特許拒絶査定不服審判
2025-001756
情報処理システム及びその制御方法、プログラム
- 審判番号
- 2025-001756
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-200897
- 請求日
- 2025年02月05日
- 審決日
- 2026年05月11日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】キヤノンマーケティングジャパン株式会社
- 【請求人代理人】中山 圭
- 審判長/審判官
- 審判長 野崎 大進
- 審判官 田付 徳雄
- 審判官 木方 庸輔
- 分類
- P18 .121-Z (G06Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-200897「情報処理システム及びその制御方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 6月27日出願公開、特開2024- 86036〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年12月16日の特許出願であり、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年 5月31日付け 拒絶理由通知
同年 8月 6日 意見書・手続補正書の提出
同年10月31日付け 拒絶査定
令和7年 2月 5日 審判請求書・手続補正書の提出
同年 7月 3日作成 前置報告
同年 8月29日 上申書の提出
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年2月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項7は、以下のとおり補正された。本件補正がなされた後の請求項7に係る発明を「本件補正発明7」という。なお、下線部は本件補正により変更された箇所を示す。
(本件補正後の特許請求の範囲)
「【請求項7】
文書に含まれる加工対象の文字列について、当該文字列として認識できない形態になるよう特定の加工を施す加工手段と、
前記加工手段による加工対象の候補となる加工対象候補文字列を識別可能に表示した文書と、当該加工対象候補文字列の一覧とを表示するように制御する表示制御手段と、
前記加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について、加工対象とするか否かの選択操作を受け付ける選択受付手段と、
前記選択受付手段により選択操作を受け付けたことに応じて加工対象とするか否かを切り替えることで、当該文字列について加工対象とするか否かを決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。」(本件補正発明7)
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年8月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項7の記載は、以下のとおりである。本件補正がなされる前の請求項7に係る発明を「本願発明7」という。なお、下線部は本件補正による変更を強調するために、当審にて付した。
(本件補正前の特許請求の範囲)
「【請求項7】
文書に含まれる加工対象の文字列について、当該文字列として認識できない形態になるよう特定の加工を施す加工手段と、
前記加工手段による加工対象の候補となる加工対象候補文字列を識別可能に表示した文書と、当該加工対象候補文字列の一覧とを表示するように制御する表示制御手段と、
前記加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について、選択操作を受け付ける選択受付手段と、
前記選択受付手段により受け付けた選択操作に基づき特定される文字列について、加工対象とするか否かを決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。」(本願発明7)
2 補正の適否
本件補正のうち、請求項7に係る補正は、本件補正前の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項である「選択受付手段」における「選択操作」について、「加工対象とするか否かの選択操作」との限定を付加するものであり、さらに、本件補正前の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項である「決定手段」における「決定」について、「選択操作を受け付けたことに応じて加工対象とするか否かを切り替えることで、当該文字列について加工対象とするか否かを決定する」との限定を付加するものである。
