特許拒絶査定不服審判
2025-001047
遊技用代用貨幣、検査装置、遊技用代用貨幣の製造方法、及びテーブルゲームの管理システム
- 審判番号
- 2025-001047
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-110354
- 請求日
- 2025年01月24日
- 審決日
- 2026年03月24日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エンゼルグループ株式会社
- 【請求人代理人】加藤 真司
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼川 康史
- 審判官 島田 保
- 審判官 蔵野 いづみ
- 分類
- P18 .537-WZ (A63F) / P18 .55 -WZ (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-110354「遊技用代用貨幣、検査装置、遊技用代用貨幣の製造方法、及びテーブルゲームの管理システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年10月24日出願公開、特開2023-156278〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年8月2日(優先権主張 平成27年8月3日、平成27年11月19日、平成28年2月1日、いずれも日本国)に国際出願した特願2017-533091の一部を平成29年8月23日に新たな特許出願(特願2017-160277)とし、さらにその一部を平成31年2月8日に新たな特許出願(特願2019-21869)とし、さらにその一部を令和3年3月9日に新たな特許出願(特願2021-37723)とし、さらにその一部を令和5年7月4日に新たな特許出願(特願2023-110354)としたものであって、令和6年7月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月22日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同月24日付け(送達日:同年11月5日)で、同年10月22日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、令和7年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「請求時補正」という。)が提出され、さらに同年2月25日に上申書が提出されたところ、これに対し、同年11月12日付けで当審において拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、令和8年1月8日に意見書及び手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。
第2 特許請求の範囲の記載
請求時補正における特許請求の範囲及び本件補正における特許請求の範囲はいずれも請求項1~8からなるところ、請求時補正における請求項1に係る発明及び本件補正における請求項1に係る発明(以下、それぞれ「請求時補正発明1」、「本件補正発明1」という。)は、それぞれ次のとおりのものである(下線は、本件補正による補正箇所を示し、当審にて付した。また、符号Aなどは、本件補正発明1を分説するために当審で付与した。)。
(請求時補正発明1)
「【請求項1】
第1の情報を記憶したRFIDタグを内蔵するとともに、側面に第2の情報が表記された遊技用代用貨幣を管理する管理システムであって、
前記第2の情報は、前記遊技用代用貨幣が重ねられた状態で読み取り可能であり、
前記管理システムは、
重ねられた状態の前記複数の遊技用代用貨幣の側面を一括して撮影して画像を生成する撮像手段と、
前記複数の遊技用代用貨幣の前記RFIDタグを一括して読み取って、前記複数の遊技用代用貨幣の前記第1の情報を取得する読取手段と、
前記画像に基づいて、前記複数の遊技用代用貨幣の各々の位置と前記第2の情報とを取得する画像分析手段と、
前記遊技用代用貨幣の各々について、前記第1の情報と前記第2の情報とを関連付けて記録したデータベースと、
前記データベースを参照することで、前記読取手段で取得された前記複数の遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記画像分析手段で取得された前記複数の遊技用代用貨幣の各々の前記第2の情報との関連を検査する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記第2の情報が一致しないと認識した場合に、当該遊技用代用貨幣の所在場所を特定する、管理システム。」
(本件補正発明1)
「【請求項1】
A 第1の情報を記憶したRFIDタグを内蔵するとともに、側面に第2の情報が表記された遊技用代用貨幣を管理する管理システムであって、
B 前記第2の情報は、前記遊技用代用貨幣が重ねられた状態で読み取り可能であり、
C 前記管理システムは、
重ねられた状態の前記複数の遊技用代用貨幣の側面を一括して撮影して画像を生成する撮像手段と、
