れたそれぞれのチップスタックを認識し、かつ、認識されたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定するために、本願発明1では、「人工知能技術又はディープラーニング技術を使用して」いるのに対し、引用発明で用いる、「視覚解析の既知の技術」が、人工知能技術又はディープラーニング技術であるのかどうか不明である点。 ・相違点3(構成D) 本願発明1は、「前記チップトレイに保持されたチップのチップIDを読み取るチップIDリーダ」を備えているのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 ・相違点4(構成C1) 本願発明1は、「前記少なくとも1つのプロセッサは、ディーラが置いたチップスタックを、プレーヤが置いたチップスタックと区別して」いるのに対し、引用発明はそのような構成を備えているかどうか不明である点。 ・相違点5(構成C2) チップの数を決定する対象について、本願発明1は、プレーヤが置いたチップスタックのみならず、「前記ディーラが置いたチップスタック」のチップの数を決定するのに対し、引用発明はそのような構成を備えているかどうか不明である点。 4 判断 上記相違点について検討する。 (1) 相違点1、3について 相違点1及び相違点3は、チップトレイに関する点で関連しているのでまとめて検討する。 引用文献2に記載の技術の「RFID読込部/アンテナをも含み得るチップトレイ20」、「ゲーム用通貨であるRFID使用可能チップ」はそれぞれ、本願発明1の「チップトレイ」及び「チップIDを読み取るチップIDリーダ」、「チップID」が紐付けられた「チップ」に相当する。また、引用文献2に記載の技術の「チップトレイ20から、対応するゲーム用通貨であるRFID使用可能チップの正確な額を取り出す」ことは、「チップトレイ20」にある「ゲーム用通貨であるRFID使用可能チップ」について、その「正確な額を取り出す」ことを表しているから、当該「チップトレイ20」にある「ゲーム用通貨であるRFID使用可能チップ」は、本願発明1の「チップトレイに保持されたチップ」に相当するといえる。 そうすると、引用文献2には、上記相違点1及び相違点3に係る本願発明1の構成が開示されている。 そして、引用発明の「監視ビデオカメラシステム8」は、引用文献1のFig.1に照らせば、「ディーラ11が、賭け金3のチップを保管する領域」も「ビデオカメラ9」からピクチャをえる対象としていることから、当該領域を監視の対象としているといえ、引用発明と引用文献2に記載の技術は、いわゆるカジノにおいて、ゲーム用テーブル上を移動させるチップの総額を管理するという点で機能が共通するから、引用発明のディーラのチップを保持するための領域を監視するために、引用文献2に記載の技術を適用することにより、上記相違点1、3に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (2) 相違点2について 人工知能技術又はディープラーニング技術を用いて画像解析を行うことは、本願の優先日前において種々の分野で活用されている従来周知の技術であって、引用発明の「監視ビデオカメラシステム8」が、「ビデオカメラ9、ビデオカメラ9sがとったピクチャを解析することによって、賭け金3の位置、および、各賭け領域4上のチップの色および高さについて賭け金3の総額を識別する」に際し、「視覚解析の既知の技術」として、従来周知の人工知能技術又はディープラーニング技術を用いて画像解析を行う技術を採用することにより、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3) 相違点4、5について 相違点4、5は、ディーラが置いたチップスタックとプレーヤが置いたチップスタックの扱いであるという点で関連しているのでまとめて検討する。 ア 引用文献1の記載事項2の「ゲームテーブル1」の「ペイオフ3Wのチップ」及び「賭け金3のチップ」は、本願発明1の「チップスタック」に相当し、引用文献1の記載事項2の「ディーラ11」は、本願発明1の「ディーラ」に相当し、引用文献1の記載事項2の「賭けている人2」は、本願発明1の「プレーヤ」に相当することを踏まえると、引用文献1の記載事項2において、「ゲームテーブル1上で、賭けている人2が、賭けをするために賭け領域4に置いた賭け金3のチップと、ディーラ11が、賭けている人2のうち勝者2Wの賭け領域4上を経由して、賭けている人2のうち勝者2Wに移動させたペイオフ3Wのチップ及び賭け金3のチップとは、移動の有無とともに別個に確認している」ことは、本願発明1の構成C1の「ディーラが置いたチップスタックを、プレーヤが置いたチップスタックと区別して」いることに相当する。 そして、上記3(4)で検討したとおり、引用発明の「賭け金3の総額を識別する処理機能を有」する「監視ビデオカメラシステム8の制御部10」は、コンピュータを備えることが明らかであるから、プロセッサを備えているといえる。 イ ここで、引用発明と引用文献1の記載事項2とは、ともに同じ引用文献1に記載された事項から認定したものであって、ともにカードゲーム監視システムにおいて、チップについて、ゲームテーブル1上に置かれた賭け金3のチップの監視を行う点で共通するから、引用発明に引用文献1の記載事項2を適用する動機付けは存在する。 (ア) 上記3(5)で検討したとおり、引用発明が、「賭けている人2の各賭け領域4上のチップを数えることにより、賭け金3の総額を識別する処理機能を有し」、「賭け金3の各総額は、各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算され」ることは、本願発明1の構成C2の「前記プレーヤが置いたチップスタックの」「チップの数を決定する」ことに相当する。 (イ) そして、引用文献1には、上記3(1)ア(ア)dに摘記した、 「[0005] The present invention provides a real-time monitoring of the table game and enables the casino to stop an ongoing game immediately when something unexpected happens by administrating the whole game from the start to the end of the game.(【0004】本発明は、テーブルゲームのリアルタイムでの監視を提供し、ゲームの開始から終了までゲーム全体を管理することによって、予想外の何かが起こったとき、進行中のゲームをカジノが直ちに中止することを可能にする。)」という課題、及び、 「[0007] ・・・the control unit having further processing function to check whether wagers with payoffs move to the winner of the bettor determined by the card shooter apparatus at the end of each game.rom the start to the end of the game and during payoffs.(【0006】・・・監視ビデオカメラシステムはさらに、ゲームテーブル上の賭け金の移動を読み取り、制御部は、各ゲームの終了時、ペイオフと共に賭け金が、カードシュータ装置が判定する賭けている人のうちの勝者のところに移動するかどうかを確認する処理機能をさらに有するカードゲーム監視システムを提供する。)」という課題を解決するための手段が記載されている。 (ウ) 引用発明において、「賭け金3の各総額は、各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算され」るのであれば、「ペイオフ3W」の各総額も、賭け金3の総額と同様に、各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算されることは自明な事項であって、引用文献1の記載に接した当業者であれば当然に理解される事項である。 そうすると、「賭けている人2の各賭け領域4上のチップを数えることにより、賭け金3の総額を識別する処理機能を有し」、「賭け金3の各総額は、各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算され」るという手段(本願発明1の「チップの数を決定する」ことに相当。)を備える引用発明に、「各ゲームの終了時、ペイオフと共に賭け金が、カードシュータ装置が判定する賭けている人のうちの勝者のところに移動するかどうかを確認する」という課題を解決するための手段を有する引用文献1の記載事項2の技術を適用するに際し、「ゲームの開始から終了までゲーム全体を管理する」ことにより予想外の事態が起こったことを把握するという課題を解決する一環として、 ディーラ11が、勝者2Wに対しペイオフ3Wを移動させたかどうかの確認を、ペイオフ3Wが勝者のところに移動するかどうかを確認するのみならず、その「ペイオフ3W」の総額、すなわち、「ディーラ11が、賭けている人2のうち勝者2Wの賭け領域4上を経由して、賭けている人2のうち勝者2Wに移動させたペイオフ3Wのチップ」から計算される総額をも確認する構成を付加することにより、より正確な管理を行うことは、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更に該当し、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 (エ) したがって、引用発明に引用文献1の記載事項2を採用するに際し、上記の設計変更を加えることにより、上記相違点4、5に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (4) 請求人の主張について ア 請求人の主張 請求人は、令和7年12月18日に提出した意見書において、次の主張をしている。 「(3)対比 本願発明1は、「少なくとも1つのプロセッサは、ディーラが置いたチップスタックを、プレーヤが置いたチップスタックと区別して、前記ディーラが置いたチップスタックと前記プレーヤが置いたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定する」という特徴を備えるものです。 引用文献1は、賭けている人が賭け領域にチップを置くことによって賭けをするテーブルゲーム、及び、各ゲームテーブルの上部に取り付けられているカメラ9について記載されており(段落[0010]、[0011]等参照)、また、監視ビデオカメラシステムは、カメラ9がとったピクチャを解析することにより、賭け金の位置、および賭け領域上のチップの色および高さについて賭け金の総額を識別できることが記載されています(段落[0021]等参照)。さらに、制御部は、各ゲームの終了時、ペイオフ3Wと共に賭け金3が、賭けている人のうち勝者のプール12に移動するかどうかを確認することが記載されています(段落[0013]等参照)。 しかしながら、引用文献1では、ペイオフ3Wと賭け金3を区別し、さらに、それぞれのチップの数を決定することは記載されていません。 