そして、本件補正前の請求項7に記載された発明(本願発明7)と、補正後の請求項7に記載された発明(本件補正発明7)とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち、請求項7に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項7に記載された発明(本件補正発明7)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明7について
本件補正発明7は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1(特開2006-276912号公報)の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-276912号公報(平成18年10月12日出願公開、以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。なお、下線は当審にて付与した。
「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施例>
図1は、本発明の一実施例に係る文書編集装置1の機能構成を表した図である。同図に示すように、文書編集装置1は、制御部10、記憶部11、入力部12、表示部13、編集処理部14、および文書出力部15からなる。(中略)入力部12はキーボードやマウス等の入力デバイスであって、文書編集装置1のユーザが編集対象や編集方法の選択(詳細は後述)などの各種指示や必要な情報を入力するためのものである。(中略)表示部13は、描画用プロセッサ(図示せず)および液晶ディスプレイ等の表示装置(図示せず)から構成され、制御部10の指示の下、秘匿編集処理の対象となる文書(原文書)、編集中の文書、編集後の文書等を画面に表示する。ユーザは、表示部13の表示画面を見ながら入力部12から各種指示などを入力することによって編集処理を行う。」
「【0014】
図4は、文書編集装置1の動作例を示すフロー図である。まず、制御部10は、所定の手順で記憶部11に格納された秘匿編集処理の対象となり得る文書データの一覧(図示せず)を表示部13に表示させる。ユーザが所望の文書データを選択すると(ステップS101)、表示部13に図3に示す文書Dが表示される。次に、編集処理部14は所定の自然言語処理を行い、テーブルTの内容に従って編集対象候補を抽出する(ステップS102)。具体的には、まず自然言語処理を行って固有名詞(会社名、部署名、人名、製品名、地名等)や数詞(金額、日時、割合、郵便番号、電話番号、人数、財務情報等)等を抽出し、テーブルTに編集対象候補として格納されているものと一致するものを抽出する。図2に示した例では、文章中に登場する「株式会社」、「総務部」、「課」、「鈴木」がそれぞれ、「*株式会社」、「総務部」、「*課」、「人名*」に一致するので、これらの語がテーブルTから抽出される。すると、表示部13は、抽出された編集対象候補に対して所定の画像処理を施して画面を表示する(ステップS103)。ここで所定の処理とは、例えば、抽出した編集対象(単語や文節など)にハイライト処理、太字化処理、文字色変更処理、網掛け処理、下線処理等の文字強調処理を施すことである。図5(a)には、抽出した編集対象候補にハイライト処理を施した文書がウィンドウWdに表示された表示画面の例を示したものである。更に、同図5に示すように、ウィンドウWdとは別のウィンドウWeが画面上に形成される。このウィンドウWeには、抽出された全ての編集対象候補が対象表示フィールドI1、I2、I3、にそれぞれ表示されるとともに、編集対象を新たに登録するためのフィールドI0が生成される。」
「【0016】
ユーザが図5(a)に示した画面を見て所望する編集対象を見つけると(ステップS104、Yes)、ユーザは入力部12を用いて当該対象を指定する(ステップS105)。具体的には、マウスカーソルをウィンドウWdに表示されている文書中の該当箇所に対応する位置に合わせてマウスのボタンをクリックする。あるいは、ウィンドウWeの該当する対象表示フィールドI(I0、I1、I2、・・・)をクリックする。こうしてユーザが所望する編集対象が指定されると、表示部13は各対象表示フィールドIにて表示される文字を反転表示処理などの所定の処理を行うことによって、その編集対象が選択された状態にあるのか否かをユーザに認識させる。一方、例えばユーザが図5(a)に示す画面を見たときに当所想定した箇所以外にも非開示とする必要があることに改めて気がついた等の事情により、所望の編集対象が強調表示されていない(すなわちウィンドウWdに表示されていない)場合(ステップS104、No)、当該箇所(文字、語句等)をキーボード等を用いてウィンドウWeに表示されている対象表示フィールドI0に入力するか、または該当箇所が表示されているウィンドウ内の部分をマウス等で指定する等することにより、編集対象を追加する(ステップS112)。制御部10は、新たに指定された編集対象をテーブルTに書き込むとともに、当該編集対象に対して上述の強調処理を行って得られた文書データを記憶部11のRAMに格納する。そして、表示部13に対して当該強調処理が反映された文書D1をウィンドウWdに表示させる。