D 前記複数の遊技用代用貨幣の前記RFIDタグを一括して読み取って、前記複数の遊技用代用貨幣の前記第1の情報を取得する読取手段と、
E 前記画像に基づいて、前記複数の遊技用代用貨幣の各々の位置と前記第2の情報とを取得する画像分析手段と、
F 前記遊技用代用貨幣の各々について、前記第1の情報と前記第2の情報とを関連付けて記録したデータベースと、
G 前記データベースを参照することで、前記読取手段で取得された前記複数の遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記画像分析手段で取得された前記複数の遊技用代用貨幣の各々の前記第2の情報との関連を検査する制御手段と、
を備え、
H1 前記制御手段は、読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記第2の情報が一致しないと認識した場合に、
H2 前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置を特定する、
A 管理システム。」
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、請求時補正発明1において特定された「前記制御手段は、読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記第2の情報が一致しないと認識した場合に、当該遊技用代用貨幣の所在場所を特定する」という構成は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。
第4 当審の判断
1 サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
2 本件補正発明1の記載
当審拒絶理由で指摘した請求時補正発明1の記載は、本件補正により、次のものに補正された。
「H1 前記制御手段は、読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記第2の情報が一致しないと認識した場合に、
H2 前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置を特定する」
よって、本件補正発明1の特定事項H1及びH2(以下「特定事項H1」などとする。)の記載がサポート要件を満たしているか否かについて、上記1で示した判断基準に照らし合わせて、以下で検討する。
3 発明の詳細な説明の記載
(1) 発明の詳細な説明には、以下の記載がある(下線は当審で付した。)。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、遊技場でのゲームにおける不正行為、又は遊技用代用貨幣の賭けや精算をする際のミスや不正行為を検知する新規な遊技用代用貨幣、検査装置、及びテーブルゲームの管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
・・・
【0020】
本発明の一態様の検査装置は、上記の遊技用代用貨幣を検査する検査装置であって、前記遊技用代用貨幣のRFIDの情報を読み取るRFID読取装置と、側面のサイドIDを読み取るID読取装置と、制御装置とを備え、前記ID読取装置により得られるサイドIDの情報と、前記RFID読取装置から得た情報の関連を検査する構成である。
・・・
【0052】
さらに、不正検知システムであって、制御装置は、前記画像分析装置を介して各プレーヤが賭ける遊技用代用貨幣の位置、種類および枚数を把握し、各プレーヤの賭けた負け遊技用代用貨幣の回収および勝ち遊技用代用貨幣への支払がゲームの勝敗結果に従って適正に行われたか否かを、前記画像分析装置を介してゲームの進行状態の映像を分析することにより判定する。
・・・
【0157】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の遊技テーブルを有する遊技場における遊技用代用貨幣の管理システムを説明する。図16は同システムの全体の概要を示す図であって、複数の遊技テーブル4(図16では、1台のみ示す)を有する遊技場における遊技用代用貨幣の管理システムは、遊技テーブル4で行われるゲームの進行状態をゲーム参加人6およびディーラ5を含めて、複数のカメラ装置2を介して撮像し記憶し管理する。特に、本遊技用代用貨幣の管理システムは、遊技テーブル4においてゲームに使用される遊技用代用貨幣120の種類と枚数を、カメラ装置2にて得られる画像情報を分析して特定する。遊技用代用貨幣120の側面には、サイドID126が付されており、遊技用代用貨幣120の種類と枚数は、サイドID126を判定し読み取ることで得られる。なお、本明細書において、「サイドID」ないし「ID」の語は、遊技用代用貨幣120の側面に付された物理的存在としてのIDの意味でも、それが示す識別情報の意味でも用いられる。カメラ装置2から得た画像情報を分析してサイドID126を特定するのが、カメラ装置2に接続された管理制御装置50の内部にあるID読取装置53である。特に管理制御装置50は、カメラ装置2を介して撮像した画像データを分析しサイドID126の読み取り結果から、横に並び、あるいは積み重ねられた状態の遊技用代用貨幣120の種類と枚数を特定する遊技用代用貨幣判定装置52を内部に有する。
