特許無効審判
2024-800181
消火が改良された喫煙物品
- 審判番号
- 2024-800181
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2017-564576外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6861170
- 請求日
- 2024年12月11日
- 審決日
- 2026年01月21日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】Future Technology 株式会社
- 【被請求人】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
- 【被請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【被請求人代理人】須田 洋之
- 【被請求人代理人】山崎 一夫
- 【被請求人代理人】大塚 文昭
- 【被請求人代理人】近藤 直樹
- 【被請求人代理人】那須 威夫
- 【被請求人代理人】鈴木 信彦
- 【被請求人代理人】岩上 健
- 分類
- P1123.121-Y (A24D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6861170号発明「消火が改良された喫煙物品」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6861170号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本審判の請求は成り立たない。
審判費用は請求人の負担とする。
との審決を求める。
第2 手続の経緯
1 本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許の請求項1~14に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
平成28年 6月30日 出願(特願2017-564576号)
(優先日:平成27年 6月30日)
令和 2年 8月 3日付け 拒絶理由通知
同年11月10日 意見書・手続補正書の提出
令和 3年 2月18日付け 特許査定
同年 3月31日 設定登録
2 本件無効審判事件の手続の経緯
本件無効審判事件の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和 6年12月11日 審判請求書の提出
令和 7年 3月 6日 手続補正書(方式)の提出
令和 7年 6月25日 審判事件答弁書
令和 7年 9月 8日付け 審理事項通知
令和 7年10月 2日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和 7年10月24日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
令和 7年11月 5日付け 審尋(請求人・被請求人宛)
令和 7年11月21日 口頭審理
第3 本件発明
本件特許の請求項1~14に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
喫煙物品であって、
たばこロッドと、
前記たばこロッドと軸方向に整列したフィルターと、
前記フィルターの少なくとも一部分および前記たばこロッドの少なくとも一部分を囲んで前記たばこロッドと軸方向に整列した前記フィルターを固定するチッピングラッパーとを備え、
前記フィルターが、
前記たばこロッドに隣接する前記フィルターの上流端にある中空の管状要素と、
前記中空の管状要素の下流にありそれに隣接する濾過材料の第一のセグメントとを備え、
前記チッピングラッパーが、前記中空の管状要素と前記たばこロッドの間の界面に、またはその上流5ミリメートル以内に配置された虚弱線を含む、喫煙物品。」
第4 請求人・被請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
審判請求書、令和7年3月6日付け手続補正書、口頭審理陳述要領書によれば、請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。
本件特許の本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同発明に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
・甲第1号証:特表2015-515283号公報
(以下「甲1」という。)
3 被請求人の主張の概要
答弁書、口頭審理陳述要領書によれば、被請求人の主張は、以下のとおりである。
本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に反するものではなく、同法第123条第1項第2号に該当するものではない。
第5 当審の判断
1 甲1記載事項
甲1には、次の記載事項、図示事項がある。なお、下線は当審において付した。以下同様。
(1)「【請求項15】