【0017】
こうして編集対象が指定されると、表示部13は、指定された編集対象(例えば「○×△株式会社」)に対応する対象表示フィールドIの直下に方法表示フィールドS(S1、S2、・・・)を形成し、そこに当該編集対象に対応する編集方法候補(「A社」(S1a)、「A株式会社」(S1b)、「削除」(S1c)、「無変換」(S1d))を表示する(図5(b)参照)。なお、編集対象が文書中に複数登場する場合であっても、ウィンドウWeに表示されるのは一箇所のみである。ユーザは適用したい編集方法をウィンドウWeの中から見つけると(ステップS107)、当該編集方法を指定する(ステップS108)。こうして編集対象と編集方法とが指定されると、編集処理部14にて、指定された編集対象に対して指定された編集方法に従って編集処理が行われる(ステップS109)。すなわち、制御部10は、当該文書中に登場する編集対象の全てについて該指定された編集方法(置換や削除等)を実行し、当該編集処理後の文書データを記憶部11のRAMに格納するとともに、ウィンドウWdに当該編集処理が反映された文書を表示させる。」
「【図1】
[図:0001436927000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001436927000002.jpg]
」
「【図5(a)】
[図:0001436927000003.jpg]
」
「【図5(b)】
[図:0001436927000004.jpg]
」
「【図6】
[図:0001436927000005.jpg]
」
イ 引用文献1に記載されているといえる事項
上記アで摘記した【図4】のステップS108において行われる「編集方法選択」は、【0017】に「ユーザは適用したい編集方法をウィンドウWeの中から見つけると(ステップS107)、当該編集方法を指定する(ステップS108)」と記載されていることから、ユーザの入力により指定されるものである。
また、【0010】によれば、「文書編集装置1」は「入力部12」を備え、「ユーザは、表示部13の表示画面を見ながら入力部12から各種指示などを入力することによって編集処理を行う」ものである。
そうすると、【図4】、【0017】、【0010】の記載から、ステップS108の入力は「入力部12にて」、ユーザによりなされる構成であることが読み取れる。
ウ 引用文献1に記載された発明(引用発明)
上記ア及びイより、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。なお、当審にて引用発明を構成A~G及びXに分節し、分節した各構成の後には、引用文献1における記載箇所、または、上記イの項を( )内に示した。
(引用発明)
「X 制御部10、入力部12、表示部13、編集処理部14からなる文書編集装置1であって、入力部12はキーボードやマウス等の入力デバイスであり、表示部13は、描画用プロセッサおよび液晶ディスプレイ等の表示装置から構成されており、(【0010】)
A 表示部13に表示された秘匿編集処理の対象となり得る文書データの一覧から、ユーザが所望の文書データを選択すると、表示部13に文書Dが表示され、(【0014】)
B 編集処理部14は、編集対象候補を抽出し、(【0014】)
C 表示部13は、抽出した編集対象(単語や文節など)にハイライト処理を施した文書をウィンドウWdに表示し、ウィンドウWdとは別のウィンドウWeには、抽出された全ての編集対象候補を表示し、(【0014】)
D 所望する編集対象を見つけると、ユーザは入力部12を用いて当該対象を指定し、表示部13は、指定された編集対象(例えば「○×△株式会社」)に対応する対象表示フィールドIの直下に方法表示フィールドSを形成し、そこに当該編集対象に対応する編集方法候補(「A社」、「A株式会社」、「削除」、「無変換」)を表示し、(【0016】、【0017】)
E 入力部12にて、ユーザは適用したい編集方法をウィンドウWeの中から見つけると、当該編集方法を指定し、(【0017】、上記イ)
F 編集処理部14にて、指定された編集対象に対して指定された編集方法に従って編集処理が行われ、(【0017】)
G 制御部10は、当該文書中に登場する編集対象の全てについて該指定された編集方法(置換や削除等)を実行し、ウィンドウWdに当該編集処理が反映された文書を表示させる(【0017】)
X 文書編集装置1。(【0010】)」