・・・
【0164】
本遊技用代用貨幣の管理システムにおいて、管理制御装置50は遊技テーブル4のベットエリア8上に賭けられている遊技用代用貨幣120の種類と枚数をID読取装置53を用いて特定できる。ベットエリア8の遊技用代用貨幣120は、ベットエリア8を特に撮像するカメラ装置2bによって撮影され、遊技テーブル4のベットエリア8上に存在する遊技用代用貨幣120のサイドID126に対しても、以下の事象をデータベース51の検索により判定する。
1)データベース51に存在しなかったサイドID126がベットエリア16に新たに存在すること、
2)2つ以上の同じIDが存在すること、
管理制御装置50は、上記1)もしくは2)の状況があればエラーシグナルを生成する機能を備える。
・・・
【0181】
遊技用代用貨幣120を検査する別の検査装置300について、図22により説明する。遊技用代用貨幣120の表面に設けたUV発光インク又は赤外線を吸収するインクによるフェイスコードMを読み取るフェイスコード読取装置306と、側面のサイドID126を読み取るID読取装置307と、遊技用代用貨幣120のRFID(図示せず)の情報を読み取るRFID読取装置308と、制御装置207と、を備え、制御装置207は、ID読取装置307により得られるサイドID126の情報と、フェイスコード読取装置306から得た情報と、RFID読取装置308から得た情報の関連を検査する構成である。上記情報の関連は正しいあるべきデータベース(図示せず)があって読取結果をこれと比較することによって検査される。この検査は、フェイスコードMやサイドID126の印刷ミスを検出し不良の発生を防ぐためもしくは偽物と区別するために使用される。
・・・
【0187】
なお、本実施の形態に、第2の実施の形態の、遊技テーブル4で行われるゲームの進行状態をゲーム参加人6およびディーラ5を含め複数のカメラ装置2を介して映像として記録するとともに記録されたゲームの進行状態の映像を画像分析することで、遊技テーブル4のディーラ5の遊技用代用貨幣トレイ17における遊技用代用貨幣120の総額を分析把握可能な画像分析装置18、画像分析装置18により得られた情報を使って分析計測して遊技用代用貨幣120の種類と枚数を判定する測定装置19、及び/又は、遊技用代用貨幣120の表面に設けたUV発光インク又は赤外線を吸収するインクによるフェイスコードを読み取るマーク読取装置205を組み合わせ、さらに、必要に応じて、遊技用代用貨幣120のRFID125の情報を読み取るRFID読取装置308を組み合わせることで、管理制御装置50を含む以下のような検査装置を構成できる。
【0188】
すなわち、上記の構成に、遊技用代用貨幣120のRFID125の情報を読み取るRFID読取装置308を組み合わせることで、側面のサイドID126を読み取るID読取装置53と、管理制御装置50とを備えた検査装置を構成できる。この検査装置において、管理制御装置50は、ID読取装置53で読み取ったサイドID126の情報と、RFID読取装置308で読み取ったRFID125の情報との関連を検査する。」
(2) 上記(1)より、発明の詳細な説明には以下の事項が記載されている。
制御装置が、各プレーヤの賭けた負け遊技用代用貨幣の回収および勝ち遊技用代用貨幣への支払がゲームの勝敗結果に従って適正に行われたか否かを、前記画像分析装置を介してゲームの進行状態の映像を分析することにより判定するために、前記画像分析装置を介して各プレーヤが賭ける遊技用代用貨幣の位置、種類および枚数を把握する、不正検知システム(【0052】)、
及び、
遊技テーブル4で行われるゲームの進行状態をゲーム参加人6およびディーラ5を含め複数のカメラ装置2を介して映像として記録するとともに記録されたゲームの進行状態の映像を画像分析することで、遊技テーブル4のディーラ5の遊技用代用貨幣トレイ17における遊技用代用貨幣120の総額を分析把握可能な画像分析装置18、画像分析装置18により得られた情報を使って分析計測して遊技用代用貨幣120の種類と枚数を判定する測定装置19に、遊技用代用貨幣120のRFID125の情報を読み取るRFID読取装置308を組み合わせることで、管理制御装置50を含む以下のような検査装置(【0187】)、
すなわち、上記の構成に、遊技用代用貨幣120のRFID125の情報を読み取るRFID読取装置308を組み合わせることで、側面のサイドID126を読み取るID読取装置53と、管理制御装置50とを備えた検査装置を構成でき、この検査装置において、管理制御装置50は、ID読取装置53で読み取ったサイドID126の情報と、RFID読取装置308で読み取ったRFID125の情報との関連を検査するものであり(【0188】)、
上記情報の関連は正しいあるべきデータベースがあって読取結果をこれと比較することによって検査され(【0181】)、
積み重ねられた状態の遊技用代用貨幣120の種類と枚数は、撮像した画像データを分析して取得したサイドID126の読み取り結果から特定すること(【0157】)。
4 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて
(1) 特定事項H1