前記喫煙物品の円周回りに各第1のマルチセグメント要素にミシン目を入れる手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項10から14のいずれかに記載の装置。」
(2)「【0001】
本発明は、喫煙物品を多段工程で製造するための方法及び装置に関する。具体的には、本発明は、マルチセグメント要素を組み合わせるための方法及び装置に関する。」
(3)「【0008】
本明細書で使用する「空気流誘導セグメント」という用語は、喫煙物品の使用中にユーザが吸入した空気がたどる空気流路の一部を定める、エアロゾル形成基材に隣接する下流のセグメントを意味する。」
(4)「【0021】
本明細書で使用する「空気流路」という用語は、ユーザが吸入する空気を、喫煙物品を通じて吸い込むことができるルートを示すものである。」
(5)「【0027】
1つの別の実施形態では、第1のマルチセグメント要素が、空気流誘導セグメントの下流に膨張チャンバをさらに含む。この別の実施形態では、第1のマルチセグメント要素が、好ましくは可燃性熱源が第1の端部に設けられて膨張チャンバが第2の端部に設けられるように構成された4つのセグメントを含む。この実施形態では、エアロゾル形成基材が可燃性熱源に隣接して設けられ、空気流誘導セグメントが膨張チャンバに隣接して設けられる。
【0028】
膨張チャンバは、喫煙物品の空気流路の一部を形成することが好ましい。膨張チャンバを含むことにより、可燃性熱源からエアロゾル形成基材への熱伝達によって生成されるエアロゾルをさらに冷却できるという利点が得られる。この膨張チャンバは、その長さを適切に選択することにより、本発明による喫煙物品の全長を、例えば従来のシガレットの長さと同様の長さなどの所望の値に調整できるという利点も有する。1つの実施形態では、膨張チャンバを、断面形状に相当する断面形状を有する中空管とすることができる。
【0029】
別の実施形態では、第2のマルチセグメント要素が、マウスピースとフィルタセグメントを含むことが好ましい。」
(6)「【0045】
第2のマルチセグメント要素のマウスピースは、セルロースアセテートトウから製造されることが好ましい。
【0046】
第2のマルチセグメント要素のさらなるセグメントは、膨張チャンバ又はフィルタセグメントを含むことが好ましい。特に好ましい実施形態では、各第2のマルチセグメント要素が、第2のマルチセグメント要素の第1の端部にマウスピースを含み、第2のマルチセグメント要素の第2の端部に膨張チャンバを含み、このマウスピースと膨張チャンバに隣接してフィルタセグメントを含む。マウスピース、フィルタセグメント及び膨張チャンバの長手方向軸は、実質的に揃っていることが好ましい。1つの実施形態では、フィルタセグメントを、例えばポリ乳酸(PLA)から製造されるエアロゾル冷却セグメントとすることができる。
【0047】
方法は、第1のマルチセグメント要素の周囲に円周方向にミシン目を設けるステップをさらに含むことが好ましい。このミシン目は、第1のマルチセグメント要素と第2のマルチセグメント要素をウェブ材料に包むステップ中に設けられることが好ましい。或いは、このミシン目は、第1のマルチセグメント要素と第2のマルチセグメント要素をウェブ材料に包んで喫煙物品を形成する前又後に設けられる。ミシン目は、レーザを利用して設けられることが好ましい。」
(7)「【0053】
1つの実施形態では、空気流誘導セグメントが、エアロゾル形成基材と実質的に同じ外径の細長い中空管を含む。空気流誘導セグメントは、端部が開いた実質的に空気不透過性の、エアロゾル形成基材に比べて直径が小さな中空管と、少なくとも1つの空気入口の下流で中空管を取り囲む、エアロゾル形成基材と実質的に同じ外径の環状の実質的に空気不透過性のシールとをさらに含むことが好ましい。
【0054】
好ましい空気流誘導セグメントでは、中空管の外側と喫煙物品の外側ラッパーとによって半径方向に境界された体積が、少なくとも1つの空気入口からエアロゾル形成基材に向けて長手方向上流に延びる空気流路の第1の部分を定め、中空管の内側によって半径方向に境界された体積が、喫煙物品の唇側端部に向けて長手方向下流に延びる空気流路の第2の部分を定める。好ましい空気流誘導要素は、中空管と環状の実質的に空気不透過性のシールとを取り囲む内側ラッパーをさらに含むことができる。
【0055】
この空気流誘導セグメントの好ましい実施形態では、中空管の外側と空気流誘導要素の内側ラッパーとによって半径方向に境界された体積が、少なくとも1つの空気入口からエアロゾル形成基材に向けて長手方向上流に延びる空気流路の第1の部分を定め、中空管の内側によって境界された体積が、喫煙物品の唇側端部に向けて長手方向下流に延びる空気流路の第2の部分を定める。中空管の開いた上流端部は、エアロゾル形成基材の下流端部に当接することができる。好ましい空気流誘導要素は、環状の実質的に空気不透過性のシールの上流で中空管の長さの少なくとも一部を取り囲む、エアロゾル形成基材と実質的に同じ外径の環状空気透過性ディフューザをさらに含むことができる。例えば、中空管は、セルロースアセテートトウのプラグに少なくとも部分的に埋め込むことができる。」
(8)「【0060】