(3)対比
本件補正発明7と引用発明を対比する。
ア 本件補正発明7の「文書に含まれる加工対象の文字列について、当該文字列として認識できない形態になるよう特定の加工を施す加工手段」について
引用発明は、「秘匿編集処理の対象となり得る文書データの一覧から、ユーザが所望の文書データを選択すると、表示部13に文書Dが表示され、」(構成A)「編集処理部14は、編集対象候補を抽出し、」(構成B)「抽出された全ての編集対象候補が表示され、」(構成C)「所望する編集対象を見つけると、ユーザは入力部12を用いて当該対象を指定し、・・・指定された編集対象(例えば「○×△株式会社」)に対応する対象表示フィールドIの直下に・・・当該編集対象に対応する編集方法候補(「A社」、「A株式会社」、「削除」、「無変換」)を表示し、」(構成D)「ユーザは適用したい編集方法を・・・指定し、」(構成E)「指定された編集対象に対して指定された編集方法に従って編集処理が行われ」(構成F)るものである。
ここで、引用発明において「秘匿編集処理の」「編集対象」として具体的に例示されている「○×△株式会社」は、本件補正発明7における「文書に含まれる加工対象の文字列」の具体例に相当し、また、引用発明の「編集処理部14」において編集対象である「○×△株式会社」を、編集方法として指定した「A社」、「A株式会社」または「削除」とする「秘匿編集処理の」編集処理を行うことは、本件補正発明7における「当該文字列として認識できない形態になるよう特定の加工を施す」ことに相当する。
したがって、引用発明の「編集処理部14」は、本件補正発明7の「文書に含まれる加工対象の文字列について、当該文字列として認識できない形態になるよう特定の加工を施す加工手段」に相当する。
イ 本件補正発明7の「前記加工手段による加工対象の候補となる加工対象候補文字列を識別可能に表示した文書と、当該加工対象候補文字列の一覧とを表示するように制御する表示制御手段」について
引用発明の「表示部13は、抽出した編集対象(単語や文節など)にハイライト処理を施した文書をウィンドウWdに表示し」(構成C)ており、ここで、引用発明の「抽出した編集対象(単語や文節など)」、「抽出した編集対象(単語や文節など)にハイライト処理を施した文書」は、それぞれ、本件補正発明7の「前記加工手段による加工対象の候補となる加工対象候補文字列」、「前記加工手段による加工対象の候補となる加工対象候補文字列を識別可能に表示した文書」に相当するといえる。
また、引用発明の「表示部13は、・・・ウィンドウWdとは別のウィンドウWeには、抽出された全ての編集対象候補を表示し」ており、ここで、引用発明の「抽出された全ての編集対象候補を表示」することは、本件補正発明7の「当該加工対象候補文字列の一覧とを表示する」ことに相当するといえる。
さらに、引用発明の「表示部13は、描画用プロセッサおよび液晶ディスプレイ等の表示装置から構成されて」おり、ここで、「描画用プロセッサ」は、表示の制御を行っていることは、当業者にとって明らかであるから、引用発明の「描画用プロセッサ」は、本件補正発明7の「表示制御手段」に相当するといえる。
したがって、本件補正発明7と引用発明とは、「前記加工手段による加工対象の候補となる加工対象候補文字列を識別可能に表示した文書と、当該加工対象候補文字列の一覧とを表示するように制御する表示制御手段と」「を備える」点で共通する。
ウ 本件補正発明7の「前記加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について、加工対象とするか否かの選択操作を受け付ける選択受付手段」について
本件補正発明7の「加工対象とするか否かの選択操作」について、本願明細書の段落【0027】および図5(a)には、以下の記載がある。
「【0027】
S305では、CPU201は、マスキング修正・追加作業画面をディスプレイ205に表示する。具体的には、図5(a)のようにマスキング文書の下書き領域401(以下、単に下書き領域ともいう)と、マスキング候補一覧402が表示される。初期画面では下書き領域401には、S302で特定されたマスキング対象の文字列に黄色のマーカーが表示されている。マスキング候補一覧402は、S303で特定されたマスキング対象の文字列の一覧であり、それぞれの文字列に対応するマスクの有無を切り替えるチェックボックス、マスクデータ、ハイライト表示の色、データの種類、事由選択欄403で構成される。マスクの有無を切り替えるチェックボックスについて、「入」の場合マスキング候補対象として下書き領域401内で識別表示する。「切」の場合マスキング対象候補から外し、下書き領域401でも識別表示から通常の表示状態に切り替える。」
「図5(a)
[図:0001436927000006.jpg]
」