上記3(2)で検討した、発明の詳細な説明に記載された事項における「管理制御装置50」、「RFID読取装置308で読み取ったRFID125の情報」及び「ID読取装置53で読み取ったサイドID126の情報」はそれぞれ、特定事項H1の「前記制御手段」、「読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報」及び「読み取った遊技用代用貨幣の」「前記第2の情報」に対応している。
そして、RFIDの情報とサイドIDの情報の関連をデータベースと比較して検査することには、RFIDの情報とサイドIDの情報が一致するか否かを検査して両者が一致しないと認識する場合が含まれることは明らかであるから、上記3(2)で検討した発明の詳細な説明に記載された事項における「管理制御装置50は、ID読取装置53で読み取ったサイドID126の情報と、RFID読取装置308で読み取ったRFID125の情報との関連を検査するものであり、上記情報の関連は正しいあるべきデータベースがあって読取結果をこれと比較することによって検査され」ることには、特定事項H1の「前記制御手段は、読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記第2の情報が一致しないと認識した場合に」が含まれる。
よって、特定事項H1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(2) 特定事項H2
ア 発明の詳細な説明の記載
(ア) 特定事項H2は、本件補正発明1の管理システムが、特定事項H1で特定した場合を前提条件として実行する処理として、「前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置を特定する」ことを特定するものである。
(イ) そして、特定事項H2の「前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置」は、「前記」により特定事項C及び特定事項Eの記載を参照していることを踏まえると、「重ねられた状態の前記複数の遊技用代用貨幣の側面を一括して撮影して」「生成」された「画像に基づいて」、「画像分析手段」により「前記第2の情報」とともに「取得」された「前記複数の遊技用代用貨幣の各々の位置」を意味する。
(ウ) 一方、発明の詳細な説明には、上記3(2)より、「不正検知システム」の「制御装置が、各プレーヤの賭けた負け遊技用代用貨幣の回収および勝ち遊技用代用貨幣への支払がゲームの勝敗結果に従って適正に行われたか否かを、前記画像分析装置を介してゲームの進行状態の映像を分析することにより判定するために前記画像分析装置を介して各プレーヤが賭ける遊技用代用貨幣の位置、種類および枚数を把握する」ことが記載されている。
ここで、上記3(2)より、発明の詳細な説明には「積み重ねられた状態の遊技用代用貨幣120の種類と枚数は、撮像した画像データを分析して取得したサイドID126の読み取り結果から特定すること」が記載されていることから、上記の発明の詳細な説明に記載された事項の「前記画像分析装置を介して各プレーヤが賭ける遊技用代用貨幣の位置、種類および枚数を把握する」ことには、積み重ねられた状態の遊技用代用貨幣120を撮影した画像から、各プレーヤが賭ける遊技用代用貨幣の位置及びサイドIDを取得する場合が含まれることが把握できる。そして、その場合における上記の「前記画像分析装置を介して各プレーヤが賭ける遊技用代用貨幣の位置、種類および枚数を把握する」ことは、上記(イ)で検討した特定事項H2の「前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置」を特定することに、文言上は対応している。
(エ) しかし、発明の詳細な説明には、上記(ア)で述べた、特定事項H2の前提条件が特定事項H1であることについては記載も示唆もない。
上記(ウ)で述べたとおり、発明の詳細な説明には、積み重ねられた状態の遊技用代用貨幣120を撮影した画像から、各プレーヤが賭ける遊技用代用貨幣の位置及びサイドIDを取得する場合が含まれると理解できる記載があるものの、遊技用代用貨幣の位置を取得するその目的は、「制御装置が、各プレーヤの賭けた負け遊技用代用貨幣の回収および勝ち遊技用代用貨幣への支払がゲームの勝敗結果に従って適正に行われたか否かを、前記画像分析装置を介してゲームの進行状態の映像を分析することにより判定するため」であることが記載されているのみであり、RFIDの情報とサイドIDの情報の関連を検査することとは無関係である。
また、発明の詳細な説明には、RFIDの情報とサイドIDの情報の関連をデータベースと比較して検査することは記載されているものの、RFIDの情報とサイドIDの情報が一致しないと認識した場合に検査装置を備える管理システムがどのような処理を行うのかについては、そもそも記載がない。
したがって、発明の詳細な説明には、特定事項H1及びH2を有する本件補正発明1に対応する記載も示唆もされていない。
イ 本件補正発明1が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段
(ア) 本件補正発明1が解決しようとする課題は、【0006】に記載されているとおり、「遊技場でのゲームにおける不正行為、又は遊技用代用貨幣の賭けや精算をする際のミスや不正行為を検知する新規な遊技用代用貨幣、検査装置、及びテーブルゲームの管理システムを提供すること」である。