また、さらに、引用文献1は、ゲームの開始から終了までゲーム全体を管理することによって、予想外の何かが起こったとき、進行中のゲームをカジノが直ちに中止することを可能にすることを目的としています(段落[0004]、[0005]等参照)。すなわち、引用文献1は、ゲームの進行状況を監視することを主な目的とするものといえます。 このような目的をもつ引用文献1において、賭けている人が置いたチップの額を把握しようとする構成とすること(引用文献1の段落[0021])は、ゲームの進行管理の観点からも理解できます。 一方、引用文献1では、制御部は、各ゲームの終了時、ペイオフ3Wと共に賭け金3が、賭けている人のうち勝者のプール12に移動するかどうかを確認することが記載されており(段落[0013]等参照)、また、Fig. 1 における矢印では「賭け金3」のチップが移動する向きが示されています。すなわち、チップの移動が正しく行われたか否かを確認することが開示されています。ここで仮に、審査官殿のご指摘のように、ペイオフ3Wと賭け金3のチップについて、移動の有無と共に別個に確認しているものと解したとしても、これらを区別した上で、さらに、それぞれのチップの数を把握するものとする動機付けは、引用文献1の目的を踏まえて見出せるものではありません。 引用文献2では、本願発明1のように、「少なくとも1つのプロセッサは、ディーラが置いたチップスタックを、プレーヤが置いたチップスタックと区別して、前記ディーラが置いたチップスタックと前記プレーヤが置いたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定する」ことは記載も示唆もされていません。 以上のとおり、引用文献1及び引用文献2では、本願発明1の「少なくとも1つのプロセッサは、ディーラが置いたチップスタックを、プレーヤが置いたチップスタックと区別して、前記ディーラが置いたチップスタックと前記プレーヤ置いたチップスタックのそれぞれのチップの数を決定する」という特徴は記載も示唆もされていません。よって、本願発明1は、このような引用文献1及び引用文献2に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではないものと思料します。」 イ 合議体の判断 請求人の主張は、相違点4、5に係るものであって、当該相違点4、5に係る本願発明の構成は、引用文献1及び引用文献2に基づいて当業者が容易に想到することができたものではないというものである。 この点、引用発明に引用文献1の記載事項2を適用するに際し、設計変更を加えることにより、上記相違点4、5に係る本願発明1の構成とすることは当業者が想到容易であるという合議体の判断は、上記(3)ア、イに示したとおりである。 また、上記主張のうち、「すなわち、チップの移動が正しく行われたか否かを確認することが開示されています。ここで仮に、審査官殿のご指摘のように、ペイオフ3Wと賭け金3のチップについて、移動の有無と共に別個に確認しているものと解したとしても、これらを区別した上で、さらに、それぞれのチップの数を把握するものとする動機付けは、引用文献1の目的を踏まえて見出せるものではありません。」という点について、 上記(3)イ(ウ)に判断を示したとおり、引用発明において、「ペイオフ3W」の各総額も、賭け金3の総額と同様に、各賭け領域4上のチップの色および高さについてビデオカメラ9から得られるピクチャを解析することによって計算されることは、引用文献1の記載に接した当業者であれば当然に理解される事項であって、引用発明に、引用文献1の記載事項2の技術を適用するに際し、「ゲームの開始から終了までゲーム全体を管理する」ことにより予想外の事態が起こったことを把握するという課題を解決する一環として、ディーラ11が、勝者2Wに対しペイオフ3Wを移動させたかどうかの確認を、ペイオフ3Wが勝者のところに移動するかどうかを確認するのみならず、その「ペイオフ3W」の総額、すなわち、「ディーラ11が、賭けている人2のうち勝者2Wの賭け領域4上を経由して、賭けている人2のうち勝者2Wに移動させたペイオフ3Wのチップ」から計算される総額をも確認する構成を付加することにより、より正確な管理を行うことは、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更に該当し、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎないことである。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (5) まとめ また、本願発明1が奏する作用効果について検討してみても、本願発明1が奏する作用効果は、当業者が、引用発明、引用文献2に記載の技術、引用文献1の記載事項2及び従来周知の技術から予測し得るものであって、格別のものということはできない。 以上のとおり、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載の技術、引用文献1の記載事項2及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 本願発明1は、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載の技術、引用文献1の記載事項2及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-001024

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