上記記載から、本件補正発明7の「加工対象とするか否かの選択操作」は、「マスクの有無を切り替えるチェックボックス」に対して、チェックを入れて「入」とし「マスキング候補対象として下書き領域401内で識別表示」したり、チェックを入れずに、「切」とし、下書き領域401でも識別表示から通常の表示状態に切り替えることに対応しており、「加工対象とするか否かの」2択を選択する「選択操作」を意味しているといえる。
引用発明は、「ウィンドウWeには、抽出された全ての編集対象候補を表示し」(構成C)、「所望する編集対象を見つけると、ユーザは入力部12を用いて当該対象を指定し、表示部13は、編集対象(例えば「○×△株式会社」)に対応する対象表示フィールドIの直下に方法表示フィールドSを形成し、そこに当該編集対象に対応する編集方法候補(「A社」、「A株式会社」、「削除」、「無変換」)を表示し」(構成D)、「入力部12によって、ユーザは適用したい編集方法をウィンドウWeの中から見つけると、当該編集方法を指定」(構成E)するものである。
上記イより、引用発明の「ウィンドウWe」に「表示」された「抽出された全ての編集対象候補」は、本件補正発明7の「前記加工対象候補文字列として一覧表示された文字列」に相当する。
また、「ウィンドウWe」に「表示」された「抽出された全ての編集対象候補」から「指定された」「編集対象(例えば「○×△株式会社」)に対応する対象表示フィールドIの直下」に「形成」された「方法表示フィールドS」に「表示」された「A社」、「A株式会社」または「削除」を選択することは、本件補正発明7の「加工対象とする」「選択操作」に相当し、引用発明の「無変換」を選択することは、変換しないとの選択をすることであるから、本件補正発明7の(「加工対象」としない)「否かの選択操作」に相当する。
したがって、引用発明の「入力部12」と本件補正発明7の「選択受付手段」とは、「前記加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について、加工対象とする」「選択操作」と、加工対象としない「選択操作を受け付ける」点で共通しているといえる。
他方、本件補正発明7の「選択受付手段」は、「加工対象とするか否かの」2択を選択する「選択操作」を受け付けているのに対して、引用発明の「入力部12」は、編集対象に対応する編集(加工)方法候補(「A社」、「A株式会社」、「削除」) および編集(加工)しない選択である「無変換」の選択を受け付けている点で相違している。
エ 本件補正発明7の「前記選択受付手段により選択操作を受け付けたことに応じて加工対象とするか否かを切り替えることで、当該文字列について加工対象とするか否かを決定する決定手段」について
引用発明は、上記ウで述べたように、「入力部12」により、編集対象に対応する編集(加工)方法候補(「A社」、「A株式会社」、「削除」)の選択を受け付けたり、編集(加工)しない選択である「無変換」の選択を受け付けたりしているから、引用発明も、本件補正発明7と同様に、「前記選択受付手段により選択操作を受け付け」ているといえる。
また、引用発明は、構成Fによれば「編集処理部14にて、」「指定された編集方法に従って編集処理が行われる」ものであり、編集(加工)方法候補(「A社」、「A株式会社」、「削除」)の選択を受け付けた場合に対応する編集処理が行われ、「無変換」の選択を受け付けた場合に、編集(加工)しないことから、引用発明も、本件補正発明7と同様に、「前記選択受付手段により選択操作を受け付けたことに応じて」「当該文字列について加工対象とするか否かを決定」しているといえる。
したがって、引用発明と本件補正発明7とは、「前記選択受付手段により選択操作を受け付けたことに応じて」「当該文字列について加工対象とするか否かを決定する決定手段とを備える」点で共通しているといえる。
他方、本件補正発明7では、決定手段が、「加工対象とするか否かを切り替えることで」決定しているのに対して、引用発明では、そのような切り替えを行っていない点で相違する。
オ 本件補正発明7の「加工手段と、」「表示制御手段と、」「選択受付手段と、」「決定手段と、を備えることを特徴とする情報処理システム」について
上記ア、ウ、エによれば、引用発明の「編集処理部14」、「描画用プロセッサ」は、それぞれ、本件補正発明7の「加工手段」、「表示制御手段」に相当し、引用発明の「入力部12」、「編集処理部14」での編集方法を決定する手段は、それぞれ、本件補正発明7の「選択受付手段」、「決定手段」に対応するといえる。
また、引用発明においてこれらの構成を備える「文書編集装置1」は、「入力部12」として「キーボードやマウス等の入力デバイス」や、「表示部13」として「描画用プロセッサおよび液晶ディスプレイ等の表示装置」を備えたシステムであるから、本件補正発明7の「情報処理システム」に対応するといえる。
したがって、本件補正発明7と引用発明は、「加工手段と、」「選択受付手段と、」「決定手段と、を備えることを特徴とする情報処理システム」である点で共通する。