本明細書で使用する「空気入口」という用語は、1又はそれ以上の空気流路に空気を吸い込むことができる、喫煙物品を取り囲む外側ラッパー及び他のあらゆる材料における1又はそれ以上の穴、スリット、スロット又はその他の開口部を示すものである。搬送経路上のセグメントは、その長手方向軸が互いに、及び搬送経路の移動方向に実質的に揃っていることが好ましい。このような線形形成工程では、各第1のマルチセグメント要素内の要素に対する損傷が最低限又はゼロに抑えられるので有利である。」
(9)「【0075】
組み合わせ手段は、喫煙物品の円周を取り巻いて各第1のマルチセグメント要素にミシン目を入れる手段をさらに含むことが好ましい。ミシン目を入れる手段は、少なくとも1つのレーザを含むことが好ましい。このレーザは、第1のマルチセグメント要素と第2のマルチセグメント要素がウェブ材料で包まれている時に各第1のマルチセグメント要素にミシン目を入れるように構成されることが好ましい。1つのレーザを利用して2つの第1のマルチセグメント要素に同時にミシン目を設ける場合には、一連の光学要素を利用してレーザが導かれる。」
(10)「【0082】
図1は、喫煙物品100の概略断面図である。以下、この喫煙物品の以下の特徴を参照しながら工程を詳細に説明する。喫煙物品100は、障壁104を有する可燃性熱源102を含む。この障壁は、接着剤を利用して可燃性熱源の一端に取り付けられたアルミ箔の層である。可燃性熱源の長手方向に隣接して、エアロゾル形成基材106が設けられる。エアロゾル形成基材106はタバコ材料を含む。この喫煙物品は、空気流誘導セグメント108、膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメント、及びマウスピースフィルタ114をさらに含む。
【0083】
可燃性熱源102、エアロゾル形成基材106及び空気流誘導セグメント108は、ラッパー116に包まれて喫煙物品100の第1のマルチセグメント要素を形成する。第1のマルチセグメント要素は、可燃性熱源102とエアロゾル形成基材106の両方を覆うアルミ箔などの内側熱伝導層118に包まれる。また、第1のマルチセグメント要素は、アルミ箔などの熱反射材料の層を含む外側熱伝導性材料にも包まれる。この外側熱伝導性材料はラッパー116を覆い、可燃性熱源及びエアロゾル形成基材に隣接して位置する。ラッパー116には、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されたミシン目121が設けられる。
【0084】
膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメント及びマウスピース114は、ラッパー122に包まれて喫煙物品100の第2のマルチセグメント要素を形成する。第1のマルチセグメント要素及び第2のマルチセグメント要素は、これら2つの要素を互いに結合して喫煙物品を形成するためのラッパー124にさらに包まれる。ラッパー124はチップペーパーである。」
(11)「【0097】
また、包装工程中には、第1のマルチセグメント要素の空気流誘導セグメントに隣接する領域にミシン目が刻まれる。このミシン目は、第1のマルチセグメント要素が回転する時にその円周回りにミシン目を刻む固定パルスレーザ412を利用して形成される。このようなレーザを2つ設けて、対になった各第1のマルチセグメント要素にミシン目が刻まれるようにすることができる。或いは、レンズとミラーで構成された光学システムを設け、単一のレーザを利用して同時に2組のミシン目を刻むこともできる。」
(12)「【図1】
[図:0001433831000001.jpg]
」
2 上記1から認められる事項
(1)記載事項(10)から、喫煙物品100は、エアロゾル形成基材106と、空気流誘導セグメント108と、第2のマルチセグメント要素を形成する膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメント及びマウスピース114からなり、エアロゾル形成基材106及び空気流誘導セグメント108は、ラッパー116に包まれてなるものといえる。
(2)図示事項(12)から、エアロゾル形成基材106と、空気流誘導セグメント108と、第2のマルチセグメント要素を形成する膨張チャンバ110及びマウスピース114とは、軸方向に整列していることが看取できる。
また、記載事項(6)から、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントが、マウスピース114と膨張チャンバ110に隣接するものといえるから、空気流誘導セグメント108と、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントとが、軸方向に整列しているといえる。
(3)図示事項(12)から、空気流誘導セグメント108は、エアロゾル形成基材106の下流にあり、それに隣接することが看取でき、記載事項(7)から中空管を備えるものといえる。
そして、記載事項(7)から、空気流誘導セグメント108は、セルロースアセテートトウのプラグからなる環状空気透過性ディフューザに形成されるものであるから、フィルターの機能を奏するものといえる。