そして、上記の課題を解決するための手段として、【0020】には「前記遊技用代用貨幣のRFIDの情報を読み取るRFID読取装置と、側面のサイドIDを読み取るID読取装置と、制御装置とを備え、前記ID読取装置により得られるサイドIDの情報と、前記RFID読取装置から得た情報の関連を検査する構成」を備えることが記載されており、本件補正発明1は、当該課題を解決するための手段に対応する構成として、特定事項Gの「前記データベースを参照することで、前記読取手段で取得された前記複数の遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記画像分析手段で取得された前記複数の遊技用代用貨幣の各々の前記第2の情報との関連を検査する制御手段と、を備え」という構成を備えるものである。
(イ) 一方、発明の詳細な説明には、画像に基づいて遊技用代用貨幣の位置を特定することに対応する課題として、例えば【0052】に「不正検知システムであって、制御装置は、前記画像分析装置を介して各プレーヤが賭ける遊技用代用貨幣の位置、種類および枚数を把握し、各プレーヤの賭けた負け遊技用代用貨幣の回収および勝ち遊技用代用貨幣への支払がゲームの勝敗結果に従って適正に行われたか否かを、前記画像分析装置を介してゲームの進行状態の映像を分析することにより判定する」と記載されているように、ゲームの勝敗の判定や、ゲームの勝敗結果に伴う遊技用代用貨幣の回収及び支払が適切に行われているかを管理するという課題については記載されているものの、それ以外の対応する課題を発明の詳細な説明の記載からは見出すことができない。
よって、特定事項H1及びH2の「前記制御手段は、読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記第2の情報が一致しないと認識した場合に、前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置を特定する」という構成により解決しようとする課題は、発明の詳細な説明には記載も示唆もされていない。そのため、特定事項H1及びH2の構成は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
ウ 上記ア、イより、特定事項H1及び特定事項H2を有する本件補正発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
5 その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて
(1) 一般的に検査装置は、検査対象の状態や品質を測定して、その測定結果を検査対象の評価に用いることを目的として使用する装置であるから、検査装置を、検査の測定結果をユーザーが参照可能な態様で出力できるように構成することは、技術常識である。
(2) 上記(1)を踏まえると、本願の発明の詳細な説明に、検査装置を備える遊技用代用貨幣の管理システムが、遊技用代用貨幣から読み取ったRFIDの情報とサイドIDの情報が一致しないと認識した場合にどのような処理を行うのかについて記載されていなくても、RFIDの情報とサイドIDの情報が一致しないという検査結果をユーザーが参照可能な態様で出力する構成を備えることは、技術常識に照らし合わせて当業者が認識できる範囲のものといえる。
しかし、検査装置を備える遊技用代用貨幣の管理システムが、遊技用代用貨幣から読み取ったRFIDの情報とサイドIDの情報が一致しないと認識した場合に、検査結果をユーザーが参照可能な態様で出力するだけではなく、さらにサイドIDの情報を読み取った画像における当該遊技用代用貨幣の位置を特定する処理まで行う構成を備えることが、遊技用代用貨幣の管理システムにおいて必要不可欠であると認めるに足りる事情はなく、また、記載や示唆がなくとも当該構成を備えると認定できる理由を発見できないし、明らかとする技術常識もない。
(3) 上記(1)、(2)より、特定事項H1及び特定事項H2を有する本件補正発明1は、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
6 小括
上記4、5より、特定事項H1及びH2を含む本件補正発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない。
7 審判請求人の主張について
(1) 令和8年1月8日に提出された意見書において、審判請求人は以下の説明をしている。
「2.補正について
出願人は、本書と共に提出する手続補正書において、請求項1の「当該遊技用代用貨幣の所在場所を特定する」を「前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置を特定する」とする補正をしました。この補正により、制御手段は、第1の情報と第2の情報が一致しないのは画像内のどの遊技用代用貨幣かを特定する、ということが明確となっています。この補正は、本明細書の段落[0052]、[0157]、[0164]等に基づく適法な補正です。
・・・
3.拒絶に対する意見
(1)本願発明
・・・