(4)一致点および相違点
上記(3)のとおりであるから、引用発明と本件補正発明7は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
(一致点)
「 文書に含まれる加工対象の文字列について、当該文字列として認識できない形態になるよう特定の加工を施す加工手段と、
前記加工手段による加工対象の候補となる加工対象候補文字列を識別可能に表示した文書と、当該加工対象候補文字列の一覧とを表示するように制御し、
前記加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について、加工対象とするかの選択操作や、加工対象としないとの選択操作を受け付ける選択受付手段と、
前記選択受付手段により選択操作を受け付けたことに応じて、当該文字列について加工対象とするか否かを決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。」
(相違点)
<相違点1>
本件補正発明7の「選択受付手段」は、「加工対象とするか否かの」2択を選択する「選択操作」を受け付けているのに対して、引用発明の「入力部12」は、編集対象に対応する編集(加工)方法候補(「A社」、「A株式会社」、「削除」) および編集(加工)しない選択である「無変換」の選択を受け付けている点。
<相違点2>
本件補正発明7では、決定手段が、「加工対象とするか否かを切り替えることで」決定しているのに対して、引用発明では、そのような切り替えを行っていない点。
(5)判断
上記<相違点1>及び<相違点2>は相互に関連するものであるからまとめて検討する。
ア 文書の秘匿編集処理の分野において、秘匿編集処理の対象となる単語等を秘匿編集する際に、伏せ字(墨消し)処理を行なうことは、最も一般的な秘匿編集処理であるといえる。
イ 引用文献1には、以下の記載がある。
「【0012】
図2は、記憶部11に格納されたテーブルTの内容の一例を示したものである。同図に示すように、テーブルTには、秘匿編集処理の対象となる候補(以下、編集対象候補という)と各編集対象候補に対応する編集方法の候補(以下、編集方法候補)とが記述されている。同図中、編集対象候補「*株式会社」に対応付けて編集方法候補「「{A}社」」、「「{A}株式会社」」、「削除」、「無変換」とあるのは、「株式会社」に後方一致する文章中の語句(例えば「○○株式会社」)に対しては、「A社」と置換するか、「A株式会社」と置換するか、「○○株式会社」を削除するか、何も行なわないか、の処理を選択可能であることを意味する。また、「{A}」とあるのは、必ずしも「A」と置換するという意味ではなく、重複使用を避けるためにアルファベット文字のいずれか(B、C、D、・・・)で置換することを意味する。なお、テーブルTにおいて「*{数}位」で指定される編集対象は、「業界第1位」、「世界4位」等の語句が該当することを意味する。また、「{人名}*」とあるのは、「記憶部11に人名として登録された単語に前方一致する後、例えば「鈴木様」、「高橋君」等が該当する。また、編集方法候補として「{イニシャル}」とあるのは、例えば「山田」の場合は「Y」と置換することを意味し、「{伏せ字}*」とあるのは、例えば「山田太郎殿」を「●●●●殿」と置換することを意味する。このテーブルTに格納される情報は、ユーザが入力部12を用いて、適宜、追加・変更することが可能である。」
「【図2】
[図:0001436927000007.jpg]
」
上記より、引用文献1にも、最も一般的な秘匿編集処理である「例えば「山田太郎殿」を「●●●●殿」と置換する」伏せ字による秘匿編集処理が開示されているといえる。
また、引用文献1には、さらに、以下の記載がある。
「【0025】
また、編集対象が指定されたにも関わらず対応する編集方法が指定されることなく上記指定完了指示がユーザにより入力された場合は、該当するフィールドSの最上位に表示されたものが選択されたとみなすことにより秘匿処理内容を確定してもよい。ユーザの指定がない場合のデフォルト状態の候補を決定する方法は任意であるが、例えば各編集方法が指定された回数を記憶部11に記憶しておき、回数の多さに対応じて表示順を決定してもよい。」
段落【0025】には、編集方法を指定せずに、編集対象を指定した場合に、フィールドSの最上位に表示された編集方法が選択されたとみなすことにより秘匿処理内容を確定し、各編集方法が指定された回数を記憶しておき、回数の多さに対応じて表示順を決定する技術的事項が記載されている。