(4)図示事項(12)及び記載事項(6)から、空気流誘導セグメント108の下流にあり、それに隣接する膨張チャンバ110と、膨張チャンバ110の下流にあり、それに隣接するエアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントと、フィルタセグメントの下流にあり、それに隣接するマウスピース114とを含むものといえる。
そして、記載事項(5)から、膨張チャンバ110は、中空管からなるものである。
また、マウスピース114及びフィルタセグメントは、喫煙物品の技術常識から、濾過材料であることが明らかである。
3 甲1発明
上記1及び2を踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
〔甲1発明〕
「喫煙物品100であって、
エアロゾル形成基材106と、
前記エアロゾル形成基材106と軸方向に整列した空気流誘導セグメント108と、第2のマルチセグメント要素を形成する膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント及びマウスピース114と、
前記空気流誘導セグメント108及び前記エアロゾル形成基材106を包むラッパー116とを備え、
前記エアロゾル形成基材106の下流にあり、それに隣接する前記空気流誘導セグメント108が中空管を備え、前記空気流誘導セグメント108の下流にあり、それに隣接する前記膨張チャンバ110が中空管からなり、
前記膨張チャンバ110の下流にあり、それに隣接するエアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントと、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントの下流にあり、それに隣接するマウスピース114を備え、
前記ラッパー116が、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられたミシン目121を含む、喫煙物品100。」
4 本件発明と甲1発明との対比
本件発明と、甲1発明とを対比すると、甲1発明の「喫煙物品100」及び「ラッパー116」は、それぞれ、本件発明の「喫煙物品」及び「チッピングラッパー」に相当する。
また、甲1発明の「エアロゾル形成基材106」は、記載事項(10)からタバコ材料を含むものであるから、本件発明の「たばこロッド」に相当する。
また、甲1発明の「空気流誘導セグメント108」は、認定事項(3)から、フィルターの機能を奏するものといえ、「エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント及びマウスピース114」は、認定事項(4)から、濾過材料であるから、フィルターの機能を奏するものといえる。
よって、上記のとおりフィルターの機能を奏する「空気流誘導セグメント108」並びに「エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント及びマウスピース114」を含んだ甲1発明の「前記エアロゾル形成基材106と軸方向に整列した空気流誘導セグメント108と、第2のマルチセグメント要素を形成する膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント及びマウスピース114」は、本件発明の「前記たばこロッドと軸方向に整列したフィルター」に相当する。
また、甲1発明の「ラッパー116」が、「前記空気流誘導セグメント108及び前記エアロゾル形成基材106とを包む」ことは、上記のとおり「空気流誘導セグメント108」がフィルターの機能を奏し、「ラッパー116」により包まれることで「エアロゾル形成基材106」と軸方向に整列した「空気流誘導セグメント108」とが固定されるといえるから、本件発明の「フィルターの少なくとも一部分および前記たばこロッドの少なくとも一部分を囲んで前記たばこロッドと軸方向に整列した前記フィルターを固定するチッピングラッパーとを備え」ることに相当する。
そうすると、甲1発明の「喫煙物品100であって、エアロゾル形成基材106と、前記エアロゾル形成基材106と軸方向に整列した空気流誘導セグメント108と、第2のマルチセグメント要素を形成する膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント及びマウスピース114と、前記空気流誘導セグメント108及び前記エアロゾル形成基材106を包むラッパー116とを備え」ることは、本件発明の「喫煙物品であって、たばこロッドと、前記たばこロッドと軸方向に整列したフィルターと、前記フィルターの少なくとも一部分および前記たばこロッドの少なくとも一部分を囲んで前記たばこロッドと軸方向に整列した前記フィルターを固定するチッピングラッパーとを備え」ることに相当する。
また、甲1発明の「エアロゾル形成基材106の下流にあり、それに隣接する前記空気流誘導セグメント108が中空管を備え、前記空気流誘導セグメント108の下流にあり、それに隣接する前記膨張チャンバ110が中空管からなり、前記膨張チャンバ110の下流にあり、それに隣接するエアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントと、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント」は、「エアロゾル形成基材106」に隣接する「空気流誘導セグメント108」が「空気流誘導セグメント108」に隣接する「膨張チャンバ110」とともに中空の管状要素を構成するものといえる。