(2)本明細書の根拠段落
本明細書の段落[0188]では、「上記の構成に、遊技用代用貨幣120のRFID125の情報を読み取るRFID読取装置308を組み合わせることで、側面のサイドID126を読み取るID読取装置53と、管理制御装置50とを備えた検査装置を構成できる。この検査装置において、管理制御装置50は、ID読取装置53で読み取ったサイドID126の情報と、RFID読取装置308で読み取ったRFID125の情報との関連を検査する。」と記載されています。すなわち、管理制御装置50が、RFID読取装置から読み取ったRFIDの情報(第1の情報)とID読取装置から読み取ったサイドIDの情報(第2の情報)との関連を検査することが記載されています。
また、段落[0181]では、「上記情報の関連は正しいあるべきデータベース(図示せず)があって読取結果をこれと比較することによって検査される。この検査は、フェイスコードMやサイドID126の印刷ミスを検出し不良の発生を防ぐためもしくは偽物と区別するために使用される。」と記載されています。すなわち、検査装置は、読取結果をデータベース上の情報と比較することで印刷ミスを検出するものであり、当然に、当該制御装置は、第1の情報と第2の情報が一致しない場合を検出するものと理解することができます。
したがいまして、請求項1の「前記制御手段は、読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記第2の情報が一致しないと認識した場合」についての記載は、本明細書等によりサポートされています。
また、第1の情報と第2の情報とが一致しないと認識した場合の処理については、「当該遊技用代用貨幣の前記位置を特定する」と補正しました。もともと第2の情報は画像分析手段によって、画像から、その位置とともに取得されるものですので、第1の情報と一致しない第2の情報が特定されれば、そのような第2の情報を有する遊技用代用貨幣の位置は自然と特定されます。従いまして、補正後の請求項1の「前記制御手段は、・・・前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置を特定する」は、本明細書等の記載にサポートされています。
したがいまして、請求項1の「前記制御手段は、読み取った遊技用代用貨幣の前記第1の情報と前記第2の情報が一致しないと認識した場合に、前記画像分析手段で取得された当該遊技用代用貨幣の前記位置を特定する」という特徴は、明細書等の記載から当然に導き出せるものと思料します。」
(2) 審判請求人が主張の根拠とする記載について
上記(1)の意見書で審判請求人は、「2.補正について」において【0052】、【0157】、【0164】を補正の根拠とする説明をしており、「3.拒絶に対する意見」の「(2)本明細書の根拠段落」において【0181】及び【0188】を根拠として、本件補正発明1が発明の詳細な説明に記載されていることを主張している。
そこで、審判請求人が主張の根拠とする各段落の記載を確認する。
ア 【0052】、【0157】、【0181】及び【0188】には、上記3(2)で述べた事項が記載されており、【0181】及び【0188】には、上記意見書において審判請求人が説明する記載がされている。
しかし、上記1~6で検討したとおり、【0052】、【0157】、【0181】及び【0188】には、特定事項H1を前提条件とする特定事項H2について記載も示唆もされていない。
イ 【0164】には、ベットエリア8の遊技用代用貨幣120は、ベットエリア8を特に撮像するカメラ装置2bによって撮影され、遊技テーブル4のベットエリア8上に存在する遊技用代用貨幣120のサイドID126に対して、1)データベース51に存在しなかったサイドID126がベットエリア16に新たに存在すること、2)2つ以上の同じIDが存在すること、の2つの事象をデータベース51の検索により判定して、管理制御装置50は、上記1)もしくは2)の状況があればエラーシグナルを生成する機能を備えることが記載されている。
しかし、【0164】の上記記載は、遊技用代用貨幣120のサイドID126をデータベースで管理するシステムについて記載されているのみで、RFIDとサイドIDの関連を検査する処理については何ら記載されていない。
よって、【0164】には、特定事項H1を前提条件とする特定事項H2ついて記載も示唆もされていない。
ウ 上記ア、イより、審判請求人が主張の根拠とする各段落には、特定事項H1を前提条件とする特定事項H2について記載も示唆もされていない。
(3) 明細書等の記載から当然に導き出せるものという主張について
上記(1)の意見書で審判請求人は、特定事項H1を前提条件とする特定事項H2は「明細書等の記載から当然に導き出せるもの」である旨の主張をしている。
しかし、上記1~6で検討したとおり、特定事項H1及びH2を含む本件補正発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものということができず、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。したがって、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-001047