ウ 引用発明に上記引用文献1に記載の技術的事項を適用した情報処理システムを、最も一般的な秘匿編集処理である伏せ字処理しか利用しないユーザが繰り返し利用した場合、最も多く利用する伏せ字処理が編集方法の候補を表示しているフィールドSの最上位に位置することとなり、編集方法を指定せずに、編集対象を指定した場合に、フィールドSの最上位に位置する伏せ字処理が選択されたとみなすことにより秘匿処理内容を確定することになる。一方、編集対象候補として抽出された単語等を編集対象と指定しなかった場合には、当該単語等は伏せ字処理等の秘匿編集処理がなされないままとなることは明らかである。
よって、引用発明に上記引用文献1に記載の技術的事項を適用した構成を、最も一般的な秘匿編集処理である伏せ字処理しか利用しないユーザが繰り返し利用した場合、編集対象候補として抽出された単語等を編集対象として指定したり指定しなかったりすることが、すなわち、伏せ字処理をするか否かを選択する「加工対象とするか否かの選択操作」(<相違点1>に係る構成)となり、「編集対象候補として抽出された単語等を編集対象として指定したり指定しなかったりすること」である「選択操作」を受け付けたことに応じて、伏せ字処理(加工)対象とするか否かを切り替えること(<相違点2>に係る構成)となるから、本件補正発明7は、引用発明及び引用文献1に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
エ そして、これらの<相違点1>及び<相違点2>を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献1に記載の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ したがって、本件補正発明7は、引用発明及び引用文献1に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(6)請求人の主張について
ア 上申書(令和7年8月29日提出)における主張
(ア)審判請求人は、令和7年8月29日に提出した上申書の「6.請求項7、8-12、14、15、について」において、本件補正発明7に関して、以下のとおり主張している。なお、下線は、強調のために当審が付した。以下同様。
「 審判請求時の本願発明の請求項7に記載の発明は、「加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について、選択操作を受け付け」、「受け付けた選択操作に基づき特定される文字列について、加工対象とするか否かを決定する」ことを特徴とします。
このような特徴的構成により、本願発明は加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について、加工対象とするか否かを容易に決定することができるという効果を奏します。
引用文献1の段落[0016]、[0017]より、引用文献1に記載された発明は、「編集対象が指定」されたのちに「編集方法を指定」するという構成のため、編集するか否かを決定するにあたり、ユーザは「編集対象」と「編集方法」の2回の指定が必要になります。また、引用文献1の段落[0025]には「編集対象が指定されたにも関わらず対応する編集方法が指定されることなく上記指定完了指示がユーザにより入力された場合は、該当するフィールドSの最上位に表示されたものが選択されたとみなす」と記載されています。ここで、「該当するフィールドSの最上位に表示されたもの」が「A社」という文字列に置換するという編集方法であった場合、ユーザは編集対象を指定するだけで(編集方法を指定することなく)当該編集対象が「A社」に置換されることになります。しかし、この場合に指定された編集対象の編集方法を「無変換」としたい場合には、編集対象の選択だけでは足りず、編集方法として「無変換」を選択するという操作も必要になります。
他方、本願発明の請求項7に係る発明は「選択操作を受け付けたことに応じて加工対象とするか否かを切り替えることで、当該文字列について加工対象とするか否かを決定」することができ(段落[0027]図5等)、加工対象候補文字列に対する選択操作を受け付けたことに応じて加工対象とするか否かが切り替わることから、加工対象とする場合も、加工対象としない場合(引用文献1における「無変換」)も、加工対象候補文字列に対する選択操作をするだけで決定することが可能となります。
このように、補正後請求項7に係る発明の特徴的構成は引用文献1に記載されていない構成であり、さらに、当該特徴的構成により引用文献1からは得られない「加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について選択操作を行うことで加工対象とするか否かを決定することができる」というという格別の効果を奏します。
以上のことから、請求項7の構成による効果も明らかですので、本願発明は新規性及び進歩性を有するものと確信します。」