そして、上記のとおり甲1発明の「前記エアロゾル形成基材106と軸方向に整列した空気流誘導セグメント108と、第2のマルチセグメント要素を形成する膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント及びマウスピース114」は、本件発明の「前記たばこロッドと軸方向に整列したフィルター」に相当するから、中空の管状要素を構成する「空気流誘導セグメント108」及び「膨張チャンバ110」が、フィルターの上流端にあるといえる。
以上を踏まえると、甲1発明の「エアロゾル形成基材106の下流にあり、それに隣接する前記空気流誘導セグメント108が中空管を備え、前記空気流誘導セグメント108の下流にあり、それに隣接する前記膨張チャンバ110が中空管からなり、前記膨張チャンバ110の下流にあり、それに隣接するエアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントと、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント」は、本件発明の「フィルター」が、「たばこロッドに隣接する前記フィルターの上流端にある中空の管状要素」を備えることに相当する。
また、上記のとおり甲1発明の「前記エアロゾル形成基材106と軸方向に整列した空気流誘導セグメント108と、第2のマルチセグメント要素を形成する膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント及びマウスピース114」は、フィルターといえるものである。 そして、「エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント」及び「マウスピース114」が、中空の管状要素を構成する「空気流誘導セグメント108」及び「膨張チャンバ110」の下流にありそれに隣接する濾過材料のセグメントであるといえる。
そうすると、甲1発明の「膨張チャンバ110の下流にあり、それに隣接するエアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントと、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントの下流にあり、それに隣接するマウスピース114を備え」ることは、フィルターである「前記エアロゾル形成基材106と軸方向に整列した空気流誘導セグメント108と、第2のマルチセグメント要素を形成する膨張チャンバ110、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメント及びマウスピース114」が、中空の管状要素を構成する「空気流誘導セグメント108」及び「膨張チャンバ110」の下流にありそれに隣接する濾過材料のセグメントである「マウスピース114」を備えるものといえるから、本件発明の「フィルター」が、「中空の管状要素の下流にありそれに隣接する濾過材料の第一のセグメントとを備え」ることに相当する。
以上を踏まえると、甲1発明の「エアロゾル形成基材106の下流にあり、それに隣接する前記空気流誘導セグメント108が中空管を備え、前記空気流誘導セグメント108の下流にあり、それに隣接する前記膨張チャンバ110が中空管からなり、前記膨張チャンバ110の下流にあり、それに隣接するエアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントと、エアロゾル冷却セグメントとして形成されるフィルタセグメントの下流にあり、それに隣接するマウスピース114を備え」ることは、本件発明の「フィルターが、前記たばこロッドに隣接する前記フィルターの上流端にある中空の管状要素と、前記中空の管状要素の下流にありそれに隣接する濾過材料の第一のセグメントとを備え」ることに相当する。
また、甲1発明の「ミシン目121」は、本件発明の「虚弱線」がその実施例(本件発明の詳細な説明の段落【0023】の記載を参照。)に「穿孔線」が含むことを踏まえると、本件発明の「虚弱線」と、「複数の穴を含む」ものである限りにおいて一致する。
そうすると、甲1発明の「ラッパー116が、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられたミシン目121を含む」ことは、本件発明の「チッピングラッパーが、前記中空の管状要素と前記たばこロッドの間の界面に、またはその上流5ミリメートル以内に配置された虚弱線を含む」ことと、「チッピングラッパーが、複数の穴を含む」ことの限りにおいて一致する。
してみると、本件発明と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。
〔一致点〕
「喫煙物品であって、
たばこロッドと、
前記たばこロッドと軸方向に整列したフィルターと、
前記フィルターの少なくとも一部分および前記たばこロッドの少なくとも一部分を囲んで前記たばこロッドと軸方向に整列した前記フィルターを固定するチッピングラッパーとを備え、
前記フィルターが、
前記たばこロッドに隣接する前記フィルターの上流端にある中空の管状要素と、
前記中空の管状要素の下流にありそれに隣接する濾過材料の第一のセグメントとを備え、
前記チッピングラッパーが、複数の穴を含む、喫煙物品。」
〔相違点〕
「チッピングラッパーが、複数の穴を含む」ことについて、本件発明では、「チッピングラッパーが、前記中空の管状要素と前記たばこロッドの間の界面に、またはその上流5ミリメートル以内に配置された虚弱線を含む」のに対して、甲1発明では、「ラッパー116が、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられたミシン目121を含む」点。
5 相違点の判断
上記相違点について検討する。
まず、甲1発明の「空気流誘導セグメント108」について、上記1の記載事項(3)から、「喫煙物品の使用中にユーザが吸入した空気がたどる空気流路の一部を定める、エアロゾル形成基材に隣接する下流のセグメントを意味する」と定義されているので、「空気流誘導セグメント108」において誘導される「空気」がたどる「空気流路」及び「空気入口」について検討する。
次に、「ラッパー116が、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられたミシン目121」の位置を「空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものから、「エアロゾル形成基材106」に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものに調整することが、当業者が適宜行う設計的事項であるかについて検討する。
(1)「空気流誘導セグメント108」において誘導される「空気」がたどる「空気流路」及び「空気入口」について
甲1において、上記1の記載事項(4)から、「空気流路」という用語は、「ユーザが吸入する空気を、喫煙物品を通じて吸い込むことができるルートを示すもの」と定義されている。
そこで、「空気流誘導セグメント108」において誘導される「空気」がたどる「空気流路」及び「空気入口」が、甲1に具体的にどのように開示されているかを確認する。
上記1の記載事項(7)から、「中空管」を備える「空気流誘導セグメント108」は、中空管の外側と空気流誘導要素の内側ラッパーとによって半径方向に境界された体積が、空気入口からエアロゾル形成基材に向けて長手方向上流に延びる空気流路の第1の部分を定め、中空管の内側によって半径方向に境界された体積が、喫煙物品の唇側端部に向けて長手方向下流に延びる空気流路の第2の部分を定めるものとされている。
そして、「空気入口」という用語が、上記1の記載事項(8)で「1又はそれ以上の空気流路に空気を吸い込むことができる、喫煙物品を取り囲む外側ラッパー及び他のあらゆる材料における1又はそれ以上の穴、スリット、スロット又はその他の開口部を示すもの」と定義されている。
上記を踏まえると、図示事項(12)に看取される矢印が付加された1点鎖線が、「空気入口」から吸い込まれた「空気」が流れる、「空気流誘導セグメント108」の第1の部分及び第2の部分を含む「空気流路」を示すものといえる。
したがって、「空気流誘導セグメント108」においてミシン目121が、空気を「空気流誘導セグメント108」に吸い込む「空気入口」として機能しており、甲1発明において、「ラッパー116が、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられたミシン目121」とは、「空気流路に空気を吸い込む」上記「空気入口」の実施態様の1つであると理解される。
(2)「ラッパー116が、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられたミシン目121」の位置を「空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものから、「エアロゾル形成基材106」に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものに調整することが、当業者が適宜行う設計的事項であるかについて
上記(1)で示したとおり、「ラッパー116が、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられたミシン目121」は、「空気入口」の実施態様の1つであって、「空気流誘導セグメント108」において誘導される「空気」を「空気流誘導セグメント108」に吸い込む入口として機能するものである。
そして、「ミシン目121」の位置を「空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものから、「エアロゾル形成基材106」に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものに調整した場合には、「空気流誘導セグメント108」は、記載事項(7)に記載された「第1の部分」の空気流路が機能しなくなるため、甲1において開示されている「空気流誘導セグメント108」の機能が奏されない。