(イ)しかし、上記(5)で述べたように、引用発明に上記引用文献1に記載の技術的事項を適用した構成を、最も一般的な秘匿編集処理である伏せ字処理しか利用しないユーザが繰り返し利用した場合、編集対象候補として抽出された単語等を編集対象として指定したり指定しなかったりすることが、すなわち、伏せ字処理をするか否かを選択する「加工対象とするか否かの選択操作」(<相違点1>に係る構成)となり、「編集対象候補として抽出された単語等を編集対象として指定したり指定しなかったりすること」である「選択操作」を受け付けたことに応じて、伏せ字処理(加工)対象とするか否かを切り替えること(<相違点2>に係る構成)となるから、引用発明に上記引用文献1に記載の技術的事項を適用した構成も、「加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について選択操作を行うことで加工対象とするか否かを決定することができる」という効果を奏するといえる。
したがって、本件補正発明7の効果は、引用発明に上記引用文献1に記載の技術的事項を適用した構成から当業者が容易に想到し得たものであるから、上記請求人の主張は採用できない。
イ 審判請求書(令和7年2月5日提出)における主張
(ア)審判請求人は、(令和7年2月5日に提出した審判請求書の3(4)(4-2)「補正後請求項7について」において以下のとおり主張している。
「引用文献1に記載された発明は、「編集対象が指定」されたのちに「編集方法を指定」するという構成のため、編集するか否かを決定するにあたり、ユーザは「編集対象」と「編集方法」の2回の指定が必要になります。」
「 これに対して本願の補正後請求項7に係る発明は「選択操作を受け付けたことに応じて加工対象とするか否かを切り替えることで、当該文字列について加工対象とするか否かを決定」するものであり、加工対象候補文字列に対する選択操作を受け付けたことに応じて加工対象とするか否かが切り替わることから、加工対象とする場合も、加工対象としない場合(引例における「無変換」)も、加工対象候補文字列に対する選択操作をするだけで決定することが可能となります。
このように、補正後請求項7に係る発明の特徴的構成は引用文献1に記載されていない構成であり、さらに、当該特徴的構成により引用文献1からは得られない「加工対象候補文字列として一覧表示された文字列について選択操作を行うことで加工対象とするか否かを決定することができる」というという格別の効果を奏します。したがって、補正後請求項7に係る発明は、進歩性を十分に備え、特許法第29条第2項の規定による拒絶理由には該当しないものと思料致します。」
(イ) しかし、上記ア(イ)で述べたように、引用発明に上記引用文献1に記載の技術的事項を適用した構成を、最も一般的な秘匿編集処理である伏せ字処理しか利用しないユーザが繰り返し利用した場合、伏せ字処理とするか否かは、伏せ字処理の対象として選択するか否かを指定することにより、伏せ字処理をするか否か決定することとなるから、本件補正発明7の効果は、引用発明に上記引用文献1に記載の技術的事項を適用した構成から当業者が容易に想到し得たものであるから、上記請求人の主張は採用できない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明7について
1 本願発明7
令和7年2月5日にされた手続補正は、上記「第2」のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年8月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項7に係る発明(本願発明7)は、その請求項7に記載された事項により特定される上記「第2」の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明7が、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。
引用文献1:特開2006-276912号公報
3 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1は、上記「第2」の[理由]2(2)に記載した引用文献1(特開2006-276912号公報)と同一であり、引用文献1に記載された発明(引用発明)も、上記「第2」の[理由]2(2)ウに記載したとおりである。
4 対比・判断
また、本件補正の目的は減縮であるから、本件補正前の請求項7に係る発明(本願発明7)は、本件補正後の請求項7に係る発明(本件補正発明7)を包含する発明である。
そうすると、本願発明7は、本件補正発明7と同様に、引用発明及び引用文献1に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願の請求項7に係る発明(本願発明7)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-001756