したがって、「ミシン目121」の位置を上記のように調整することには、阻害要因があるといわざるを得ない。
また、甲1には、「ミシン目121」が、「空気」を「空気流誘導セグメント108」に吸い込む入口として奏する機能以外の機能を有することについての記載又は示唆はない。
また、「ミシン目121」の位置を、「空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられた」位置以外に配置することについての記載もない。
また、「ラッパー116が、空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられたミシン目121」を、「エアロゾル形成基材106」に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものに調整することが、当業者にとって設計的事項であることを裏付ける事項もない。
以上を踏まえると、「ミシン目121」の位置を上記のように調整することが、当業者が適宜行う設計的事項であるということはできない。
よって、甲1発明から、相違点に係る本件発明の構成を得ることが、当業者にとって容易であるということはできない。
6 請求人の主張
請求人は、口頭審理陳述要領書の「6.陳述の要領」の第2の1(P.2)において、以下の主張をしている。
・「ミシン目を設ける位置について、甲1号証の段落0047によれば、「方法は、第1のマルチセグメント要素の周囲に円周方向にミシン目を設けるステップをさらに含むことが好ましい。」と記載されており、甲1号証の段落0075および請求項15にも同様のことが記載されています。そして、第1のマルチセグメント要素とは、同明細書の段落0083によれば「可燃性熱源102、エアロゾル形成基材106及び空気流誘導セグメント108は、ラッパー116に包まれて喫煙物品100の第1のマルチセグメント要素を形成する。」と記載されています。従って、ミシン目は、ラッパー116の第1のマルチセグメント要素に対応する領域、すなわち可燃性熱源102、エアロゾル形成基材106及び空気流誘導セグメント108のいずれかに隣接する任意の位置に形成されうることが、記載されているといえます。従って、ミシン目を設ける位置の調整は、当業者が適宜行う設計事項といえます。」
確かに、甲1の段落【0083】の記載から、「第1のマルチセグメント要素」は、「可燃性熱源102、エアロゾル形成基材106及び空気流誘導セグメント108」が「ラッパー116に包まれて」形成されるものといえる。また、上記1の記載事項(5)から、「第1のマルチセグメント要素」は、「空気流誘導セグメントの下流に膨張チャンバをさらに含む」ことも示唆されている。
しかしながら、上記5(2)で説示したとおり、甲1には、「ミシン目121」の位置について、上記1の記載事項(10)の段落【0083】及び記載事項(11)に記載されているとおり、一貫して、「空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したもののみが記載され、「空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置されて設けられた」位置以外に配置することについての記載はない。
また、上記5(2)で説示したとおり、「ミシン目121」の位置を「空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものから、「エアロゾル形成基材106」に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」したものに調整した場合には、「空気流誘導セグメント108」は、記載事項(7)に記載された「第1の部分」の空気流路が機能しなくなるため、甲1において開示されている「空気流誘導セグメント108」の機能が奏されない。
したがって、段落【0047】、【0075】及び請求項15の記載は、単に、「空気流誘導セグメント108に隣接して喫煙物品の周囲に円周方向に配置」した「ミシン目121」の位置が、「第1のマルチセグメント要素」に含まれているという程度の意味であると理解するほかなく、「ミシン目は、ラッパー116の第1のマルチセグメント要素に対応する領域、すなわち可燃性熱源102、エアロゾル形成基材106及び空気流誘導セグメント108のいずれかに隣接する任意の位置に形成されうる」ものであるという根拠ということはできない。
また、請求人が、段落【0047】、【0075】及び請求項15の記載以外に、「ミシン目は、ラッパー116の第1のマルチセグメント要素に対応する領域、すなわち可燃性熱源102、エアロゾル形成基材106及び空気流誘導セグメント108のいずれかに隣接する任意の位置に形成されうる」ことを認めるに足る根拠を示しているともいえない。
よって、請求人の主張を採用することはできない。
7 小括
したがって、本件発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由には理由がなく、本件発明についての特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-800181